説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】地板の厚さの違い等によって出力ピンの長さの異なる回転子を用意しなくても済むようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】主地板1と補助地板2の間に羽根室が構成されており、その羽根室内には、絞り羽根9が配置されている。主地板1の羽根室外の面には、モータが取り付けられていて、回転子5の出力ピン5cが、羽根室内に臨まされている。絞り羽根9は、合成樹脂製であって、軸部9bを一体成形しており、その軸部9bの軸方向に形成した孔に、出力ピン5cの先端を圧入し一体化している。従って、地板の厚さ等が異なる場合には、出力ピン5cの長さの異なる回転子を製作する代わりに、軸部9bの長さの異なる絞り羽根9を製作すればよいことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、モータの出力ピンによって直接駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話を含む情報端末装置用のカメラや、コンパクトカメラに採用されている小型のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などにおいては、羽根部材を、モータの回転子と一体の出力ピンによって往復作動させるように構成したものが多い。そして、シャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を2枚とし、それらを相反する方向へ回転させるようにしたものが多いが、レンズ口径の極めて小さいカメラに採用されるシャッタ装置の場合には、シャッタ羽根を1枚としたものもある。また、そのようなシャッタ装置の構成は、そのまま撮影レンズのバリア装置とし得ることも知られている。
【0003】
また、最近の小型カメラに採用されている絞り装置の場合には、もっぱら光量制御の目的だけで備えることが多くなってきたことから、従来のように、複数枚の絞り羽根の協働で複数の絞り開口を規制できるようにしたものが少なくなり、小さい円形の開口部を有した絞り羽根を備えていて、必要に応じて、その開口部を露光開口に進退させるようにしたものが多くなっている。そして、中には、異なる直径の開口部を有した複数枚の絞り羽根を備えていて、それらを選択的に露光開口に進退させるようにしたものもある。
【0004】
更に、フィルタ装置の場合には、上記の円形の開口部を有した絞り羽根と類似の形状をした部材(但し、その開口部は、露光開口と略同じ大きさの場合もある)に対し、その開口部の近傍位置にその開口部を覆うようにしてNDフィルタ板を取り付けることによって、フィルタ羽根としたものが多くなっている。しかしながら、中には、そのような円形の開口部を有する部材を2枚用意し、それらの間に、NDフィルタ板のみで製作した部材を重合させ、3枚の部材を、あたかも1枚の羽根のようにして、同時に往復作動させるようにしたものも考えられているし、NDフィルタ板のみで製作したものをフィルタ羽根とすることも知られている。
【0005】
また、上記したシャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材は、最近では、モータによって往復作動をさせられるようになっており、その場合のモータとしては、ムービングマグネット型モータなどといわれている電流制御式モータか、ステッピングモータの場合が殆どである。そして、小型のカメラに採用される場合には、それらの永久磁石製の回転子を所定の角度範囲内でだけ往復回転させるようにし、その回転子と一体的な出力ピンによって羽根部材を作動させるようにしている。尚、その出力ピンは、略円柱形をしている回転子の本体部と共に同一材料による同時成形で製作した永久磁石製の場合もあるし、予め製作しておいた本体部に対して一体成形で製作した合成樹脂製の場合もある。そして、後者の場合には、回転軸も合成樹脂製として、略円筒形をした永久磁石と共に略円柱形をした本体部を構成することが多い。
【0006】
本発明は、このような構成をしたカメラ用羽根駆動装置に関するものであるが、下記の特許文献1,2には、いずれも、上記の電流制御式モータを駆動源としていて、その出力ピン(駆動ピン)によってシャッタ羽根を直接駆動するようにしたシャッタ装置が記載されている。尚、特許文献1,2に記載されているモータは、固定子の構成も回転子の構成も異なるものであるが、両者の回転子同士を交換しても同じ機能が得られる。そして、特許文献1に記載されているモータの出力ピンが、上記した合成樹脂製の場合であり、特許文献2に記載されているモータの出力ピンが、永久磁石製の場合である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−174867号公報
