説明

カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニット

【課題】カプセル剤を製造する際に内包液を計量・送出するにあたり、シャッター機構によって内包液の適量計量を繰り返し行ってもスライド面から内包液が漏れ出ないようにした新規なポンプユニットを提供する。
【解決手段】ポンプユニット38は、内包液Nを外皮部Gで被覆して成るカプセル剤Aの製造装置1に組み込まれるものであり、ポンプ室51を有する本体ブロック50と、例えば円柱状を成すピストン62を往復動させて成るシャッター機構とを具えて成り、またシャッター機構におけるスライド孔61Hには、ピストン62のほぼ両端位置に、ピストン62に対しVリングシール72等のシール部材を外嵌め状態に設け、ピストン62がシール部材に摺接しながら往復動するように構成し、ピストン62のスライド面からの内包液Nの外部漏出を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば医薬成分や保健成分等の材料液(内包液)を、ゼラチン等の外皮部で内包状態に被覆して成るカプセル剤を製造する装置に関するものであって、特に内包液の供給に先立ち、カプセル剤一個分の内包液を計量する機構部分から内包液を装置外部に漏出させないようにした新規なポンプユニットに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より医薬成分や保健成分あるいは健康食品材エキス等を服用しやすくするため、このような材料液をゼラチン等の柔らかな外皮素材で皮膜・保護して成るカプセル剤が市場に提供されている。このようなソフトカプセル剤を製造するにあたっては、例えばゼラチン等によって外皮部をほぼ一定厚さのシート状に形成した後、この外皮シートを一対のダイロール間に拝み合わせ状態に送り込むとともに、外皮シートに内包液の定量供給を行い、内包液を外皮シートによって包み込むように縫合する製造手法が一般的である。
【0003】
そして、このような製造工程において、内包液の供給量(充填量)を正確に計量するには、スライドシャッター構造(シャッター機構)が採用されている(例えば、本出願人による特許文献1参照)。
この特許文献1では、例えば図12に示すように、いわゆるプランジャーポンプの構造を採るため、まずは本体ブロック50′内に、プランジャーピン52′を設けたポンプ室51′を左右同数ずつ形成し、その上方にスライドシャッターSS(シャッター機構60′)を設けるものである。なお、左右の各ポンプ室51′には導入路R1′と吐出路R2′とが同じ奥行き寸法位置に直列状に形成されるが、その上方を往復動(これを前後方向の往復動とする)するスライドシャッターSSには導入路R1′と吐出路R2′とが互い違い状態に形成されるものである。
【0004】
次に、このシャッター機構60′の作動状況について説明すると、スライドシャッターSSを往動スライドさせた場合(例えば図12のように奥側に移動させた場合)、右側のポンプ室51A′では、導入路R1′のみが接続される一方、左側のポンプ室51B′では、吐出路R2′のみが接続される。また、このような作動に伴い、右側のプランジャーピン52A′を抜き方向に作動させるとともに、左側のプランジャーピン52B′を押し込み方向に作動させるものである(これを左右方向の往復動とする)。このような作動により、右側のポンプ室51A′では、原液ホッパ37′から導入路R1′を通して一定量の内包液Nがポンプ室51A′内に充填供給されるものであり、また左側のポンプ室51B′では、ポンプ室51B′内に充填されていた内包液Nが吐出路R2′を通して送り出されるものである。
【0005】
その後、スライドシャッターSSを復動スライドさせると(例えば図12において手前側へ移動)、今度は右側のポンプ室51A′では、吐出路R2′のみが接続される一方、左側のポンプ室51B′では、導入路R1′のみが接続される。もちろん、このような作動に伴い左右のプランジャーピン52′も逆方向に作動させるものであり、これにより右側のポンプ室51A′では、ポンプ室51A′内に充填されていた内包液Nが吐出路R2′を通して送出され、左側のポンプ室51B′では、原液ホッパ37′から導入路R1′を通して一定量の内包液Nがポンプ室51B′内に充填供給されるものである。
このようにスライドシャッターSSを前後動させながら、なお且つプランジャーピン52′も左右動させることにより、左右のポンプ室51′から交互に内包液Nの定量送出を行うものであり、結果として左右いずれかのポンプ室51′から絶えず内包液Nが送出されるものである。
【0006】
ところで従来のシャッター機構60′においては、そもそも「シャッター」という用語が板状あるいは平面的なものをイメージさせるためか、スライドシャッターSSを平面的にスライドさせる構成つまりスライド面がフラット状に形成されるのが一般的となっていた(上記図12参照)。しかし、このような平面式スライドでは、スライド面から内包液Nが、外部に漏れ出ることがあり、近年、これを解決したいという要求が急速に高まってきている。
すなわち、従来のカプセル剤(ソフトカプセル)は、内包液Nそのものが可食性ないしは体内摂取用(服用用)のものが多かったため、内包液Nが装置外に漏れ出ても(たとえ内包液Nがミスト状になって作業者(皮膚)に付着しても)、作業者に害を及ぼすことはなかった。しかしながら、近年では、ソフトカプセルの製品範囲として、医薬品や健康食品以外に他の利用目的、例えば、内包液Nとして有害な毒物扱いの原料液をカプセル化したいという要望が増えつつあり、そのために前記漏出を抑える要求が高まってきたものである。もちろん「毒物扱い(の内包液N)」と言っても、農薬や肥料あるいは土壌改良剤などであり、この種の原料液(薬剤)は、製造工程中(未作用)の原液状態で直接人が触れた場合に害となるものであるが、例えば土壌中において薬剤が特定の作用を及ぼした後には、人にとって無害となるものである(青酸カリなどのいわゆる毒薬とは異なる)。
【0007】
このようなことから、シャッター機構60′のスライド面からの液漏れを防止するシール構造が求められているが、従来のシャッター機構60′では、上述したように、平面式スライドであるため、部材間にパッキン等を挟み込む一般的な手法は採れず、液漏れ対策が困難であった(そのままではシール性が採りにくいものであった)。
