説明

カメラ用レンズシャッタ

【課題】各々のモータによって作動されるシャッタ機構と光量制御機構とがユニット化されているにもかかわらず、少なくとも、撮影レンズに直面する領域が薄型化されるようにしたコンパクト化に適するカメラ用レンズシャッタを提供する。
【解決手段】被写体側(図面の手前側)に配置された主地板1と撮像素子側に配置された補助地板2との間に形成されている羽根室に、被写体側から順にシャッタ羽根7,シャッタ羽根8,絞り部材9が配置されており、絞り部材9には、露光開口より小径の開口部9bが形成されている。また、絞り部材9の背面側には、開口部9bを覆うようにしてNDフィルタ10が取り付けられている。この絞り部材9に代えて、相対的に回転する2枚の絞り羽根を配置し、シャッタ羽根8と、シャッタ羽根8側にある絞り羽根とは、その一部が常に重合状態となっていて、その重合領域が連続的に変化する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光開口の口径を規制するなどして、フィルムやCCDなどに達する被写体光の光量を制限することが可能な光量制御手段を備えているカメラ用レンズシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、カメラ用シャッタには、撮影レンズの近傍位置に配置されるレンズシャッタと、フィルムやCCDなどの直前位置に配置されるフォーカルプレンシャッタとがある。そのうちレンズシャッタは、円形の露光開口を開閉するようになっているが、通常は、複数枚のシャッタ羽根が露光開口の中心から開いてゆき、中心に向けて閉じていくようになっている。しかしながら、シャッタ羽根が1枚だけ設けられており、露光開口の所定の周縁部から開いてゆき、全開後、その周縁部に向けて閉じていくようにしたものもある。
【0003】
他方、カメラには、通常、撮影レンズの近傍位置に光量制御機構が配置されている。そして、そのような光量制御機構として一般に採用されているのは、絞り機構といわれているものであり、その中には、主に、二つのタイプのものがある。即ち、その一つは、複数枚の絞り羽根を同時に同じ方向へ回転させたり、同時に反対方向へ作動(回転作動を含む)させたりして、それらの羽根の協同によって略光軸を中心にして開口口径を連続的に変化させ得るようにしたものである。また、もう一つは、露光開口よりも直径の小さな円形の開口部を少なくとも一つ有した絞り部材を用意したり、該開口部を一つだけ有した複数の絞り部材を用意したりしておき、その開口部を撮影光路内に選択的に挿入し得るようにしたものである。
【0004】
また、光量制御機構としては、上記の絞り機構のほかに、NDフィルタを用いたものがある。そして、その場合には、所定の濃度を有する一つのNDフィルタを露光開口へ進退させるようにしたものと、濃度の異なる複数のNDフィルタを用意しておき、それらを露光開口へ選択的に進退させるようにしたものとがある。更に、このNDフィルタを用いたものの中には、上記の二つのタイプの絞り機構のうち、後者のタイプの絞り機構と組み合わせたものもある。そして、その一例としては、露光開口よりも直径の小さな円形の開口部をNDフィルタで覆うようにし、そのNDフィルタで覆われた開口部を露光開口へ進退させるようにしたものである。このような光量制御機構は、開口部を余り小さくしなくても被写体光量を大きく減じることができるので、回折の影響を受けないようにしたい場合に適している。
【0005】
以上の説明からも分かるように、レンズシャッタ機構と光量制御機構とは、いずれも、フィルムやCCDの直前位置には配置されず、撮影レンズの近傍位置に配置されるものである。そのため、それらの二つの機構を設けるカメラにおいては、従来、それらを一つのユニットとして製作するのが普通であった。そして、そのように構成した場合の一例が、特許文献1に記載されている。本発明は、このように、光量制御機構と共にユニット化されたカメラ用レンズシャッタに関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−117135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
