カメラおよびその制御方法
【課題】 記者会見会場や結婚式会場など、数多くのフラッシュが発光される環境では、本発光の前に行われる予備発光に対して、他のフラッシュからの発光が重畳してくる。これにより、予備発光についての測光精度が低下し、適正な調光が困難となる。
【解決手段】 本発光の前に予備発光を行なうカメラシステムにおいて、複数回にわたり予備発光について測光を行ない、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なう。
【解決手段】 本発光の前に予備発光を行なうカメラシステムにおいて、複数回にわたり予備発光について測光を行ない、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュなどの補助光源の発光量を自動的に調整するカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、TTL(Through The Lens)調光では、フィルム面からの反射光を測光することによって、補助光源の発光量を決定していた。しかしながら、フィルムの種類によって反射率が異なるため、反射光に基づいて決定される発光量が不安定になるおそれがある。また、フィルムに代えて、撮像素子を採用しているデジタル一眼レフカメラでは、撮像素子からの反射光がほとんど得られないため、この方式を事実上採用できない。
【0003】
この課題を解決すべく、本出願人は、先に「被写体に向けて予備発光を行ない、予備発光による被写体からの反射光を第1の測光手段で測光する一方で、予備発光の直接光を第2の測光手段によって測光し、この反射光の測光値と、直接光の測光値とによって調光を行なうカメラシステム」を提案している(特許文献1)。
【0004】
ところで、コンパクトデジタルカメラでは、一眼レフカメラのようなミラーがないため、撮像用のCCDを直接的に利用して調光することができる。特許文献2によれば、とりわけ、CCDに係る電子シャッタのシャッタースピードを1500分の1に設定して予備発光の反射光を1回だけ測光することで、蛍光灯からのフリッカの影響を除去して調光を行なう発明が開示されている。
【特許文献1】特開平9−61883号公報
【特許文献2】特開平10−32750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記者会見や結婚式では、多数のカメラマンが1つの被写体に対して数多くの撮影を行なう。この場合、第1のカメラシステムが予備発光とその測光を実行している最中に、他の第2のカメラシステムが本発光を実行してしまうと、第1のカメラシステムは自己の予備発光について正しく測光できなくなってしまう。
【0006】
さらに、上述したように、第2のカメラシステムも予備発光を行なうカメラシステムであれば、他からの本発光だけでなく他からの予備発光も、第1のカメラシステムの予備発光に重畳する可能性があるため、正しく測光できない確率がさらに上昇してしまう。他のカメラシステムからの発光の影響を受ければ、露出が適性値よりアンダーとなってしまうことはいうまでもない。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明のように、シャッタースピードを1500分の1に設定して予備発光を1回だけ測光する方法では、測光の瞬間に他のカメラシステムが発光してしまったときは、やはりその影響を低減することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、本発光の前に予備発光を行なうカメラにおいて、複数回にわたり予備発光について測光を行ない、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数回にわたり予備発光について測光を行なうことで、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なうので、予備発光時に、例えば他のカメラマンによる補助光源の光が重畳してきたとしても、従来よりもその影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係るカメラシステムの主に光学的な構成の一例を示す横断面図である。1はカメラ本体であり、この中に写真撮影に必要な光学部品、メカ部品、電気回路およびフィルムなどが収納されている。主ミラー2は、観察状態と撮影状態とに応じて撮影光路内に斜設されたり撮影光路内から退去されたりする。また、主ミラー2はハーフミラーとなっている。これにより、撮影光路内に斜設されているときは、後述する焦点検出光学系に被写体からの光線の約50%を、主ミラー2の背面に配置された小さなサブミラー25へと導いている。
【0012】
3は撮影レンズ12〜14の予定結像面に配置されたピント板(焦点板)3である。4はファインダ光路変更用のペンタプリズムである。5はファインダであり、撮影者はファインダ5の窓を通してピント板3を視認することにより撮影画面を見ることができる。6は撮影画面内の被写体輝度を測定するための結像レンズである。7は結像レンズ6を通過してきた光を受光する多分割測光センサである。8はフォーカルプレン式のシャッタである。9は感光部材としてのフィルムである。なお、デジタルカメラシステムの場合は、フィルムに代えて撮像素子が配置されることはいうまでもない。
【0013】
カメラ本体1と撮影レンズとの電気的結合は、インターフェースとして機能するマウント接点10を介して行われる。撮影レンズは、レンズ鏡筒11、第1群レンズ12、第2群レンズ13、第3群固定レンズ14、第2群レンズ13と第3群固定レンズ14との間に配設される絞り15を備えている。第1群レンズ12は光軸上を前後に移動する合焦用のレンズであり、これにより撮影画面のピント位置を調整することができる。同様に第2群レンズ13も光軸上を前後に移動でき、この移動に応じて撮影画面の変倍(ズーミング)が行われる。また、第1群レンズ12の駆動はモータ16によって行われ、絞り15の絞り駆動はモータ17によって行われる。
【0014】
ペンタプリズム4の収納部の上面には、アクセサリーシュー22が設けられており、このアクセサリーシュー22には外付フラッシュ18を装着することができる。外付フラッシュ18は、キセノン管19、このキセノン管19の背面に設置される反射板20、キセノン管19の前方に設置されるフレネルレンズ21を備えている。さらに、反射板20の一部には、グラスファイバー30の一端が挿入され、その他端にはキセノン管19で発光した光をモニタするための受光素子などのセンサ31(PD1)が接続されている。このように、グラスファイバー30を介してキセノン管19の直接光を測光することで、直接光の測光値に関しては、他のカメラシステムからの発光の影響を低減している。反射板20には同様に光をモニタするための受光素子などのセンサ32(PD2)が接続されている。センサ32はキセノン管19の発光電流を制限してフラット発光を行なうために用いられる。なお、キセノン管19に代えて、白色LEDなどの他の光源を採用してもよいことはいうまでもない。
【0015】
サブミラー25の出射光路上に位置するカメラ本体1の底部近傍には、焦点検出ユニット26が設置されている。この焦点検出ユニット26は、2次結像ミラー27、2次結像レンズ28、焦点検出ラインセンサ29等を備えている。この焦点検出ラインセンサ29の検出面に2次結像面がくるように光学系が調整される。焦点検出ユニット26は、後記する電気回路の処理により、既知の位相差検出法によって撮影画面内の被写体の焦点状態を検出し、撮影レンズの焦点調節機構を制御するために用いられる。
【0016】
図2は、実施形態に係る測光エリアの分割例を示す図である。図中、40は撮影画面全体を表し、41は多分割測光センサ7の撮影画面上の測光エリアを表している。この例では、撮影画面を、E0(左側)、E1(中央)、E2(右側)E3(E0,E1,E2の外側の左半分)、E4(E0,E1,E2の外側の右半分)、E5(E3及びE4の外側)の6つのエリアに分割している。3つのエリアE0、E1、E2の各中心には、測距点P0,P1,P2がそれぞれ設定されている。撮影画面40の下部にはファインダ内LCD24が設けられ、シャッタ速度及び絞り値などを表示する。
【0017】
図3は、実施形態に係るカメラシステムにおける電気系の構成を示すブロック図である。既に説明した個所には同一の参照符号を付すことで、説明を簡略化する。
【0018】
MPU(マイクロ・プロセッサ・ユニット)100は、発振器101から供給されるクロック信号に同期して各種制御動作を実行する。MPU100に内蔵されたEEPROM102は、フィルムカウンタその他の撮影情報を記憶するための半導体メモリである。もちろん、RAMなどの半導体メモリがMPU100に内蔵されていてもよい。また、A/D変換器103は、焦点検出回路105及び多分割測光センサ7からのアナログ信号をA/D変換し、これをMPU100で処理する。
【0019】
MPU100には、焦点検出回路105、測光回路106、シャッタ制御回路107、モータ制御回路108、フィルム走行検知回路109、動作状態を検出するためのスイッチセンス回路110、ファインダ内に配置されるLCD24やモニタ用LCD42を駆動する液晶表示回路111などが接続されている。
【0020】
焦点検出回路105は、MPU100の信号に従って焦点検出ラインセンサ29の蓄積制御及び読出制御を行ない、それぞれの画素情報をMPU100へ出力する。測光回路106は、多分割測光センサ7により得られた画面内の各エリアの輝度信号をMPU100へ出力する。MPU100は、輝度信号をA/D変換し、撮影の露出調整を実行する。
【0021】
積分回路120は、測光回路106から出力される多分割測光センサ7の各エリアの測光値を積分する回路である。積分時間(タイミング)は、MPU100からの指示に基づく。積分回路120は、例えば、測光値を圧縮しながら積分することで、広いダイナミックレンジを確保することができる。なお、フラット発光では、安定状態でもリップルのために波高値に多少のばらつきが生じる。しかしながら、測光値を積分演算して得ることで、定常光を複数回測光して平均をとるタイプよりも、精度の良い測光を行なうことができる。
