説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】羽根駆動用のモータを取り付けている地板が厚くても、モータ取付部の光軸方向の寸法が大きくならず、しかも、羽根の作動が好適に行えるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】第1地板1の羽根室外の面に取り付けられているモータは、その第2固定子枠4の一部を、第1地板1の羽根室側の面まで、第1地板1の開口部1bに挿入しており、第2固定子枠4に形成されたレール状の突条4b,4cを羽根室内に臨ませている。また、回転子9と一体の出力ピン9d,9eも、開口部1bから羽根室内に臨ませている。第1地板1の羽根室側の面にも、突条が設けられているし、第2地板2の羽根室側の面にも、突条2d,2eをはじめとする突条が設けられており、2枚の絞り羽根10,11は、出力ピン9d,9eに駆動され、各々の突条の間でスムーズに作動するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根や絞り羽根などの羽根部材を往復作動させるカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を含む情報端末機器用のカメラや、コンパクトカメラに採用されている小型のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置は、各々羽根部材を有していて、それらをモータの回転子と一体の出力ピンによって往復作動させるように構成されている。そして、シャッタ装置の場合には、下記の特許文献1に記載されているように、シャッタ羽根を2枚として、それらを同時に相反する方向へ往復回転させるようにしたものが多いが、下記の特許文献2に記載されているように、それらを同時に相反する方向へ直線的に往復作動させるように構成したものもある。また、レンズ口径の極めて小さいカメラに採用されるシャッタ装置の場合には、下記の特許文献3に記載されているように、1枚のシャッタ羽根を往復回転させるように構成したものもある。
【0003】
また、絞り装置としては、下記の特許文献4に記載されているように、2枚の絞り羽根を同時に相反する方向へ直線的に往復作動させるように構成したものがある。そのため、特許文献2に記載のシャッタ装置を変形し、このような絞り装置として構成することも可能であり、そのことは、特許文献2にも記載されている。また、レンズ口径の比較的小さいカメラに採用されている最近の絞り装置としては、特許文献1,3に記載されているように、小さい円形の開口部を有する1枚の絞り羽根を往復回転させるように構成したものが多い。
【0004】
更に、最近のフィルタ装置としては、特許文献1に記載されているように、上記の円形の開口部を有した絞り羽根と同等の形状をしている部材に対し、その開口部の近傍位置にその開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けたものをフィルタ羽根としていて、そのフィルタ羽根を往復回転させるようにしたものが多くなっている。しかしながら、NDフィルタ板のみで製作したフィルタ羽根を往復回転させるようにすることも知られている。
【0005】
このような構成をした羽根駆動装置においては、通常、各羽根部材は、二つの地板の間に構成された羽根室内に配置されている。そして、羽根部材をスムーズに作動させるための手段として、二つの地板の羽根室側の面に、レールなどと称されている所定の長さの突条を形成し、その突条に羽根部材を摺接させるように構成することが知られている。そのように構成したもののうち、上記のように2枚の絞り羽根を直線的に往復作動させるようにした絞り装置の一例が特許文献4に記載されており、また、上記のように2枚のシャッタ羽根を相対的に往復回転させるようにしたシャッタ装置の一例が下記の特許文献5に記載されている。また、1枚のシャッタ羽根と1枚のフィルタ羽根とを実質的に1枚の羽根と同様にして往復回転させるようにしたシャッタ装置の一例が下記特許文献6に記載されている。
【0006】
また、各羽根部材を駆動するモータとしては、ムービングマグネット型モータなどといわれている電流制御式モータを用いる場合と、ステッピングモータを用いる場合が殆どであり、回転子を所定の角度範囲内でだけ往復回転させ、その回転子と一体的な出力ピンによって羽根部材を作動させるようにしている。そして、周知であるために、特許文献1,5には、概略的にしか記載されていないが、特許文献2,3,6には、上記の電流制御式モータの構成の一例が詳細に記載されている。そのうち、特許文献2に記載されているモータは、上記の出力ピンを二つ有しているものであり、特許文献3,6に記載されているモータは、出力ピンを一つだけ有しているものである。
【0007】
