説明

カメラ付き携帯通信端末

【課題】 携帯電話機等の携帯通信端末が、鞄や衣服のポケット等の閉塞空間に収納されているか、暗闇の開放空間にあるかの識別が可能で、しかも専用の部品を追加することなく、カメラと着信ランプを用いて周囲環境を判定できるようにする。
【解決手段】 カメラの画像データから着信用ランプの点灯時の輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、その抽出された輝度情報を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定する周囲環境判定手段とを備える。輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点滅動作における点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報との差分値を抽出し、周囲環境判定手段は、その差分値を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像するためのカメラ及び着信用ランプを有する携帯電話機等のカメラ付き携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、携帯電話機を携行する場合には、鞄や衣服のポケットなどの閉塞空間に収納している場合が多く、このような収納状態では、その状況に応じた制御を実施することが求められる。
【0003】
近年、カメラ付き携帯電話機が普及していることから、特許文献1(特開2000−184013号公報)には、カメラ部からの撮像信号に基づいて周囲の明るさを判定し、この判定信号に基づいて呼出音レベルを制御し、周囲が明るい場合には呼出音レベルを小さくし、周囲が暗い場合、例えば鞄や衣服のポケット等の中では呼出音レベルを大きくする技術が開示されている。
【0004】
すなわち、この従来技術では、着信時に、サウンダによる着信呼出が選択されている場合には、カメラ部の固体撮像素子によって得られた撮像信号を制御部の制御によって輝度検出部に入力し、この信号に基づいて周囲輝度のレベルを検出する。次に、この輝度検出部で検出されたレベルと、制御部内に予め設定されている基準レベルとを比較器により比較する。そして、この比較器によって周囲輝度が基準以上と判定された場合には、制御部よりサウンダに出力する着信信号のレベルを小さく制御し、また周囲輝度が基準未満と判定された場合には、制御部よりサウンダへ出力される着信信号を当初設定してあったレベルで伝達するように制御する。
【0005】
しかし、これによると、カメラ部で単に撮像し、その撮像信号の輝度が基準以上であるか基準未満であるかで周囲の明暗を判定しているため、携帯電話機が鞄や衣服のポケット等の閉塞空間に収納されているか、暗闇の開放空間にあるかの識別ができなく、暗闇の開放空間にある場合にも、呼出音レベルが意図しないのに大きくなり、周囲に迷惑をかけることがある。
【特許文献1】特開2000−184013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、携帯電話機等の携帯通信端末が、鞄や衣服のポケット等の閉塞空間に収納されているか、暗闇の開放空間にあるかの識別が可能で、しかも専用の部品を追加することなく、カメラと着信ランプを用いて周囲環境を判定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被写体を撮像するためのカメラ及び着信用ランプを有するカメラ付き携帯通信端末において、カメラの画像データから着信用ランプの点灯時の輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、その抽出された輝度情報を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定する周囲環境判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
その好ましい形態は次のとおりである。
輝度情報抽出手段は、着信信号の受信後にカメラを起動させて、着信用ランプの点灯時に輝度情報を抽出する。
【0009】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点滅動作における点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報との差分値を抽出し、周囲環境判定手段は、その差分値を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定する。
【0010】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点灯時の輝度情報及び消灯時の輝度情報の抽出タイミングとカメラの画像取得周期のタイミングとを同期させる。
【0011】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報の抽出を、それぞれ点灯開始時点及び消灯開始時点より遅延した時点に行う。
【0012】