【0022】
シャッタ制御回路107は、MPU100からの信号に従って先幕のシャッタマグネット(MG−1)及び後幕のシャッタマグネット(MG−2)を走行させることで、露出動作を実行する。モータ制御回路108は、MPU100からの信号に従ってモータ104を制御することにより、主ミラー2の斜設・退去(アップダウン)、シャッタ8のチャージおよびフィルム9の給送を行なわせる。フィルム走行検知回路109は、フィルム給送時にフィルム9の1駒分が巻き上げられたか否かを検知し、その結果をMPU100に信号を送出する。
【0023】
焦点検出回路105には、焦点検出ラインセンサ29が接続されている。シャッタ制御回路107には、シャッタマグネットMG−1,MG−2が接続されている。モータ制御回路108には、フィルム巻き上げ等の駆動源となるモータ104が接続されている。また、スイッチセンス回路110には、SW1、SW2の各スイッチが接続されている。SW1は、レリーズボタン(不図示)の第1ストロークでオンとなって、測光及びAF(オートフォーカス)を開始させるスイッチである。SW2は、レリーズボタンの第2ストロークでオンとなって、露光動作を開始させるスイッチである。そして、SW1及びSW2のオン動作はスイッチセンス回路110で検知され、その検知結果がMPU100へ送出される。
【0024】
また、ラインセンサ29は、上記したようにファインダ上の3つの測距点に対応した3組のラインセンサLine−L(左),Line−C(中央),Line−R(右)から構成される公知のCCDラインセンサである。
【0025】
以上の構成によるカメラ本体1には、レンズ鏡筒11がマウント接点104を介して接続されている。レンズ鏡筒11は、レンズ制御回路112を内蔵しており、このレンズ制御回路112とMPU100との間で信号の送受信が行われる。レンズ制御回路112には、モータ16,17及び光検出器35が接続されている。この光検出器35は、円板状で一定間隔にスリットが設けられたパルス板36との組み合わせで用いられる。第1群レンズ12の移動に応じてパルス板36が回転すると、光検出器35によりスリットをカウントすることで、MPU100は、第1群レンズ12の位置情報を取得し、レンズの焦点を調節する。
【0026】
さらに、カメラ本体1には、アクセサリーシュー22を介して外付フラッシュ18が接続されている。外付フラッシュ18は、外付フラッシュ18内の各回路を制御するための発光制御回路200を備えている。発光制御回路200は、MPU100からの信号に基づいて被写体に向けて閃光を発光させる回路である。
【0027】
201は、電池215の電圧を昇圧するDC/DCコンバータであり、発光制御回路200からの指示により電池電圧を昇圧し、メインコンデンサ208(C1)に約300Vの電圧を蓄えることができる。
【0028】
抵抗211,212(R1,R2)は、メインコンデンサ208の電圧を発光制御回路200によってモニタするために設けられた分圧抵抗である。発光制御回路200は、分圧抵抗211,212により分圧された電圧をA/D変換器202でA/D変換することにより、メインコンデンサ208の電圧をモニタする。これにより、発光制御回路200は、DC/DCコンバータ201を止めて昇圧を停止したり、現在の充電電圧の値をカメラ本体1側のMPU100に伝達したりする。トリガ回路203は、発光制御回路200を介してMPU100からの指示を受け、キセノン管19のトリガ電極に高電圧を印加し、キセノン管19の放電を誘発する。これにより、メインコンデンサ208に蓄えられた電荷エネルギーが、キセノン管19を介して光エネルギーとなって放出される。
【0029】
発光停止回路204は、トリガ回路203からトリガ信号が出力されるとオンとなるが、その後、コンパレータ205又は206の出力及び発光制御回路200からの信号に応じてオフとなり、キセノン管19の発光を停止させる。発光停止回路204がオフとなると、キセノン管19、ダイオード213(D1)、コイル214(L1)により還流ループが形成されるため、すぐには発光量が低下しないようになっている。なお、発光停止回路204を短い周期で連続的にオン/オフを行なうことにより、フラット発光が可能となる。
【0030】
発光制御回路200とコンパレータ205,206との間にD/A変換器207が接続されている。209はセンサ32(PD2)に接続される第2のモニタ回路であり、センサ32の出力を増幅する。210はセンサ31(PD1)に接続される第1のモニタ回路であり、センサ32の出力を増幅する。また、積分回路221は、モニタ210の出力電圧を積分し、その値をコンパレータ205へ印加する。
【0031】
〔フラット発光〕
次に、外付フラッシュ18の各種の動作について個別に説明する。発光制御回路200は、D/A変換器207に所定の値を設定する。この時、キセノン管19はまだ発光を始めていないので、センサ32(PD2)の光電流は少ない。これは、コンパレータ206の反転入力端子に入力されるモニタ209の出力が低いことを意味する。したがって、コンパレータ206は“H”レベルの出力を発光停止回路204へ出力している。トリガ回路203からトリガ信号が出力されると、キセノン管19は発光を開始する。すぐに発光の波高値は上昇する。センサ32の光電流も多くなり、それにつれてモニタ209の出力も上昇し、最終的に、コンパレータ206の出力が“L”レベルになる。
【0032】
コンパレータ206の出力が“L”レベルになると、発光停止回路204が動作し、キセノン管19の放電ループが断たれる。しかしながら、上述した還流ループによって、波高値が瞬時に落ちることはなく、徐々に低下する。波高値が落ちてくると、センサ32の光電流が少なくなり、再びコンパレータ206の出力は“H”レベルに転じ、キセノン管19の放電ループが形成され、波高値は上昇方向になる。
【0033】
このように、コンパレータ206の出力により、短い周期で波高値の増加と減少を繰り返すことで、フラット発光が実現される。発光制御回路200が発光停止回路204に停止信号を出力すると、フラット発光が終了する。また、D/A変換器207に与えられるデジタル値を制御することで、コンパレータ206の非反転入力端子に入力される電圧を異ならせ、センサ32の光電流の動作ポイントを変化させることで、フラット発光の波高値を所望の値に制御することができる。
【0034】
〔予備発光及び積分処理〕
予備発光は、所定の波高値で所定時間にわたりフラット発光を行なうことにより達成される。予備発光と並行して、センサ31(PD1)はキセノン管19から放出される直接光の輝度を測光する。また、発光制御回路200は積分回路221に積分開始を指示する。積分回路221は、モニタ210からの出力により、予備発光のための積分を開始する。また、積分回路221は、測光量を対数圧縮し、圧縮された値を積分するように構成されている。予備発光が所定時間行われると、積分回路221の出力がA/D変換器202によって変換され、そのデジタル信号が発光制御回路200によって読み出される。
【0035】
予備発光についての被写体からの反射光については、多分割測光センサ7によって受光する。積分回路120は、多分割測光センサ7に接続された測光回路106から出力される輝度値を積分する。本実施形態では、予備発光についての被写体からの反射光を複数回にわたり測光するため、積分回路120は、MPU100の指示に応じて、複数の積分測光値をMPU100に出力する。
【0036】
〔本発光制御〕
MPU100は、予備発光(直接光)の積分値、及び予備発光時の被写体反射光輝度値(多分割測光センサ7の出力)に基づいて本発光量の適正積分値を求め、求めた適正積分値を、発光制御回路200を介してD/A変換器207に設定する。その後、積分回路221は初期状態に戻り、トリガ回路203により、キセノン管19の発光を開始させる。この発光時の輝度はセンサ31によって測光される。瞬時の測光値が積分回路221により積分される。積分により得られた値が、予め設定された適正積分値に到達すると、コンパレータ205の出力は“H”レベルから“L”レベルに切り替わり、発光停止回路204によって発光の停止処理が行われる。このとき、発光制御回路200からの信号により、コンパレータ206の出力は無視される。以上のようにして、予備発光に続く本発光においては、その発光量が演算で求めた適正な発光量に制御される。
【0037】
図4は、実施形態に係るカメラシステムの基本的な撮影処理の例示的なフローチャートである。S401において、MPU100は、レリーズボタンの第1ストロークに応じてスイッチSW1がオンになったことを検出する。MPU100は、SW1のオンを検出すると、S402において、スイッチセンス回路110によって他の操作スイッチ(不図示)の状態を読み込み、シャッタ速度の決め方や絞りの決め方等の様々な撮影モードの設定を実行する。例えば、MPU100は、撮影者の意思等によって設定された撮影モードや被写体輝度のEVからシャッタ速度(TV)と絞り値(AV)とによる露出値(EV=TV+AV)を決定する。S403において、MPU100は、位相差検出法による焦点検出動作及びこれに伴うレンズ駆動を実行する。
【0038】
S404において、MPU100は、測光回路106によって自然光の下での被写体の輝度を測光する。これにより、画面上にある6つのエリアについてそれぞれ被写体輝度値が得られる。測光値は、対数圧縮した値(EV)とする。S405において、MPU100は、6つのエリアの被写体輝度値に基づいて、公知のアルゴリズムから露出値を決定し、設定された撮影モードに従ってシャッタ速度の値と絞りの値を決定する。S406において、MPU100は、レリーズボタンの第2ストロークで動作するスイッチSW2のオンの有無を判別する。SW2がオフであればS401に戻る。
【0039】
一方、SW2がオンであれば、S407において、MPU100は、発光制御回路200からの情報伝達により、現在におけるコンデンサ208の充電電圧情報Vcを取得する。また、MPU100は、レンズ制御回路112からの情報伝達により被写体のカメラからの絶対距離情報Distを取得する。さらに、MPU100は、測光回路106からの予備発光直前の被写体輝度情報EVaを得る。
