説明

カミソリ

【課題】ハンドル内に肌潤滑用流体送達システムを備えたカミソリにおいて、ブレードユニットが肌から離された後には肌潤滑用流体が漏れ出ることのないカミソリを提供する。
【解決手段】肌に塗布するために潤滑剤などの流体を貯槽25から導くポンプ24が含まれる流体送達システムと、カミソリを保持している人によりカミソリが肌に接触される時にポンプ24を作動するとともに、ある作動時間、例えば0.1〜2秒後にポンプ24を作動停止するための制御デバイス16とを備え、制御デバイスは、継続した作動の間に1〜10秒の遅れを確保するように構成されており、その結果、ポンプが作動されるのは、シェービングストロークの2回ごと、3回ごと又は4回ごとだけである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカミソリに関する。特に、本発明は、安全カミソリすなわち鋭い切断エッジが付いた1つ以上のブレード又は薄刃を有するカミソリに適用できるが、その最も広い概念では、乾式カミソリすなわちせん断作用で毛を分断するために薄刃と下刃が相互に対して移動されるカミソリにも適用可能である。本明細書においては、とりわけ、安全カミソリでの実施を説明する。
【背景技術】
【0002】
シェービング中の肌に対してシェービング快適化製品を送達するために、例えばシェービングフォーム(泡)又は他の潤滑流体であってすぐ使えるように貯槽内に蓄えられた製品などを送達するために、分配システム付きの安全カミソリを提供するという提案が数多くなされてきた。これらの従来提案の幾つかによれば、貯槽はカミソリのハンドルの中に収容されるが、発明人らの先行出願であるPCT国際公開特許WO−A−00/47374(シム(Simms))に記載されるように、加圧容器にカミソリ構造体を留めるなどの他の配置も提案されている。シェービングの間に流体製品の貯槽からの供給を制御するための器具、例えば流体が加圧下で保持される貯槽からこれを解き放つための弁などが、一般に送達システムに含まれる。その弁は、前述のPCT国際公開特許WO−A−00/47374に記載されるカミソリでのように、カミソリのブレードユニットを肌に対して当てることにより作動されるように構成されてもよいが、他の構造においては、別個の操作ボタンが、カミソリを保持する手の指を使用して手動圧下されるように構成されている。米国特許第5337478号(コーエン(Cohen)ら)により開示される安全カミソリは、ハンドル内に収容されたシェービングフォームの加圧貯槽を有すると共に、カミソリのブレードユニットに向けて放出してブレードユニットの肌接触面に分配するために、シェービングフォームを放出するように操作可能な弁を有する。弁を作動するためにソレノイドが設けられ、ソレノイドは、ハンドルの底に取り付けられた電池室内に置かれた電池により電力供給され、さらにソレノイドの作動は、カミソリヘッド内に配置された電気スイッチにより制御されるようになっており、従って、スイッチは閉じていて、さらにシェービングストロークを実施するためにヘッドが肌に押し付けられた時、それによりソレノイドが作動して、弁を開く。このシステムの場合、及び他の従来技術構成の場合、製品の過剰量の分配なしに十分な計量率を確保するように、肌に塗布する流体製品の放出を制御することは困難である。その上更に、幾つかの構成では、ブレードユニットが肌から離されて移動された後で少なくとも短時間、流体が分配され続けることがあり、特にシェービングが完了した後で生じる場合、これは好都合な場合がある。米国特許第3,176,392号(グイン(Gwinn))は、ユーザーの意思のままに分配できる液体滑走剤用の貯槽が付いた電動乾式カミソリを記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
液体は、貯槽内で圧力下にあり、カミソリハウジング側面上のレバーにより作動される弁の手動操作によって分配することができる。代替案として、カミソリのモータを使用してポンプを駆動し液体を分配することが考えられている。これらの提案も、上で説明したものと同一の欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上で説明されたような既知の分配システムの欠点に対処しており、本発明に従って提供されるのは、シェービング中の肌に塗布するために流体を貯槽から分配開口に導くための流体送達システムを備えるカミソリであり、送達システムには、流体の送達を制御する電気的に作動可能な分配器具と、分配器具の作動を制御するための制御デバイスとを含み、制御デバイスは、カミソリがシェービングのために肌に接触された時に分配器具を作動させるとともに、予め定められた作動期間の後で分配器具を作動停止させるための制御信号を生成するように構成されている。
【0005】