複数段階の閾値を保存する閾値テーブルを有し、周囲環境判定手段は、輝度情報を複数段階の閾値と比較して周囲環境を判定する。
【0013】
着信用ランプの発光色に応じた閾値を保存する閾値テーブルを有し、周囲環境判定手段は、この閾値テーブルのなかから着信用ランプの発光色に応じた閾値を選択する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、カメラの画像データから着信用ランプの点灯時の輝度情報を抽出し、その抽出された輝度情報を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定するので、着信用ランプの反射光がカメラに入光する光量により輝度が異なるため、携帯通信端末が、鞄や衣服のポケット等の閉塞空間に収納されているか、暗闇の開放空間にあるかの識別が可能である。この判定結果を用いて、着信音制御やバックライト制御など、環境に適した着信時の動作制御を実現できる。
【0015】
着信信号の受信後にカメラを起動させて、着信用ランプの点灯時に輝度情報を抽出すると、着信信号の受信に伴いカメラを自動的に起動させ、その撮像した画像データから着信用ランプの点灯時に輝度情報を自動的に抽出できる。
【0016】
着信用ランプの点滅動作における点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報との差分値を抽出し、その差分値を予め設定されている閾値と比較すると、周囲環境の判定を正確かつ子細に行える。
【0017】
着信用ランプの点灯時の輝度情報及び消灯時の輝度情報の抽出タイミングとカメラの画像取得周期のタイミングとを同期させると、着信用ランプの動作特性とカメラの動作特性とに適応した輝度情報の抽出が行える。
【0018】
着信用ランプの点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報の抽出を、それぞれ点灯開始時点及び消灯開始時点より遅延した時点に行うと、カメラの露光時間に見合った輝度情報の抽出が行える。
【0019】
複数段階の閾値を閾値テーブルに保存し、輝度情報を複数段階の閾値と比較して周囲環境の判定を行うと、周囲環境の判定を一層子細に行える。
【0020】
着信用ランプの発光色に応じた閾値を閾値テーブルに保存し、そのなかから着信用ランプの発光色に応じた閾値を選択すると、着信用ランプの発光色が異なっても周囲環境の判定を同様に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、携帯電話機に適用した本発明の実施例1の概要を示している。
携帯電話機は、アンテナ102と無線部101と制御部110とメモリ部111と操作部112と表示部113と操作部用バックライト114とカメラ115と着信用ランプである着信LED116と音声コーデック部117と表示部用バックライト118とスピーカ120とマイクユニット121とを有する。
【0023】
このカメラ付き携帯電話機は、制御部110の制御により無線部101、アンテナ102を介して図示しない基地局と通信を行う。無線部101は、アンテナ102にて受信した信号から、受信したい信号周波数を選択し周波数変換を行い増幅し、復調して、受信データを制御部110に出力する。制御部110は、受信データを処理して音声信号を音声コーデック部117に出力し、音声コーデック部117は、音声信号をアナログ信号に変えてスピーカ120より音声を出力する。また、マイクユニット121より入力された音声は、音声コーデック部117にてPCM信号にA/D変換され、制御部110は、その信号を送信データに処理し、無線部101にて変調し、規定の周波数の搬送波として増幅し、アンテナ102より送信を行う。
【0024】
制御部110は、操作部用バックライト114及び表示部用バックライト118及び着信LED116の点灯制御、カメラ115にて撮像した画像データのメモリ部111への登録及び画像情報からの輝度情報の抽出、メモリ111への情報の書込みと読出し、表示部113の表示制御、操作部112の操作検出処理などを行う。また、制御部110は、カメラ115より取得した撮像画像データに対し、通常のカメラ撮影において画像処理を行い、メモリ111に画像データを保存し、周囲環境検出動作において画像データから輝度情報を抽出し、メモリ111に予め登録する検出輝度閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値と比較判断することで周囲環境の判定を行う。
【0025】
操作部用バックライト114及び表示部用バックライト118は、制御部110の制御により、操作者に対し操作部112及び表示部113の視認性を向上するために点灯する。着信LED116は、周囲環境検出動作時にカメラ撮像に同期して制御部110により点灯と消灯の制御が後述のように行われる。
カメラ115は、被写体を撮像した画像を画像データとして制御部110に対して出力する。
【0026】
次に、この携帯電話機の動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
