説明

カムロブの成形方法

【課題】成形型内で肉の流動を促進し、成形荷重を低くすると共に、鍛造時に素材の歩留まりのよいカムロブの成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】外周が軸心を中心に半円形状のカムベース9と、外周がカムベース9から外側に突出するカムトップ8と、軸心を中心に軸線方向に貫通する孔5と、を有するカムロブの成形方法において、略円柱状の一次中間成形品W1を成形する第一工程と、一次中間成形品W1にカムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔3を成形した二次中間成形品W3を成形する第二工程と、二次中間成形品W3を軸線方向に押圧して、カムトップ8、カムベース9、及び予備孔3が変形した変形孔4を成形した三次中間成形品W4を成形する第三工程と、三次中間成形品W4に変形孔3より大きい孔5を成形してカムロブW5を成形する第四工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等の内燃機関に使用されるカムシャフトのカムロブの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カムロブの成形方法においては、熱間鍛造により、略円柱状の素材を軸線方向に押圧して樽状の一次中間成形品を成形し、続いて、樽状の一次中間成形品の軸心に、軸線に対し垂直断面の形状が円形状である予備孔を打ち抜き、二次中間成形品を成形した後、二次中間成形品の予備孔にポンチを打ち込んで予備孔を埋め、この二次中間成形品を再度押圧して、カムロブに近い形状に成形する。その後、ポンチを引き抜いて孔を形成し、最後にカムロブ外形を切削加工により仕上げている(特許文献1参照)。
【0003】
また、異なるカムロブの成形方法においては、冷間鍛造により、略円柱状の素材から外形にバリを有するカムロブを成形した後、カムロブの軸心周辺を軸線方向に打ち抜くと同時に、カムロブの外形のバリも打ち抜いて、カムロブの軸心を中心に軸線方向に貫通する孔を成形している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−90139号公報
【特許文献2】特開2006−169961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示されるカムロブの成形方法においては、二次中間成形品の予備孔にポンチを打ち込んで予備孔を埋め、この二次中間成形品を再度鍛造するため、鍛造時に外周側にのみ肉が流動するので、成形荷重が高くなるという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に示されるカムロブの成形方法においては、成形型内でカムロブの外形にバリが成形された後に肉が流動できないので、成形荷重が高くなるという問題があった。また、最後にカムロブの外形のバリを除去するため、歩留まりが悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事情により鑑みなされたもので、成形型内で肉の流動を促進し、成形荷重を低くすると共に、鍛造時に素材の歩留まりのよいカムロブの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカムロブの成形方法は、外周が軸心を中心に半円形状のカムベースと、外周がカムベースから外側に突出するカムトップと、軸心を中心に軸線方向に貫通する孔と、を有するカムロブの成形方法において、略円柱状の一次中間成形品を成形する第一工程と、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形した二次中間成形品を成形する第二工程と、二次中間成形品を軸線方向に押圧して、カムトップ、カムベース、及び予備孔が変形した変形孔を成形した三次中間成形品を成形する第三工程と、三次中間成形品に変形孔より大きい孔を成形してカムロブを成形する第四工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のカムロブの成形方法は、一次中間成形品の軸心から偏心した位置に予備孔を成形した二次中間成形品を成形することを第2の特徴とする。
【0009】
