説明

カメラを備えた分析装置及びその制御プログラム

【課題】通常受信する情報からでは知ることができない分析装置の状況を、遠隔の端末にて確認することができる分析装置及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】ネットワークに接続可能な分析装置10に、カメラ25を接続するためのカメラインターフェースと、カメラで撮影される映像をネットワーク40上のパソコン30に送信する制御部とを設け、カメラ25で撮影した分析装置に関連する映像を遠隔のパソコン30のモニタに表示する。これにより、所定のセンサの測定値やエラー発生時のログ等の予め定められた情報では知ることができない分析装置10の状況を遠隔のパソコン30で確認することができるようになる。また、オペレータが分析装置まで足を運ぶ手間や労力が省かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク(データ通信ネットワーク)に接続される分析装置に関する。また、本発明はネットワーク上の端末を該分析装置の制御端末として動作させるための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、分析装置にネットワークインターフェースを組み込み、ネットワークを通じて遠隔の端末から分析装置を制御することが提案されている(例えば特許文献1参照)。このような分析装置では、分析結果や分析状態を端末に対して送信するだけでなく、装置内に設けられた温度センサ・圧力センサ等の測定値も端末に送信する。また、それらのセンサによる検出値が所定の範囲を超えた場合、或いは、それらの測定センサとは別に設けられた異常検出センサが所定の異常を検出した場合には、エラー内容や発生時刻を含むエラー信号も分析装置から端末に送信される。これらにより、オペレータは遠隔の端末から分析装置の異常を含めた様々な稼働状況を把握することができる。
【特許文献1】特開2006-148813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような、遠隔の端末から分析装置の稼働状況を確認することが可能な従来の分析装置では、端末において、所定のセンサの測定値の異常や所定の異常検出センサが発する信号でしか分析装置の異常を検出することができず、それ以外に生じ得る分析装置自体やその周辺の様々な異常を検出することはできない。
【0004】
例えば、分析装置が何らかの原因で傾いた場合、通常はそのような異常を検出するセンサが設けられていないため、それを検出することができない。この場合、分析値に明らかな異常が出れば、オペレータが経験や勘でその分析値の異常を発見し、その原因を装置の異常に結びつけることも可能であるが、分析値への影響が軽微な異常であると、そのまま見過ごされてしまい、正常でない分析値が正常であると扱われて、信頼性のないデータが作成されてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は以上のような課題を解決するために成されたものであり、その目的は、上記のような異常の場合も含め、所定のセンサの測定値等の予め定められた情報からだけでは知ることができない様々な状況を遠隔の端末から確認することができる分析装置を提供することである。また、本発明は、その制御端末の制御プログラムも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置は、
ネットワークに接続するためのネットワークインターフェースを備えた分析装置であって、
該分析装置を撮影するカメラを接続するためのカメラインターフェースと、
前記カメラによって撮影される映像を前記カメラインターフェースを通じて取り込み、該映像を前記ネットワークに接続される端末に前記ネットワークインターフェースを通じて送信する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る分析装置の制御端末用制御プログラムは、ネットワークに接続された端末を、該ネットワークに接続された分析装置の制御端末として動作させるための制御プログラムであって、
前記分析装置に接続された、該分析装置を撮影するカメラにて撮影された映像を前記ネットワークを通じて受信する処理と、
該受信した映像を該端末のモニタ上に表示させる処理と、
を前記端末に実行させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析装置や制御プログラムによれば、分析装置に接続されたカメラで撮影された分析装置等の映像を端末のモニタに表示させることができる。これによって、所定のセンサの測定値等では検出し得ない分析装置の異常や、端末に送信される予め定められた種類の情報からでは知ることができない分析装置の様々な状況を遠隔から確認することができる。この結果、分析の信頼性が一層高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に本発明に係る分析装置の一実施形態の概略構成を示す。分析装置10とそれを遠隔から制御するためのパソコン30は共にイントラネット等のネットワーク40に接続されている。
なお、以下の説明では分析装置10として液体クロマトグラフを例として述べるが、これはガスクロマトグラフや質量分析装置等の他の分析装置であってもよい。
また、本実施形態では端末としてパソコン30を用いているが、これは汎用的なパソコンに限定されることはなく、例えば専用に用意された制御用コンピュータをはじめとする各種のコンピュータを端末として用いることができる。
ネットワーク40はイントラネットのほか、インターネットであってももちろん構わない。または分析装置10を遠隔操作するために専用に構築された専用ネットワークであっても良い。
【0010】