カミソリが肌に接触されるそれぞれの時に分配器具が作動される時間を限定することによって、肌に塗布する流体の非常に効果的な計量がシェービング中に達成され、特に、過剰量の流体の送達を回避することができる。
【0006】
本発明は、好ましい一実施形態において、貯槽が内蔵されたハンドルと、ハンドルの上で支持された1つ以上のブレードを有するブレードユニットとが含まれる安全カミソリにて具現され、分配開口が、ブレードユニット上でブレード(単数又は複数)に隣接して設けられた肌接触面に配置されているか、又は肌接触面に隣接して、例えばブレード(単数又は複数)前方のガード面に、又はブレード(単数又は複数)後方のキャップ面などに配置される。
【0007】
流体は、貯槽内で加圧されていてもよく、そのときは、分配器具が、電気的に作動可能な弁の形体をとることができる。しかしながら、流体の送達率にわたるより良い制御は、流体の送達を制御する電気的に駆動されるポンプを有するシステムで達成することができる。電動ポンプは、素早い応答を有し、一定の流量を提供するとともに、流れ制御の柔軟性を可能にすることができる。ポンプモータは、電源に、好ましくはカミソリハンドルに内蔵された電池に、スイッチングデバイスによって接続可能であり、制御デバイスが、スイッチングデバイスを制御するための設定された持続時間、すなわちパルス幅のパルスを発生する。
【0008】
流体の十分な分配は、0.1〜2秒、より具体的には0.2〜1秒の範囲の予め定められた作動期間で達成することができる。流体の最も効果的な放出は、0.3〜0.6秒、例えば約0.4秒などの予め定められた作動期間で得ることができる。幾つかの短いシェービングストロークが矢継ぎ早にカミソリで実施される時に流体の放出を制限するために、制御デバイスは、分配器具の継続した作動の間に遅れを確保するように構成できる。少なくとも1秒間の遅れ、例えば1〜10秒、より適しては2〜6又は8秒の範囲の遅れが考えられている。大部分のカミソリユーザーに対して、約4秒の遅れが、十分な流体放出を依然可能にしながら、良好な結果を作り出すと予想される。シェービングストロークを実施するためにカミソリが肌に接触されるたびに分配器具が作動されることはないように構成することによって、制御デバイスが、流体の送達を制限することも可能である。このようにして、制御デバイスは、シェービングストロークの2回ごと、3回ごと又は4回ごとに作動するように構成されてもよい。そのような構成は、吸収性又は多孔質の材料がブレードユニットに含まれ、これに対して流体が放出されて、これが確実にシェービングストロークを実施している間に肌に対して流体を徐々に塗布する働きをする場合に、特に好ましいことがある。制御デバイスは又、流体の送達をそれに応じて制御するために、完了したシェービングストロークの持続時間及び/又はシェービングストローク数を考慮に入れるように適合可能である。更に、シェービングの最初は、分配器具のより長い作動期間が提供されてもよく、さらにシェービングの最後には、例えば分配ポンプの逆運転により、ブレードユニットから流体を引き戻す吸い戻し動作が含まれてもよい。
【0009】
カミソリのブレードユニットは、好ましくは、ブレード(単数又は複数)が鈍くなった時に交換を意図される取外し式カートリッジである。カートリッジ及びハンドルは、流体の送達通路を完成するための連結の配列を有してもよい。あるいは、スプレーヘッドなどの分配ヘッドが、流体の送達のためにカートリッジから独立して、例えばカートリッジのガードの手前で、ハンドル上に支えられてもよい。スプレーヘッドが設けられる場合、流体の送達は、「インクジェット」技術に基づく構成の手段により制御することができる。
【0010】
好ましい実施形態で分配される流体は、液体潤滑材、特にシリコーンオイルを含み、その場合、3g/min未満の送達速度が適切である。それでもやはり、次のような特性(複数)又は品質(複数)若しくは1つ以上のいずれかを示す流体を含有する、種々多様な流体のシェービング快適化製品が、本発明に従うカミソリを使用してシェービング中の肌に塗布されてもよい。
(i)シェービング石鹸、
(ii)潤滑剤、
(iii)肌コンディショナー、
(iv)肌保湿剤、
(v)切断を容易化するための毛の柔軟化剤又はコンディショナー、
(vi)芳香剤、
(vii)クレンザー、
(viii)細菌又は医用ローション、および
(ix)シェービング中に受ける場合がある小さな切り傷又は擦り傷を有益に処置するための血液凝固剤など。
【0011】
制御デバイスは、機械的スイッチを含むこともできるが、好ましいカミソリ構造では、制御デバイスは近接又は接触に対して感度がよく、これには、シェービングストロークを実施している間に、剃られている肌にセンサー要素が近接又は接触すると、それに応じて分配器具が作動されるように配置された、センサー要素が含まれる。
【0012】
