説明

カメラ用フォーカルプレンシャッタ

【課題】シャッタ地板面からの高さを低くできるようにしたカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供すること。
【解決手段】シャッタ地板1には、板面が平行になるようにして支持板6が取り付けられている。また、シャッタ地板1に立設された軸1gには、後羽根用駆動ばね25の付勢力によって回転させられる後羽根用駆動部材22が取り付けられており、支持板6には、後羽根用駆動部材22に取り付けられた鉄片部材23を吸着する後羽根用電磁石10が取り付けられている。そして、後羽根用電磁石10に電流を供給するための配線パターンを形成したプリント配線板12は、支持板6に形成された孔6bに配置されていて、端子ピン10d,10eのところで、コイル10cの両端に半田付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一眼レフカメラやミラーレス一眼カメラなどに用いられるカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用フォーカルプレンシャッタの中には、シャッタ羽根を一つだけ備えたものと、先羽根,後羽根などと称されている二つのシャッタ羽根を備えたものがある。そして、前者は、一般的には、露光開口を全開にしたままで撮影を開始し、シャッタ羽根が露光開口を閉じることによって撮影を終了するように構成されている。また、後者は、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影を終了するように構成されているのが一般的であるが、中には、そのようにして行われる撮影と、露光開口を全開にしたままで撮影を開始し、後羽根が露光開口を閉じることによって撮影を終了するようにした撮影とを、撮影のたびに選択できるように構成されたものも知られている。
【0003】
これらのフォーカルプレンシャッタにおいては、シャッタ羽根は、駆動部材の回転によって作動させられるが、撮影時における駆動部材の駆動源としては、ねじりコイルばね(以下、駆動ばねという)を用いているのが普通である。そのため、撮影が終了すると、駆動部材を駆動ばねの付勢力に抗してセット位置まで回転させ、また、次の撮影が開始される直前においては、駆動部材を駆動ばねの付勢力に抗して撮影作動開始位置に保持しているようにする必要がある。そして、そのように保持するための構成としては、係止タイプと言われているものと、ダイレクトタイプと言われているものがあるが、下記の特許文献1には、二つのシャッタ羽根を備えているダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタが記載されている。
【0004】
この特許文献1にも記載されているように、従来のダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタは、シャッタ地板に対して板面を平行にして取り付けられた支持板が、シャッタ地板側に電磁石を取り付けていて、反対側にはプリント配線板を重合させている。そして、特許文献1には記載されていないが、プリント配線板には、例えば特開2002−139770号公報に記載されているように、単に配線パターンが形成されているだけではなく、コンデンサも搭載されている。また、周知のように、電磁石にはコイルの両端を巻き付けた二つの端子ピンが設けられており、それらをプリント配線板に設けられた孔に貫通させ、コイルの両端とプリント配線板のパターンとを半田付けしている。
【0005】
他方、特許文献1に記載されているように、駆動部材は、鉄片部材を有していて、シャッタ地板と支持板との間において、シャッタ地板に対して回転可能に取り付けられている。そして、撮影を開始する直前には、電磁石が鉄片部材を吸着して、駆動部材を駆動ばねの付勢力に抗して撮影作動開始位置に保持しており、その後、電磁石が消磁することによって、駆動部材が駆動ばねの付勢力によって回転させられるようになっている。本発明は、従来のこのような構成を改良した、少なくとも一つのシャッタ羽根を備えているダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタに関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−66507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近では、ミラーレス一眼カメラの出現によって、一眼レフカメラをも含めて一眼カメラの小型化に拍車がかかっており、それらのカメラに内蔵されているフォーカルプレンシャッタについても、ユニット全体の小型化,薄型化についての要求が一段と強くなっている。ところが、これまでにも、かなりの小型化,コンパクト化が行われてきているので、各構成部材のダウンサイズ化は非常に難しくなっており、実際には、0.1ミリ以下のオーダーでの努力が行われている。
