説明

カメラシステム

【課題】撮像画像の高視認性を低コストで実現でき、しかも、設置調整作業効率の改善および照明パターンを容易に最適化することができるカメラシステムを提供する。
【解決手段】移動物体が移動する移動路の側部に設置され移動路を移動する移動物体を撮像するカメラと、カメラの近傍に設置され移動物体の撮像時に照明光を照射するもので、その照明光を移動する移動物体に対し追尾動作可能な照明装置と、実際の稼動時の前に行なわれる調整時に移道路においてテスト移動物体を移動させることでテスト移動物体の移動軌跡を認識する手段と、移動物体の移動速度を測定する手段と、前記認識されたテスト移動物体の移動軌跡および前記測定された移動物体の移動速度に基づき照明装置における照明光の最適な追尾軌道を求め、この求めた追尾軌道に基づき照明装置の照明光を移動物体に対し追尾動作させる手段と、カメラから得られる画像を用いて所定の画像処理を行なう画像処理手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、たとえば、車両をノンストップで利用料金の収受処理を自動的に行なう料金収受システムに用いられるカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有料道路の料金所等における料金収受システム(ノンストップ自動料金収受システム)として、ETCシステム(ETC:登録商標)の普及が進んでいる。これを利用する車両は、ETCカードを装着した専用の車載器を搭載し、料金所の入(出)口等に設置されるETCアンテナ装置と無線通信によって自動課金等の料金収受処理を行なう。料金収受処理が正常終了すると、通行レーンを閉じている発進制御装置の阻止バーが開き、車両はノンストップで通過できる。
【0003】
個々の通行情報は料金所のデータ処理装置等を通じて上位の中央処理装置にあげられ、最終的にクレジット処理等による課金が行なわれる。ETCシステムの主な目的は、料金所の渋滞緩和および料金収受の自動省力化である。一部の料金所には、車両の通行状況を遠隔監視する目的で、通過車両を撮影するカメラシステム等が設置されている。
【0004】
一般に、有料道路の料金所では、安全性の観点から、不正突破しようとする車両に対しても、あえて阻止能力を抑えている。通行ゲートとなる発進制御装置の阻止バーは、上下方向に開閉する構造になっているが、閉じた状態で車両進行方向に押し広げる(突破する)ことも可能で、約90度開いた位置で阻止バーがロックされる。また、瞬間的にある程度以上の力が加わると、阻止バー自体が折れる構造のため、走行中の車両を停止させる能力は持たせていない。
【0005】
このことを悪用し、車載器を搭載しないかあるいは故意にETCカードを車載器に挿入しないで課金されないまま料金所(閉じた阻止バー)を突破する不正車両が後を経たない。年間数億円にのぼる事業者側被害も甚大であるが、正規料金を支払って利用する大多数の利用者に対する不公正放置は社会問題となっている。
【0006】
これまで、正常課金されずに阻止バーを押し広げ(または破壊して)突破する車両があると、料金所の警報等で認識することはできたが、係員が対応にでた時点で既に走り去った後であり、特定できないケースが殆どだった。また、走行している突破車両を強制阻止することは、安全上の観点から問題であり、有効な対抗手段がなかった。その意味で、「不正通行を画像記録するカメラシステム」は現行犯として捉えることはできないものの、警察による検挙に繋がった例からも証拠データとしての有効性が認識されつつある。
【0007】
ここで、カメラシステムに対しては、24時間にわたって安定した稼動を行なう性能が求められるが、カメラそのものの性能とともに夜間の照明効果が重要なファクタとなる。オートレンズを用いれば、ある程度の画像品質(昼夜の明るさ、解像度等)は確保できるが、80km/hで通過するような車両を常時鮮明に捉えるような応答性を求めると、そのコストは膨大である。
【0008】
そこで、照明をより効率的に利用する手段が必要となるが、画面中心を明るさ最大とする同心円上の既存の照明パターンでは、画面を斜めに横切る撮像対象が中心位置に到達した時点ではピンポイントで最適化されるものの、それ以外の位置では充分な光量が確保できないという課題がある。
また、画面均一の明るさが得られる人工太陽のような照明装置はコスト高である上、照明光範囲的には不要な部分が大きく、効率が悪いという課題がある。
【0009】