近接に対して感度がよい制御デバイスを備える安全カミソリの場合、ブレードユニットが身体から約10mm以下の距離、例えば5mm以下などの距離内にある時に、分配器具が活性化されてもよい。光、赤外線又は高周波放射により作動される近接スイッチが使用されてもよい。本発明の特定の実施形態では、接触に対して感度がよい制御デバイスが使用され、これにより、ブレードユニットが肌に接触した直後に作動が始まる。ブレードユニット上に配置されるセンサー要素は、好ましくは電極であり、及び好都合にはブレードユニットの少なくとも1つのブレードで構成することができる。しかしながら、好む場合には、代わりに、別個の電極を設けることができる。ブレードユニットには、プラスチックフレームが含まれてもよく、その少なくとも一部が、導電性プラスチックで作製されて、電極を形成及び/又は電極への電気接続をもたらしてもよい。電極への電気接続は又、導電性材料をブレードユニットフレームにメッキ若しくはコーティングする、又はこの目的のための1つ以上の導電性ストリップをブレードユニットに備えることによっても、達成することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、第二の電極が設けられ、制御デバイスは、電極間の電気抵抗又は静電容量などの電気的パラメータの変化に対して感度がよい。より具体的には、第二の電極は、使用中にユーザーの身体に近接又は接触するように配置され、好都合には、カミソリを保持するユーザーの手と接触するハンドルの一部として設けられる。
【0014】
制御デバイスは、対の電気信号を発生するように構成された信号発生器と、前記対の電気信号を比較して前記対の信号の間の関係の予め定められた変化を表す出力を提供するように構成された比較器と、前記比較器出力に対してよく応答して分配器具を作動させる手段とを含んでもよく、予め定められた変化は、両方の電極がカミソリのユーザーの肌に近接又は接触する時に生じる。
【0015】
特定の実施形態では、信号発生器は発振器であり、対の電気信号は対の振動信号であり、並びに第一及び第二の静電容量がそれぞれの振動信号により充電されるように構成されており、両方の電極が肌に近接又は接触する状態にカミソリがユーザーによって移動される時、例えば更なる静電容量が前記第一の静電容量に対して並列に連結されるので、第一の静電容量が第二の静電容量よりも遅く充電されるように電極が構成される。
【0016】
本発明によるカミソリには、好ましくは、電力を制御手段及び分配器具に供給するための電力源、特に電池、並びに前記電力源から制御デバイス及びポンプ又は他の分配器具への電力の供給を接続又は遮断するように構成されたスイッチ器具が含まれる。スイッチ器具は、機器の外部に有って、ユーザーによって手動操作可能であってもよい。別の方法としては、スイッチ器具は、それに伴った保管トレーと相互作用して、保管トレーに挿入された時に前記電力源からの電力の供給を遮断し、これから取り出される時に供給を連結するように構成されてもよい。保管トレーは、米国特許第A−5782346号に記載されるものと概ね同一の形体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】安全カミソリの背面図。
【図2】安全カミソリの側面図。
【図3】安全カミソリの正面図。
【図4】ハンドルの上端部及びブレードカートリッジの後ろ斜視図。
【図5】非使用期間中にカミソリをその上に保管するトレーの形体のカミソリホルダーの側面図であり、カミソリが、保管トレーから短い距離で離れて示される。
【図6】請求項3に対応する側面図であって、保管トレーからより遠い距離にあるカミソリを示す。
【図7】カミソリに組み込まれる電気的制御デバイスのブロック図。
【図8】スイッチングデバイスの具体的な例。
【図9】パルス発生器及びポンプ駆動回路の具体的な例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図に示される安全カミソリは、ハンドル1とハンドルの上端部に取外し可能に取り付けられたブレードユニット又はカートリッジ2とを有する。ブレードユニットには、概ね方形のフレーム3と、フレーム内に配置され及びブレードユニット2の対向する両端部においてフレーム3の回りに配置された金属クリップ5により適所に保持される、実質的に平行な鋭い切断エッジを有する、複数の例えば3枚、4枚又は5枚のブレード4とが含まれる。シェービングストロークを実施している間にブレードの前方で肌と接触するために、エラストマー材のストリップが含まれるガード構造6がフレーム上に設けられ、ブレードの後方で肌と接触するために、キャップ構造7がフレーム上に設けられる。ブレードユニット2が、ブレードエッジに実質的に平行な軸線周りでハンドル1に対して旋回できるように、フレームは、ハブ10から延びる及びフレーム2の対向する両端部においてジャーナル受けされる対のアーム9を有する、ヨーク部材8上で旋回的に支えられる。ハブ10は、ハンドル1の端部に取外し可能に連結される。ここまで説明したカミソリは既知の構造のものであるので、更なる詳細については先行特許公報を参照することとしてもよく、その一例として、PCT国際公開特許WO97/37819がある。