本発明のカムロブの成形方法は、一次中間成形品に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔を成形した二次中間成形品を成形することを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の特徴のカムロブの成形方法によれば、外周が軸心を中心に半円形状のカムベースと、外周がカムベースから外側に突出するカムトップと、軸心を中心に軸線方向に貫通する孔と、を有するカムロブの成形方法において、略円柱状の一次中間成形品を成形する第一工程と、一次中間成形品にカムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を成形した二次中間成形品を成形する第二工程と、二次中間成形品を軸線方向に押圧して、カムトップ、カムベース、及び予備孔が変形した変形孔を成形した三次中間成形品を成形する第三工程と、三次中間成形品に変形孔より大きい孔を成形してカムロブを成形する第四工程と、を有するため、二次中間成形品の軸線方向に貫通する予備孔により、カムベースとカムトップとを有する三次中間成形品の成形時、肉が二次中間成形品の外周側に加えて予備孔内に流動し、三次中間成形品を成形する成形型内での肉の流動が促進されて、成形荷重を低くすることができる。しかも、カムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔を二次中間成形品に成形することにより、カムベース側より肉量が必要なカムトップ側に予め肉量を多く配置することができるため、二次中間成形品を軸線方向に圧縮した際に、カムトップの先端まで肉を流動させることができるので、所望の形状のカムトップを成形することができる。
【0011】
また、カムトップとなる予定のカムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベースとなる予定のカムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように成形された予備孔を有する二次中間成形品を押圧することにより、予備孔が三次中間成形品にカムトップ側に伸びて変形する。この予備孔が変形した変形孔は、カムロブの軸心に成形する孔周辺に成形されるため、カムロブの孔の成形時に、取り除く肉量を削減することができ、素材の歩留まりをよくすることができる。
【0012】
本発明の第2の特徴のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品の軸心から偏心した位置に予備孔を成形した二次中間成形品を成形するため、本成形方法を容易に実現することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴のカムロブの成形方法によれば、一次中間成形品に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔を成形した二次中間成形品を成形するため、本成形方法を容易に実現することができる。また、決められた範囲である一次中間成形品に、カムトップ予定部の径方向の肉厚が、カムベース予定部の径方向の肉厚よりも厚くなるように予備孔を成形するためには、一次中間成形品の軸心から偏心した位置に、軸線に対する垂直断面の形状が円の予備孔を成形するよりも、一次中間成形品に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔を成形する方が、欠けた箇所を大きく設計することによって、予備孔の直径を大きく設計することができる。このため、三次中間成形品の成形時、予備孔内に多くの肉を流動させることが可能となり、成形荷重を更に低くすることができる。
【0014】
また、二次中間成形品の予備孔の直径を大きく設計すると、二次中間成形品に予備孔を成形するピアスパンチの直径を大きく設計できるので、ピアスパンチの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至図8は、本発明の第一実施例を示すもので、図1の(ア)及び(イ)は素材を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。図2の(ア)及び(イ)は予備二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。図3の(ア)及び(イ)は三次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)はカムロブを表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。図4は一次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。図5は予備二次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。図6は二次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。図7は三次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。図8はカムロブの冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。図9及び図10は、本発明の第二実施例を示すもので、図9の(ア)及び(イ)は二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は三次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。図10は二次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【0016】