【0008】
ところで、フォーカルプレンシャッタのユニットは、周知のように、シャッタ羽根以外の殆どの構成部材が、シャッタ地板に対し、被写体光路用の開口部の側方にある所定の領域内に集中的に取り付けられている。そのため、その領域のところだけが、シャッタ地板面から極端に高くなっている。従って、ユニットの小型化を図ろうとする場合には、先ずはその高さを何とか低くできないだろうかということになるが、上記のように、これまでにも、各構成部材ごとのダウンサイズ化は行われてきているので、それとは別に、構成上での工夫が必要になっている。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シャッタ地板に板面を平行にして取り付けられている支持板に対し、従来のような、シャッタ地板側に電磁石を取り付け、反対側にプリント配線板を重合させているようにした構成を工夫することによって、シャッタ地板の板面からの高さを低くできるようにした、少なくとも一つのシャッタ羽根を備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、欠損部を有していてシャッタ地板に対して板面が平行になるように取り付けられている支持板と、前記シャッタ地板と前記支持板との間において前記シャッタ地板に立設された軸に対して回転可能に取り付けられており撮影時には撮影作動開始位置から駆動ばねの付勢力によって回転されシャッタ羽根を作動させる駆動部材と、ボビンに巻回されその両端を該ボビンに設けられていて前記欠損部に挿入した二つの端子ピンに巻き付けられているコイルと該コイルへの通電によって励磁される鉄芯部材とを有していて前記シャッタ地板と前記支持板との間において前記支持板に取り付けられており撮影時には該鉄芯部材が励磁されると前記駆動部材を吸着保持し所定時間後に消磁されると前記駆動部材を釈放して撮影作動開始位置からの回転を可能にする電磁石と、前記欠損部に配置されていて前記コイルの両端に半田付けされているプリント配線板と、を備えているようにする。
【0011】
また、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、前記駆動部材と、前記電磁石と、前記プリント配線板とが二つずつ備えられ、前記支持板には前記欠損部が二つ設けられていて、該二つのプリント配線板は、電気的に相互に接続されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタによれば、従来のように、プリント配線板を支持板に重合させるのではなく、支持板に形成された貫通孔などの欠損部にだけ存在するようにしたので、支持板がプリント配線板より厚い場合にはプリント配線板の厚さだけ、また、プリント配線板が支持板より厚い場合には支持板の厚さだけ、シャッタ地板の板面からの高さを低くすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例の左側の半分弱を示した平面図であって、撮影に際して、後羽根が作動し終わった直後の状態を示したものである。
【図2】各構成部材の重なり関係を理解し易くするために、図1の右側から見て要部だけを示した側面図であって、必要箇所を断面で示したものである。
【図3】図1に示されている二つのプリント配線板を詳細に示すと共に、両者の接続関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図1〜図3に示した実施例によって説明する。尚、実施例は、本発明を、二つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタに適用したものであるが、本発明は、一つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタにも適用することが可能である。しかしながら、その態様については、特に別の実施例として図示して説明するまでもないので、下記の実施例の説明の中で、必要な事項についてだけ説明することにする。