さらに、高速道路の料金所等にカメラを設置する場合、その位置、角度など設置条件はスペース上の制約を受ける。設置場所ごとに照明装置の照明パターンを最適化調整することが必要となるが、個々の調整は容易ではない。特に、夜間照明として標準的に用いられる赤外(近赤外)光照明の場合、昼間屋外で照明パターンを調整することは目視確認の点で課題がある。
【0010】
そのため、たとえ不正通行の瞬間を画像データとして捉えたとしても、ナンバプレートや運転者を特定できるだけの解像度を持つ画像を得るには機器コストが膨大となるという課題がある。特に、照明装置については、カメラシステムとしてカメラとは切り離せない重要ユニットであり、その効果、効率を最大限発揮させることは、コスト面および性能面においてカメラ単体同様に鍵となっている。
また、標準的に用いられる赤外(近赤外)照明は、上記したように特に昼間可視化できないため、現場での調整が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−182109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、撮像画像の高視認性を低コストで実現でき、しかも、設置調整作業効率の改善および照明パターンを容易に最適化することができるカメラシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係るカメラシステムは、移動物体が移動する移動路の側部に設置され、当該移動路を移動する移動物体を撮像するカメラと、このカメラの近傍に設置され、前記カメラによる前記移動物体の撮像時に当該移動物体に対し照明光を照射するもので、その照明光を前記移動する移動物体に対し追尾動作可能な照明装置と、実際の稼動時の前に行なわれる調整時に前記移道路においてテスト移動物体を移動させることで、当該テスト移動物体の移動軌跡を認識する移動軌跡認識手段と、前記移動する移動物体の移動速度を測定する移動速度測定手段と、前記移動軌跡認識手段により認識されたテスト移動物体の移動軌跡および前記移動速度測定手段により測定された移動物体の移動速度に基づき、前記照明装置における照明光の最適な追尾軌道を求め、この求めた追尾軌道に基づき前記照明装置の照明光を前記移動する移動物体に対し追尾動作させる照明制御手段と、前記カメラから得られる画像を用いて所定の画像処理を行なう画像処理手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るカメラシステムが適用される料金収受システムの構成を模式的に示すブロック図。
【図2】実施形態に係るETC出口車線に対する各機器の配置状態を示す模式図。
【図3】実施形態に係るカメラユニットの構成を概略的に示す正面図。
【図4】実施形態に係る画面上における撮像対象の移動軌跡を説明する模式図。
【図5】実施形態に係る前方カメラユニットの配置例を示す模式図。
【図6】実施形態に係る運転者の顔画像の撮像に効率的な照明パターンを説明する模式図。
【図7】実施形態に係るナンバプレートの撮像に効率的な照明パターンを説明する模式図。
【図8】実施形態に係る前方カメラユニットにおける照明ユニットの照明パターンを最適化する第1の方法の手順について説明するフローチャート。
【図9】実施形態に係る前方カメラユニットにおける照明ユニットの照明パターンを最適化する第2の方法の手順について説明するフローチャート。
【図10】実施形態に係る標準照明パターンに対する実際の撮像対象の移動軌跡とのずれを補正する処理を説明する模式図。
【図11】実施形態に係る前方カメラユニットにおける照明ユニットの照明パターンを最適化する第3の方法の手順について説明するフローチャート。
【図12】実施形態に係るカメラユニットの他の構成を概略的に示す正面図。
【図13】実施形態に係る照明ユニットにおける照明光の追尾動作を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態に係るカメラシステムについて図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るカメラシステムが適用されるETCシステム(ノンストップ自動料金収受システム)と称される料金収受システムの構成を模式的に示すものである。
【0016】
