カメラシステム及びフォーカルプレーンシャッタ装置
【課題】高速秒時に於いても露光ムラが発生することのないカメラシステム及びカメラのフォーカルプレーンシャッタ装置を提供することである。
【解決手段】シャッタユニット21内のフォーカルプレーンシャッタ56は、先幕25a及び後幕25bを駆動するための静電アクチュエータ57を内蔵する。そして、パルス発生回路54から第1の周期の第1のパルス信号を出力すると、この第1のパルス信号に基づいて、駆動回路55にて、第1の周期よりも長い第2の周期の第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を静電アクチュエータ57の駆動信号としてフォーカルプレーンシャッタ56に供給する。一方、上記第1のパルス信号に基づいて、出力回路58にて、上記第2の周期より短い第3の周期の第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号をフラット発光時のタイミング信号としてストロボ装置60に供給する。
【解決手段】シャッタユニット21内のフォーカルプレーンシャッタ56は、先幕25a及び後幕25bを駆動するための静電アクチュエータ57を内蔵する。そして、パルス発生回路54から第1の周期の第1のパルス信号を出力すると、この第1のパルス信号に基づいて、駆動回路55にて、第1の周期よりも長い第2の周期の第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を静電アクチュエータ57の駆動信号としてフォーカルプレーンシャッタ56に供給する。一方、上記第1のパルス信号に基づいて、出力回路58にて、上記第2の周期より短い第3の周期の第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号をフラット発光時のタイミング信号としてストロボ装置60に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラ等を有するカメラシステム及びフォーカルプレーンシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フォーカルプレーンシャッタは、シャッタ先幕とシャッタ後幕とで形成されるスリットの幅を調整することによって、撮像面に適切な光量を与えるようにしたシャッタ機構である。近年は、高速化のために、シャッタ先幕及び後幕を、より軽量な複数枚の金属羽で形成し、それぞれをバネ力で走行させるものが一般的である。
【0003】
また、フォーカルプレーンシャッタを有するカメラにてストロボ撮影を行う際に、スリットの走行に同期して微小発光を繰り返すようにした、いわゆるフラット発光という技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このフラット発光とは、ストロボを小刻みに発光させることによって発光波形をフラットにし、スリット露光時でもストロボ撮影を可能とした発光形態である。
【特許文献1】特開平6−302389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シャッタ先幕と後幕をバネ力で駆動する形式のフォーカルプレーンシャッタの場合、バネ力の時間的変動、周囲との摩擦、或いは慣性力等の様々な影響を受けるため、先幕及び後幕は一定速度で走行することができないものとなる。従って、スリット幅の狭い高速シャッタ秒時に於いては、上述したフラット発光を行うと、画面内で露光量にムラが出るという課題が生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高速秒時に於いても撮影した画像に露光ムラが発生することのないカメラシステム及びカメラのフォーカルプレーンシャッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、フラット発光可能なストロボ装置と、先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び2の何れか1に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータと、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、フラット発光可能なストロボ装置と、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6及び7の何れか1に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータと、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高速秒時に於いても露光ムラが発生することのないカメラシステム及びカメラのフォーカルプレーンシャッタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
はじめに、本発明に係る静電シャッタ装置の駆動原理について、図1及び図2を参照して説明する。
【0019】
本シャッタ装置は、基本的に固定子1と移動子2とを備えており、移動子2は固定子1に対して図1(a)及び(b)に於いて左右方向に移動自在に構成されている。そして、固定子1には、被写体からの光像を撮像素子(図示せず)に導くための開口部3が設けられている。更に、この固定子1には、上記移動子2の移動方向と直交する方向に、帯状の複数の延出された駆動電極4が所定の間隔で並設されている。
【0020】
上記移動子2は、後述する永久分極された、延出された誘導体(以下、エレクトレットと称する)5の部位を複数備えている。
【0021】
このような構成に於いて、駆動電極4に周波電圧を印加すると、駆動電極4と上述したエレクトレットとの間に吸引力若しくは反発力が発生し、結果的に移動子2が固定子1に対して相対移動する。したがって、移動子2が固定子1の開口部3を、開放若しくは遮蔽するように移動可能にしておけば、これによってシャッタ装置を構成することができる。
【0022】
図1(a)はシャッタが開の状態を示し、図1(b)はシャッタが閉の状態を示している。尚、固定子1に開口部3は必ずしも必要なものではなく、固定子1を透過部材として、図1(a)に示されるように、駆動電極4が設けられていない領域、すなわち、透過領域を形成しても良い。以下、被写体光束が通過するこのような領域を便宜的に開口部と称する。また、本構成に係るシャッタ装置を、エレクトレットシャッタと称するものとする。
【0023】
図2は、こうしたエレクトレットシャッタの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【0024】
エレクトレットシャッタ7に於いて、固定子1に並設されたそれぞれの駆動電極4には、駆動回路10からの電圧信号線が接続されている。これらの電圧信号線には、4相の電圧信号が印加されるようになっており、従って、駆動電極4には、4本毎に同一の電圧信号が印加される。図2では、駆動電極4にA、B、C、Dの符号を付してこの電圧信号を区別している。
【0025】
移動子2には、固定子1との対向面に永久分極された誘導体(エレクトレット)5を複数備えている。
【0026】
尚、この図は、あくまでも模式図であり、実際のエレクトレットシャッタに於ける電極やエレクトレット化部位の数や配置間隔は、シャッタの大きさ、開口部の面積、エレクトレット化部位の極性、その配置形態、シャッタ装置として要求される駆動分解能、シャッタ最高速度等の様々な要因によって適宜決定されるものである。また、このエレクトレットシャッタの場合、正負の極性を有するエレクトレット化部位が交互に配置されたタイプであるが、何れか一方の極性だけでも実現可能である。
【0027】
図2の左側には、上述したエレクトレットシャッタ7の構成と共に、エレクトレットシャッタ7に印加する電圧信号を発生するための駆動回路(駆動制御手段)10の構成が示されている。
【0028】
パルス発生回路12で生成した矩形波列(駆動パルス信号)は、位相器13及び昇圧回路14に供給される。昇圧回路14では、入力された矩形波列が100V程度まで昇圧されると共に、2つの極性を有する電圧信号に分岐されて、駆動電極4A及び4Cに供給される。一方、位相器13に入力された矩形波列は、90°位相が遅れた波形となり、その後、昇圧回路14に入力されて、上述と同様の2つの矩形波列となり、駆動電極4B及び4Dに供給される。
【0029】
図3は、上記駆動回路10によって作成されて、駆動電極4A〜4Dに印加される電圧信号列の例を示したタイミングチャートである。このうち、図3(a)は駆動電極4A、図3(b)は駆動電極4B、図3(c)は駆動電極4C、図3(d)は駆動電極4Dのタイミングチャートである。
【0030】
尚、駆動電極4A〜4Dの電圧の状態は、時間t1〜t4の4つの状態が、時間経過に対応して繰り返して変化するものである。
【0031】
図4(a)〜(d)は、上述したエレクトレットシャッタ7の動作を説明する図である。尚、図4(a)〜(d)に於いて、同図右側方向をエレクトレットの進行方向として、後方側(左側)に正極(プラス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)5a、前方側(右側)に負極(マイナス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)5bが配列されているものとする。
【0032】
図4(a)は、図3に示される時間t1に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極4の電圧の状態(極性)を示している。
【0033】
この状態に於いて、正極のエレクトレット5aは、駆動電極A(正極)から反発力を受け、駆動電極B(負極)から吸引力を受ける。また、負極のエレクトレット5bは、駆動電極C(負極)から反発力を受け、駆動電極D(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(a)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分右方向に移動する。
【0034】
図4(b)は、時間t2に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0035】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極B(正極)から反発力を受け、駆動電極C(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、駆動電極D(負極)から反発力を受け、駆動電極A(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(b)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0036】