なお、従来、スライド面からの液漏れが問題視されていなかったのは、上述した内包液の変化(カプセル剤の利用目的の変化)の他にも、以下のような要因も考えられる。すなわち、シャッター機構60′は、ポンプ関連の構成部材であり、通常、このシャッター機構60′で計量された内包液Nは、パイプ(チューブ)等でカプセル化を行う部位まで輸送されることから、ポンプ関連部材は、カプセル化部位から隔離することができ、このためスライド面から内包液Nが漏出しても直接、不良品(カプセル剤)の発生に結び付きにくい装置構成となっており、これもスライド面からの液漏れが問題視されていなかった要因の一つと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−246919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、カプセル剤を製造する際に内包液を計量・送出するにあたり、シャッター機構によって適正な充填量を正確に計量することはもちろん、この計量を繰り返し行ってもスライド面から内包液が漏れ出ないようにした新規なポンプユニットの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち請求項1記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニットは、内包液を外皮部によって内包状態に被覆して成るカプセル剤を製造する装置に組み込まれ、一または複数のポンプ室を有する本体ブロックと、スライド部材を往復動させて成るシャッター機構とを具え、シャッター機構によるスライド部材の位置切り替えによって、ポンプ室に適量の内包液を充填・計量するようにし、また該ポンプ室に充填・計量した内包液をここからカプセル化を図る部位に送り出すようにした装置であって、前記シャッター機構には、スライド孔内においてピストンを往復動自在に支持して成るシリンダータイプの機構が適用され、このピストンと前記本体ブロックとには、ポンプ室に内包液を充填するための導入路と、該ポンプ室に充填された内包液をポンプ室から送り出すための吐出路とが形成されるものであり、また、ピストンの導入路及び吐出路は、本体ブロックとピストンとの導入路が接続された状態で、ピストンの吐出路が本体ブロックの吐出路からずれ、非接続となる位置に形成される一方、本体ブロックとピストンとの吐出路が接続された際には、ピストンの導入路が本体ブロックの導入路からずれ、非接続となる位置に形成されるものであり、また前記シャッター機構におけるスライド孔には、ピストンのほぼ両端位置に、ピストンに対しシール部材が外嵌め状態に設けられ、ピストンはシール部材の内側に摺接しながら往復動するものであり、かかる構成によりピストンのスライド面からの内包液の外部漏出を防止するようにしたことを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項2記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニットは、前記請求項1記載の要件に加え、前記シャッター機構は、ピストン及びスライド孔が、円形の断面形状に形成され、該ピストンを軸方向に往復動するように形成されるものであり、また該ピストンの両端部に設けられるシール部材は、複数のVリング要素が重ね合わせて取り付けられるVリングシールであることを特徴として成るものである。
【0012】
更に、また請求項3記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニットは、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記ポンプ室及びピストンは、左右一対となって設けられるものであり、また左右いずれかのポンプ室側において導入路が接続され且つ吐出路の接続が断たれた際には、もう一方のポンプ室側において吐出路が接続され且つ導入路の接続が断たれるように左右のピストンの導入路と吐出路とが形成されるものであり、前記各ポンプ室から内包液を送出するにあたっては、左右のピストンを同時に往復動させることにより、左右のポンプ室から交互に内包液の定量送出を行うようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項4記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニットは、前記請求項3記載の要件に加え、前記二本の円柱状のピストンには、このピストンを往復動自在に支持するスライド孔から張り出す外部において、回転防止体が取り付けられ、円柱状のピストンの回転を防止するようにしたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
まず請求項1記載の発明によれば、内包液がスライド面から漏れ出ることを防止できるため、内包液として作業者にとって害にならない材料液はもちろん、害になるもの、例えば原液の状態で作業者の皮膚に付着することが好ましくない農薬や肥料あるいは土壌改良剤等でも適用でき、カプセル剤の利用可能性を高め、適用範囲を広めることができる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、スライド部材(ピストン)の断面が円柱状に形成されるため、スライド面のシール性が採り易い。またピストン両端部に設けられるシール部材がVリング要素を複数枚重ねて成るVリングシールであるため、スライド面のシールをより確実に図ることができる。すなわち、ピストンが円柱状(円筒状)であることは、シール部材として入手し易いVリングシールが使えるため、極めて実用的な構造であり、シール性能をより高レベルで確保できるとともに、シール部材が摩耗した場合の交換も容易に行えるものである。
【0016】
更にまた請求項3記載の発明によれば、左右のポンプ室から交互に内包液の定量送出が行われるため、結果として左右いずれかのポンプ室から絶えず内包液が送出されることになり、従ってカプセル剤の製造が極めて能率的に行える。
【0017】