制御部110は、図示しない基地局より無線部101が着信信号を受信したか否かを監視し(ステップS200)、着信信号を受信すると、制御部110は、カメラ115を起動し(S201)、着信LED116の点滅を開始する(S202)。ここで、制御部110は、カメラ115から出力される画像データ受信を確認後、着信LED116の点滅をカメラの取得タイミングに同期して行う。図5は、着信LED116の点滅周期とカメラ画像取得タイミングを示す一例であり、カメラ画像取得周期4フレーム毎に、着信LED116を点灯/消灯する場合である。この点滅周期を、カメラ115の画像取り込み周期から生成する。もしくは、着信LED116の点滅周期にカメラ115の画像取り込み周期を合わせる。
【0027】
図5の例では、カメラ115の露光時間を考慮し、着信LED116の点灯時の画像取り込みは、点灯開始時点から遅延させるため、カメラ画像取得周期にして例えば4フレーム目、また着信LED116の消灯時の画像取り込みは、消灯開始時点から遅延させるため、カメラ画像取得周期にして同じく4フレーム目としてある。なお、着信LED116の点滅周期は、画像データ取得後は任意とする。
【0028】
制御部110は、着信LED116の点灯タイミングを確認し、着信LED116の消灯時の画像データを取得し(S203)、取得画像から輝度情報を抽出して記憶する(S204)。輝度情報の抽出方法としては、一画像の平均値や全画素中の最大輝度値を用いる方法などが考えられるが、カメラ・着信LEDの配置等の条件から最適な方法を採用する。
【0029】
次に、抽出した輝度情報の輝度値判定を行うため、抽出した輝度情報を予めメモリ111に格納した着信LED消灯時検出輝度閾値テーブル(以下、単に閾値テーブル)の各閾値と比較する。
【0030】
図3に閾値テーブルの一例を示す。図示するように閾値を数段階設定しておき、このうち最も輝度の高い閾値には、例えば周囲環境検出上限となる輝度値を設定しておく。
【0031】
抽出した輝度情報は、まず閾値テーブルに設定したうち最も輝度値の高い閾値Aとの比較を行う(S205)。抽出輝度値がAより大きい場合には輝度値の判定を中止し、カメラ115を動作停止して(S213)、周囲環境は閉塞空間ではないと判断して周囲環境検出処理を完了する(S214)。
【0032】
抽出輝度値がA以下であれば輝度値の判定を継続し、閾値テーブルの各閾値との比較を順次実施し、輝度範囲を求める(S206)。ここで求めた輝度範囲により、輝度差判定閾値が決定される(S207)。
【0033】
輝度差判定閾値とは、予めメモリ111に格納し、周囲環境を判断するために使用する判定閾値であり、先に取得した着信LED消灯条件での輝度情報と、これから取得する着信LED点灯条件での輝度情報との差分値を比較判定するための閾値である。
【0034】
図4は、輝度差判定閾値の一例である。閉塞空間において、着信LED消灯条件での輝度情報すなわち周囲照度の大小によって、着信LED点灯条件での反射光の輝度情報との差分量は大きく変化し、周囲照度が大きいほど差分量は小さくなることは自明である。従って、輝度差判定閾値は、図4に示すように数段階の値を持つことが望ましく、また、周囲環境の判定にどの値を用いるかは、着信LED消灯条件にて取得した輝度情報の大きさにより決定するものである。
【0035】
次に、制御部110は、着信LED116点灯時の輝度情報を取得するため、着信LED116の点灯タイミングを確認し、画像データを取得し(S208)、カメラ115を停止する(S209)。画像データから輝度情報を抽出する(S210)。抽出方法は上述の通りである。なお、カメラ115は不要となるため停止する(S209)が、停止タイミングは任意である。
【0036】
続いて、制御部110は、取得した輝度情報から周囲環境の解析を行う。取得した輝度情報と輝度差判定閾値を用いて周囲環境の判定を行う。着信LED消灯条件で取得した輝度値と着信LED点灯条件で取得した輝度値との差分を算出し、予め決定した輝度差判定閾値との比較を行う(S211)。算出した輝度差が閾値より小さい場合、周囲環境は閉塞空間ではないと判断して周囲環境検出処理を完了し(S214)、閾値以上であれば周囲環境は閉塞空間であると判断して周囲環境検出処理を完了する(S212)。
【0037】
なお、携帯電話機で使用するカメラは一般的に、受光量に応じて輝度値を一定に保つよう自動ゲインコントロールや自動露出制御を有していて、通常カメラ撮影時にはこれら機能を有効として使っているが、本発明における用途の場合、これら機能により期待する情報が得られないことになるため、例えば機能を無効とするなどの調整を行うことが望ましい。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の実施例2について説明する。
実施例2は、着信LED116が複数の発光色を有する場合について示すものである。