【0019】
カミソリハンドルには、手に把持されることを意図される主部分12と、主部分から上向きに延びてその自由端部にブレードユニット2が取り付けられる首部14とが含まれる。ハンドル1の主すなわち把持部分12には、以下で更に詳細に説明するように、ユーザーの手と電気的に接触するための電極としての働きをする、導電性の例えば金属のケーシング13が含まれる。ハンドルの電池区画に内蔵されるのは、交換型又は充電型の電池15である。やはりハンドルに内蔵されるのは、電子制御デバイス16である。電池15は、カミソリが使用されない期間中に電池エネルギーを節約するために、制御デバイスへの電力供給を遮断するように操作可能な電力スイッチを通して、制御デバイス16に電気的に接続される。電力スイッチは、手動操作のためにハンドル上に配置することも可能であるが、好ましい構造では、非使用時にカミソリが上に保管されることを意図されるカミソリホルダーからカミソリを取り外す、及びこれに戻すことにより電力スイッチが作動するように構成される。カミソリホルダーのある既知の形体は、図5及び6に示されるようなトレー18からなり、トレー18はその上側に、カミソリハンドル1の首部14を受け入れてこれを軽く握るように適合されたサドル19を有する。カミソリハンドル1は、カミソリが保管トレー18から離されて持ち上げられた時、電力を電池15からスイッチングデバイス16に供給するために、保管トレー18と協働してスイッチを自動的に作動させるように構成された、及びカミソリがトレー上に戻された時に電力供給を遮断するように作動する、機械的スイッチを装備することもできる。好ましい実施形態では、保管トレー18に永久磁石21を備えて、ハンドル1内に配置されたリードスイッチ20の形体の電力スイッチによって、本質的に同じ結果が達成される。カミソリがトレー18の近くに位置する時、図5に示されるように、磁石21の近接によりリードスイッチ20が開いて保持されて、電池15からの電力供給は無いが、カミソリがトレーから遠くへ移動される時、図6に示されるように、リードスイッチが閉じて、制御デバイス16への電力供給が確立される。
【0020】
制御デバイス16は、以下で詳細に説明される方法にて、ハンドル1に内蔵された電動ポンプ24(図2及び3)の作動を制御する。ポンプ24は、ハンドル12の内部に収容された貯槽25に連結する入口を有し、貯槽の中には、潤滑流体すなわちシリコーンオイルの供給が蓄えられている。貯槽は、交換型又は再充満型のいずれにもすることができる。ポンプ24の出口は、カミソリハンドルの首部14を貫いて伸びるダクト26に連結される。ダクト26は、カートリッジの肌接触表面に又はその近辺に位置する分配開口を有するカートリッジ2にオイルを送達するために、ヨーク部材8の片方又は両方のアーム9の中に形成されたダクトに繋がってもよい。別の方法としては、ダクト26を通ってカートリッジに供給される潤滑剤を導くために、ハンドルとカートリッジの間に別個の連結部を設けることもできる。適しては、シェービング中に潤滑剤を放出して肌面に塗布するために、カートリッジには、ガード6とブレード4の間に配置された細長いマニホルドが含まれ、マニホルドが、カートリッジに沿ってブレードに平行に延びる1つ以上の分配スロットを有してもよい。潤滑剤は、以下で説明されるようなポンプ24の制御された作動によって、分配スロットに対して計量される。
【0021】
カミソリハンドル1を保持するカミソリのユーザーの身体にカミソリのブレードユニットが接触される時に、ポンプ24が作動されるように、制御デバイス16は、接触に対して感度がよいように構成される。ブレードユニット2には、都合がよいようにブレードユニットのブレード4の少なくとも1枚で構成される、好ましくはブレード4の全てが含まれる、電極が組み込まれる。制御デバイス16とこの電極4の間の電気接続は、ヨーク部材8のハブ10を貫いて突き出すとともに、ブレードユニットの後部に固定された接点ストリップ32にもたれるように配置された接点30と、金属のブレード保持クリップ5まで延びてこれに導電的に接続された横方向ウイング33を有する接点ストリップ32と、ブレード4との接触を順に有するこれらのクリップとを有する、ハンドル1の首部14によって達成される。もちろん、電極としてブレード4を使用するのは本質的なことではなく、ブレードユニット2がシェービングストロークを実施する時に肌に接触するブレードユニット上の位置に、別個の導電性要素を設けることも可能である。接点30は、接点ストリップ32と持続する電気的接触を作っており、その結果、ブレードユニット2がハンドル1上で旋回する間にさえも、ブレードユニットが肌に当てられてこれを横切って移動される時に生じがちであるようには、ブレードユニットにおける電極の間の電気的連続性は中断されない。接点30は、予め定められた静止位置から離れるブレードユニットの旋回運動を防ぐために、ばねを搭載されたプランジャーの形体をとるのが好都合である。接点30は、ハンドル1の首部14を貫いて導かれる線導体35により、制御デバイス16まで電気的に接続されるのが示されている。
