説明

カメラ付インターホン装置

【課題】 輝度及びコントラストを操作して、逆光時及び低照度時の双方において来訪者の視認性を向上させる。
【解決手段】 デジタル信号処理部36は、カメラ12の撮像映像の輝度情報から輝度ヒストグラムを作成し、予め記憶している基準輝度データと比較して、撮像状態が逆光状態或いは低照度状態であるか判定し、逆光状態であれば輝度の低いピクセルに対して輝度を所定量上げて中間輝度に近づける補正を行う一方、輝度の高いピクセルに対しては輝度を所定量下げて中間輝度に近づける補正を行う輝度圧縮を実施して作成した輝度ヒストグラムを変更する。更に、所定の中間照度を中心に暗いエリアは更に暗くし、明るいエリアはさらに明るくする補正を行うコントラスト強調を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関子機からの呼び出しに対して居室親機から来訪者を映像で確認しながら応答することができるカメラ付インターホン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
来訪者が居住者を呼び出すための玄関子機にカメラを設け、呼び出しに応答する居住者が居室親機に設けたモニタにより来訪者を確認できるカメラ付インターホン装置がセキュリティ向上に有効であるため普及している。
来訪者が操作する玄関子機は外に向けて設置されるため、カメラは逆光状態で来訪者を撮像する場合が避けられない。そのため、そのような場合に、人物が黒く撮像されてしまい判別できなくなる問題を回避するために、逆光補正機能を備えて人物を視認し易くしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−182641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の逆光補正機能を備えたインターホン装置の場合、照度検出部が高照度であると判断したら逆光補正処理を実施し、低照度であると判断したら暗視動作処理を実施する自動補正を行うため、使用者にとってはその都度機器を操作すること無く補正された映像が居室親機のモニタに表示されるので、便利な機能となっていた。
しかしながら、逆光時の補正も低照度時の補正も基本は単純に映像を明るくする(露出を上げる)だけであり、自動補正により必ずしも人物の視認性が向上するわけではなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、単に映像を明るくするだけでなく、輝度及びコントラストを操作して、逆光時及び低照度時の双方において来訪者の視認性の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明は、来訪者を撮像するためのカメラ及び居住者を呼び出して通話する機能を備えた玄関子機と、カメラの撮像映像を表示するモニタ及び玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有するカメラ付インターホン装置において、カメラの撮像映像の輝度情報から輝度ヒストグラムを作成する輝度データ取得手段と、作成した輝度ヒストグラムを予め記憶している基準輝度データと比較して、撮像状態が逆光状態或いは低照度状態であるか判定する撮像状態判定手段と、逆光補正及び低照度補正を行ってモニタが表示する映像を生成する映像制御手段とを有し、映像制御手段は、撮像状態判定手段の判定結果を基に、逆光状態であれば輝度の低いピクセルに対して輝度を所定量上げて中間輝度に近づける補正を行う一方、輝度の高いピクセルに対しては輝度を所定量下げて中間輝度に近づける補正を行う輝度圧縮を実施して作成した輝度ヒストグラムを変更すると共に、所定の中間照度を中心に暗いエリアは更に暗くし、明るいエリアはさらに明るくする補正を行うコントラスト強調を実施して補正トーンカーブを生成し、低照度状態であれば、輝度の低いピクセルに対して輝度を上げて中間輝度に近づける補正を行う輝度圧縮を実施して作成した輝度ヒストグラムを変更すると共に、所定の中間照度を基準に暗いエリアは更に暗くし、明るいエリアはさらに明るくする補正を行うコントラスト強調を実施して補正トーンカーブを生成することを特徴とする。