【特許文献2】特開2003−186079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の図1〜図7に記載された実施例は、その図2から分かるように、シャッタ羽根が二つの地板の間に設けられた羽根室内に配置されている。他方、モータは、羽根室外において一方の地板に取り付けられている。そして、モータの回転子は、その出力ピンを羽根室内まで延伸させて、シャッタ羽根に設けられた孔に対して回転可能に嵌合させている。このような配置構成は、小型の羽根駆動装置の基本構成になっており、シャッタ装置に限らず、他の絞り装置やフィルタ装置の場合も同じであるし、羽根部材の枚数や形状が異なっていても同じである。また、特許文献2に記載されているように、モータの固定子の構成が異なっている場合でも同じであるし、出力ピンを永久磁石製とした場合であっても同じである。
【0009】
ところで、特許文献1の図1〜図7に記載されている実施例からも分かるように、回転子と一体の出力ピン(駆動ピン)は、シャッタ地板に形成された孔から挿入され、羽根室内でシャッタ羽根の孔に嵌合し、その先端を補助地板に形成された溝に挿入している。このような構成を前提にした場合、このモータは、シャッタ地板をもっと薄くしたシャッタ装置には用いることができない。即ち、出力ピン(駆動ピン)の短い回転子を別に製作しなければ用いることができなくなる。また、逆に、シャッタ地板のもっと厚いシャッタ装置に用いるためには、出力ピン(駆動ピン)を長くした回転子を別に製作しなければならなくなる。更に、シャッタ装置の場合には、絞り装置やフィルタ装置と共に一つのユニットとして製作することがあるが、その場合には、シャッタ地板と補助地板の間隔が大きくなるため、補助地板側に配置される羽根部材を駆動するモータの場合には、出力ピン(駆動ピン)を長くした回転子を別に製作しなければならなくなる。ところが、そのように、出力ピンの長さだけが異なる回転子を何種類も製作しなくてはならないということは、回転子が比較的高価な部品であるがために、量産上、極めて不都合である。
【0010】
また、そのようなことをしなくて済むようにするために、予め出力ピン(駆動ピン)を長めに製作し、且つ補助地板に形成されている溝を貫通孔としておくことによって、シャッタ地板の厚さが変わったり、シャッタ地板と補助地板との間隔が変わったりしても、出力ピン(駆動ピン)の先端がその孔から羽根室側へ抜け出さないようにすることが考えられる。しかしながら、装置の小型化,薄型化が要求されている場合には、そのようにすることは実際上無理である。即ち、シャッタ地板の方は、モータを取り付けたり、カメラ本体への取付部材であることなどから、複雑な形状と所定の強度が必要であるため、比較的厚い部材とせざるを得ない。ところが、補助地板の方は、カバー板や羽根押え板などとも称されているように、羽根室を覆う役目だけをしていることが多いため、装置の小型化,薄型化が要求される場合には、必要最小限の厚さにしているのが普通である。そのため、上記のように、予め出力ピン(駆動ピン)を長めに製作しておくと、その先端が、羽根室外へ大きく突き出てしまうケースが多くなってしまい、装置の薄型化にとって、かえって好ましくなく、カメラ内での配置設計にも極めて不都合なものになってしまう。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回転子の出力ピンの長さだけを変えれば、何種類もの装置の羽根部材と好適に連結が行えるというような場合に、製作コストの高い回転子を何種類も製作する必要がなく、それよりも安価に製作することの可能な羽根部材の構成を工夫することによって、両者の連結が好適に行えるようにしたカメラ用駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、両者の間に羽根室を構成している二つの地板と、永久磁石を有した略円柱形の本体部と該本体部の回転中心軸に平行であって該本体部に一体的に形成された出力ピンとからなっていて所定の角度範囲内において往復回転させられる回転子を備えており羽根室外において前記地板の一方に取り付けられ該出力ピンを羽根室に向けて延伸させているモータと、羽根室内に配置されている少なくとも1枚の羽根部材と、前記羽根部材の前記モータ側の面に対して垂直に取り付けられていてその先端面から軸方向に形成された孔に前記出力ピンを嵌合させている軸部材と、を備えているようにする。
【0013】
その場合、前記羽根部材は、1枚であり、前記出力ピンは、前記孔に嵌合され前記軸部材に固定されているようにしてもよいし、前記羽根部材は、1枚であって、前記地板の一方に対して回転可能に取り付けられており、前記出力ピンは、前記孔に対して回転可能に嵌合されているようにしてもよい。また、前記羽根部材は、2枚であって、各々前記地板の一方に対して回転可能に取り付けられており、それらのうち、前記モータ側に配置されている羽根部材は、長孔を有しており、他方の羽根部材は、前記軸部材を取り付けていて、該長孔に対して前記軸部材を挿入しており、前記出力ピンは、前記孔に対して回転可能に嵌合されているようにしてもよい。