まず、本発明の第一実施例の円柱状の素材W0からカムロブW5までの加工形状について説明する。素材W0は、図1の(ア)及び(イ)に示す如く、円柱形状である。一次中間成形品W1は、図1の(ウ)及び(エ)に示す如く、軸線方向の長さが素材W0の軸線方向の長さより短く、直径が素材W0の直径より大きい円柱形状である。予備二次中間成形品W2は、図2の(ア)及び(イ)に示す如く、外形は円柱状で予備二次中間成形品W2の軸心X2から偏心した位置の軸心X3上の軸線方向の両端に2つの凹部1,2が成形されている。二次中間成形品W3は、図2の(ウ)及び(エ)に示す如く、二次中間成形品W3の軸心X4から偏心した位置で軸線方向に予備孔3が貫通成形されている。そして、三次中間成形品W4は、図3の(ア)及び(イ)に示す如く、外形が後述する最終成形品であるカムロブW5と同一である。すなわち、三次中間成形品W4の外形は、半円形状のカムベース9及びカムベース9から外側に突出するカムトップ8を有する。また、カムベース9の軸心X6周辺には、軸線方向に貫通し、軸線に対する垂直断面が、カムベース9側が大径でカムトップ8側が小径である2つの円をつないだ形状である変形孔4を有している。カムロブW5は、図3の(ウ)及び(エ)に示す如く、三次中間成形品W4に対し、軸心X7に軸線方向に貫通する孔5が成形されている。この孔5は、平面形状が円形状で、二次中間成形品W3の予備孔3及び三次中間成形品W4の変形孔4より径方向の寸法が大きい。
【0017】
次に一次中間成形品W1を成形する一次中間成形品成形装置11、予備二次中間成形品W2を成形する予備二次中間成形品成形装置31、二次中間成形品W3を成形する二次中間成形品成形装置51、三次中間成形品W4を成形する三次中間成形品成形装置71、及びカムロブW5を成形するカムロブ成形装置91について図4乃至図8に基づいて説明する。
【0018】
図4に示す一次中間成形品成形装置11は、第一移動型12及び第一固定型20より構成される。第一移動型12は、素材W0を軸線方向に押圧する第一パンチ13を有する。第一固定型20は、素材W0を一次中間成形品W1に成形するための円柱状の第一型彫空間21を有する一次中間成形品成形ダイ22、一次中間成形品成形ダイ22の軸心部に配置され、一次中間成形品W1を成形する第一型彫空間21の一部を構成し、成形された一次中間成形品W1を一次中間成形品成形ダイ22の外に押出す第一ノックアウト23、第一ノックアウト23を進退自在に保持する第一ノックアウトホルダー24を有する。
【0019】
図5に示す予備二次中間成形品成形装置31は、第二移動型32及び第二固定型40より構成される。第二移動型32は、一次中間成形品W1の軸線方向の一端を押圧して予備二次中間成形品W2を成形する第二上パンチ33を有する。第二固定型40は、一次中間成形品W1を予備二次中間成形品W2に成形するための円柱状の第二型彫空間41を有する予備二次中間成形品成形ダイ42、予備二次中間成形品成形ダイ42の軸心部に配置され、一次中間成形品W1の軸線方向の他端を押圧して予備二次中間成形品W2を成形する第二下パンチ45、成形された予備二次中間成形品W2を予備二次中間成形品成形ダイ42の外に押出す第二ノックアウト43、第二ノックアウト43を進退自在に保持する第二ノックアウトホルダー44を有する。ここで、第二上パンチ33及び第二下パンチ45の軸心X12は、予備二次中間成形品成形ダイ42の円柱状の第二型彫空間41の軸心X11に対して偏心している。
【0020】
図6に示す二次中間成形品成形装置51は、第三移動型52及び第三固定型60より構成される。第三移動型52は、予備二次中間成形品W2に予備孔3を貫通して二次中間成形品W3を成形する第三ピアスパンチ53を有する。第三固定型60は、二次中間成形品W3を成形するための円柱状の第三型彫空間61を有する二次中間成形品成形ダイ62、二次中間成形品成形ダイ62の軸心部に配置され、成形された二次中間成形品W3を二次中間成形品成形ダイ62の外に押出す第三ノックアウト63、第三ノックアウト63を進退自在に保持する第三ノックアウトホルダー64を有する。第三ノックアウト63の内部には、二次中間成形品W3に予備孔3を成形した際に成形される二次中間成形品余肉部16を成形装置51の外に排出する第三排出路65が設けられている。ここで、第三ピアスパンチ53の軸心X14は、二次中間成形品成形ダイ62の円柱状の第三型彫空間61の軸心X13に対して偏心している。
【0021】