【0015】
そして、本実施例の説明に用いられる図1は、本実施例のフォーカルプレンシャッタがカメラに組み込まれたとき、撮影レンズ側から見て左側の半分弱を示した平面図であって、撮影に際して、後羽根が作動し終わった直後の状態を示したものである。また、図2は、図1に示されている各構成部材の重なり関係を理解し易くするために、図1の右側から見て要部だけを示した側面図であって、必要と思われる箇所を断面で示したものである。更に、図3は、図1に示されている二つのプリント配線板を詳細に示すと共に、両者の接続関係を示した図である。
【0016】
尚、本実施例の説明においては、上記のように、本実施例のフォーカルプレンシャッタがカメラに組み込まれたとき、図1の手前側に撮影レンズが配置されていることを前提にしているが、周知のように、デジタルカメラに組み込まれるときには、背面側に撮影レンズが配置されているようにすることもある。
【0017】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。図1において、合成樹脂製のシャッタ地板1には、その略中央部に、露光開口を規制するための長方形を横長にした開口部1aが形成されている。しかし、図1は撮影レンズ側から見て左側の半分弱の部分だけを示したものであるから、その開口部1aについても、左側の一部だけが示されている。
【0018】
図2から分かるように、シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に後羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に先羽根の羽根室を構成している。また、周知であるため図示していないが、中間板2と補助地板3にも、開口部1aと重なるところに、開口部1aと類似の形状をしていて、開口部1aよりも若干大きな開口部が形成されている。
【0019】
図1において、開口部1aの左側には、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの下方端部には、平面形状がC字状をしている周知の緩衝部材4,5が取り付けられている。また、シャッタ地板1には、長孔1b,1cの近傍位置に二つの柱1d,1eが立設されており、それらの先端面には、金属製の支持板6が、その板面をシャッタ地板1と平行になるようにして、ねじ7,8によって取り付けられている。
【0020】
この支持板6には、長方形をした比較的大きな二つの孔6a,6bが形成されているほか、複数の円形をした孔や複数の折曲部が形成されているが、それらについては、下記の説明で順に理解できるようにする。尚、長方形をした二つの孔6a,6bは、本発明の欠損部に相当するものであるが、本発明の欠損部は、このように孔として形成されたものに限定されるものではなく、それらの孔6a,6bの一部が支持板6の外縁に湾状に開いた切欠き部として形成されていてもよく、また、孔として形成される場合でも、その形状は長方形に限定されない。
【0021】
シャッタ地板1には、軸1f,1gが立設されている。これらの軸1f,1gは、金属製であって、図2に示されている軸1gの場合で分かるように、シャッタ地板1に形成された孔に圧入されており、支持板6側の先端に小径部1f−1,1g−1を有し、反対側には補助地板3側に突き出た軸部1f−2,1g−2を有している。そして、小径部1f−1,1g−1の先端は、支持板6に形成された円形の孔6c,6dに挿入されている。また、軸部1f−2,1g−2の先端は、合成樹脂製の補助地板3に形成された貫通していない孔に挿入されているが、図2においては、それらの孔のうち、軸部1g−2の挿入されている孔3aが示されている。
【0022】
また、シャッタ地板1には、支持板6側に軸1hが立設されている。この軸1hは金属製であり、図2に示されているように、シャッタ地板1に対してかしめ加工で固定されており、先端の小径部1h−1を、支持板6の円形の孔6eに挿入している。更に、シャッタ地板1の補助地板3側には、軸1i,1jが立設されている。これらの軸1i,1jは、金属製であり、図2に示された軸1jの場合で分かるように、シャッタ地板1に形成された孔に対して圧入されている。そして、それらの先端は、補助地板3に形成された貫通していない孔に挿入されているが、図2においては、それらの孔のうち、軸1jの挿入された孔3bが示されている。
【0023】