同様に、図4(c)は、時間t3に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0037】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極C(正極)から反発力を受け、駆動電極D(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、更に別の駆動電極A(負極)から反発力を受け、駆動電極B(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(c)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0038】
更に、図4(d)は、時間t4に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0039】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極D(正極)から反発力を受け、駆動電極A(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、駆動電極B(負極)から反発力を受け、駆動電極C(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(d)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0040】
上述したように、移動子2は1つの駆動電極ピッチd移動し、この動作が繰り返されることで、移動子2は図4(a)→(b)→(c)→(d)のように右方向(図示矢印F方向)に移動する。尚、移動子2を図の左方向に移動するためには、駆動電極4に印加する電圧の極性を逆に切り替えれば良い。
【0041】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0042】
図5は本発明に係る一実施形態のフォーカルプレーンシャッタ装置が適用された撮像モジュールの構成を示す組立図であり、図6は図5の構成の撮像モジュールが組み立てられた状態の構成を示した断面図である。
【0043】
本撮像モジュール20は、シャッタユニット21と、撮像ユニット22とで構成されている。上記シャッタユニット21は、それぞれ独立して走行する先幕(シャッタ先幕)25aと、後幕(シャッタ後幕)25bとを有するフォーカルプレーンシャッタである。この先幕25a、後幕25bは、上述したエレクトレット5(図示せず)を備えている。そして、それぞれのエレクトレット5の対向面側には、複数の帯状の延出された電極部材である駆動電極(第1の駆動電極部位、第2の駆動電極部位)28a、28bと、開口部(または透過部)27a、27bが設けられた固定子(固定部材)29a、29bが配設されている。
【0044】
上記先幕25a、後幕25bは、それぞれ固定子29a、29bの長手方向に対して、移動自在に構成されている。そして、上記複数の電極28a、28bは、上記固定子29a、29b上で、上記先幕25a、後幕25bの移動方向と直交する方向に所定の間隔で並設されている。
【0045】
更に、シャッタユニット21の被写体側(図5、図6に於いて左側)には、開口部(透光部)31を有する保護部材32が、スペーサ33〜36を介して、シャッタユニット21の前面を覆うように固設されている。ここで、固定子29a、29bは、ガラス等を基板として構成されており、その表面に駆動電極28a、28bが形成され、更に駆動電極28a、28b上に絶縁膜(図示せず)が設けられている。この絶縁膜が施されることにより、隣接する駆動電極間の短絡を防止している。
【0046】
一方、先幕25a、後幕25bは、ポリイミドやテフロン(登録商標)が基材として用いられており、アルミニウム等の金属が蒸着されている。これにより、完全ではないものの、ある程度の遮光性を確保することができる。本実施形態に於いては、このような特性を半透光性と称するものとする。
【0047】
そして、これら先幕25a、後幕25bとして使用される基材(フィルム膜)の一方の面、この場合駆動電極28a、28bと対向する面側には、コロナ放電法により複数のエレクトレットが形成されている(これをエレクトレット化するという)。本実施形態に於いては、正負の極性を有するエレクトレット部位が交互に配置されている(例えば、図4のエレクトレット5a、5b参照)。
【0048】
撮像ユニット22は樹脂等により構成されるもので、収納容器39内に撮像素子40と信号線41を収容して固定し、収納容器39の被写体側を開口部(透光部)を有するカバーガラス42で覆って構成している。
【0049】
尚、カバーガラス42に設けられた開口部は、上述した固定子29a、29bの開口部27a、27b、保護部材32に設けられた開口部31と対応する位置に設けられている。これにより、開口部31より取り込まれた被写体光が光電変換素子である撮像素子(撮像手段)40に導かれ、この撮像素子40により当該被写体の像が光電変換される。
【0050】
このように、本撮像モジュール20は、エレクトレットシャッタを用いてシャッタユニット21を構成しているため、その厚さを従来のシャッタユニットと比較して大幅に減少することができ、薄型化することができる。
【0051】
また、エレクトレットシャッタは、先幕25a、後幕25bに誘導される電荷を利用するのではなく、エレクトレットに永久分極されている電荷を利用するため、幕の立ち上がり時間を短縮してシャッタ動作を高速化することができる。
【0052】
加えて、エレクトレットの電荷量は任意に与えることが可能であることから、駆動力が最大となるような最適の電荷量を与えることができ、極めて大きな駆動力を得ることができる。したがって、撮像モジュールのサイズに応じた最適なシャッタユニット21を構成することができる。
【0053】
更に、先幕25a、後幕25bは素材として樹脂材料を用いることができるため、軽量である。例えば、先幕25a、後幕25bは、10〜20μmの薄い膜で形成することが可能である。それ故、動作に必要な電力量は少なく、且つ静かな動作を実現することができる。
【0054】
図7は、先幕25a、後幕25bの動作を説明する図である。
【0055】
図7(a)は初期状態を示すもので、露光開口27は全閉状態となっている。すなわち、先幕25aによって露光開口27の全体が覆われており、図示されない撮像ユニット22に対して被写体光が遮蔽される。
【0056】
次に、撮像動作の開始指示に応じて、図7(b)に示されるように、先幕25aが図示矢印F1 方向に駆動されて露光開口27は全開状態となる。これにより、被写体光が図示されない撮像ユニット22に導かれる。
【0057】
また、スリット露光時は、図7(c)に示されるように、先幕25aが図示矢印F2 方向に駆動されると、所定時間をおいて後幕25bが先幕25aに追従して図示矢印F3 方向に駆動される。この先幕25aと後幕25bとの間に形成されるスリットは、そのときのシャッタ秒時に対応する。そして、上記先幕25aと後幕25bで形成されたスリットが露光開口27上を通過することにより、移動するスリットを介して、被写体光が図示されない撮像ユニット22に導かれる。
【0058】
図7(b)或いは(c)の状態から所定時間が経過したときに、図7(d)に示されるように、後幕25bが図示矢印F4 方向に駆動されて露光開口27が遮蔽される。その後、先幕25aと後幕25bは、図7(a)に示される初期状態に復帰し、次の撮像動作に備えて待機する。
【0059】
図8は、本発明に係る一実施形態のデジタル一眼レフカメラとストロボ装置で構成されるカメラシステムの機能ブロック図である。
【0060】
図8に於いて、このカメラシステムは、カメラ本体50とストロボ装置60とにより構成される。
【0061】
上記カメラ本体50は、該カメラ全体の制御を司るカメラ制御部51と、シャッタユニット21と、該シャッタユニット21以外の他のカメラユニット52とを有している。
【0062】
シャッタユニット21は、パルス発生回路54と、駆動回路55と、フォーカルプレーンシャッタ56と、出力回路58とを有している。そして、フォーカルプレーンシャッタ56は、上述したシャッタ先幕25a及び後幕25bと、これら先幕25a及び後幕25bを駆動するための静電アクチュエータ57を有して構成される。
【0063】
カメラ制御部51からの制御信号に応じて、パルス発生回路54より第1のパルス信号が出力される。すると、駆動回路55では、この第1のパルス信号を受けて、静電アクチュエータ57を駆動すべく第2のパルス信号を出力する。すると、静電アクチュエータ57の動きに従って、先幕25a及び後幕25bが駆動されて、上述した図7(a)〜(d)に示されたような露光が行われる。
【0064】
一方、パルス発生回路54からは、第1のパルス信号が駆動回路55に供給されると共に、出力回路58にも供給される。そして、この出力回路58から第3のパルス信号がストロボの発光開始信号として、カメラ本体50の外部のストロボ装置60に供給される。これにより、フォーカルプレーンシャッタ56と同期したストロボ発光が可能になる。
【0065】
図9は、本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの電気系のシステム構成を示すブロック図である。
【0066】
図9に於いて、このカメラシステムは、ボディユニット65と、アクセサリ装置として、例えば交換可能なレンズユニット(すなわちレンズ鏡筒)66と、通信コネクタ71を介して撮影した画像データを記録しておく記録メディア67と、ストロボ通信コネクタ72を介して外付けのストロボユニット68とを有して構成されている。
【0067】
上記レンズユニット66は、上記ボディユニット65の前面に設けられた、図示されないレンズマウントを介して着脱自在に装着可能である。そして、上記レンズユニット66は、撮影レンズ75a及び75bと、絞り76と、レンズ駆動機構77と、絞り駆動機構78と、レンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、Lμcomと略記する)80とから構成されている。
【0068】
上記撮影レンズ75a及び75bは、レンズ駆動機構77内に存在する図示されないDCモータによって、光軸方向に駆動される。絞り76は、絞り駆動機構78内に存在する図示されないステッピングモータによって駆動される。また、Lμcom80は、上記レンズ駆動機構77や絞り駆動機構78等、レンズユニット66内の各部を駆動制御する。このLμcom80は、通信コネクタ70を介して、後述するボディ制御用マイクロコンピュータ100と電気的に接続がなされ、該ボディ制御用マイクロコンピュータ100の指令に従って制御される。
【0069】
一方、ボディユニット65は、以下のように構成されている。
【0070】