このように構成されている羽根駆動装置は、最近では、低コスト化,軽量化の観点から、構成部材を可能な限り合成樹脂製にしている。そのため、地板の場合も、殆どが合成樹脂製になっている。ところが、地板には、モータや羽根部材などを取り付ける場合、所定の剛性を必要とすることから、合成樹脂製にした場合には、金属製のものに比較すると、厚さ(光軸と平行な方向の寸法)をかなり厚くせざるを得ない。他方、上記のモータは、地板の羽根室外の面に取り付けられているため、地板が厚くなると、その取付部での高さ(光軸と平行な方向の寸法)が益々高くなってしまい、カメラの設計に大きな制約を与えてしまうことになる。そこで、そのような制約を緩和するために、出願人は、地板にモータ設置用の開口部を形成し、モータの固定子の一部を地板の羽根室側の面まで挿入してしまうようにした構成を提案している。本発明は、そのような構成のカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0008】
【特許文献1】特開2002−139765号公報
【特許文献2】特開2002−315294号公報
【特許文献3】特開2000−292827号公報
【特許文献4】実開平2−140527号公報
【特許文献5】特開2002−107793号公報
【特許文献6】特開2004−212526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、モータの出力ピンを羽根部材に連結させるように構成した羽根駆動装置の場合において、二つの地板の羽根室側の面に、上記のような羽根部材の摺接する所定の長さの突条を形成しようとすると、モータを取り付ける方の地板については、モータ配置箇所とは反対側の羽根室側の領域にも形成することになるのが普通となる。しかしながら、モータ取付部での装置の高さを低くするために、上記のように、その地板にモータ設置用の開口部を形成し、モータの固定子の一部を地板の羽根室側の面まで挿入してしまうように構成すると、その突条を形成する領域がなくなってしまうことになる。
【0010】
そこで、その突条に代わるものとして、モータ設置用の開口部の近傍位置に複数の突起を形成することが考えられるが、そのような構成にすると、その突起の中には、羽根部材の作動中に一時的にしか接しないものがでてくるため、作動中に羽根部材の端面が、その突起に衝突してしまう現象が生じてしまい、羽根部材の作動が安定しなくなってしまうという問題点がある。また、そのような現象が生じないようにするために、モータ取付領域と羽根部材の作動領域が重ならないように構成することが考えられるが、そのようにすると、出力ピンを回転子の回転中心から遠くへ離した構成にしなくてはならなくなるし、地板の面積が必然的に大きくなって、全体的に装置の平面形状が大きくなってしまうという問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、モータを取り付けている地板にモータ設置用の開口部を形成し、モータの固定子の一部をその地板の羽根室側の面まで挿入させるように構成した場合において、羽根部材が、突条によって好適に往復作動を行えるようにした小型のカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用開口部の近傍位置にモータ設置用開口部を有している第1地板と、前記第1地板との間に羽根室を構成している第2地板と、前記第1地板の羽根室外の面に取り付けられていて固定子枠の一部を略前記第1地板の羽根室側の面まで前記モータ設置用開口部に挿入しており回転子と一体的に所定の角度範囲で往復回転する少なくとも一つの出力ピンと該固定子枠に形成された所定数の突条とを羽根室内に臨ませているモータと、前記羽根室内に配置されていて前記出力ピンに連結されており前記回転子が回転したとき前記モータの突条に摺接して撮影光路用開口部から退いた位置と進入した位置との間で往復作動させられる少なくとも1枚の羽根部材と、を備えているようにする。
【0013】
その場合、前記第1地板の羽根室側の面にも所定数の突条が形成されていて、その突条と対向する前記第2地板の羽根室側の面にも所定数の突条が形成されていると共に前記モータ設置用開口部と対向する面にも所定数の突条が形成されているようにしてもよい。
【0014】
