説明

カメラシステム

【課題】 許可が与えられていない場合には画像信号を出力しない、確実なセキュリティ機能を備えたカメラシステムを提供する。
【解決手段】 カメラシステム1は、1又は2以上のレンズ11及び1又は2以上のカラーフィルタ12から成る撮像光学系と、撮像素子13と、信号変換回路14と、タイミング制御回路15と、比較回路16とを備えている。比較回路16には、セキュリティコードレジスタ21が設けられている。比較回路16は、予め定義されたセキュリティコードを記憶しており、通信コントローラ2から受信してセキュリティコードレジスタに一時格納されるコードと、記憶しているセキュリティコードが一致した場合に限り、許可信号を信号変換回路14に送信し、信号変換回路14を機能させて画像信号を出力させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラシステムに関する。特に、撮影を指示する信号が入力された場合のみ画像信号を出力することのできるセキュリティ機能を備えた、病院、介護施設等での利用に特に適したカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院において、患者に装着された呼吸センサや心電図計測装置などの計測データを転送して一箇所に集約し、患者の状態を集中的にモニタリングすることが広く行われている。このような病院では、患者の容態をカメラで撮影し、その画像をデータの監視場所で表示して確認するカメラシステムが導入されている場合がある。画像による確認を行うことで、患者の病室に移動する前に必要な処置をある程度予測することができ、より迅速で効率のよい対応が行われる。
【0003】
また近年では、高齢者介護施設に導入可能な、被介護者の個室を監視カメラによって撮影して一カ所で集中的に被介護者の状態を見守るカメラシステムが開発されている。このような被介護者を見守るカメラシステムにおいては、夜間であっても被介護者の睡眠を妨げない撮影技術が求められている。
【0004】
例えば特許文献1には、昼夜を問わず撮影が可能な撮像装置が開示されている。特許文献1の撮像装置は、撮像光学系と、可視光と近赤外線領域の光の両方に感度を有する撮像素子と、信号処理回路とが一体化された小型のカメラ部を備えている。特許文献1の撮像装置によれば、昼間には可視光による画像を生成し、且つ夜間には近赤外線領域の光によって画像を生成することができ、昼夜を問わず患者や被介護者の撮影が可能である。
【0005】
一方で、このような撮像装置による患者や被介護者の撮影は、撮影される側のプライバシーへの配慮が必要であり、例えば夜間の就寝中の姿が無断で撮影されないための撮影制御手段を設けておくことが望ましい。従来は、カメラ部が生成した画像信号を外部に出力するか否かを制御する制御部が設けられてカメラ部に接続されており、制御部のソフトウェア処理によって画像信号の出力が制限されていた。しかしながら、制御部が取り外されたカメラ部が画像出力装置に直接接続されて悪用される懸念があった。そこで、予め許可されていない場合には画像信号を一切出力しない、確実な制御手段を備えたカメラシステムが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−115759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のカメラシステムにおいては、撮影が禁止されている場所やプライバシーを配慮すべき場所で許可なく撮影が行われて画像が生成されることがあった。また特に近赤外線領域の光によって画像を生成することのできるカメラシステムは、予め定められた用途以外で画像が生成されて不正に利用される恐れがあった。本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、許可がなされていない場合には画像信号を出力しないという確実なセキュリティ機能を備えたカメラシステムを提供することを解決すべき課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のカメラシステムは、撮像光学系と、撮像素子と、撮像素子から出力される撮像信号から画像信号を生成する信号変換回路と、予め定義されているセキュリティコードと外部から受信するコードとを比較する比較回路とを備えている。本発明のカメラシステムは、セキュリティコードと外部から受信するコードとが一致した場合のみ信号変換回路を機能させることを特徴とする。
【0009】
本発明のカメラシステムは、予め定義されたセキュリティコードを記憶している比較回路を備えている。比較回路は、外部から受信するコードとセキュリティコードが一致した場合に限り信号変換回路を機能させて、撮像素子から出力される撮像信号から画像信号を生成させる。外部からコードを受信しない場合、及び受信したコードとセキュリティコードが一致しない場合には、信号変換回路は機能しないために、カメラシステムから画像信号は出力されない。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカメラシステムには、予めセキュリティコードが設定されており、画像信号を出力させるためには、外部からセキュリティコードと一致するコードを正確に入力する必要がある。従って本発明のカメラシステムは、セキュリティコードを知らない者による不正な画像の生成が防止されるという確実なセキュリティ機能を備えている。
【0011】
また本発明のカメラシステムの比較回路はカメラシステムに実装されて一体化させることができる。このため本発明のカメラシステムは、従来のカメラシステムのように外部に取り付けられた制御部を取り外してカメラ部のみを利用して画像信号を出力させることが困難なように構成されており、セキュリティ機能が向上している。
【0012】
更に本発明のカメラシステムの比較回路は、回路の論理式の中にセキュリティコードを組み込むことができる。組み込まれたセキュリティコードは解読や改変が困難であるために、一層セキュリティ機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のカメラシステムの主要な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明のカメラシステムの好適な実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
