説明

カプロラクトン派生の側鎖を含有するグルシジル(メタ)アクリレート粉末コーティング組成物

【課題】
本発明は、全ての性質を改良することによって、幅広い受け入れのグルシジル(メタ)アクリレート粉末コーティング組成物を提供することが目的である。
【解決手段】
構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(i)と、
【化15】



(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、
【化16】


(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
モノマー(i)及び(ii)以外の任意的なエチレン性不飽和モノマー(iii)とを共重合してから形成されるグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂(a)と、
硬化剤(b)とを備える硬化性粉末コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプロラクトン派生の側鎖を含有するグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした粉末コーティング樹脂に関する。カプロラクトン派生の側鎖を含有するグルシジル(メタ)アクリレート樹脂は、粉末コーティング組成物に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
粉末コーティングは1970年代から開発されてきている。粉末コーティングは揮発される溶剤を含まないため、環境に優しいと知られている。近年、樹脂、添加物及び設備を含む粉末コーティングに関する技術において、多大な改良がなされている。この環境に優しい本質及び粉末コーティング技術の進展のため、粉末コーティングの使用は、世界中で急速に伸びてきている。
【0003】
粉末コーティングシステムの一例としては、グルシジル(メタ)アクリレートをベースにした粉末コーティング(GMA粉末コーティングとして知られている)である。GMAをベースにした粉末コーティングに関する最初の特許(特許文献1)であると考えられるものが1973年に開示されて以来、GMAをベースにした粉末コーティングは30年間に亘って使用されている。GMA粉末コーティングシステムは、良好な滑らかさ、水晶のような透明度、化学的な耐性、高光沢性及び優れた戸外耐久性があるため好評である。実際に今までは、GMA粉末コーティングシステムは自動車全体透明な上塗り付与に選ばれた唯一の粉末コーティングシステムである。また、アルミ車輪のコーティング、戸外家具、庭園設備、照明設備及び広範囲な耐候性が要求される特定の工業応用にも幅広く使用されている。
【0004】
GMA粉末コーティングシステムの著しい長所にも関わらず、GMA粉末コーティングシステムには問題が存在している。これらの問題は、GMA粉末コーティングが、粉末コーティング工業における多数の塗料メーカー及び最終ユーザーに受け入られることを妨げている。GMA粉末コーティングの広範囲な受け入れを妨げる問題は、下記のGMA粉末コーティングの性質に関連するものを含む:
1)適合性が悪いため、GMA粉末コーティングは他の粉末コーティングシステム(特にポリエステル粉末コーティング類)に酷く悪影響を及ぼす。それによって、GMA粉末コーティングは、他の粉末コーティングシステムと共に同一の場所(或いは共に同じ設備)に使用されると、大きなクレーターを生じる。
2)GMA樹脂は低い顔料分散性を有する。
3)GMA粉末コーティングは他の粉末コーティングシステムより低い柔軟性を有する。
4)GMA粉末コーティングは、粉末の粉末への再被覆性に欠いている。この問題は、GMA粉末コーティングの自動車クリアコートへの応用の受け入れを阻害している。
【0005】
異物混合によって起こされたコーティングクレーターを減らす典型的な方法は、コーティング添加物の一つとして特定の流動制御剤を加えることである。この流動制御剤は、粉末の界面張力を減らし、粉末コーティングを外来異物混合の影響を受けにくくする。このような流動制御剤の使用における総合的な研究は特許文献2に記載されている。
【0006】
顔料分散性質を改良する一つの方法は、コーティング組成物により多くの極性官能基をもつ成分を導入することである。このような方法は、特許文献3、4及び5に記載されている。
【0007】
柔軟性(或いは耐衝撃性)を改良する方法は、いくつかの特許に記載されている。例えば、特許文献6には、エラストマーを衝撃改質剤として使用することが記載されている。特許文献7には、ポリアミドを用いて樹脂骨格にグラフトすることが記載されている。特許文献8には、ポリウレタンを含む混合物を用いることが記載されている。特許文献9には、コーティング製剤にカルポキシル官能基をもつアクリル系を導入することが記載されている。
しかしながら、GMA粉末コーティングの性質を改良する従来の方法は、一回につき一つの特性しか改良できず、改良は非常に制限されている。
【0008】
【特許文献1】米国特許第3752870号明細書
【特許文献2】米国特許第6013733号明細書
【特許文献3】米国特許第4988767号明細書
【特許文献4】米国特許第5098955号明細書
【特許文献5】米国特許第5202382号明細書
【特許文献6】米国特許第6359067号明細書
【特許文献7】米国特許第6479588号明細書
【特許文献8】米国特許第5596043号明細書
【特許文献9】米国特許第6025030号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明は、全ての性質が改良されたGMA粉末コーティングを製造し、より幅広く受け入れられるGMA粉末コーティングを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一つの形態において、本発明は硬化性粉末コーティング組成物に関する。この硬化性粉末コーティング組成物は、グルシジル(メタ)アクリレートをベースにした粉末コーティング樹脂(a)と硬化剤(b)とを備える。このグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした粉末コーティング樹脂は、下記の構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(i)と、
【化8】



(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
下記の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、
【化9】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
任意的に含まれる、モノマー(i)及び(ii)以外のエチレン性不飽和モノマー(iii)と、を共重合してから形成される。
【0011】
もう一つの形態において、本発明は粉末コーティング用のグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂に関する。この粉末コーティング用のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、上記構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(a)と、上記構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(b)と、モノマー(a)または(b)以外で任意的に含まれるエチレン性不飽和モノマー(c)とを備える。好ましくは、構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマーはグルシジル(メタ)アクリレート(R8はメチル基、R9はメチレンを表す)である。
【0012】