図1において、たとえば、有料道路の料金所におけるETC入口車線11には、その入口側から順次、車両検知・車種判別装置12、路側無線装置13、ブース処理機14、路側表示器15、および、発進制御装置16がそれぞれ設置されていて、これらはETC入口の車線制御装置17にそれぞれ接続されている。
【0017】
また、一般入口車線18には、その入口側から順次、車両検知・車種判別装置19、ブース処理機20、カメラシステム21、路側表示器22、および、発進制御装置23がそれぞれ設置されていて、これらは一般入口の車線制御装置24にそれぞれ接続されている。
【0018】
さらに、ETC出口車線25には、その入口側から順次、車両検知・車種判別装置26、路側無線装置27、ブース処理機28、路側表示器29、発進制御装置30、および、カメラシステム31がそれぞれ設置されていて、これらはETC出口の車線制御装置32にそれぞれ接続されている。
【0019】
車線制御装置17,24,32は、それぞれ通信回線を介して当該料金所(料金所Aとする)のデータ処理装置33に接続されている。料金所Aデータ処理装置33は、通信回線を介して他の料金所(料金所B,C,…とする)のデータ処理装置34,35,…にそれぞれ接続されている。
データ処理装置33,34,35,…は、それぞれ通信回線を介して中央処理装置36に接続されている。
【0020】
以下、各部について詳細に説明する。
車両検知・車種判別装置12(19,26)は、車線制御装置17(24,32)との間でデータ送受信を行なう機能を持つとともに、
(a)通過する車両37を検知し、分離する車両分離機能、
(b)通過する車両37の軸数を検知する軸数検知機能、
(c)通過する車両37の車高および車長を検知する機能、
(d)通過する車両37の車両番号を認識する車両番号認識機能、
(e)これら(a),(b),(c),(d)の各機能の処理結果を総合して、車線に進入してくる車両37の車種(n種)を判別する車種判別機能、
(f)上記(a),(b),(c),(d)の各機能の処理結果を総合して、車線に進入してくる車両37の速度を測定する速度測定機能、
を持ち、上記(e),(f)の判別結果を対応する車線制御装置17(24,32)へ送信する機能を有する。
【0021】
路側無線装置13(27)は、無線通信用のアンテナを有し、通過する車両37に搭載された車載器(ETCカードが装着されている)38との間で無線通信によってデータの送受信を行なう機能と、車線制御装置17(32)との間でデータの送受信を行なう機能を持ち、
(a)電源投入時に車線制御装置17(32)との間で相互認証を行ない、その正当性を判定し、
(b)相互認証で正当と判定された場合、車線制御装置17(32)からのコマンドによって、車載器38との間で無線通信を行なってID情報(車載器固有の情報)のほか、正当性判定のためのデータを取得し、
(c)取得したデータを車線制御装置17(32)へ送信し、
(d)車線制御装置17(32)が総合判定を行ない、当該車載器(含むETCカード)38が正当と判定された場合に、車線制御装置17(32)からのコマンドによって、当該判定結果を車載器38へ書込み、
(g)書込んだ結果を当該車載器38から受信して、車線制御装置17(32)へ通知する、
機能を有する。
【0022】
ブース処理機14(20,28)は、有人ブース内に設置され、係員処理により車線制御装置17(24,32)と接続されて相互にデータ伝送を行なう機能を持ち、
(a)入線時に通行券を発行するか、もしくは、ETCカードに入線、課金情報等を書込むか、もしくは、現金処理を行なって領収書を発行し、
(b)出線時にETCカードに出線、課金情報を書込むか、もしくは、通行券情報等に基づいて現金処理を行ない、領収書を発行する、
機能を有する。
【0023】
路側表示器15(22,29)は、LED表示パネル等による表示機能を持ち、
(a)車線制御装置17(24,32)による総合判定結果、課金情報、発進/停止などの案内を行ない、
(b)不正突破の情報を車線制御装置17(24,32)から受信して、当該車両を特定する証拠画像データが記録された旨を警告表示する、
機能を有する。
【0024】
発進制御装置16(23,30)は、入口車線および出口車線上に固定設置され、車線制御装置17(24,32)との間でデータ送受信を行なう基本機能を持ち、
(a)車線制御装置17(24,32)からの車両停止指示あるいは車両通行許可を受信して、
(b)阻止バーを開閉し、
通行車両の停止、通過を制御する。
【0025】