図1に、本実施の形態に係るカメラシステム1の構成をブロック図で示す。本実施形態のカメラシステム1は、1又は2以上のレンズ11及び1又は2以上のカラーフィルタ12から成る撮像光学系10と、撮像素子13と、信号変換回路14と、タイミング制御回路15と、比較回路16とが1枚の基板上に実装されている。
【0016】
撮像素子13は、CCD素子(charge−coupled device素子)若しくはCMOS素子(complementary metal−oxide semiconductor素子)で構成されている。撮像素子13は、青色光と、緑色光と、赤色光と、近赤外線領域の光(780nm前後〜1000nm前後)とに感度を有しており、それぞれの光の入射光量に応じて各色の光ごとに撮像信号を出力する。
【0017】
タイミング制御回路15は、撮像素子13による撮像から信号変換回路14による画像信号の生成までの一連の動作のタイミングを指示するために、撮像素子13と信号変換回路14にタイミング信号を送信してこれらを駆動する。
【0018】
カメラシステム1と通信可能に接続されている通信コントローラ2は、信号変換回路14に、画像信号の設定データを入力する。信号変換回路14は、設定データの内容に従って、撮像素子13から入力される撮像信号の加工処理を行うことができる。即ち、信号変換回路14は、入力されたオートアイリス、ホワイトバランス、カラー濃度などの画像の品質を指定する設定データの内容に応じて、撮像素子13が出力する撮像信号に含まれるノイズを除去し、その信号レベルの利得調整を行い、デジタル変換を行ってR,G,B若しくはY,U,V等のデジタル画像信号を生成して外部の通信コントローラ2に送信することができる。また信号変換回路14は、必要に応じてデジタル画像信号に更なる信号処理を行い、例えばアナログ規格に対応した画像信号に変換して通信コントローラ2に出力することができる。
【0019】
しかしながら、本実施形態の信号変換回路14は、通信コントローラ2から設定データを入力されただけでは画像信号の生成と出力を行わない。信号変換回路14は、通信コントローラ2から設定データが入力されており、且つ比較回路16から許可信号が入力された場合に限り、画像信号の生成と出力を行う。比較回路16は、予め定義されたセキュリティコードを記憶しており、通信コントローラ2から受信するコードと、記憶しているセキュリティコードが一致した場合に限り、許可信号を信号変換回路14に送信し、信号変換回路14を機能させる。
【0020】
本実施形態の比較回路16はマイクロプロセッサで構成されており、予め内部にセキュリティコード22が定義されている。また比較回路16は、通信コントローラ2から入力されるコードを格納するセキュリティ解除コードレジスタ21を備えている。更に比較回路16は、セキュリティコード22とセキュリティ解除コードレジスタ21に入力されたコードとの比較処理を実行する演算比較器23とを備えている。本実施形態におけるセキュリティコード22は、2進コードである。
【0021】
通信コントローラ2は、カメラシステム1の操作者が通信コントローラ2の操作部から手動で入力したコードや、通信回線3で接続された他の外部装置から入力されたコードを、比較回路16に送信する。比較回路16は、入力されたコードをセキュリティ解除コードレジスタ21に一時格納する。
【0022】
比較回路16の演算比較器23は、外部から入力されたコードがセキュリティ解除コードレジスタ21に格納されると、セキュリティコード22と、セキュリティ解除コードレジスタ21のデータとを比較し、これらが一致している場合に限り信号変換回路14に許可信号を出力する。許可信号を受信した信号変換回路16は、画像信号を生成して通信コントローラ2に出力する。通信コントローラ2は、通信回線3を経由して画像の表示や加工を行う外部機器に画像信号を送信する。
【0023】
本実施形態のカメラシステム1は、セキュリティコード22が比較回路16の中に二進コードで記憶されているために、第三者がセキュリティコードを解読したり改変することが非常に困難であり、非常に高いセキュリティ機能を備えている。
【0024】
しかも本実施形態のカメラシステム1の比較回路16は撮像素子13及び信号変換回路14と同一の基板に実装されて一体化している。このため本実施形態のカメラシステム1は、従来のカメラシステムのように外部に取り付けられた制御部を取り外してカメラ部のみを利用して画像信号を出力させることが困難であり、従来のカメラシステムよりもセキュリティ機能が向上している。
【0025】
以上、実施の形態において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、本実施の形態では、カメラシステムが1枚の基板上に実装する形態を示したが、信号変換回路14とタイミング制御回路15と比較回路16とを1つのマイクロチップの中に収容して、撮像光学系10と撮像素子13に取り付けることも可能である。その他、それぞれの回路には、適宜必要な機能を追加することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 カメラシステム
2 通信コントローラ
3 通信回線
10 撮像光学系
11 レンズ
12 フィルター
13 撮像素子
14 信号変換回路
15 タイミング制御回路
16 比較回路
21 セキュリティ解除コードレジスタ
22 セキュリティコード
23 演算比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系と、撮像素子と、前記撮像素子から出力される撮像信号から画像信号を生成する信号変換回路と、予め定義されているセキュリティコードと外部から受信するコードとを比較する比較回路とを備えており、
前記比較回路は、前記セキュリティコードと前記外部から受信するコードとが一致した場合のみ前記信号変換回路を機能させることを特徴とするカメラシステム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−200055(P2010−200055A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43311(P2009−43311)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【出願人】(509056951)株式会社イーエスピー企画 (2)
【Fターム(参考)】