さらにもう一つの形態において、本発明はグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂を製造する方法に関する。この方法は、共重合媒体を含む有機溶媒において、重合イニシエーターの存在下、グルシジル(メタ)アクリレートと、以下の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーと、
【化10】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
グルシジル(メタ)アクリレート及びカプロラクトン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーと、を備えるモノマー混合物を共重合することによって、カプロラクトン派生の側鎖を有するグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂を製造することを含む。この樹脂は重量平均分子量3,000〜20,000、実測ガラス転移温度35〜70℃、エポキシ等量200〜1450を有する。好ましくは、エチレン性不飽和モノマーがメチル(メタ)アクリレート、スチレン、又はそれらの混合物である。
【0013】
さらにもう一つの形態において、本発明は熱硬化性粉末コーティングの製造方法に関する。この方法は、グルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂を合成することを含む。このグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂は、下記構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(i)と、
【化11】



(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
下記の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(ii)と、
【化12】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
モノマー(i)及び(ii)以外の任意的に含まれるエチレン性不飽和モノマー(iii)と、を共重合してからなる。
このグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂は、硬化剤が混合され熱硬化性粉末コーティング組成物になる。この熱硬化性粉末コーティング組成物は、基材に使用され、硬化後硬化性粉末コーティングを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[定義]
特に明記しない限り、以下の明細書及びクレームに用いられた用語は下記の意味を有する。
【0015】
「アルキル」は、1〜8個の炭素原子を有する一価の直鎖飽和炭化水素グループ、又は3〜8個の炭素原子を有する一価の枝分れ飽和炭化水素グループを意味する。実施例のアルキルグループは、例えばメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル等の様なグループを含むが、これらに限られるものではない。
【0016】
「低級アルキル」は、1〜4個の炭素原子を有する上記のアルキルグループを意味する。限られてなく、実施例の低級アルキルグループは例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル等の様なグループを含む。
【0017】
本発明に係る粉末コーティング用のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂(glycidyl (meth)acrylate based resins)は、グルシジル(メタ)アクリレートモノマー(a)と、上記構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(b)と、モノマー(a)又は(b)以外で任意に含まれるエチレン性不飽和モノマー(c)とを共重合することにより合成される。これらのグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、粉末コーティング組成物に用いられても良い。
【0018】
本発明においてカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーは、以下の構造式IIを有する:
【化13】



式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す。このカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーは構造式IIを有するモノマーの混合物を含有しても良い。
【0019】
カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーは商用的に、例えば、Dow Chemical Company(Midland, Michigan)からTone M-100TM、Tone M-101TM及びTone M-201TMとして、Sartomer(Exton, Pennsylvania)からSR-495TMとして、及びダイセル化学工業株式会社(日本大阪府堺市鉄砲町)からPlaccel FAとFMシリーズのモノマーとして入手できる。また別の方法では、カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーは、当業者に公知である反応条件に基づいて製造することができる。
【0020】
カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーをどのように合成するか(原材料、条件など)の簡単な説明を挿入するか又は文献を挙げて下さい。
【0021】
本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、その樹脂の総重量に対して重量パーセントで2〜30%、より好ましくは5〜20%のカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーを含む。樹脂においてカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーの量を変更することができ、使用されたこのモノマーの量を増加することによってこの樹脂の特定の性質を改良することができる。樹脂組成物におけるこのモノマーの量を増加させることは特定の性質を高めるとはいえ、量を増加させることは樹脂のTgを低下させる。樹脂の測定Tgが35℃より低くなると保存期間中に凝集が起こり易いため、樹脂のTgは35℃より高い、好ましくは40℃より高い温度であることが望ましい。従って、グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂に用いられたカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーの量は、樹脂Tgを35℃より高い温度に保つことができる程度のバランスに保たれる。好ましくは、樹脂組成物は、35℃〜70℃のTgを有する。
【0022】
本発明に係る粉末コーティング用のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、下記構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマーも含む
【化14】



式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す。構造式Iに定義された具体な化合物は、グルシジルアクリレート、グルシジル(メタ)アクリレート及び1,2−エポキシブチルアクリレートである。グルシジル(メタ)アクリレートモノマーは、構造式Iを有するモノマーの混合物を含有しても良い。好ましくは、構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマーは、グルシジル(メタ)アクリレート(R8がメチル、R9がメチレン)である。