【0040】
ここで、S407において、S404と同様に測光及び演算を行なう理由は、スイッチSW1がオンとなったときと、スイッチSW2がオンとなったときとでは、その間に、撮影者がフレーミングを変更するなどして被写体の状態が変化している可能性があるためである。
【0041】
ところで、S407の測光時間は、S404の測光時間に比較して短くすることが望ましい。なぜなら、蛍光灯の下で発生するフリッカの影響をできるだけ少なくするためには、S404の測光処理では、比較的長い時間をかけて繰り返し測光し、その測光値の平均をとることが望ましいからである。これに対し、S407の測光処理では、レリーズタイムラグ等を小さくするために、予備発光時の測光と同等の短い測光時間とし、かつS407の測光時から予備発光時の測光時までの時間間隔もできるだけ短くする必要があるからである。
【0042】
S408において、MPU100は、取得した充電電圧情報Vc、絶対距離情報Dist及び被写体輝度情報EVaを基に予備発光の発光量を決定する。S409において、MPU100は、この決定値になるように、MPU100は発光制御回路200に指令を出し、予備発光を制御する。S410において、MPU100は、予備発光と同時に多分割測光センサ7に測光を行なわせる。とりわけ、本実施形態によれば、MPU100は、予備発光による被写体からの反射光について複数回の測光を行ない、得られた複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの発光の影響を受けているおそれのある測光値を抑圧する。
【0043】
なお、MPU100は、予備発光の直前に多分割測光センサ7により被写体の輝度を測光することが望ましい。これは、予備発光直前の測光値と予備発光の測光値とを差分演算し、予備発光のみによる被写体反射光の測光値を得るためである。また、後述するように、予備発光直前の測光値は、予備発光時のモード切り替えを行なうために、他のカメラシステムからの閃光光の存在を検出する際にも利用できる。
【0044】
また、発光制御回路200は、予備発光と並行して、キセノン管19の直接光をセンサ31で測光し、積分回路221で積分し、予備発光終了時に積分値をA/D変換し、この読み込みを行なう。
【0045】
S411において、MPU100は、予備発光の積分値、予備発光の被写体反射測光値、および露出値等から本発光の適正積分値を算出する。なお、本発明は、適正積分値の具体的な算出方法に大きく左右されるわけではないので、種々の算出方法を採用できる。例えば、特開平9−61913号公報に詳細に開示されているように、本発光適正比演算(同公報のS509)を実行して、予備発光に対して適正となる本発光の積分値を算出する方法(同公報のS511)なども、本発明は採用できる。
【0046】
S412において、MPU100は、露光動作に先行して主ミラー2をアップさせることで、サブミラー25とともに撮影光路から退去させ、被写体像が支障なくフィルム9に到達できるようにする。S413において、MPU100は、決められた露光量に基づく絞り値となるようにレンズ制御回路112に指令を出し、決められたシャッタ速度値になるようにシャッタ制御回路107を駆動する。
【0047】
S414において、MPU100は、シャッタ8の駆動に合わせ、露光中に本発光が行われように発光制御回路200を制御する。この本発光は、S411の演算によって求められた発光量となるように制御される。このようにして露光動作が終了すると、S415において、MPU100は、撮影光路より退去していた主ミラー2及びサブミラー25を復帰させ、さらに、モータ制御回路108及びフィルム走行検知回路109を動作させ、フィルム9を1駒だけ巻き上げる。このようにして発光制御が終了する。
【0048】
図5は、実施形態に係る予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートによれば、被写体からの反射光の測光処理(S501ないしS505)と、キセノン管の発光を直接的に測光する処理(S506)とが同時並行的に実行されることが示されている。また、本フローチャートは、上述のS410のサブルーチンに相当する。
【0049】
S501において、MPU100は、予備発光に対する被写体からの反射光を複数回に渡り測光すべく、カウンタの値iを1に設定する。S502において、MPU100は、被写体からの反射光についてi回目の積分測光を行なう。すなわち、測光回路106から出力される輝度値を積分回路120により積分する。S503において、MPU100は、カウンタの値iを1だけインクリメントする。S504において、MPU100は、カウンタ値iが所定回数を超えるか否かを判定する。所定回数を超える場合は、S505に進む。一方、所定回数以下であれば、S502に戻り、次の測光を実行する。
【0050】
S505において、MPU100は、取得された複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの閃光光が重畳したと思われる測光値について抑圧処理を実行する。これにより、他のカメラシステムからの閃光光が予備発光量の測光値に与える影響を低減でき、最終的には、本発光の調光を適正に実行することが可能となる。
【0051】
図6は、実施形態に係る発光タイミングと測光タイミングとの関係を例示した図である。とりわけ、図6(a)は、蛍光灯からの光量の変動(フリッカ)、キセノン管からの予備発光と主発光との各タイミング、被写体からの反射光の測光タイミング、およびキセノン管の直接測光のタイミングとを示している。S404における背景光の測光時間は、フリッカの影響を防止すべく、比較的長い測光時間となっている。ここでは、予備発光の測光時間をt pre[秒]として示している。また、TVは、シャッタ速度に応じた露光時間を示している。
【0052】
図6(b)は、予備発光に関して複数回の測光を行なわないときの発光タイミング、被写体反射光の測光タイミング、およびキセノン管19からの直接光の測光タイミングを示している。また、図6(c)は、予備発光に関して複数回の測光を行なうときの発光タイミング、被写体反射光の測光タイミング、およびキセノン管の直接測光タイミングを示している。図6(b)と図6(c)を比較すると分るように、予備発光に関して複数回の測光を行なうときは、1回あたり測光時間が短時間となっている。
【0053】
図7は、実施形態に係る予備発光に関する複数回の測光と、他のカメラシステムからの発光との関係を示す図である。この図では、予備発光700の途中で、他のカメラシステムからの発光704が重畳してきている。そのため、3回にわたる被写体反射光の測光値(701、702および703)のうち、3番目の測光値703は、他のカメラシステムからの発光704の影響を受けているため、抑圧対象となる。
【0054】
[抑圧処理の具体例]
図8は、実施形態に係る抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S801において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、比較演算等により、そのうちの最小値を決定する。通常、他のカメラシステムの発光が予備発光に対して重畳してきた場合、そのときの測光値は必ず上昇する。よって、最小値となる測光値は、他のカメラシステムからの発光の影響が最も少ないことになる。S802において、MPU100は、決定した最小値をEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。この最小値は、本発光の適正積分値を算出する際に、MPU100により読み出されて利用されることは言うまでもない。
【0055】
図9は、実施形態に係る他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S901において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、比較演算等により、そのうちの最大値を決定する。通常、他のカメラシステムの発光が予備発光に対して重畳していれば、そのときの測光値は必ず上昇するので、最大値となる測光値は、外乱の影響を最も大きく受けていることになる。S902において、MPU100は、決定した最大値を除外した残りの測光値の平均値を算出する。S903において、MPU100は、本発光の適正積分値の算出に使用されるべき値として、この平均値をEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。
【0056】
図10は、実施形態に係るさらに他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S1001において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、そのうちの3σを算出する。これは、統計処理における3σの法則により、異常な測光値を排除するためである。S1002において、MPU100は、3σとなる範囲内の測光値を決定する。S1003において、MPU100は、本発光の適正積分値の算出に使用されるべき値として、3σとなる範囲内の測光値らをEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。
【0057】
ところで、上述の実施形態は、予備発光による被写体からの反射光の測光を複数回にわたり実行するものであった。しかしながら、通常の測光時間(t pre)内で、複数回の測光を行なうには一回当たりの測光時間が短くなってしまう。そのため、場合によっては、十分な測光精度を確保できなくなる。この課題を解決するには、例えば、予備発光の発光時間とトータルでの測光時間とを通常の測光時間(t pre)よりも長くすることで、一回当たりの測光時間を十分な長さにすればよい。但し、予備発光時間が長くなれば、それに比例して、コンデンサのエネルギーが無駄に消費されたり、レリーズタイムラグが伸びてしまったりといった新たな課題が生じてしまう。そこで、これらの二律背反的な課題を解決するため手段を以下で説明する。
【0058】
