説明

カプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法

【課題】粘度調整剤や分散剤をあらたに用いることなく、ベースとなる乳化物の粘度を調製後から安定に高粘度に維持することができ、カプセル粒子の分散安定性に優れたカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法の提供。
【解決手段】カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を得る油相調製工程と、水を主成分とする水相を得る水相調製工程と、前記油相と前記水相とを混合して第一の乳化物を得る第一の乳化工程と、該第一の乳化工程で得られた第一の乳化物に、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を得る第二の乳化工程と、該第二の乳化工程で得られた第二の乳化物と、芯物質を水不溶性の高分子化合物で内包したカプセル粒子とを混合するカプセル粒子混合工程とを有する、カプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯後の繊維製品の風合いを高めるために、繊維用仕上げ剤又は衣料用柔軟剤と呼ばれる繊維処理剤が用いられている。
繊維処理剤には、一般に、柔軟性付与成分であるカチオン界面活性剤を含有する油相と水相とを混合して調製される水中油滴型の乳化物が利用されている。
該水中油滴型の乳化物は、経時で粘度が増加しやすい。これに対して、乳化物の粘度を調整する方法として、乳化物調製後の初期粘度を低く抑える方法がある。既存の繊維処理剤の多くには、初期粘度を低く抑えるため、粘度調整剤として塩化カルシウム等の無機塩が用いられている。無機塩を配合することにより、繊維処理剤の初期粘度を100mPa・s未満までに制御できる(たとえば、特許文献1参照)。
また、前記乳化物の粘度を調整する方法として、無機塩と共に高分子を併用する方法がある。これにより、乳化物調製後の初期粘度を低く抑え、一定期間経過後に粘度が増加し過ぎるのを抑制し、所望の粘度となるように調整することができる。
【0003】
近年、繊維処理剤に対しては、従来よりも高付加価値を有する製品が求められている。そのなか、洗濯後の衣料等に充分な香りを付与するために、多量の香料と水を乳化して分散配合した組成物、又は衣料等の着用中にも発香するようにカプセル粒子(香料が内包されたマイクロカプセル)を配合した組成物が開発されている。
特にカプセル粒子を配合した組成物には、カプセル粒子の浮遊又は沈降を生じない品質が求められる。このカプセル粒子の分散安定化を図るため、カプセル粒子と共に分散剤を配合する方法が開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−87100号公報
【特許文献2】特表2007−503516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された技術においては、カプセル粒子と共に分散剤を配合しなければならず、分散剤の影響によって衣料等の風合いが低下する、水中油滴型の乳化物の経時安定性が悪くなる、製造コストが高くなる等の問題がある。
【0006】
一方、カプセル粒子を含有する繊維処理剤のベースとなる乳化物(カプセル粒子の未配合物)の粘度を調製後から安定に高粘度(約200〜500mPa・sに制御)に維持することにより、カプセル粒子の分散安定化を図る方法が考えられる。これに対して、上述した無機塩と共に高分子を併用する方法では、ベースとなる乳化物の粘度が安定になるまでに時間を要する。加えて、所望の高粘度を得るのに多量の高分子が必要となるため、製造コストが高くなる。さらに、高分子は高温保管中に分解しやすく、分解した官能基特有の不快臭(アミン臭など)が発生したり、予期せぬ粘度増加が起きたりする等の問題もある。また、無機塩の使用は、配合設備等に腐食が生じるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、粘度調整剤や分散剤をあらたに用いることなく、ベースとなる乳化物の粘度を調製後から安定に高粘度に維持することができ、カプセル粒子の分散安定性に優れたカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
無機塩、高分子などの粘度調整剤や分散剤をあらたに用いずにベースとなる乳化物の高粘度化を安定に図る方法として、乳化物中での油溶性成分(香料等)の分散に効果的であって繊維処理剤に汎用されているノニオン界面活性剤を、粘度調整剤かつ分散剤として従来よりも多目に用いる方法が考えられる。しかしながら、油相を調製する際にノニオン界面活性剤の全量を配合する従来の方法では、ノニオン界面活性剤が多目に配合される影響により、ハンドリングが悪くなって分散不良が生じやすい。また、繊維処理剤の製造直後では乳化物の分散状態が良好な場合でも、経時に伴う粘度変化が大きく、ベースとなる乳化物を安定に得るのが難しい。
本発明者らは鋭意検討した結果、多目のノニオン界面活性剤を特定の配合比率で、油相を調製する際、及び油相と水相を乳化した後、に分割してそれぞれ配合することにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法は、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を得る油相調製工程と、水を主成分とする水相を得る水相調製工程と、該油相調製工程で得られた油相と、該水相調製工程で得られた水相とを混合して第一の乳化物を得る第一の乳化工程と、該第一の乳化工程で得られた第一の乳化物に、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を得る第二の乳化工程と、該第二の乳化工程で得られた第二の乳化物と、芯物質を水不溶性の高分子化合物で内包したカプセル粒子とを混合するカプセル粒子混合工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法においては、前記第一の乳化工程が、前記油相と前記水相の一部とを混合して一次乳化物を得る一次乳化操作、及び該一次乳化物と前記水相の残部とを混合して第一の乳化物を得る二次乳化操作を含むことが好ましい。
さらに、前記一次乳化操作における前記油相と前記水相の一部との配合比率は、水相の一部/油相で表される質量比が0.5〜1.5の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法によれば、粘度調整剤や分散剤をあらたに用いることなく、ベースとなる乳化物の粘度を調製後から安定に高粘度に維持することができ、カプセル粒子の分散安定性に優れたカプセル粒子含有繊維処理剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
【図2】第一の乳化工程で用いる混合装置の一例を示す模式図である。
【図3】二次乳化操作で用いる混合装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法は、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を得る油相調製工程と、水を主成分とする水相を得る水相調製工程と、該油相調製工程で得られた油相と、該水相調製工程で得られた水相とを混合して第一の乳化物を得る第一の乳化工程と、該第一の乳化工程で得られた第一の乳化物に、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を得る第二の乳化工程と、該第二の乳化工程で得られた第二の乳化物と、芯物質を水不溶性の高分子化合物で内包したカプセル粒子とを混合するカプセル粒子混合工程とを有する。
本発明は、カプセル粒子が配合された繊維用仕上げ剤、衣料用柔軟剤、衣料用洗剤等の繊維処理剤の製造方法として好適に利用可能である。
【0014】
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有繊維処理剤は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、水、及びカプセル粒子を含有する。
【0015】
<カチオン界面活性剤>
カチオン界面活性剤としては、炭素数12〜36の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその塩又は該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。炭素数12〜36の炭化水素基は、アミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい。
このようなカチオン界面活性剤としては、例えば、下記一般式(I)〜(VIII)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミン化合物の4級化物が挙げられる。
【0016】
【化1】

【0017】
上記一般式(I)中、Rは、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。上記一般式(II)〜(VIII)中、Rは、それぞれ独立にアミド基、エステル基及びエーテル基から選ばれる1種以上の基で分断されていてもよい、炭素数12〜36の炭化水素基を示す。
【0018】
前記3級アミン化合物(I)におけるRは、炭素数12〜36の炭化水素基である。不飽和基を有する場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。また、飽和と不飽和炭化水素基の質量比は95/5〜50/50であることが好ましい。
【0019】
また、前記3級アミン化合物(II)〜(VIII)を構成するRは、炭素数12〜36の脂肪酸からカルボキシ基を除いた残基であり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸又は分岐脂肪酸から誘導される炭化水素基である。不飽和脂肪酸の場合、シス体とトランス体が存在するが、この質量比はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。
のもととなる脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素価10〜60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素価10〜60)等が挙げられる。なかでも好ましいのは、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸を所定量組み合わせ、飽和/不飽和の質量比が95/5〜50/50、シス/トランス体質量比が40/60〜80/20、ヨウ素価が10〜50、炭素数18の含有率が80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸を2質量%以下、炭素数22の脂肪酸が1質量%以下となるように調製した脂肪酸組成物を用いることが好ましい。ここで、式中に存在するRは、すべて同一であっても、又はそれぞれ異なっていても構わない。
【0020】
前記3級アミン化合物の中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸が挙げられる。本発明で用いる3級アミンは、塩酸、硫酸、メチル硫酸によって中和されたアミン塩の形で用いることが好ましい。この中和工程は、3級アミンを予め中和したものを水に分散してもよく、酸水溶液中に3級アミンを液状又は固体状で投入してもよく、3級アミンと酸成分を同時に投入してもよい。また、上記3級アミンの4級化に用いる4級化剤としては、塩化メチルやジメチル硫酸が挙げられる。
【0021】
一般式(II)、(III)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、分散安定性を良好にする観点から、(II)/(III)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、これらの4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、低分子量であり4級化に所要する4級化剤の質量が少ない点で塩化メチルがより好ましい。この際、(II)と(III)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率は、分散安定性の観点から質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(II)と(III)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]の質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30の範囲内であることが好ましい。
【0022】