レンズユニット66内の撮影レンズ75a及び75b、絞り76を介して入射される図示されない被写体からの光束は、クイックリターンミラー83で反射されて、フォーカシングスクリーン84、ペンタプリズム85を介して接眼レンズ86に至る。
【0071】
上記クイックリターンミラー83の中央部はハーフミラーになっており、該クイックリターンミラー83がダウン(図示の位置)した際に一部の光束が透過する。そして、この透過した光束は、クイックリターンミラー83に設置されたサブミラー90で反射され、自動測距を行うためのAFセンサユニット91に導かれる。尚、上記クイックリターンミラー83のアップ時には、サブミラー90は折り畳まれるようになっている。
【0072】
上記クイックリターンミラー83の後方には、光軸上のフォーカルプレーン式のシャッタユニット21と、光学系を通過した被写体像を光電変換するための撮像素子(CCD)40を収容した撮像ユニット22とを備えた撮像モジュール20が設けられている。図示されないが、クイックリターンミラー83が光路より退避した場合、撮影レンズ75a及び75bを通った光束は、撮像モジュール20内の撮像素子40(図5及び図6参照)に結像される。
【0073】
このボディユニット65は、また、上記撮像モジュール20内の撮像素子40に接続された撮像素子インターフェイス回路95と、記憶領域として設けられたSDRAM97と、液晶モニタ98及び上記通信コネクタ71を介して記録メディア67とが、画像処理を行うための画像処理コントローラ96に接続されている。これらは、電子撮像機能と共に電子記録表示機能を提供できるように構成されている。
【0074】
上記記録メディア67は、各種のメモリカードや外付けのハードディスクドライブ(HDD)等の外部記録媒体であり、通信コネクタ71を介してカメラのボディユニット65と通信可能、且つ交換可能に装着される。
【0075】
上記画像処理コントローラ96は、通信コネクタ70と、測光回路101と、ミラー駆動機構102と、AFセンサ駆動回路103と、駆動手段であるシャッタ駆動制御回路104と、不揮発性メモリ(EEPROM)107等と共に、このボディユニット65内の各部を制御するためのボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、Bμcomと略記する)100に接続されている。
【0076】
上記Bμcom100には、当該カメラの動作状態を表示出力によって撮影者へ告知するための動作表示用LCD108と、カメラ操作スイッチ(SW)109と、電源回路110を介して電池111とが接続されている。
【0077】
尚、上記Bμcom100とLμcom80とは、レンズユニット66の装着時に於いて、通信コネクタ70を介して通信可能に電気的接続がなされる。そして、デジタルカメラとしてLμcom80がBμcom100に従属的に協働しながら稼動するようになっている。
【0078】
上記測光回路101は、上記ペンタプリズム85からの光束に基づいて測光処理する回路である。上記ミラー駆動機構102はクイックリターンミラー83を駆動制御する機構であり、AFセンサ駆動回路103は上記AFセンサユニット91を駆動制御するための回路である。また、シャッタ駆動制御回路90は、上記シャッタユニット21の先幕25aと後幕25bの動きを制御すると共に、Bμcom100との間でシャッタの開閉動作を制御する信号とストロボと同調する信号の授受を行う。
【0079】
不揮発性メモリ107は、その他の記憶領域として、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する記憶手段であり、Bμcom100からアクセス可能に設けられている。
【0080】
動作表示用LCD108は、当該カメラの動作状態を表示出力によって撮影者へ告知するためのものである。上記カメラ操作スイッチ109は、例えば撮影動作の実行を指示するレリーズスイッチ、撮影モードと画像表示モードを切り替えるモード変更スイッチ及びパワースイッチ等、当該カメラを操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群で構成される。
【0081】
更に、電源回路110は、電源としての電池111の電圧VE を、当該カメラシステムの各回路ユニットが必要とする電圧VC に変換して供給するために設けられている。
【0082】
ストロボユニット68は、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115と、閃光発光部116と、発光制御回路117及び電池118とから成っている。そして、このストロボユニット68は、ストロボ通信コネクタ72を介して、ボディユニット50と通信可能に装着可能である。また、上記ストロボ制御用マイクロコンピュータ115及び発光制御回路117へは、シャッタ駆動制御回路104から、ストロボ通信コネクタ72を介して、閃光発光信号、フラット発光信号が切り替えられて出力されるようになっている。これらの発光信号は、発光モードに応じて出力される。
【0083】
このように構成されたデジタルカメラの各部は、次のように稼動する。
【0084】
先ず、画像処理コントローラ96により、Bμcom100の指令に従って撮像素子インターフェイス回路95が制御されて、撮像モジュール20から画像データが取り込まれる。この画像データは、一時保管用メモリであるSDRAM97に取り込まれる。このSDRAM97は、画像データが変換される際のワークエリア等に使用される。また、この画像データは、JPEGデータに変換された後には、記録メディア67に保管されるように設定されている。
【0085】
ミラー駆動機構102は、上述したように、クイックリターンミラー83をアップ(UP)位置とダウン(DOWN)位置へ駆動するための機構である。ミラー駆動機構102によってクイックリターンミラー83がダウン位置にある時、撮影レンズ75a及び75bからの光束は、AFセンサユニット91側とペンタプリズム85側へと分割されて導かれる。
【0086】
AFセンサユニット91内のAFセンサからの出力は、AFセンサ駆動回路103を介してBμcom100へ送信されて、周知の測距処理が行われる。
【0087】
一方、ペンタプリズム85に隣接する接眼レンズ86からは、撮影者が被写体を目視できる。また、上記ペンタプリズム85を通過した光束の一部は、測光回路101内のホトセンサ(図示せず)へ導かれ、ここで検知された光量に基づいて周知の測光処理が行われる。
【0088】
シャッタ駆動制御回路104では、Bμcom100からシャッタを駆動制御するための信号が受取られると、その信号に基づいてシャッタユニット21が制御される。シャッタ駆動制御回路104では、Bμcom100からシャッタを駆動制御するための信号が受取られると、その信号に基づいてシャッタユニット21が制御される。それと共に、シャッタ駆動制御回路104から、所定のタイミングでストロボ通信コネクタ72を介してストロボ制御用マイクロコンピュータ115及び発光制御回路117に、ストロボを発光させるための発光信号が出力される。Bμcom100からは、上記発光信号に基づいて、通信により発光モードに応じた発光指令信号が出力される。
【0089】
また、撮影者によって上述したカメラ操作スイッチ109の中のモード変更スイッチが操作されて、撮影モードから画像表示モードへ切り換えられると、記録メディア67に保管された画像データが読み出されて、液晶モニタ98に表示可能である。記録メディア67から読み出された画像データは、画像処理コントローラ96に於いてビデオ信号に変換され、液晶モニタ98にて出力表示される。
【0090】
図10は、上述したシャッタ駆動制御回路104及びシャッタユニット21との信号接続を示す構成図である。
【0091】
シャッタユニット21には、上述したように、先幕25aと後幕25bが備えられており、そのそれぞれの幕を駆動するために、シャッタ駆動回路104には、駆動回路55と、それぞれ先幕25a及び後幕25b用の駆動回路129及び130が設けられている。
【0092】
駆動回路55は、制御回路121と、パルス発生回路122と、エッジ検出回路123と、2系統のゲート回路125及び126とを有して構成される。また、駆動回路129は、位相器A131a、位相器B131bと、昇圧器132a、132bとを有して構成される。同様に、駆動回路130は、位相器C133a、位相器D133bと、昇圧器134a、134bとを有して構成される。
【0093】
尚、位相器B131b、位相器D133bは、それぞれ位相器A131a、位相器C133aに対して、90°位相をシフトした出力を供給するものである。
【0094】
制御回路121は、Bμcom100からの開閉制御信号(若しくはリセット信号)に基づいて先幕25aと後幕25bを駆動するべく、パルス発生回路122からパルス信号を出力させる。このパルス信号は、上述した第1のパルス信号として、ゲート回路125を介して位相器A131a、位相器B131bへ、またゲート回路126を介して位相器C133a、位相器D133bへ出力される。それと共に、上記第1のパルス信号は、エッジ検出回路123を介して、ストロボユニット68へ、フラット発光信号として出力される。尚、制御回路121からは、閃光発光信号がストロボユニット68へ出力される。
【0095】
上記昇圧器132a及び132b、昇圧器134a及び134bからの出力である第2のパルス信号は、それぞれ固定子29a及び29b上に配設された駆動電極28a及び28bに供給される。これにより、先幕25a、後幕25bに設けられた永久分極された誘導体(エレクトレット)26a、26bが、駆動電極28a、28bのA〜Dに順次吸引され、先幕25aと後幕25bが駆動される。こうして、図7に示される露光開口27の開閉動作が制御される。
【0096】
次に、図11のタイミングチャートを参照して、図10に示される各部の動作について説明する。
【0097】
まず、Bμcom100から開閉制御信号(a)が駆動回路55内の制御回路121に出力される。ここで、先幕25aと後幕25bとの間隔として形成されるスリットが、露光秒時となる。そして、上記開閉制御信号(a)を受けて、制御回路121からパルス発生回路122に対して、パルス発生回路動作指示信号(b)が出力される。すると、パルス発生回路122からは、第1のパルス信号として、パルス発生回路出力信号(c)が出力される。
【0098】
このパルス発生回路出力信号(c)により、エッジ検出回路123にてエッジが検出され、フラット発光信号(k)が出力される。また、上記開閉制御信号(a)の立ち上がり、及び立ち下がりに伴って、先幕用ゲート制御信号(d)、後幕用ゲート制御信号(e)により、ゲート回路125、126がオンされる。
【0099】
そして、ゲート回路125がオンされたことにより、位相器A131a、位相器B131bから、互いに90°位相がシフトされた位相器A出力(g)、位相器B出力(h)が出力される。同様に、ゲート回路126がオンされたことにより、位相器C133a、位相器D133bから、互いに90°位相がシフトされた位相器C出力(i)、位相器D出力(j)が出力される。