更に、前記軸部材は、前記羽根部材と同一材料で同一部品として製作された軸部であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、回転子の出力ピンと羽根部材との連結構成として、出力ピンを、羽根部材に取り付けた軸部材の孔か、羽根部材に形成された軸部の孔に対して嵌合させるようにしたので、従来のように、回転子の出力ピンの長さだけを変えれば、何種類もの装置の羽根部材と好適に連結させることができるというような場合に、上記のような軸部材又は軸部の長さの異なる羽根部材を用意すればよいことになり、従来のように、出力ピンの長さの異なる回転子を何種類も用意する場合に比較して、製作コストが安くて済むという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、図示した三つの実施例によって説明する。尚、図1〜図3は実施例1を説明するためのものであり、図4及び図5は実施例2を説明するためのものであり、図6〜図8は実施例3を説明するためのものである。また、本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などを夫々単独でユニット化した羽根駆動装置とすることも、それらの二つ以上をユニット化した羽根駆動装置とすることも可能であるが、実施例1及び実施例2は、各々単独の絞り装置として構成したものであり、実施例3は単独のシャッタ装置として構成したものである。
【実施例1】
【0016】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。本実施例は、円形の絞り開口を有する1枚の絞り羽根を備えた絞り装置として構成したものである。尚、図1は、本実施例の断面図であるが、要部の構成を理解し易くするために、主地板と補助地板との間隔を実際よりは大きくして示したものである。また、図2及び図3は、補助地板を取り外して羽根室内を見た平面図であって、図2は、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものであり、図3は、絞り羽根が、絞り用の開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。
【0017】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例は、主地板1が合成樹脂製であって、図1に示されているように、比較的厚い部材として成形されており、図2に示されているような円形をした撮影光路用の開口部1aを有している。また、補助地板2は、金属製の薄い板材で製作されていて、主地板1との間に羽根室を構成しており、上記の開口部1aと対向する位置に、開口部1aよりも直径の大きな開口部2aを有している。そして、この補助地板2は、その周辺部を、主地板1の周辺部に形成された壁1bの端面に接触させ、主地板1に設けられた可撓性を有する複数のフック部1cによって主地板1に取り付けられている。しかしながら、それらのフック部1cについては、図1においては、二つだけ示され、図2及び図3においては省略されている。
【0018】
主地板1の羽根室外の面は、複雑な形状をしていて、そこに設けられた可撓性を有する二つのフック部1dによって、モータが取り付けられている。本実施例のモータは、上記の特許文献1に記載されている周知の電流制御式のモータと実質的に同じ構成をしている。先ず、合成樹脂製の固定子枠は、コップを伏せたような形状をした第1固定子枠3と、比較的平板状をした第2固定子枠4とからなっていて、それらによって形成した収容室内で回転子5を軸受けしている。また、第1固定子枠3と第2固定子枠4は、回転子5の軸受け部を囲むようにコイル6を巻回して一体的にされており、そのようにした後、第1固定子枠3には、円筒状のヨーク7が嵌装されている。更に、第1固定子枠3には、特許文献1にも記載されているようにして、4本の鉄ピン8(2本だけ図示)が取り付けられている。そして、第2固定子枠4は、主地板1に設けられた二つの位置決めピン1e(一つだけ図示)に孔を嵌合させておいてから、上記したように、二つのフック部1dによって主地板1に取り付けられている。
【0019】
他方、回転子5は、径方向に2極に着磁された永久磁石5aと、合成樹脂材料によって永久磁石5aに一体成形された回転軸5b,出力ピン5cで構成されており、回転子5の本体部は、円柱形をした永久磁石5aと回転軸5bによって略円柱形に構成されている。しかしながら、このような構成とは別に、略円柱形をした永久磁石の両端面に合成樹脂製の回転軸部を設けるようにしたものも知られている。そして、この回転子5は、その出力ピン5cを、第2固定子枠4の長孔4aと主地板1の長孔1fに挿入し、その先端を羽根室内に臨ませている。また、この回転子5は、周知のように、コイル6に対する電流の供給方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内で回転するように構成されている。更に、この回転子5は、コイル6に通電されていない場合には、永久磁石5aと上記の鉄ピン8との間に作用する吸引力によって、いずれか一方へ回転する力が付与されている。