車線制御装置17(24,32)は、路側無線装置13(27)、車両検知・車種判別装置12(19,26)、発進制御装置16(23,30)などと接続され、これら各下位機器と相互にデータ伝送を行なう機能を持ち、
(a)各下位機器から送られる検知信号、データを総合判定し、
(b)その判定結果に基づいて、各下位機器に対し制御コマンドを送信し、
(c)不正突破発生の検知情報を受信して、画像処理装置へ記録トリガ信号を送信し、
(d)画像処理装置からの車両ナンバ情報および運転者画像データ等を受信して、
(e)当該車両情報(不正突破発生時の車両ナンバ情報および運転者画像データ等)を上位の料金所Aデータ処理装置33へ送信する、
機能を有する。
【0026】
カメラシステム21(31)は、たとえば、一般入口車線18(ETC出口車線25)を走行する車両37の少なくともナンバプレートを含む画像を撮影し、得られる画像を処理することによりナンバプレート上の文字を認識したり、あるいは、走行する車両37の少なくとも運転者の顔を含む画像を撮像して記録したりするもので、図2に示すように、前方カメラユニット41、後方カメラユニット42、および、これらのカメラユニット41,42が接続された画象処理手段としての画像処理装置43を有して構成される。
なお、図2は、ETC出口車線25に設置されたカメラシステム31の場合を例として示しているが、一般入口車線18に設置されたカメラシステム21の場合も同様な構成である。
【0027】
また、図2の例では、車両37の前方から見てETC出口車線25の左側にカメラユニットを設置した場合を示しているが、右側あるいは左右両側に設置される場合もある。さらに、設置されるカメラユニットは、後方のみ、あるいは、前方のみの場合もある。
【0028】
前方カメラユニット41は、料金所(出口)のアイランド上等に設置され、ETC出口車線25を走行する車両37の運転席部分の画像を前方から撮像し、得られる画像を画像処理装置43へ出力する基本機能を持ち、
(a)カメラのアイリスを制御する機能、
(b)カメラの画像信号のゲインを制御する機能、
(c)カメラのシャッタスピードを制御する機能、
(d)カメラの撮像タイミングに合わせて発光するもので、その照明パターンがあらかじめ当該照明ユニットの標準設置条件から車両がたどると予測される移動軌跡にあわせ最適化されている照明ユニット(照明装置)、
(e)照明ユニットを画像処理装置43からの指令に基づいてその向き、角度等を制御する機能、
(f)車線制御装置24(32)からの車速情報およびあらかじめ設定された設置条件情報を基に、車両37が進入してから抜けるまでの時間、進入角度を予測して、撮像対象である車両37に対して照明光を最適に照射するよう照明ユニットの照明光の向きを追随させる機能、
を有する。
【0029】
後方カメラユニット42は、料金所(出口)のアイランド上等に設置され、ETC出口車線25を走行する車両37のナンバプレート部分の画像を後方から撮像し、得られる画像を画像処理装置43へ出力するもので、前方カメラユニット41と同様な機能を有しているので、その説明は省略する。
【0030】
図3は、前方カメラユニット41の構成例を模式的に示しているが、後方カメラユニット42も同様の構成であるので、その説明は省略する。カメラユニット41は、たとえば、固体撮像素子を用いたビデオカメラ44、および、帯状の照明光を照射する照明装置としての照明ユニット45を有して構成される。
【0031】
照明ユニット45は、たとえば、帯状(長方形状)のエリア内に多数のLED(発光ダイオード)を配列してなるLED群46を有していて、その中心点を支点に図示矢印a方向に回転自在となっており、図示しない駆動機構(モータ等)により回転駆動される。
【0032】
照明ユニット45は、その照明パターンがあらかじめ当該照明ユニット45の標準設置条件から車両37がたどると予測される移動軌跡にあわせ最適化されている。
すなわち、一般に、前方カメラユニット41(カメラ44)の画面上に対する車両37の予測される移動軌跡は、図4に示すように、斜め方向に徐々に接近してくる。図4(a)は、図5に示すように前方カメラユニット41を左側41Lに設置した場合(以降、これを左カメラと称す)を示し、図4(b)は、図5に示すように前方カメラユニット41を右側41Rに設置した場合(以降、これを右カメラと称す)を示している。
なお、後方カメラユニット42(カメラ44)の画面上に対する車両37の予測される移動軌跡は、前方カメラユニット41とは逆に斜め方向に徐々に遠ざかっていく。