この構成によれば、逆光時のカメラ撮像映像に対しては、輝度圧縮により暗い部分が明るくなると共に白飛びしている部分が暗くなる。その結果、全体が中間輝度に近づくが、輝度圧縮によりなくなった濃淡に対して全体のコントラストが強調されるため濃淡がはっきりする。よって、白飛びした背景も見やすくなるし暗く写っている人物が明るくはっきり表示されて視認性が向上する。一方、低照度時は、暗い部分が明るくなるし、コントラストが強調されて濃淡がはっきりするため、この場合も人物が明るくはっきり表示されて視認性が向上する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、輝度及びコントラストを操作することで、逆光時及び低照度時の双方において撮像した人物の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るカメラ付インターホン装置の一例を示す構成図である。
【図2】玄関子機のカメラ映像処理部のブロック図である。
【図3】映像信号処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】生成されるトーンカーブの説明図であり、(a)は全体に明るい映像の場合、(b)は全体に暗い映像の場合を示している。
【図5】輝度圧縮の説明図であり、ピクセル数と明るさの関係を示している。
【図6】トーンカーブ補正の説明図である。
【図7】逆光時の補正を模式的に示す説明図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示している。
【図8】逆光時の輝度ヒストグラムの一例を示す図である。
【図9】低照度時の補正を模式的に示す説明図であり、(a)は補正前、(b)は補正後を示している。
【図10】低照度時の輝度ヒストグラムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係るカメラ付インターホン装置の構成図であり、1は居住者を呼び出すために玄関等に設置される玄関子機、2は玄関子機からの呼び出しに応答するために居室に設置される居室親機であり、双方は伝送線L1により接続されている。
【0010】
玄関子機1は、居住者を呼び出すための呼出ボタン11、来訪者を撮像するためのカメラ12、通話するためのマイク13及びスピーカ14等を備えている。一方、居室親機2は、カメラ12の撮像映像を表示するモニタ21、応答操作するための通話ボタン22、通話するためのマイク23及びスピーカ24等を備えている。
【0011】
図2は、玄関子機1に設けられているカメラ12の撮像映像を処理する映像信号処理部30の回路ブロック図を示している。図2に示すように、映像信号処理部30は、カメラ12の撮像素子12aが出力する映像信号をデジタル処理して出力するカメラ信号処理部31、映像をはじめ各種データを記憶するEEPROMから成るメモリ32、カメラ信号処理部30のクロック信号を生成する水晶発振子33、映像信号を居室親機2へ出力するためにカメラ信号処理部31が出力する映像信号を受けてNTSC信号を出力するビデオアンプ34等を備えている。
【0012】
カメラ信号処理部31は、撮像素子12aが出力するアナログ映像信号をA/D変換し、例えば8ビットのデジタルビデオ信号にデータ処理して出力するアナログ信号処理部35、逆光補正や低照度補正を行うために輝度及びコントラストを操作するデジタル信号処理部(DSP)36を備えている。尚、DSP36は、輝度信号とクロマ信号(色度信号)を出力する。
【0013】
上記構成のカメラ付インターホン装置の動作は以下のようである。但し、玄関子機1からの呼び出し/通話は、従来のカメラ付インターホン装置の動作と同じであるため説明を省略し、ここではカメラ12の撮像映像をモニタ21で表示する動作を中心に説明する。
【0014】
図3は、逆光時と低照度時の視認性を向上させる補正処理の流れを示すフローチャートであり、このフローに基づいて補正の流れを説明する。最初に階調特性(トーンカーブ)について説明する。トーンカーブは、輝度の入出力を低輝度から高輝度にわたり対比して表したもので、横軸が基の輝度(入力輝度)、縦軸が変更後の輝度(出力輝度)として表される。
【0015】
図4はトーンカーブの説明図を示し、輝度が低い部分(暗い部分)から高い部分(明るい部分)の関係がこのように直線或いは曲線で表現される。図4(a)は輝度データを変更しない場合、図4(b)は大きく変更した場合を示している。具体的に、図4(b)は、全体に明るく濃淡を無くした映像を出力する場合のトーンカーブを示している。
【0016】