図11は、実施形態に係る他の予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。また、本フローチャートは、上述のS410のサブルーチンに相当する。なお、既に説明した個所については同一の参照符号を付すことで説明を簡略化する。
【0059】
S1101において、MPU100は、カメラシステムの周囲環境が、他のカメラシステムからの発光の影響を受ける環境かどうかを判定する。例えば、上述した予備発光直前の被写体輝度の測光値(S407)が閃光光の影響を受けていれば、周囲の環境は、記者会見会場や披露宴会場など、多数の発光が行われる環境であると判定できる。
【0060】
図12は、被写体輝度についての測光値の変化例を示す図である。とりわけ、図12(a)は、閃光光の影響を受けていない場合を示しており、図12(b)は、閃光光の影響を受けていない場合を示している。この図から明らかなように、他のカメラシステムからの閃光光が発生したときは、測光値の一部に大きな変動を生ずることになる。そこで、MPU100は、被写体輝度の測光値の一部に大きな変動が存在する場合は、閃光光の影響を受けていると判定し、S1102に進む。受けていなければ、S1103に進む。
【0061】
代替的に、周囲環境について、カメラマンが手動で設定してもよい。周囲の環境については、カメラマンが熟知しているからである。この場合、MPU100は、モード設定ダイヤル等により入力される周囲環境についての設定指示を、スイッチセンス回路110を介して検出し、この検出結果に応じて周囲環境について判定する。
【0062】
S1102において、MPU100は、予備発光の測光時間を通常の場合よりも延長された値に設定する。その後、S501−S505を実行する。
【0063】
図13は、実施形態に係る予備発光の測光時間の延長例を示す図である。この例では、通常時に比較し、予備発光の測光時間を2倍以上に確保している。また、一回当たりの測光時間は通常時の測光時間t preと同一としている。この測光時間をどの程度まで長くするかは、レリーズタイムラグやエネルギー消費量などとのトレードオフになる。すなわち、長くすれば測定精度は向上するが、レリーズタイムラグやエネルギー消費量などは悪化してしまう。よって、このトレードオフを考慮した上で、カメラシステムごとに好適となる測光時間の長さを決めることになる。
【0064】
一方、閃光光の影響を受けていない場合は、S1103において、MPU100は、図6(b)に示したように、予備発光の測光時間を通常の測光時間t preとして測光を実行する。なお、いずれの場合も、並行してキセノン管19からの予備発光の直接光を直接的に測光することはいうまでもない(S506)。
【0065】
以上説明したように、図11に関連する実施形態では、カメラシステムの周囲環境に応じて予備発光の測光モードを切り替えるようにした。すなわち、他のカメラシステムからの閃光光が存在すれば、その影響を抑圧するモードを実行する。また、このモードでは、予備発光時間を通常よりも延長することで、1回当たりの測光精度を向上させることができる。一方、他のカメラシステムからの閃光光が存在しなければ、電力消費量やレリーズタイムラグについてより有利な測光モードを適用している。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、予備発光に対する被写体からの反射光について複数回にわたり測光を実行し、得られた複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧するので、本発光における調光に基準となる積分値を適正に設定できるようになる。これにより、従来よりも、適正な露出による画像を撮影することができる。
【0067】
また、抑圧に関しては、例えば、複数の測光値のうち最小値を選択したり、最大値以外の測光値の平均値を算出したり、あるいは、3σ内となる測光値の平均値を算出することで実現できる。いずれの場合も、他のカメラシステムからの発光の影響を受けたおそれのある測光値が、本発光の適正積分値に対して反映されにくくなる。
【0068】
また、カメラシステムの周囲の環境が、他のカメラシステムからの発光の影響を受けるおそれが高い環境においては、予備発光に対する被写体からの反射光についてn回(nは2以上の自然数)にわたり測光を実行するが、このような影響を受けるおそれが低い環境においては、当該反射光について測光をm回(mはn未満の自然数であり、例えばm=1)だけ実行する構成を採用することで、発光に要するエネルギーの浪費やレリーズのタイムラグの増加を低減している。とりわけ、この構成は、複数回の測光における一回当たり測光の精度を十分に確保するために、予備発光に関する測光時間を通常(図6(b))よりも長く確保する場合に有利である。
【0069】
また、他のカメラシステムからの発光の影響に限らず、予備発光に関する測光時間の一部の期間にて、この予備発光とは別の外乱となる発光が生じる状況において、本発明を適用することができる。
【0070】
また、本実施形態では、カメラ本体1と外付フラッシュ18とからなるカメラシステムを例にあげて説明を行ったが、カメラ本体にフラッシュが内蔵されているカメラについても本発明を適用できることは言うまでもないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態に係るカメラシステムの主に光学的な構成の一例を示す横断面図である。
【図2】実施形態に係る測光エリアの分割例を示す図である。
【図3】実施形態に係るカメラシステムにおける電気系の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るカメラシステムの基本的な撮影処理の例示的なフローチャートである。
【図5】実施形態に係る予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。
【図6】実施形態に係る発光タイミングと測光タイミングとの関係を例示した図である。
【図7】実施形態に係る予備発光に関する複数回の測光と、他のカメラシステムからの発光との関係を示す図である。
【図8】実施形態に係る抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図9】実施形態に係る他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図10】実施形態に係るさらに他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図11】実施形態に係る他の予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。
【図12】被写体輝度についての測光値の変化例を示す図である。
【図13】実施形態に係る予備発光の測光時間の延長例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュなどの補助光源の発光量を自動的に調整するカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、TTL(Through The Lens)調光では、フィルム面からの反射光を測光することによって、補助光源の発光量を決定していた。しかしながら、フィルムの種類によって反射率が異なるため、反射光に基づいて決定される発光量が不安定になるおそれがある。また、フィルムに代えて、撮像素子を採用しているデジタル一眼レフカメラでは、撮像素子からの反射光がほとんど得られないため、この方式を事実上採用できない。
【0003】
この課題を解決すべく、本出願人は、先に「被写体に向けて予備発光を行ない、予備発光による被写体からの反射光を第1の測光手段で測光する一方で、予備発光の直接光を第2の測光手段によって測光し、この反射光の測光値と、直接光の測光値とによって調光を行なうカメラシステム」を提案している(特許文献1)。
【0004】
ところで、コンパクトデジタルカメラでは、一眼レフカメラのようなミラーがないため、撮像用のCCDを直接的に利用して調光することができる。特許文献2によれば、とりわけ、CCDに係る電子シャッタのシャッタースピードを1500分の1に設定して予備発光の反射光を1回だけ測光することで、蛍光灯からのフリッカの影響を除去して調光を行なう発明が開示されている。
【特許文献1】特開平9−61883号公報
【特許文献2】特開平10−32750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、記者会見や結婚式では、多数のカメラマンが1つの被写体に対して数多くの撮影を行なう。この場合、第1のカメラシステムが予備発光とその測光を実行している最中に、他の第2のカメラシステムが本発光を実行してしまうと、第1のカメラシステムは自己の予備発光について正しく測光できなくなってしまう。
【0006】
さらに、上述したように、第2のカメラシステムも予備発光を行なうカメラシステムであれば、他からの本発光だけでなく他からの予備発光も、第1のカメラシステムの予備発光に重畳する可能性があるため、正しく測光できない確率がさらに上昇してしまう。他のカメラシステムからの発光の影響を受ければ、露出が適性値よりアンダーとなってしまうことはいうまでもない。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明のように、シャッタースピードを1500分の1に設定して予備発光を1回だけ測光する方法では、測光の瞬間に他のカメラシステムが発光してしまったときは、やはりその影響を低減することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題の少なくとも1つを解決することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、本発光の前に予備発光を行なうカメラにおいて、複数回にわたり予備発光について測光を行ない、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数回にわたり予備発光について測光を行なうことで、この予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧して調光を行なうので、予備発光時に、例えば他のカメラマンによる補助光源の光が重畳してきたとしても、従来よりもその影響を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係るカメラシステムの主に光学的な構成の一例を示す横断面図である。1はカメラ本体であり、この中に写真撮影に必要な光学部品、メカ部品、電気回路およびフィルムなどが収納されている。主ミラー2は、観察状態と撮影状態とに応じて撮影光路内に斜設されたり撮影光路内から退去されたりする。また、主ミラー2はハーフミラーとなっている。これにより、撮影光路内に斜設されているときは、後述する焦点検出光学系に被写体からの光線の約50%を、主ミラー2の背面に配置された小さなサブミラー25へと導いている。