周知のように、これまでも、レンズシャッタ機構だけをユニット化する場合には、二つの板部材の間に形成された羽根室内で、シャッタ羽根が作動するように構成している。また、光量制御機構のみをユニット化する場合にも、二つの板部材の間に形成された羽根室内で、絞り羽根等が作動するように構成している。従って、それらの二つの機構を単純にユニット化した場合には、四つの板部材によって二つの部屋を形成した構成になってしまう。ところが、そのような構成は、ユニットの低コスト化、薄型化(光軸に沿った方向の寸法を小さくすること)にとって好ましいことではない。そのため、上記の公報にも記載されているように、従来は、三つの板部材によって二つの部屋を形成するのが普通であった。
【0008】
ところで、この種のユニットはコンパクトカメラに用いられ、且つその殆どが電動化されるようになってきているが、最近では、デジタルカメラの急速な伸びに伴って、このようなユニットに対する低コスト化と小型化に対する要求が一段と大きくなっている。その中でも特に、この種のユニットが撮影レンズの近傍位置に配置されることから、撮影レンズと隣接する光軸を中心にした円形領域の薄型化が強く要求されている。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、各々のモータによって作動されるシャッタ機構と光量制御機構とがユニット化されているにもかかわらず、少なくとも、撮影レンズに直面する領域が薄型化されるようにしたコンパクト化に適するカメラ用レンズシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用レンズシャッタは、両者間に一つの羽根室を構成し両者の開口部を重ねて円形の露光開口を形成している二つの地板と、前記羽根室の中に配置されていて前記露光開口の開閉作動を行う少なくとも1枚のシャッタ羽根と、前記羽根室の外で前記地板の一方に取り付けられており出力部が前記羽根室の中へと延在していて前記シャッタ羽根に開閉作動を行わせる第1モータと、前記羽根室の中に配置されていて相対的に回転する2枚の絞り羽根で構成されており隣接している前記シャッタ羽根とは如何なる作動状態でもその一部が重なるようにして前記露光開口に対して進退作動を行い前記露光開口に進入させた状態においてはそれらの絞り羽根によって前記露光開口の面積を小さくする光量制御手段と、前記羽根室の外で前記地板の一方に取り付けられており出力部が前記羽根室の中へと延在していて前記光量制御手段に前記進退作動を行わせる第2モータと、を備えているようにする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、各々のモータによって作動されるシャッタ機構と光量制御機構とをユニット化する場合、従来のような二つの羽根室を仕切っていた板部材を不要にすることを可能としたため、撮影レンズに直面する領域を薄型化し、両者を接近して配置することが可能となり、カメラのコンパクト化に極めて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1の初期状態を被写体側から視た平面図である。
【図2】実施例1の羽根室内を被写体側から視た平面図であって、図1と同じ初期状態を示したものである。
【図3】図2と同じようにして視た実施例1の平面図であって、図2の状態から絞り部材の開口部を露光開口に挿入した状態を示したものである。
【図4】図2及び図3と同じようにして視た実施例1の平面図であって、図3の状態からシャッタ羽根が閉じた状態を示したものである。
【図5】図2〜図4と同じようにして視た実施例1の平面図であって、図2の状態からシャッタ羽根が閉じた状態を示したものである。
【図6】実施例2の初期状態を第1実施例の図2と同じようにして示した平面図である。
【図7】図6と同じようにして視た実施例2の平面図であって、図6の状態から絞り部材の開口部を露光開口に挿入した状態を示したものである。
【図8】図6及び図7と同じようにして視た実施例2の平面図であって、図7の状態からシャッタ羽根が閉じた状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。また、それらの実施例は、フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも用いることが可能な構成をしているが、説明の便宜上、デジタルカメラに適用した場合で説明する。尚、図1〜図5は実施例1を示したものであり、図6〜図8は実施例2を示したものであるが、いずれも被写体側から視た平面図であって、構成を説明する場合には、被写体側を表面側といい、撮像素子側を背面側ということにする。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を、図1〜図5を用いて説明する。