【0100】
図12は、ストロボユニット68の電気系の構成を示した図である。
【0101】
図12に於いて、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115には、ボディユニット65内のBμcom100から発光モード指示信号が入力されると共に、シャッタ駆動制御回路104から閃光発光信号及びフラット発光信号(k)が入力される。
【0102】
上記ストロボ制御用マイクロコンピュータ115には、安定化回路140、波形成型回路141、ダイオード147が接続された昇圧回路142、トリガ回路143、切換スイッチ(SW)144、電源146、メインコンデンサ148及びキセノン(Xe)管150とIGBT151の直列回路が接続されている。
【0103】
このような構成に於いて、キセノン管150への発光電流は、メインコンデンサ148によって供給される。昇圧回路142を介して電源146からの電圧が昇圧されると、ダイオード147を経てメインコンデンサ148が充電される。そして、メインコンデンサ148が充電された状態で、IGBT151がオンされ、トリガ回路143からのトリガ信号がキセノン管150に与えられる。すると、メインコンデンサ148に蓄積されていた電荷が放出されて、キセノン管150が発光する。
【0104】
閃光発光時は、閃光発光信号がストロボ制御用マイクロコンピュータ115を介してトリガ回路143に供給される。すなわち、シャッタ駆動制御回路104から閃光発光信号が出力されたときのみ、キセノン管150は発光する。そして、IGBT151がオフになるとキセノン管150の発光が停止される。
【0105】
一方、フラット発光信号の場合は、IGBT151がオンされて、トリガ回路143がオンにされると、メインコンデンサ148から放電電流が流れ、キセノン管150が発光する。そして、所定時間経過した時点でIGBT151がオフにされる。すると、キセノン管150の発光は停止されるが、短時間内でIGBT151が再度オンされると、トリガをかけなくともキセノン管150が発光する。これは、以下の理由による。
【0106】
すなわち、トリガ回路143によってキセノン管150にトリガ電圧が印加されると、該キセノン管150内のガスがイオン化される。このイオン化されたガスのイオンが消滅するまでの時間は、消イオン時間と称される。そして、この消イオン時間よりも短い時間内であれば、再度トリガをかけなくても、IGBT151をオン/オフさせるだけで、微小発光を繰り返すことができる。例えば、キセノンガスが封入されたキセノン管150の場合は、イオン化されている時間は数μS〜数百μSとなる。
【0107】
上述した発光モードの選択は、発光モード指示信号に応じて、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115が切換スイッチ144を切換える。通常は、IGBT151がグランドに接続されるようになっており、該IGBT151がオフとなり、閃光発光は行われない状態である。
【0108】
閃光発光モードの場合は、切換スイッチ144によって閃光発光制御信号(n)が得られ、閃光発光信号はストロボ制御用マイクロコンピュータ115を介してトリガ回路143に供給される。
【0109】
フラット発光モードの場合は、切換スイッチ144によってフラット発光制御信号(m)が得られる。これにより、フラット発光信号(k)は、波形成型回路141に供給される。
【0110】
図13のタイミングチャートを参照すると、シャッタ駆動制御回路104からフラット発光信号(k)が供給されると、波形成型回路141にて、フラット発光制御信号(m)の微小発光時間が決定される。すなわち、上記フラット発光信号(k)を基に、IGBT151のオン/オフ時間が設定される。すると、フラット発光制御信号(k)のハイ/ローのレベルに対応してIGBT151のオン/オフ時間が得られる。このIGBT151のオン/オフ時間に従って、キセノン管150の連続発光が行われる。
【0111】
図13に示される発光波形では、フラット発光制御信号(k)のハイレベル時に明るく発光し、フラット発光制御信号(k)のローレベル時にやや暗く発光することがわかる。そして、この2つの状態が繰り返されることにより、全体として、連続したフラット発光が行われることになる。
【0112】
例えば、17.3mm×13.0mmの撮像素子に対して、長手方向に走行するフォーカルプレーンシャッタを考慮すると、このシャッタの最高速秒時を1/8000、シンクロ秒時を1/250とする。ストロボ発光時間を0.9mSと仮定すると、シンクロ秒時が1/250であるためには、先幕走行時間は3.01mSになり、幕速は5.76mm/mSである。また、最高速秒時が1/8000であるためには、先幕に対して後幕が0.122mS遅れて走行を開始しなければならない。
【0113】
したがって、幕速5.76mm/mSの先幕が0.122mS走行した場合の走行距離は、0.703mmである。つまり、静電シャッタ装置の電極幅を0.703mmに設定し、後幕に対して先幕を1ピッチ分だけ先に走行させれば、1/8000のシャッタ秒時が得られることになる。
【0114】
ここで、この静電シャッタに於いて、フラット発光を行う場合について考える。
【0115】
フラット発光を行う場合、あるポイントに於ける有効露光時間内に複数回の発光が行われなければ、撮影した画像に露光ムラが発生する虞れがある。したがって、駆動パルスよりも発光パルスのオン/オフの回数を多く(少なくとも2回)すれば、フラット発光による露光ムラを防止することができる。
【0116】
また、図10に示される位相器A131a、位相器B131b、位相器C133a、位相器D133bの前段に分周回路を設ければ、2倍に限らず、4倍或いはそれ以上の高周波のパルスをフラット発光用の信号とすることができる。これにより、上述した実施形態よりも露光ムラを防止することが可能となる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る静電シャッタ装置の駆動原理について説明する図である。
【図2】エレクトレットシャッタの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【図3】図2の駆動回路10によって作成されて、駆動電極4A〜4Dに印加される電圧信号列の例を示したもので、(a)は駆動電極4A、(b)は駆動電極4B、(c)は駆動電極4C、(d)は駆動電極4Dのタイミングチャートである。
【図4】図2に示されるエレクトレットシャッタ7の動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る一実施形態のフォーカルプレーンシャッタ装置が適用された撮像モジュールの構成を示す組立図である。
【図6】図5の構成の撮像モジュールが組み立てられた状態の構成を示した断面図である。
【図7】先幕25a、後幕25bの動作を説明する図である。
【図8】本発明に係る一実施形態のデジタル一眼レフカメラとストロボ装置で構成されるカメラシステムの機能ブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの電気系のシステム構成を示すブロック図である。
【図10】シャッタ駆動制御回路104及びシャッタユニット21との信号接続を示す構成図である。
【図11】図10に示される各部の動作について説明するタイミングチャートである。
【図12】ストロボユニット68の電気系の構成を示した図である。
【図13】フラット発光の動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0119】
1、29a、29b…固定子、2…移動子、3、27a、27b、31…開口部、4、4A〜4D、28a、28b…駆動電極、5、5a、5b、26a、26b…永久分極された誘導体(エレクトレット)、7…エレクトレットシャッタ、10…駆動回路、12…パルス発生回路、13…位相器、14…昇圧回路、20…撮像モジュール、21…シャッタユニット、22…撮像ユニット、25a…先幕、25b…後幕、27…露光開口、32…保護部材、33〜36…スペーサ、39…収納容器、40…撮像素子、50…カメラ本体、51…カメラ制御部、54…パルス発生回路、55…駆動回路、56…フォーカルプレーンシャッタ、57…静電アクチュエータ、58…出力回路、60…ストロボ装置、65…ボディユニット、66…レンズユニット、67…記録メディア、68…ストロボユニット、75a、75b…撮影レンズ、76…絞り、80…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lμcom)、83…クイックリターンミラー、91…AFセンサユニット、95…撮像素子インターフェイス回路、96…画像処理コントローラ、100…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bμcom)、104…シャッタ駆動制御回路、109…カメラ操作スイッチ(SW)、110…電源回路、115…ストロボ制御用マイクロコンピュータ、116…閃光発光部、117…発光制御回路、118…電池。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラ等を有するカメラシステム及びフォーカルプレーンシャッタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フォーカルプレーンシャッタは、シャッタ先幕とシャッタ後幕とで形成されるスリットの幅を調整することによって、撮像面に適切な光量を与えるようにしたシャッタ機構である。近年は、高速化のために、シャッタ先幕及び後幕を、より軽量な複数枚の金属羽で形成し、それぞれをバネ力で走行させるものが一般的である。
【0003】
また、フォーカルプレーンシャッタを有するカメラにてストロボ撮影を行う際に、スリットの走行に同期して微小発光を繰り返すようにした、いわゆるフラット発光という技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。このフラット発光とは、ストロボを小刻みに発光させることによって発光波形をフラットにし、スリット露光時でもストロボ撮影を可能とした発光形態である。