また請求項4記載の発明によれば、左右のピストンには、回転防止体が設けられるため、繰り返し行われる前後方向の往復動に伴い左右のピストンの固定が緩んでも、各ピストンは回転しないため、各ピストンに形成された導入路と吐出路とが周方向にずれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の、内包液の供給用ポンプユニットを適用したカプセル剤の製造装置を示す斜視図である。
【図2】同上、側面図である。
【図3】同上、正面図である。
【図4】ダイヘッド周辺を拡大して示す、部分的に破断した平面図である。
【図5】ダイヘッド周辺を拡大して示す斜視図である。
【図6】一対のダイロールによってカプセル化を図る様子を示す正面断面図である。
【図7】ポンプユニットを構成する各部材を骨格的に示す分解斜視図である。
【図8】前後方向に往復スライドさせるピストンの取付状態を、ピストンを手前側(前方側)に位置させた状態で示す平面断面図である。
【図9】シフタによって左右一対のプランジャーピンを交互に移動させる様子を骨格的に示す説明図である。
【図10】ピストンを手前側(前方側)に位置させた際に、右側のポンプ室で内包液を取り込んで定量充填を行う一方、左側のポンプ室では取り込んだ内包液を内包液ノズルに向けて定量供給する様子を示す平面図並びに正面断面図である。
【図11】ピストンを奥側(後方側)に位置させた際に、右側のポンプ室では取り込んだ内包液を内包液ノズルに向けて定量供給する一方、左側のポンプ室ではここに内包液を取り込んで定量充填を行う様子を示す平面図並びに正面断面図である。
【図12】従来の平面式のシャッター機構を採用したポンプユニットの各構成部材を骨格的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお説明にあたっては、カプセル剤Aの一般的な構成について説明した後、このようなカプセル剤Aの製造装置について説明しながら併せて本発明のポンプユニットについて言及し、その後、このポンプユニットを適用した内包液の供給態様について説明する。
【実施例】
【0020】
まずカプセル剤Aについて説明する。カプセル剤Aは、例えば図6に示すように、完成状態では主にゼラチン等から成る外皮部Gと、これにより包み込まれる材料液(以下、内包液Nとする)とを具えて成るものである。
外皮部Gは、例えば対向的に供給された一対の外皮シートSが最中状に拝み合わせ状態に融着されて成るものである。この外皮部Gとしては上述したようにゼラチンを主要素材とするのが一般的であるが、この他にもグミや澱粉等を主要素材とすることも可能である。
また内包液Nとしては、従来と同様に、医薬品、栄養剤、健康食品エキス、調味料などを用いることができるが、本発明では、内包液Nが外部に漏出しないシール構造を採るため、作業者の皮膚等に直接付着した場合に害になるような材料、例えば農薬や肥料あるいは土壌改良剤なども適用することができ、これが大きな特徴の一つである。
また、内包液Nの収容状態(状況)としては、図示したように完全な液体状のほか、溶液中に別の粉粒体を適宜混入させた、言わば粉体含有懸濁液等の適用も可能である。なお本明細書中の「内包液」とは、このような状態のものも包含するものである。
【0021】
次に、このようなカプセル剤Aを製造する装置(カプセル製造装置1)について説明する。カプセル製造装置1は、一例として図1〜図3に示すように、溶融状態の外皮原料(例えばゼラチンを主成分とする)を冷却しながら、これを適宜の厚さや粘性等のシート状に形成するシート成形部2と、成形した外皮シートSによって内包液Nを包み込み、カプセル状に形成するカプセル成形部3と、外皮シートSをカプセル状に成形する際、外皮シートSに対して内包液Nを送り込む内包液供給部4と、完成製品としてのカプセル剤Aを取り出すカプセル取出部5とを具え、これら各部材がフレームFに対し組み付けられて成るものである。以下、各成形部について説明する。
【0022】
まずシート成形部2について説明する。このものは、外皮原料から外皮シートSを得る部位であり、一例として左右一対のシート成形機が、カプセル成形部3を挟むように設けられて成るものである。このように本実施例では、これら二基のシート成形機によって成形された二枚の外皮シートSを、カプセル成形部3に対して拝み合わせ状態に供給するものである。もちろん、シート成形部2は、必ずしもこのような形態に限定されるものではなく、例えば一基のシート成形機によって構成することも可能であり、この場合には、一基のシート成形機によって成形された一枚の外皮シートSを、カプセル成形部3に至らせる間に二枚に切断し、カプセル成形部3の両側から対向的に供給する形態が採り得る。
【0023】
そして前記シート成形部2の上方等には、溶融した外皮原料を収納するための原料タンク(図示省略)を設けるとともに、この原料タンクから供給ホース10を引き出すものである。なお、原料タンク内には外皮原料の溶融状態を確保するためのヒータを設けるものであり、タンク内において溶融状態となった外皮原料は、供給ホース10を介してスプレダーボックス11に供給される。その後、外皮原料は、スプレダーボックス11の下方に設けられたキャスティングドラム12に送り込まれ、ここで適宜の温度に冷却されながら適宜の厚さや粘性を有するシート状に成形され、カプセル成形部3に送り込まれる。
【0024】
以上述べた部位がシート成形部2であり、この後、外皮シートSが供給されて行く側にカプセル成形部3が設けられるものであって、両成形部を中継するようにフィードロール13が設けられる。すなわちキャスティングドラム12を巡って冷却された外皮シートSは、複数のフィードロール13の間をジグザグ状に通過しながらカプセル成形部3に投入される。この際、フィードロール13の近傍にはカプセル成形部3に投入される外皮シートSの厚さを計測する厚さセンサを設けることが可能である。
【0025】
次にカプセル成形部3について説明する。このものは、前記外皮シートSからカプセル化を図る部位であり、一例として図4、図5に示すようにダイロールフレーム17に対し一対のダイロール18を設けて成るダイヘッド16を主要部材として構成される。この一対のダイロール18は、一方が固定され、他方がこの固定されたダイロール18に対し接近・離反自在に構成されるものであって、両者を区別して示す必要がある場合には、固定された方を固定側ダイロール18A、接近・離反自在の方を可調側ダイロール18Bとして区別する。