【0022】
もちろん、ブレードユニット上の電極と制御デバイスの電気接続を確実にする他の可能性も有る。例えば、ブレードユニットのフレーム3は、導電性プラスチックなどの導電性材料で作製することも可能である。また、フレーム3の後部が、導電性材料をメッキ、コーティング若しくは印刷され、付加された接着性金属箔を有する、又は中に埋め込まれた金属要素を有して、接点30とクリップ5の間の、又は電極そのものまでの若しくは電極と接触する別の構成要素までの、電気接続をもたらすことも可能である。別の方法としては、射出成形された金属部分がフレームに含まれて、電極と接点30の間に導電路を提供してもよく、又は毛管溝内に保持された水が、電気的連続性を確保するのに十分であってもよい。
【0023】
図7は、制御デバイス16の機能を示す概略図である。図示されるように、制御デバイス16は、発振器61、比較器62、パルス発生器及びポンプ駆動回路63と、第一及び第二のコンデンサ64、65とを含む。制御デバイス16は、加えて、上述のようなブレード4とハンドル1の外部ケーシング13とによりそれぞれ構成される、2つの感知電極に接続される。パルス発生器及びポンプ駆動回路63は、ポンプ24のモータへの駆動電流を制御するように接続される。上で述べたように、制御デバイス16を活性化するのに必要な電力は、電池15により電力スイッチを通して供給される。電力接続は明瞭化のために図7から省かれているが、制御デバイス16の作動についての次の説明は、電池からの電力の印加によって活性化される時に、その条件に適用可能であることを理解されるであろう。
【0024】
発振器61は、2つの発振信号を出力ライン611及び612それぞれに提供するように構成される。出力ライン611及び612は、第一及び第二のコンデンサ64、65それぞれを経由して、回路の接地ラインとしての働きをするライン66に接続される。ライン611及び612は更に、比較器62に1対の入力をもたらす。比較器62は、本質的に、その2つの入力間の関係の変化に対して感度がよい。比較器への2つの入力間の関係が、電極の両方又は1つだけがユーザーの身体と接触しているかどうかによって変化するように、センサー電極が接続される。比較器は、そのような変化に対して感度がよいので、両方の電極がユーザーの身体と接触される時に、トリガ信号をパルス発生器及びポンプ器具駆動回路63に供給する。
【0025】
より詳細には、図7に見られるように、ライン612は、更に、感知電極の1つに接続される。2つの電極の間に有効な電気接続が存在しない時、発振器61によるライン611及び612上への信号出力は、比較器62への入力において第一の予め定められた関係を有する。感知電極の両方がユーザーの身体と接触している時、ある追加の電気接続が、ライン612と接地ライン66の間に作られる。これは、例えば、コンデンサ65に追加される静電容量であってもよく、及び/又は電気抵抗であってもよい。いずれにしても、追加の接続は、比較器62へ入力されるライン612上の信号の特性を変化させるのに有効である。それに応じて、2つの入力間の関係が変化して、比較器62は、トリガ信号を回路63に向けて作り出すことにより応答し、これが今度は、ポンプ24の作動を制御する。
【0026】
上で説明したように、制御デバイス16は、ユーザーの身体に接触している感知電極の両方によく応答する。制御デバイスの操作条件又は比較器の感度によっては、制御デバイス16はまた、他の状態に対しても応答することがある。特に、ユーザーがカミソリを保持し、したがって電極の1つと接触している場合、他の電極がユーザーの身体には接触しないが十分に近くなることがある。他電極の身体への近接は、この場合、ライン612と66の間に追加の静電容量を出現させて、ライン612上の信号に上記変化を引き起こすのに十分である。比較器又は他の回路の近接に対する感じやすさを設定して、この影響が生じる身体からの概略距離を決定することができる。この距離が例えば約10mmであるように設定されてもよい。
【0027】
更に、制御手段16は、電池電力を制御手段に接続する電力スイッチ20により活性化される時はいつでも、何らかの形体の出力を提供するように構成されてもよい。電力スイッチが「オン」の時にはいつでも、図8にてLED1で表される発光ダイオード28(図4)などの発光デバイスが、点燈されるように構成されてもよい。これ又は更なる発光デバイスが、電池電力が低下した時、又は貯槽25内の液面が低い時、点滅するように構成されてもよい。