一般式(IV)、(V)、(VI)の化合物は、上記脂肪酸組成物、又は脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、分散安定性を良好にする観点から、[(IV)+(V)]/(VI)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸等を用いるが、反応性の観点からジメチル硫酸がより好ましい。この際、[(IV)の4級化物+(V)の4級化物]/[(VI)の4級化物]で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率が、分散安定性の観点から、質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(IV)、(V)及び(VI)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0023】
一般式(VII)、(VIII)の化合物は、上記脂肪酸組成物とN−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、「J.Org.Chem.,26,3409(1960)」に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。この際、(VII)/(VIII)で表される存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。さらに、この4級化物を用いる場合には塩化メチルで4級化するが、[(VII)の4級化物]/「(VIII)の4級化物」で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率が質量比で99/1〜50/50となるように、合成することが好ましい。また、(VII)、(VIII)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。この際、[4級化物]/[4級化されていないエステルアミン]で表される質量比は、エステル基の加水分解安定性の観点から、99/1〜70/30であることが好ましい。
【0024】
また、例えば、カチオン界面活性剤として、以下に示す炭素数が12〜36の高級脂肪酸由来の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩を用いることもでき、該脂肪酸は飽和でも不飽和であってもよい。
脂肪酸アミドアルキル3級アミンとしては、例えば、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩等が挙げられる。
なかでも、それ自体の臭気が低く良好なことから、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミドが好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドがより好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとの混合物がさらに好ましい。
【0025】
長鎖脂肪酸アミドアルキル3級アミンの具体的な商品としては、例えば、東邦化学株式会社製のカチナールMPAS−R(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=3/7の混合物)、ライオンアクゾ株式会社製のアーミンAPS68−65E(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド/ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(質量比)=30/70の混合物65質量%のエタノール溶液)等が好ましく用いられる。
【0026】
上記の「脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩」は、例えば、脂肪酸あるいは脂肪酸低級アルキルエステル、動・植物性油脂等の脂肪酸誘導体と、ジアルキルアミノアルキルアミンとを縮合反応させた後、未反応のジアルキルアミノアルキルアミンを、減圧又は窒素ブローにて留去することにより得られる。
【0027】
脂肪酸又は脂肪酸誘導体としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等、又はこれらのメチルエステル、エチルエステル、グリセライド等が挙げられる。中でも、繊維処理剤に配合した際、繊維製品への吸着性能に優れることから、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が好ましい。これら脂肪酸又は脂肪酸誘導体は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
上述したカチオン界面活性剤の中でも、上記式(I)〜(VIII)に示す3級アミン化合物又はその有機酸もしくは無機酸による中和物、該3級アミンの4級化物が好ましい。繊維処理剤に配合した際、カプセル粒子の繊維製品への吸着効率及び吸着の持続性の向上が図れることから、上記式(IV)〜(VI)で表される3級アミンの4級化物の一種以上を用いることがより好ましい。
【0029】
上述したカチオン界面活性剤における炭化水素基の炭素数は、12〜24であることが好ましい。炭素数が12未満であると、充分な柔軟効果が得られないおそれがあり、炭素数が24超であると、疎水性が強くなり水への分散が著しく低下し、繊維処理剤に配合した際、繊維に対する吸着が不均一となって充分な柔軟効果が得られないおそれがある。
また、カチオン界面活性剤に生分解性を付与するため、該長鎖炭化水素基の途中にエステル基を含有させることが好ましい。しかるに、柔軟効果と生分解性との両立を図る観点から、カチオン界面活性剤は、分断基としてエステル基を有する炭素数12〜24の炭化水素基を1以上含有するカチオン界面活性剤であることが好ましい。
上述したカチオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。2種以上のカチオン界面活性剤を組み合わせる場合、特に繊維処理剤に配合した際、処理した繊維製品の柔軟性を良好にするために、長鎖炭化水素基(炭素数12以上)を2つ又は3つ有する化合物をカチオン界面活性剤中に50質量%以上配合することが好ましい。
【0030】
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有繊維処理剤中のカチオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは8〜18質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。
カチオン界面活性剤の含有量が下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果(たとえば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果など)が充分に得られる。また、カプセル粒子の繊維製品等への吸着を充分に促進できる。上限値以下であれば、水中油滴型の乳化物が良好に形成される。
【0031】
また、カプセル粒子含有繊維処理剤中のカチオン界面活性剤の含有量は、カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜150、さらに好ましくは10〜50である。
カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比が下限値未満であると、カプセル粒子の繊維製品等への吸着量が不充分となるおそれがあり、上限値超としても、カプセル粒子の繊維製品等への吸着性向上の効果が飽和し、さらなる吸着量の向上が図れない。
「カチオン界面活性剤/カプセル粒子で表される質量比」とは、カプセル粒子含有繊維処理剤に配合されるカチオン界面活性剤とカプセル粒子との配合比率(質量基準)を意味し、カプセル粒子の配合量に対する、カチオン界面活性剤の配合量の質量比を示す。
【0032】
また、カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤で表される質量比が、好ましくは1〜15、より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜8である。
カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤で表される質量比が下限値未満であると、ベースとなる乳化物の乳化物粒子の繊維製品等への吸着量が不充分となるおそれがあり、上限値超としても、乳化物粒子の繊維製品等への吸着性向上の効果が飽和し、さらなる吸着量の向上が図れない。
「カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤で表される質量比」とは、カプセル粒子含有繊維処理剤に配合されるカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との配合比率(質量基準)を意味し、ノニオン界面活性剤の全配合量に対する、カチオン界面活性剤の全配合量の質量比を示す。
【0033】
<ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤は、主に、乳化物中での油溶性成分(香料等)の乳化分散安定性を向上する目的で用いられる。特に、ノニオン界面活性剤を配合すると、商品価値上、充分なレベルの凍結復元安定性が確保されやすい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、高級アルコール、高級アミン又は高級脂肪酸から誘導されるものを用いることができる。なかでも、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0034】
高級アルコールは一級でも二級でもよく、その長鎖炭化水素鎖部分は、分岐鎖状であっても直鎖状であってもよく、不飽和があってもよく、炭素鎖長に分布があってもよい。
炭素鎖長は、好ましくは炭素数8〜20、より好ましくは10〜18である。炭化水素鎖が不飽和基を含む場合には、炭素数は16〜18であるものが好ましく、不飽和基の立体異性体構造は、シス体もしくはトランス体でもよく、又は両者の混合物でもよい。
ノニオン界面活性剤として好適な高級アルコールアルキレンオキシド付加物の原料アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、2−ブチルオクタノール、イソトリデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、2−ブチルデカノール、2−ヘキシルオクタノール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクタデカノール、2−ドデシルヘキサデカノールなどの天然系もしくは合成系の高級アルコールを使用することができる。
【0035】
一方、高級アルコールに付加するアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(EO)単独が好ましいが、エチレンオキシドにプロピレンオキシド(PO)又はブチレンオキシド(BO)を併用してもよく、これらアルキレンオキシドの平均付加モル数は10〜100モルが好ましく、より好ましくは20〜80モルである。
【0036】
アルキレンオキシド付加物のノニオン界面活性剤として、より具体的には、ラウリルアルコールの平均EO20モル付加物、オレイルアルコールの平均EO50モル付加物(日光ケミカルズ株式会社製、日本エマルジョン株式会社製)、一級イソデシルアルコールの平均EO20モル付加物、一級イソトリデシルアルコールの平均EO40モル付加物(ライオン株式会社製のTDA400−75)、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)、一級イソトリデシルアルコールの平均EO45モル付加物(ライオン株式会社製のTA450−75)、一級イソへキサデシルアルコールの平均EO60モル付加物、二級の炭素数12〜14のアルコールの平均EO30モル付加物(株式会社日本触媒製のソフタノール300)、牛脂アルキルアミンの平均EO60モル付加物(ライオンアクゾ株式会社製のエソミンT70)、ラウリン酸の平均EO30モル付加物などが挙げられる。
これらの具体例として、日本エマルジョン株式会社のエマレックスシリーズ、三洋化成株式会社のエマルミンシリーズ、ライオン株式会社のTAシリーズ、TDAシリーズ、ライオンアクゾ株式会社のエソミンシリーズ、株式会社日本触媒製ソフタノール300などのソフタノールシリーズ、BASF社製Lutensolシリーズなどを使用することができる。
また、上記化合物には、原料であるアルコール、アミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリアルキレングリコール等が未反応分としてノニオン界面活性剤中に10質量%以下で含まれてもよい。