また各ダイロール18には、その表面に適宜の形状の成形突起19が形成されるものであって、例えば、ほぼ紡錘状を呈するカプセル剤Aを成形する場合には、中央部が凹陥した長円状の成形突起19が形成される。そして一対のダイロール18は、互いの成形突起19をほぼ一致させる接合状態で回転し合うことにより、外皮シートSをタイミング良く突き合わせ、カプセル周囲の縫合(接合)を行うものである。
【0026】
なお本実施例では、外皮部Gに内包する材料(薬剤)が液体状(内包液N)であるため、内包液Nを外皮シートSに向けて送り込む際の噴射圧力が外皮シートSを副次的に膨張させ得るものである。このため、外皮シートSの縫合に合わせて、適宜のタイミングで内包液Nを噴出することにより、内包液Nを受け入れるポケット部Pが形成される。もちろん、内包液Nを注入する前の段階で、外皮シートSにポケット部Pを形成したい場合には、例えば図6に併せ示すように、各成形突起19の内周部(底部)に吸引孔20を形成することも可能である。すなわち、その場合には、吸引孔20からの吸い込みにより、供給されてくる外皮シートSを積極的に吸引し、内包液Nを受け入れるポケット部Pを湾曲形成するものである。なお、ポケット部Pを積極的に形成する他の形態としては、例えば内包液Nを供給する以前の段階で、外皮シートSにエンボス加工等を行うことによってポケット部Pを形成することも可能である。
【0027】
ここで左右のダイロール18A、18Bの接触圧力の調整機構について説明する。可調側ダイロール18Bの軸受部29は、一例として図4、図5に併せて示すように、ダイロールフレーム17に対して他の固定側ダイロール18A側に摺動自在に形成されるものであって、この軸受部29に対して押圧用の前後一対の板バネ30・31が作用するように構成されている。すなわち一対の板バネ30・31は中央が突出した中央接触部32によって互いに接触し合い、且つ軸受部29に近い側の板バネ30が、その両端を軸受部29に接触させることにより軸受部29を固定側ダイロール18A側に押し込むように作用している。
【0028】
そして他方の板バネ31の両端には調整プッシュロッド33が当接するものであって、この調整プッシュロッド33はダイロールフレーム17に対し螺合するように構成されており、その操作端に調整ダイヤル34を有し、この調整プッシュロッド33の捻じ込みをきつくした場合に、より強い接触圧が得られるように構成される。
また、前記一対のダイロール18を含むカプセル成形部3には、ダイロール18の周方向の位置ズレの発生を検知する位置ズレ検出機構を設けることが可能である。
【0029】
次に内包液供給部4について説明する。このものは、カプセル化される接合中の外皮シートSに対して、内包液Nを適量供給(噴射)するものであり、その供給タイミングは、一対のダイロール18の突き合わせ作用によって、外皮シートSの縫合がされ始めてから縫合が完了するまでの間に行われる。なお、内包液Nの供給時には、上述したように、その噴射圧力によって、外皮シートSを成形突起19の内周面になじむように膨張させ得るものである。
【0030】
内包液供給部4は、一例として図1〜図3及び図7に示すように、カプセル成形部3の上方に原液ホッパ37を具えて成り、この内部に内包液Nが貯留される。そして原液ホッパ37のすぐ下方に、本発明のポンプユニット38が設けられるものである。ポンプユニット38は、プランジャーピン52等が多数組み合わされて成るプランジャーポンプ(ピストンポンプ)の構造を採るものであり、複数の経路から所定のタイミングや圧力等で内包液Nを吐出し、デリバリーパイプ39を経由して、内包液ノズル40から外皮シートSに噴射するものである。なお、内包液ノズル40は、その先端がダイロール18の間に充分に入り込む突出状態に形成され、外皮シートSの縫合に合わせて、タイミング良く内包液Nの供給が行えるように形成されている。
【0031】
またカプセル剤Aの外周を正確且つ効率的に縫合するには、既に述べたように、ダイロール18における左右の成形突起19同士を、ほぼ合致させるように、ダイヘッド16の位置合わせ設定を行うものである。このため内包液ノズル40とダイロール18とには、位置合わせのためのタイミングマーク41が付与されている。具体的には、図5に併せ示すように、内包液ノズル40においては、窄まり状の先端部付近に直線状のタイミングマーク41が形成され、ダイロール18においては、周縁部に放射線状のタイミングマーク41が複数形成されている。そしてダイロール18の位置合わせを行うにあたっては、これらのタイミングマーク41をほぼ合致させるように、双方のダイロール18をインチング(寸動)等させて、位置合わせを行うものである。
【0032】
次に、本発明のポンプユニット38について説明する。ポンプユニット38は、上述したように内包液Nを原液ホッパ37から適量取り出して、これを内包液ノズル40(外皮シートS)に向けて供給(圧送)するものであり、一例として図7に示すように、本体ブロック50を主要部材として成る。この本体ブロック50には、例えば内部に左右一対のポンプ室51が形成され、各ポンプ室51内に設けられたプランジャーピン52が往復動することにより(これを左右方向の往復動とする)、各ポンプ室51において内包液Nの計量と送出(吐出)とが交互に行われるものである。すなわち、ポンプ室51内においてプランジャーピン52が抜き方向に動く往動行程において、カプセル剤Aに収容する一個分の内包液Nがポンプ室51内に充填・計量され、その後、プランジャーピン52が押し込み方向に動く復動行程において、前記内包液N(直前にポンプ室51内に充填・計量されたもの)が内包液ノズル40に向けて適量送出されるものである。
なお、本体ブロック50の左右に対向的に形成されるポンプ室51を左右で区別する必要がある場合には、便宜上、図10、図11において向かって右側のものをポンプ室51A、左側のものをポンプ室51Bとする。また、本実施例では、左右一対のポンプ室51が五セット、つまり計十室のポンプ室51が形成されている。
【0033】
以下、上記ポンプ室51について更に説明する。左右の各ポンプ室51には、原液ホッパ37から内包液Nを取り込むための導入路R1が、本体ブロック50の中央寄りの位置に形成されるとともに、各導入路R1の外側左右位置に吐出路R2が形成されるものであり、この吐出路R2は、ポンプ室51内で充填・計量した内包液Nを内包液ノズル40に向けて送り出すための経路である(最終的には上記デリバリーパイプ39により内包液ノズル40に供給される)。