また、前記羽根部材は、前記出力ピンによって略直線的に作動させられ、前記各突条は、その作動方向に沿って略直線的に形成されているようにしてもよいし、前記出力ピンによって回転させられ、前記各突条は前記羽根部材の回転軸を中心にした円弧状に形成されているようにしてもよい。更に、前記モータは、二つの固定子枠によって永久磁石製の回転子を軸受けし、それらの軸受け部を囲むようにコイルを巻回しており、それらの固定子枠の一方を、前記第1地板に取り付けると共に前記モータ設置用開口部に挿入しているようにしても差し支えない。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、回転子と一体の出力ピンによって羽根部材を直接作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、モータを取り付けている地板にモータ設置用の開口部を形成し、モータの固定子の一部をその地板の羽根室側の面まで挿入させるように構成しているにもかかわらず、羽根室内に臨んでいる固定子の面に、羽根部材が摺接する所定の長さを有する所定数の突条を形成しているので、装置の小型化が可能であるのみならず、羽根部材を好適に作動させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、二つの実施例によって説明する。尚、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、銀塩フィルムカメラにもデジタルカメラ(情報端末機器用カメラやビデオカメラを含む)にも採用することが可能である。また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、単体のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置として構成してもよいし、それらの二つ以上を一つのユニットとして構成しても構わない。更に、上記したように、羽根部材は、1枚であっても2枚であってもよく、また、直線的に作動するものであっても回転するものであっても差し支えない。しかしながら、それらの態様の全てを説明する必要はないと考えるので、実施例1では、2枚の羽根を相対的且つ直線的に作動させるようにしたビデオカメラ用の絞り装置について説明し、実施例2では、2枚の羽根を相対的に回転させるようにしたデジタルスチルカメラ用のシャッタ装置について説明することにし、その他の態様については、随時、言及することにする。
【実施例1】
【0017】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。上記のように、本実施例は、ビデオカメラ用の絞り装置として構成したものであり、図1は、その絞り装置の断面図である。また、図2及び図3は、図1の下方から羽根室内を見た平面図であって、図2は、2枚の絞り羽根が撮影光路用の開口部を閉じている状態を示したものであり、図3は、2枚の絞り羽根が撮影光路用の開口部を全開にしている状態を示したものである。尚、図1の断面図は、図2のモータ設置部近傍を切断して示したものであるが、主に各部材の重なり関係が理解し易いようにして示したものである。また、図2及び図3は、羽根室内の構成を分かり易くするために、第1地板との間に羽根室を構成している第2地板の外形を二点鎖線で示してある。
【0018】
そこで、先ず、本実施例の構成を説明する。第1地板1は、合成樹脂製であって、図1から分かるように、後述のモータなどを取り付けたり、カメラ本体への取付部(図示せず)を有する部材であることから、比較的厚さの厚い部材にしてある。この第1地板1の平面形状は、図2に示されているような形状をしており、その略中央部に、円形をした撮影光路用の開口部1aを形成している。また、その開口部1aの上方位置には、モータ設置用の開口部1bが形成されているが、この開口部1bは、本実施例の場合、中央の円形部から左右に羽を広げたような形状であって、あたかも蝶ネクタイの結び目のような形状をしている。
【0019】
第1地板1との間に羽根室を構成している第2地板2は、第1地板1と同様に合成樹脂製であるが、主に、羽根室を覆う役目と、後述する突条を形成しているだけであるため、全体として第1地板1よりもかなり薄い部材となっている。そのため、本実施例の態様であれば、金属製にすることも考えられる。この第2地板2は、図2において二点鎖線で示してあるように、その外形は、第1地板1と略同じであって、その略中央部に形成された円形の開口部2aは、上記の開口部1aよりも直径が大きい。また、この第2地板2には、円弧状をした二つの長孔2b,2cが形成されている。更に、このほかにも、図示していない円形状をした三つの孔が形成されているが、そのことについては後述する。
【0020】
そこで、このような第2地板2の取付構成を説明する。第1地板1の外周部には、その全周にわたって城壁のように壁1cが形成されている。また、その外側には、可撓性を有する二つのフック部1d,1eが設けられている。他方、第1地板1の羽根室外の面に取り付けられている後述の第2固定子枠4にも可撓性を有するフック部4aが設けられている。そして、第2地板2は、その外周部を第1地板1の壁1cの頂面に載置され、上記の三つのフック部1d,1e,4aによって掛け止めされている。
【0021】