尚、図1は、被写体側から視た本実施例の平面図であり、図2〜図5は、各作動状態における羽根室内を示した平面図である。そこで、先ず、図1及び図2を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例は、被写体側に配置された主地板1と撮像素子側に配置された補助地板2によって、それらの間に羽根室を形成している。二つの地板1,2は、いずれも合成樹脂製であって、殆ど同じ外形をしており、それらの略中央部に形成された円形の開口部1a,2aによって、露光開口(最大口径)を規制している。尚、図2においては、主地板1の主な外形を二点鎖線で示しているが、このことは、図3〜図5の場合も同じである。
【0015】
そこで、次に、主に図1を用いて主地板1の表面側の構成を説明する。先ず、開口部1aを囲むようにして、カメラに取り付けるときに用いる三つの取付部1b,1c,1dが設けられている。また、二つのモータ3,4が、主地板1と一体的に成形されているフック部1e,1fと、ビス5,6によって取り付けられている。これらのモータ3,4は、特開2000−60088号公報などに記載のムービングマグネット型モータと称されているモータであって、その構成は周知であるため具体的な構成説明は省略するが、永久磁石製の回転子は所定の角度範囲でしか回転せず、それらから径方向へ張り出した部位に設けられている駆動ピン3a,4aは、主地板1に形成された長孔1g,1hから羽根室内に挿入されている。
【0016】
次に、主地板1の背面側の構成を説明するが、先ず、図1に示されていて図2には示されていない部位について説明する。主地板1と補助地板2との相互の取付け方は、主地板1に設けられたフック部1iを補助地板2の縁に掛け、図示していないビスを、補助地板2の背面側から補助地板2の孔2b(図2参照)に挿入し、主地板1の取付部1jに螺合させている。そして、この取付部1jは、主地板1と補助地板2との間のスペーサの役目もしているが、このほかにも主地板1には専用のスペーサ1k,1m,1n,1pが設けられている。
【0017】
また、図2においては、主地板1の背面側に設けられている部位が、上記した駆動ピン3a,4aと共に、断面で示されている。そこで、先ず、主地板1には、後述する各作動部材のストッパ1q,1r,1s,1tが設けられている。また、主地板1の背面側には、軸1u,1v,1wが設けられている。そのうち、軸1uにはシャッタ羽根7が回転可能に取り付けられ、軸1vにはシャッタ羽根8が回転可能に取り付けられている。そして、それらのシャッタ羽根7,8は、シャッタ羽根7が被写体側となるように配置されていて、それらに形成されている長孔7a,8aには、周知のように上記の駆動ピン3aが嵌合している。
【0018】
もう一つの軸1wには、シャッタ羽根8よりも補助地板2側に配置されている絞り部材9が回転可能に取り付けられている。この絞り部材9は、長孔9aと、露光開口(開口部1a,2a)よりも直径の小さな円形の開口部9bを有していて、その長孔9aには上記の駆動ピン4aが嵌合している。また、この絞り部材9の背面側には、シート状のNDフィルタ10が取り付けられていて、開口部9bを覆っている。そして、そのNDフィルタ10は、絞り部材9の作動中に補助地板2に摺接しないように、補助地板2に形成された凹部2c内で作動するようになっている。
【0019】
次に、図2〜図5を用いて、本実施例の作動を説明するが、既に説明したように、デジタルカメラに採用されている場合で説明する。図2は本実施例の初期状態を示している。即ち、このデジタルカメラはノーマルオープンタイプであって、電源がオンのときは、絞り部材9が露光開口から退去しており、シャッタ羽根7,8は露光開口を全開にしている。そのため、撮像素子は被写体光にさらされており、被写体像をモニターで観察可能となっている。また、このとき、モータ3,4には通電されていないが、周知のモータ構成によって、モータ3の回転子は反時計方向へ回転する力が付与され、モータ4の回転子は時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、シャッタ羽根7,8はストッパ1q、1tに接触させられ、絞り部材9はストッパ1sに接触させられている。
【0020】