また、上述した各ポンプ室51による内包液Nの充填(計量)と送出とは、左右一対のポンプ室51において交互に行われる。すなわち、右側のポンプ室51Aから内包液Nの送出を行っている際には、左側のポンプ室51Bでは、その直後に送出する内包液Nの計量が行われる。また、これと同様に、左側のポンプ室51Bから内包液Nの送出を行っている際には、右側のポンプ室51Aでは、その直後に送出する内包液Nの計量が行われる。このため左右の導入路R1と吐出路R2とは、適宜のタイミングで開閉が切り替えられ、接続/非接続が的確に制御される。
【0034】
ここで、左右のポンプ室51における導入路R1と吐出路R2とを区別する必要がある場合には、ポンプ室51と同様に末尾符号A、Bを付して区別するものであり、具体的には右側のポンプ室51Aのものを各々、導入路R1A、吐出路R2Aとし、左側のポンプ室51Bのものを各々、導入路R1B、吐出路R2Bとする。
またプランジャーピン52を左右で区別する場合にも、右側のポンプ室51A内で駆動するものを54A、左側のポンプ室51B内で駆動するものを54Bとする。
更に前記デリバリーパイプ39を左右で区別する場合にも、右側のポンプ室51Aに接続されるものを39A、左側のポンプ室51Bに接続されるものを39Bとする。
【0035】
またプランジャーピン52は、ポンプ室51の外部に突出するように形成された端部側において、シフタ53による駆動を受けるものであり、これにより左右一対のプランジャーピン52が交互にタイミング良く往復動するように構成されており、以下、このシフタ53について説明する。
シフタ53は、一例として図9に示すように、左右一対のプランジャーピン52を保持する保持体54と、これを駆動するモータMとを具えて成り、モータMの回転を、カムやクランク機構等によって左右方向の往復運動に変換して保持体54に伝達することで、左右一対のプランジャーピン52を一体的に交互に往復動させている。
【0036】
このようなプランジャーピン52の往復動に伴い、ポンプ室51の導入路R1と吐出路R2とが適切なタイミングで開閉されるものであり、これを制御する機構が、本体ブロック50の上方に設けられるシャッター機構60であり、本発明では、このシャッター機構60として、ピストン62をスライド孔内において往復動自在に支持して成るシリンダータイプの構成を採ることが大きな特徴の一つである。
すなわち、シャッター機構60は、一例として図7に示すように、直方体状を成すシリンダーブロック61と、このブロックに形成されたスライド孔61H内で往復動するピストン62と(本明細書ではこれを前後方向の往復動または前後方向の往復スライドとする)、このピストン62を前後動させるカム63とを具えて成るものである。
なお、本実施例では、本体ブロック50において、左右一対でポンプ室51が形成されることから、ピストン62も左右一対で設けられるものであり、これらを区別したい場合には、右側のポンプ室51Aに作用するピストンを62Aとし、左側のポンプ室51Bに作用するピストンを62Bとするものである。また、本実施例では、ピストン62を一例として円柱状(円筒状)に形成し、これを軸方向に前後スライドさせるものである。
【0037】
そして、シリンダーブロック61(スライド孔61H)には、本体ブロック50(ポンプ室51)と同様に導入路R1と吐出路R2とが形成されるものであり、このためこれら導入路R1と吐出路R2とが、各ポンプ室51の長手方向(プランジャーピン52が往復動する軸線上)に沿って形成される(導入路R1が中央寄り、吐出路R2が外寄り)。従って、シリンダーブロック61及び本体ブロック50については、一つのポンプ室51に作用する導入路R1と吐出路R2とが、前後方向で見た場合に同じ奥行き位置に形成されるものである。
一方、ピストン62には、一例として図8に示すように、一つのポンプ室51(プランジャーピン52)に作用する導入路R1と吐出路R2とが奥行き方向において互い違い状態に形成される。しかも、左右のピストン62A・62Bを比較すると、右側のピストン62Aの導入路R1Aがポンプ室51Aの導入路R1Aと接続される際には、左側のピストン62Bの吐出路R2Bがポンプ室51Bの吐出路R2Bと接続するように形成されている。また、右側のピストン62Aの吐出路R2Aがポンプ室51Aの吐出路R2Aと接続される際には、左側のピストン62Bの導入路R1Bがポンプ室51Bの導入路R1Bと接続するように形成されている。このような構成により、二本のピストン62を同時に前後動させることで、左右のポンプ室51に対し、導入路R1と吐出路R2とを交互に接続させるものである。
【0038】
なお、図7等に示す図中符号64は、シリンダーブロック61の上方に設けられる吐出ブロックであり、ここには、前記シリンダーブロック61の吐出路R2と常時接続される吐出路R2が形成され(吐出先端側が左右に向くように配置)、ここに前記デリバリーパイプ39が接続され、ここから計量後の内包液Nが内包液ノズル40に送られるものである。
また、吐出ブロック64の中央部は、貫通状態に開口されており(ここでは下方に向かって拡がるように形成されるものであり、これを開口部65とする)、ここにシリンダーブロック61の導入路R1が臨むように形成されている。つまり、この開口部65は、原液ホッパ37からの内包液Nを、ほぼ落下状態に通過させて、シリンダーブロック61の導入路R1へと案内するものである。
【0039】
また、二本のピストン62は、カム63が設けられる方の端部同士がボルト等によってピストン固定体67に取り付けられ、一体化が図られている。また、このピストン固定体67には、ローラ68が垂下状態に取り付けられ、これがカム63のカム溝63Gに嵌め込まれるものである。このような構成によって、ピストン固定体67が、カム63の回転によりカム溝63Gに従って前後動し、これに伴い二本のピストン62が一体となって同時に前後動するものである。
更に、二本のピストン62の他端側は、シリンダーブロック61から外部に張り出した部位が、双方共、左右方向に凹陥状に形成され、ここに回転防止体69がボルト等によって固定されるものである。これは、二本のピストン62が前後方向に繰り返し往復動を行うために、ピストン固定体67との固定(ボルトによる螺合等)が緩んだ場合には、ピストン62が単独で回転して(周方向)、シャッター穴(導入路R1や吐出路R2)がずれることが考えられるためであり、このような周方向のズレを防止するためである。