【0033】
そこで、前方カメラユニット41においては、照明ユニット45の照明パターンを図4に示した移動軌跡にあわせて図6に示すように設定することで、運転者の顔画像の撮像に効率的な照明パターンとする。図6(a)は左カメラの場合を示し、図6(b)は右カメラの場合を示している。なお、図6において、照明パターンP1は右ハンドル車対応のパターンを示し、照明パターンP2は左ハンドル車対応のパターンを示す。
【0034】
照明ユニット45の照明パターンの設定は、LED群46のLED配列を図3に示したように帯状にするとともに、その配列するLEDの数を充分な光量が得られるように設定し、さらに、このように構成したLED群46を回転させることによりLED群46の傾斜角を図4に示した移動軌跡にあわせることで行なうもので、これについては後で詳細を説明する。
【0035】
ここに、上記LED群46の傾斜角は、少なくとも、前方カメラユニット41を左側に設置する左設置用と右側に設置する右設置用の2つがあり、図3の例は左設置用の場合を示している。
【0036】
なお、後方カメラユニット42においては、照明ユニット45の照明パターンを車両37の予測される移動軌跡にあわせて図7に示すように設定することで、ナンバプレートの撮像に効率的な照明パターンとする。図7(a)は左カメラの場合を示し、図7(b)は右カメラの場合を示している。
【0037】
画像処理装置43は、前方カメラユニット41から得られる画像から少なくとも運転者の顔を含む画像を抽出して記録保持したり、後方カメラユニット42から得られる画像を処理することによりナンバプレートを検出し、ナンバプレート上の文字を認識したりする基本機能と、これらのデータを保存する機能と、車線制御装置24,32との間でデータ送受信を行なう基本機能を持ち、
(a)車線制御装置24,32からのトリガ信号を受信して、トリガ前後数秒から数十秒程度の撮像画像を記録保存し、トリガ記録の成否を車線制御装置24,32へ送信し、
(b)あるいは、24時間連続一定期間以上のデータをサイクリックに記録保存し、
(c)保存された画像データからナンバプレートの文字認識を行なって、その認識結果をデータベース化するとともに、車線制御装置24,32へ送信する機能、
(d)撮像対象の最重要部分(ナンバプレート、運転者等)をソフト的に追尾し、画面上の移動方向、角度等の移動軌跡(座標情報)として認識する機能、
(e)上記(d)の移動軌跡の情報をカメラユニット41(42)へ送信する機能、
を有する。
【0038】
データ処理装置33(34,35,…)は、料金所内の各車線制御装置17,24,32から送られてくるデータを収集し、各種照合および問い合わせ業務を行なう機能を持ち、
(a)上位の中央処理装置36へ収集データを送信し、
(b)通信回線を介して各料金所のデータ処理装置と相互にデータ伝送を行ない、
(c)車線制御装置17,24,32を介して受信した発進制御装置16,23,30からの不正車両情報(画像情報、車両ナンバ等)を系統だって記録保管し、
(d)不正車両情報を中央処理装置36へ送信する、
機能を有する。
【0039】
中央処理装置36は、各料金所のデータ処理装置33,34,35,…から送られてくるデータを収集し、各種照合処理および問い合わせ業務等を行なう機能を有する。
【0040】
次に、図1に示した料金収受システムの全体的な処理の流れについて簡単に説明する。
まず、通常の処理の流れについて説明する。
【0041】
ETC車載器38を搭載した車両37が、たとえばETC入口車線11へ進入すると、路側無線装置13の手前に設置される車両検知・車種判別装置12にて、進入してきた当該車両37を検知し、車種、車速を識別し、当該車線の車線制御装置17へ通知する。
【0042】
次に、当該車両37が路側無線装置13の通信可能エリアに入ったことが検知されると、路側無線装置13は、当該車両37の車載器38との間で無線通信を行なうことにより、規定の処理(車両の正当性を判定し、判定OKの場合に当該料金所の入場情報を書込む等)を行なう。
【0043】
次に、路側無線装置13は、車載器38に対して入場情報等を正常記録したことを確認し、それを車線制御装置17へ通知する。
このとき、なんらかの原因によりETC処理が正常に行なわれなかった場合、ブース処理機14により、通行券(入場証)を発行するか、もしくは、ETCカード処理を行なうか、もしくは、現金処理で料金収受を行なって領収書を発行する。その処理結果情報は、上位の車線制御装置17へ送信される。