【特許文献1】特開平6−302389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シャッタ先幕と後幕をバネ力で駆動する形式のフォーカルプレーンシャッタの場合、バネ力の時間的変動、周囲との摩擦、或いは慣性力等の様々な影響を受けるため、先幕及び後幕は一定速度で走行することができないものとなる。従って、スリット幅の狭い高速シャッタ秒時に於いては、上述したフラット発光を行うと、画面内で露光量にムラが出るという課題が生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高速秒時に於いても撮影した画像に露光ムラが発生することのないカメラシステム及びカメラのフォーカルプレーンシャッタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1に記載の発明は、フラット発光可能なストロボ装置と、先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1及び2の何れか1に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータと、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、フラット発光可能なストロボ装置と、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項6及び7の何れか1に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータと、第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、を具備することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明に於いて、上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高速秒時に於いても露光ムラが発生することのないカメラシステム及びカメラのフォーカルプレーンシャッタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
はじめに、本発明に係る静電シャッタ装置の駆動原理について、図1及び図2を参照して説明する。
【0019】
本シャッタ装置は、基本的に固定子1と移動子2とを備えており、移動子2は固定子1に対して図1(a)及び(b)に於いて左右方向に移動自在に構成されている。そして、固定子1には、被写体からの光像を撮像素子(図示せず)に導くための開口部3が設けられている。更に、この固定子1には、上記移動子2の移動方向と直交する方向に、帯状の複数の延出された駆動電極4が所定の間隔で並設されている。
【0020】
上記移動子2は、後述する永久分極された、延出された誘導体(以下、エレクトレットと称する)5の部位を複数備えている。
【0021】
このような構成に於いて、駆動電極4に周波電圧を印加すると、駆動電極4と上述したエレクトレットとの間に吸引力若しくは反発力が発生し、結果的に移動子2が固定子1に対して相対移動する。したがって、移動子2が固定子1の開口部3を、開放若しくは遮蔽するように移動可能にしておけば、これによってシャッタ装置を構成することができる。
【0022】
図1(a)はシャッタが開の状態を示し、図1(b)はシャッタが閉の状態を示している。尚、固定子1に開口部3は必ずしも必要なものではなく、固定子1を透過部材として、図1(a)に示されるように、駆動電極4が設けられていない領域、すなわち、透過領域を形成しても良い。以下、被写体光束が通過するこのような領域を便宜的に開口部と称する。また、本構成に係るシャッタ装置を、エレクトレットシャッタと称するものとする。
【0023】
図2は、こうしたエレクトレットシャッタの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【0024】
エレクトレットシャッタ7に於いて、固定子1に並設されたそれぞれの駆動電極4には、駆動回路10からの電圧信号線が接続されている。これらの電圧信号線には、4相の電圧信号が印加されるようになっており、従って、駆動電極4には、4本毎に同一の電圧信号が印加される。図2では、駆動電極4にA、B、C、Dの符号を付してこの電圧信号を区別している。
【0025】
移動子2には、固定子1との対向面に永久分極された誘導体(エレクトレット)5を複数備えている。
【0026】
尚、この図は、あくまでも模式図であり、実際のエレクトレットシャッタに於ける電極やエレクトレット化部位の数や配置間隔は、シャッタの大きさ、開口部の面積、エレクトレット化部位の極性、その配置形態、シャッタ装置として要求される駆動分解能、シャッタ最高速度等の様々な要因によって適宜決定されるものである。また、このエレクトレットシャッタの場合、正負の極性を有するエレクトレット化部位が交互に配置されたタイプであるが、何れか一方の極性だけでも実現可能である。
【0027】
図2の左側には、上述したエレクトレットシャッタ7の構成と共に、エレクトレットシャッタ7に印加する電圧信号を発生するための駆動回路(駆動制御手段)10の構成が示されている。
【0028】
パルス発生回路12で生成した矩形波列(駆動パルス信号)は、位相器13及び昇圧回路14に供給される。昇圧回路14では、入力された矩形波列が100V程度まで昇圧されると共に、2つの極性を有する電圧信号に分岐されて、駆動電極4A及び4Cに供給される。一方、位相器13に入力された矩形波列は、90°位相が遅れた波形となり、その後、昇圧回路14に入力されて、上述と同様の2つの矩形波列となり、駆動電極4B及び4Dに供給される。
【0029】
図3は、上記駆動回路10によって作成されて、駆動電極4A〜4Dに印加される電圧信号列の例を示したタイミングチャートである。このうち、図3(a)は駆動電極4A、図3(b)は駆動電極4B、図3(c)は駆動電極4C、図3(d)は駆動電極4Dのタイミングチャートである。
【0030】
尚、駆動電極4A〜4Dの電圧の状態は、時間t1〜t4の4つの状態が、時間経過に対応して繰り返して変化するものである。
【0031】
図4(a)〜(d)は、上述したエレクトレットシャッタ7の動作を説明する図である。尚、図4(a)〜(d)に於いて、同図右側方向をエレクトレットの進行方向として、後方側(左側)に正極(プラス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)5a、前方側(右側)に負極(マイナス)のエレクトレット(エレクトレット化部位)5bが配列されているものとする。
【0032】
図4(a)は、図3に示される時間t1に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極4の電圧の状態(極性)を示している。
【0033】
この状態に於いて、正極のエレクトレット5aは、駆動電極A(正極)から反発力を受け、駆動電極B(負極)から吸引力を受ける。また、負極のエレクトレット5bは、駆動電極C(負極)から反発力を受け、駆動電極D(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(a)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分右方向に移動する。
【0034】
図4(b)は、時間t2に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0035】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極B(正極)から反発力を受け、駆動電極C(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、駆動電極D(負極)から反発力を受け、駆動電極A(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(b)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0036】
同様に、図4(c)は、時間t3に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0037】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極C(正極)から反発力を受け、駆動電極D(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、更に別の駆動電極A(負極)から反発力を受け、駆動電極B(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(c)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0038】
更に、図4(d)は、時間t4に切り替わった直後のエレクトレットと駆動電極の電圧の状態を示している。
【0039】
この状態に於いて、エレクトレット5aは、駆動電極D(正極)から反発力を受け、駆動電極A(負極)から吸引力を受ける。また、エレクトレット5bは、駆動電極B(負極)から反発力を受け、駆動電極C(正極)から吸引力を受ける。このため、移動子2は、図4(d)の右方向に力を受けて、1つの駆動電極ピッチd分移動する。
【0040】
上述したように、移動子2は1つの駆動電極ピッチd移動し、この動作が繰り返されることで、移動子2は図4(a)→(b)→(c)→(d)のように右方向(図示矢印F方向)に移動する。尚、移動子2を図の左方向に移動するためには、駆動電極4に印加する電圧の極性を逆に切り替えれば良い。
【0041】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0042】
図5は本発明に係る一実施形態のフォーカルプレーンシャッタ装置が適用された撮像モジュールの構成を示す組立図であり、図6は図5の構成の撮像モジュールが組み立てられた状態の構成を示した断面図である。
【0043】
本撮像モジュール20は、シャッタユニット21と、撮像ユニット22とで構成されている。上記シャッタユニット21は、それぞれ独立して走行する先幕(シャッタ先幕)25aと、後幕(シャッタ後幕)25bとを有するフォーカルプレーンシャッタである。この先幕25a、後幕25bは、上述したエレクトレット5(図示せず)を備えている。そして、それぞれのエレクトレット5の対向面側には、複数の帯状の延出された電極部材である駆動電極(第1の駆動電極部位、第2の駆動電極部位)28a、28bと、開口部(または透過部)27a、27bが設けられた固定子(固定部材)29a、29bが配設されている。
【0044】
上記先幕25a、後幕25bは、それぞれ固定子29a、29bの長手方向に対して、移動自在に構成されている。そして、上記複数の電極28a、28bは、上記固定子29a、29b上で、上記先幕25a、後幕25bの移動方向と直交する方向に所定の間隔で並設されている。
【0045】
更に、シャッタユニット21の被写体側(図5、図6に於いて左側)には、開口部(透光部)31を有する保護部材32が、スペーサ33〜36を介して、シャッタユニット21の前面を覆うように固設されている。ここで、固定子29a、29bは、ガラス等を基板として構成されており、その表面に駆動電極28a、28bが形成され、更に駆動電極28a、28b上に絶縁膜(図示せず)が設けられている。この絶縁膜が施されることにより、隣接する駆動電極間の短絡を防止している。
【0046】