DSP36は、このようなトーンカーブをカメラ12の撮像データから作成するが、ここでは逆光状態でも低照度状態でもなく人物を良好に視認できる状態をカメラ12により撮像し、その輝度データを基にしたトーンカーブが基準データとして予めメモリ32に記憶させてあり、これを基準トーンカーブとして自動補正する際に判定基準として使用される。
【0017】
このような特性を踏まえてフローに戻り説明する。来訪者が呼出ボタン11を押すと、カメラ12が起動して撮像素子12aによりレンズを通した光が電気信号に変換され、カメラ信号処理部31に出力される。カメラ信号処理部31は、アナログ信号処理部35がデジタルビデオ信号を生成してDSP36に出力する。DSP36では、この映像信号を受けて以下のような信号処理を実施する。
【0018】
先ず、映像信号からピクセル毎の輝度データを取得し(S1)、取得した輝度データを基に低輝度(暗い映像となるデータ)から高輝度(明るい映像となるデータ)までの階調特性が生成される。具体的に、個々のピクセルの輝度情報から輝度ヒストグラム及びトーンカーブが作成される(S2)。このとき生成されるトーンカーブは、上述した基準データを入力データとし、上述した図4(b)に示すような直線或いは曲線が生成される。
【0019】
続いて、作成したトーンカーブ及び輝度ヒストグラムの補正工程(S3)に入り、輝度圧縮とコントラスト強調が実施される。この工程のうち、最初の輝度圧縮を図5を参照して説明する。
図5は輝度ヒストグラムの説明図であり、横軸が輝度、縦軸がピクセル数となっている。横軸の中央部分が平均的な明るさ(中輝度領域)であり、明るさとピクセル数の関係は通常太線Mで示すような中央が盛り上がった山形となる。尚、実際には、曲線ではなく後述する図8或いは図10に示すような棒グラフで表される。
【0020】
この図5において、この曲線Mが入力信号により生成されたヒストグラムであるとすると、この補正工程では曲線MがM1〜M3に変化するようDSP36が輝度を操作する。このように輝度平均位置Pに全てのピクセルの輝度を近づける操作が輝度圧縮である。この輝度圧縮操作を行うことで、輝度が低く暗いピクセルは明るくなるし、輝度が高く明るいピクセルは暗くなり、画面全体の輝度レベルが輝度平均位置Pに近づく。この結果、濃淡がなくなるが人物の確認はし易くなる。
尚、輝度圧縮するレベルは、予め目標とする標準曲線が設定されてメモリ32に記憶されており、その標準曲線に近づくよう輝度圧縮は実施される。また、輝度平均位置Pは中間輝度を示し、撮像映像の輝度を平均した値ではない。
【0021】
一方、コントラスト強調は、入力データ(元映像のデータ)と輝度圧縮後のデータの差分(失われたコントラスト)に対して、ゲイン(信号レベルの増幅量)を加算する操作を実施する。図6はコントラスト強調補正の説明図であり、図6において、Q1は中間輝度、Q2は低輝度領域の中間点、Q3は高輝度領域の中間点を示している。
図6に示すように、輝度が中間輝度Q1より低い(暗い)エリアに対してゲイン出力を下げる補正を実施し、輝度が中間輝度Q1より高い(明るい)エリアに対してゲイン出力を上げる補正が実施される。こうして濃淡の強調、即ちコントラスト強調が実施される。このQ2点での補正量ΔQ2、Q3点での補正量ΔQ3は、上述した輝度圧縮した補正量に比例するよう設定されている。
【0022】
この結果、入力レベルが低い部分、及び高い部分の双方に対してゲイン出力が変更され、最終的に暗い部分が明るくなるし明るい部分が暗くなり、白飛びしている部分が抑制される。こうして生成したトーンカーブに合わせて輝度信号及びクロマ信号が補正されて出力される(S4)。
【0023】
逆光の補正を具体的に説明すると、図7が逆光補正の説明図であり、図7(a)が補正前の映像とトーンカーブ、図7(b)が補正後の映像とトーンカーブを示している。この図7(a)に示すように、逆光時は被写体である来訪者は暗くなり、背景が飛びぎみとなる。
この状態において、カメラ12から得た映像データを基に作成された輝度ヒストグラムは図8に示すような特性となる。図7(a)で示しているトーンカーブはこの輝度情報を基に予め作成された基準トーンカーブと比較して生成したものである。この生成したトーンカーブから、低輝度の出力がレベルが低く高輝度の出力レベルが高いことから逆光状態であることが判定される。
【0024】
この特性を基に、輝度圧縮とコントラスト強調が実施される。暗く入力レベルが低い部分に対しては、まず輝度圧縮にて中輝度領域に出力を変化させることで輝度の濃淡を無くす。次にコントラスト強調により、無くなった濃淡部分に対してゲインを加算する。こうして補正したトーンカーブが図7(b)に示すような形状となる。N1,N2部位が大きく変更された部位で、N1が低輝度部位を明るくした状態、N2が白飛びした部位を暗くした状態を示している。この結果、人物の確認がし易くなり白飛びが抑制された映像となる。