【0044】
次に、車線制御装置17は、車両検知・車種判別装置12からの情報と、路側無線装置13からの情報との一致をとって、当該車両37の通過許可を発進制御装置16へ通知する。発進制御装置16は、車線制御装置17からの通過許可通知を受けると、阻止バーを開けて当該車両37の通過を許可する。
【0045】
次に、発進制御装置16が当該車両37の通過を確認し、その確認情報を車線制御装置17へ通知する。
【0046】
なお、出口料金所、つまり例えばETC出口車線25においても同様の処理を行ない、車線制御装置32において入口と出口との間の利用料金を計算し、その利用料金を当該車両37の入出情報等とともに料金所Aデータ処理装置33を介して中央処理装置36へ送信することにより、中央制御装置36で集計して、クレジット会社へ通知される。
【0047】
また、ETC出口車線25においては、カメラシステム31の画像処理装置43は、正常課金された車両37が通過する場合は、前方カメラユニット41で撮像した車両画像は図示しないメモリ(RAM)上に一時記憶するだけで保存を行なわないか、あるいは、24時間連続で録画(撮像した車両画像の記録)を継続する。
【0048】
次に、不正突破発生時を含む撮像系の動作について説明する。
たとえば、ETC出口車線25において不正突破車両39が発生した場合、カメラシステム31によりその瞬間を捉えて前後数秒から数十秒間程度の画像を記録するか、もしくは、全ての走行車両37の画像を24時間連続で録画する。「不正突破」の定義は幾つかのバリエーションを持たせることができ、車両ナンバや運転者等を確実に特定できる情報として認識し、記録、保管管理し、不正証拠データとする。
【0049】
次に、前方カメラユニット41における照明ユニット45の照明パターンを最適化する第1の方法の手順について図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、後方カメラユニット42においても同様に行なえるので説明は省略する。
【0050】
まず、前方カメラユニット41の設置位置が左側か右側かを判断し(ステップS1)、左設置の場合はLED群46の傾斜角を左設置用に選択(設定)することで図6(a)の照明パターンとし(ステップS2)、右設置の場合はLED群46の傾斜角を右設置用に選択(設定)することで図6(b)の照明パターンとする(ステップS3)。
【0051】
次に、当該前方カメラユニット41の設置位置から撮像する被写体(車両37)までの距離情報により、LED群46における各LEDの配列を調整するとともに(ステップS4)、被写体(車両37)との撮像角度により、LED群46における各LEDの配列を調整し(ステップS5)、終了する。
【0052】
上記した第1の方法により、前方カメラユニット41における照明ユニット45において、図6に示した運転者の顔画像の撮像に効率的な照明パターンが得られる。なお、この第1の方法は実際の稼動時の前の調整時に行なわれる。
【0053】
次に、前方カメラユニット41における照明ユニット45の照明パターンを最適化する第2の方法の手順について図9に示すフローチャートを参照して説明する。なお、後方カメラユニット42においても同様に行なえるので説明は省略する。
【0054】
まず、撮像する例えばETC出口車線25にテスト車両を走行させることで(ステップS11)、そのテスト車両の画像を前方カメラユニット41で取得し、取得した画像を図示しない画像メモリに一時記憶する(ステップS12)。
【0055】
次に、画像メモリに記憶した画像を処理することにより、撮像対象(車両37の運転席部分の画像)を認識して切出す(ステップS13)。次に、切出した撮像対象の座標情報を抽出し、画面上の移動軌跡(走行軌跡)をトレース(認識)する(ステップS14)。
【0056】
次に、現在の設定されている照明パターン(標準の照明パターン)の軸情報を呼出し(ステップS15)、ステップS14で取得したテスト車両の移動軌跡と比較する(ステップS16)。ここに、上記現在の設定されている照明パターンの軸情報は、たとえば、前述したように想定される撮像対象の画面上における移動軌跡に設定される。
【0057】
ステップS16における比較の結果、両情報の間にずれがある場合、そのずれを補正する方向へLED群46の傾斜角を調整する(ステップS17)。
