説明

カメラのフアインダ装置

【目的】 簡単な構成からなり、ファインダ視野内の被写体像を、出来上がりの写真と同様に表示させることのできるカメラのファインダ装置を得ること。
【構成】 ファインダ光学系の光路中の所定領域に対応させ、偏光方向を所定の方向に向けて固定配置した第一偏光手段;および、上記撮影範囲の変更動作に連動して動作し、その偏光方向を上記第一偏光手段の偏光方向に対して角度を持った状態で、上記ファインダ光学系の光路中に位置する第二変更手段を有し、視野サイズを撮影範囲にあわせて変更させ、撮影者に、実際に撮影される写真と同様のイメージをファインダ視野を通して実感させ得るカメラのファインダ装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、カメラのファインダ装置に関し、特に、撮影範囲の変更が可能な撮影光学系と、この撮影光学系による撮影範囲の変更動作に連動して視野サイズ等を変更するファインダ光学系とを有するカメラのファインダ装置に関する。
【0002】
【従来技術およびその問題点】スチルカメラにおいて、近年、例えば簡易なパノラマ撮影として、フィルム面の上下所定幅を所定量遮光して、通常の撮影画面より横長な比率の画面上に撮影を行ない、プリント時に、この横長画面を横長印画紙に焼き付けるものがある。
【0003】このようなパノラマ撮影モードを有するカメラでは、ファインダ内に、通常撮影モード(フルサイズ撮影モード)の撮影範囲とは別に、パノラマ撮影モードの撮影範囲を示すことが望ましい。このため従来のファインダ装置では、通常の撮影範囲を示す視野内に、上下から所定の距離を置いた位置に二本の枠線を描き、この枠線内をパノラマ撮影範囲として表示していた。従って通常撮影時には、枠線を無視してファインダ視野全体を目視し、パノラマ撮影時には、二本の枠線を意識しながらファインダ視野を見るのである。
【0004】しかしながら、人によっては二本の枠線が気になって、撮影時のフィーリングが損なわれることがある。またパノラマ撮影時には、上記二本の枠線内の像が撮影されるということが理屈としては分かるものの、これを撮影者に実感させることは難しかった。
【0005】
【発明の目的】本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたものであり、簡単な構成からなり、ファインダ視野枠内に形成される被写体像を、出来上がりの写真と同様に表示させることのできるカメラのファインダ装置を得ることを目的とする。
【0006】
【発明の概要】上記問題点を解決する本発明は、撮影範囲の変更が可能な撮影光学系と、この撮影光学系による撮影範囲の変更動作に連動する視野サイズの変更が可能なファインダ光学系とを有するカメラにおいて、上記ファインダ光学系の光路中の所定領域に対応させ、偏光方向を所定の方向に向けて固定配置した第一偏光手段、および上記撮影範囲の変更動作に連動して動作し、その偏光方向を上記第一偏光手段の偏光方向に対して角度を持った状態で、上記ファインダ光学系の光路中に位置する第二偏光手段を有することを特徴としている。
【0007】
【発明の実施例】以下図示実施例について本発明に係るファインダ装置を説明する。このファインダ装置は、ズーム撮影光学系(撮影光学系)とは別に構成したズームファインダ光学系(ファインダ光学系)Fを有している。このズームファインダ光学系Fは、物体側から順に、第1レンズ群L1〜第4レンズ群(接眼レンズ群)L4の4群を備えており、第3レンズ群L3と第4レンズ群L4の間にポロプリズムPを有している。第3レンズ群L3とポロプリズムPの間(対物レンズの結像面)、および第4レンズ群L4の後方に、本発明の特徴とされる、偏光シート(第一偏光手段)25を貼付した透明プレート22および偏光板(第二偏光手段)29が設けられている。
【0008】第1レンズ群L1と第4レンズ群L4は固定レンズであり、第2レンズ群L2と第3レンズ群L3が可動の変倍レンズ群である。ポロプリズムPは、第1〜第3レンズ群L1〜L3の対物光学系で形成される実像の上下左右を反転させて、該ポロプリズムPと接眼レンズ(第4レンズ群)L4からなる接眼光学系で観察するためのものである。
【0009】第2、第3レンズ群L2、L3は、それぞれ移動枠11と12に固定されており、この移動枠11と12には、その上面に駆動ピン13、14が植設されている。この第2、第3レンズ群L2、L3の上部には、支持プレート15と、この支持プレート15に横方向に移動自在に支特されたカムプレート16とが位置している。カムプレート16には、駆動ピン13と14が嵌まるカム溝17、18が形成されている。このカムプレート16には、その後部に、横方向にラック19が形成されていて、このラック19がギヤ列20のピニオン21と噛み合う。このギヤ列20は、ズーム撮影光学系のパノラマ撮影領域への移行動作、ズーム撮影領域での動作、およびマクロ撮影領域への移行動作に連動して回転し、これによりカムプレート16が横方向に移動する。
【0010】カム溝17と18には、図2に示すように、移動枠11(第2レンズ群L2)と移動枠12(第3レンズ群L3)を移動させまたはその位置に保持するためのパノラマ撮影移行区間d3、ズーム区間d1、およびマクロ移行区間d2が設けられている。