【0023】
グルシジル(メタ)アクリレートモノマー、特にR8がメチル、R9がメチレン(CAS番号106-91-2)のグルシジル(メタ)アクリレート及びR8が水素、R9がメチレン(CAS番号106-90-1)のグルシジルアクリレートは、Dow Chemical Company(Midland, Michigan)、NOF株式会社(東京都渋谷区恵比寿)、三菱レイヨン株式会社(東京都港区港南)、三菱ガス化学株式会社(東京都千代田区丸の内)及びEaston Chemical Co.(Calvert City, NY)から商用的に入手できる。また別の方法では、グルシジル(メタ)アクリレートモノマーは、当業者に公知である反応条件に基づいて製造することができる。
【0024】
本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、樹脂の総重量に対して重量で10〜80%、より好ましくは20〜60%のグルシジル(メタ)アクリレートモノマーを含有する。樹脂においてグルシジル(メタ)アクリレートモノマーの量を変更することができ、前記のように樹脂組成物に使用されたカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーの量を増加させることによって使用されたこのモノマーの量を減少させると、樹脂の特定の性質を改良することができる。従って、この樹脂組成物に用いられたグルシジル(メタ)アクリレートモノマーとカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーの量は、樹脂Tgを35℃、好ましくは40℃より高い温度に保つことができる程度のバランスに保たれる。好ましくは、樹脂組成物は35℃〜70℃のTgを有する。
【0025】
グルシジル(メタ)アクリレートモノマーとカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーのほかに、グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂、及びそれ故にこの樹脂を含む粉末コーティング組成物は、グルシジル(メタ)アクリレートモノマーとカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー以外のエチレン性不飽和モノマーを任意的に含んでも良い。前記エチレン性不飽和モノマーはモノマーの混合物を含んでも良い。このエチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸モノマーのアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸モノマーのアルキルエステル類、ビニルモノマー類、アクリロニトリル類、アクリルアミド類、アクリル酸と(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類、不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類及びそれらの混合物から選択されても良い。
【0026】
例としては、前記のアクリル酸モノマーのアルキルエステル類及び(メタ)アクリル酸モノマーのアルキルエステル類は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、iso-ボルニルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ボルニル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物から選択されても良い。さらに例としては、前記のビニルモノマー類は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、ジビエルベンゼン、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、及びそれらの混合物から選択されても良い。アクリロニトリル類は、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを含む。アクリルアミド類は、例えば、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミドを含む。アクリル酸とメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類は、例えば、、β-ヒドロキシエチルアクリレート、b-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、及びそれらの混合物を含む。本発明に係るこれらのエチレン性不飽和モノマーは、U.S.パテントNo.4,042,645及び5,270,391に記載され、その全体的な内容は本発明の一部として本発明に組み込まれる。
【0027】
本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレートをベースにした樹脂は、樹脂の総重量に対して重量で0〜88%、より好ましくは40〜80%の前記以外のエチレン性不飽和モノマーを含有する。好ましい性質を有する粉末コーティングを提供するために、樹脂において前記以外のエチレン性不飽和モノマーの量を変更しても良い。
【0028】
本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレート(a)と、構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(b)とを含有し、更にモノマー(a)又は(b)以外の任意のエチレン性不飽和モノマー(c)とを任意的に含有する。前記モノマーを共重合することによって、該グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は製造される。モノマーを共重合して樹脂を製造することは、当業者に公知である反応条件に基づいて行うことができる。具体的な条件は、U.S.パテントNo.4,042,645、5,270,391、5,744,522及び6,479,588に記載され、その全体的な内容は本発明の一部として本発明に組み込まれる。
【0029】
例えば、共重合媒体を含む有機溶媒において、重合イニシエーターの存在下、構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレート(a)と、構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(b)と、モノマー(a)又は(b)以外で任意的に含有されるエチレン性不飽和モノマー(c)とを共重合して、カプロラクトン派生の側鎖を有する、グルシジル(メタ)アクリレートをベースとした樹脂を製造することができる。前記のグルシジル(メタ)アクリレート樹脂を形成することができる限り、共重合されるモノマーの添加及び重合開始の順序を変化させても良い。例えば、共重合される全てのモノマーを反応容器に添加し、それから重合を開始させても良い。又は、一部のモノマーを反応容器に添加して重合が始動し、適当な時間内に残りのモノマーを添加しても良い。前記のグルシジル(メタ)アクリレート樹脂を形成することができる限り、その残りのモノマーは一度に又は段階的にで添加しても良い。好ましくは、初めに共重合される全てのモノマーを反応容器に添加し、全部のモノマー原料に対する重合を開始させる。
【0030】