この状態においてシャッタボタンを押すと、被写体光の測定結果に基づいて、被写体の光量を減じて撮影するか減じないで撮影するかが決定される。そして、被写体の光量を減じて撮影することに決定された場合には、モータ4の回転子が反時計方向へ回転させられ、絞り部材9を時計方向へ回転させる。そして、絞り部材9は、シャッタ羽根8に対して摺動し、その先端がストッパ1rに当接して停止する。即ち、絞り部材9は、その作動開始から停止するまで、常にシャッタ羽根8との間に摺接関係が維持されている。このようにして停止した状態が図3に示されている。このとき、モータ4に対する通電は断たなくてもよいが、断ったとしても、周知のモータ構成によって、この状態は保たれる。尚、カメラの仕様によっては、カメラのレリーズによってこの状態が得られるのではなく、被写体光に応じて自動的に得られるようになっていても差し支えない。
【0021】
このようにして、図3の状態が得られると、次に、撮像装置に撮影開始の信号が与えられる。そして、所定の撮影時間が経過すると、制御回路からモータ3に通電され、回転子が時計方向へ回転させられる。そのため、シャッタ羽根7,8は相反する方向へ回転するが、このときシャッタ羽根8は絞り部材9に対して摺動することになる。そして、開口部9bを閉鎖した後、ストッパ1t,1qに当接して停止する。即ち、シャッタ羽根8は、その作動開始から停止するまで、常に絞り部材9との間に摺接関係が維持されている。そして、その停止状態が図4に示されている。
【0022】
その後、この閉鎖状態で撮像情報が記憶装置に転送されると、あい前後してモータ3,4に通電される。しかし、このときには上記の場合とは異なり、電流が逆方向へ供給されるため、シャッタ羽根7,8と絞り部材9は、いずれも上記とは反対方向へ回転させられるが、このときにもシャッタ羽根8と絞り部材9との摺接関係は、最初から最後まで維持される。そして、シャッタ羽根7,8はストッパ1q,1tに当接し、絞り部材9はストッパ1sに当接して停止させられ、その直後に、モータ3,4に対する通電が断たれて図2の初期状態に復帰する。
【0023】
また、被写体光が比較的明るくなくて、上記のように開口部9bを用いないで撮影する場合は、図2の状態において、モータ4に通電することなく撮影を開始する。そして、所定の撮影時間が経過すると、制御回路からモータ3に通電されて、回転子が時計方向へ回転させられる。そのため、シャッタ羽根7,8は相反する方向へ回転するが、このときシャッタ羽根8は絞り部材9に対して摺動する。そして、最後に、シャッタ羽根7,8は、既に説明したようにして、図5に示した状態で停止させられるが、その間、シャッタ羽根8と絞り部材9との摺接関係は終始維持されている。従って、説明するまでもなく、その後、シャッタ羽根7,8は図2の状態に復帰することになるが、そのときにも、シャッタ羽根8と絞り部材9との摺接関係は維持されている。
【0024】
このように、本実施例によれば、いかなる作動状態においても、シャッタ羽根8の一部と絞り部材9の一部が、常に接触状態を保ち、且つそれらの接触領域が連続的に変わっていくように構成されているので、シャッタ羽根8と絞り部材9が噛み合うようなことがなく、ましてや、シャッタ羽根8の被写体側に配置されていてシャッタ羽根8とその一部が常に接触しているシャッタ羽根7と絞り部材9とが噛み合ってしまうようなこともない。そのため、上記の公報に記載されているように、板部材(中間板)によって二つの羽根室に仕切る必要がないため、露光開口の近傍領域を、少なくともその板部材(中間板)の分だけ薄型化することが可能になるし、また、そのような板部材(中間板)が不要となることによって低コスト化も可能になる。
【0025】
尚、本実施例においては、絞り部材9に、露光開口よりも小さな口径の開口部9bを形成し、それをNDフィルタ10で覆うようにしているが、カメラの仕様によっては、NDフィルタ10を用いず開口部9bを形成しただけのものであっても構わない。また、その場合、絞り部材9に、露光開口よりも小さくて、異なる口径の複数の開口部を形成し、それをステッピングモータによって回転させて、所望の口径を選択できるようにしてもよい。また、その上に、それらの一部の開口部をNDフィルタで覆うようにしても差し支えないし、その場合において、NDフィルタで覆う開口部が複数あるときは、同じ大きさの開口部を濃度の異なるNDフィルタで覆っても構わない。
【0026】
更に、本実施例のように、絞り部材9に開口部9bを設けず、絞り部材9をNDフィルタのシート材料だけで製作するようにしても差し支えない。しかし、そのように構成した場合には、光量制御部材ではあるが、もはや、絞り部材とは言えない。また、周知の絞り機構には複数の絞り羽根によって口径を制御するようにしたものがあるが、その場合であっても、一番シャッタ羽根側にある絞り羽根が、如何なる作動状態にあっても常に隣接するシャッタ羽根との摺接関係を維持しているようにすれば、本発明の目的は達成することができる。また、本実施例においては2枚のシャッタ羽根7,8が採用されているが、シャッタ羽根が1枚のものであっても本発明を適用することが可能である。