一方、先幕25a、後幕25bは、ポリイミドやテフロン(登録商標)が基材として用いられており、アルミニウム等の金属が蒸着されている。これにより、完全ではないものの、ある程度の遮光性を確保することができる。本実施形態に於いては、このような特性を半透光性と称するものとする。
【0047】
そして、これら先幕25a、後幕25bとして使用される基材(フィルム膜)の一方の面、この場合駆動電極28a、28bと対向する面側には、コロナ放電法により複数のエレクトレットが形成されている(これをエレクトレット化するという)。本実施形態に於いては、正負の極性を有するエレクトレット部位が交互に配置されている(例えば、図4のエレクトレット5a、5b参照)。
【0048】
撮像ユニット22は樹脂等により構成されるもので、収納容器39内に撮像素子40と信号線41を収容して固定し、収納容器39の被写体側を開口部(透光部)を有するカバーガラス42で覆って構成している。
【0049】
尚、カバーガラス42に設けられた開口部は、上述した固定子29a、29bの開口部27a、27b、保護部材32に設けられた開口部31と対応する位置に設けられている。これにより、開口部31より取り込まれた被写体光が光電変換素子である撮像素子(撮像手段)40に導かれ、この撮像素子40により当該被写体の像が光電変換される。
【0050】
このように、本撮像モジュール20は、エレクトレットシャッタを用いてシャッタユニット21を構成しているため、その厚さを従来のシャッタユニットと比較して大幅に減少することができ、薄型化することができる。
【0051】
また、エレクトレットシャッタは、先幕25a、後幕25bに誘導される電荷を利用するのではなく、エレクトレットに永久分極されている電荷を利用するため、幕の立ち上がり時間を短縮してシャッタ動作を高速化することができる。
【0052】
加えて、エレクトレットの電荷量は任意に与えることが可能であることから、駆動力が最大となるような最適の電荷量を与えることができ、極めて大きな駆動力を得ることができる。したがって、撮像モジュールのサイズに応じた最適なシャッタユニット21を構成することができる。
【0053】
更に、先幕25a、後幕25bは素材として樹脂材料を用いることができるため、軽量である。例えば、先幕25a、後幕25bは、10〜20μmの薄い膜で形成することが可能である。それ故、動作に必要な電力量は少なく、且つ静かな動作を実現することができる。
【0054】
図7は、先幕25a、後幕25bの動作を説明する図である。
【0055】
図7(a)は初期状態を示すもので、露光開口27は全閉状態となっている。すなわち、先幕25aによって露光開口27の全体が覆われており、図示されない撮像ユニット22に対して被写体光が遮蔽される。
【0056】
次に、撮像動作の開始指示に応じて、図7(b)に示されるように、先幕25aが図示矢印F1 方向に駆動されて露光開口27は全開状態となる。これにより、被写体光が図示されない撮像ユニット22に導かれる。
【0057】
また、スリット露光時は、図7(c)に示されるように、先幕25aが図示矢印F2 方向に駆動されると、所定時間をおいて後幕25bが先幕25aに追従して図示矢印F3 方向に駆動される。この先幕25aと後幕25bとの間に形成されるスリットは、そのときのシャッタ秒時に対応する。そして、上記先幕25aと後幕25bで形成されたスリットが露光開口27上を通過することにより、移動するスリットを介して、被写体光が図示されない撮像ユニット22に導かれる。
【0058】
図7(b)或いは(c)の状態から所定時間が経過したときに、図7(d)に示されるように、後幕25bが図示矢印F4 方向に駆動されて露光開口27が遮蔽される。その後、先幕25aと後幕25bは、図7(a)に示される初期状態に復帰し、次の撮像動作に備えて待機する。
【0059】
図8は、本発明に係る一実施形態のデジタル一眼レフカメラとストロボ装置で構成されるカメラシステムの機能ブロック図である。
【0060】
図8に於いて、このカメラシステムは、カメラ本体50とストロボ装置60とにより構成される。
【0061】
上記カメラ本体50は、該カメラ全体の制御を司るカメラ制御部51と、シャッタユニット21と、該シャッタユニット21以外の他のカメラユニット52とを有している。
【0062】
シャッタユニット21は、パルス発生回路54と、駆動回路55と、フォーカルプレーンシャッタ56と、出力回路58とを有している。そして、フォーカルプレーンシャッタ56は、上述したシャッタ先幕25a及び後幕25bと、これら先幕25a及び後幕25bを駆動するための静電アクチュエータ57を有して構成される。
【0063】
カメラ制御部51からの制御信号に応じて、パルス発生回路54より第1のパルス信号が出力される。すると、駆動回路55では、この第1のパルス信号を受けて、静電アクチュエータ57を駆動すべく第2のパルス信号を出力する。すると、静電アクチュエータ57の動きに従って、先幕25a及び後幕25bが駆動されて、上述した図7(a)〜(d)に示されたような露光が行われる。
【0064】
一方、パルス発生回路54からは、第1のパルス信号が駆動回路55に供給されると共に、出力回路58にも供給される。そして、この出力回路58から第3のパルス信号がストロボの発光開始信号として、カメラ本体50の外部のストロボ装置60に供給される。これにより、フォーカルプレーンシャッタ56と同期したストロボ発光が可能になる。
【0065】
図9は、本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの電気系のシステム構成を示すブロック図である。
【0066】
図9に於いて、このカメラシステムは、ボディユニット65と、アクセサリ装置として、例えば交換可能なレンズユニット(すなわちレンズ鏡筒)66と、通信コネクタ71を介して撮影した画像データを記録しておく記録メディア67と、ストロボ通信コネクタ72を介して外付けのストロボユニット68とを有して構成されている。
【0067】
上記レンズユニット66は、上記ボディユニット65の前面に設けられた、図示されないレンズマウントを介して着脱自在に装着可能である。そして、上記レンズユニット66は、撮影レンズ75a及び75bと、絞り76と、レンズ駆動機構77と、絞り駆動機構78と、レンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、Lμcomと略記する)80とから構成されている。
【0068】
上記撮影レンズ75a及び75bは、レンズ駆動機構77内に存在する図示されないDCモータによって、光軸方向に駆動される。絞り76は、絞り駆動機構78内に存在する図示されないステッピングモータによって駆動される。また、Lμcom80は、上記レンズ駆動機構77や絞り駆動機構78等、レンズユニット66内の各部を駆動制御する。このLμcom80は、通信コネクタ70を介して、後述するボディ制御用マイクロコンピュータ100と電気的に接続がなされ、該ボディ制御用マイクロコンピュータ100の指令に従って制御される。
【0069】
一方、ボディユニット65は、以下のように構成されている。
【0070】
レンズユニット66内の撮影レンズ75a及び75b、絞り76を介して入射される図示されない被写体からの光束は、クイックリターンミラー83で反射されて、フォーカシングスクリーン84、ペンタプリズム85を介して接眼レンズ86に至る。
【0071】
上記クイックリターンミラー83の中央部はハーフミラーになっており、該クイックリターンミラー83がダウン(図示の位置)した際に一部の光束が透過する。そして、この透過した光束は、クイックリターンミラー83に設置されたサブミラー90で反射され、自動測距を行うためのAFセンサユニット91に導かれる。尚、上記クイックリターンミラー83のアップ時には、サブミラー90は折り畳まれるようになっている。
【0072】
上記クイックリターンミラー83の後方には、光軸上のフォーカルプレーン式のシャッタユニット21と、光学系を通過した被写体像を光電変換するための撮像素子(CCD)40を収容した撮像ユニット22とを備えた撮像モジュール20が設けられている。図示されないが、クイックリターンミラー83が光路より退避した場合、撮影レンズ75a及び75bを通った光束は、撮像モジュール20内の撮像素子40(図5及び図6参照)に結像される。
【0073】
このボディユニット65は、また、上記撮像モジュール20内の撮像素子40に接続された撮像素子インターフェイス回路95と、記憶領域として設けられたSDRAM97と、液晶モニタ98及び上記通信コネクタ71を介して記録メディア67とが、画像処理を行うための画像処理コントローラ96に接続されている。これらは、電子撮像機能と共に電子記録表示機能を提供できるように構成されている。
【0074】
上記記録メディア67は、各種のメモリカードや外付けのハードディスクドライブ(HDD)等の外部記録媒体であり、通信コネクタ71を介してカメラのボディユニット65と通信可能、且つ交換可能に装着される。
【0075】
上記画像処理コントローラ96は、通信コネクタ70と、測光回路101と、ミラー駆動機構102と、AFセンサ駆動回路103と、駆動手段であるシャッタ駆動制御回路104と、不揮発性メモリ(EEPROM)107等と共に、このボディユニット65内の各部を制御するためのボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、Bμcomと略記する)100に接続されている。
【0076】
上記Bμcom100には、当該カメラの動作状態を表示出力によって撮影者へ告知するための動作表示用LCD108と、カメラ操作スイッチ(SW)109と、電源回路110を介して電池111とが接続されている。
【0077】
尚、上記Bμcom100とLμcom80とは、レンズユニット66の装着時に於いて、通信コネクタ70を介して通信可能に電気的接続がなされる。そして、デジタルカメラとしてLμcom80がBμcom100に従属的に協働しながら稼動するようになっている。
【0078】
上記測光回路101は、上記ペンタプリズム85からの光束に基づいて測光処理する回路である。上記ミラー駆動機構102はクイックリターンミラー83を駆動制御する機構であり、AFセンサ駆動回路103は上記AFセンサユニット91を駆動制御するための回路である。また、シャッタ駆動制御回路90は、上記シャッタユニット21の先幕25aと後幕25bの動きを制御すると共に、Bμcom100との間でシャッタの開閉動作を制御する信号とストロボと同調する信号の授受を行う。
【0079】
不揮発性メモリ107は、その他の記憶領域として、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する記憶手段であり、Bμcom100からアクセス可能に設けられている。
【0080】