支持板6に形成されている折曲部6f,6g,6hは、それらの弾性を利用して先羽根用電磁石9を取り付けるためのものであり、折曲部6i,6j,6kは、それらの弾性を利用して後羽根用電磁石10を取り付けるためのものであるが、それらの取付け構成は公知であるため、詳しい説明を省略する。また、それらの二つの電磁石9,10は、鉄芯部材9a,10aと、ボビン9b,10bと、コイル9c,10cとで構成されている。
【0024】
そして、先羽根用電磁石9のボビン9bに一体的に成形されている二つの端子ピン9d,9eは、コイル9cの両端を巻き付けていて、支持板6に形成されている長方形をした上記の孔6aを貫通し、撮影レンズ側に突き出ている。また、後羽根用電磁石10のボビン10bに一体的に成形されている二つの端子ピン10d,10eは、コイル10cの両端を巻き付けていて、支持板6に形成されている長方形をした上記の孔6bを貫通し、撮影レンズ側に突き出ている。
【0025】
また、支持板6に形成されている折曲部6m,6nは、後述するラチェット部材21,24の回転止めを行なうために、弾性を有するラチェット爪として形成されたものであって、いずれも二つの爪部を有しているが、図2においては、それらのうち、折曲部6nに形成された二つの爪部6n−1,6n−2が示されている。
【0026】
支持板6に形成されている長方形をした上記の孔6a,6bには、それらの孔よりも一回り小さな長方形をしたプリント配線板11,12が配置されている。本実施例の場合、これらのプリント配線板11,12は、フレキシブルプリント配線板であって、図2に示されているプリント配線板12からも分かるように、支持板6の厚さと略同じ厚さをしている。そのため、本実施例の構成は、従来の支持板とプリント配線板を重ね合わせた構成に比較して、プリント配線板11,12の厚さ分だけ薄くなり、シャッタ地板1から、支持板6の撮影レンズ側の面までの高さが低くなっている。
【0027】
尚、本実施例のプリント配線板11,12としては、フレキシブルプリント配線板を用いているが、本発明のプリント配線板は、フレキシブルプリント配線板に限定されるものではなく、硬質のプリント配線板であってもよい。硬質のプリント配線板の場合は、プリント配線板の厚さが、支持板6の厚さよりも厚くなる場合があるが、その場合であっても、従来のように支持板とプリント配線を重ね合わせた構成に比較して、全体としては、プリント配線板11,12の厚さ分だけ薄くなり、局部的には支持板6の厚さ分だけ薄くなって、シャッタ地板1から、支持板6の撮影レンズ側の面までの高さは低くなる。
【0028】
ところで、図1においては、プリント配線板11,12の外形が示されているだけである。そこで、図3を用い、配線関係も含めて、本実施例におけるプリント配線板11,12の構成を詳細に説明する。プリント配線板11,12には、それらの長手方向の両端近傍に、各々、上記の二つの端子ピン9d,9e、10d,10eを貫通させるための円形をした二つ孔11a,11b、12a,12bが形成されている。そして、それらのプリント配線板11,12には、孔11aと孔11bとの間の略中間位置、及び孔12aと孔12bとの間の略中間位置で分断された直線状の配線パターンが形成されていて、それらの分断された位置に、チップ部品であるコンデンサ13,14が配置され、両側の配線パターンに半田付けされている。
【0029】
そして、一方のプリント配線板11には、孔11aとコンデンサ13との間から分岐した配線パターンに、電源の陽極に接続されたリード線15が半田付けされており、また、孔11bとコンデンサ13との間から分岐した配線パターンに、電源の陰極に接続されたリード線16と、他方のプリント配線板12との間に接続されるリード線17とが半田付けされている。他方、プリント配線板12には、孔12aとコンデンサ14との間から分岐した配線パターンに、上記のリード線17が半田付けされており、また、孔12bとコンデンサ14との間から分岐した配線パターンに、電源の陽極に接続されたリード線18が半田付けされている。
【0030】
そして、これらのプリント配線板11,12は、図3に示されているように、リード線15,16,17,18を接続しておいてから、それらの孔11a,11b、12a,12bを端子ピン9d,9e、10d,10eに嵌合させ、それらの嵌合箇所で半田付けされている。また、リード線15,16,17は、支持板6の孔6aの縁との間の隙間からシャッタ地板1側に引き回され、リード線17,18は、支持板6の孔6bの縁との間の隙間からシャッタ地板1側に引き回されている。その結果、コンデンサ13,14は、上記の各々の電磁石9,10のコイル9c,10cに対して、並列に接続されていることになる。
