説明

カプラー連結具を備えた透析用カプラー、および該カプラーを使用した血液透析装置

【課題】カプラーを液密状態で連結するためにOリングやボールベアリングなどの部品の装着を必要としないのでその内部構造が簡単で、また、洗浄の際に連結棒も必要としないので、細菌、エンドトキシンの混入や細菌繁殖の恐れが低減され、さらには簡易かつ確実に液密状態で連結可能な透析用カプラー、特に血液透析装置の配管系に使用するカプラーを提供簡易かつ確実な接続手段により一対のカプラー連結可能な手段を有する連結具付き透析用カプラーの提供。
【解決手段】1対のゴム状弾性を有する管状部材で構成され、かつ前記管状部材はそれぞれその内腔14に医療用被連結部材との密着部位、また、その接合側には下記カプラー連結具により液密に密着接合可能な軸方向垂直な平滑面15、16が形成されたカプラーと、前記1対のカプラー11,12上を摺動可能で、かつ、前記カプラーの軸方向垂直な平滑面15,16を液密に密着接合でき、かつ、はめ合わせ接合部位を互いに接合側に有する1対のカプラー連結具とを備えたことを特徴とする透析用カプラー。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透析用カプラー、特に血液透析装置の配管系に使用するカプラー(連結具)、例えば一方のカプラーに血液浄化器に設けたノズル、他方のカプラーにホースを接続し、これらの連結に使用するカプラー、および該カプラーを使用した血液透析装置に関する。本発明のカプラーは、該カプラーを血液透析装置の配管系に使用した場合、カプラーの内側(内腔)構造を単純化し、血液浄化器に取り付けたノズルと密な連結を可能にすると共に、ノズルとの接続を取り外し、該カプラーどうしを短絡接続した際に連結棒を要さずに、カプラー内腔のノズルと接続していた連結面が露出して洗浄可能となり、細菌等による汚染源となるデッドスペースを生じないようなカプラーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】血液の透析治療には、血液浄化器に取り付けられたノズルに、透析液供給・排出配管を接続するカプラーを装着した装置が使用され、透析液を血液浄化器に循環させて血液を浄化する。このノズルとはカプラーで接続されるが、従来のカプラー(英名Hansen connector)を例に取ると、カプラーの深部にゴム製のOリングが装着され、挿入されたノズルはその先端部分に設けた斜めに切れた突出部をOリングに密着させて漏水を防止する。
【0003】Oリングとノズルの密着は、例えばカプラーの外周に装着した円筒状のスライダーに内蔵しているバネの弾力により、スライダーがボールベアリング直上に移動し、複数のボールベアリングを外側から内側に圧迫し、これにより発生する中心軸に向かう力を、ノズルの斜めに切れた面から突出部前部の斜面に作用させて力の向きを90度変換することにより、ノズルを中心軸に沿ってOリングに向かわせノズル先端側の斜面に圧着するという一連の力学的連鎖機序によっている。
【0004】また、カプラーをノズルから取り外し、洗浄のために2つのカプラー自体を連結して流路を短絡させる場合は、カプラー両端に透析液出入ロポートに関する国際規格(ISO 8637)のノズルを有する連結棒を介在させて連結する。かかるカプラーの構造は、外周にセットした円筒状のスライダーを移動させるだけでカプラーをノズルより容易に脱着が可能な点が優れているが、カプラー内面にOリングやボールベアリングなどの部品の装着により複雑な内面構造となり、かつOリングより遠位部が直接洗浄流路に接しないため、流体力学的なデッドスペースになり、細菌汚染の温床となっている。
【0005】また、洗浄の際、カプラーを接続する連結棒がカプラー内部に挿入され、この部分が流路に曝されないために洗浄が行われないことも重大な汚染原因となっていた。例えば、慢性腎不全患者の治療のため実施する血液透析における透析液の供給配管の脱着に従来のカプラーを使用すると、汚染されたカプラー部から細菌やエンドトキシンが流路に実際に遊出しており、有害な作用を及ぼすと懸念されている。こうした従来のカプラーの汚染を解決するために、クリーンカプラー(日機装社)、抗菌カプラー(ニプロ社)、シリコンカプラー(東レ社)が考案されたが、ある程度の汚染抑止効果を認めるものの、設置後1〜数週間後より、微量のエンドトキシンの遊出が認められ、細菌学的な清浄度の維持にはなお完全であるとはいえない。