【0025】
続いて低照度時の補正を具体的に説明する。図9が低照度状態の補正を示す説明図であり、図9(a)が補正前の映像とトーンカーブ、図9(b)が補正後の映像とトーンカーブを示している。
この状態において、カメラ12から得た映像データを基に作成された輝度ヒストグラムは図10に示すような特性となる。図9(a)で示しているトーンカーブはこの輝度情報を基に予め作成された基準トーンカーブと比較して生成したものである。この生成したトーンカーブから、低輝度の出力レベル及び高輝度の出力レベルが低いことから低照度状態であることが判定される。
【0026】
この特性を基に、輝度圧縮の強弱とコントラスト強調の強弱が実施される。まず輝度圧縮にて中輝度領域へ出力レベルを変化させて輝度の濃淡をなくすが、ここでは低輝度領域が補正され全体の出力レベルが上がり明るくなる。次に、濃淡の失われた分をコントラスト強調にてゲインを加算し出力レベルを上げ、コントラストを強調を行う。こうして補正したトーンカーブが図9(b)に示すような形状となり、全体の出力レベルが上がる。この結果、人物及び周辺の出力レベルが上がり、人物の視認性が向上する。
【0027】
このように、逆光時のカメラ撮像映像に対しては、暗い部分が明るくなると共に白飛びしている部分が暗くなる。その結果、全体が中間輝度に近づくが、輝度圧縮によりなくなった濃淡に対して全体のコントラストが強調されるため濃淡がはっきりする。よって、白飛びした背景も見やすくなるし暗く写っている人物が明るくはっきり表示されて視認性が向上する。一方、低照度時は、暗い部分が明るくなるし、コントラストが強調されて濃淡がはっきりするため、この場合も人物が明るくはっきり表示されて視認性が向上する。
そして、これらの処理は例えばワイドダイナミックレンジ処理のように2枚(2フィールド)の画像を合成するのではなく、1枚(1フィールド)の画像に対して処理を行うためDSP36の処理負担が少ない。
【符号の説明】
【0028】
1・・玄関子機、2・・居室親機、12・・カメラ、21・・モニタ、30・・映像処理部、31・・カメラ信号処理部、32・・メモリ、36・・デジタル信号処理部(輝度データ取得手段、撮像状態判定手段、映像制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者を撮像するためのカメラ及び居住者を呼び出して通話する機能を備えた玄関子機と、前記カメラの撮像映像を表示するモニタ及び玄関子機からの呼び出しに応答する機能を備えた居室親機とを有するカメラ付インターホン装置において、
前記カメラの撮像映像の輝度情報から輝度ヒストグラムを作成する輝度データ取得手段と、
作成した輝度ヒストグラムを予め記憶している基準輝度データと比較して、撮像状態が逆光状態或いは低照度状態であるか判定する撮像状態判定手段と、
逆光補正及び低照度補正を行って前記モニタが表示する映像を生成する映像制御手段とを有し、
前記映像制御手段は、前記撮像状態判定手段の判定結果を基に、逆光状態であれば輝度の低いピクセルに対して輝度を所定量上げて中間輝度に近づける補正を行う一方、輝度の高いピクセルに対しては輝度を所定量下げて中間輝度に近づける補正を行う輝度圧縮を実施して作成した前記輝度ヒストグラムを変更すると共に、所定の中間照度を基準に暗いエリアは更に暗くし、明るいエリアはさらに明るくする補正を行うコントラスト強調を実施して補正トーンカーブを生成し、
低照度状態であれば、輝度の低いピクセルに対して輝度を上げて中間輝度に近づける補正を行う輝度圧縮を実施して作成した前記輝度ヒストグラムを変更すると共に、所定の中間照度を中心に暗いエリアは更に暗くし、明るいエリアはさらに明るくする補正を行うコントラスト強調を実施して補正トーンカーブを生成することを特徴とするカメラ付インターホン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98726(P2013−98726A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239258(P2011−239258)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】