図7に示す三次中間成形品成形装置71は、第四移動型72及び第四固定型80より構成される。第四移動型72は、第四パンチ73を有する。第四固定型80は、三次中間成形品W4を成形するための第四型彫空間81を有する三次中間成形品成形ダイ82、三次中間成形品成形ダイ82の軸心部に配置され、三次中間成形品W4を成形する第四型彫空間81の一部を構成し、成形された三次中間成形品W4を三次中間成形品成形ダイ82の外に押出す第四ノックアウト83、第四ノックアウト83を進退自在に保持する第四ノックアウトホルダー84を有する。
【0022】
図8に示すカムロブ成形装置91は、第五移動型92及び第五固定型100より構成される。第五移動型92は、三次中間成形品W4に三次中間成形品W4の変形孔4より大きい孔5を貫通成形する第五ピアスパンチ93を有する。第五固定型100は、カムロブW5を成形するための第五型彫空間101を有するカムロブ成形ダイ102、カムロブ成形ダイ102の軸心部に配置され、成形されたカムロブW5をカムロブ成形の外に押出す第五ノックアウト103、第五ノックアウト103を進退自在に保持する第五ノックアウトホルダー104を有する。第五ノックアウト103の内部には、カムロブW5の孔5を成形した際に成形されるカムロブ余肉部17をカムロブ成形装置91の外に排出する第五排出路105が設けられている。
【0023】
次に円柱状の素材W0からカムロブW5を成形する方法を順次説明する。
【0024】
まず、線材を必要な長さに切断した図1の(ア)及び(イ)に示される円柱状の素材W0を、図示せぬ搬送装置により、一次中間成形品成形装置11の第一固定型20に形成された第一型彫空間21に投入する。続いて、第一パンチ13が下降して、図4に示す如く、円柱状の素材W0を軸線方向に押圧し、軸線方向の長さが素材W0の軸線方向の長さより短く、直径が素材W0の直径より大きい円柱状の一次中間成形品W1を成形する。
【0025】
一次中間成形品W1の成形が完了すると、第一パンチ13が上昇する。その後、第一ノックアウト23が上昇して一次中間成形品W1が一次中間成形品成形ダイ22から取り出される。
【0026】
次に、取り出された一次中間成形品W1は、図示せぬ搬送装置により、予備二次中間鍛造品成形装置31の第二固定型40に形成された第二型彫空間41に投入される。続いて、第二移動型32の第二上パンチ33が下降して、図5に示す如く、一次中間成形品W1を第二上パンチ33と第二下パンチ45により挟み込み、2つの凹部1,2を有する予備二次中間成形品W2を成形する。ここで、第二上パンチ33及び第二下パンチ45の軸心X12は、円柱状の第二型彫空間41の軸心X11に対して偏心しており、図2に示す如く、成形された予備二次中間成形品W2の2つの凹部1,2の軸心X3は、予備二次中間成形品W2の軸心X2から偏心している。また、この2つの凹部1,2の間に二次中間成形品余肉部16が成形される。
【0027】
予備二次中間成形品W2の成形が完了すると、第二上パンチ33が上昇する。その後、第二ノックアウト43が上昇して、予備二次中間成形品W2が予備二次中間成形品成形ダイ42から取り出される。
【0028】
取り出された予備二次中間成形品W2は、図示せぬ搬送装置により、二次中間成形品成形装置51の第三固定型60に形成された第三型彫空間61に投入される。そして、第三移動型52の第三ピアスパンチ53が下降して、図6に示す如く、予備二次中間成形品W2の凹部1,2の間に成形された二次中間成形品余肉部16を打ち抜き、二次中間成形品W3を成形する。ここで、第三ピアスパンチ53の軸心X14は、円柱状の第三型彫空間61の軸心X13から偏心しており、図2に示す如く、成形された二次中間成形品W3の予備孔3の軸心X5は、二次中間成形品W3の軸心X4から偏心している。このため、二次中間成形品W3は、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなっている。
【0029】
二次中間成形品W3の成形が完了すると、第三ピアスパンチ53が上昇する。その後、第三ノックアウト63が上昇して、二次中間成形品W3が二次中間成形品成形ダイ62から取り出される。
【0030】
続いて、取り出された二次中間成形品W3は、図示せぬ搬送装置により、三次中間成形品成形装置71の第四固定型80に形成された第四型彫空間81に投入される。投入された二次中間成形品W3は、搬送装置により、カムトップ予定部6が第四型彫空間81のカムトップ成形部86側となり、カムベース予定部7が第四型彫空間81のカムベース成形部87側となるように配置される。そして、第四移動型72の第四パンチ73が下降して、図7に示す如く、二次中間成形品W3を軸線方向に押圧し、外形が最終的に成形されるカムロブW5と同一のカムトップ8とカムベース9を有する三次中間成形品W4を成形する。ここで、三次中間成形品W4の変形孔4は、二次中間成形品W3の予備孔3が軸線方向につぶれ、カムベース9側よりカムトップ8側に大きく伸びて成形される。このため、図3に示す如く、変形孔4の垂直断面は、カムベース9側が大径でカムトップ8側が小径である2つの円をつないだ形状である。尚、この変形孔4の周りには、後に打ち抜くカムロブ余肉部17が成形される。