【0028】
図8及び9は、図7の制御デバイス16の回路の実装を示す。これは単なる例として示されており、制御デバイス16の機能を実施する多数の他の方法が可能である。図8及び9において、IC1:A、IC1:B及びIC1:Cは、集積回路デバイスであり、他の構成要素は、抵抗器、コンデンサ、ダイオード及びトランジスタであり、頭文字R、C、D及びQで表されて、図中に示される代表的な値を有する。
【0029】
図8において、RL1は、先に説明された電力スイッチであり、及び使用されない時に器具を保持するように設計されたトレーの中の磁石により作動されるリードスイッチである。器具がトレーから取り出される時、スイッチRL1は示される位置にあって、端子T1,1及びT1,2に接続された電池15からの電力が+5Vのレール71を経由して回路に印加され、及び発光ダイオードLED1が点燈されるようになっている。端子T2,1が、器具のハンドル1の外部ケーシング13に接続されて、2つの電極の1つ及び「接地」を回路に加える。
【0030】
IC1:Aが発振器61の心臓部を形成し、並びに関連する抵抗器R1、R2、コンデンサC3、C4及びトランジスタQ1とともに構成されて、振動出力をライン611及び612上に提供する。これらが、抵抗器及びコンデンサのネットワークR4、RV1及びC6とR3及びC5とを経由して、心臓部がIC1:Bである比較器62への入力を提供する。
【0031】
振動信号のそれぞれのサイクル内で、ライン611上の信号が高くなる時、コンデンサC5が、抵抗器R3を経由して充電開始される。したがって、増大する信号が、IC1:Bのクロック入力に印加される。この入力信号のあるレベルにおいて、IC1:Bのクロック入力が、低から高に変化する。振動周波数及びコンデンサC5の充電速度は、それぞれの発振器サイクル中で、IC1:Bへの「高」クロック入力が到達されるように設定される。周知のように、クロック信号が高になるたびに、IC1:Bへの入力「D」の値が同期されて出力Qへ通り、
【数1】

が反転値である。
【0032】
やはり振動信号の各サイクル内で、ライン612上の信号が高になる時、コンデンサC6が、抵抗器R4及び可変抵抗器RV1を経由して、充電開始される。端子T3,3になにも接続されておらず、並びにR4及びRV1の組合せがR3と等価であるようにRV1が設定されている時、コンデンサC6がコンデンサC5と同じ値を有するので、2つのコンデンサの充電速度は同じである。したがって、RV1を使用して回路を調整し、この条件では、C6がC5と少なくとも同等に速やかに充電されることを確実にすると、IC1:Bへのクロック入力が高になる時、ライン612からの入力「D」も高であるようにすることができる。この条件では、Qは常に高である。
【0033】
端子T3,3は、カミソリカートリッジ内の電極に接続される。したがって、その電極が、端子T2,1に接続されたハンドルを保持するユーザーの身体に接触又は近接される時、接地への追加の電路が、コンデンサC7とユーザーの身体が有するあらゆる抵抗及び静電容量とを経由して作られる。このことは、コンデンサC6の充電速度を低化させるという影響を有し、IC1:Bへのクロック入力が高になる時に、入力「D」がまだ低であって、その結果Qも低となる。以下で更に詳細に説明するように、図9に示されるパルス発生器及びポンプ駆動回路63は、低下する境目に対してよく応答し、したがって、信号Qの低への推移が、適したトリガ信号を提供する。
【0034】
図9を参照して、IC1:Cは、パルス発生器の基盤を形成するタイマ回路(この実施形体では、標準的な555タイマIC)であって、そのトリガ入力TRGは、比較器62の出力端子T3,1に接続された端子T3,2とコンデンサC12によって静電容量的に連結されている。コンデンサC12の各側は、それぞれの抵抗器R8、R9を通して+5Vのレール71に接続されており、その結果、比較器62の出力Qが上述のように低になる時、トリガ信号が、IC1:Cのトリガ入力TRGに伝達され、これが直ちに応答して、予め定められた電圧のパルスをIC1:Cの出力OUTにて発信させる。タイミング回路(R10、C14)が、IC1:Cの閾値入力THRに供給される電圧レベルに従って、出力パルスの持続時間すなわちパルス幅を決定する。閾値電圧レベルひいては出力パルスの持続時間は調節可能であって、一方側が+Vのレールに接続され他方側がコンデンサC14を介して接地に接続された可変抵抗器として結線されている、ポテンショメーターR10の調節により設定される。このようにして、出力パルスは、パルス持続時間の後で中断される。