【0040】
そして、これら二本のピストン62は、上述したようにプランジャーピン52の左右の往復動と連動して、前後に往復動するように構成される。具体的には、例えば図9に示すように、まずモータMを駆動させることでシフタ53を作動させるものであり、これによりプランジャーピン52を左右方向に往復動させるものである。また、このモータMの駆動を適宜ギヤ等によってカム63に伝達することで、モータMの作動に連動させてカム63を回転させるものであり、これによりシフタ53の作動に合わせてシャッター機構60の二本のピストン62を適宜のタイミングで前後動させ得るものである。このようにして、プランジャーピン52の往復動(左右方向)と、ピストン62の往復動(前後動)との連動を実現するものであり、二本のピストン62に形成された導入路R1と吐出路R2の開閉(接続/非接続)を的確に制御するものである。
【0041】
次に、このようなシャッター機構60の作動状況(前後動状態)を、プランジャーピン52の作動状況(左右動状態)と併せて更に詳細に説明する(図10、図11参照)。なお、図10、図11における黒丸は、シリンダーブロック61、ピストン62、本体ブロック50に形成された導入路R1または吐出路R2が接続された状態(連通状態)を示し、白丸は、この接続が断たれた状態を示している。
【0042】
例えば、図10は、カム63の回転によりカム溝63Gに嵌まったローラ68ひいてはピストン62が全体的に手前側(前方側)に位置した状態である。このとき、ポンプ室51A側では、本体ブロック50、シリンダーブロック61、ピストン62の各部材に形成された導入路R1Aが上下方向で合致して接続される一方、ポンプ室51B側では、各部材に形成された吐出路R2Bが上下方向で合致して接続される。また、上記ピストン62における導入路R1・吐出路R2の配置構造(互い違いの配置)により、ポンプ室51A側では、ピストン62の吐出路R2Bがずれるため、吐出路R2Aとして接続が断たれた状態となり(非接続状態)、またポンプ室51B側ではピストン62の導入路R1Bがずれるため、導入路R1Bの接続が断たれた状態となる(非接続状態)。
また、このとき左右のプランジャーピン52の位置(状況)について述べると、上記モータMによって駆動されるシフタ53の作用により、プランジャーピン52Aは、ポンプ室51A内において抜き方向に引かれた状態となり、プランジャーピン52Bは、ポンプ室51B内において押し込まれた状態となっている。
【0043】
その後、カム63が回転し、カム溝63Gに嵌まったローラ68ひいてはピストン62が全体的に装置奥側(後方側)に位置した状態が、図11に示した状態である。この状態では、上述した状況が逆になり、ポンプ室51A側では、各部材に形成された吐出路R2Aが上下方向で合致して接続される一方、ポンプ室51B側では、各部材に形成された導入路R1Bが上下方向で合致して接続状態となる。このとき、もちろん上記ピストン62における導入路R1・吐出路R2の互い違いの配置により、ポンプ室51A側では、導入路R1Aの接続が断たれた状態となり、またポンプ室51B側では、吐出路R2Bの接続が断たれた状態となる。
また、このとき左右のプランジャーピン52の位置(状況)について述べると、上記モータMによって駆動されるシフタ53の作用により、プランジャーピン52Aは、ポンプ室51A内において押し込まれた状態となり、プランジャーピン52Bは、ポンプ室51B内において抜き方向に引かれた状態となっている。
このように、プランジャーピン52の左右方向の往復動と、これに直交するピストン62の前後方向の往復スライドとが連動して行われることによって、左右のポンプ室51から交互に内包液Nが送り出され、結果として左右いずれかのポンプ室51から絶えず適量の内包液Nが内包液ノズル40に供給されるものである。
【0044】
以上述べたように、本発明では、シリンダーブロック61のスライド孔61H内でピストン62を前後動させるものであり、スライド孔61Hには(シリンダーブロック61とピストン62との両部材の間には)ピストン62の両端位置において、ピストン62に対し外嵌め状態にシール部材を設けるものである。このシール部材は、ピストン62のスライド面たるスライド孔61Hから内包液Nが外部に漏出することを防止するためのものであり、一例として図8に示すように、Vリングシール72が適用される。
このVリングシール72は、幾つかのVリング要素72aを重ね、これをパッキン押さえ73で締め付けて取り付けられるものである。因みに、Vリング要素72aは、通常、その前後がオス型とメス型のアダプターADにより挟持されて取り付けられる。なお、このようなVリングシール72を設けるため、ピストン62が前後動する際には、Vリングシール72の内側に摺接する形態となる。また、Vリングシール72は、Vリング要素72aを数枚重ねて使用するのが一般的であり、その分、ピストン62の摺動抵抗(摩擦抵抗)も大きくなりやすいが、この摩擦によって、ピストン62の往復動が安定化する効果もあり、言わば一種のフリクションダンパーとしての作用を担うとも言える。
【0045】
因みに、従来は、シャッター部材が平面式スライドであったため、そのままでは、このような高いレベルでのシール性は獲得し難いものであった。そして、平面式スライドでは、内包液Nがスライド面から漏れてしまうため、本実施例では、ピストン62を円柱状(円筒状)に形成し、且つその両端位置にリングタイプのシール材(パッキン)を設け、シャッター機構60のスライド面において高いシール性を獲得したものである。
なお、内包液Nの外部への漏れ防止をより一層確実にするためには、スライド面ではないものの、本体ブロック50とシリンダーブロック61との間、あるいはシリンダーブロック61と吐出ブロック64との間に、平面パッキンとしてのガスケットを挟み込み、この合わせ面からの液漏れも防止することが好ましい。
【0046】