【実施例2】
【0027】
次に、図6〜図8を用いて本発明の実施例2を説明する。本実施例が実施例1と大きく異なる点は、実施例1における絞り部材9の代わりに、絞り部材11と遮光部材12が設けられていることである。それに伴い、他の構成部材の形状にも若干異なる点が存在するが、実質的に同じ部材,部位には同じ符号を付け、それらについての詳細な説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0028】
そこで、先ず、図6を用いて本実施例に固有の構成を説明する。絞り部材11は、長孔11aと、露光開口よりも小さな口径の開口部11bとを有していて、軸1wに回転可能に取り付けられている。しかし、その開口部11bは、実施例1の開口部9bのように、NDフィルタ10で覆われていないので、補助地板2には、実施例1のような凹部2cが形成されていない。また、本実施例の絞り部材11は、実施例1の絞り部材9と、その外形形状が異なっているが、図6を見ただけではその差が分かりにくいので、後述の作動説明で分かるようにする。
【0029】
本実施例の主地板1には、羽根室側に軸1xが設けられている。また、絞り部材11より補助地板2側に配置されている遮光部材12が、その軸1xに回転可能に取り付けられている。そして、モータ4の駆動ピン4aは、絞り部材11の長孔11aと遮光部材12の長孔12aの両方に嵌合している。そのため、絞り部材11と遮光部材12とは、モータ4によって同時に回転させられるが、両者は、それらの長孔11a,12aから軸1w,1xまでの距離が異なるため、回転角度が異なるようになっている。
【0030】
次に、作動説明をするが、本実施例の場合もノーマルオープンタイプのデジタルカメラに採用されている場合で説明する。図6は本実施例の初期状態を示している。即ち、少なくとも電源がオンのときは、絞り部材11と遮光部材12が露光開口から退去しており、シャッタ羽根7,8は露光開口を全開にしている。そのため、撮像素子は被写体光にさらされており、被写体像をモニターで観察可能となっている。この状態においてシャッタボタンを押すと、被写体光の測定結果に基づいて、被写体の光量を減じて撮影するか減じないで撮影するかが決定される。そして、被写体の光量を減じないで撮影する場合は、シャッタ羽根7,8を作動させるだけであるから、第1実施例の場合と全く同じである。従って、その場合の説明は省略することにする。
【0031】
そこで、被写体の光量を減じて撮影することに決定された場合には、モータ4の回転子が反時計方向へ回転させられ、絞り部材11と遮光部材12を同時に時計方向へ回転させる。そして、絞り部材11は、シャッタ羽根8に対して摺動し、その先端がストッパ1rに当接して停止する。このようにして停止した状態が図7に示されているが、このとき、遮光部材12は、絞り部材11よりも作動角度が小さいので、その一部だけが露光開口部内に臨んだ状態となっている。このことから分かるように、本実施例の絞り部材11は、露光開口に開口部11bを臨ませてはいるが、第1実施例の絞り部材9のように、露光開口のその他の領域を完全に覆ってはおらず、その覆いきれなかった図7の左下の領域を遮光部材12が覆っている。
【0032】
このことは、本実施例の絞り部材11が、実施例1の絞り部材9よりも小さいことを意味しており、それによって、主地板1の直径を小さくし、ユニット全体の小型化が可能となっている。そのため、詳細に対比すれば分かるように、シャッタ羽根7,8の形状も僅かに変わっているが、モータ3,4は、その構成と、光軸中心に対するの取付位置を変えておらず、撮影レンズとの配置関係は、実施例1の場合と同一条件が得られるようになっている。しかしながら、撮影レンズとの関係でモータ3,4の配置位置を若干でも移動させることが可能であれば、更に小型化が可能となる。尚、この程度の小型化は、一見、たいしたものではないように思われるかも知れないが、実際のユニットの直径が30〜35mmの世界では、0.5〜1mmの小型化は極めて貴重である。
【0033】