共重合反応に適当な有機溶媒は、例えば、キシレン、トルエン、酢酸ブチル等及びそれらの混合物を含む。適当な重合イニシエーターは遊離基を生成するものを含む。適当な重合イニシエーターは、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、それらの類似物及びそれらの混合物を含む。使用されるイニシエーター及び要求される樹脂分子量によって、重合イニシエーターは共重合されるモノマー総量の重量に対して約0.1〜10重量%の量にしても良い。共重合反応は、高温で、好ましくは80℃〜170℃で3〜6時間還流され、好ましくはモノマー混合物を連続添加されることにより行われる。この共重合反応は、窒素又はアルゴンのような不活性雰囲気下で行われても良い。
【0031】
重合後、必要ならば反応混合物は冷却され乾燥されてもろい樹脂を提供する。このもろい樹脂は、粉末のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂を提供するために粉砕されても良い。
【0032】
得られた本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は固体の共重合体である。この樹脂は、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定されたポリスチレン標準に対する重量平均分子量が約3,000〜20,000、好ましくは約4,000〜15,000を有する。より高い分子量は、好ましくない高い溶融粘度を有する共重合体を与える傾向がある。この点において、グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、ICIコーンプレート型粘度計を用いて測定された溶融粘度が150℃で約50〜700ポアズ、好ましくは約80〜150ポアズを有することが望ましい。さらに、このグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、実測ガラス転移温度が35〜70℃、好ましくは40〜65℃を有する。また、このグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、200〜1450、好ましくは250〜750のエポキシ当量を有する。
【0033】
本発明に係るカプロラクトン派生の側鎖を含有するグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂は、優れた性質を有する粉末コーティングを造る粉末コーティング組成物として使用しても良い。
【0034】
前記コーティング組成物及びプロラクトン派生の側鎖を含有するグルシジル(メタ)アクリレート系の樹脂を含む粉末コーティング組成物から粉末コーティングを製造する工程は、従来のグルシジル(メタ)アクリレート系の粉末コーティングと同じである。具体的な組成物及び条件は、U.S.パテントNo.5,270,416、5,407,747、5,710,214、5,939,195、6,077,608、6,277,917、6,359,067及び6,479,588に記載され、その全体的な内容は本発明の一部として本発明に組み込まれる。
【0035】
本発明に係る粉末コーティング組成物は、記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂および適当な硬化材料または硬化剤を備える。本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂に使用される適当な硬化剤は、従来のグルシジル(メタ)アクリレート粉末コーティングに使用される硬化剤である。これらの硬化剤は、当業者に公知である。適当な硬化剤は、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸無水物、ポリイソシアネート、及びそれらの混合物を含む。そのポリカルボン酸は、一分子毎に二個又は三個の酸性基を有する。無水物はこれらのポリカルボン酸から製造されても良い。好ましくは、前記硬化剤は固体のジカルボン酸である。適当な硬化剤は、1,12-ドデカン二酸(例えば、E.I. Dupont de Nemours, Willminton, DEから入手可能)及び1,3,4-ブタントリカルボキシ酸(1,3,4-Butanetricarboxylic acid)(日本東京三菱化学から入手可能)を含む。適当な硬化剤に関する記述は、U.S.パテントNo.5,270,416、5,407,747、6,077,608、6,277,917、6,359,067及び6,479,588に記載され、その全体的な内容は本発明の一部として本発明に組み込まれる。
【0036】
粉末コーティング組成物における硬化剤は、応用された粉末コーティングを有効的に硬化する量を有する。この量は、樹脂のエポキシ当量、樹脂の組成、使用された硬化剤及び硬化されたコーティングに求められる性質に依存する。好ましくは、粉末コーティング組成物における硬化剤の量は、グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂の総重量に対して重量パーセントで約7〜40%、より好ましくは約12〜35%の範囲を占める。上記のように、硬化剤の混合物を使用しても良い。
【0037】
また、本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート樹脂及び硬化剤を備える粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物に適当である添加物を含んでも良い。粉末コーティング組成物に使用された典型的な添加物は、当業者に公知である。これらの添加物は、顔料、充填剤、光安定剤及び酸化防止剤を含む。添加物の具体例は、硬化触媒、流れ調整剤、揺変調整剤、静電防止剤、表面活性調整剤、光沢剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、衝撃改質剤、湿度調整剤、固化防止剤、脱気剤又は発泡防止剤を含む。全ての添加物は、本発明に係るグルシジル(メタ)アクリレート樹脂を含む粉末コーティングの性質に実質的な悪影響を与えない程度に混合される。具体的に、これらの添加物は、ベンゾイン(揮発性リリース剤又は発泡防止剤)、CGL 1545 ヒドロキシフェニル・トリアジン紫外線吸収剤(Ciba-Geigy Limited, Basel, Switzerlandから入手可能)、Modaflow(又はResiflow)流れ添加物(Monsanto Chemical Company, St. Louis, MOから入手可能)、第三級アミン又はN-アルキルイミダゾール(硬化触媒)、CAB-O-SIL(Cabot Corporation, Billerica, MAから入手可能)として販売されている固化を低減するフュームド・シリカなどを含んでも良い。
【0038】
色彩が望まれる場合、所望の色彩を提供するために粉末コーティング組成物に十分な量の顔料を添加しても良い。一般的に粉末コーティング組成物に使用された顔料の量は、粉末コーティング組成物の総重量に対して重量パーセントで1〜50%である。適当な顔料は、例えば、二酸化チタン、群青、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、グラファイト線維、黒色酸化鉄、酸化クロムグリーン、黄色酸化鉄、及びクンドーレッドを含む。
【0039】
グルシジル(メタ)アクリレート樹脂、硬化剤及び任意の添加物を含む組成物成分の適切な量を選択し、その組成物成分を基本的に均質な混合物を形成するように完全に予混合して、粉末コーティング組成物を製造することができる。粉末コーティング組成物の全ての組成物成分は、粉末として乾式混合工程によって混合され、又は、半乾式混合工程又は溶融混合工程によって混合されることができる。溶融混合される場合には、全ての成分は適当に混合された後に、冷却され、必要に応じて乾燥され、そして粉末に粉砕される。
【0040】