次に、本実施例のモータの構成と、第1地板1への取付構成を説明する。モータの固定子は、図1に示されているように、合成樹脂製の第1固定子枠3と、合成樹脂製の第2固定子枠4と、コイル5,6と、ヨーク7とで構成されており、第1地板1に対しては、第2固定子枠4に設けられている上記のフック部4aを、第1地板1を挟んで第2地板2に掛けた後、ビス8によって第1地板1に螺着されている。第1固定子枠3はコップ伏をしていて、その開放端を第2固定子枠4で塞ぎ、その両者に図面上では区別して示されていない二つのコイル5,6を巻回した後、第1固定子枠3の外側に、円筒形をしたヨーク7を嵌合させている。そして、第2地板2の羽根室側の面には、二つの突条4b,4cが、同じ高さで平行に形成されている。
【0022】
モータの回転子9は、第1固定子枠3に収容されていて、第1固定子枠3と第2固定子枠4によって軸受けされている。そのため、二つのコイル5,6は、それらの軸受け部を囲むようにして巻回されていることになる。この回転子9は、永久磁石製の回転子であるが、回転軸9aが合成樹脂製となっていて、その回転軸9aの下端に近いところから相反する径方向に延伸している二つのアーム9b,9cの先端には、回転軸9aと平行になるようにして出力ピン9d,9eが形成されている。尚、この種のモータには、回転軸9a、アーム9b,9c、出力ピン9d,9eを含め、回転子9の全体を、永久磁石製としたものも知られている。
【0023】
そして、第1地板1のモータ設置用の開口部1bには、第2固定子枠4の一部が、略第1地板1の羽根室側の面まで挿入されている。また、回転子9のアーム9b,9cも、その開口部1bに挿入されていて、出力ピン9d,9eを羽根室内に臨ませている。この種の構成のモータは、コイル5,6の巻回構成から、他の構成のモータよりも、どうしても、図1における上下寸法(光軸と平行な方向の寸法)が大きくなってしまうが、本実施例の場合には、このように設置しているので、ユニット全体としては、その上下寸法が小さくなっている。尚、本実施例の場合には、回転子9のアーム9b,9cが、開口部1bに挿入されているが、モータの構成によっては、特許文献2に記載されている構成のように、第1地板1の上方へ配置されることもある。そのため、そのような構成にした場合には、本実施例のような一連の大きな開口部1bとすることなく、第2固定子枠4を挿入する開口部と、出力ピン9d,9eを挿入する円弧状の長孔とを別々に形成してもよいことになる。
【0024】
次に、羽根室内の構成を説明する。第1地板1の羽根室側の面には、三つのガイドピン1f,1g,1hが立設されていて、それらの先端を、第2地板2に形成された符号を付けていない三つの円形の孔に嵌合させている。更に、第1地板1の羽根室側の面には、羽根室内に臨まされた上記の二つの突条4b,4cと同様に、二つの突条1i,1jが、相互に同じ高さで平行に形成されている。また、第2地板2の羽根室側の面には、上記の突条4b,4cと対向するところに、所定の長さをした二つの突条2d,2e(図1参照)が、相互に同じ高さで平行に形成されており、上記の突条1i,1jと対向するところに、所定の長さをした図示していない二つの突条が、相互に同じ高さで平行に形成されている。尚、突条の羽根室内での高さは、周知のように、突条4b,4cよりも突条1i,1jの方が、後述の絞り羽根の略1枚の厚さ分だけ高く形成されている。また、同様に、突条1i,1jに対向して第2地板2に形成されている二つの突条よりも突条2d,2eの方が高く形成されている。更に、本実施例の場合には、突条を二つずつ形成しているが、三つずつ以上であってもよいし、場合によっては一つでもよい場合がある。また、第1地板1側の突条と第2地板2側の突条とで、長さや数を一致させる必要もない。
【0025】
羽根室内には、U字形をした2枚の絞り羽根10,11が、向きを逆にして重ねて配置されている。そして、第1地板1側に配置されている絞り羽根10は、略中央に開口規制縁10aを形成し、その両側に直線状の二つの長孔10b,10cを相互に平行に形成しており、長孔10cの右上方位置には、その長孔10cの長さ方向に垂直となるようにして長孔10dが形成されている。そして、長孔10bには上記のガイドピン1fが挿入され、長孔10cには上記のガイドピン1g,1hが挿入されている。また、長孔10dには回転子9と一体の出力ピン9dが挿入されており、その出力ピン9dの先端は、第2地板2の円弧状の長孔2bに挿入されている。
【0026】
他方、第2地板2側に配置されている絞り羽根11は、略中央に開口規制縁11aを形成し、その両側に直線状の二つの長孔11b,11cを相互に平行に形成しており、長孔11bの上方位置には、その長孔11bの長さ方向に直交するようにして長孔11dが形成されている。そして、長孔11bには上記のガイドピン1fが挿入され、長孔11cには上記のガイドピン1g,1hが挿入されている。また、長孔11dには回転子9と一体の出力ピン9eが挿入されており、その出力ピン9eの先端は、第2地板2の円弧状の長孔2cに挿入されている。
【0027】