【0031】
尚、このようにコンデンサ13,14を接続している理由は、周知のように、後述する撮影時の作動において、各電磁石9,10のコイル9c,10cへの通電が断たれたときに発生する逆起電力を吸収し、各シャッタ羽根の作動開始のタイミングが安定して得られるようにするためと、その逆起電力によって図示していない電子回路が損傷したり耐久性が損なわれないようにするためである。また、本実施例においては、プリント配線板11,12に、コンデンサ13,14だけしか搭載していないが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、配線パターンを変えることによって、他の電子部品を搭載できるようにしても構わない。
【0032】
また、本実施例の場合には、リード線15,16,17,18が、プリント配線板11,12とは別の部材として構成されているが、それらを、本実施例のプリント配線板11,12と共に一つのフレキシブルプリント配線板として構成し、長方形をした上記の孔6a,6bに配置されている部位以外は、孔6a,6bの縁との間の隙間からシャッタ地板1側に引き回されているようにしてもよい。そして、そのように構成する場合には、本実施例におけるコンデンサ13,14は、シャッタ地板1側に引き回された部位に搭載するようにしてもよい。
【0033】
次に、シャッタ地板1の支持板6側において、上記の軸1f,1g,1hに取り付けられている部材を順に説明する。先ず、軸1fには、先羽根用駆動部材19が回転可能に取り付けられている。この先羽根用駆動部材19は、合成樹脂製であって、被押動部19aと、駆動ピン19bと、取付部19cとを有している。
【0034】
それらのうち、先羽根用駆動部材19のシャッタ地板1側に立設された駆動ピン19bは、断面形状が小判型をしており、シャッタ地板1の長孔1bを貫通して、その先端を補助地板3の図示していない円弧状の長孔(長孔1bと略同じ形状)に挿入している。そして、この駆動ピン19bは、根元側の部位が、上記の緩衝部材4に当接するようになっており、先端側の部位が、後述するようにして、羽根室内で先羽根に連結されている。また、支持板6側に部厚く形成されている取付部19cは、その内部に、図示していない圧縮ばねを介在させて鉄片部材20を取り付けているが、その具体的な取付け構成は周知であって、且つ本発明とは直接関係がないので、詳細な説明を省略する。
【0035】
このような先羽根用駆動部材19のほか、軸1fには、その先端に形成された小径部1f−1に、ラチェット部材21が回転可能に取り付けられており、その外周面に形成されたラチェット歯には、支持板6に形成された上記の折曲部6mが係合している。また、そのラチェット部材21と先羽根用駆動部材19との間には、図示していない周知の先羽根用駆動ばねが掛けられている。しかしながら、それらのラチェット部材21と図示していない先羽根用駆動ばねの構成は、図2を用いて以下に説明するラチェット部材23と後羽用駆動ばね25の構成と実質的に同じである。従って、その説明によって、ラチェット部材21と図示していない先羽根用駆動ばねの構成も理解することができるため、ここでは、それらについての説明を省略する。
【0036】
シャッタ地板1の軸1gには、後羽根用駆動部材22が回転可能に取り付けられている。この後羽根用駆動部材22も、上記の先羽根用駆動部材19と同様に、合成樹脂製であって、被押動部としてのローラー22aを取り付けているほか、駆動ピン22bと取付部22cとを有している。
【0037】
それらのうち、シャッタ地板1側に立設されている駆動ピン22bは、断面形状が小判型をしていて、シャッタ地板1の長孔1cを貫通し、その先端を補助地板3の円弧状の長孔3c(図2参照)に挿入している。そして、この駆動ピン22bは、根元側の部位が、上記の緩衝部材5に当接するようになっていて、先端側の部位が、後述するようにして、羽根室内で後羽根に連結されている。また、支持板6側に部厚く形成されている取付部22cは、その内部に、図示していない圧縮ばねを介在させて鉄片部材23を取り付けているが、その具体的な取付け構成は、上記の鉄片部材20の場合と同じであり、且つ周知である。そのため、説明を省略する。
【0038】