動作表示用LCD108は、当該カメラの動作状態を表示出力によって撮影者へ告知するためのものである。上記カメラ操作スイッチ109は、例えば撮影動作の実行を指示するレリーズスイッチ、撮影モードと画像表示モードを切り替えるモード変更スイッチ及びパワースイッチ等、当該カメラを操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群で構成される。
【0081】
更に、電源回路110は、電源としての電池111の電圧VE を、当該カメラシステムの各回路ユニットが必要とする電圧VC に変換して供給するために設けられている。
【0082】
ストロボユニット68は、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115と、閃光発光部116と、発光制御回路117及び電池118とから成っている。そして、このストロボユニット68は、ストロボ通信コネクタ72を介して、ボディユニット50と通信可能に装着可能である。また、上記ストロボ制御用マイクロコンピュータ115及び発光制御回路117へは、シャッタ駆動制御回路104から、ストロボ通信コネクタ72を介して、閃光発光信号、フラット発光信号が切り替えられて出力されるようになっている。これらの発光信号は、発光モードに応じて出力される。
【0083】
このように構成されたデジタルカメラの各部は、次のように稼動する。
【0084】
先ず、画像処理コントローラ96により、Bμcom100の指令に従って撮像素子インターフェイス回路95が制御されて、撮像モジュール20から画像データが取り込まれる。この画像データは、一時保管用メモリであるSDRAM97に取り込まれる。このSDRAM97は、画像データが変換される際のワークエリア等に使用される。また、この画像データは、JPEGデータに変換された後には、記録メディア67に保管されるように設定されている。
【0085】
ミラー駆動機構102は、上述したように、クイックリターンミラー83をアップ(UP)位置とダウン(DOWN)位置へ駆動するための機構である。ミラー駆動機構102によってクイックリターンミラー83がダウン位置にある時、撮影レンズ75a及び75bからの光束は、AFセンサユニット91側とペンタプリズム85側へと分割されて導かれる。
【0086】
AFセンサユニット91内のAFセンサからの出力は、AFセンサ駆動回路103を介してBμcom100へ送信されて、周知の測距処理が行われる。
【0087】
一方、ペンタプリズム85に隣接する接眼レンズ86からは、撮影者が被写体を目視できる。また、上記ペンタプリズム85を通過した光束の一部は、測光回路101内のホトセンサ(図示せず)へ導かれ、ここで検知された光量に基づいて周知の測光処理が行われる。
【0088】
シャッタ駆動制御回路104では、Bμcom100からシャッタを駆動制御するための信号が受取られると、その信号に基づいてシャッタユニット21が制御される。シャッタ駆動制御回路104では、Bμcom100からシャッタを駆動制御するための信号が受取られると、その信号に基づいてシャッタユニット21が制御される。それと共に、シャッタ駆動制御回路104から、所定のタイミングでストロボ通信コネクタ72を介してストロボ制御用マイクロコンピュータ115及び発光制御回路117に、ストロボを発光させるための発光信号が出力される。Bμcom100からは、上記発光信号に基づいて、通信により発光モードに応じた発光指令信号が出力される。
【0089】
また、撮影者によって上述したカメラ操作スイッチ109の中のモード変更スイッチが操作されて、撮影モードから画像表示モードへ切り換えられると、記録メディア67に保管された画像データが読み出されて、液晶モニタ98に表示可能である。記録メディア67から読み出された画像データは、画像処理コントローラ96に於いてビデオ信号に変換され、液晶モニタ98にて出力表示される。
【0090】
図10は、上述したシャッタ駆動制御回路104及びシャッタユニット21との信号接続を示す構成図である。
【0091】
シャッタユニット21には、上述したように、先幕25aと後幕25bが備えられており、そのそれぞれの幕を駆動するために、シャッタ駆動回路104には、駆動回路55と、それぞれ先幕25a及び後幕25b用の駆動回路129及び130が設けられている。
【0092】
駆動回路55は、制御回路121と、パルス発生回路122と、エッジ検出回路123と、2系統のゲート回路125及び126とを有して構成される。また、駆動回路129は、位相器A131a、位相器B131bと、昇圧器132a、132bとを有して構成される。同様に、駆動回路130は、位相器C133a、位相器D133bと、昇圧器134a、134bとを有して構成される。
【0093】
尚、位相器B131b、位相器D133bは、それぞれ位相器A131a、位相器C133aに対して、90°位相をシフトした出力を供給するものである。
【0094】
制御回路121は、Bμcom100からの開閉制御信号(若しくはリセット信号)に基づいて先幕25aと後幕25bを駆動するべく、パルス発生回路122からパルス信号を出力させる。このパルス信号は、上述した第1のパルス信号として、ゲート回路125を介して位相器A131a、位相器B131bへ、またゲート回路126を介して位相器C133a、位相器D133bへ出力される。それと共に、上記第1のパルス信号は、エッジ検出回路123を介して、ストロボユニット68へ、フラット発光信号として出力される。尚、制御回路121からは、閃光発光信号がストロボユニット68へ出力される。
【0095】
上記昇圧器132a及び132b、昇圧器134a及び134bからの出力である第2のパルス信号は、それぞれ固定子29a及び29b上に配設された駆動電極28a及び28bに供給される。これにより、先幕25a、後幕25bに設けられた永久分極された誘導体(エレクトレット)26a、26bが、駆動電極28a、28bのA〜Dに順次吸引され、先幕25aと後幕25bが駆動される。こうして、図7に示される露光開口27の開閉動作が制御される。
【0096】
次に、図11のタイミングチャートを参照して、図10に示される各部の動作について説明する。
【0097】
まず、Bμcom100から開閉制御信号(a)が駆動回路55内の制御回路121に出力される。ここで、先幕25aと後幕25bとの間隔として形成されるスリットが、露光秒時となる。そして、上記開閉制御信号(a)を受けて、制御回路121からパルス発生回路122に対して、パルス発生回路動作指示信号(b)が出力される。すると、パルス発生回路122からは、第1のパルス信号として、パルス発生回路出力信号(c)が出力される。
【0098】
このパルス発生回路出力信号(c)により、エッジ検出回路123にてエッジが検出され、フラット発光信号(k)が出力される。また、上記開閉制御信号(a)の立ち上がり、及び立ち下がりに伴って、先幕用ゲート制御信号(d)、後幕用ゲート制御信号(e)により、ゲート回路125、126がオンされる。
【0099】
そして、ゲート回路125がオンされたことにより、位相器A131a、位相器B131bから、互いに90°位相がシフトされた位相器A出力(g)、位相器B出力(h)が出力される。同様に、ゲート回路126がオンされたことにより、位相器C133a、位相器D133bから、互いに90°位相がシフトされた位相器C出力(i)、位相器D出力(j)が出力される。
【0100】
図12は、ストロボユニット68の電気系の構成を示した図である。
【0101】
図12に於いて、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115には、ボディユニット65内のBμcom100から発光モード指示信号が入力されると共に、シャッタ駆動制御回路104から閃光発光信号及びフラット発光信号(k)が入力される。
【0102】
上記ストロボ制御用マイクロコンピュータ115には、安定化回路140、波形成型回路141、ダイオード147が接続された昇圧回路142、トリガ回路143、切換スイッチ(SW)144、電源146、メインコンデンサ148及びキセノン(Xe)管150とIGBT151の直列回路が接続されている。
【0103】
このような構成に於いて、キセノン管150への発光電流は、メインコンデンサ148によって供給される。昇圧回路142を介して電源146からの電圧が昇圧されると、ダイオード147を経てメインコンデンサ148が充電される。そして、メインコンデンサ148が充電された状態で、IGBT151がオンされ、トリガ回路143からのトリガ信号がキセノン管150に与えられる。すると、メインコンデンサ148に蓄積されていた電荷が放出されて、キセノン管150が発光する。
【0104】
閃光発光時は、閃光発光信号がストロボ制御用マイクロコンピュータ115を介してトリガ回路143に供給される。すなわち、シャッタ駆動制御回路104から閃光発光信号が出力されたときのみ、キセノン管150は発光する。そして、IGBT151がオフになるとキセノン管150の発光が停止される。
【0105】
一方、フラット発光信号の場合は、IGBT151がオンされて、トリガ回路143がオンにされると、メインコンデンサ148から放電電流が流れ、キセノン管150が発光する。そして、所定時間経過した時点でIGBT151がオフにされる。すると、キセノン管150の発光は停止されるが、短時間内でIGBT151が再度オンされると、トリガをかけなくともキセノン管150が発光する。これは、以下の理由による。
【0106】
すなわち、トリガ回路143によってキセノン管150にトリガ電圧が印加されると、該キセノン管150内のガスがイオン化される。このイオン化されたガスのイオンが消滅するまでの時間は、消イオン時間と称される。そして、この消イオン時間よりも短い時間内であれば、再度トリガをかけなくても、IGBT151をオン/オフさせるだけで、微小発光を繰り返すことができる。例えば、キセノンガスが封入されたキセノン管150の場合は、イオン化されている時間は数μS〜数百μSとなる。
【0107】
上述した発光モードの選択は、発光モード指示信号に応じて、ストロボ制御用マイクロコンピュータ115が切換スイッチ144を切換える。通常は、IGBT151がグランドに接続されるようになっており、該IGBT151がオフとなり、閃光発光は行われない状態である。
【0108】
閃光発光モードの場合は、切換スイッチ144によって閃光発光制御信号(n)が得られ、閃光発光信号はストロボ制御用マイクロコンピュータ115を介してトリガ回路143に供給される。
【0109】
フラット発光モードの場合は、切換スイッチ144によってフラット発光制御信号(m)が得られる。これにより、フラット発光信号(k)は、波形成型回路141に供給される。
【0110】
図13のタイミングチャートを参照すると、シャッタ駆動制御回路104からフラット発光信号(k)が供給されると、波形成型回路141にて、フラット発光制御信号(m)の微小発光時間が決定される。すなわち、上記フラット発光信号(k)を基に、IGBT151のオン/オフ時間が設定される。すると、フラット発光制御信号(k)のハイ/ローのレベルに対応してIGBT151のオン/オフ時間が得られる。このIGBT151のオン/オフ時間に従って、キセノン管150の連続発光が行われる。