次に、本実施例の作動を説明する。本実施例の絞り装置は、上記したように、ビデオカメラに採用されるものであって、図2は撮影前の状態を示している。このとき、撮影光路用の開口部1aは2枚の絞り羽根10,11によって閉鎖されている。そのため、撮影レンズに入射した光は、固体撮像素子には届かないようにされており、それによって、固体撮像素子の性能の劣化が防止されるようになっている。他方、このとき、モータのコイル5,6には通電されていないが、回転子9は、図示していない周知の手段によって、この静止状態を維持されるようになっている。
【0028】
撮影に先立って、カメラの電源スイッチをオンにすると、測光装置の測定結果に応じてモータのコイル5,6に対して、相互に逆方向への電流が供給される。即ち、図2においては、回転子9が明示されていないが、一方のコイル5には、図2において回転子9を反時計方向へ回転させる力の生じる方向へ電流が供給され、他方のコイル6には、逆に、回転子9を時計方向へ回転させる力の生じる方向へ電流が供給されるようになっている。そして、当初は、当然のことながら、コイル5に供給する電流の方が大きいため、回転子9は反時計方向へ回転させられるが、それらの電流は、図示していないサーボ回路を介して平衡させられていく。
【0029】
このように、図2において、回転子9が反時計方向へ回転させられていくと、絞り羽根10は、出力ピン9dによって上方へ作動させられるが、その作動は、ガイドピン1f,1g,1hに案内され、且つ第2固定子枠4の突条4b,4cと第2地板2の突条2d,2eとに摺接して、直線的に行われる。他方、もう一方の絞り羽根11は、出力ピン9eによって下方へ作動させられるが、その作動は、ガイドピン1f,1g,1hに案内され、且つ第1地板1の突条1i,1jと第2地板2の図示していない二つの突条とに摺接して、直線的に行われる。そして、コイル5,6に供給される電流が平衡状態になると、回転子9は停止し、2枚の絞り羽根10,11の開口規制縁10a,11aによって絞り開口が決まり撮影が行われる。
【0030】
また、ビデオカメラの場合には、撮影中に被写界光の強さが変化してしまうのが普通である。そのため、被写界光が弱くなった場合には、回転子9を、反時計方向へ回転させて絞り開口を大きくし、強くなった場合には、時計方向へ回転させて絞り開口を小さくするというように、絞り羽根10,11は、その都度、作動をし続けることになるが、その作動は、常に、第1地板1,第2地板2,第2固定子枠4に形成された突条に摺接して行われ、細かい動きであってもスムーズに行われるようになっている。図3には、そのようにして、開口部1aを全開にしたときの最大絞り口径の制御状態を示してある。
【0031】
そして、撮影が終了し、カメラの電源スイッチがオフになると、遅延回路によって、モータの駆動回路は所定の時間だけ働くようになっており、その間に、回転子9は、時計方向へ回転され、絞り羽根10,11を図2の状態に復帰させて静止する。尚、このように、本実施例の場合には、カメラの電源スイッチをオフにしたときには、開口1aを必ず閉じるようにしているが、カメラの仕様によっては、そのようにしない場合のあることは言うまでもない。
【0032】
上記においては、本実施例の絞り装置が、ビデオカメラ用の絞り装置であることを前提にして説明した。しかしながら、本実施例の構成は、その一部を変形することによって、他の羽根駆動装置とすることも可能である。そのため、ここで、それらの羽根駆動装置について説明しておく。先ず、本実施例では二つのコイル5,6を備えているが、それらを一つにし、絞り羽根10,11の形状を変えずに、そのままシャッタ羽根とする。そして、図2に示された開口部1aの閉じ状態を初期状態とし、そのコイルに対して一方方向へ電流を供給したときには、回転子9が反時計方向へ回転して図3に示した全開状態になり、その後、コイルに対して反対方向へ電流を供給したときに、図2の状態に復帰するようにすれば、銀塩フィルムを使用するカメラ用のシャッタ装置になる。また、それと同じ構成であっても、図3に示された開口部1aの全開状態を初期状態とし、そのコイルに対して一方方向へ電流を供給したときには、回転子9が時計方向へ回転して図2の閉じ状態になり、その後、コイルに対して反対方向へ電流を供給したとき、図3の全開状態に復帰するようにすれば、デジタルカメラ用のシャッタ装置になる。更に、それらのシャッタ装置の場合には、絞り機能を有するようにするために、全開状態にしないで撮影を行うことの可能なシャッタ装置とすることも可能である。
【0033】