【0012】
3は撮影レンズ12〜14の予定結像面に配置されたピント板(焦点板)3である。4はファインダ光路変更用のペンタプリズムである。5はファインダであり、撮影者はファインダ5の窓を通してピント板3を視認することにより撮影画面を見ることができる。6は撮影画面内の被写体輝度を測定するための結像レンズである。7は結像レンズ6を通過してきた光を受光する多分割測光センサである。8はフォーカルプレン式のシャッタである。9は感光部材としてのフィルムである。なお、デジタルカメラシステムの場合は、フィルムに代えて撮像素子が配置されることはいうまでもない。
【0013】
カメラ本体1と撮影レンズとの電気的結合は、インターフェースとして機能するマウント接点10を介して行われる。撮影レンズは、レンズ鏡筒11、第1群レンズ12、第2群レンズ13、第3群固定レンズ14、第2群レンズ13と第3群固定レンズ14との間に配設される絞り15を備えている。第1群レンズ12は光軸上を前後に移動する合焦用のレンズであり、これにより撮影画面のピント位置を調整することができる。同様に第2群レンズ13も光軸上を前後に移動でき、この移動に応じて撮影画面の変倍(ズーミング)が行われる。また、第1群レンズ12の駆動はモータ16によって行われ、絞り15の絞り駆動はモータ17によって行われる。
【0014】
ペンタプリズム4の収納部の上面には、アクセサリーシュー22が設けられており、このアクセサリーシュー22には外付フラッシュ18を装着することができる。外付フラッシュ18は、キセノン管19、このキセノン管19の背面に設置される反射板20、キセノン管19の前方に設置されるフレネルレンズ21を備えている。さらに、反射板20の一部には、グラスファイバー30の一端が挿入され、その他端にはキセノン管19で発光した光をモニタするための受光素子などのセンサ31(PD1)が接続されている。このように、グラスファイバー30を介してキセノン管19の直接光を測光することで、直接光の測光値に関しては、他のカメラシステムからの発光の影響を低減している。反射板20には同様に光をモニタするための受光素子などのセンサ32(PD2)が接続されている。センサ32はキセノン管19の発光電流を制限してフラット発光を行なうために用いられる。なお、キセノン管19に代えて、白色LEDなどの他の光源を採用してもよいことはいうまでもない。
【0015】
サブミラー25の出射光路上に位置するカメラ本体1の底部近傍には、焦点検出ユニット26が設置されている。この焦点検出ユニット26は、2次結像ミラー27、2次結像レンズ28、焦点検出ラインセンサ29等を備えている。この焦点検出ラインセンサ29の検出面に2次結像面がくるように光学系が調整される。焦点検出ユニット26は、後記する電気回路の処理により、既知の位相差検出法によって撮影画面内の被写体の焦点状態を検出し、撮影レンズの焦点調節機構を制御するために用いられる。
【0016】
図2は、実施形態に係る測光エリアの分割例を示す図である。図中、40は撮影画面全体を表し、41は多分割測光センサ7の撮影画面上の測光エリアを表している。この例では、撮影画面を、E0(左側)、E1(中央)、E2(右側)E3(E0,E1,E2の外側の左半分)、E4(E0,E1,E2の外側の右半分)、E5(E3及びE4の外側)の6つのエリアに分割している。3つのエリアE0、E1、E2の各中心には、測距点P0,P1,P2がそれぞれ設定されている。撮影画面40の下部にはファインダ内LCD24が設けられ、シャッタ速度及び絞り値などを表示する。
【0017】
図3は、実施形態に係るカメラシステムにおける電気系の構成を示すブロック図である。既に説明した個所には同一の参照符号を付すことで、説明を簡略化する。
【0018】
MPU(マイクロ・プロセッサ・ユニット)100は、発振器101から供給されるクロック信号に同期して各種制御動作を実行する。MPU100に内蔵されたEEPROM102は、フィルムカウンタその他の撮影情報を記憶するための半導体メモリである。もちろん、RAMなどの半導体メモリがMPU100に内蔵されていてもよい。また、A/D変換器103は、焦点検出回路105及び多分割測光センサ7からのアナログ信号をA/D変換し、これをMPU100で処理する。
【0019】
MPU100には、焦点検出回路105、測光回路106、シャッタ制御回路107、モータ制御回路108、フィルム走行検知回路109、動作状態を検出するためのスイッチセンス回路110、ファインダ内に配置されるLCD24やモニタ用LCD42を駆動する液晶表示回路111などが接続されている。
【0020】
焦点検出回路105は、MPU100の信号に従って焦点検出ラインセンサ29の蓄積制御及び読出制御を行ない、それぞれの画素情報をMPU100へ出力する。測光回路106は、多分割測光センサ7により得られた画面内の各エリアの輝度信号をMPU100へ出力する。MPU100は、輝度信号をA/D変換し、撮影の露出調整を実行する。
【0021】
積分回路120は、測光回路106から出力される多分割測光センサ7の各エリアの測光値を積分する回路である。積分時間(タイミング)は、MPU100からの指示に基づく。積分回路120は、例えば、測光値を圧縮しながら積分することで、広いダイナミックレンジを確保することができる。なお、フラット発光では、安定状態でもリップルのために波高値に多少のばらつきが生じる。しかしながら、測光値を積分演算して得ることで、定常光を複数回測光して平均をとるタイプよりも、精度の良い測光を行なうことができる。
【0022】
シャッタ制御回路107は、MPU100からの信号に従って先幕のシャッタマグネット(MG−1)及び後幕のシャッタマグネット(MG−2)を走行させることで、露出動作を実行する。モータ制御回路108は、MPU100からの信号に従ってモータ104を制御することにより、主ミラー2の斜設・退去(アップダウン)、シャッタ8のチャージおよびフィルム9の給送を行なわせる。フィルム走行検知回路109は、フィルム給送時にフィルム9の1駒分が巻き上げられたか否かを検知し、その結果をMPU100に信号を送出する。
【0023】
焦点検出回路105には、焦点検出ラインセンサ29が接続されている。シャッタ制御回路107には、シャッタマグネットMG−1,MG−2が接続されている。モータ制御回路108には、フィルム巻き上げ等の駆動源となるモータ104が接続されている。また、スイッチセンス回路110には、SW1、SW2の各スイッチが接続されている。SW1は、レリーズボタン(不図示)の第1ストロークでオンとなって、測光及びAF(オートフォーカス)を開始させるスイッチである。SW2は、レリーズボタンの第2ストロークでオンとなって、露光動作を開始させるスイッチである。そして、SW1及びSW2のオン動作はスイッチセンス回路110で検知され、その検知結果がMPU100へ送出される。
【0024】
また、ラインセンサ29は、上記したようにファインダ上の3つの測距点に対応した3組のラインセンサLine−L(左),Line−C(中央),Line−R(右)から構成される公知のCCDラインセンサである。
【0025】
以上の構成によるカメラ本体1には、レンズ鏡筒11がマウント接点104を介して接続されている。レンズ鏡筒11は、レンズ制御回路112を内蔵しており、このレンズ制御回路112とMPU100との間で信号の送受信が行われる。レンズ制御回路112には、モータ16,17及び光検出器35が接続されている。この光検出器35は、円板状で一定間隔にスリットが設けられたパルス板36との組み合わせで用いられる。第1群レンズ12の移動に応じてパルス板36が回転すると、光検出器35によりスリットをカウントすることで、MPU100は、第1群レンズ12の位置情報を取得し、レンズの焦点を調節する。
【0026】
さらに、カメラ本体1には、アクセサリーシュー22を介して外付フラッシュ18が接続されている。外付フラッシュ18は、外付フラッシュ18内の各回路を制御するための発光制御回路200を備えている。発光制御回路200は、MPU100からの信号に基づいて被写体に向けて閃光を発光させる回路である。
【0027】
201は、電池215の電圧を昇圧するDC/DCコンバータであり、発光制御回路200からの指示により電池電圧を昇圧し、メインコンデンサ208(C1)に約300Vの電圧を蓄えることができる。
【0028】
抵抗211,212(R1,R2)は、メインコンデンサ208の電圧を発光制御回路200によってモニタするために設けられた分圧抵抗である。発光制御回路200は、分圧抵抗211,212により分圧された電圧をA/D変換器202でA/D変換することにより、メインコンデンサ208の電圧をモニタする。これにより、発光制御回路200は、DC/DCコンバータ201を止めて昇圧を停止したり、現在の充電電圧の値をカメラ本体1側のMPU100に伝達したりする。トリガ回路203は、発光制御回路200を介してMPU100からの指示を受け、キセノン管19のトリガ電極に高電圧を印加し、キセノン管19の放電を誘発する。これにより、メインコンデンサ208に蓄えられた電荷エネルギーが、キセノン管19を介して光エネルギーとなって放出される。
【0029】