【0037】
上述したノニオン界面活性剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
上述したノニオン界面活性剤の中でも、乳化物の分散安定性が良好となることから、高級アルコールのエチレンオキシド付加物が好ましく、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)、一級イソトリデシルアルコールの平均EO45モル付加物(ライオン株式会社製のTA450−75)、ラウリルアルコールの平均EO30モル付加物(日本エマルジョン株式会社製のEMALEX−730)がさらに好ましく、一級イソトリデシルアルコールの平均EO60モル付加物(ライオン株式会社製のTA600−75)が特に好ましい。
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有繊維処理剤中のノニオン界面活性剤の含有量は、所望とする機能に応じて決定でき、例えば、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%である。
ノニオン界面活性剤の含有量が下限値以上であると、乳化物中での油溶性成分(香料等)の乳化分散安定性、乳化物の凍結復元安定性がより向上する。上限値以下であれば、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度の上昇を抑えて、使用性の面で良好なものとすることができる。
【0038】
<水>
カプセル粒子含有繊維処理剤中の水の含有量は、好ましくは50〜90質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜90質量%である。
水の含有量が下限値以上であれば、乳化物が安定に形成されやすくなり、一方、水の含有量が上限値以下であれば、粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。
【0039】
<カプセル粒子>
カプセル粒子は、有効成分を含有する芯物質(S)(以下「(S)成分」ということがある)を、水不溶性の高分子化合物(T)(以下「(T)成分」ということがある)で内包したものである。有効成分が、カプセル粒子の形態で乳化物に含有されることで、有効成分の有する効果を持続させられる。
【0040】
カプセル粒子の比重(25℃、水を基準)は、その比重(25℃、水を基準)が第二の乳化工程で得られる第二の乳化物の0.8〜1.2倍であることが好ましく、0.85〜1.15倍であることがより好ましく、0.9〜1.1倍であることがさらに好ましい。カプセル粒子の比重が前記範囲であると、乳化物中での分散安定性がより良好となり、カプセル粒子の浮遊又は沈降がより抑制される。
【0041】
カプセル粒子の粒径は、特に制限されるものではなく、例えば単芯型構造の場合、平均粒径は1〜10μmが好ましく、より好ましくは1〜6μm、さらに好ましくは2〜5μmである。平均粒径が小さすぎると、有効成分の繊維製品への吸着量が低減し、繊維製品を乾燥した直後の香りが低下する場合がある。平均粒径が大きすぎると、乳化物中でのカプセル粒子の分散安定性が悪くなる。
本発明において「平均粒径」は、島津製作所製の粒度分布測定装置SALD−7100、高濃度サンプル測定システムSALD−HC71、測定・解析ソフトWing SALDII−7100HCを用い、カプセル粒子含有繊維処理剤の液温25℃で、屈折率2.65−0.20i、測定吸光度範囲0.01−0.20にて、体積基準のメジアン径(μm)により測定される値である。
また、単芯型構造とは、芯物質の塊が、カプセル粒子中に1つだけ存在する構造をいう。
【0042】
(S)成分には、香り付与を目的として香料(後述)のほか、日焼け止め(褪色抑制)成分として紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤等を含有してもよい。加えて、芯物質には、必要に応じて酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を含有してもよい。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸フェニル、シノキサート、パラアミノ安息香酸エステル、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、又はこれらのいずれか1種以上を含む組成物などが挙げられる。
【0043】
カプセル粒子全体に占める(S)成分の含有割合は、芯物質の種類等を勘案して適宜決定でき、好ましくは30〜95質量%、より好ましくは45〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%である。
カプセル粒子全体に占める(S)成分の含有割合が下限値以上であれば、カプセル粒子含有繊維処理剤の使用中に、カプセル粒子のカプセル壁が崩壊し、芯物質中の有効成分を放出させることができる。カプセル粒子全体に占める(S)成分の含有割合が上限値以下であれば、芯物質をカプセル壁で内包することができる。
【0044】
(T)成分は、(S)成分を内包するためのカプセル粒子のカプセル壁を構成する物質で、水不溶性の高分子化合物である。
本発明で「水不溶性」とは、25℃の水100gへの溶解度が1g未満であることをいう。また、「高分子」は、ポリエチレングリコールを標準物質としてゲルパーメーションクロマトグラフィーで測定される重量平均分子量が1,000〜5,000,000のものをいう。
【0045】
(T)成分の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000である。これにより、有効成分の効果を持続させることができる。
【0046】
(T)成分としては、芯物質の性状、製造性、適度なカプセル壁の強度、コスト等を勘案して決定でき、例えば、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等の合成高分子化合物;油脂、ワックス等の油性膜形成物質等を挙げることができる。
(T)成分は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0047】
ウレタン樹脂は、多官能性イソシアネート化合物とポリオールもしくはポリアミン化合物との縮合反応により得られるものである。
多官能性イソシアネート化合物としては、ポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート等が挙げられる。ポリオール化合物としては、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリアミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
なかでも、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミン、トルエンジイソシアネートとジエチレングリコールの組み合わせを好適に用いることができる。
【0048】
メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドから誘導されるメチロールメラミンからなるプレポリマーを加熱硬化して得られるものである。
【0049】
ポリアクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、アクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0050】
ポリビニル樹脂を構成するモノマーとしては、エチレン、無水マレイン酸、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0051】
ポリメタクリル酸樹脂を構成するモノマーとしては、メタアクリル酸、もしくはその低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0052】
油脂としては、硬化油、固形脂肪酸及び金属塩等が挙げられる。
ワックスとしては、密ロウ、木ロウ、パラフィン等が挙げられる。
【0053】
(T)成分としては、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、ウレタン樹脂、メラミン樹脂がより好ましく、ポリフェニルイソシアネートとヘキサメチレンジアミンとから誘導されるポリウレタン樹脂、メラミン樹脂がさらに好ましい。
【0054】
カプセル粒子は、公知の方法により製造でき、例えば、界面重合法、in−situ重合法等が挙げられる。
(T)成分としてウレタン樹脂を用いる場合、界面重合法が好ましい。例えば、一方の容器に適宜濃度の乳化剤水溶液を調製しておき、別の容器に芯物質と多官能性イソシアネート化合物との芯物質溶液を調製する。次いで、乳化剤水溶液と芯物質溶液とを高速撹拌機に投入した後、高速撹拌してO/Wエマルションを調製し、次いで、適度な濃度のポリアミン化合物の水溶液を入れて、常温で所定時間撹拌、反応させる。こうして、カプセル壁を硬化させて、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0055】
(T)成分としてメラミン樹脂を用いる場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質の外側から形成させる方法が好適である。例えば、撹拌機を備えた容器にて、芯物質を分散濃度が10〜40質量%になるように水に分散させた後、撹拌によって芯物質が所定の粒径となるように調整して芯物質分散液とする。その際、芯物質分散液の温度は60〜80℃とされる。これとは別に、メラミンとホルムアルデヒドを60〜80℃で5〜20分間縮重合させて水溶性のプレポリマーを調製する。この際、メラミン/ホルムアルデヒド(質量比)は、例えば3/1〜6/1とされる。プレポリマーを芯物質分散液に投入し、次いで、クエン酸、硫酸、塩酸等の酸によりpHを2〜5に調製した後、60〜80℃で3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0056】
(T)成分としてポリアクリル酸樹脂又はポリメタクリル酸樹脂を使用する場合、in−situ重合法が好ましく、カプセル壁を芯物質側から形成させる方法が好適である。例えば、予めアクリル酸エチル、メタクリル酸エチル等のモノマーと、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル等の重合開始剤と、芯物質とを水に分散し、撹拌機で撹拌し、芯物質を任意の粒径に調整した混合分散液を得る。その際、モノマーの配合量は芯物質に対し5〜30質量%とされ、重合開始剤の配合量はモノマーに対し0.1〜5質量%とされる。また、混合分散液の調製は、20〜70℃の温度条件下で行われることが好ましい。
次いで、該混合分散液を60〜80℃とした後、窒素ガスを導入しながら、3〜6時間重合させることによって、カプセル粒子が分散したカプセル粒子分散液を得られる。
【0057】
カプセル粒子の製造に当たっては、カプセル壁の形成を容易にするために、必要に応じて乳化剤、分散剤等を通常の使用量で配合することができる。このような乳化剤又は分散剤としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等のポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、エチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩等のアニオン系乳化剤又は分散剤、ポリビニルアルコール等の非イオン系乳化剤又は分散剤等が挙げられる。
【0058】
上述したカプセル粒子は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0059】
≪香料≫
香料としては、繊維用仕上げ剤、衣料用柔軟剤に用いることができる香料成分;該香料成分と溶剤と香料安定化剤等からなる混合物(香料組成物)等を用いることができる。
前記香料成分としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料、動物性香料等が挙げられる。
【0060】
アルデヒド類としては、例えば、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC−12MNA、ミラックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリン、ヘリオナール等が挙げられる。
【0061】
フェノール類としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、バクダノール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、フェニルエチルアルコール等が挙げられる。