このような構成をした後羽根用駆動部材22のほか、軸1gには、先端に形成されている上記の小径部1g−1に、ラチェット部材24が回転可能に取り付けられている。そして、断面で示されている図2から分かるように、このラチェット部材24には、外周面にラチェット歯が2段に形成されていて、支持板6側の1段目のラチェット歯には、上記の折曲部6nの爪部6n−1が係合し、シャッタ地板1側の2段目のラチェット歯には、爪部6n−2が係合するようになっているが、1段目のラチェット歯と2段目のラチェット歯は、半ピッチだけ位相をずらせて形成されているため、それらの爪部6n−1,6n−2は、交互に各々のラチェット歯に係合するようになっている。
【0039】
また、図2に示されているように、ラチェット部材24と後羽根用駆動部材22との間には周知の後羽根用駆動ばね25が掛けられていて、図1において、ラチェット部材24は反時計方向へ回転し、後羽根用駆動部材22は時計方向へ回転するように付勢されている。しかしながら、ラチェット部材24は、製作時などにおいて後羽根用駆動ばね25の付勢力を調整するときに回転させるものであるから、カメラを使用するときには、2段に形成されているラチェット歯のいずれか一方が、常に二つの爪部6n−1,6n−2のいずれかに係合していて、回転させられることはない。
【0040】
シャッタ地板1の軸1hには、合成樹脂製のセット部材26が回転可能に取り付けられている。このセット部材26は、図示していない復帰ばねの付勢力によって、図1において反時計方向へ回転するように付勢されているが、図1は、その回転を、図示していないストッパによって阻止されている状態を示したものである。そこで、後述の作動説明においては、セット部材26のこの位置を、初期位置ということにする。そして、このセット部材26は、押動部26a,26bと被押動部26cとを有していて、図1において時計方向へ回転させられたとき、押動部26aが先羽根用駆動部材19の被押動部19aを押し、押動部26bが後羽根用駆動部材22のローラー22aを押すようになっている。
【0041】
最後に、各々の羽根室に配置されている先羽根と後羽根を説明する。本実施例の先羽根と後羽根は、例えば、特開2002−148679号公報などで周知のように、全く同じ構成をしている。そして、シャッタ地板1に取り付けるときは、後羽根は先羽根を裏返した状態にして取り付けている。そして、図1において、それらの構成を全て示そうとすると、図面が非常に見にくくなるし、それらの構成自体は、本発明とは直接関係がない。そのため、図1においては、先羽根の図示を省略し、後羽根については、開口部1aから見える範囲内で示している。そこで、ここでは、図1を用いて、後羽根の構成から順に、それらの構成を説明する。
【0042】
本実施例の後羽根は、軸1gに設けられた上記の軸部1g−2に対し一端を回転可能に取り付けられたアーム27と、軸1jに対し一端を回転可能に取り付けられたアーム28と、それらのアーム27,28の両方に対しそれらの先端に向けて順に枢支された4枚の羽根29,30,31,32とで構成されている。そして、二つのアーム27,28は、4枚の羽根29,30,31,32よりもシャッタ地板1側に配置されている。また、アーム27に形成されている図示していない周知の孔には、上記の後羽根用駆動部材22の駆動ピン22bが嵌合している。そのため、この後羽根は、図1の状態から後羽根用駆動部材22が反時計方向へ回転すると、4枚の羽根29,30,31,32が相互の重なり量を大きくしながら開口部1aの上方へ作動し、重畳状態となって開口部1aの上方に格納されるようになっている。
【0043】
他方、図示していない先羽根は、上記の後羽根と全く同じ構成をしているが、後羽根を裏返した状態、即ち、図1の縦方向に180度回転させ、二つのアームが4枚の羽根よりも補助地板3側になる状態にし、二つのアームの一端が、軸1fの軸部1f−2と軸1iに対して、回転可能に取り付けられている。また、軸部1f−2に取り付けられている方のアームに形成されている周知の孔には、上記の先羽根用駆動部材19の駆動ピン19bが嵌合している。そして、図示していないこの先羽根は、図1の状態においては、4枚の羽根が重畳状態になって開口部1aの下方に格納されているが、先羽根用駆動部材19が反時計方向へ回転すると、4枚の羽根は相互の重なり量を少なくしながら上方へ作動し、展開状態になって開口部1aを覆うようになっている。
【0044】