すなわち、洗浄時カプラーの連結に連結棒を使用することは避けられず、連結棒と密着する部分の洗浄がなされないことに起因するといえる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明の目的は、カプラーを液密状態で連結するためにOリングやボールベアリングなどの部品の装着を必要としないのでその内部構造が簡単で、また、洗浄の際に連結棒も必要としないので、細菌、エンドトキシンの混入や細菌繁殖の恐れが低減され、さらには簡易かつ確実に液密状態で連結可能な透析用カプラー、特に血液透析装置の配管系に使用するカプラーを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第1は、1対のゴム状弾性を有する管状部材で構成され、かつ前記管状部材はそれぞれその内腔に医療用被連結部材との密着部位、また、その接合側には下記カプラー連結具により液密に密着接合可能な軸方向垂直な平滑面が形成されたカプラーと、前記1対のカプラー上を摺動かつ回転可能で、かつ、前記カプラーの軸方向垂直な平滑面を液密に密着接合できるはめ合わせ接合部位を互いに接合側に有する1対のカプラー連結具とを備えたことを特徴とする透析用カプラーにある。
【0008】本発明の第2は、カプラー連結具によりカプラーの軸方向垂直な平滑面を加圧、圧迫させた状態で液密に密着接合できる構造のものであることを特徴とする前記第1の透析用カプラーにある。
【0009】本発明の第3は、はめ合わせ接合部位の構造が、一対のカプラー連結具の一方は円周方向に突起した小突起部を有する軸方向に突出した少なくとも2個の突出部(A)を有するものであり、また、他方は前記小突起部に係止可能な小凹部が円周方向に形成された前記突出部(A)を嵌合できる凹部(B)を有するものであり、かつカプラー連結具によりカプラーの接合面を互いに加圧、圧迫させた状態で前記突出部(A)と前記凹部(B)が嵌合可能で、さらに該嵌合状態で前記小突出部と小凹部も係止可能なものであることを特徴とする前記第2の透析用カプラーにある。
【0010】本発明の第4は、小突起部と小凹部が円周方向にテーパー面を形成したものであることを特徴とする前記第3の透析用カプラーにある。
【0011】本発明の第5は、一方のカプラー連結具の突出部(A)と凹部(B)が管状部材(D)の上に形成され、一方のカプラー連結具の突出部(A)と他方の凹部(B)との嵌合および解除、ならびに前記小突起部と小凹部の係止凹部との係止および解除を前記管状部材(D)の外面上を摺動させて行うことができる構造のものであることを特徴とする前記第3または4の透析用カプラーにある。
【0012】本発明の第6は、連結具が、カプラーの軸方向垂直な平滑面を密着状態で固定、保持できる構造を有するものであることを特徴とする前記第1〜5の透析用カプラーにある。
【0013】本発明の第7は、連結具が、カプラーの軸方向垂直な平滑面を所定の位置で密着させることができる位置決め構造を有するものであることを特徴とする前記第6の透析用カプラーにある。
【0014】本発明の第8は、カプラー連結具がカプラーからの脱落を防止するストッパー部材を有することを特徴とする前記第1〜7の透析用カプラーにある。
【0015】本発明の第9は、配管系に前記第1〜8の透析用カプラーを使用したことを特徴とする血液透析装置にある。
【0016】カプラー同士の連結本発明の透析用カプラーは、ゴム状弾性を有する材質からなるものであるので、その特性を利用して、カプラー同士を接続する際に、まず、一対のカプラーの接合側に形成された軸方向垂直な平滑面を互いに対向させ、次に連結具を前記平滑面側に摺動させて、カプラーの前記平滑面を後方より加圧・圧迫し、前記平滑面を密着状態で連結具の互いのはめ合せ接合部位をはめ合せることにより、カプラーを液密に連結することができるので、従来技術のように、カプラーを液密に連結するために、Oリングやボールベアリングなどの部品の装着を必要としないので、カプラーの内面構造がより簡単となり、かつ液密に連結可能となる。上述のように本発明の透析用カプラーは、カプラー内面にOリングやボールベアリングなどの部品を装着しないので、カプラーの内面構造がより簡単となるとともに、Oリングより遠位部が細菌汚染の温床となることがない。また、本発明の透析用カプラーは、連結棒のような短絡プラグを使用することなく、循環回路を形成することができるので、短絡プラグの挿入に伴って起こり得る汚染の問題も低減される。