次にダイロール18の下方において、成形後の(カプセル化を終えた)カプセル剤Aを取り出すカプセル取出部5について説明する。成形後のカプセル剤Aは、ダイロール18の成形突起19に嵌まり込むことが多いため、このようなカプセル剤Aを、ダイロール18に接触するように設けた掻取ブラシ44で掻き落とすとともに、掻き落としたカプセル剤Aをダイロール18に沿うように設けた一対の前送コンベヤ45によって、装置前面に搬送して取り出すものである(図1、図6参照)。また一対の前送コンベヤ45の間には、一例として図1、図3に示すように、カプセル剤Aが打ち抜かれた後のブランクシートS′を、両側から挟み込み、そのまま下方に送り込む、フリーローラ46(挟み込み幅、調節自在)を設けるものである。なおこのフリーローラ46は、カプセル剤AがブランクシートS′にも残留することを考慮して、ブランクシートS′上のとどまったカプセル剤Aをどちらかの前送コンベヤ45上に排出し得る構成であることが好ましい。またカプセル剤Aは、前送コンベヤ45によって装置前面まで搬送された後、更に他のコンベヤ47に移載等され、適宜の部位に搬送され得る。
【0047】
以上述べたように、本実施例ではコンベヤ搬送によってゼラチンカプセルを取り出すようにしたが、必ずしもこの形態を採る必要はなく、例えばダイロール18の下方から装置前面に傾斜状態に設けたトラフ(シュート)によって、カプセル剤Aを滑落させて、取り出すことも可能である。
【0048】
本発明のポンプユニット38を適用したカプセル製造装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、ポンプユニット38による内包液Nの供給態様について、次の二つの場合に分けて説明する。
(1)図10の状態
この状態は、上述したように、ピストン62が手前側に位置し、ポンプ室51A側では、ここに押し込まれていたプランジャーピン52Aが抜き方向に引かれた状態であり、各部材の導入路R1Aのみが上下にわたって接続された状態となっている。このためポンプ室51Aでは、プランジャーピン52Aの移動量分だけ、導入路R1Aから内包液Nが充填され、実質的に次回供給分の内包液Nの計量が行われる。
また、もう一方のポンプ室51B側では、プランジャーピン52Bがポンプ室51B内に押し込まれた状態であり、各部材の吐出路R2Bのみが上下にわたって接続された状態となっている。このためポンプ室51Bでは、室内に充填されていた内包液Nが、吐出路R2Bからデリバリーパイプ39B、内包液ノズル40を経て、外皮シートSに供給されるものである。
【0049】
(2)図11の状態
一方、図11の状態は、上述したように、ピストン62が奥側に位置し、ポンプ室51A側では、プランジャーピン52Aがポンプ室51A内に押し込まれた状態であり、各部材の吐出路R2Aのみが上下にわたって接続された状態である。このためポンプ室51A側では、室内に充填されていた内包液Nが、吐出路R2Aからデリバリーパイプ39A、内包液ノズル40を経て、外皮シートSに供給されるものである。
また、もう一方のポンプ室51B側では、ここに押し込まれていたプランジャーピン52Bが抜き方向に引かれた状態であり、各部材の導入路R1Bのみが上下にわたって接続された状態である。このためポンプ室51B側では、プランジャーピン52Bの移動量分だけ、導入路R1Bから内包液Nが充填され、実質的に次回供給分の内包液Nの計量が行われる。
【0050】
このようにポンプユニット38は、上述した状態を順次繰り返すものであり、これにより、ポンプ室51A・51Bから交互に内包液Nが噴射(送出)されるものであり、結果的に左右いずれかのポンプ室51A・51Bから常に内包液Nの適量供給が行われるものである。この際、本実施例では、前後動するピストン62の両端部分にVリングシール72を設けているため、ピストン62の表面やスライド孔61Hの内面に付着した内包液Nが、スライド面から外部に漏出してしまうことがないものである。このため、直接、人の肌に付着した場合には害となる農薬や肥料あるいは土壌改良剤といった材料液であっても内包液Nとして適用できるものであり、このような内包液Nを内包したカプセル剤Aを能率的に製造できるものである。
また、ピストン62の前後動においては、ピストン62の外周がVリングシール72の内周面と擦れ合う摺動形態であるため、ピストン62の前後動が安定して行えるものであり、これはVリングシール72が一種のフクションダンパーもしくはブレーキ様の作用を担うためと考えられる。
【0051】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。すなわち先に述べた実施例はシャッター機構60におけるスライド部材(ピストン62)を円柱状(円筒状)に形成しており、これは市場に流通しているシール部材としてリング状のパッキンが標準的であり、実用性を重視し、採用しやすい構造を目的としたためである(とりわけVリングシール72は、同心円状のものが標準的)。
しかし、スライド部材(ピストン62)には、導入路R1と吐出路R2とを上下方向に(鉛直方向に)形成すること等から、スライド部材の断面形状としては、やや横長の長円状に形成すれば、導入路R1と吐出路R2とが形成し易いという利点が挙げられる。また、このような横長の長円状断面であれば、ピストン62が単独で周方向に回転(軸回り)してしまうこともなく、回転防止体69も削除できるものである。従って、ピストン62の断面形状としては、必ずしも円柱状(円筒状)に限定されるものではなく、ピストン62の断面形状に応じたリングパッキンを設けることを前提に、種々の断面形状のスライド部材が採り得、特に上述した横長の長円状断面は実現性のある形態である。なお、特許請求の範囲に記載した「シリンダータイプ」とは、このようにピストン62の断面形状が必ずしも円形に限定されないこと、つまりピストン62の全体形状としては円柱状(円筒状)に限定されないことを意味している。
【0052】
また、先に述べた基本の実施例では、ピストン62を二本用いており、これ自体、能率的にカプセル剤Aが製造できる点で極めて有効である。すなわち、基本の実施例では、左右の各ポンプ室51A・ポンプ室51Bから交互に内包液Nを定量送出するため、結果的に、常に内包液ノズル40に内包液Nの供給を行っていることになり、カプセル剤Aが能率的(合理的)に製造できるものである。