発光停止回路204は、トリガ回路203からトリガ信号が出力されるとオンとなるが、その後、コンパレータ205又は206の出力及び発光制御回路200からの信号に応じてオフとなり、キセノン管19の発光を停止させる。発光停止回路204がオフとなると、キセノン管19、ダイオード213(D1)、コイル214(L1)により還流ループが形成されるため、すぐには発光量が低下しないようになっている。なお、発光停止回路204を短い周期で連続的にオン/オフを行なうことにより、フラット発光が可能となる。
【0030】
発光制御回路200とコンパレータ205,206との間にD/A変換器207が接続されている。209はセンサ32(PD2)に接続される第2のモニタ回路であり、センサ32の出力を増幅する。210はセンサ31(PD1)に接続される第1のモニタ回路であり、センサ32の出力を増幅する。また、積分回路221は、モニタ210の出力電圧を積分し、その値をコンパレータ205へ印加する。
【0031】
〔フラット発光〕
次に、外付フラッシュ18の各種の動作について個別に説明する。発光制御回路200は、D/A変換器207に所定の値を設定する。この時、キセノン管19はまだ発光を始めていないので、センサ32(PD2)の光電流は少ない。これは、コンパレータ206の反転入力端子に入力されるモニタ209の出力が低いことを意味する。したがって、コンパレータ206は“H”レベルの出力を発光停止回路204へ出力している。トリガ回路203からトリガ信号が出力されると、キセノン管19は発光を開始する。すぐに発光の波高値は上昇する。センサ32の光電流も多くなり、それにつれてモニタ209の出力も上昇し、最終的に、コンパレータ206の出力が“L”レベルになる。
【0032】
コンパレータ206の出力が“L”レベルになると、発光停止回路204が動作し、キセノン管19の放電ループが断たれる。しかしながら、上述した還流ループによって、波高値が瞬時に落ちることはなく、徐々に低下する。波高値が落ちてくると、センサ32の光電流が少なくなり、再びコンパレータ206の出力は“H”レベルに転じ、キセノン管19の放電ループが形成され、波高値は上昇方向になる。
【0033】
このように、コンパレータ206の出力により、短い周期で波高値の増加と減少を繰り返すことで、フラット発光が実現される。発光制御回路200が発光停止回路204に停止信号を出力すると、フラット発光が終了する。また、D/A変換器207に与えられるデジタル値を制御することで、コンパレータ206の非反転入力端子に入力される電圧を異ならせ、センサ32の光電流の動作ポイントを変化させることで、フラット発光の波高値を所望の値に制御することができる。
【0034】
〔予備発光及び積分処理〕
予備発光は、所定の波高値で所定時間にわたりフラット発光を行なうことにより達成される。予備発光と並行して、センサ31(PD1)はキセノン管19から放出される直接光の輝度を測光する。また、発光制御回路200は積分回路221に積分開始を指示する。積分回路221は、モニタ210からの出力により、予備発光のための積分を開始する。また、積分回路221は、測光量を対数圧縮し、圧縮された値を積分するように構成されている。予備発光が所定時間行われると、積分回路221の出力がA/D変換器202によって変換され、そのデジタル信号が発光制御回路200によって読み出される。
【0035】
予備発光についての被写体からの反射光については、多分割測光センサ7によって受光する。積分回路120は、多分割測光センサ7に接続された測光回路106から出力される輝度値を積分する。本実施形態では、予備発光についての被写体からの反射光を複数回にわたり測光するため、積分回路120は、MPU100の指示に応じて、複数の積分測光値をMPU100に出力する。
【0036】
〔本発光制御〕
MPU100は、予備発光(直接光)の積分値、及び予備発光時の被写体反射光輝度値(多分割測光センサ7の出力)に基づいて本発光量の適正積分値を求め、求めた適正積分値を、発光制御回路200を介してD/A変換器207に設定する。その後、積分回路221は初期状態に戻り、トリガ回路203により、キセノン管19の発光を開始させる。この発光時の輝度はセンサ31によって測光される。瞬時の測光値が積分回路221により積分される。積分により得られた値が、予め設定された適正積分値に到達すると、コンパレータ205の出力は“H”レベルから“L”レベルに切り替わり、発光停止回路204によって発光の停止処理が行われる。このとき、発光制御回路200からの信号により、コンパレータ206の出力は無視される。以上のようにして、予備発光に続く本発光においては、その発光量が演算で求めた適正な発光量に制御される。
【0037】
図4は、実施形態に係るカメラシステムの基本的な撮影処理の例示的なフローチャートである。S401において、MPU100は、レリーズボタンの第1ストロークに応じてスイッチSW1がオンになったことを検出する。MPU100は、SW1のオンを検出すると、S402において、スイッチセンス回路110によって他の操作スイッチ(不図示)の状態を読み込み、シャッタ速度の決め方や絞りの決め方等の様々な撮影モードの設定を実行する。例えば、MPU100は、撮影者の意思等によって設定された撮影モードや被写体輝度のEVからシャッタ速度(TV)と絞り値(AV)とによる露出値(EV=TV+AV)を決定する。S403において、MPU100は、位相差検出法による焦点検出動作及びこれに伴うレンズ駆動を実行する。
【0038】
S404において、MPU100は、測光回路106によって自然光の下での被写体の輝度を測光する。これにより、画面上にある6つのエリアについてそれぞれ被写体輝度値が得られる。測光値は、対数圧縮した値(EV)とする。S405において、MPU100は、6つのエリアの被写体輝度値に基づいて、公知のアルゴリズムから露出値を決定し、設定された撮影モードに従ってシャッタ速度の値と絞りの値を決定する。S406において、MPU100は、レリーズボタンの第2ストロークで動作するスイッチSW2のオンの有無を判別する。SW2がオフであればS401に戻る。
【0039】
一方、SW2がオンであれば、S407において、MPU100は、発光制御回路200からの情報伝達により、現在におけるコンデンサ208の充電電圧情報Vcを取得する。また、MPU100は、レンズ制御回路112からの情報伝達により被写体のカメラからの絶対距離情報Distを取得する。さらに、MPU100は、測光回路106からの予備発光直前の被写体輝度情報EVaを得る。
【0040】
ここで、S407において、S404と同様に測光及び演算を行なう理由は、スイッチSW1がオンとなったときと、スイッチSW2がオンとなったときとでは、その間に、撮影者がフレーミングを変更するなどして被写体の状態が変化している可能性があるためである。
【0041】
ところで、S407の測光時間は、S404の測光時間に比較して短くすることが望ましい。なぜなら、蛍光灯の下で発生するフリッカの影響をできるだけ少なくするためには、S404の測光処理では、比較的長い時間をかけて繰り返し測光し、その測光値の平均をとることが望ましいからである。これに対し、S407の測光処理では、レリーズタイムラグ等を小さくするために、予備発光時の測光と同等の短い測光時間とし、かつS407の測光時から予備発光時の測光時までの時間間隔もできるだけ短くする必要があるからである。
【0042】
S408において、MPU100は、取得した充電電圧情報Vc、絶対距離情報Dist及び被写体輝度情報EVaを基に予備発光の発光量を決定する。S409において、MPU100は、この決定値になるように、MPU100は発光制御回路200に指令を出し、予備発光を制御する。S410において、MPU100は、予備発光と同時に多分割測光センサ7に測光を行なわせる。とりわけ、本実施形態によれば、MPU100は、予備発光による被写体からの反射光について複数回の測光を行ない、得られた複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの発光の影響を受けているおそれのある測光値を抑圧する。
【0043】
なお、MPU100は、予備発光の直前に多分割測光センサ7により被写体の輝度を測光することが望ましい。これは、予備発光直前の測光値と予備発光の測光値とを差分演算し、予備発光のみによる被写体反射光の測光値を得るためである。また、後述するように、予備発光直前の測光値は、予備発光時のモード切り替えを行なうために、他のカメラシステムからの閃光光の存在を検出する際にも利用できる。
【0044】
また、発光制御回路200は、予備発光と並行して、キセノン管19の直接光をセンサ31で測光し、積分回路221で積分し、予備発光終了時に積分値をA/D変換し、この読み込みを行なう。
【0045】
S411において、MPU100は、予備発光の積分値、予備発光の被写体反射測光値、および露出値等から本発光の適正積分値を算出する。なお、本発明は、適正積分値の具体的な算出方法に大きく左右されるわけではないので、種々の算出方法を採用できる。例えば、特開平9−61913号公報に詳細に開示されているように、本発光適正比演算(同公報のS509)を実行して、予備発光に対して適正となる本発光の積分値を算出する方法(同公報のS511)なども、本発明は採用できる。
【0046】
S412において、MPU100は、露光動作に先行して主ミラー2をアップさせることで、サブミラー25とともに撮影光路から退去させ、被写体像が支障なくフィルム9に到達できるようにする。S413において、MPU100は、決められた露光量に基づく絞り値となるようにレンズ制御回路112に指令を出し、決められたシャッタ速度値になるようにシャッタ制御回路107を駆動する。
【0047】
S414において、MPU100は、シャッタ8の駆動に合わせ、露光中に本発光が行われように発光制御回路200を制御する。この本発光は、S411の演算によって求められた発光量となるように制御される。このようにして露光動作が終了すると、S415において、MPU100は、撮影光路より退去していた主ミラー2及びサブミラー25を復帰させ、さらに、モータ制御回路108及びフィルム走行検知回路109を動作させ、フィルム9を1駒だけ巻き上げる。このようにして発光制御が終了する。
【0048】