構成については、実施例1と同等である。複数の発光色を有する場合、実施例1の図3及び図4に示す閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値テーブルを、図6及び図7の閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値テーブルに置き換える。図6及び図7は、3色の発光色を有する場合の閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値のテーブルであり、3色の発光色に応じたテーブルとし、予めメモリ111に格納しておく。4色以上の発光色を有する場合のそれに応じたテーブルを有するものとする。
【0039】
動作については、実施例1と基本的に同様であるが、実施例1との差異としては、図6及び図7に示す閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値テーブルを着信LED116の発光色数及びそれぞれの発光輝度に応じて、予めメモリ111に格納しておき、着呼動作時に点灯する着信LEDの点灯色に応じ、参照する閾値テーブル及び検出輝度差判定閾値テーブルを切り替える点である。
これにより、複数の発光可能な着信LEDを有する携帯電話機においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上、本発明をカメラ付き携帯電話機に適用した実施例について説明したが、本発明は、通信機能を有するカメラ付き携帯情報端末等の他の携帯通信端末にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した携帯電話機のブロック図である。
【図2】実施例1の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における閾値テーブルの一例の表図である。
【図4】同じく輝度差判定閾値の一例の表図である。
【図5】着信LEDの点滅周期とカメラ画像の取得周期との関係を示すタイミングチャートである。
【図6】実施例2における閾値テーブルの一例の表図である。
【図7】同じく輝度差判定閾値の一例の表図である。
【符号の説明】
【0042】
101 無線部
102 アンテナ
110 制御部
111 メモリ部
112 操作部
113 表示部
114 操作部用バックライト
115 カメラ
116 着信LED
117 音声コーデック部
118 表示部用バックライト
120 スピーカ
121 マイクユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像するためのカメラ及び着信用ランプを有するカメラ付き携帯通信端末において、
前記カメラの画像データから前記着信用ランプの点灯時の輝度情報を抽出する輝度情報抽出手段と、その抽出された輝度情報を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定する周囲環境判定手段とを備えたことを特徴とするカメラ付き携帯通信端末。
【請求項2】
輝度情報抽出手段は、着信信号の受信後にカメラを起動させて、着信用ランプの点灯時に輝度情報を抽出することを特徴とする請求項1に記載のカメラ付き携帯通信端末。
【請求項3】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点滅動作における点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報との差分値を抽出し、周囲環境判定手段は、その差分値を予め設定されている閾値と比較することにより周囲環境を判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ付き携帯通信端末。
【請求項4】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点灯時の輝度情報及び消灯時の輝度情報の抽出タイミングとカメラの画像取得周期のタイミングとを同期させることを特徴とする請求項3に記載のカメラ付き携帯通信端末。
【請求項5】
輝度情報抽出手段は、着信用ランプの点灯時の輝度情報と消灯時の輝度情報の抽出を、それぞれ点灯開始時点及び消灯開始時点より遅延した時点に行うことを特徴とする請求項3に記載のカメラ付き携帯通信端末。
【請求項6】
複数段階の閾値を保存する閾値テーブルを有し、周囲環境判定手段は、輝度情報を複数段階の閾値と比較して周囲環境を判定することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のカメラ付き携帯通信端末。
【請求項7】
着信用ランプの発光色に応じた閾値を保存する閾値テーブルを有し、周囲環境判定手段は、この閾値テーブルのなかから着信用ランプの発光色に応じた閾値を選択することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載のカメラ付き携帯通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−5802(P2006−5802A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181820(P2004−181820)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】