【0020】
次に、羽根室内の構成を説明する。図2に示されているように、主地板1の羽根室内の面には、ストッパピン1gが立設されている。また、上記の壁1bの一部にはストッパ部1hが形成されている。そして、この羽根室内には、合成樹脂製の絞り羽根9が配置されているが、この絞り羽根9には、上記の開口部1aよりも直径の小さな絞り開口9aが形成されている。また、絞り羽根9には、モータ側、即ち主地板1側に一体成形にて垂直に軸部9bが形成されている。そして、その軸部9bは、図1に示されているように、その先端面から軸方向へ形成された孔を有していて、そこに、出力ピン5cの先端が圧入され、固定されている。即ち、本実施例の場合には、絞り羽根9が出力ピン5cと一体化されていることになる。尚、絞り羽根9と出力ピン5cは、本実施例のように圧入によらず、接着剤で固定してもよいし、溶着して固定するようにしても差し支えない。
【0021】
尚、本実施例の場合、軸部9bに形成されている孔は、補助地板2側に貫通していないが、本発明は、このような形状に限定されず、貫通するように形成しても差し支えない。また、本実施例の場合は、出力ピン5cの先端が羽根室内に臨んでいるが、主地板1の厚さ次第では、先端が羽根室内まで達しない場合がある。そのような場合には、本実施例の場合よりも軸部9bの長さを長く形成することになる。更に、本実施例の場合には、合成樹脂材料によって軸部9bを絞り羽根9と同時に一体成形しているが、軸部9bを軸部材として製作し、絞り羽根9に一体化するようにしてもよい。また、そのようにする場合には、両者の材料は、同じであっても構わないが、異なっていても構わない。例えば、絞り羽根9と軸部材の両方を金属製としてもよいし、一方を金属製とし、他方を合成樹脂製としても構わない。
【0022】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図2は、絞り羽根9が撮影光路用の開口部1aから退いている状態を示したものである。従って、本実施例の絞り装置をデジタルスチルカメラに採用している場合には、この状態で、固体撮像素子が被写体光にさらされており、被写体像がモニターで観察可能であるし、銀塩フィルムを使用するカメラに採用している場合には、シャッタ羽根が撮影光路を閉じているので、被写体像は光学ファインダで観察することになる。また、このときには、モータのコイル6に通電されていないが、周知のように、鉄ピン8と永久磁石5aとの間に作用する磁気吸引力によって、回転子5には反時計方向へ回転する付勢力が与えられているため、絞り羽根9はストッパピン1gに押し付けられ、この状態が確実に維持されている。
【0023】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、測光回路の測定結果によって、撮影光量を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが決定される。そして、撮影光量を減じて撮影すべきと判断されたときには、モータのコイル6に通電して、回転子5を時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根9も共に時計方向へ回転させられ、その後、絞り開口9aの中心が開口部1aの中心(光軸位置)に達すると、主地板1に設けられたストッパ部1hに当接して停止する。図3は、その停止状態を示したものである。そして、その直後に行われる撮影が終了すると、モータのコイル6に対して、上記の場合とは逆方向へ電流が供給される。そのため、回転子5は反時計方向へ回転して、絞り羽根9を開口部1aから退かせる。そして、その回転は、絞り羽根9がストッパピン1gに当接すると停止し、その後、コイル6に対する通電が断たれると、図2の状態に復帰したことになる。尚、説明をするまでもないが、撮影に際して、撮影光量を減じないで撮影をする場合は、図2に示された状態で、直ちに撮影が行われることになる。
【0024】
以上のように、本実施例は、絞り装置として構成したものであるが、その構成の一部を変形させれば他の装置とすることも可能である。即ち、絞り開口9aを覆うようにして絞り羽根9にNDフィルタ板を取り付ければ、絞り羽根9はフィルタ羽根となるから、本実施例の絞り装置はフィルタ装置になる。また、絞り羽根9に絞り開口9aを形成しなければ、シャッタ羽根やバリア羽根とすることができるから、そのようにすることによって、本実施例の絞り装置を、シャッタ装置やレンズバリア装置とすることが可能である。更に、絞り羽根9に絞り開口9aを形成せず、しかも、材料をNDフィルタ板にすれば、本実施例の絞り装置はフィルタ装置になる。そして、これらのことは、後述する実施例2の場合にも言えることである。
【実施例2】
【0025】