また、そのような構成のシャッタ装置において、アーム9c,出力ピン9eと、絞り羽根11に相当するシャッタ羽根を省くと共に、絞り羽根10に相当するシャッタ羽根を、図2の状態において開口部1aを完全に閉じる形状に変形させれば、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とすることができ、その初期状態を閉じ状態とするか全開状態とするかによって、銀塩フィルムを使用するカメラにもデジタルカメラにも採用することが可能になる。更に、その場合の1枚のシャッタ羽根を、NDフィルタ板だけで形成すれば、1枚のフィルタ羽根を備えたフィルタ装置とすることも可能になる。更にまた、その場合の1枚のシャッタ羽根を、円形の開口部を有する絞り羽根として形成すれば、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とすることも可能であるし、その円形の開口部をNDフィルタ板で覆うようにすれば、上記の構成とは異なる構成の1枚のフィルタ羽根を備えたフィルタ装置とすることが可能になる。
【実施例2】
【0034】
次に、図4及び図5を用いて実施例2を説明する。上記したように、本実施例は、デジタルスチルカメラ用のシャッタ装置として構成したものである。そして、図4及び図5は、いずれも被写体側から見た平面図であって、図4は、2枚のシャッタ羽根が撮影光路用の開口部を閉じている状態を示したものであり、図5は、2枚のシャッタ羽根が撮影光路用の開口部を全開にしている状態を示したものである。尚、図4は、羽根室内の構成を分かり易くするために、第2地板22の一部を破断して示している。
【0035】
先ず、本実施例の構成を説明する。第1地板21と第2地板22は、いずれも合成樹脂製であって略同じ外形をしており、両者の間に羽根室を構成している。これらの地板21,22は、その略中央部に、円形をした撮影光路用の開口部21a,22aを、それらが重なるように形成しており、その右側のやや上方位置には、短くて幅の広い円弧状の長孔21b,22bを、それらが重なるようにして形成している。また、第1地板21には、長孔21bの上方位置に、円形をしたモータ設置用の開口部21cが形成されている。そして、これらの地板21,22は、実施例1の場合と同様に、第1地板21は厚い部材であり、第2地板22は薄い部材である。また、第2地板22は、その縁を、第1地板21のフック部21dに掛け、二つのビス23,24によって第1地板21に取り付けられている。
【0036】
本実施例のモータは、実施例1のモータのように具体的な構成を示していないが、周知の構成をしたステップモータであって、第1地板21の羽根室外の面に、適宜な手段によって取り付けられていて、その固定子枠25の一部は、第1地板21の略羽根室側の面まで、上記のモータ設置用の開口部21cに挿入されている。そして、その固定子枠25の羽根室側の面には、軸25aと突条25bが形成されていて、それらを羽根室内に臨ませている。そのうち、軸25aは、その先端を、第2地板22に形成された符号を付けていない孔に挿入しており、突条25bは、軸25aを中心にした円弧状に形成されている。また、明示されていないが、モータの回転子は、固定子枠25に回転可能に収容されており、その回転子と一体の出力ピン26を固定子枠25外で、所定の回転角度内において往復回転させ得るようになっている。そして、その出力ピン26は、第1地板21の長孔21bを貫通し、その先端を第2地板22の長孔22bに挿入している。
【0037】
第1地板21の羽根室側の面には、四つのストッパピン21e,21f,21g,21hと一つの軸21iが立設されていて、それらの先端を、第2地板22に形成された符号を付けていない夫々の孔に嵌合させている。また、第1地板21の羽根室側の面には、三つの突条21j,21k,21mが形成されている。それらのうち、突条21jは、軸25aを中心にした円弧状をしていて、羽根室内での高さが、上記の突条25bと同じになるように形成されている。また、突条21k,21mは、軸21iを中心にした円弧状をしており、その高さは共に同じであるが、上記の突条21jよりは、後述するシャッタ羽根の略1枚分の厚さだけ、高くなるように形成されている。
【0038】
第2地板22の羽根室側の面には、四つの突条22c,22d,22e,22fが形成されている。それらのうち、突条22c,22dは、羽根室内での高さは同じであって軸25aを中心にした円弧状をしており、突条22cは、上記の突条25bに対向するように形成され、突条22dは、上記の突条21jに対向するように形成されている。他方、突条22e,22fは、同じ高さであって軸21iを中心にした円弧状をしており、突条22eは、上記の突条21kに対向するように形成され、突条22fは、上記の突条21mに対向するように形成されている。そして、突条22c,22dの羽根室内での高さは、上記の突条22e,22fよりもシャッタ羽根の略1枚の厚さ分だけ高くなるように形成されている。
【0039】
羽根室内には、2枚のシャッタ羽根27,28が配置されている。そのうち、第1地板21側に配置されているシャッタ羽根27は、上記の軸25aに回転可能に取り付けられていて、上記の突条25b,22cの間と、突条21j,22dの間で、それらの突条に摺接するようになっている。また、第2地板22側に配置されているシャッタ羽根28は、上記の軸21iに回転可能に取り付けられていて、上記の突条21k,22eの間と、突条21m,22fの間で、それらの突条に摺接するようになっている。そして、それらのシャッタ羽根27,28には長孔27a,28aが形成されていて、その両方に上記の出力ピン26が嵌合している。