【0062】
エーテル類としては、例えば、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノール等が挙げられる。
【0063】
エステル類としては、例えば、シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセニルプロピオネート、シス−3−ヘキセニルサリシレート、p−クレジルアセテート、p−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ−β−ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β−フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o−t−ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネート、アリルヘプタノエート等が挙げられる。
【0064】
ハイドロカーボン類としては、例えば、d−リモネン、α−ピネン、β−ピネン、ミルセン等が挙げられる。
【0065】
ケトン類としては、例えば、α−イオノン、β−イオノン、メチル−β−ナフチルケトン、α−ダマスコン、β−ダマスコン、δ−ダマスコン、シス−ジャスモン、メチルイオノン、アリルイオノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコン等が挙げられる。
【0066】
ラクトン類としては、例えば、γ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン、クマリン、アンブロキサン等が挙げられる。
【0067】
ムスク類としては、例えば、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラキソライド、ムスクケトン、トナリッド、ニトロムスク類等が挙げられる。
【0068】
テルペン骨格を有する香料としては、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオール等が挙げられる。
【0069】
天然香料としては、例えば、オレンジ油、レモン油、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、アニス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、ハッカ油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、白檀油、芳樟油、テレピン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメッグ油、カナンガ油、タイム油等の精油が挙げられる。
動物性香料としては、例えば、じゃ香、霊猫香、海狸香、竜涎香等が挙げられる。
【0070】
香料組成物における溶剤としては、アセチン(トリアセチン)、MMBアセテート(3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート)、スクロースジアセテートヘキサイソブチレート、エチレングリコールジブチレート、ヘキシレングリコール、ジブチルセバケート、デルチールエキストラ(イソプロピルミリステート)、メチルカルビトール(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、カルビトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、TEG(トリエチレングリコール)、安息香酸ベンジル(BB)、プロピレングリコール、フタル酸ジエチル、トリプロピレングリコール、アボリン(ジメチルフタレート)、デルチルプライム(イソプロピルパルミテート)、ジプロピレングリコール(DPG)、ファルネセン、ジオクチルアジペート、トリブチリン(グリセリルトリブタノエート)、ヒドロライト−5(1,2−ペンタンジオール)、プロピレングリコールジアセテート、セチルアセテート(ヘキサデシルアセテート)、エチルアビエテート、アバリン(メチルアビエテート)、シトロフレックスT(アセチルトリエチルシトレート)、シトロフレックスA−4(トリブチルアセチルシトレート)、シトロフレックスNo.2(トリエチルシトレート)、シトロフレックスNo.4(トリブチルシトレート)、ドゥラフィックス(メチルジヒドロアビエテート)、MITD(イソトリデシルミリステート)、ポリリモネン(リモネンポリマー)、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。
【0071】
香料組成物における香料安定化剤としては、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸エステル、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、メトキシフェノール、トコフェロール系化合物等が挙げられる。
【0072】
香料組成物としては、アニスアルデヒド、アンブロキサン、イソイースーパー、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、オレンジテルペンオイル、ガラクソライド、クマリン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、1,8−シネオール、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、ゼラニウムオイル、ターピネオール、ダマスコン、ダマセノン、1−デカナール、テトラハイドロリナロール、トナライド、バクダノール、バニリン、フェニルエチルアルコール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘディオン、ヘリオトロピン、ベルテネックス、ベルドックス、ベンジルアセテート、ベンジルサリシレート、メチルイオノン、2−メチルウンデカナール、l−メントール、ラズベリーケトン、リナリルアセテート、リナロール、リモネン、リラール、リリアール、ローズ、ベンジルベンゾエート及びジプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0073】
また、香料組成物は、徐放性の制御と嗜好性の点から、常圧での沸点が260℃未満である香料成分を、香料組成物から溶剤を除いた量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、含有することが望ましい。
【0074】
香料成分の沸点は、例えば「Perfume and Flavor Chemicals」Vol.IandII,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)及び「香料と調香の基礎知識」、産業図書(1995)に記載されており、本明細書ではそれらの文献から引用する。
【0075】
香料(香料成分、香料組成物)は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
カプセル粒子含有繊維処理剤中の香料(香料成分、香料組成物)の含有量は、好ましくは0.001〜5質量%、より好ましくは0.01〜4質量%、さらに好ましくは0.05〜3質量%である。
香料の含有量が下限値未満であると、香料に求める香りの持続が望めず、上限値超であると、経済的に好ましくない。
香料組成物をカプセル粒子の芯物質に配合する場合、(T)成分との反応性及び水溶性が低いものを選択することが好ましい。かかる場合、香料組成物に含まれる溶剤として、水溶性溶剤を用いないことが好ましい。香料組成物中の溶剤の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは1〜20質量%である。
【0076】
<その他の成分>
本発明の製造方法により製造されるカプセル粒子含有繊維処理剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、上述した成分以外に、抗菌剤・防腐剤・殺菌剤(たとえば、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、イミダゾール・チアゾール系の有機硫黄化合物、安息香酸類、フェノール系のフェノール化合物など);粘度調整剤(塩化カルシウム等の無機塩、水溶性又は水膨潤性の高分子化合物などの増粘剤等);水溶性溶剤(エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール類、ペンタンジオール類、ヘキサンジオール類、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等);シリコーン化合物、酸化防止剤、着色剤、消泡剤、pH調整剤、分散剤などを任意成分として配合できる。
その他の成分は、その種類に応じて単独若しくは混合物で、油相調製工程で配合してもよく、水相を調製する際に配合してもよく、カプセル粒子混合工程の前後で配合してもよい。
【0077】
(カプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法)
本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法の一実施形態を示す工程概略図である。
図1に示すように、本実施形態の製造方法は、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を得る油相調製工程(符号10)と、水を主成分とする水相を得る水相調製工程(符号20)と、得られた油相と水相とを混合して第一の乳化物を得る第一の乳化工程(符号30)と、得られた第一の乳化物に、ノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を得る第二の乳化工程(符号40)と、得られた第二の乳化物とカプセル粒子とを混合するカプセル粒子混合工程(符号50)とを有する。
【0078】
[油相調製工程]
油相調製工程では、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を調製する。
油相は、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを、カチオン界面活性剤の融点以上の温度、すなわちカチオン界面活性剤が溶融する温度で混合することにより調製されたものである。
油相の調製は、カチオン界面活性剤を溶融した状態で、ノニオン界面活性剤と混合できればよく、ジャケット付きニーダー、インラインミキサー等を用いることができる。
【0079】
カチオン界面活性剤の融点は、例えば、カチオン界面活性剤10mgをアルミニウム製の密閉セル(液体用、株式会社リガク製)に封入し、示差走査熱量計(THERMOFLEX TAS200、株式会社リガク製)を用い、2℃/分の昇温速度で0℃から80℃まで測定した際の吸熱ピークの最大値を示す温度として求めることができる。
なお、2種以上のカチオン界面活性剤を配合する場合、カチオン界面活性剤の融点は、用いるカチオン界面活性剤を混合し、この混合物の吸熱ピークの最大値として求めることができる。
【0080】
油相中のカチオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有繊維処理剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、45〜95質量%が好ましく、55〜95質量%がより好ましく、65〜95質量%がさらに好ましい。
油相中のカチオン界面活性剤の配合量が下限値以上であれば、カチオン界面活性剤の配合効果、たとえば衣料用柔軟剤として用いた場合、柔軟効果や抗菌効果が充分に発揮され、上限値以下であれば、油相の粘度が著しく上昇するのを抑え、第一の乳化工程で得られる第一の乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0081】
油相中のノニオン界面活性剤の配合量は、カプセル粒子含有繊維処理剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、1〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
ノニオン界面活性剤の配合量が下限値以上であれば、油溶性成分の乳化に効果的に作用し、上限値以下であれば、第一の乳化工程で得られる第一の乳化物の粘度を適度なものにできる。
【0082】
油相には、所望とする機能に応じて、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤以外の種々の油溶性成分を配合してもよい。この油溶性成分としては、香料、シリコーン化合物等が挙げられる。
たとえば香料を油相に配合することで、カプセル粒子含有繊維処理剤中における香料の分散性が高くなる。該香料については、カプセル粒子に含有してもよい香料(前述)と同様のものが挙げられる。