例えば、本発明に係る粉末コーティング組成物を製造するために、この粉末コーティング組成物の成分(即ち、グルシジル(メタ)アクリレート樹脂、硬化剤及び任意の添加物)は予混合される。全ての成分の予混合は任意の適当な手段で成し遂げても良い。小規模なミキサーの具体例はVitamixer混合器(Vitamix Corporation, Cleveland, Ohio)である。次に、予混合された成分は加熱された押出機に移送され、そこでこの混合物は溶融混合かつ押出される。使用可能な押出機のひとつはAPV Model 19PCツインスクリュー押出機である。このツインスクリュー押出機は、回転速度が可変な二つの個別的に調整可能な加熱ゾーンを有し、一対の冷却されたピンチローラーの間からリボン形状の押出し物を提供することができる。さらに、この押出された成分は、任意の適当な手段で、例えば、ハンマー・ミル(少量の場合、Vitamixer混合器)で粉末状に粉砕され、140又は170メッシュの篩を通過する粉末が収集される。
【0041】
このコーティング組成物をある表面に付与する場合、平滑、実質的に均一なコーティングを得るために従来の技術が用いることができる。通常、このコーティングは一般的に約1.0〜10ミル、好ましくは約2.0〜4.0ミルの厚さを有することが望ましい。物品又は基材に、例えば、スチール又はアルミの様な金属に、この粉末コーティング組成物を直接付与することができる。この粉末コーティング組成物は、露出表面あるいは前処理された表面に直接付与することができる。好ましくは、本発明に係る粉末コーティングは、当業者に公知である任意の下塗り製剤の上に、又はそれと一緒に塗布する透明塗料である。例えば、透明塗料を予め色コーティングを施した表面に付与して色付き表面の上に透明コーティングを提供することができる。
【0042】
本発明に係る粉末コーティングは、噴霧法、及び金属基材の場合に静電噴霧法、又は流動床を利用することによって付与することができる。噴霧設備は、GEMA Volstatic of Indianapolis, Indiana及びThe Nordson Corp. of Amherst, Ohioのような製造業者から商用的に入手可能である。この粉末コーティングは、硬化後に所望の厚さを有する膜を形成するために、一回塗り又は複数回塗りで付与することができる。
【0043】
本発明に係る粉末コーティングの硬化は、組成物を硬化させるために十分な時間コーティングされた表面を加熱することによって実現できる。具体的な硬化条件が硬化剤及び硬化触媒の有無を含むこの組成物の正確な組成に依存するが、硬化触媒を存在しない典型的な硬化条件は、約135℃〜200℃で約45分間である。具体例として、3ミル(約80マイクロン)の硬化コーティングの典型的な硬化条件は、165℃で30分間である。
【0044】
本発明の教示に従えば、硬化コーティング組成物は滑らかな仕上げを呈する。粉末コーティング組成物は、適当な物品又は基材に付与され、約135℃〜200℃で約15〜45分間加熱され、前記物品又は基材の上に硬化コーティングを形成する。本発明にかかる粉末コーティング組成物によって形成された硬化コーティングは、U.S.パテントNo.5,436,311に記載のASTMD523によって測定された満足できる60°光沢度を示す。
【0045】
この硬化コーティングは、従来のGMA粉末コーティングによって形成されたコーティングより一定の長所を有する。例えば、本発明に係る粉末コーティングでは、ポリエステル粉末コーティング組成物及びこれと同様の組成物との適合性が改良されていることを示すことができる。ポリエステル粉末コーティングに汚染されたときに、前記粉末コーティングは、従来のGMA粉末コーティングより、より少ないクレーター形成を示すことができる。さらに、本発明に係る粉末コーティングは、従来のGMA粉末コーティングと比べて顔料分散性が改良されていることを示すことができる。また、本発明に係る粉末コーティングは、従来のGMA粉末コーティングと比べて柔軟性が改良されていることを示すことができる。なお、本発明に係る粉末コーティングは、従来のGMA粉末コーティングと比べて改良された粉末の粉末への再被覆性を示す。本発明に係る粉末コーティングは、これらの改良された性質の一つ、又は複数、又はその全てを示しても良い。
【0046】
これらの性質(即ち、異物混合性(又は適合性)、顔料分散性、柔軟性及び再被覆性)は、下記の手順によって評価することができる。
【0047】
異物混合性
異物混合性を評価するために、本発明に係る粉末コーティングは、0.1重量%の本発明の粉末コーティングをポリエステル粉末コーティングと混合してポリエステル粉末コーティングを異物混合するのに用いられる。この混合は、作業場でポリエステル粉末コーティングを使用するとき従来のGMA粉末コーティングが混入された場合に発生する異物混合をシミュレートする。汚染された粉末コーティングが硬化された後、このコーティングに現れたクレーターの度合いが評価される。下記のカテゴリーは異物混合性の結果を評価するのに使用される。
優:0〜2個のクレーター/コーティングパネル
良:3〜5個のクレーター/コーティングパネル
可:6〜10個のクレーター/コーティングパネル
否:10個以上のクレーター/コーティングパネル
【0048】
顔料分散
顔料分散の度合いを評価するために、本発明に係る着色粉末コーティングを用意する。比較のため、従来の工程により対照の着色粉末を用意する。これらの粉末は、50%濃度でトルエンに溶解される。得られた溶液は、Hegman Gage(Hegman Gageは塗料工業に良く知られ、Paul N. Gardner Company, Pompano Beach, FLから入手可能である)に投入される。Hegman Gageは、傾斜溝に一定の分散を達すために使用される膜成型用の刃物を有するツーピースの手持ち工具である。溝の深さは相対的に濁りの範囲を示す。測定値は、不透明部の縁部で測られ、写真として記録される。
【0049】
写真を検査して分散されていない顔料の凝集体を確認する。写真に記録された顔料の分散されない凝集体が少ないほど、顔料分散の結果は良い。
【0050】
柔軟性
柔軟性を評価するために、1,12-ドデカン二酸及びブロック化したイソシアネートの混合物を含む硬化剤を有する本発明に係る粉末コーティングを用意し、樹脂の水酸官能基を硬化させる。上記硬化剤の混合物を使用する従来のグルシジル(メタ)アクリレート粉末コーティングも用意する。本発明に係るコーティングの耐衝撃性を評価し、対照としての従来のグルシジル(メタ)アクリレート粉末コーティングの耐衝撃性と比較する。
【0051】
耐衝撃性は、ASTM D2794に準じてBYK-Gardnerインパクトテスターによって測定される。Gardnerインパクト(in-lb、正面/背面)が大きいほど、コーティングは高い柔軟性を有することを示す。
【0052】
耐衝撃性は、また、ASTM D522に準じて円錐マンドレルテスター(Gardner Laboratory, Inc、直径1/8インチ)においてコーティングのパネルを屈曲させる円錐マンドレル屈曲テストによって測定される。円錐マンドレル屈曲テストの結果は、合格又は不合格で示される。
【0053】
粉末の粉末への再被覆性
粉末の粉末への再被覆性を評価するために、図1に示すように、粉末で被覆されたパネルを用意する。この粉末で被覆されたパネルの上部に、前記パネルに予め付与されたものと同様の粉末コーティング組成物を被覆した、Teflon moldTMに形成された小さく厚いウエハーを用意する。このウエハーの外形は0.5×0.5平方インチに仕上げられるMTS電気機械的ロードフレーム(MTS System Corp)を使用して、コーティング表面からウエハーを取り外すために必要な力を測定する。テスト方法は、ASTM D-3165の改善したバージョンに準じて、0.1インチ/分のロードセル移動速度で行われる。ウエハーを取り外す必要な力は、ウエハーとパネルとの間の界面面積で除され、界面粘着性として記録される。
【0054】
本発明は下記の実施例によってさらに説明される。なお、本発明は、実施例に限定されない。
【実施例1】