【0040】
次に、本実施例の作動を説明する。本実施例のシャッタ装置は、上記したように、デジタルスチルカメラに採用されるものであって、図4はカメラを使用していないときの状態を示している。本実施例は、所謂ノーマリークローズ方式といわれているシャッタ装置であって、このときには、2枚のシャッタ羽根27,28が撮影光路用の開口部21a,22aを閉鎖し、固体撮像素子の性能の劣化を防止するようにしている。また、この方式を採用するカメラの場合には、光学ファインダを備える場合があるが、本実施例の場合には備えていないカメラの場合で説明する。
【0041】
撮影をするのに先立って、カメラの電源スイッチをオンにすると、モータが起動して、図示していない回転子が、図4において、反時計方向へ回転させられ、その出力ピン26によって、一方のシャッタ羽根27を反時計方向へ回転させ、他方のシャッタ羽根28を時計方向へ回転させる。シャッタ羽根27,28は、このとき、上記のような夫々の突条に摺接してスムーズに回転してゆき、開口部21a,22aを全開にした後、ストッパピン21g,21hに当接して停止する。図5は、その停止状態を示したものであるが、この状態のときには、固体撮像素子の受像面が被写体光にさらされているので、液晶表示装置などによって被写体像を観察することが可能になる。
【0042】
撮影に際して、レリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出することによって、撮影のための新たな電荷の蓄積が行われてゆき、所定の露光時間が経過すると、モータを起動させ、図示していない回転子を、図5において、時計方向へ回転させる。そのため、シャッタ羽根27,28は、出力ピン26によって相反する方向へ回転させられ、開口部21a,22aを閉鎖した後、図4に示されているように、ストッパピン21e,21fに当接して停止させられる。そして、その閉鎖状態において、撮像情報が記憶装置に転送されると、モータが再度起動して、図示していない回転子を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根27,28を図5の撮影待機状態に復帰させる。その後、撮影を続ける意志がなく、電源スイッチをオフにすると、モータだけは所定の時間だけ働くようになっていて、その間に、図示していない回転子を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根27,28を図4の状態に復帰させるようになっている。
【0043】
以上の説明は、本実施例のシャッタ装置をノーマリークローズ方式のシャッタ装置として作動させた場合であるが、ノーマリーオープン方式のシャッタ装置として作動させる場合には、シャッタ羽根27,28は、カメラの電源スイッチのオン、オフに関係なく、図5に示された状態となっていて、撮影のときだけ、その終了段階で図4の状態に作動させられ、撮像情報を記憶装置へ転送した後、図5の状態に復帰させられるだけである。また、この構成のシャッタ装置を、銀塩フィルムを使用するカメラに採用した場合には、カメラの電源スイッチのオン、オフに関係なく、シャッタ羽根27,28は、図4に示された状態になっていて、撮影のときだけ、図5の状態まで作動して、図4の状態に復帰することになる。尚、本実施例のように、2枚のシャッタ羽根を同時に相反する方向へ回転させるシャッタ装置の場合には、絞り機能を兼用させるために、開口部21a,22aを全開させないで撮影できるようにする場合があるが、本発明は、そのようなシャッタ装置にも適用することが可能なことは言うまでもない。
【0044】
また、本実施例は、同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として説明してきたが、本実施例の構成は、その一部を変形することによって、他の羽根駆動装置とすることも可能である。先ず、本実施例の2枚のシャッタ羽根を、開口規制縁を有する2枚の絞り羽根とし、所定の回転位置で停止させるようにすれば、一つ又は複数の絞り開口を制御することのできる絞り装置とすることが可能である。また、一方のシャッタ羽根を若干大きくし、他方のシャッタ羽根を省くようにすれば、1枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置とすることができる。更に、その場合の1枚のシャッタ羽根を、NDフィルタ板だけで形成すれば、1枚のフィルタ羽根を備えたフィルタ装置とすることも可能になる。更にまた、その場合の1枚のシャッタ羽根を、円形の開口部を有する絞り羽根として形成すれば、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とすることも可能であるし、その円形の開口部をNDフィルタ板で覆うようにすれば、上記の構成とは異なる構成の1枚のフィルタ羽根を備えたフィルタ装置とすることが可能になる。