油相中の香料(香料成分、香料組成物)の配合量は、カプセル粒子含有繊維処理剤の用途等を勘案して決定でき、例えば、40質量%以下が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%がさらに好ましい。
たとえばカプセル粒子含有繊維処理剤を衣料用柔軟剤として用いた場合、油相中の香料の配合量が1質量%以上であれば、洗濯終了後、洗濯機から衣類を取り出した時点から乾燥後まで香りを感知できる等、充分に香りを付与でき、40質量%以下であれば、油相のハンドリング性も良好であり、不快なべた付き等を抑制できる。
【0083】
[水相調製工程]
水相調製工程では、水を主成分とする水相を調製する。
水相は、主成分の水と、必要に応じて上述したその他の成分(防腐剤、pH調整剤、分散剤等)又はノニオン界面活性剤とを、常法により混合することにより調製されたものである。
ここで「主成分」とは、水相の50質量%以上を占める成分をいう。
水相にノニオン界面活性剤を配合する場合、水相中のノニオン界面活性剤の配合量は、油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤が第二の乳化工程で配合されるのであれば、特に制限されず、100質量%(全部が水)でもよく、好ましくは5質量%以下、より好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。ノニオン界面活性剤の配合量が好ましい上限値以下であれば、第一の乳化工程で得られる乳化物の分散安定性がより良好となる。下限値以上であれば、油相に配合される油溶性成分の乳化助剤として効果的である。
【0084】
[第一の乳化工程]
第一の乳化工程では、得られた油相と水相とを混合して第一の乳化物を調製する。
油相と水相との混合比率は、油相の種類を勘案して決定でき、適度な大きさの乳化物粒子を容易に調製でき、粘度が制御しやすくなることから、たとえばカチオン界面活性剤として前記の式(IV)、(V)又は(VI)で表される化合物を配合する場合、第一の乳化物中の該化合物(カチオン界面活性剤)の含有量が21質量%以下、好ましくは10〜18質量%となるように油相の配合量を決定することが好ましい。
また、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との混合比率を、質量比で、カチオン界面活性剤/ノニオン界面活性剤=1〜40とすることが好ましく、3〜12とすることがより好ましく、5〜9とすることがさらに好ましい。加えて、該質量比が下限値未満であると、乳化不良が起こり、乳化物の安定性が悪化して経時で増粘が起こりやすくなる。該質量比が上限値超であると、乳化物の分散性が低下し、経時で分離しやすくなる。
【0085】
第一の乳化工程で用いる混合装置としては、ディスプロ翼、ディスパー翼等の高剪断型の撹拌翼;又は、平羽根タービン翼、プロペラ翼、パドル翼等の汎用撹拌翼を備えた連続式混合装置を用いることができる。
これらのなかでも、第一の乳化工程で用いる混合装置は、乳化物粒子の微細化を充分に図れることから、高剪断型の撹拌翼を備えたラインミキサーを用いることが好ましい。このようなラインミキサーとして具体的には、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、T.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等の連続式混合装置が挙げられる。
【0086】
図2は、第一の乳化工程で用いる混合装置の一例を示す模式図であり、高剪断型の撹拌翼としてディスプロ翼を備えたラインミキサーを示している。
ラインミキサー100は、略円筒状のハウジング110と、撹拌翼122を備えるローター120とで概略構成されている。図2において、撹拌翼122としては、円板に12等分となるように切込みを入れて任意の角度でそれぞれ折り曲げ加工された撹拌羽根(ディスプロ翼)を2段に配置したものが用いられている。
ラインミキサー100においては、ローター120を回転させながら、吸入口112からハウジング110内へ油相と水相とを連続的に供給することで、供給された油相と水相とが撹拌翼122とハウジング110の内周面との間で生じる剪断力を受けながら混合され、水中油滴型の乳化物(第一の乳化物)となる。そして、第一の乳化物は、排出口114から装置外へ排出される。
【0087】
図2に示す本実施形態において、撹拌翼122における羽根の最大外径dと、ハウジング110内の撹拌槽径Dとの比は、d/D=0.7以上であることが好ましく、0.7〜0.9であることがより好ましい。d/Dが下限値以上であると、充分な剪断力が付与され、油相と水相とが良好に混合される。d/Dが上限値を超えると、ハウジング110内を内容液(供給される油相と水相)が流動し難くなり、乳化不良となりやすい。
【0088】
第一の乳化工程では、一例として、ラインミキサー100を用い、カチオン界面活性剤の融点以上の温度とした油相と水相とをハウジング110内にそれぞれ連続的に供給し、カチオン界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら混合することにより第一の乳化物が得られる。
【0089】
撹拌翼122先端の周速度は、安定な液晶を形成しやすいことから、2〜20m/sであることが好ましく、3〜15m/sであることがより好ましく、4〜10m/sであることがさらに好ましい。
撹拌翼122先端の周速度が下限値未満であると、液晶を安定に形成しにくくなり、上限値を超えると、油相と水相との混練により発熱し、香気が劣化しやすい。
【0090】
撹拌翼122を通過する、油相及び水相の液流速(線速度)は、0.0001〜0.001m/sであることが好ましく、0.0002〜0.0009m/sであることがより好ましく、0.0003〜0.0008m/sであることがさらに好ましい。
油相及び水相の液流速(線速度)が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与され、上限値以下であると、乳化物の粒径が制御されやすい。
本実施形態において「油相及び水相の液流速(線速度)(m/s)」とは、撹拌翼122を通過する油相及び水相の液流速を意味し、油相及び水相の合計流速(単位時間当たりの流量)を、撹拌翼122回転方向の断面積で除して算出される値を示す。
【0091】
供給される油相の流速(単位時間当たりの流量)は、100〜50000g/分であることが好ましく、150〜40000g/分であることがより好ましく、200〜25000g/分であることがさらに好ましい。
供給される水相の流速(単位時間当たりの流量)は、50〜40000g/分であることが好ましく、100〜30000g/分であることがより好ましく、150〜20000g/分であることがさらに好ましい。
油相及び水相の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子が適度に微細化され、カプセル粒子含有繊維処理剤の保存安定性が向上する。
【0092】
第一の乳化工程における剪断速度は100sec−1以上であることが好ましく、より好ましくは400sec−1以上であり、さらに好ましくは600sec−1以上である。剪断速度が下限値未満であると、油相と水相との混練不良が生じ、乳化物粒子の微細化が足りず、乳化物粒子の分散性が悪くなる。
剪断速度は高いほど、乳化物粒子の粒径は小さく、かつ、均一になるが、剪断速度の上限は5000sec−1以下であることが好ましい。剪断速度を上限値超としても、乳化物粒子の分散性向上の効果が飽和すると共に、剪断速度を上限値超とするためにはラインミキサーの高度な制御が必要とされ、作業が煩雑である。
図2において、剪断速度とは、ラインミキサー100の撹拌翼122先端の周速度(m/s)、該先端とラインミキサー100内面とのクリアランス[(D−d)/2(m)]により決定される、周速度/クリアランス(sec−1)で算出される値である。
なお、該剪断速度は、ラインミキサーの撹拌翼の回転速度、又は撹拌翼とラインミキサー内面とのクリアランスの調節により調整することができる。
【0093】
第一の乳化工程における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、好ましくはカチオン界面活性剤の融点より10℃以上高い温度とされる。また、第一の乳化工程における温度条件の上限は、カチオン界面活性剤の種類やノニオン界面活性剤の種類等を勘案して決定でき、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下、特に好ましくは50〜60℃とされる。100℃超とすると、配合成分の熱分解により、水中油滴型乳化物の粘度が上昇したり、香気の劣化を生じたりするおそれがある。
【0094】
ラインミキサー100内における油相及び水相の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜30秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が下限値以上であると、油相と水相とが良好に混合される。平均滞留時間が上限値以下であれば、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
【0095】
第一の乳化工程で得られる第一の乳化物の粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5〜1μm、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。
【0096】
本発明においては、乳化物粒子の微細化がより図られ、経時に伴う粘度変化が抑制されやすいことから、第一の乳化工程で、前記油相と前記水相の一部とを混合して一次乳化物を得る一次乳化操作、及び該一次乳化物と前記水相の残部とを混合して第一の乳化物を得る二次乳化操作をそれぞれ行うことが好ましい。
【0097】
一次乳化操作:
本発明で「水相の一部/油相」は、油相と水相の一部との配合比率(質量基準)を意味し、油相の配合量に対する、水相の一部の配合量の質量比を示す。この質量比より、水相の一部の配合量と、該水相の残部の配合量とが決定される。
一次乳化操作において、水相の一部/油相で表される質量比は、微細な乳化物粒子を形成しやすいことから、0.5〜1.5の範囲内であることが好ましく、0.6〜1.2の範囲内であることがより好ましく、0.7〜1.0の範囲内であることがさらに好ましい。
水相の一部/油相で表される質量比が下限値未満であると、得られる一次乳化物の流動性が不良となりやすく、該質量比が上限値を超えると、乳化不良を生じやすい。
【0098】
一次乳化操作は、たとえば図2に示す実施形態の混合装置を用い、上述した混合条件と同様にして行えばよい。
一次乳化操作で得られる一次乳化物の粒子の平均粒径は、前記「水相の一部/油相」で表される配合比率が0.5〜1.5の範囲であれば、上述した第一の乳化工程で得られる第一の乳化物の粒子の平均粒径と同様である。
【0099】
一次乳化物を、次の二次乳化操作を行うために移送する時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有繊維処理剤の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、好ましくは300秒間以下、より好ましくは120秒間以下とするのがよい。
【0100】
二次乳化操作:
二次乳化操作で用いる混合装置としては、上述した連続式混合装置;ホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、クレアミックス等のバッチ式混合装置などが挙げられる。
なかでも、乳化物粒子の粒度分布を狭く制御しやすいことから、連続式混合装置が好ましく、そのなかでも均一分散性を高める目的から、汎用撹拌翼を備えたラインミキサーを用いることがより好ましい。
このようなラインミキサーとして具体的には、マイルダー(太平洋機工株式会社製)、T.K.パイプラインホモミクサーM型(プライミクス株式会社製)等が挙げられる。
【0101】
図3は、二次乳化操作で用いる混合装置の一例を示す模式図であり、汎用撹拌翼として平羽根タービン翼を備えたラインミキサーを示している。
ラインミキサー200は、略円筒状のハウジング210と、撹拌翼222を備えるローター220とで概略構成されている。図3において、撹拌翼222としては、4枚の平羽根が十字状に固定された4枚平羽根タービン翼を2段に配置したものが用いられている。
ラインミキサー200においては、ローター220を回転させながら、吸入口212からハウジング210内へ一次乳化物と水相の残部とを連続的に供給することで、供給された一次乳化物と水相の残部とが撹拌翼222とハウジング210の内周面との間で生じる剪断力を受けながら混合され、乳化物粒子の微細化が図られると共に粒径(粒度分布)が制御された乳化物(第一の乳化物)となる。そして、第一の乳化物は、排出口214から装置外へ排出される。