【0011】パノラマ撮影移行区間d3は、ズーム撮影系の最短焦点距離(この例では28mm)を維持する区間であり、傾斜がない。ズーム区間(この例では28〜70mm)d1では、カム溝17と18に傾斜が与えられ、変倍レンズ群L2とL3が光軸方向に移動して、その倍率をズーム撮影系の倍率に応じて変化させる。マクロ移行区間d2においては、カム溝17と18に、ズーム区間d1におけると反対方向の傾斜が与えられていて、変倍レンズ群L2とL3によるファインダ倍率が最長焦点距離(70mm)におけるそれより下がる。
【0012】上記透明プレート22は、合成樹脂材料またはガラス等の透明部材からなり、その中央部に測距ゾーンマーク23が蒸着され、上下には、所定幅の偏光シート25がそれぞれの偏光方向を矢印C方向(左右の二辺に沿わせた方向)に揃えて貼付されている。また偏光板29は、その偏光方向が、パノラマ撮影移行区間以外では図1のように、偏光シート25の偏光方向と同じになるように配置されている。偏光シート25と偏光板29は、それぞれに偏光方向が所定の方向に向くように構成されていて、互いに重ねられた状態でそれぞれの偏光方向が直交されると、偏光シート25と偏光板29を通過しようとする光を遮ることができる。該偏光シート25と偏光板29には、例えばポリビニルアルコール等の鎖状高分子膜にヨウ素結晶を吸着させて作ったポラロイドやダイクローム板を用いることができる。
【0013】偏光板29には、ギヤ列20から分岐させたピニオン30の回転が図示しない回転伝達機構を介して伝達される。すなわち、この回転伝達機構は、ズーム撮影光学系がズーム撮影領域からパノラマ撮影領域へ移行するとき、つまり画面サイズが変更されるとき、ピニオン30の回転を偏光板29に伝達し、この偏光板29を、図1に示す状態から同図の矢印A(又はB)方向に回転させて、その偏光方向を偏光シート25の偏光方向と直交させる。また回転伝達機構は、ズーム撮影光学系がパノラマ撮影領域からズーム撮影領域へ移行するとき、ピニオン30の回転を偏光板29に伝達し、この偏光板29を、偏光シート25の偏光方向と直交させた状態から矢印B(又はA)方向に回転させて、その偏光方向を偏光シート25の偏光方向に沿わせる。
【0014】以上の構成を有する本ファインダ装置は従って、ズーム撮影光学系がズーム撮影領域からパノラマ撮影領域に移行して画面サイズを偏光させるとき、回転伝達機構によって回転を伝達されて矢印A(又はB)方向に回転する偏光板29が、その偏光方向を偏光シート25の偏光方向と直交させる。すると、上下の偏光シート25の部分が遮光されるから、偏光板29を介して接眼レンズL4を覗いている撮影者には、視野サイズが変更されて横長に見える。従って撮影者は、実際に撮影されるパノラマ写真と同様のファインダ視野を通して、パノラマ写真のイメージを実感することができる。このように、本ファインダ装置は、偏光シート25に対する偏光板29の偏光方向を変えるだけの簡単な構成によって、パノラマ写真に対応させたファインダ視野を確実に得ることができるから、例えばLCDを用いて電気的にパノラマ撮影範囲を表示する等の複雑な構成のファインダ装置に比して、大幅なコストダウンが期待できる。
【0015】実際には、偏光シート25の透過率が透過部27のそれより落ちるため、偏光板29をA(又はB)方向に回転させないとき(オフ時)でも、この透過部27の上下に偏光シート25が薄く見えることがあるが、その場合は、透過部27にNDフィルタシート31(図3)を貼付すれば良い。このNDフィルタシート31は、アセテートフィルムやゼラチン膜等でできたフィルム状のフィルタであり、光の全波長域に亘り略平均に透過を制限する。これにより、偏光板29をA(又はB)方向に回転させないときの偏光シート25と透過部27との透過率を略均一化させ、ファインダを覗くときのフィーリングをより向上させることができる。なお、NDフィルタシート31の貼付に代えて、透明プレート22の透過部27に直接コーティングするNDコートを用いても良い。また、偏光板29を第4レンズ群L4の前方に位置させても、本実施例と同様の効果を得ることができる。さらにポロプリズムPに代えて、反射面をミラーによって構成した正立手段を用いても良く、この構成によれば、重量を軽減させることができる。さらに、本実施例では第一、第二偏光手段を、偏光シート25を貼付した透明プレート22および偏光板29として別設したが、ファインダ光学系を構成するレンズまたはプリズムの表面に偏光手段を設けて兼用する構成としてもよい。この構成によれば、部品点数の増加を抑えることができる。
【0016】本実施例では、偏光板29の偏光方向を偏光シート25のそれに対し直交させたが、偏光板29を、その偏光方向を偏光シート25のそれに対して直交させずに、直角より小さい角度又は大きい角度で回転させることによっても、偏光シート25部分の透過率を落とし、本願発明を成立させることができる。この場合は、上下の偏光シート25部分が完全には遮光されず半透過状態となるが、ファインダ視野の変更状態を十分に認識することができるのは勿論、該偏光シート25を透過してファインダ視野外の物体を視認することができる。