図示された回路には設けられていないが、パルス発生器が更なる出力パルスを発信するように始動可能となる前に、遅れをおくこともできる。マイクロプロセッサ制御を組み入れた回路が、このこと並びに他の追加制御パラメータを提供することができる。パルス発生器の出力パルスは、電界効果トランジスタ(FET)Q2として示されるスイッチングデバイスの制御入力に供給され、これが、ポンプ24のモータへの電池電力の供給を入れたり、切ったりする。ダイオードD4が、ポンプモータにより発生されるいかなる逆起電力(back EMF)に対しても保護するために、FET Q2に対して並列に接続される。ブレードユニットが移動されてカミソリをハンドル1により保持するユーザーの肌に接触される時、パルス発生器により発生された出力パルスの予め定められた持続時間の間ポンプ24が作動されて、対応する量の流体がブレードユニット2の分配出口に向けて計量されることが理解されるであろう。適したポンプ作動期間は、0.1〜2秒間、より特定すると0.2〜1秒間、最も好ましくは0.3〜0.6秒間である。0.4秒の作動期間が、シェービング中の潤滑流体の受容可能な分配率を作り出すと考えられている。カミソリのユーザーが、可変抵抗器(register)R10の設定を変化させることにより、ある限界内で作動期間を調節して、個人的な好みに適合できるように、カミソリが制御要素を備えてもよい。継続した作動の間に遅れが確保されているとき、遅れは、少なくとも作動期間程度に長くてもよく、及び1〜10秒間、例えば2〜6又は8秒間などであってもよく、約4秒間の遅れが大部分のヒゲ剃り(shaver)にとって適切と考えられている。
【0035】
好ましい実施形態のここまでの記述は、非限定的な例としての目的でのみ提供されており、次に続く特許請求の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、変更が可能であることを理解すべきである。1つの可能性ある変更の例として、ハンドルの導電性ケーシング13は、ユーザーの手とハンドル電極の間に高い静電容量と高い抵抗の連結があるように、絶縁材の薄いカバー層を備えることもできることを記す。更に、望む場合、使用しない時にカミソリを保持するための保管トレー18の使用を好まないユーザーが使用するために、手動操作可能なスイッチ機構が、カミソリハンドル上に含まれて、スイッチ20と直列に電気接続されることが可能である。例えばシェービングフォーム又はジェルが肌に塗布されたヒゲ剃り開始時に、カミソリユーザーが、非分配モードを選定できるようにするために、このスイッチが、又はある遅れの後でスイッチが入る及び/若しくは切れる電子的トグルスイッチなどの異なるスイッチが、含まれていてもよい。
【0036】
本発明の明瞭な理解を容易にするために、安全カミソリの実施形態を、添付図を参照して、以下で詳細に説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェービング中の肌に塗布するために、流体を貯槽(25)から分配開口へ導くための流体送達システム(25、26)を備えるカミソリであって、
前記送達システムは、前記流体の送達を制御する電気的に作動可能な分配器具(24)と、前記分配器具(24)の作動を制御するための制御デバイス(26)とを含み、
前記制御デバイス(26)は、前記カミソリがシェービングのために前記肌に接触された時に前記分配器具(24)を作動させるとともに、予め定められた作動期間の後で前記分配器具を作動停止させるための制御信号を生成するように構成されている、カミソリ。
【請求項2】
前記カミソリは、前記貯槽(25)を収容するハンドル(1)と、前記ハンドル上で支持された1つ以上のブレード(4)を有するブレードユニット(2)を含む安全カミソリであり、
前記分配開口は、前記ブレードユニット(2)上で、前記ブレード(単数又は複数)(4)に隣接して設けられた肌接触面に配置されているか、又は肌接触面に隣接して配置されている、請求項1に記載のカミソリ。
【請求項3】
前記流体が前記貯槽(25)内で加圧されており、
前記分配器具が電気的に作動可能な弁である、請求項1又は2に記載のカミソリ。
【請求項4】
前記分配器具がポンプ(24)を含む、請求項1又は2に記載のカミソリ。
【請求項5】
前記ポンプ(24)が、スイッチングデバイス(Q2)により電源(15)に接続されたモータを有する、請求項4に記載のカミソリ。
【請求項6】
前記制御デバイス(16)が、パルス持続時間に従って前記スイッチングデバイスを制御するための出力パルスを発生させる、請求項5に記載のカミソリ。
【請求項7】
前記予め定められた作動期間が、0.1〜2秒間である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項8】