図5は、実施形態に係る予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートによれば、被写体からの反射光の測光処理(S501ないしS505)と、キセノン管の発光を直接的に測光する処理(S506)とが同時並行的に実行されることが示されている。また、本フローチャートは、上述のS410のサブルーチンに相当する。
【0049】
S501において、MPU100は、予備発光に対する被写体からの反射光を複数回に渡り測光すべく、カウンタの値iを1に設定する。S502において、MPU100は、被写体からの反射光についてi回目の積分測光を行なう。すなわち、測光回路106から出力される輝度値を積分回路120により積分する。S503において、MPU100は、カウンタの値iを1だけインクリメントする。S504において、MPU100は、カウンタ値iが所定回数を超えるか否かを判定する。所定回数を超える場合は、S505に進む。一方、所定回数以下であれば、S502に戻り、次の測光を実行する。
【0050】
S505において、MPU100は、取得された複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの閃光光が重畳したと思われる測光値について抑圧処理を実行する。これにより、他のカメラシステムからの閃光光が予備発光量の測光値に与える影響を低減でき、最終的には、本発光の調光を適正に実行することが可能となる。
【0051】
図6は、実施形態に係る発光タイミングと測光タイミングとの関係を例示した図である。とりわけ、図6(a)は、蛍光灯からの光量の変動(フリッカ)、キセノン管からの予備発光と主発光との各タイミング、被写体からの反射光の測光タイミング、およびキセノン管の直接測光のタイミングとを示している。S404における背景光の測光時間は、フリッカの影響を防止すべく、比較的長い測光時間となっている。ここでは、予備発光の測光時間をt pre[秒]として示している。また、TVは、シャッタ速度に応じた露光時間を示している。
【0052】
図6(b)は、予備発光に関して複数回の測光を行なわないときの発光タイミング、被写体反射光の測光タイミング、およびキセノン管19からの直接光の測光タイミングを示している。また、図6(c)は、予備発光に関して複数回の測光を行なうときの発光タイミング、被写体反射光の測光タイミング、およびキセノン管の直接測光タイミングを示している。図6(b)と図6(c)を比較すると分るように、予備発光に関して複数回の測光を行なうときは、1回あたり測光時間が短時間となっている。
【0053】
図7は、実施形態に係る予備発光に関する複数回の測光と、他のカメラシステムからの発光との関係を示す図である。この図では、予備発光700の途中で、他のカメラシステムからの発光704が重畳してきている。そのため、3回にわたる被写体反射光の測光値(701、702および703)のうち、3番目の測光値703は、他のカメラシステムからの発光704の影響を受けているため、抑圧対象となる。
【0054】
[抑圧処理の具体例]
図8は、実施形態に係る抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S801において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、比較演算等により、そのうちの最小値を決定する。通常、他のカメラシステムの発光が予備発光に対して重畳してきた場合、そのときの測光値は必ず上昇する。よって、最小値となる測光値は、他のカメラシステムからの発光の影響が最も少ないことになる。S802において、MPU100は、決定した最小値をEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。この最小値は、本発光の適正積分値を算出する際に、MPU100により読み出されて利用されることは言うまでもない。
【0055】
図9は、実施形態に係る他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S901において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、比較演算等により、そのうちの最大値を決定する。通常、他のカメラシステムの発光が予備発光に対して重畳していれば、そのときの測光値は必ず上昇するので、最大値となる測光値は、外乱の影響を最も大きく受けていることになる。S902において、MPU100は、決定した最大値を除外した残りの測光値の平均値を算出する。S903において、MPU100は、本発光の適正積分値の算出に使用されるべき値として、この平均値をEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。
【0056】
図10は、実施形態に係るさらに他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。本フローチャートは、上述のS505に相当する。S1001において、MPU100は、複数の測光値をEEPROM102または不図示のRAMから読み出し、そのうちの3σを算出する。これは、統計処理における3σの法則により、異常な測光値を排除するためである。S1002において、MPU100は、3σとなる範囲内の測光値を決定する。S1003において、MPU100は、本発光の適正積分値の算出に使用されるべき値として、3σとなる範囲内の測光値らをEEPROM102または不図示のRAMに記憶する。
【0057】
ところで、上述の実施形態は、予備発光による被写体からの反射光の測光を複数回にわたり実行するものであった。しかしながら、通常の測光時間(t pre)内で、複数回の測光を行なうには一回当たりの測光時間が短くなってしまう。そのため、場合によっては、十分な測光精度を確保できなくなる。この課題を解決するには、例えば、予備発光の発光時間とトータルでの測光時間とを通常の測光時間(t pre)よりも長くすることで、一回当たりの測光時間を十分な長さにすればよい。但し、予備発光時間が長くなれば、それに比例して、コンデンサのエネルギーが無駄に消費されたり、レリーズタイムラグが伸びてしまったりといった新たな課題が生じてしまう。そこで、これらの二律背反的な課題を解決するため手段を以下で説明する。
【0058】
図11は、実施形態に係る他の予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。また、本フローチャートは、上述のS410のサブルーチンに相当する。なお、既に説明した個所については同一の参照符号を付すことで説明を簡略化する。
【0059】
S1101において、MPU100は、カメラシステムの周囲環境が、他のカメラシステムからの発光の影響を受ける環境かどうかを判定する。例えば、上述した予備発光直前の被写体輝度の測光値(S407)が閃光光の影響を受けていれば、周囲の環境は、記者会見会場や披露宴会場など、多数の発光が行われる環境であると判定できる。
【0060】
図12は、被写体輝度についての測光値の変化例を示す図である。とりわけ、図12(a)は、閃光光の影響を受けていない場合を示しており、図12(b)は、閃光光の影響を受けていない場合を示している。この図から明らかなように、他のカメラシステムからの閃光光が発生したときは、測光値の一部に大きな変動を生ずることになる。そこで、MPU100は、被写体輝度の測光値の一部に大きな変動が存在する場合は、閃光光の影響を受けていると判定し、S1102に進む。受けていなければ、S1103に進む。
【0061】
代替的に、周囲環境について、カメラマンが手動で設定してもよい。周囲の環境については、カメラマンが熟知しているからである。この場合、MPU100は、モード設定ダイヤル等により入力される周囲環境についての設定指示を、スイッチセンス回路110を介して検出し、この検出結果に応じて周囲環境について判定する。
【0062】
S1102において、MPU100は、予備発光の測光時間を通常の場合よりも延長された値に設定する。その後、S501−S505を実行する。
【0063】
図13は、実施形態に係る予備発光の測光時間の延長例を示す図である。この例では、通常時に比較し、予備発光の測光時間を2倍以上に確保している。また、一回当たりの測光時間は通常時の測光時間t preと同一としている。この測光時間をどの程度まで長くするかは、レリーズタイムラグやエネルギー消費量などとのトレードオフになる。すなわち、長くすれば測定精度は向上するが、レリーズタイムラグやエネルギー消費量などは悪化してしまう。よって、このトレードオフを考慮した上で、カメラシステムごとに好適となる測光時間の長さを決めることになる。
【0064】
一方、閃光光の影響を受けていない場合は、S1103において、MPU100は、図6(b)に示したように、予備発光の測光時間を通常の測光時間t preとして測光を実行する。なお、いずれの場合も、並行してキセノン管19からの予備発光の直接光を直接的に測光することはいうまでもない(S506)。
【0065】
以上説明したように、図11に関連する実施形態では、カメラシステムの周囲環境に応じて予備発光の測光モードを切り替えるようにした。すなわち、他のカメラシステムからの閃光光が存在すれば、その影響を抑圧するモードを実行する。また、このモードでは、予備発光時間を通常よりも延長することで、1回当たりの測光精度を向上させることができる。一方、他のカメラシステムからの閃光光が存在しなければ、電力消費量やレリーズタイムラグについてより有利な測光モードを適用している。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、予備発光に対する被写体からの反射光について複数回にわたり測光を実行し、得られた複数の測光値のうち、他のカメラシステムからの発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧するので、本発光における調光に基準となる積分値を適正に設定できるようになる。これにより、従来よりも、適正な露出による画像を撮影することができる。
【0067】