次に、図4及び図5を用いて実施例2を説明する。本実施例も、実施例1と同様に、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置として構成したものである。そして、実施例1の絞り装置とは、回転子の出力ピンと絞り羽根との連結構成が異なっているだけである。そのため、実施例1の構成と全く同じ部材及び同じ部位には同じ符号を付け、原則としてそれらについての説明を省略し、実施例1と異なる点だけを説明することにする。尚、図4及び図5は、上記の図2及び図3の場合と同様にして、本実施例の羽根室内を示した平面図であって、図4は、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものであり、図5は、絞り羽根が、絞り用の開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。
【0026】
先ず、実施例1とは異なる構成を説明する。本実施例においては、主地板1の羽根室側の面に軸1iが立設されている。また、絞り羽根9には長孔9cが形成されており、その長孔9cを軸1iに嵌合させている。更に、出力ピン5cの先端は、実施例1のように、絞り羽根9の軸部9bに固定されておらず、回転可能に嵌合されている。そして、このほかの構成は、実施例1の場合と全く同じである。
【0027】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図4は、絞り羽根9が撮影光路用の開口部1aから退いている状態を示したものである。この状態では、モータのコイル6に通電されていないが、既に説明したように、絞り羽根9はストッパピン1gに押し付けられ、この状態が確実に維持されている。そして、撮影に際し、測光結果によって撮影光量を減じて撮影すべきと判断されたときは、コイル6に通電して、回転子5を反時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根9は時計方向へ回転させられ、ストッパ部1hに当接して停止する。図5は、その停止状態を示したものである。そして、撮影が終了すると、モータのコイル6に対して、上記の場合とは逆方向へ電流が供給される。そのため、回転子5は時計方向へ回転して、絞り羽根9を反時計方向へ回転させ、開口部1aから退かせる。そして、絞り羽根9がストッパピン1gに当接して停止すると、コイル6に対する通電が断たれ、図4の状態になる。
【実施例3】
【0028】
次に、図6〜図8を用いて実施例3を説明する。本実施例は、相反する方向へ同時に回転する2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置として構成したものである。また、本実施例のシャッタ装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用されたときと、各種のデジタルカメラに採用されたときとでは、撮影時におけるシャッタ羽根の作動シーケンスが異なるが、作動説明に際しては、デジタルスチルカメラに採用されている場合で説明することにする。尚、図6は、本実施例の断面図であるが、要部の構成を理解し易くするために、主地板と補助地板との間隔を故意に大きくして示したものである。また、図7及び図8は、補助地板を取り外して羽根室内を見た平面図であって、図7は、シャッタ羽根の全開状態を示したものであり、図8は、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【0029】
そこで先ず、本実施例の構成を説明する。図6に示されているように、本実施例の場合も主地板11は合成樹脂製であって、比較的厚い部材として成形されており、図7に示されているように、円形をした撮影光路用の開口部11aを形成している。また、補助地板12は、金属製の薄い板材で製作されており、主地板11との間に羽根室を構成しており、上記の開口部11aと対向する位置に、図示していない同じ形状の開口部が形成されている。そして、この補助地板12には、その周辺部に、図6において二つだけ示されている複数の折曲部12aと、一つだけ示されている複数のフック部12bとが設けられている。そのうち、折曲部12aは、主地板11との間隔を規制している。また、フック部12bは、そこに形成された孔を、弾性を利用して、主地板11の側面に形成された突起部11bに係合させ、補助地板12を主地板11に取り付けている。
【0030】
主地板11の羽根室外の面は、複雑な形状をしていると共に軸11cと二つの位置決めピン11d,11eが立設されていて、そこにモータの構成部材が取り付けられている。本実施例のモータは、上記の実施例1,2において用いられたモータとは異なる構成をしているが、やはり、電流制御式のモータであり、回転子は径方向に2極に着磁されていて、固定子のコイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内で回転するように構成されている。そして、上記の軸11cには、永久磁石製の回転子13が回転可能に取り付けられており、略円柱形をした本体部と共に同一材料で同時成形によって形成された出力ピン13aを、主地板11の長孔11eに挿入し、その先端を羽根室内に臨ませている。尚、本実施例の回転子13は、従来のように、その本体部と出力ピン13aとを、同一材料による同時成形で製作しているが、強度や耐摩耗性などを考慮して、異なる材料による同時成形で、全体が永久磁石製となるようにしても差し支えない。