すなわち、具体例をあげて説明すると、ステップS14で取得したテスト車両の移動軌跡が、たとえば図10(a)に示すL1であり、これに対し現在設定されている照明パターンP4の軸情報がL2であった場合、両者の間にはずれがあるので、そのずれを補正する方向へLED群46の傾斜角を調整することで、たとえば図10(b)に示すように、照明パターンP4の軸情報L2をテスト車両の移動軌跡L1と一致させるものである。
【0058】
ステップS17の処理が終了すると、照明パターンの軸情報を新たな値に更新し(ステップS18)、処理を終了する。ステップS16における比較の結果、両情報の間にずれがない場合、ここで処理を終了する。
【0059】
なお、上記ステップS12からS18の処理は、主に画像処理装置43において実行される。また、この第2の方法は実際の稼動時の前の調整時に行なわれる。
【0060】
上記した第2の方法により、前方カメラユニット41における照明ユニット45において、図6に示した運転者の顔画像の撮像に効率的な照明パターンが得られる。
【0061】
次に、前方カメラユニット41における照明ユニット45の照明パターンを最適化する第3の方法の手順について図11に示すフローチャートを参照して説明する。なお、後方カメラユニット42においても同様に行なえるので説明は省略する。
【0062】
まず、前方カメラユニット41における照明ユニット45は、照明光として静止した撮像対象を最低限カバーするだけの範囲有効なスポット光とする。具体的には、たとえば、図12に示すように、円形状のエリア内に多数のLED(発光ダイオード)を配列してなるLED群47とし、その配列するLEDの数を静止した撮像対象を最低限カバーするだけの光量が得られるように設定する。
【0063】
また、前方カメラユニット41は、たとえば、図13に示すように、背面を軸として回動可能に構成し、照明光を撮像対象(車両37)に対し追尾動作可能にする。前方カメラユニット41の回動は、図示しない駆動機構(モータ等)により行なわれる。
【0064】
たとえば、ETC出口車線25において、車両37が進入してくると、車両検知・車種判別装置26はそれを検知し(ステップS21)、当該車両37の進入直前の速度(車速)を測定する(ステップS22)。
【0065】
次に、あらかじめ前述した第2の方法と同様にテスト車両を走行させることで取得した画面上の移動軌跡(走行軌跡)と、ステップS22で測定された車速とに基づき、前方カメラユニット41の照明ユニット45における照明光の最適な追尾軌道、つまり最適な照明光の軌道ベクトル(照明光の位置と移動速度)を求める(ステップS23)。
【0066】
次に、ステップS23で求めた軌道ベクトルに基づき前方カメラユニット41を回動させることで、図13に示すように、照明ユニット45の照明光を当該走行する車両37に対し追尾動作させる(ステップS24)。
【0067】
次に、前方カメラユニット41による車両37の撮像が終了した時点で、前方カメラユニット41を回動させることで、照明ユニット45における照明光の位置(向き)をスタート位置(初期位置)に戻し(ステップS25)、その後、ステップS21に戻って次の車両に対する動作に備える。
【0068】
なお、上記ステップS23からS25の処理は、主に画像処理装置43において実行される。また、この第3の方法は実際の稼動時に車両ごと行なわれる。
【0069】
上記した第3の方法により、前方カメラユニット41における照明ユニット45において、図6に示した運転者の顔画像の撮像に効率的な照明パターンが得られる。また、照明ユニット45においては、最低限の照明能力で、最大の照明効果を発揮することが可能となる。
【0070】
以上述べた少なくとも1つの実施形態のカメラシステムによれば、画面上必要となる照明パターンを予測し、必要な部分に特化することで、照明効果を確保しつつ、照明ユニット(カメラユニット)単体の低コスト化が図れる。照明ユニット(カメラユニット)を小型化できることから、設置スペース的にも有利となる。したがって、撮像画像の高視認性を低コストで実現できる。
【0071】
また、昼夜を問わず、一度テスト車両を走行させるだけで、照明パターンを設置環境へ自動的に自己対応させることが可能となり、作業効率の改善が図れるとともに、照明パターンの最適化が容易となる。したがって、設置調整作業効率の改善および照明パターンを容易に最適化することができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