【0017】カプラーと被連結部材との連結本発明の透析用カプラーは、その内腔に医療用被連結部材との密着部位が形成されるが、カプラー自体がゴム状弾性を有する材質からなるものであるので、Oリングやボールベアリングなどの部品が不要であるため、医療用被連結部材とカプラーとを細菌繁殖の温床となるデッドスペースを存在させることなしに密着させることのできる密着部位を形成することができる。また、本発明の透析用カプラーは、上述のようにOリングやボールベアリングなどの部品を装着しないだけでなく、カプラー自体がゴム状弾性を有する材質からなるものであるので、その内腔に形成される内部構造をよりなだらかな段差のものとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態にかかる連結具付き透析用カプラーについて図1〜図3を参照しながら説明する。図1は、本実施形態にかかる透析用カプラーを示す正面図である。11,12はゴム状弾性を有するカプラーである。その材質は、例えばシリコンゴムや各種エラストマーが挙げられるが、特に透析液と物理的、化学的に作用しないシリコンゴムが好ましい。図1中の13は、連結具が摺動かつ回転可能な部位であり、14は血液浄化器に設けたノズルを嵌合することのできる内腔である。15および16は、本発明の特徴点の一つである連結具により密着接合可能な軸方向垂直な平滑面である。この軸方向垂直な平滑面15および16は、連結具の該平滑面側への摺動により液密状態を形成することのできる弾性、平滑性および面積が有れば良い。ゴム状弾性のカプラー11,12は軸方向垂直な平滑面15および16を含めて一体的に成形されたものが好ましいが、この平滑面15および16の部分だけを液密状態を形成するためにより好適な材料で形成されたものであっても良い。また、図1中の17は、カプラーの血液浄化器側あるいは連結ホース側から、13の部位に摺動かつ回転可能に挿入された連結具が抜け落ちるのを防止する連結具のストッパー部位である。
【0019】連結具図2は図1のカプラーの13の部位に摺動かつ回転可能に外嵌される連結具21、22をはめ合わせた状態の正面図である。図3は図2の連結具21、22のはめ合わせた状態を解除した状態を示す図である。前記図2と3において、一方のカプラー連結具21は、他方のカプラー連結具22の突起部27を嵌合できる凹部30を管状部材の外表面24上に一体的に形成したものである。前記凹部30のカプラー連結具22の突起部27が嵌入する入り口付近にはテーパー26が形成され、該テーパー26に対応して連結具22の突起部27の頂角部分にテーパー25が形成されている。このように、テーパー25と26を形成することにより、連結具21の凹部23と連結具22の突起部27の嵌合をより円滑に行うことができる。また、前記一方のカプラー連結具21の内腔には、他方の連結部材22の円筒状部材29の前面壁部33と共に軸方向垂直な平滑面15,16を密着状態で固定・保持でき、かつ該平滑面を所定の位置で密着させることができる壁部34が形成されている。さらに、前記壁部33と壁部34は、互いにその軸方向の位置を変化させることにより、平滑面15,16を密着状態で固定・保持できる位置を決める位置決め機能を奏することができる。
【0020】他方の連結具22は、上述のように一方のカプラー連結具21の凹部30と嵌合できる突起部27を有する管状部材であり、その内腔には前記壁部34とともにカプラーの平滑面を所定の位置で密着させることができる位置決め機能を有する前面壁部33を有する円筒状部材29が形成されており、上述のように、円筒状部材29の前面壁部33と前記壁部34によって、カプラーの軸方向垂直な平滑面を密着状態で固定・保持できるものである。
【0021】さらに、前記一方の連結具21の凹部30には小凹部28が形成され、また、他方の連結具22の突起部27には小突起部23が形成されており、前記小凹部28と小突起部23は、前記凹部30と突起部27を嵌合させた後、連結具21および/または連結具22の回転により係止させることができる。小突起部23と小凹部28の係止は連結具21と22により加圧、圧迫されたカプラーの弾性反発力により、連結具21と22を一層強固に係止することが可能である。前記小突起部23と小凹部28は、図3に示すように両者が接合する部位をテーパー形状31、32とすることにより、フラットな形状の場合に比較して、連結具の離脱への回動方向への力の抑制効果が生じ、連結具の「はずれ防止」により効果がある。
【0022】また、上述のように凹部30を管状部材の外表面24上に一体的に形成されているので、連結具21の凹部30と連結具22の突起部27の嵌合および小突起部23と小凹部28からなる係止を前記管状部材の外表面24上を摺動かつ回転させて行うことができるので、前記嵌合および係止をさらに円滑に行うことができ、かつ、前記嵌合および係止後のはめ合わせ状態が安定化したものとなる。連結具21、22を構成する材質は、カプラーとは異なり、より硬質なプラスチックが用いられる。
【0023】