【0055】
比較例-対照樹脂-C1
2ガロンのParr反応装置にキシレン1930gを入れ、200rpmで攪拌した。乾燥窒素を用いて、反応装置を加圧してから60ポンド/平方インチまで減圧することを連続的に4回行い、空気を除去する。混合物を139℃まで加熱した。そして、混合物のスチレン450g、メチル(メタ)アクリレート1020g、n-ブチルアクリレート675g、グルシジル(メタ)アクリレート855g、n-ドデシルメルカプタン3g及びt-ブチルペロクトエート(t-butylperoctoate)134.1gを、自然に発生した圧力で139℃の下、反応装置にポンプで5時間注入した。注入ポンプ及び管路をキシレン100gで濯ぎ、ポリマー溶液を15分間かけて130℃まで冷却させた。キシレン60g及びt-ブチルペロクトエート(t-butylperoctoate)15gの混合物を2時間かけて加え、温度は130℃から100℃まで下がった。注入ポンプ及び管路をキシレン10gで濯ぎ、ポリマー溶液を100℃で30分間保持した。放出するために生成物溶液を70℃まで冷却した。
【0056】
そして、生成物溶液を蒸留用の三つ口平底フラスコに移して、1気圧でキシレンの大部分を蒸留した。その後温度が160℃に上昇するまで減圧した。溶融した原料を4mmHg未満の圧力及び167〜173℃で45分間攪拌してアルミ製パンに注ぎ、2160gの負荷の下125℃で10分間毎に50gの溶融指数、230ポアズの溶融粘度及び520のエポキシ当量を有するもろい樹脂を形成した。溶融粘度は、ASTMD 4287に準じ、ICI型VR 4572Cone & Plate粘度計を用いて直径0.77インチのコーンを3600sec-1のずり速度で測定した。エポキシ当量は、自動滴定装置Dl25/Mettler 20ml Bured Dv920を用いて、酢酸/過塩素酸方法によって測定した。
【実施例2】
【0057】
樹脂−R1
2ガロンのParr反応装置にキシレン1286gを入れ、200rpmで攪拌した。乾燥窒素を用いて、反応装置を加圧してから60ポンド/平方インチまで減圧することを連続的に4回行い、空気を除去した。混合物を150℃まで加熱した。そして、混合物のスチレン450g、メチル(メタ)アクリレート1020g、Tone M-100336g、グルシジル(メタ)アクリレート855g及びジ-t-過酸化アミル54.0gを反応装置にポンプで注入して、150℃で自然発生した圧力の下4時間加熱した。ポンプ及び管路をキシレン100gで濯ぎ、ポリマー溶液を15分間かけて130℃まで冷却した。キシレン60g及びt-ブチルペロクトエート(t-butylperoctoate)15gの混合物を2時間かけて加え、温度は130℃から100℃まで下がった。注入ポンプ及び管路をキシレン10gで濯ぎ、ポリマー溶液を100℃で30分間保持した。放出するために生成物溶液を70℃まで冷却した。
【0058】
そして、生成物溶液を蒸留用の三つ口平底フラスコに転移して、1気圧でキシレンの大部分を蒸留した。その後減圧して温度を160℃まで上昇させた。溶融した原料を4mmHg未満の圧力及び167〜173℃で45分間攪拌してアルミ製パンに注ぎ、255ポアズの溶融粘度及び506のエポキシ当量及び45.1℃のTgを有するもろい樹脂を形成した。
【実施例3】
【0059】
樹脂−R2
2ガロンのParr反応装置にキシレン1286gを入れ、200rpmで攪拌した。乾燥窒素を用いて、反応装置を加圧してから60ポンド/平方インチまで減圧することを連続的に4回行い、空気を除去した。混合物を150℃まで加熱した。それから、混合物のスチレン450g、メチル(メタ)アクリレート1260g、Tone M-200345g、グルシジル(メタ)アクリレート855g及びジ-t-過酸化アミル54.0gを反応装置にポンプで注入して、自然発生した圧力及び150℃の下で4時間加熱した。注入ポンプ及び管路をキシレン100gで濯ぎ、ポリマー溶液を15分間かけて130℃まで冷却した。キシレン60g及びt-ブチルペロクトエート(t-butylperoctoate)15gの混合物を2時間かけて加えた。その間に温度は130℃から100℃まで下がった。注入ポンプ及び管路をキシレン10gで濯ぎ、ポリマー溶液を100℃で30分間保持した。放出のために生成物溶液を70℃まで冷却した。
【0060】
そして、生成物溶液を蒸留用の三つ口平底フラスコに転移して、1気圧でキシレンの大部分を蒸留させた。その後温度を160℃に上昇させるまで減圧した。溶融した原料を4mmHg未満の圧力及び167〜173℃の下45分間攪拌してアルミ製パンに注ぎ、255ポアズの溶融粘度及び505のエポキシ当量及び44.3℃のTgを有するもろい樹脂を形成した。
【実施例4】
【0061】
コーティング比較例-CC1
対照の透明コーティング組成物は、対照樹脂CR289g、1,12-ドデカン二酸60.5g、ベンゾイン1.75g、Modaflow粉末III8.08g、7gのTinuvin 405及び3.5gのTinuvin 144を用いて作成された。高速フード攪拌機で予混合後、この組成物を押出機内で300rpm及び115℃で溶融混合した。冷却した押出物を粉砕し、170メッシュの篩を通過させ、4×12インチの亜鉛リン酸処理仕上げのスチールパネルに静電的に噴霧し、163℃で30分間硬化させた。得られた透明コーティングは、塗布厚さが2.4〜2.7ミルであり、表Iにまとめられた一般的性質を示した。
【0062】
表Iにまとめられた一般的性質は、下記の方法に準じて評価した。
【0063】
光沢度:光沢度は、Byk-Garder Micro-Tri-Gloss(カタログ番号4522)の様な光沢計によって測定された数値(60°光沢度)で表される。
平滑度:1=最も不平滑、10=最も平滑として評価される。
鉛筆硬度:ASTM D3365に準じて測定される。
粘着性:クロスハッチ粘着性は、ASTM D3359に準じて測定され、粘着性=100の場合は、低下がないことを示す。
DOI:イメージの明瞭さは、GM 91013に準じて測定される。
損傷抵抗性:損傷テストは、Crockmeter(モデルCM-5、ATLAS Electrical Devices Co生産)を用いてコーティング表面を摩擦することによって行った。Crockmeterは摩擦媒体として粉末クレンザーを有する。摩擦前後の光沢度(60°光沢度)を評価した。光沢度の保留性を計算し、この光沢度の保留性が損傷抵抗性を示す尺度となる。
【0064】
柔軟性は、Gardner衝撃(又は耐衝撃性(正面/背面))及びマンドレル屈曲によって評価した。Gardner衝撃(正面/背面、in-lbで示される)は、ASTM D2794に準じてBYK-Gardner衝撃テスターによって測定した。円錐マンドレル屈曲テストは、ASTM D522に準じて円錐マンドレルテスター(Gardner Laboratory, Inc、直径1/8インチ)においてコーティングパネルを屈曲することによって行った。
【0065】
異物混合性:異物混合性は、コーティング組成物CC1を用いて異物混合されたポリエステル粉末コーティングを作ることによって評価した。異物混合されたポリエステル粉末コーティングを作るため、ポリエステル粉末コーティングを重量パーセントで0.1%のコーティング組成物CC1と混合した。この混合は、塗装工場にポリエステル粉末コーティングを使用するときに従来のGMA粉末コーティングが混入されると発生する異物混合をシミュレートしたものである。異物混合された粉末コーティングを硬化させた後、このコーティングに現れたクレーターの度合いを評価した。異物混合評価の結果は、下記の表II及び図2に示されている。
【0066】
下記のカテゴリーは汚染結果を評価するのに使用された。
優:0〜2個のクレーター/コーティングパネル
良:3〜5個のクレーター/コーティングパネル
可:6〜10個のクレーター/コーティングパネル
否:10個以上のクレーター/コーティングパネル
【0067】