【0031】
三次中間成形品W4の成形が完了すると、第四パンチ73が上昇する。その後、第四ノックアウト83が上昇して、三次中間成形品W4が三次中間成形品成形ダイ82から取り出される。
【0032】
取り出されたカムロブW5の外形を有する三次中間成形品W4は、図示せぬ搬送装置により、カムロブ成形品成形装置91の第五固定型100に形成されたカムロブW5の外形を有する第五型彫空間101に投入される。続いて、第五移動型92の第五ピアスパンチ93が下降して、図8に示す如く、三次中間成形品W4の軸心X6の周辺のカムロブ余肉部17を第五ピアスパンチ93により肉を変形孔4内に流動させながら打ち抜いて、軸心X7に軸線方向に貫通した孔5を有するカムロブW5を成形する。打ち抜かれたカムロブ余肉部17は、第五ノックアウト103に成形された第五排出路105から排出される。
【0033】
カムロブW5の成形が完了すると、第五ピアスパンチ93が上昇する。その後、第五ノックアウト103が上昇して、カムロブW5がカムロブ成形ダイ102から取り出され、カムロブW5の成形が終了する。
【0034】
本発明のカムロブの成形方法によれば、外周が軸心を中心に半円形状のカムベース9と、外周がカムベース9から外側に突出するカムトップ8と、軸心を中心に軸線方向に貫通する孔5と、を有するカムロブの成形方法において、略円柱状の一次中間成形品W1を成形する第一工程と、一次中間成形品W1にカムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔3を成形した二次中間成形品W3を成形する第二工程と、二次中間成形品W3を軸線方向に押圧して、カムトップ8、カムベース9、及び予備孔3が変形した変形孔4を成形した三次中間成形品W4を成形する第三工程と、三次中間成形品W4に変形孔3より大きい孔5を成形してカムロブW5を成形する第四工程と、を有するため、二次中間成形品W3の軸線方向に貫通する予備孔3により、カムベース8とカムトップ9とを有する三次中間成形品W3の成形時、肉が二次中間成形品W3の外周側に加えて予備孔3内に流動し、三次中間成形品W3を成形する三次中間成形品成形ダイ82内での肉の流動が促進されて、成形荷重を低くすることができる。しかも、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔3を二次中間成形品W3に成形することにより、カムベース9側より肉量が必要なカムトップ8側に予め肉量を多く配置することができるため、二次中間成形品W3を軸線方向に圧縮した際に、カムトップ8の先端まで肉を流動させることができるので、所望の形状のカムトップ8を成形することができる。
【0035】
また、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように成形された予備孔3を有する二次中間成形品W3を押圧することにより、予備孔3が三次中間成形品W4にカムトップ8側に伸びて変形する。この予備孔3が変形した変形孔4は、カムロブW5の軸心に成形する孔5周辺に成形されるため、カムロブW5の孔5の成形時に、取り除く肉量を削減することができ、素材の歩留まりをよくすることができる。
【0036】
そして、一次中間成形品W1の軸心から偏心した位置に予備孔3を成形した二次中間成形品W3を成形すると、本成形方法を容易に実現することができる。
【0037】
更に、三次中間成形品W4の軸心X6を第五ピアスパンチ93により打ち抜いてカムロブW5に軸線方向に貫通した孔5を成形する場合には、肉が変形孔4内に流動しながらカムロブ余肉部17を打ち抜くことができるので、カムロブ成形品成形装置91の成形荷重を低くすることができる。
【0038】
尚、第一実施例では、一次中間成形品W1の軸心X1から偏心した位置に、軸線方向に貫通する予備孔3を成形し、カムトップ8となる予定のカムトップ予定部6の径方向の肉厚が、カムベース9となる予定のカムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるように二次中間成形品W3を成形していたが、第二実施例として、図9の(ア)及び(イ)に示す如く、円柱形状の一次中間成形品W1の軸心X104に、軸線に対する垂直断面の予備孔103の形状が、円の一部が欠けた欠円形状である二次中間成形品W103を成形し、カムトップ108となる予定のカムトップ予定部106の径方向の肉厚が、カムベース109となる予定のカムベース予定部107の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔103を成形した二次中間成形品W103を成形してもよい。
【0039】