【効果】カプラーを液密状態で連結するためにOリングやボールベアリングなどの部品の装着を必要としないのでその内部構造が簡単で、また、洗浄の際に連結棒も必要としないので、細菌、エンドトキシンの混入や細菌繁殖の恐れが低減され、さらには簡易かつ確実に液密状態で連結可能な透析用カプラー、特に血液透析装置の配管系に使用するカプラーを簡易かつ確実な接続手段により一対のカプラー連結可能な手段を有する連結具付き透析用カプラーが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】カプラーの一例の正面図である。
【図2】カプラーを連結具により連結した一例の正面図である。
【図3】カプラー連結具の一例の正面図である。
【符号の説明】
11 カプラー
12 カプラー
13 連結具が摺動する部位
14 内腔
15 軸方向垂直な平滑面
16 軸方向垂直な平滑面
17 ストッパー
21 連結具
22 連結具
23 連結具の小突起部
24 管状部材の外表面
25 テーパー部
26 25に対応するテーパー部
27 突起部
28 凹部30に形成された小凹部
29 円筒状部材
30 突起部27が嵌合される連結具21の凹部
31 小凹部28のテーパー部位
32 小突起部23のテーパー部位
33 円筒状部材29の前面壁部
34 連結具21の内腔に形成された壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 1対のゴム状弾性を有する管状部材で構成され、かつ前記管状部材はそれぞれその内腔に医療用被連結部材との密着部位、また、その接合側には下記カプラー連結具により液密に密着接合可能な軸方向垂直な平滑面が形成されたカプラーと、前記1対のカプラー上を摺動かつ回転可能で、かつ、前記カプラーの軸方向垂直な平滑面を液密に密着接合できるはめ合わせ接合部位を互いに接合側に有する1対のカプラー連結具とを備えたことを特徴とする透析用カプラー。
【請求項2】 カプラー連結具によりカプラーの軸方向垂直な平滑面を加圧、圧迫させた状態で液密に密着接合できる構造のものであることを特徴とする請求項1記載の透析用カプラー。
【請求項3】 はめ合わせ接合部位の構造が、一対のカプラー連結具の一方は円周方向に突起した小突起部を有する軸方向に突出した少なくとも2個の突出部(A)を有するものであり、また、他方は前記小突起部に係止可能な小凹部が円周方向に形成された前記突出部(A)を嵌合できる凹部(B)を有するものであり、かつカプラー連結具によりカプラーの接合面を互いに加圧、圧迫させた状態で前記突出部(A)と前記凹部(B)が嵌合可能で、さらに該嵌合状態で前記小突出部と小凹部も係止可能なものであることを特徴とする請求項2記載の透析用カプラー。
【請求項4】 小突起部と小凹部が円周方向にテーパー面を形成したものであることを特徴とする請求項3記載の透析用カプラー。
【請求項5】 一方のカプラー連結具の突出部(A)と凹部(B)が管状部材(D)の上に形成され、一方のカプラー連結具の突出部(A)と他方の凹部(B)との嵌合および解除、ならびに前記小突起部と小凹部の係止凹部との係止および解除を前記管状部材(D)の外面上を摺動させて行うことができる構造のものであることを特徴とする請求項3または4記載の透析用カプラー。
【請求項6】 カプラー連結具が、カプラーの軸方向垂直な平滑面を密着状態で固定、保持できる構造を有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透析用カプラー。
【請求項7】 カプラー連結具が、カプラーの軸方向垂直な平滑面を所定の位置で密着させることができる位置決め構造を有するものであることを特徴とする請求項6記載の透析用カプラー。
【請求項8】 カプラー連結具が、カプラーからの脱落を防止するストッパー部材を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の透析用カプラー。
【請求項9】 配管系に請求項1〜8のいずれかに記載の透析用カプラーを使用したことを特徴とする血液透析装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2002−65846(P2002−65846A)
【公開日】平成14年3月5日(2002.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−84229(P2001−84229)
【出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(599120783)株式会社北九州バイオフィジックス研究所 (6)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】