11…ETC入口車線、12…車両検知・車種判別装置、13…路側無線装置、16…発進制御装置、17…車線制御装置、18…一般入口車線18、19…車両検知・車種判別装置、21…カメラシステム、23…発進制御装置、24…車線制御装置、25…ETC出口車線、26…車両検知・車種判別装置、27…路側無線装置、30…発進制御装置、31…カメラシステム、32…車線制御装置、37…車両、38…車載器、41…前方カメラユニット、42…後方カメラユニット、43…画像処理装置、44…ビデオカメラ、45…照明ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体が移動する移動路の側部に設置され、当該移動路を移動する移動物体を撮像するカメラと、
このカメラの近傍に設置され、前記カメラによる前記移動物体の撮像時に当該移動物体に対し照明光を照射するもので、その照明光を前記移動する移動物体に対し追尾動作可能な照明装置と、
実際の稼動時の前に行なわれる調整時に前記移道路においてテスト移動物体を移動させることで、当該テスト移動物体の移動軌跡を認識する移動軌跡認識手段と、
前記移動する移動物体の移動速度を測定する移動速度測定手段と、
前記移動軌跡認識手段により認識されたテスト移動物体の移動軌跡および前記移動速度測定手段により測定された移動物体の移動速度に基づき、前記照明装置における照明光の最適な追尾軌道を求め、この求めた追尾軌道に基づき前記照明装置の照明光を前記移動する移動物体に対し追尾動作させる照明制御手段と、
前記カメラから得られる画像を用いて所定の画像処理を行なう画像処理手段と、
を具備するカメラシステム。
【請求項2】
車両が走行する道路の側部に設置され、当該道路を走行する車両の少なくともナンバプレートを含む画像を撮像するカメラと、
このカメラの近傍に設置され、前記カメラによる前記車両の撮像時に当該車両に対し照明光を照射するもので、その照明光を前記走行する車両に対し追尾動作可能な照明装置と、
実際の稼動時の前に行なわれる調整時に前記道路においてテスト車両を走行させることで、当該テスト車両の移動軌跡を認識する移動軌跡認識手段と、
前記走行する車両の走行速度を測定する走行速度測定手段と、
前記移動軌跡認識手段により認識されたテスト車両の移動軌跡および前記走行速度測定手段により測定された車両の走行速度に基づき、前記照明装置における照明光の最適な追尾軌道を求め、この求めた追尾軌道に基づき前記照明装置の照明光を前記走行する車両に対し追尾動作させる照明制御手段と、
前記カメラから得られる画像を処理することにより、前記走行する車両のナンバプレートを検出し、当該ナンバプレート上の文字を認識する画像処理手段と、
を具備するカメラシステム。
【請求項3】
車両が走行する道路の側部に設置され、当該道路を走行する車両の少なくとも運転者の顔を含む画像を撮像するカメラと、
このカメラの近傍に設置され、前記カメラによる前記車両の撮像時に当該車両に対し照明光を照射するもので、その照明光を前記走行する車両に対し追尾動作可能な照明装置と、
実際の稼動時の前に行なわれる調整時に前記道路においてテスト車両を走行させることで、当該テスト車両の移動軌跡を認識する移動軌跡認識手段と、
前記走行する車両の走行速度を測定する走行速度測定手段と、
前記移動軌跡認識手段により認識されたテスト車両の移動軌跡および前記走行速度測定手段により測定された車両の走行速度に基づき、前記照明装置における照明光の最適な追尾軌道を求め、この求めた追尾軌道に基づき前記照明装置の照明光を前記走行する車両に対し追尾動作させる照明制御手段と、
前記カメラから得られる画像を処理することにより、前記走行する車両の少なくとも運転者の顔を含む画像を検出し、この検出した画像を記録する画像処理手段と、
を具備するカメラシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−12243(P2013−12243A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−217457(P2012−217457)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−232393(P2008−232393)の分割
【原出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】