【0102】
図3に示す本実施形態において、撹拌翼222における羽根の最大外径d’と、ハウジング210内の撹拌槽径D’との比は、d’/D’=0.4以上であることが好ましく、0.5〜0.9であることがより好ましい。d’/D’が下限値以上であると、充分な剪断力が付与され、一次乳化物と水相とが良好に混合される。d’/D’が上限値を超えると、クリアランスが小さくなり過ぎて、ハウジング210内を内容液(供給される一次乳化物と水相)が流動し難くなる。
【0103】
二次乳化操作では、一例として、ラインミキサー200を用い、カチオン界面活性剤の融点以上の温度とした一次乳化物と水相の残部とをハウジング210内にそれぞれ連続的に供給し、カチオン界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら混合することにより、粒径(粒度分布)が制御された第一の乳化物が得られる。
【0104】
撹拌翼222先端の周速度は、乳化物粒子を安定に分散しやすいことから、4〜20m/sであることが好ましく、6〜18m/sであることがより好ましく、8〜16m/sであることがさらに好ましい。
撹拌翼222先端の周速度が下限値未満であると、剪断が足りず、分散不良物を生じやすくなったり、乳化物粒子の粒度分布が広くなりやすく、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が増加しやすい。一方、周速度が上限値を超えると、乳化物粒子の微細化が進行して、凝集物を生じやすくなったり、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が低くなりやすい。
二次乳化操作では、一次乳化操作で得られる一次乳化物の粘度が高目であるため、一次乳化操作における周速度よりも、大きな周速度で操作することで、一次乳化物の粒径を容易に保つことができる。
【0105】
撹拌翼222を通過する、一次乳化物及び水相の液流速(線速度)は、0.0002〜0.002m/sであることが好ましく、0.0003〜0.0018m/sであることがより好ましく、0.0004〜0.0016m/sであることがさらに好ましい。
一次乳化物及び水相の液流速(線速度)が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与され、上限値以下であると、乳化物の粒径が制御されやすい。
本実施形態において「一次乳化物及び水相の液流速(線速度)(m/s)」とは、撹拌翼222を通過する一次乳化物及び水相の残部の液流速を意味し、一次乳化物及び水相の残部の合計流速(単位時間当たりの流量)を、混合装置200における撹拌翼222回転方向の断面積で除して算出される値を示す。
【0106】
供給される一次乳化物の流速(単位時間当たりの流量)は、200〜90000g/分であることが好ましく、250〜70000g/分であることがより好ましく、400〜50000g/分であることがさらに好ましい。
供給される水相の残部の流速(単位時間当たりの流量)は、300〜150000g/分であることが好ましく、400〜110000g/分であることがより好ましく、600〜70000g/分であることがさらに好ましい。
一次乳化物及び水相の残部の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子の粒径の制御が容易に図られる。
【0107】
二次乳化操作における剪断速度は100sec−1以上であることが好ましく、より好ましくは300sec−1以上であり、さらに好ましくは500sec−1以上である。剪断速度が下限値未満であると、剪断が足りず、乳化物粒子の粒度分布が広くなりやすく、分散不良物が生じて、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が増加しやすい。
剪断速度は高いほど、乳化物粒子の粒度分布は狭くなるが、剪断速度の上限は5000sec−1以下であることが好ましい。剪断速度を上限値超としても、乳化物粒子の粒径を制御する効果が飽和すると共に、剪断速度を上限値超とするためには混合装置の高度な制御が必要とされ、作業が煩雑である。
図3において、剪断速度とは、ラインミキサー200の撹拌翼222先端の周速度(m/s)、該先端とラインミキサー200内面とのクリアランス[(D’−d’)/2(m)]により決定される、周速度/クリアランス(sec−1)で算出される値である。
【0108】
二次乳化操作における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、一次乳化操作と同様の条件とすればよい。
【0109】
ラインミキサー200内における、一次乳化物及び水相の残部の平均滞留時間は、5秒間以上であることが好ましく、10〜60秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与される。平均滞留時間が上限値以下であれば、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
二次乳化操作で得られる第一の乳化物の粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5〜1μm、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。
【0110】
第一の乳化工程では、前記の油相と水相以外に、別途用意した油溶性成分又は水溶性成分を配合してもよい。
【0111】
第一の乳化工程で得られた第一の乳化物を、次の第二の乳化工程に移送する時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有繊維処理剤の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、好ましくは300秒間以下、より好ましくは120秒間以下とするのがよい。
【0112】
[第二の乳化工程]
第二の乳化工程では、第一の乳化工程で得られた第一の乳化物に、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を調製する。
第二の乳化工程で配合されるノニオン界面活性剤の配合量は、油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)であり、0.2〜10倍量(質量基準)であることが好ましく、0.4〜2倍量(質量基準)であることがより好ましい。
第二の乳化工程で、油相調製工程の0.1〜10倍量のノニオン界面活性剤を配合することにより、ベースとなる乳化物の経時に伴う粘度変化が抑制され、カプセル粒子の分散安定性に優れる。また、油相調製工程の0.1倍量のノニオン界面活性剤を配合することにより、油溶性成分の乳化安定化を促進でき、油相調製工程の10倍量のノニオン界面活性剤を配合することにより、バルク(分散媒)中に存在する油溶性成分を安定化させることができる。
さらに、このようにノニオン界面活性剤を特定の配合比率で、油相調製工程と第二の乳化工程で分割してそれぞれ配合することにより、カプセル粒子含有繊維処理剤のベースとなる乳化物中で、ノニオン界面活性剤が乳化物粒子中と分散媒中にそれぞれバランス良く存在しやすい。かかるカプセル粒子含有繊維処理剤は、乳化物粒子の分散状態が安定に保たれやすく、経時に伴う粘度変化が小さい。このため、カプセル粒子の分散安定性に特に優れる。
この乳化物粒子中に存在するノニオン界面活性剤と、分散媒中に存在するノニオン界面活性剤とのバランスは、油相調製工程と第二の乳化工程で配合するノニオン界面活性剤の配合量を所定の範囲で調整することにより制御できる。
【0113】
第二の乳化工程で配合されるノニオン界面活性剤と、油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤とは、同一であってもよく異なっていてもよく、乳化物の分散安定性の点から、同一であることが好ましい。
【0114】
第二の乳化工程で用いる混合装置としては、スタティックミキサー、ミキシングポンプ(日機装エイコー株式会社製のマグネットポンプCP40シリーズ等)などを用いることができる。第二の乳化工程においては、第一の乳化工程で得られた第一の乳化物の乳化状態を良好に保つため、低剪断タイプの混合装置が好ましい。
【0115】
第二の乳化工程では、一例として、第一の乳化物と、あらたに配合されるノニオン界面活性剤とを、ミキシングポンプ内にそれぞれ連続的に供給し、カチオン界面活性剤の融点以上の温度に維持しながら混合することにより第二の乳化物が得られる。
【0116】
供給される第一の乳化物の流速(単位時間当たりの流量)は、500〜250000g/分であることが好ましく、700〜180000g/分であることがより好ましく、1000〜120000g/分であることがさらに好ましい。
供給されるノニオン界面活性剤の流速(単位時間当たりの流量)は、10〜6500g/分であることが好ましく、20〜5000g/分であることがより好ましく、
30〜4000g/分であることがさらに好ましい。
第一の乳化物及びノニオン界面活性剤の流速が前記範囲であれば、乳化物粒子の粒径の制御が容易に図られる。
【0117】
第二の乳化工程における剪断速度は100sec−1以下であることが好ましく、より好ましくは10〜60sec−1であり、さらに好ましくは30〜50sec−1である。
たとえばスタティックミキサーを用いた場合、第二の乳化工程における剪断速度は、スタティックミキサーの半径r(m)と該ミキサー内の流量Q(m/s)から算出することができる(剪断速度=4Q/πr)(以下同じ)。
スタティックミキサーを用いる場合、エレメント数は12〜30が好ましく、24〜30がより好ましい。
【0118】
第二の乳化工程における温度条件は、カチオン界面活性剤の融点以上であれば特に限定されず、第一の乳化工程と同様の条件とすればよい。
【0119】
混合装置内における、第一の乳化物、及びあらたに配合されるノニオン界面活性剤の平均滞留時間は、30秒間以上であることが好ましく、30〜150秒間であることがより好ましい。
平均滞留時間が下限値以上であると、乳化物に充分な剪断力が付与される。平均滞留時間が上限値以下であれば、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が良好な乳化物が得られやすい。
第二の乳化工程で得られる第二の乳化物の粒子の平均粒径は、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5〜1μm、さらに好ましくは0.25〜0.5μmである。
【0120】
第二の乳化工程で得られた第二の乳化物を、次のカプセル粒子混合工程に移送する場合、その移送時間は、最終的に調製されるカプセル粒子含有繊維処理剤の保存安定性を確保する点から、なるべく短い方がよく、好ましくは300秒間以下、より好ましくは120秒間以下とするのがよい。
【0121】
[カプセル粒子混合工程]
カプセル粒子混合工程においては、第二の乳化工程で得られた第二の乳化物と、芯物質(S)を水不溶性の高分子化合物(T)で内包した前記カプセル粒子とを混合することにより、最終的にカプセル粒子含有繊維処理剤が製造される。
カプセル粒子混合工程で用いる混合装置としては、スタティックミキサー等の公知の混合装置を使用することができる。カプセル粒子混合工程においては、混合によるカプセル粒子の破壊を防ぐため、低剪断での撹拌が好ましい。
カプセル粒子混合工程では、一例として、冷却した第二の乳化物と、カプセル粒子とを、スタティックミキサー内にそれぞれ供給して混合することにより、カプセル粒子含有繊維処理剤が得られる。
カプセル粒子混合工程における剪断速度は100sec−1以下であることが好ましく、より好ましくは10〜60sec−1であり、さらに好ましくは30〜50sec−1である。
スタティックミキサーを用いる場合、エレメント数は12〜30が好ましく、24〜30がより好ましい。
【0122】
カプセル粒子混合工程における温度条件は、カプセル粒子中の(S)成分へのダメージを避けるために温度は低い方が好ましく、具体的には25〜35℃が好ましい。
かかる温度に調整する際、冷却速度は、好適な25〜35℃に冷却できればよく、なるべく速い方が好ましく、具体的には5〜50℃/分とすることが好ましく、20〜50℃/分とすることがより好ましい。
【0123】
本発明の製造方法によれば、乳化物粒子の平均粒径が、好ましくは2〜4μm、より好ましくは2〜3μmのカプセル粒子含有繊維処理剤が容易に得られる。
該乳化物粒子の平均粒径が下限値以上であると、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度が低くなりすぎず、カプセル粒子の分散安定性が向上する。上限値以下であると、カプセル粒子含有繊維処理剤の粘度増加が起こりにくくなり、容器からの排出性が向上する。