このようにして、図7の状態が得られると、次に、撮像装置に撮影開始の信号が与えられ、所定の撮影時間経過後にはモータ3に通電され、回転子が時計方向へ回転させられる。そのため、シャッタ羽根7,8は相反する方向へ回転して、開口部11bを閉鎖した後、ストッパ1t,1qに当接して停止する。その停止状態が図8に示されている。その後、この閉鎖状態で撮像情報が記憶装置に転送されると、モータ3,4に対し逆方向への電流が供給され、シャッタ羽根7,8と、絞り部材11と、遮光部材12とは、いずれも上記とは反対方向へ回転させられる。そして、シャッタ羽根7,8は、ストッパ1q,1tに当接して停止させられ、絞り部材11と遮光部材12は、絞り部材11がストッパ1sに当接して停止させられる。また、その直後に、モータ3,4に対する通電が断たれて図6の初期状態に復帰する。
【0034】
以上のように、本実施例によれば、いかなる作動状態においても、シャッタ羽根8の一部と絞り部材11の一部が、常に接触状態を保ち、且つそれらの接触領域が連続的に変わっていくように構成されているため、上記の公報に記載されているような、二つの羽根室に仕切るための板部材(中間板)が不要となる。従って、本実施例によれば、少なくとも露光開口の近傍領域を、その分だけ薄型化することが可能になるし、また、そのような板部材(中間板)が不要となることによってコスト的に有利となるほか、実施例1の場合よりもユニットの平面面積を小型化することが可能になる。尚、本実施例においては、絞り部材11の開口部11bが、NDフィルタによってカバーされていないが、実施例1と同様にカバーするような構成にしても差し支えない。また、シャッタ羽根については、本実施例の構成に限定されない。
【0035】
尚、上記の各実施例においては、絞り部材9,11が露光開口から退去している状態を初期状態としたが、それらが露光開口に挿入されている状態を初期状態としても差し支えない。また、シャッタ羽根7,8は、カメラの不使用時においては閉鎖状態とし、電源をオンにすると全開状態となるようにしてもよく、そのようにすると、撮像素子の性能の劣化を防ぐことが可能になる。更に、フィルム使用のカメラに適用する場合は、撮影をしていないときには、電源のオン・オフに関係なくシャッタ羽根7,8を閉鎖状態にしておき、シャッタのレリーズによって、先ず光量制御機構を機能させてから、シャッタ羽根7,8の開閉作動を行わせるようにすればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 主地板
1a,2a,9b,11b 開口部
1b,1c,1d,1j 取付部
1e,1f,1i フック部
1g,1h,7a,8a,9a,11a,12a 長孔
1k,1m,1n,1p スペーサ
1q,1r,1s,1t ストッパ
1u,1v,1w,1x 軸
2 補助地板
2b 孔
2c 凹部
3,4 モータ
3a,4a 駆動ピン
5,6 ビス
7,8 シャッタ羽根
9,11 絞り部材
10 NDフィルタ
12 遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両者間に一つの羽根室を構成し両者の開口部を重ねて円形の露光開口を形成している二つの地板と、
前記羽根室の中に配置されていて前記露光開口の開閉作動を行う少なくとも1枚のシャッタ羽根と、
前記羽根室の外で前記地板の一方に取り付けられており出力部が前記羽根室の中へと延在していて前記シャッタ羽根に開閉作動を行わせる第1モータと、
前記羽根室の中に配置されていて相対的に回転する2枚の絞り羽根で構成されており隣接している前記シャッタ羽根とは如何なる作動状態でもその一部が重なるようにして前記露光開口に対して進退作動を行い前記露光開口に進入させた状態においてはそれらの絞り羽根によって前記露光開口の面積を小さくする光量制御手段と、
前記羽根室の外で前記地板の一方に取り付けられており出力部が前記羽根室の中へと延在していて前記光量制御手段に前記進退作動を行わせる第2モータと、
を備えていることを特徴とするカメラ用レンズシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−2919(P2010−2919A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190479(P2009−190479)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【分割の表示】特願2001−188381(P2001−188381)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】