【0017】また本実施例では、偏光方向を変えるため偏光板29を回転させたが、この偏光板29を、パノラマ撮影領域への移行時のみに、その偏光方向を偏光シート25のそれに対し直交させた状態でズームファインダ光学系の光路中に移動できるように構成しても良い。この場合も、上述と同様に、偏光板29の偏光シート25に対する偏光方向の角度は直交に限られず、直角より小さい角度又は大きい角度でも良く、これによれば、上述と同様に上下の偏光シート25を透過して全体のファインダ視野像を見ることができる。
【0018】さらに本実施例では、偏光シート25の偏光方向を透明プレート22の左右二辺に沿わせたが、図4の偏光シート25′のように、偏光方向を該左右二辺に沿わせず左右いずれかに傾けて貼付しても良い。この場合も、偏光板29を図5のように回転させて、その偏光方向が偏光シート25の偏光方向と交わるように傾ければ良く、透過率を戻すときはこれと反対方向に回転させて偏光シート25′の偏光方向に沿わせれば良い。また本発明による画面サイズの変更は、フィルムをフルサイズで使用するタイプのカメラでも、ハーフサイズで使用するタイプのカメラでも可能である。さらに、画面サイズは変更しない、例えば画面サイズは一定で焦点距離を変更する撮影光学系(テレ、ワイドの二焦点)に対して、ファインダ光学系は変倍せずにファインダ視野内のフレームサイズのみを焦点距離に応じて変更するファインダ装置にも適用できる。なお、以上本明細書では撮影光学系とは別個に設けられたファインダ光学系に適用した実施例について説明したが、本発明は他のファインダ光学系、例えば一眼レフカメラのファインダ光学系にも適用できる。
【0019】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、簡単な構成により、視野サイズを撮影範囲の変更にあわせて確実に変更させ、撮影者に、実際に撮影される写真例えばパノラマ写真と同様のイメージを、ファインダ視野を通して実感させ得るファインダ装置を提供することができる。しかも撮影者に見えるファインダ視野は、従来のような二本の枠線からなるものではなく、ファインダ視野の所定幅を遮光させて得られるものであるから、二本の枠線が気になって撮影時のフィーリングが損なわれる等の不具合を確実に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるファインダ装置の一実施例を示す要部の分解斜視図である。
【図2】同実施例のカムプレートの全体を示す平面図である。
【図3】透過部にNDフィルタを貼付して、オフ時の偏光シートと透過部との透過率を略均一化させた透明プレートを示す図である。
【図4】偏光方向を傾けた偏光シートを透明プレートに貼付した例を示す図である。
【図5】図4に示した偏光シートの偏光方向とその偏光方向を交わらせるように回転させた状態の偏光板を示す図である。
【符号の説明】
11 移動枠
12 移動枠
13 駆動ピン
14 駆動ピン
15 支持プレート
16 カムプレート
22 透明プレート
23 測距ゾーンマーク
25 25′ 偏光シート(第一偏光手段)
26 境界
27 透過部
29 偏光板(第一偏光手段)
31 NDフィルタ(減光手段)
F ズームファインダ光学系
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
P ポロプリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影範囲の変更が可能な撮影光学系と;この撮影光学系による撮影範囲の変更動作に連動する視野サイズの変更が可能なファインダ光学系とを有するカメラにおいて、上記ファインダ光学系の光路中の所定領域に対応させ、偏光方向を所定の方向に向けて固定配置した第一偏光手段;および、上記撮影範囲の変更動作に連動して動作し、その偏光方向を上記第一偏光手段の偏光方向に対して角度を持った状態で、上記ファインダ光学系の光路中に位置する第二偏光手段;を有することを特徴とするカメラのファインダ装置。
【請求項2】 請求項1において、第一偏光手段以外の透過部分には、減光手段が設けられているカメラのファインダ装置。
【請求項3】 請求項2において、減光手段は、透過部分に貼付されるNDフィルタであるカメラのファインダ装置。
【請求項4】 請求項3において、減光手段は、透過部分にコーティングされるNDコートであるカメラのファインダ装置。
【請求項5】 請求項1において、第二偏光手段は、ファインダ光学系の光路中に常時位置されていて、撮影範囲の変更動作に連動して回転しその偏光方向を第一偏光手段の偏光方向に対し角度を持たせるカメラのファインダ装置。
【請求項6】 請求項1において、第二偏光手段は、ファインダ光学系の光路中に常時は位置せず、撮影範囲の変更動作に連動して動作し、その偏光方向を偏光シートの偏光方向に対し角度を持たせた状態でファインダ光学系の光路中に移動されるカメラのファインダ装置。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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