次に、このように構成されている本実施例の作動を説明する。図1は、露光作動終了直後の状態を示している。そのため、先羽根用駆動部材19は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、駆動ピン19bを緩衝部材4に当接させて停止させられた状態を維持している。そして、このとき、図示していない先羽根の4枚の羽根は、相互の重なり量を最大にした重畳状態にされて、開口部1aの下方位置に格納されている。他方、後羽根用駆動部材22は、後羽根用駆動ばね25の付勢力によって時計方向へ回転させられ、駆動ピン22bを緩衝部材5に当接させて停止させられた状態を維持している。そして、後羽根の4枚の羽根29,30,31,32は、相互の重なり量を最小にした展開状態にされ、開口部1aを覆っている。
【0045】
この図1の状態からセット作動が行われるが、そのセット作動は、図示していないカメラ本体側の部材がセット部材26の被押動部26cを押し、図示していない復帰ばねの付勢力に抗してセット部材26を時計方向へ回転させることによって開始される。そして、そのセット作動において、セット部材26は、先ず、押動部26aが先羽根用駆動部材19の被押動部19aを押すことによって、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して先羽根用駆動部材19を反時計方向へ回転させていく。そのため、図示していない先羽根の4枚の羽根は、相互の重なり量を少なくしながら上方へ作動していく。
【0046】
そして、先羽根の4枚の羽根のうち二つのアームの最先端に枢支されているスリット形成羽根が、後羽根のスリット形成羽根である羽根32に対して所定量だけ重なると、セット部材26は、押動部26bによってローラー22aを押し始め、後羽根用駆動ばね25の付勢力に抗して後羽根用駆動部材22を反時計方向へ回転させるようになる。そのため、後羽根用駆動部材22の駆動ピン22bがアーム27を反時計方向へ回転させので、後羽根の4枚の羽根29,30,31,32は、相互の重なり量を大きくしながら、図示していない先羽根の4枚の羽根と共に上方へ作動していく。
【0047】
このようにして、先羽根用駆動部材19と後羽根用駆動部材22とが、共に反時計方向へ回転されてゆき、後羽根の4枚の羽根29,30,31,32が開口部1aの上方へ退き、図示していない先羽根の4枚の羽根が開口部1aを覆い終わると、その直後に、二つの駆動部材19,22に取り付けられている鉄片部材22,23が、二つの電磁石9,10の鉄芯部材9a,10aに接触するようになる。そして、その段階になると、セット部材26は、回転を停止させられ、次の撮影が行なわれるまでは初期位置に復帰せず、その状態を維持させられる。その状態が、セット完了状態、即ち次の撮影待機状態であり、このとき、後羽根の4枚の羽根29,30,31,32は、重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納され、図示していない先羽根の4枚の羽根は、展開状態となって開口部1aを覆っていることになる。
【0048】
次の撮影に際して、カメラのレリーズボタンを押すと、先ず、リード線15,16,17,18を介して、二つの電磁石9,10のコイル9c,10cに通電され、鉄芯部材9a,10aが鉄片部材20,23を吸着保持する。次に、図示していないカメラ本体側の部材が、セット部材26の被押動部26cから退いていくので、セット部材26は、図示していない復帰ばねの付勢力によって反時計方向へ回転し、初期位置へ復帰する。
【0049】
その後、最初に先羽根用電磁石9のコイル9cに対する通電が断たれ、所定時間後に後羽根用電磁石10のコイル10cに対する通電が断たれるため、先羽根用駆動部材19は、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力により、また、後羽根用駆動部材22は、後羽根用駆動ばね22の付勢力によって、相次いで時計方向へ急速に回転させられる。それによって、駆動ピン19b,22bが、先羽根と後羽根のアームを時計方向へ回転させるので、図示していない先羽根のスリット形成羽根と後羽根のスリット形成羽根32とで形成されるスリットにより、結像面に露光が行なわれていくが、その過程で、先羽根の4枚の羽根は、相互の重なり量を大きくしてゆき、後羽根の4枚の羽根は、相互の重なり量を少なくしていく。
【0050】
そして、先に露光作動を開始した先羽根用駆動部材19は、図示していない4枚の羽根が開口部1aの下辺から下方へ退いた直後に、駆動ピン19bが緩衝部材4に当接することによって停止させられる。他方、先羽根用駆動部材19よりも遅れて露光作動を開始した後羽根用駆動部材22は、後羽根のスリット形成羽根32の下方の縁が露光開口1aの下辺よりも下方に達した直後に、駆動ピン22bが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。それにより、図示していない先羽根の4枚の羽根は、開口部1aの下方で重畳状態になり、後羽根の4枚の羽根29,30,31,32は、開口部1aを覆った展開状態になる。