分析装置10は機能別に分けられた複数のユニットから構成されており、具体的には前処理部11、送液ポンプ12、オートサンプラ13、カラムオーブン14、検出器15及びこれらの動作を統括的に制御するコントローラ20からなる。送液ポンプ12には圧力センサが、カラムオーブン14には温度センサが設けられている。
【0011】
図2は、コントローラ20の機能を示すブロック図である。コントローラ20は、CPUやメモリ等から構成される制御部24、分析装置10の各ユニットに接続するための装置内通信インターフェース(I/F)23、ネットワーク40に接続するためのネットワークインターフェース(I/F)21、カメラ25を接続するためのカメラインターフェース(I/F)22を備える。
【0012】
カメラインターフェース22は、カメラ25を接続するためのインターフェースであり、接続されるべきカメラの接続・通信仕様に応じたポート及びインターフェースボードを備える。例えば、USBやIEEE1394等の汎用インターフェースを備えたカメラを使用する場合は、そのような汎用ポートを設ける。また、Bluetooth等の無線通信規格に対応したカメラを用いる場合は、それに応じたインターフェースを設ける。もちろん、カメラインターフェース22に異なる規格や仕様に対応した複数のインターフェースを含めておいても構わない。
【0013】
カメラ25は一般には連続的に映像を撮影してそれを出力することができる、即ち動画の撮影が可能な動画カメラを用いるが、一定の時間間隔毎でしか画像を撮影して出力することができないような静止画カメラであっても構わない。また、パンやチルト、ズーム等の動作を遠隔から制御可能なものであってもよい。さらに、カメラ25は一台だけではなく、分析装置10に対して複数台設置しても構わない。
【0014】
カメラ25は分析装置10を撮影するように設置する。カメラ25は分析装置10の全体を撮影するようにすることもできるし、分析装置10の一部だけを撮影するようにすることもできる。また、分析装置10の外部を撮影するのではなく、その内部を撮影するようにカメラ25を設置してもよい。例えば前処理部11の内部などにカメラ25を設置することもできる。さらに、図3に示すように、分析装置10に接続された他の機器26を撮影することもできる。従って、「分析装置10を撮影する」とは、分析装置10に関連した種々の箇所を撮影するという概念である。
【0015】
パソコン30には、ネットワーク40を介して分析装置10を遠隔制御するための分析装置の制御端末用制御プログラムがインストールされている。この制御プログラムを実行することにより、パソコン30は、分析の条件や手順の設定を行う機能や、送液ポンプ12やカラムオーブン14に設けたセンサの測定値を受信し、それに基づいて分析条件や手順を変更したりモニタ31に表示する機能、分析装置10から送信されてくる分析データを解析する機能などを実現する。それらに加えパソコン30は本実施例の制御プログラムを実行することにより、カメラ25で撮影された静止画又は動画映像をネットワーク40を介して受信しモニタ31に表示する機能、受信した映像を手動又は自動で録画する機能、カメラ25の向きを変えたりズームさせる等のカメラ制御機能なども実現する。
【0016】
映像の転送・再生方式としては、通常はカメラ25で撮影された映像を連続的にパソコン30に送信し、パソコン30の側でその映像をリアルタイムでモニタ31に表示させることが望ましい。しかし、ネットワークの転送速度に限界がある場合等、パソコン30の側にリアルタイムで映像を送信することが不可能または困難な場合には、分析装置10の側で一旦映像のデータを蓄えておき、それを所定のタイミングで一括して、又はストリーミング技術を利用してパソコン30に送信するようにしても良い。
以下、本実施形態における各機器の具体的な動作について説明する。
【0017】
まず、オペレータがパソコン30の入力部(図示せず)を介してパソコン30に対してカメラ25で撮影される映像の送信開始を入力する。この入力を受けたパソコン30は、開始信号を、ネットワーク40を通じて分析装置10に送信する。分析装置10では、その開始信号をネットワークインターフェース21を介して制御部24が受信する。開始信号を受信した制御部24はカメラ25を作動させ、撮影された映像をカメラインターフェース22から連続的に取り込み、その映像をネットワークインターフェース21及びネットワーク40を通じてパソコン30に送信する。パソコン30は、受信したその映像をモニタ31にリアルタイムに表示する。このようにして、オペレータは表示された映像を見て、所定のセンサの測定値やエラーコード等の予め定められた情報だけでは確認することができない分析装置10の様々な状況を確認することができる。
【0018】
パソコン30は、受信する映像をモニタ31に表示すると同時に又は表示することなく、例えばハードディスク等の記憶装置に録画してもよい。録画の開始・終了のタイミングはオペレータが手動で入力してもよいが、例えば次のように定めることもできる。
【0019】
分析を実行する前に、オペレータがパソコン30の入力部を介して、録画を開始・終了させる条件である録画条件を設定する。パソコン30は設定された録画条件を示すデータを分析装置10に送信し、制御部24がそれを自身のメモリに保存する。なお、録画を開始する条件は例えば前処理部11での処理の開始時や、所定のエラーが発生した時、送液ポンプ12やカラムオーブン14に設けられたセンサ等の測定値が所定の値になった時などとすればよい。録画終了の条件は、分析装置10において所定の処理が終了した時点や、録画が開始されてから所定時間が経過した時点とすることができる。
【0020】
制御部24は、パソコン30へ映像を連続的に送信しつつ、他方で設定された録画条件が満たされたことに基づき、録画の開始又は終了を指示するトリガ信号を生成し、それをパソコン30に送信する。トリガ信号を受信したパソコン30は、その指示に従って映像の録画を開始又は終了する。
これにより、オペレータが事前に指定した条件を満たす映像だけがパソコン30において録画される。従って、分析後に確認したい映像をオペレータが容易に探し出すことができる。同時に、記憶装置の資源の節約ともなる。