しかしながら、本発明の大きな特徴は、シャッター機構60におけるスライド面(スライド孔61H)からの内包液Nの外部漏出を防止するものであるため、計量と送出とを間欠的に行っても差し支えない場合(それほど高い生産効率が要求されない場合)には、ポンプ室51及びをピストン62を一つにして(左右いずれかにして)、一つのポンプ室51から内包液Nの計量と送出を間欠的に行うようにしても構わない。この場合、ポンプ室51が左右いずれか一方であるため、当然、ポンプ室51で充填・計量を行っている際には送出が行えず、また逆にポンプ室51から内包液Nを適量送出している際には、充填・計量が行えないものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、カプセル剤を製造するにあたり、内包液として農薬や肥料あるいは土壌改良剤など直接、人の肌に付着した場合に害となる材料液を内包したい場合に適するが、通常の医薬成分や保健成分等を内包する場合など、あらゆるカプセル剤を製造する際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 カプセル製造装置
2 シート成形部
3 カプセル成形部
4 内包液供給部
5 カプセル取出部
2 シート成形部
10 供給ホース
11 スプレダーボックス
12 キャスティングドラム
13 フィードロール
3 カプセル成形部
16 ダイヘッド
17 ダイロールフレーム
18 ダイロール
18A 固定側ダイロール
18B 可調側ダイロール
19 成形突起
20 吸引孔
29 軸受部
30 板バネ(ダイロール側)
31 板バネ(プッシュロッド側)
32 中央接触部
33 調整プッシュロッド
34 調整ダイヤル
4 内包液供給部
37 原液ホッパ
38 ポンプユニット
39 デリバリーパイプ
39A デリバリーパイプ(右)
39B デリバリーパイプ(左)
40 内包液ノズル
41 タイミングマーク
5 カプセル取出部
44 掻取ブラシ
45 前送コンベヤ
46 フリーローラ
47 コンベヤ
38 ポンプユニット
50 本体ブロック
51 ポンプ室
51A ポンプ室(右)
51B ポンプ室(左)
52 プランジャーピン
52A プランジャーピン(右)
52B プランジャーピン(左)
53 シフタ
54 保持体
60 シャッター機構
61 シリンダーブロック
61H スライド孔
62 ピストン
63 カム
63G カム溝
64 吐出ブロック
65 開口部
67 ピストン固定体
68 ローラ
69 回転防止体
72 Vリングシール
72a Vリング要素
73 パッキン押さえ
R1 導入路
R1A 導入路(右)
R1B 導入路(左)
R2 吐出路
R2A 吐出路(右)
R2B 吐出路(左)
A カプセル剤
N 内包液
G 外皮部
S 外皮シート
S′ ブランクシート
M モータ
P ポケット部
F フレーム
AD アダプター
SS スライドシャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内包液を外皮部によって内包状態に被覆して成るカプセル剤を製造する装置に組み込まれ、
一または複数のポンプ室を有する本体ブロックと、
スライド部材を往復動させて成るシャッター機構とを具え、
シャッター機構によるスライド部材の位置切り替えによって、ポンプ室に適量の内包液を充填・計量するようにし、また該ポンプ室に充填・計量した内包液をここからカプセル化を図る部位に送り出すようにした装置であって、
前記シャッター機構には、スライド孔内においてピストンを往復動自在に支持して成るシリンダータイプの機構が適用され、
このピストンと前記本体ブロックとには、ポンプ室に内包液を充填するための導入路と、該ポンプ室に充填された内包液をポンプ室から送り出すための吐出路とが形成されるものであり、
また、ピストンの導入路及び吐出路は、本体ブロックとピストンとの導入路が接続された状態で、ピストンの吐出路が本体ブロックの吐出路からずれ、非接続となる位置に形成される一方、本体ブロックとピストンとの吐出路が接続された際には、ピストンの導入路が本体ブロックの導入路からずれ、非接続となる位置に形成されるものであり、
また前記シャッター機構におけるスライド孔には、ピストンのほぼ両端位置に、ピストンに対しシール部材が外嵌め状態に設けられ、ピストンはシール部材の内側に摺接しながら往復動するものであり、
かかる構成によりピストンのスライド面からの内包液の外部漏出を防止するようにしたことを特徴とする、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニット。
【請求項2】
前記シャッター機構は、ピストン及びスライド孔が、円形の断面形状に形成され、該ピストンを軸方向に往復動するように形成されるものであり、
また該ピストンの両端部に設けられるシール部材は、複数のVリング要素が重ね合わせて取り付けられるVリングシールであることを特徴とする請求項1記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニット。
【請求項3】
前記ポンプ室及びピストンは、左右一対となって設けられるものであり、
また左右いずれかのポンプ室側において導入路が接続され且つ吐出路の接続が断たれた際には、もう一方のポンプ室側において吐出路が接続され且つ導入路の接続が断たれるように左右のピストンの導入路と吐出路とが形成されるものであり、
前記各ポンプ室から内包液を送出するにあたっては、左右のピストンを同時に往復動させることにより、左右のポンプ室から交互に内包液の定量送出を行うようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニット。
【請求項4】
前記二本の円柱状のピストンには、このピストンを往復動自在に支持するスライド孔から張り出す外部において、回転防止体が取り付けられ、円柱状のピストンの回転を防止するようにしたことを特徴とする請求項3記載の、カプセル製造装置における内包液の供給用ポンプユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−268910(P2010−268910A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122229(P2009−122229)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(594069580)株式会社三協 (13)
【Fターム(参考)】