該乳化物粒子の平均粒径が前記範囲であると、乳化物粒子とカプセル粒子とが互いに似通った粒径となり、カプセル粒子の分散安定性が向上する、と考えられる。
【0124】
本発明の製造方法によれば、粘度が、好ましくは200〜1500mPa・s、より好ましくは200〜750mPa・s、さらに好ましくは200〜500mPa・sの高粘度化が図られたカプセル粒子含有繊維処理剤が容易に得られる。
当該粘度が好ましい下限値以上であると、カプセル粒子の分散安定性がより向上する。一方、当該粘度が好ましい上限値以下であると、容器からの排出性がより向上する。また、ハンドリングが良好となり、繊維処理剤等を製造する際の混合性が良好になる。
粘度は、株式会社東京計器製のBL型回転式粘度計を用い、以下に示す測定条件で測定できる。
【0125】
ローター:No.2(粘度が10〜1000mPa・sの場合)、No.3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数:30rpm、測定温度:25℃(乳化物の温度)、測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0126】
以上説明した本発明のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法においては、ノニオン界面活性剤を、油相を調製する際(油相調製工程)、及び油相と水相を乳化した後(第二の乳化工程)、にそれぞれ分割して配合することにより、ベースとなる乳化物(カプセル粒子の未配合物)の粘度を調製後から安定に高粘度に維持することができ、カプセル粒子の分散安定性に優れたカプセル粒子含有繊維処理剤を製造することができる。
かかる効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推測される。
無機塩、高分子などの粘度調整剤や分散剤をあらたに用いずにベースとなる乳化物の高粘度化を安定に図る方法として、ノニオン界面活性剤をこれまでよりも多目に用いる方法が考えられる。
その際、従来の製造方法のように、油相を調製する際にノニオン界面活性剤の全量を配合した場合、ハンドリングが悪くなって乳化物の分散不良が生じやすい。また、ノニオン界面活性剤自体の分散不良も生じやすい。加えて、油相と水相を乳化した時点では、ほとんどのノニオン界面活性剤が乳化物粒子中に存在し、その後、経時に伴って該ノニオン界面活性剤の一部が分散媒中に分布するようになり、最終的には乳化物粒子中と分散媒中とに一定の割合で存在する、というようにノニオン界面活性剤の分布状態が大きく変化する。このため、ベースとなる乳化物の粘度が配合直後から増加等しやすい。
これに対し、本発明においては、ノニオン界面活性剤が別の工程で分割して配合されていることにより、ベースとなる乳化物中で、ノニオン界面活性剤が、乳化物粒子中と分散媒中にそれぞれバランス良く、配合直後から存在している。このため、ノニオン界面活性剤の分布状態の経時変化が小さく、乳化物粒子の分散状態が安定に保たれる。加えて、ノニオン界面活性剤の配合により、カプセル粒子自体の分散性も向上する。これらの作用により、本発明の効果が得られると考えられる。
【実施例】
【0127】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例及び各比較例で用いた成分の配合量は、特に指定しない限り純分換算値である。
【0128】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<カチオン界面活性剤>
モノ/ジ/トリ長鎖エステル型第4級アンモニウムメチルサルフェート[(a)モノエステルアンモニウム塩/(b)ジエステルアンモニウム塩/(c)トリエステルアンモニウム塩=28/53/19(質量比)の混合物]、エステル基で分断された長鎖炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩;下記合成例により合成した第4級アンモニウム塩。
[合成例]
(1)脂肪酸メチルエステルの水素添加
オレイン酸メチル75質量%、リノール酸メチル16質量%及びステアリン酸メチル9質量%よりなるパーム脂肪酸メチル(ライオン株式会社製、商品名:パステルM182、平均分子量296)2.5kgと、市販の安定化ニッケル触媒2.5g(0.1質量%/脂肪酸メチル)とを4Lのオートクレーブに仕込み、窒素ガス置換を3回行った。
次いで、回転数を800rpmに合わせ、温度185℃で約54Lの水素ガスを導入した。導入した水素が完全に消費された後、冷却し、濾過助剤を使用して触媒を除き、水素添加したパーム脂肪酸メチルを得た。けん化価より求めた分子量は297であった。ガスクロマトグラフィー(GC)から求めた脂肪酸メチル組成は、ステアリン酸メチル11質量%、エライジン酸メチル(トランス体)23質量%、オレイン酸メチル(シス体)66質量%であり、不飽和脂肪酸メチルエステルのトランス/シス比率は26/74(質量比)であった。なお、不飽和アルキル基は、GCによる次の方法で測定した。
機種:Hitachi FIDガスクロG−3000カラム(GLサイエンス製、TC−70)0.25mm i.d.×30m
温度:カラム150℃→230℃、昇温速度10℃/分、インジェクター&ディテクター240℃、カラム圧力:1.0kgf/cm
【0129】
(2)アルカノールアミンエステルとそのカチオンの合成
上記(1)で調製した水素添加したパーム脂肪酸メチル352g(1.19モル)に、ステアリン酸メチル243g(0.82モル)とパルミチン酸メチル188g(0.70モル)とを混合した脂肪酸メチルエステル(不飽和脂肪酸メチル/飽和脂肪酸メチルの質量比40/60)と、トリエタノールアミン250g(1.67モル)と、酸化マグネシウム0.51gと、14質量%水酸化ナトリウム水溶液3.69gとを、撹拌器、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた2Lの4つ口フラスコに入れ、窒素置換を行った後、窒素を0.52L/分の流量で流しながら、1.5℃/分の昇温速度で190℃まで昇温して、6時間反応させた。未反応メチルエステルが1質量%以下であることを確認して反応を停止し、中間体のアルカノールアミンエステルを得た。アミン価を測定し、分子量を求めたところ578であった。
得られたアルカノールアミンエステル265g(0.46モル)を温度計、滴下ロート及び冷却機を備えた4つ口フラスコに入れて窒素置換した。次いで、85℃に加熱し、ジメチル硫酸57.4g(0.45モル)を1時間に渡り滴下した。滴下終了後、温度を90℃に保ち、1時間撹拌した。反応終了後、約62gの未変性エタノール(日本エタノール株式会社)を滴下しながら冷却してエタノール溶液を調製し、最後に、フェリオックスCY−115(ライオン株式会社製、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸の60質量%水溶液)と、ジブチルヒドロキシトルエン(住友化学工業株式会社製)とをそれぞれ100ppmの濃度になるように添加した。
得られた反応生成物には、モノエステルアンモニウム塩とジエステルアンモニウム塩とトリエステルアンモニウム塩とが合計で85質量%、その比率は28/53/19(質量比)で含まれていた。また、エタノールが4質量%含まれており、さらに、4級化されていないモノエステルアミンとジエステルアミンとトリエステルアミンとが合計で9.0質量%含まれており、その比率は1/9/90(質量比)で存在していた。さらに副生成物として、両性化合物が2.0質量%含まれていた。
最終的に得られた合成品の組成:モノエステルアンモニウム塩とジエステルアンモニウム塩とトリエステルアンモニウム塩 85質量%、4級化されていないモノエステルアミンとジエステルアミンとトリエステルアミン 9質量%、両性化合物 2質量%、エタノール 4質量%。
【0130】
<ノニオン界面活性剤>
ノニオン界面活性剤(a):ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数60、商品名「TA600−75」、ライオンケミカル株式会社製)、75質量%水溶液。
ノニオン界面活性剤(b):ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数13、EOの平均付加モル数45、商品名「TA450−75」、ライオンケミカル株式会社製)、75質量%水溶液。
ノニオン界面活性剤(c):ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数12、EOの平均付加モル数30、商品名「EMALEX−730」、日本エマルジョン株式会社製))、100質量%品。
【0131】
<香料>
香料組成物(A):表1に記載の香料組成物。
【0132】
【表1】

【0133】
<防腐剤>
商品名「ケーソンCG/ICP」、Rohm&Haas社製。
【0134】
<粘度調整剤>
塩化カルシウム:商品名「粒状塩化カルシウム」、トクヤマ社製。
増粘剤:商品名「RHEOVIS FRC」、Ciba社製。
【0135】
<カプセル粒子>
内包香料として表2に示す香料組成物と、壁物質としてウレタン系高分子とからなるカプセル粒子を用いた。
300mL容ビーカーに、イオン交換水200gと、平均分子量が16,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩(商品名:ポリティPS−1900、ライオン株式会社製)5gとを入れ、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩水溶液を調製した。
また、別の100mL容ビーカーに、表2に示す香料組成物55gと、ポリフェニルイソシアネート(商品名:PAPI−135、Dow Chemical製)8gとを入れて混合し、芯物質溶液を調製した。
次いで、500mL容ビーカーに、前記の二種類の溶液を入れ、ホモミキサーにより3000rpmで5分間撹拌してO/Wエマルションを調製し、その後、40質量%のヘキサメチレンジアミン水溶液75gを入れ、常温で、400rpmで2時間撹拌してカプセル壁を反応硬化させることにより、硬化したカプセル壁を有するアニオン性マイクロカプセル粒子が分散した水性分散液を調製した。
このように調製されたカプセル粒子の粒径を測定した結果、平均粒径は約5μmであり、比重は0.92であった。また、得られたカプセル粒子中の香料組成物の含有率は約16質量%であった。
【0136】
【表2】

【0137】
(カプセル粒子含有繊維処理剤の製造例)
表3〜7に示す配合組成の配合成分、配合量(質量部)に従い、下記の製造方法によりカプセル粒子含有繊維処理剤をそれぞれ製造した。
表中、配合成分の配合量は、いずれも純分換算量を示す。なお、精製水の「バランス」は、カプセル粒子含有繊維処理剤に含まれる全配合成分の合計の配合量(質量部)が100質量部となるように加えられた配合量を意味する。
「質量比:カチオン/ノニオン」は、組成物に配合されるカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤との配合比率(質量基準)を意味し、ノニオン界面活性剤の全配合量に対する、カチオン界面活性剤の全配合量の質量比を示す。
「第一の乳化工程における質量比:水相の一部/油相」は、第一の乳化工程で混合される油相と水相の一部との配合比率(質量基準)を意味し、油相の配合量に対する、水相の一部の配合量の質量比を示す。この質量比より、水相の一部の配合量と、該水相の残部の配合量とを求めることができる。なお、実施例13では、第一の乳化工程で水相が分割して配合されておらず、水相の全量と油相とが混合されている。
「ノニオンの分割配合比率:第二の乳化工程/油相調製工程」は、油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤と、第二の乳化工程で配合されるノニオン界面活性剤との配合比率(質量基準)を意味し、油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の配合量に対する、第二の乳化工程で配合されるノニオン界面活性剤の配合量の質量比を示す。
【0138】
(実施例1)
図1に示す実施形態と同じ実施形態の製造方法によりカプセル粒子含有繊維処理剤を製造した(総流量1.2kg/分)。第一の乳化工程では、一次乳化操作と二次乳化操作とをそれぞれ行った。
一次乳化操作では、図2に示す実施形態と同じ実施形態のラインミキサー(第1ラインミキサー)を用いた。二次乳化操作では、図3に示す実施形態と同じ実施形態の混合装置(第2ラインミキサー)を用いた。具体的に用いたラインミキサーは以下の通りである。
第1ラインミキサー:容量0.285L、撹拌槽径(D)65.7mm、撹拌槽の撹拌翼回転方向の断面積33.8cm、撹拌翼における羽根の最大外径(d)52.5mm、羽根の幅(b)6.6mm
第2ラインミキサー:容量0.500L、撹拌槽径(D’)80.4mm、撹拌槽の撹拌翼回転方向の断面積50.6cm、撹拌翼における羽根の最大外径(d’)40.1mm、羽根の幅(b’)7.9mm
【0139】