パソコン30では、記憶装置に一定の時間の映像を蓄積(バッファリング)しておき、トリガ信号を受信した前後の一定の時間の映像も最終的に録画されるようにすることが望ましい。これにより、例えば分析装置10に何らかのエラーが発生した場合、そのエラーが検知された直後からの映像だけでなく、その前の分析装置10の状態をもオペレータは知ることができるようになる。すなわち、分析装置10の状態をより詳細に調べることが可能となる。なお、パソコン30にて映像を連続的に受信し、且つそれをモニタ31に表示させながら、予め定められた一定の時間間隔毎に静止画を保存してゆくこともできる。これによって、記憶装置の容量に限りがある場合でも、オペレータは時間を遡って分析装置10の状態を確認することができるようになる。
【0021】
映像を分析装置10側に一旦保存し、それをパソコン30に転送する場合も同様に、録画条件を制御部24に設定しておけばよい。分析装置10は、その録画条件に従って指定されたタイミングの映像(動画又は静止画)を分析装置10に設けられたハードディスクなどの分析装置側記憶装置(図示せず)に一旦保存し、それを選択的にパソコン30に送信する。パソコン30は、受信したこの映像をモニタ31に表示させるとともにパソコン30の記憶装置に保存(録画)する。
これにより、パソコン30には選択的に送信された映像のみが保存(録画)されるため、オペレータは、確認したい映像を容易に探し出すことができる。また、ストリーミング方式と比較してパソコン30に送信するデータ量が大幅に減少するため、ネットワーク40上のトラフィックの増加を抑制することができる。なお、分析装置10からパソコン30に映像を送信するタイミングは特に問わない。
【0022】
カメラ25の向きやズーム、ピント、明るさ、コントラスト等を調節する場合、オペレータはパソコン30の入力部を介して所望の動作を指示する。パソコン30はこの指示をカメラ制御信号としてネットワーク40を通じて制御部24に送信する。制御部24はこのカメラ制御信号に基づき、カメラ25を動作させる。
【0023】
以上、本発明に係る分析装置及び分析装置の制御端末用制御プログラムについて実施例を挙げて説明を行った。しかしながら上記は例に過ぎず、本発明の精神内で適宜に改良や修正を行ったとしてももちろん構わない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態である分析装置を含むネットワークの概略図。
【図2】同分析装置のコントローラの機能を示すブロック図。
【図3】同分析装置に接続された機器にカメラを向けた状態を示す概略図。
【符号の説明】
【0025】
10…分析装置
11…前処理部
12…送液ポンプ
13…オートサンプラ
14…カラムオーブン
15…検出器
20…コントローラ
21…ネットワークインターフェース
22…カメラインターフェース
23…装置内通信インターフェース
24…制御部
25…カメラ
26…機器
30…パソコン
31…モニタ
40…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークに接続するためのネットワークインターフェースを備えた分析装置であって、
該分析装置を撮影するカメラを接続するためのカメラインターフェースと、
前記カメラによって撮影される映像を前記カメラインターフェースを通じて取り込み、該映像を前記ネットワークに接続される端末に前記ネットワークインターフェースを通じて送信する制御手段と、
を備えることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記端末に送信する映像の録画の開始及び/又は終了を指示するトリガ信号を予め定められた条件に従って生成し、該トリガ信号を該端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記制御手段が、予め定められた条件に従って前記映像を選択的に前記端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記端末より受信したカメラ制御信号に従って、前記カメラインターフェースに接続されたカメラを動作させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分析装置。
【請求項5】
ネットワークに接続された端末を、該ネットワークに接続された分析装置の制御端末として動作させるための制御プログラムであって、
前記分析装置に接続された、該分析装置を撮影するカメラにて撮影された映像を前記ネットワークを通じて受信する処理と、
該受信した映像を該端末のモニタ上に表示させる処理と、
を前記端末に実行させることを特徴とする分析装置の制御端末用制御プログラム。
【請求項6】
受信した前記映像を録画する処理を前記端末に実行させることを特徴とする請求項5に記載の分析装置の制御端末用制御プログラム。
【請求項7】
前記分析装置より送信されたトリガ信号に従って、前記映像の録画の開始及び/又は終了を行う処理を前記端末に実行させることを特徴とする請求項6に記載の分析装置の制御端末用制御プログラム。
【請求項8】
前記分析装置に接続されたカメラを動作させるためのカメラ制御信号を送信する処理を前記端末に実行させることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の分析装置の制御端末用制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−25726(P2010−25726A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186860(P2008−186860)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】