粉末の粉末への再被覆性は、同様に図1に示すように予め被覆した(同様の粉末コーティング)パネルの上部に厚さ1.6mmのウエハーを用意することによって評価した。このコーティング表面からウェハーを取り外すための力は、MTS電気機械的ロードフレームによって測定した。このテストは、ASTM D-3165の改善したバージョンに準じて、0.1インチ/分のロードセル移動速度で行った。必要した力が界面粘着力として定義される。結果は下記の表IIIに示されている。
【実施例5】
【0068】
コーティング比較例-CC2
対照の着色コーティング組成物は、対照樹脂CR327.6g、1,12-ドデカン二酸72.4g、ベンゾイン4g、Modaflow粉末III9.23g、6gのTinuvin 405及び4gのTinuvin 144を用いて作られた。高速フード攪拌機で予混合後、この組成物を押出機に300rpm及び115℃で溶融混合した。冷却した押出物を粉砕し、170メッシュの篩を通過させ、顔料分散を評価した。
【0069】
顔料分散の度合いは、作られた粉末を50%(重量)濃度でトルエンに溶解することによって評価した。この溶液はまたHegman Gageに投入した。写真は各々濁り領域において撮影した。結果は下記の表IV及び図4及び6に示されている。
【実施例6】
【0070】
コーティング実施例-C1
実施例樹脂R1からの透明コーティングを、287.8gの実施例樹脂R1、1,12-ドデカン二酸62.2g、ベンゾイン1.75g、Modaflow粉末III8.08g、7gのTinuvin 405及び3.5gのTinuvin 144を用いて作成した。高速フード攪拌機で予混合後、この組成物を押出機に300rpm及び115℃で溶融混合した。冷却した押出物を粉砕し、170メッシュの篩を通過させ、4×12インチの亜鉛リン酸処理仕上げのスチールパネルに静電的に噴霧し、163℃で30分間硬化させた。得られた透明コーティングは、塗布厚さが2.4〜2.7ミルであり、下記の表Iにまとめられた一般的性質を示す。表Iにまとめられた一般的性質は、上記のコーティング比較例-CC1に記載の手順を実施することによって評価した。
【0071】
異物混合は、上記のコーティング比較例-CC1に記載の手順を実施することによって評価した。その結果を下記の表II及び図3に示した。
【実施例7】
【0072】
コーティング実施例-C2
着色コーティングは実施例樹脂R1から作成した。この着色コーティングは、325.5gの実施例樹脂R1、1,12-ドデカン二酸75.5g、ベンゾイン4g、Modaflow粉末III9.23g、6gのTinuvin 405及び4gのTinuvin 144を用いて作成した。高速フード攪拌機で予混合後、この組成物を押出機に300rpm及び115℃で溶融混合した。冷却した押出物を粉砕し、170メッシュの篩を通過させ、顔料分散を評価した。
【0073】
顔料分散の度合いは、上記のコーティング比較例-CC2に記載の手順を実施することによって評価した。その結果を表IV及び図5と7に示した。
【実施例8】
【0074】
コーティング実施例-C3
実施例樹脂R2からの透明コーティングを、261.7gの実施例樹脂R2、1,12-ドデカン二酸59.6g、Albester1PO55B28.8g、ベンゾイン1.75g、Modaflow粉末III8.08g、7gのTinuvin 405及び3.5gのTinuvin 144を用いて作成した。高速フード攪拌機で予混合後、この組成物を押出機内で300rpm及び115℃で溶融混合した。冷却した押出物を粉砕し、170メッシュの篩を通過させ、4×12インチの亜鉛リン酸処理仕上げのスチールパネルに静電的に噴霧し、163℃で30分間かけて硬化させた。得られた透明コーティングは塗膜厚さが2.4〜2.7ミルであり、表Iにまとめられた一般的性質を示す。表Iにまとめられた一般的性質は、上記のコーティング比較例-CC1に記載の手順を実施することによって評価した。
【0075】
この粉末コーティングの再被覆性は、コーティング比較例-CC1に記載の方法によって評価した。その結果を表IIIに示した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0076】
本発明を特定の好ましい実施例を参考にしながら述べたが、本発明の範囲及び本発明の思想から離れなければ、当業者にとって種々の変更及び変形が可能であることは明白である。他の目的及び長所は当業者にとって前述記載の観点から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】粉末の粉末への再被覆性を実験するための実験パネル上にあるウェハーを示している。
【図2】コーティング比較例CC−1上で行われた異物混合性実験の結果を示してある。
【図3】樹脂R1から形成されたコーティング実施例C−1上で行われた異物混合性実験の結果を示している。
【図4】コーティング比較例CC−2上で行われた厚さが2ミルの顔料分散実験の結果を示している。
【図5】樹脂R1から形成されたコーティング実施例C−2上で行われた厚さが2ミルの顔料分散実験の結果を示している。
【図6】コーティング比較例CC−2上で行われた厚さが1ミルの顔料分散実験の結果を示している。
【図7】樹脂R1から形成されたコーティング実施例C−2上で行われた厚さが1ミルの顔料分散実験の結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記の構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(i)と
【化1】

(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4個の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
下記の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(ii)と
【化2】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
モノマー(i)及び(ii)以外の任意的に含まれるエチレン性不飽和モノマー(iii)とを共重合して形成されるグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂と、
(b)硬化剤と、
を含むことを特徴とする硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項2】
モノマー(a)又は(b)以外のエチレン性不飽和モノマー(c)を含み、前記エチレン性不飽和モノマーは、アクリル酸モノマーのアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸モノマーのアルキルエステル類、ビニルモノマー類及びこれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、iso-ボルニルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ボルニル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、ジビエルベンゼン、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、ビニルアセテート、プロピオン酸ビニル及びそれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
一つ又は複数の添加物を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルシジル(メタ)アクリレート樹脂は、グルシジル(メタ)アクリレートモノマーを10〜65重量%、カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーを2〜35重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記グルシジル(メタ)アクリレート樹脂は、グルシジル(メタ)アクリレートモノマーを10〜65重量%、カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーを2〜30重量%、前記エチレン性不飽和モノマーを5〜88重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性粉末コーティング組成物。