そして、二次中間成形品W103が軸線方向に押圧され成形された三次中間成形品W4は、図9の(ウ)及び(エ)に示す如く、外形が最終成形品であるカムロブW5と同一である。すなわち、三次中間成形品W104の外形は、半円形状のカムベース109及びカムベース109から外側に突出するカムトップ108を有する。また、カムベース109の軸心X106周辺には、軸線方向に貫通し、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である変形孔104を有している。
【0040】
次に、第二実施例における二次中間成形品成形装置151を図10に基づいて説明する。二次中間成形品成形装置151は、第三移動型152及び第三固定型160より構成される。第三移動型152は、一次中間成形品W1に予備孔3を貫通して二次中間成形品W3を成形する第三ピアスパンチ153を有する。第三固定型160は、二次中間成形品W3を成形するための円柱状の第三型彫空間161を有する二次中間成形品成形ダイ162、二次中間成形品成形ダイ162の軸心部に配置され、成形された二次中間成形品W103を二次中間成形品成形ダイ162の外に押出す第三ノックアウト163、第三ノックアウト163を進退自在に保持する第三ノックアウトホルダー164を有する。第三ノックアウト163の内部には、二次中間成形品W103の予備孔103を成形した際に成形される二次中間成形品余肉部116を成形装置151の外に排出する第三排出路165が設けられている。ここで、第三ピアスパンチ153の軸線X113に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である。
【0041】
続いて、一次中間成形品W1から二次中間成形品W103を成形する方法を説明する。図4の一次中間成形品成形装置11から取り出された一次中間成形品W1は、図示せぬ搬送装置により、二次中間鍛造品成形装置151の第三固定型160に形成された第三型彫空間161に投入される。続いて、第三移動型152の第三ピアスパンチ153が下降して、図10に示す如く、二次中間成形品W2の二次中間成形品余肉部116を打ち抜き、二次中間成形品W103を成形する。
【0042】
尚、第二実施例では、一次中間成形品W1に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔103を成形した二次中間成形品W103を成形するため、本成形方法を容易に実現することができる。また、決められた範囲である一次中間成形品W1に、カムトップ予定部106の径方向の肉厚が、カムベース予定部107の径方向の肉厚よりも厚くなるように予備孔103を成形するためには、第一実施例の一次中間成形品W1の軸心X1から偏心した位置に、軸線に対する垂直断面の形状が円の予備孔3を成形するよりも、一次中間成形品W1に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である予備孔103を成形する方が、欠けた箇所を大きく設計することによって、予備孔103の直径を大きく設計することができる。このため、三次中間成形品W104の成形時、予備孔103内に多くの肉を流動させることが可能となり、成形荷重を更に低くすることができる。
【0043】
また、二次中間成形品W103の予備孔103の直径を大きく設計すると、二次中間成形品W103に予備孔103を成形する第三ピアスパンチ153の直径を大きく設計できるので、第三ピアスパンチ153の耐久性を向上させることができる。
【0044】
尚、第一実施例の一次中間成形品W3の予備孔3は、2回の鍛造工程で成形しているが、1回の鍛造工程で成形してもよい。更に、第一実施例及び第二実施例では、変形孔4,104内に肉を流動させながら押圧できるので、冷間鍛造で三次中間成形品W4を成形し、三次中間成形品成形装置71の成形荷重を低くする効果が顕著に現れるが、素材W0を600〜900℃に温めて鍛造する温間鍛造、温間鍛造以上の温度に素材W0を加熱して鍛造する熱間鍛造に適用することも可能である。
【0045】
加えて、第一実施例及び第二実施例では、二次中間成形品W3の予備孔3及びカムロブW5の孔5は、鍛造により成形しているが、切削加工により成形してもよい。二次中間成形品W3,W103の予備孔3,103は、カムトップ予定部6,106の径方向の肉厚が、カムベース予定部7の径方向の肉厚よりも厚くなるのであれば、他の形状(例えば、多角形)であってもよい。二次中間成形品成形装置11、予備二次中間成形品成形装置31、二次中間成形品成形装置51、三次中間成形品成形装置71、及びカムロブ成形装置91は、上下に各移動型12,32,52,72,92及び各固定型20,40,60,80,100を配置しているが、水平方向に配置してもよい。二次中間成形品成形装置11、予備二次中間成形品成形装置31、二次中間成形品成形装置51、三次中間成形品成形装置71、及びカムロブ成形装置91の各移動型12,32,52,72,92は、各々1個の型から構成されているが、適宜分割型を組み付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】(ア)及び(イ)は本発明の第一実施例の素材を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は本発明の第一実施例の二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。