【0031】
また、固定子は、固定子枠14,コイル15,ヨーク16からなっている。それらのうち、固定子枠14は、合成樹脂製であって、ボビン部14aを形成していると共に二つの端子ピン17(一つだけを図示)を植設しており、ボビン部14aに巻回したコイル15の両端を各々の端子ピン17に巻き付けている。また、上記の特許文献2においては、ヨークが2枚重ねに構成されているが、本実施例の場合には1枚のヨーク16が備えられているだけである。そして、そのヨーク16は、特許文献2に記載されているヨークと同様に略U字形をしていて、二つの脚部の先端部を回転子13の周面に対向させ、それらを磁極部としていると共に、一方の脚部を上記のボビン部14aの中空部に貫通させており、他方の脚部の最先端には、コイル15に対する無通電時において回転子13の停止位置を安定させるために、折曲部16aを形成している。
【0032】
このような構成をしている固定子は、一方の位置決めピン11dにヨーク16の孔と固定子枠14の貫通していない孔を嵌合させ、他方の位置決めピン11eにヨーク16の孔を嵌合させ、軸11cに固定子枠14の孔を嵌合させた後、二つのビス18,19によってシャッタ地板11に取り付けられている。また、主地板11の羽根室外の面には、ビス20によってフレキシブルプリント配線板21が取り付けられており、そのランドに設けられた孔に上記の端子ピン17を挿入させ、そのランドに対してコイル15を半田付けしている。
【0033】
次に、羽根室内の構成を説明する。図7に示されているように、主地板11の羽根室内の面には、二つの軸11g,11hと、四つのストッパピン11i,11j,11k,11mが立設されている。また、羽根室内には、合成樹脂製の2枚のシャッタ羽根22,23が配置されている。そのうち、シャッタ地板11側に配置されているシャッタ羽根22は、長孔22aを有していて、上記の軸11gに対して回転可能に取り付けられている。また、補助地板12側に配置されているシャッタ羽根24は、モータ側、即ち主地板11側に一体成形にて垂直に形成されている軸部23aを有していて、上記の軸11hに対して回転可能に取り付けられている。そして、その軸部23aは、図6から分かるように、シャッタ羽根22の長孔22aに挿入されていて、先端面から軸方向へ形成されている孔23bには、出力ピン13aが回転可能に嵌合されている。
【0034】
尚、本実施例の場合、軸部23aに形成されている孔23bは、補助地板12側に貫通していないが、本発明は、このような形状に限定されず、貫通するように形成しても差し支えない。また、本実施例の場合も、出力ピン13aの先端が羽根室内に臨んでいるが、主地板11の厚さ次第では、先端が羽根室内まで達しない場合がある。そのような場合には、本実施例の場合よりも軸部23aの長さを長く形成することになる。更に、本実施例の場合には、合成樹脂材料によって軸部23aをシャッタ羽根23と同時に一体成形しているが、上記の各実施例のように、軸部23aを軸部材として製作し、シャッタ羽根23に一体化するようにしても差し支えない。そのようにする場合には、両者の材料は、同じであっても構わないが、異なっていても構わない。
【0035】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図7は、デジタルスチルカメラに採用された場合の初期状態、即ち撮影の待機状態を示したものである。このとき、シャッタ羽根22,23は、開口部11aを全開にしているため、固体撮像素子は被写体光にさらされており、被写体像をモニターで観察可能となっている。また、このとき、モータのコイル15には通電されていないが、周知のように、ヨーク16の折曲部16aと出力ピン13aの根元近傍部との間に作用する磁気吸引力によって、回転子13には時計方向へ回転する付勢力が与えられているため、シャッタ羽根22,23がストッパピン11i,11jに押し付けられて、この状態が確実に維持されている。
【0036】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、あらたな電荷の蓄積開始によって撮影が開始する。その後、所定の時間が経過すると、露光制御回路からの信号によって、コイル15に通電され、回転子13が反時計方向へ回転させられる。そのため、シャッタ羽根22,23は、相反する方向へ回転させられ、開口部11aを閉鎖した後、ストッパピン11k,11mに当接して停止する。図8は、その状態を示したものである。この状態になると、撮像情報が記憶装置に転送され、その転送が終了すると、コイル15に対して、上記の場合とは逆方向へ電流が供給される。そのため、回転子13は時計方向へ回転してシャッタ羽根22,23に開き作動を行わせる。シャッタ羽根22,23は、開口部11aを全開にすると、その直後に、ストッパピン11i,11jに当接して停止し、図7に示した初期状態になる。
【0037】