【請求項7】
グルシジル(メタ)アクリレート樹脂を60〜93重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
硬化剤を7〜40重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記グルシジル(メタ)アクリレート樹脂は、3,000〜20,000範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(a)下記の構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマーと、
【化3】



(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4個の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
(b)下記の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーと、
【化4】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
(c)任意的に含まれる、モノマー(i)及び(ii)以外のエチレン性不飽和モノマー(iii)と
を備える、粉末コーティング用のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項11】
エチレン性不飽和モノマーを含み、
前記エチレン性不飽和モノマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、iso-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、iso-ボルニルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ボルニル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、ビニルトルエン、ジビエルベンゼン、ビニルクロライド、ビニリデンクロライド、ビニルアセテート、プロピオン酸ビニル及びそれらの混合物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項10に記載の樹脂。
【請求項12】
3,000〜20,000の範囲の重量平均分子量を有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項13】
35〜70℃の範囲のガラス転移温度を有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項14】
200〜1450の範囲のエポキシ当量を有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項15】
カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーを2〜30重量%含有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項16】
カプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーを2〜30重量%を含有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項17】
グルシジル(メタ)アクリレートモノマーを10〜65重量%を含有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項18】
エチレン性不飽和モノマーを5〜88重量%含有することを特徴とする請求項10に記載のグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂。
【請求項19】
グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂の製造方法であって、
有機溶媒の重合媒体中で重合イニシエーターの存在下、
グルシジル(メタ)アクリレートのモノマーと、下記構造式
【化5】



(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)を有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマーと、グルシジル(メタ)アクリレート及びカプロラクトン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーと、を備えるモノマー混合物を共重合することにより、
カプロラクトン派生の側鎖を備え且つ2,000〜6,000の重量平均分子量と35〜70℃の測定ガラス転移温度と275〜800のエポキシ等量とを有するグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂を製造する製造方法。
【請求項20】
前記グルシジル(メタ)アクリレート及びカプロラクトン(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和モノマーは、メチル(メタ)アクリレート、スチレン、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
熱硬化性粉末コーティング組成物の製造方法であって、
(a) 下記構造式Iを有するグルシジル(メタ)アクリレートモノマー(i)と
【化6】



(式中、R8はH又は低級アルキル基、R9は1〜4個の炭素原子を含有する分岐又は非分岐アルキル基を表す)
下記の構造式IIを有するカプロラクトン(メタ)アクリレートモノマー(ii)と
【化7】


(式中、Xは1〜5、RはH又は低級アルキル基を表す)
任意的に含まれるモノマー(i)及び(ii)以外のエチレン性不飽和モノマー(iii)とを共重合してグルシジル(メタ)アクリレート系樹脂を合成することと、
(b) 上記グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂と硬化剤とを混合して熱硬化性粉末コーティング組成物を提供することと、
(c) 上記熱硬化性粉末コーティング組成物を基材に付与することと、
(d) 上記熱硬化性粉末コーティング組成物を硬化させ硬化性粉末コーティングを提供することと
を含む熱硬化性粉末コーティング組成物の製造方法。
【請求項22】
上記グルシジル(メタ)アクリレート系樹脂と一つ以上の添加物とを混合することを更に含むことを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1に記載の透明硬化性粉末コーティング組成物を硬化させることにより形成された透明被膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524724(P2007−524724A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517547(P2006−517547)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/020014
【国際公開番号】WO2005/003241
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(505472920)
【Fターム(参考)】