また、抑圧に関しては、例えば、複数の測光値のうち最小値を選択したり、最大値以外の測光値の平均値を算出したり、あるいは、3σ内となる測光値の平均値を算出することで実現できる。いずれの場合も、他のカメラシステムからの発光の影響を受けたおそれのある測光値が、本発光の適正積分値に対して反映されにくくなる。
【0068】
また、カメラシステムの周囲の環境が、他のカメラシステムからの発光の影響を受けるおそれが高い環境においては、予備発光に対する被写体からの反射光についてn回(nは2以上の自然数)にわたり測光を実行するが、このような影響を受けるおそれが低い環境においては、当該反射光について測光をm回(mはn未満の自然数であり、例えばm=1)だけ実行する構成を採用することで、発光に要するエネルギーの浪費やレリーズのタイムラグの増加を低減している。とりわけ、この構成は、複数回の測光における一回当たり測光の精度を十分に確保するために、予備発光に関する測光時間を通常(図6(b))よりも長く確保する場合に有利である。
【0069】
また、他のカメラシステムからの発光の影響に限らず、予備発光に関する測光時間の一部の期間にて、この予備発光とは別の外乱となる発光が生じる状況において、本発明を適用することができる。
【0070】
また、本実施形態では、カメラ本体1と外付フラッシュ18とからなるカメラシステムを例にあげて説明を行ったが、カメラ本体にフラッシュが内蔵されているカメラについても本発明を適用できることは言うまでもないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施形態に係るカメラシステムの主に光学的な構成の一例を示す横断面図である。
【図2】実施形態に係る測光エリアの分割例を示す図である。
【図3】実施形態に係るカメラシステムにおける電気系の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るカメラシステムの基本的な撮影処理の例示的なフローチャートである。
【図5】実施形態に係る予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。
【図6】実施形態に係る発光タイミングと測光タイミングとの関係を例示した図である。
【図7】実施形態に係る予備発光に関する複数回の測光と、他のカメラシステムからの発光との関係を示す図である。
【図8】実施形態に係る抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図9】実施形態に係る他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図10】実施形態に係るさらに他の抑圧処理の例示的なフローチャートである。
【図11】実施形態に係る他の予備発光と測光処理の例示的なフローチャートである。
【図12】被写体輝度についての測光値の変化例を示す図である。
【図13】実施形態に係る予備発光の測光時間の延長例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予備発光における被写体からの反射光の測光値を用いて本発光の積分光量を決定するカメラであって、
予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光する測光手段と、
前記測光手段により得られた複数の測光値のうち、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧する抑圧手段と
を含む、カメラ。
【請求項2】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値のうち最小となる測光値を選択する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値のうち最大となる測光値を排除した残りの測光値の平均値を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値について3σ内となる測光値の平均値を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項5】
前記カメラの周囲環境が、前記予備発光とは別の発光の影響を受ける環境かどうかを判定する環境判定手段をさらに備え、
前記測光手段は、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境と判定された場合には、前記予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光し、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境ではないと判定された場合には、前記予備発光による被写体からの反射光を1回だけ測光する、請求項1ないし4の何れかに記載のカメラ。
【請求項6】
前記環境判定手段は、前記測光手段によって予備発光の前に測光された自然光の測光値に基づいて前記カメラの周囲環境を判定する、請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
前記カメラに指示を入力するための入力手段をさらに備え、
前記環境判定手段は、前記入力手段に入力された指示に応じて、前記カメラの周囲環境を判定する、請求項5に記載のカメラ。
【請求項8】
前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境では、前記測光手段における予備発光の測光時間を、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ない環境での予備発光の測光時間よりも相対的に長くすることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のカメラ。
【請求項9】
予備発光における被写体からの反射光の測光値を用いて本発光の積分光量を決定するカメラの制御方法であって、
前記予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光するステップと、
前記予備発光による被写体からの反射光から得られた複数の測光値のうち、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧するステップと
を含む、カメラの制御方法。
【請求項1】
予備発光における被写体からの反射光の測光値を用いて本発光の積分光量を決定するカメラであって、
予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光する測光手段と、
前記測光手段により得られた複数の測光値のうち、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧する抑圧手段と
を含む、カメラ。
【請求項2】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値のうち最小となる測光値を選択する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項3】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値のうち最大となる測光値を排除した残りの測光値の平均値を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項4】
前記抑圧手段は、前記複数の測光値について3σ内となる測光値の平均値を算出する手段であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ。
【請求項5】
前記カメラの周囲環境が、前記予備発光とは別の発光の影響を受ける環境かどうかを判定する環境判定手段をさらに備え、
前記測光手段は、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境と判定された場合には、前記予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光し、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境ではないと判定された場合には、前記予備発光による被写体からの反射光を1回だけ測光する、請求項1ないし4の何れかに記載のカメラ。
【請求項6】
前記環境判定手段は、前記測光手段によって予備発光の前に測光された自然光の測光値に基づいて前記カメラの周囲環境を判定する、請求項5に記載のカメラ。
【請求項7】
前記カメラに指示を入力するための入力手段をさらに備え、
前記環境判定手段は、前記入力手段に入力された指示に応じて、前記カメラの周囲環境を判定する、請求項5に記載のカメラ。
【請求項8】
前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ける環境では、前記測光手段における予備発光の測光時間を、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受ない環境での予備発光の測光時間よりも相対的に長くすることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のカメラ。
【請求項9】
予備発光における被写体からの反射光の測光値を用いて本発光の積分光量を決定するカメラの制御方法であって、
前記予備発光による被写体からの反射光を複数回にわたり測光するステップと、
前記予備発光による被写体からの反射光から得られた複数の測光値のうち、前記予備発光とは別の外乱となる発光の影響を受けたおそれのある測光値を抑圧するステップと
を含む、カメラの制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−267880(P2006−267880A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88935(P2005−88935)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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