尚、本実施例は、シャッタ装置として説明したが、全く同じ構成でレンズバリア装置とすることも可能であることは言うまでもない。また、上記の各実施例においては、モータとして、電流制御式のモータを用いているが、本発明は、ステップモータを用いるようにしても差し支えない。更に、上記の各実施例は、絞り装置だけをユニット化した場合と、シャッタ装置だけをユニット化したものとして説明したが、本発明は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置を夫々単独でユニット化するだけではなく、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、それらの二つ以上を一つのユニットとして構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1の断面図である。
【図2】実施例1の羽根室内を示した平面図であって、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものである。
【図3】実施例1の羽根室内を示した平面図であって、絞り羽根が、絞り用の開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。
【図4】実施例2の羽根室内を示した平面図であって、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものである。
【図5】実施例2の羽根室内を示した平面図であって、絞り羽根が、絞り用の開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。
【図6】実施例3の断面図である。
【図7】実施例3の羽根室内を示した平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図8】実施例3の羽根室内を示した平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【符号の説明】
【0039】
1,11 主地板
1a,2a,11 開口部
1b 壁
1c,1d,12b フック部
1e,11d,11e 位置決めピン
1f, 4a,9c,11f,22a 長孔
1g, 11i,11j,11k,11m ストッパピン
1h ストッパ部
1i,11c,11g,11h 軸
2,12 補助地板
3 第1固定子枠
4 第2固定子枠
5,13 回転子
5a 永久磁石
5b 回転軸
5c,13a 出力ピン
6,15 コイル
7,16 ヨーク
8 鉄ピン
9 絞り羽根
9a 絞り開口
9b,23a 軸部
11b 突起部
12a,16a 折曲部
14 固定子枠
14a ボビン部
17 端子ピン
18,19,20 ビス
21 フレキシブルプリント配線板
22,23 シャッタ羽根
23b 孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両者の間に羽根室を構成している二つの地板と、永久磁石を有した略円柱形の本体部と該本体部の回転中心軸に平行であって該本体部に一体的に形成された出力ピンとからなっていて所定の角度範囲内において往復回転させられる回転子を備えており羽根室外において前記地板の一方に取り付けられ該出力ピンを羽根室に向けて延伸させているモータと、羽根室内に配置されている少なくとも1枚の羽根部材と、前記羽根部材の前記モータ側の面に対して垂直に取り付けられていてその先端面から軸方向に形成された孔に前記出力ピンを嵌合させている軸部材と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記羽根部材は、1枚であり、前記出力ピンは、前記孔に嵌合され前記軸部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根部材は、1枚であって、前記地板の一方に対して回転可能に取り付けられており、前記出力ピンは、前記孔に対して回転可能に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記羽根部材は、2枚であって、各々前記地板の一方に対して回転可能に取り付けられており、それらのうち、前記モータ側に配置されている羽根部材は、長孔を有しており、他方の羽根部材は、前記軸部材を取り付けていて、該長孔に対して前記軸部材を挿入しており、前記出力ピンは、前記孔に対して回転可能に嵌合されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記軸部材は、前記羽根部材と同一材料で同一部品として製作された軸部であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−243138(P2006−243138A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55798(P2005−55798)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】