【0045】
尚、本実施例では、ステップモータを用いているが、実施例1で説明した電流制御式のモータを使用しても構わない。また、反対に、ステップモータを、実施例1に使用しても構わない。本発明に適用されるモータの構成は、実施例に示したものに限定されるものではなく、本発明の目的を達成することが可能であれば、どのような構成のモータであっても構わない。更に、上記の各実施例では、一つの羽根駆動装置だけをユニットとして構成しているが、本発明は、そのような構成に限定されず、例えば、シャッタ装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成したものであっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1の絞り装置を示した断面図である。
【図2】図1の下方から羽根室内を見た平面図であって、2枚の絞り羽根が撮影光路用の開口部を閉じている状態を示したものである。
【図3】図1の下方から羽根室内を見た平面図であって、2枚の絞り羽根が撮影光路用の開口部を全開にしている状態を示したものである。
【図4】実施例2のシャッタ装置を示した平面図であって、2枚のシャッタ羽根が撮影光路用の開口部を閉じている状態を示したものである。
【図5】図4と同じ平面図であって、2枚のシャッタ羽根が撮影光路用の開口部を全開にしている状態を示したものである。
【符号の説明】
【0047】
1,21 第1地板
1a,1b,2a,21a,21c,22a 開口部
1c 壁
1d,1e,4a,21d フック部
1f,1g,1h ガイドピン
1i,1j,2d,2e,4b,4c,21j,21k,21m,22c,22d,22e,22f,25b 突条
2,22 第2地板
2b,2c,10b,10c,10d,11b,11c,11d,21b,22b,27a,28a 長孔
3 第1固定子枠
4 第2固定子枠
5,6 コイル
7 ヨーク
8,23,24 ビス
9 回転子
9a 回転軸
9b,9c アーム
9d,9e,26 出力ピン
10,11 絞り羽根
10a,11a 開口規制縁
21i,25a 軸
21e,21f,21g,21h ストッパピン
25 固定子枠
27,28 シャッタ羽根


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用開口部の近傍位置にモータ設置用開口部を有している第1地板と、前記第1地板との間に羽根室を構成している第2地板と、前記第1地板の羽根室外の面に取り付けられていて固定子枠の一部を略前記第1地板の羽根室側の面まで前記モータ設置用開口部に挿入しており回転子と一体的に所定の角度範囲で往復回転する少なくとも一つの出力ピンと該固定子枠に形成された所定数の突条とを羽根室内に臨ませているモータと、前記羽根室内に配置されていて前記出力ピンに連結されており前記回転子が回転したとき前記モータの突条に摺接して撮影光路用開口部から退いた位置と進入した位置との間で往復作動させられる少なくとも1枚の羽根部材と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第1地板の羽根室側の面にも所定数の突条が形成されていて、その突条と対向する前記第2地板の羽根室側の面にも所定数の突条が形成されていると共に前記モータ設置用開口部と対向する面にも所定数の突条が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根部材は、前記出力ピンによって略直線的に作動させられ、前記各突条は、その作動方向に沿って略直線的に形成されているようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根部材は、前記出力ピンによって回転させられ、前記各突条は前記羽根部材の回転軸を中心にした円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記モータは、二つの固定子枠によって永久磁石製の回転子を軸受けし、それらの軸受け部を囲むようにコイルを巻回しており、それらの固定子枠の一方を、前記第1地板に取り付けると共に前記モータ設置用開口部に挿入していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−235058(P2006−235058A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47124(P2005−47124)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】