【0111】
図13に示される発光波形では、フラット発光制御信号(k)のハイレベル時に明るく発光し、フラット発光制御信号(k)のローレベル時にやや暗く発光することがわかる。そして、この2つの状態が繰り返されることにより、全体として、連続したフラット発光が行われることになる。
【0112】
例えば、17.3mm×13.0mmの撮像素子に対して、長手方向に走行するフォーカルプレーンシャッタを考慮すると、このシャッタの最高速秒時を1/8000、シンクロ秒時を1/250とする。ストロボ発光時間を0.9mSと仮定すると、シンクロ秒時が1/250であるためには、先幕走行時間は3.01mSになり、幕速は5.76mm/mSである。また、最高速秒時が1/8000であるためには、先幕に対して後幕が0.122mS遅れて走行を開始しなければならない。
【0113】
したがって、幕速5.76mm/mSの先幕が0.122mS走行した場合の走行距離は、0.703mmである。つまり、静電シャッタ装置の電極幅を0.703mmに設定し、後幕に対して先幕を1ピッチ分だけ先に走行させれば、1/8000のシャッタ秒時が得られることになる。
【0114】
ここで、この静電シャッタに於いて、フラット発光を行う場合について考える。
【0115】
フラット発光を行う場合、あるポイントに於ける有効露光時間内に複数回の発光が行われなければ、撮影した画像に露光ムラが発生する虞れがある。したがって、駆動パルスよりも発光パルスのオン/オフの回数を多く(少なくとも2回)すれば、フラット発光による露光ムラを防止することができる。
【0116】
また、図10に示される位相器A131a、位相器B131b、位相器C133a、位相器D133bの前段に分周回路を設ければ、2倍に限らず、4倍或いはそれ以上の高周波のパルスをフラット発光用の信号とすることができる。これにより、上述した実施形態よりも露光ムラを防止することが可能となる。
【0117】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態以外にも、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明に係る静電シャッタ装置の駆動原理について説明する図である。
【図2】エレクトレットシャッタの断面を模式的に示すと共に該エレクトレットシャッタの駆動回路を示した図である。
【図3】図2の駆動回路10によって作成されて、駆動電極4A〜4Dに印加される電圧信号列の例を示したもので、(a)は駆動電極4A、(b)は駆動電極4B、(c)は駆動電極4C、(d)は駆動電極4Dのタイミングチャートである。
【図4】図2に示されるエレクトレットシャッタ7の動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る一実施形態のフォーカルプレーンシャッタ装置が適用された撮像モジュールの構成を示す組立図である。
【図6】図5の構成の撮像モジュールが組み立てられた状態の構成を示した断面図である。
【図7】先幕25a、後幕25bの動作を説明する図である。
【図8】本発明に係る一実施形態のデジタル一眼レフカメラとストロボ装置で構成されるカメラシステムの機能ブロック図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るデジタル一眼レフカメラの電気系のシステム構成を示すブロック図である。
【図10】シャッタ駆動制御回路104及びシャッタユニット21との信号接続を示す構成図である。
【図11】図10に示される各部の動作について説明するタイミングチャートである。
【図12】ストロボユニット68の電気系の構成を示した図である。
【図13】フラット発光の動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0119】
1、29a、29b…固定子、2…移動子、3、27a、27b、31…開口部、4、4A〜4D、28a、28b…駆動電極、5、5a、5b、26a、26b…永久分極された誘導体(エレクトレット)、7…エレクトレットシャッタ、10…駆動回路、12…パルス発生回路、13…位相器、14…昇圧回路、20…撮像モジュール、21…シャッタユニット、22…撮像ユニット、25a…先幕、25b…後幕、27…露光開口、32…保護部材、33〜36…スペーサ、39…収納容器、40…撮像素子、50…カメラ本体、51…カメラ制御部、54…パルス発生回路、55…駆動回路、56…フォーカルプレーンシャッタ、57…静電アクチュエータ、58…出力回路、60…ストロボ装置、65…ボディユニット、66…レンズユニット、67…記録メディア、68…ストロボユニット、75a、75b…撮影レンズ、76…絞り、80…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lμcom)、83…クイックリターンミラー、91…AFセンサユニット、95…撮像素子インターフェイス回路、96…画像処理コントローラ、100…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bμcom)、104…シャッタ駆動制御回路、109…カメラ操作スイッチ(SW)、110…電源回路、115…ストロボ制御用マイクロコンピュータ、116…閃光発光部、117…発光制御回路、118…電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット発光可能なストロボ装置と、
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項3】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項1及び2の何れか1に記載のカメラシステム。
【請求項4】
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータと、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項5】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載のフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項6】
フラット発光可能なストロボ装置と、
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項7】
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項8】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項6及び7の何れか1に記載のカメラシステム。
【請求項9】
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータと、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項10】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項9に記載のフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項1】
フラット発光可能なストロボ装置と、
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項2】
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項3】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項1及び2の何れか1に記載のカメラシステム。
【請求項4】
先幕及び後幕を駆動するための静電アクチュエータと、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項5】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載のフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項6】
フラット発光可能なストロボ装置と、
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を上記フラット発光時のタイミング信号として上記ストロボ装置に供給する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項7】
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータを内蔵するフォーカルプレーンシャッタ機構と、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータの駆動信号として上記フォーカルプレーンシャッタ機構に供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を外部に出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするカメラシステム。
【請求項8】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項6及び7の何れか1に記載のカメラシステム。
【請求項9】
エレクトレット化された部位を有する先幕及び後幕を静電駆動するための静電アクチュエータと、
第1の周期を有する第1のパルス信号を出力するパルス発生手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、該第1の周期よりも長い第2の周期を有する第2のパルス信号を生成し、該第2のパルス信号を上記静電アクチュエータに供給する駆動手段と、
上記第1のパルス信号に基づいて、上記第2の周期よりも短い第3の周期を有する第3のパルス信号を生成し、該第3のパルス信号を出力する出力手段と、
を具備することを特徴とするフォーカルプレーンシャッタ装置。
【請求項10】
上記第2の周期は上記第3の周期の2倍以上であることを特徴とする請求項9に記載のフォーカルプレーンシャッタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−23357(P2006−23357A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199210(P2004−199210)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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