前記作動期間が、0.2〜1秒間である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項9】
前記作動期間が、0.3〜0.6秒間である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項10】
前記制御デバイス(16)が、前記分配器具(24)の継続した作動の間に遅れを確保するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項11】
前記遅れが少なくとも1秒間である、請求項10に記載のカミソリ。
【請求項12】
前記遅れが、前記予め定められた作動期間より長い持続時間を有する、請求項10又は11に記載のカミソリ。
【請求項13】
前記遅れが、1〜10秒間である、請求項11又は12に記載のカミソリ。
【請求項14】
前記遅れが、2〜6又は8秒間である、請求項12に記載のカミソリ。
【請求項15】
前記遅れが約4秒間である、請求項14に記載のカミソリ。
【請求項16】
前記制御デバイス(16)は、シェービングストロークを実施するために前記カミソリが前記肌に接触されるたびに、前記分配器具(24)が作動されることはないように構成されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項17】
前記制御デバイス(16)が、シェービングストロークの2回ごと、3回ごと、又は4回ごとに、前記分配器具を作動させるように構成されている、請求項16に記載のカミソリ。
【請求項18】
前記流体が潤滑剤を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項19】
前記制御デバイス(16)が、近接又は接触に対して感度がよく、シェービングストロークを実施している間に剃られている前記肌に接触又は近接させられるように配置されたセンサー要素を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項20】
前記センサー要素が電極を含む、請求項19に記載のカミソリ。
【請求項21】
第二の電極を含み、
前記制御デバイスが前記電極(複数)の間の電気的パラメータの変化に対して感度がよい、請求項20に記載のカミソリ。
【請求項22】
前記第二の電極が、使用中に、ユーザーの身体に近接又は接触するように配置されている、請求項21に記載のカミソリ。
【請求項23】
前記第二の電極が、前記カミソリハンドル(1)の一部として設けられた、請求項22に記載のカミソリ。
【請求項24】
前記電気的パラメータが電気抵抗である、請求項21、22、又は23に記載のカミソリ。
【請求項25】
前記電気的パラメータが静電容量である、請求項21、22、23に記載のカミソリ。
【請求項26】
前記制御デバイス(16)は、1対の電気信号を発生するように構成された信号発生器(61)と、前記対の電気信号を比較するとともに、前記対の信号の間の関係の予め定められた変化を表す出力を提供するように構成された比較器(62)とを含み、
流れ器具を作動させるために作り出された出力があり、
前記電極(複数)は、前記カミソリが、ユーザーによって、両方の電極がその身体に近接又は接触する状態になるように移動されると、前記予め定められた変化が引き起こされるように構成されている、請求項20〜25のいずれか1項に記載のカミソリ。
【請求項27】
前記信号発生器が発振器(61)であり、
前記対の電気信号が対の振動信号である、請求項26に記載のカミソリ。
【請求項28】
前記制御デバイスが、前記対の振動信号によりチャージされるようにそれぞれ構成された第一及び第二の静電容量(C5、C6)を含み、
前記電極(複数)は、前記機器が、ユーザーによって、両方の電極がその身体に近接又は接触する状態に移動される時、前記第一の静電容量(C6)が前記第二の静電容量より遅くチャージされるように構成されている、請求項27に記載のカミソリ。
【請求項29】
前記第一及び第二の電極は、前記カミソリが、ユーザーによって、両方の電極がその身体に近接又は接触する状態に移動される時、前記第一の静電容量(C6)に対して並列に、更なる静電容量(C7)が連結されるように構成されている、請求項28に記載のカミソリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−101808(P2011−101808A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1206(P2011−1206)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【分割の表示】特願2007−525351(P2007−525351)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)