【図2】(ア)及び(イ)は本発明の第一実施例の予備二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は本発明の第一実施例の二次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。
【図3】(ア)及び(イ)は本発明の第一実施例の二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は本発明の第一実施例のカムロブを表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。
【図4】本発明の第一実施例の二次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【図5】本発明の第一実施例の予備二次中間成形品を成形する冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【図6】本発明の第一実施例の二次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【図7】本発明の第一実施例の三次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表し、左半部が成形前、右半部が成形後の状態を表す断面平面図である。
【図8】本発明の第一実施例のカムロブの冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【図9】(ア)及び(イ)は本発明の第二実施例の二次中間成形品を表し、(ア)は断面正面図、(イ)は平面図であり、(ウ)及び(エ)は本発明の第二実施例の三次中間成形品を表し、(ウ)は断面正面図、(エ)は平面図である。
【図10】本発明の第二実施例の二次中間成形品の冷間鍛造成形工程を表す断面平面図である。
【符号の説明】
【0047】
3,103 予備孔
4 変形孔
5 孔
6 カムトップ予定部
7 カムベース予定部
8 カムトップ
9 カムベース
W1 一次中間成形品
W3,W103 二次中間成形品
W4 三次中間成形品
W5 カムロブ
X1 一次中間成形品の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が軸心を中心に半円形状のカムベース(9)と、外周がカムベース(9)から外側に突出するカムトップ(8)と、軸心を中心に軸線方向に貫通する孔(5)と、を有するカムロブの成形方法において、
略円柱状の一次中間成形品(W1)を成形する第一工程と、
前記一次中間成形品(W1)に前記カムトップ(8)となる予定のカムトップ予定部(6)の径方向の肉厚が、前記カムベース(9)となる予定のカムベース予定部(7)の径方向の肉厚よりも厚くなるように軸線方向に貫通する予備孔(3)を成形した二次中間成形品(W3)を成形する第二工程と、
該二次中間成形品(W3)を軸線方向に押圧して、前記カムトップ(8)、前記カムベース(9)、及び前記予備孔(3)が変形した変形孔(4)を成形した三次中間成形品(W4)を成形する第三工程と、
該三次中間成形品(W4)に前記変形孔(3)より大きい前記孔(5)を成形してカムロブ(W5)を成形する第四工程と、を有することを特徴とするカムロブの成形方法。
【請求項2】
前記一次中間成形品(W1)の軸心(X1)から偏心した位置に前記予備孔(3)を成形した前記二次中間成形品(W3)を成形することを特徴とする請求項1に記載のカムロブの成形方法。
【請求項3】
前記一次中間成形品(W1)に、軸線に対する垂直断面の形状が円の一部が欠けた欠円形状である前記予備孔(103)を成形した前記二次中間成形品(W103)を成形することを特徴とする請求項1に記載のカムロブの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−267372(P2008−267372A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198451(P2007−198451)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000238360)武蔵精密工業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】