油相調製工程:
表3に示す配合組成となるように、カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤(a)と香料組成物(A)とを、55℃に加熱しながら混合して油相を得た。
【0140】
水相調製工程:
精製水と防腐剤とを均一に混合した後、55℃に加熱して水相を得た。
【0141】
第一の乳化工程:
それぞれ55℃に加温した前記の油相と水相の一部とを、第1ラインミキサー(1LM)に連続的に供給しながら混合して一次乳化物(S)を得た(一次乳化操作)。このときの油相と水相の一部との配合比率を、水相の一部/油相で表される質量比で0.8とした[油相の配合量は20.14質量部(カチオン界面活性剤16.47質量部、ノニオン界面活性剤(a)2.67質量部、香料1質量部)であった。水相の一部の配合量は16.11質量部であった。なお、水相の合計の配合量は74.07質量部(防腐剤0.01質量部、精製水74.06質量部)であった。]。
混合条件について、第1ラインミキサー(1LM)として、羽根の最大外径dと撹拌槽径Dとの比d/Dが0.8であり、円板に12等分となるように切込みを入れて設定角度通りに折り曲げ加工された撹拌羽根(ディスプロ翼)が2段に配置された撹拌翼を備えた連続式混合装置を用いた。そして、該撹拌翼の回転数を2000rpm、剪断速度を837sec−1として剪断力を加えながら乳化分散を行った。
このときの流量は、油相が242g/分、水相が193g/分であり、第1ラインミキサーでの平均滞留時間は39秒間であった。
【0142】
次いで、得られた一次乳化物(S)を、平均移送時間30秒で、55℃に設定した前記工程(1)とは別の第2ラインミキサー(2LM)に連続的に供給すると共に、前記水相の残部(57.96質量部)を連続的に供給しながら、両者を混合して第一の乳化物(b1)を得た(二次乳化操作)。
混合条件について、第2ラインミキサー(2LM)として、羽根の最大外径dと撹拌槽径Dとの比d/Dが0.5であり、4枚平羽根タービン翼が2段に配置された撹拌翼を備えた連続式混合装置を用いた。そして、該撹拌翼の回転数を6000rpm、剪断速度を627sec−1として剪断力を加えながら乳化分散を行った。
このときの流量は、一次乳化物(S)が435g/分、水相の残部が696g/分であり、第2ラインミキサーでの平均滞留時間は27秒間であった。
【0143】
第二の乳化工程:
次いで、得られた第一の乳化物(b1)とノニオン界面活性剤(a)とを、ミキシングポンプに連続的に供給しながら混合して第二の乳化物(c1)を得た。
混合条件について、このときのノニオン界面活性剤(a)の配合量を、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤(a)の1.0倍量(質量基準)とした(同じ配合量とした)。また、剪断速度を40sec−1として剪断力を加えながら乳化分散を行った。このときの流量は、第一の乳化物(b1)が1126g/分、ノニオン界面活性剤(a)が32g/分であり、ミキシングポンプでの平均滞留時間は104秒間であった。
【0144】
カプセル粒子混合工程:
次いで、得られた第二の乳化物(c1)を、熱交換器(30℃/分)により30℃に冷却した。
その後、30℃に冷却された第二の乳化物(c1)とカプセル粒子とを、スタティックミキサーに連続的に供給しながら、剪断速度40sec−1で混合することにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0145】
(実施例2〜8、10〜12、14、15)
表3〜5に示す配合組成(配合成分、配合量、水相の一部/油相で表される質量比)に従い、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤をそれぞれ得た。
【0146】
(実施例9)
精製水と、防腐剤と、さらにノニオン界面活性剤(a)とを混合した水相を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0147】
(実施例13)
油相調製工程、水相調製工程:
いずれの工程も、実施例1と同様の操作を行うことにより、油相と水相とをそれぞれ調製した。
【0148】
第一の乳化工程:
それぞれ55℃に加温した前記の油相と、水相の全量とを、第1ラインミキサー(1LM)に連続的に供給しながら混合して第一の乳化物(b2)を得た。
混合条件について、第1ラインミキサー(1LM)として、羽根の最大外径dと撹拌槽径Dとの比d/Dが0.8であり、円板に12等分となるように切込みを入れて設定角度通りに折り曲げ加工された撹拌羽根(ディスプロ翼)が2段に配置された撹拌翼を備えた連続式混合装置を用いた。そして、該撹拌翼の回転数を2000rpm、剪断速度を837sec−1として剪断力を加えながら乳化分散を行った。
このときの流量は、油相が242g/分、水相が889g/分であり、第1ラインミキサーでの平均滞留時間は15秒間であった。
【0149】
第二の乳化工程、カプセル粒子混合工程:
第一の乳化物(b1)の代わりに第一の乳化物(b2)を用いた以外は、いずれの工程も、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0150】
(比較例1)
実施例1において、油相にノニオン界面活性剤(a)4質量部を配合し、第二の乳化工程の操作を行わない以外は、実施例1と同様の操作(油相調製工程、水相調製工程、第一の乳化工程、カプセル粒子混合工程)を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0151】
(比較例2)
油相にノニオン界面活性剤を配合せず、水相にノニオン界面活性剤(a)4質量部を配合した以外は、比較例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0152】
(比較例3)
実施例1において、水相にノニオン界面活性剤(a)2質量部を配合し、第二の乳化工程の操作を行わない以外は、実施例1と同様の操作(油相調製工程、水相調製工程、第一の乳化工程、カプセル粒子混合工程)を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0153】
(比較例4)
実施例1において、油相にノニオン界面活性剤を配合せず、第二の乳化工程でノニオン界面活性剤(a)4質量部を配合した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0154】
(比較例5)
実施例1において、油相にノニオン界面活性剤を配合せず、水相にノニオン界面活性剤(a)2質量部を配合した以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0155】
(比較例6、7、9、10)
表7に示す配合組成(配合成分、配合量、水相の一部/油相で表される質量比)に従い、実施例1と同様の操作を行うことにより、カプセル粒子含有繊維処理剤をそれぞれ得た。
【0156】
(比較例8)
実施例1と同様の操作(油相調製工程、水相調製工程、第一の乳化工程)を行うことにより第一の乳化物(b1)を得た。
次いで、得られた第一の乳化物(b1)を、熱交換器(30℃/分)により30℃に冷却した。
その後、30℃に冷却された第一の乳化物(b1)と、塩化カルシウム水溶液(3質量%)とを、スタティックミキサーに連続的に供給しながら、剪断速度40sec−1で混合した。続けて、増粘剤水分散液(2質量%)を、該スタティックミキサーに連続的に供給しながら、剪断速度40sec−1で混合した。最後に、カプセル粒子を、該スタティックミキサーに連続的に供給しながら、剪断速度40sec−1で混合することにより、カプセル粒子含有繊維処理剤を得た。
【0157】
(評価)
以下に示す方法により、各例で製造されたカプセル粒子含有繊維処理剤の均一分散性、分散不良率、粘度、粘度の経時変化率、カプセル粒子の分散状態をそれぞれ評価した。これらの結果を表3〜7に示す。
【0158】
<均一分散性の評価>
製造直後(30℃に調整)、25℃で1ヶ月間保存後のカプセル粒子含有繊維処理剤の外観を目視観察し、下記の評価基準に従い、ベースとなる乳化物の分散状態について評価した。
評価基準
◎:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が認められなかった。
○:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が僅かに認められた。
△:ベースとなる乳化物に、ダマ状物がやや認められた。
×:ベースとなる乳化物に、ダマ状物が多く認められた。
【0159】
<分散不良率の評価>
各例の製造例においてカプセル粒子を配合する前の乳化物(第二の乳化物、30℃に調整)約100gを、メッシュ(目開150μm、線径100μm)に垂らし、1分間静置した。そして、メッシュを通過せず、メッシュ上に残った乳化物の残存量(g)を計量して、残存率(=メッシュ上に残った乳化物の残存量(g)/100g×100)を測定し、これを分散不良率(%)として評価した。
カプセル粒子を配合する前の乳化物の試料としては、製造直後(30℃に調整)、25℃で1ヶ月間保存後のものをそれぞれ用いた。
【0160】
<粘度の評価>
容量200mLの塩ビ製容器に、製造直後、25℃で1ヶ月間保存後のカプセル粒子含有繊維処理剤200mLをそれぞれ充填し、BL型回転式粘度計(株式会社東京計器社製)を用いて、以下の測定条件で測定し、粘度について評価した。
測定条件
ローター:NO2(粘度が100〜1000mPa・sの場合)、NO3(粘度が1001〜4000mPa・sの場合)
回転数 :30rpm
測定温度:25℃(乳化物の温度)
測定時間:20秒後(10回転目の値)
【0161】
<粘度の経時変化率の評価>
粘度の経時変化率は、下式より算出した。
粘度の経時変化率(%)=25℃で1ヶ月間保存後の試料の粘度/製造直後の試料の粘度×100
粘度の経時変化率が80〜120%であると、粘度の経時変化が充分に抑制されていると云える。
【0162】
<カプセル粒子の分散状態の評価>
25℃で1ヶ月間保存後のカプセル粒子含有繊維処理剤の外観を、目視又は顕微鏡で観察し、下記の評価基準に従い、カプセル粒子の分散状態について評価した。
評価基準
○:カプセル粒子の浮遊も沈降も認められず、均一に分散していた。
×:カプセル粒子の浮遊又は沈降が認められた。
【0163】
【表3】

【0164】
【表4】

【0165】
【表5】

【0166】
【表6】

【0167】
【表7】

【0168】
表3〜7に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜15によれば、粘度調整剤や分散剤をあらたに用いることなく、ベースとなる乳化物の粘度を調製後から安定に高粘度に維持することができ、カプセル粒子の分散安定性に優れたカプセル粒子含有繊維処理剤を製造できることが分かる。
【符号の説明】
【0169】
100 ラインミキサー、110 ハウジング、120 ローター、122 撹拌翼、200 ラインミキサー、210 ハウジング、220 ローター、222 撹拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤とを混合して油相を得る油相調製工程と、
水を主成分とする水相を得る水相調製工程と、
該油相調製工程で得られた油相と、該水相調製工程で得られた水相とを混合して第一の乳化物を得る第一の乳化工程と、
該第一の乳化工程で得られた第一の乳化物に、前記油相調製工程で配合されるノニオン界面活性剤の0.1〜10倍量(質量基準)のノニオン界面活性剤をさらに混合して第二の乳化物を得る第二の乳化工程と、
該第二の乳化工程で得られた第二の乳化物と、芯物質を水不溶性の高分子化合物で内包したカプセル粒子とを混合するカプセル粒子混合工程と
を有することを特徴とする、カプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法。
【請求項2】
前記第一の乳化工程が、前記油相と前記水相の一部とを混合して一次乳化物を得る一次乳化操作、及び該一次乳化物と前記水相の残部とを混合して第一の乳化物を得る二次乳化操作を含むことを特徴とする、請求項1記載のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法。
【請求項3】
前記一次乳化操作における前記油相と前記水相の一部との配合比率は、水相の一部/油相で表される質量比が0.5〜1.5の範囲内であることを特徴とする、請求項2記載のカプセル粒子含有繊維処理剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167389(P2012−167389A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27108(P2011−27108)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】