【0051】
図1は、このようにして露光作動が終了した状態を示したものであるが、本実施例のフォーカルプレンシャッタがデジタルカメラに採用された場合には、この後、上記の露光作動で撮像素子に蓄積されている電荷を、撮像情報として記憶装置に記憶させることによって、撮影が終了したことになる。従って、上記のセット作動は、その後に行われることになる。
【0052】
尚、本実施例は、二つのシャッタ羽根を備えたダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものであるが、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、一つのシャッタ羽根を備えたダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタとして構成してもよい。そのような構成は、例えば、本実施例における、先羽根用電磁石9,プリント配線板11,先羽根用駆動部材19,ラチェット部材21,図示していない先羽根用駆動ばね,図示していない先羽根などの先羽根系にのみ用いられる部材を取り外すと共に、それに伴って、シャッタ地板1や支持板6などの形状を一部変形させることによって得ることが可能になる。そして、そのように構成されたフォーカルプレンシャッタは、周知のように、デジタルカメラにだけ採用可能になる。
【符号の説明】
【0053】
1 シャッタ地板
1a 開口部
1b,1c,3c 長孔
1d,1e 柱
1f,1g,1h,1i,1j 軸
1f−1,1g−1,1h−1 小径部
1f−2,1g−2 軸部
2 中間板
3 補助地板
4,5 緩衝部材
6 支持板
6a,6b,6c,6d,6e 孔
6f,6g,6h,6i,6j,6k,6m,6n 折曲部
6n−1,6n−2 爪部
7,8 ねじ
9 先羽根用電磁石
9a,10a 鉄芯部材
9b,10b ボビン
9c,10c コイル
9d,9e,10d,10e 端子ピン
10 後羽根用電磁石
11,12 プリント配線板
13,14 コンデンサ
15,16,17,18 リード線
19 先羽根用駆動部材
19a,26c 被押動部
19b,22b 駆動ピン
19c,22c 取付部
20,23 鉄片部材
21,24 ラチェット部材
22 後羽根用駆動部材
22a ローラー
25 後羽根用駆動ばね
26 セット部材
26a,26b 押動部
27,28 アーム
29,30,31 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠損部を有していてシャッタ地板に対して板面が平行になるように取り付けられている支持板と、前記シャッタ地板と前記支持板との間において前記シャッタ地板に立設された軸に対して回転可能に取り付けられており撮影時には撮影作動開始位置から駆動ばねの付勢力によって回転されシャッタ羽根を作動させる駆動部材と、ボビンに巻回されその両端を該ボビンに設けられていて前記欠損部に挿入した二つの端子ピンに巻き付けられているコイルと該コイルへの通電によって励磁される鉄芯部材とを有していて前記シャッタ地板と前記支持板との間において前記支持板に取り付けられており撮影時には該鉄芯部材が励磁されると前記駆動部材を吸着保持し所定時間後に消磁されると前記駆動部材を釈放して撮影作動開始位置からの回転を可能にする電磁石と、前記欠損部に配置されていて前記コイルの両端に半田付けされているプリント配線板と、を備えていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記駆動部材と、前記電磁石と、前記プリント配線板とが二つずつ備えられ、前記支持板には前記欠損部が二つ設けられていて、該二つのプリント配線板は、電気的に相互に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−114138(P2013−114138A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261678(P2011−261678)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】