説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】合成樹脂製の地板に立設されたストッパを利用し、その先端を熱溶融させてカバー板を地板に取り付けるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】合成樹脂製の地板1と、カバー板2との間に羽根室が構成されている。カバー板2は、地板1に立設された柱1h,1i,1jに対し、孔2e,2f,2gを嵌合させ、柱1h,1i,1jの先端を熱溶融し、鍔部1h−1,1i−1,1j−1を形成したことにより取り付けられている。地板1に立設された柱状部1kは、断面積が大きい順に地板1側から第1部位1k−1,第2部位1k−2,第3部位1k−3が形成されており、カバー板2は、孔2hを第2部位1k−2と第3部位1k−3に嵌合させ、第3部位1k−3の先端を熱溶融し、鍔部1k−4を形成したことによって取り付けられている。そして、第1部位1k−1の周面の一部が絞り羽根7のストッパ面となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、羽根室内において往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置があるが、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、単独でユニット化する場合もあるが、二つ以上を一つのユニットとして構成する場合もある。また、それらの羽根駆動装置は、各々、1枚又は複数枚の羽根部材を備えているが、レンズ口径の小さなカメラに採用される羽根駆動装置の場合には、1枚又は2枚の羽根部材を備えているのが普通である。そして、それらの羽根部材は、駆動手段によって往復作動させられるが、その作動は、回転の場合もあるし、直線的な場合もある。
【0003】
上記のような各ユニットは、通常、地板とカバー板(補助地板などということもある)との間に羽根室を構成しており、二つ以上の装置をユニット化する場合には、他の装置の羽根部材と作動上干渉し合わないようにするために、地板とカバー板との間に中間板(仕切り板などということもある)を設けて複数の羽根室を構成することもある。そして、最近では、地板は、殆ど合成樹脂製になっていて、そこに、金属製又は合成樹脂製のカバー板を取り付けるようにしているが、その取り付け方は、これまでは、下記の特許文献1に記載されているように、複数のねじによって固定するのが一般的であった。
【0004】
しかしながら、ねじ部品を用いるとコスト面で不利であることから、地板に一体成形で複数のフック部を設け、それらのフック部だけでカバー板を掛け止めするようにすることが試みられた。ところが、この方法は、カバー板を高精度に固定するには不向きであることから、フック部だけでは具合の悪い場合には、ねじを一つだけ用い、その他の取り付け箇所にはフック部を用いるようにしていた。しかし、そのような取付方法にしたとしても、ねじ部品を用いていることには変わりがない。また、地板にフック部を形成するためには、金型代が高くなるし、地板上での形成位置にも自ずと制約を受けることになる。
【0005】
そのため、ごく最近では、地板が合成樹脂製であることに着目し、いわゆる熱カシメによってカバー板を取り付ける方法が実際に採用されだしている。この取付方法は、地板の羽根室側の面に、一体成形によって柱を設けておき、その柱をカバー板に設けた孔に貫通させ、羽根室外に突き出た先端を熱溶融させて上記の孔よりも大きな鍔部を形成し、カバー板の抜け止めとするものである。そのため、この方法によれば、少なくとも、ねじ部品を必要としないので、そのぶんだけコストダウンが可能になり、しかも、フック部を形成する場合よりも、金型代が安くなり、設置位置にも制約が少ないという利点がある。
【0006】
他方、上記のような各種の羽根部材の作動を停止させるときには、駆動手段をストッパに当接させることもあるが、多くの場合は、羽根部材を、地板に設けたストッパに当接させている。そして、後者のように構成した場合の一例が、特許文献1に記載されている。それによれば、一体成形によって地板の羽根室側の面に形成された柱状のストッパは、その先端を、金属製のカバー板に形成された孔に嵌合させている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−212526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1には、上記のように、合成樹脂製の地板にストッパが柱状に設けられており、その先端を、カバー板に形成された孔に嵌合させるようにした構成が記載されている。そのため、そのストッパの長さを長くして、カバー板の孔に貫通させるようにし、羽根室外に突き出た先端を熱溶融して孔より大きな鍔部を形成すれば、上記のようなカバー板の取付専用部を地板に設ける必要がなくなるので、一層コストダウンが可能になり、場合によっては、地板の平面形状を小さくすることも可能になる。ところが、ストッパを単にそのように構成しただけでは、熱カシメ時の熱により、ストッパの被当接面を変形させてしまうことがあり、しかも、その熱カシメは、常に一定の温度条件で行うことが難しいことから、変形にバラツキが生じてしまい、羽根部材の停止位置を均一化することが困難になってしまうという問題点がある。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、合成樹脂製の地板に設けられたストッパを利用し、その先端を熱溶融させてカバー板を取り付けるに際し、ストッパの被当接面を変形させてしまうことのないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、羽根室側の面から断面積の大きい部位の順であってその部位の周面がより断面積の大きい部位の周面より外側にはならないようにして第1部位,第2部位,第3部位を有している柱状部が該羽根室側の面に対して一体成形により少なくとも一つ立設されている合成樹脂製の地板と、前記地板との間に羽根室を構成していると共に前記柱状部を挿入するための孔を少なくとも一つ有しており該孔には前記第2部位の全体と前記第3部位の一部を挿入させ前記第3部位の先端を羽根室外に突き出させるカバー板と、前記羽根室内において駆動手段によって往復作動させられそのいずれかの作動時において前記第1部位の被当接部に当接させられる少なくとも1枚の羽根部材と、を備えていて、前記カバー板は、前記第3部位の先端を熱溶融して、前記孔よりも大きな外形の鍔部を形成することにより、前記地板に取り付けられているようにする。
【0011】
その場合、前記第2部位に、前記被当接部と同一になる面が形成されているようにすると、羽根部材が、カバー板の取付状態や羽根部材の厚さに関係なく、前記被当接部に対して好適に当接し得るようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、一体成形によって合成樹脂製の地板に立設された柱状部が、羽根部材のストッパの役目と、カバー板の取付部との役目をしているので、従来のように別々に設ける場合に比較して、コスト面で有利となるほか、地板の羽根室側の面の有効活用も可能になるし、地板の平面面積を小さくすることも可能になる。また、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、柱状部が、地板側から断面積の大きい順に形成された三つの部位を有していて、一番断面積の小さい第3部位の先端を熱溶融することによって、地板にカバー板を取り付けるようにしているため、溶融時の熱は、第3部位から、第2部位と第1部位に伝わっていくことになるが、順に熱容量が大きくなって行くため、熱の影響を受けにくくなってゆき、一番断面積の大きな第1部位に形成されている被当接面を、その熱によって変形させてしまうようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を、図1〜図3に示した実施例によって説明する。本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置のいずれにも適用することができるものである。また、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ以上を一つのユニットとして構成した装置にも適用することができるものである。更に、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラやビデオカメラを含むデジタルカメラにも採用することのできるものである。しかしながら、それらの全ての場合について具体例を挙げて説明するまでもないので、実施例としては、絞り装置を単独でユニット化したものについて説明することにする。
【実施例】
【0014】
本実施例は、円形の絞り開口部を有する1枚の絞り羽根を備えた絞り装置として構成したものである。尚、図1(a)は、本実施例の構成を理解し易いようにして示した断面図であって、図1(b)はその一部を拡大して示したものである。また、図2及び図3は、図1の下方から見た平面図であって、図2は、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものであり、図3は、絞り羽根が、絞り開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。そして、図2の場合には、カバー板の略半分を切除し、その切除した部分の外形線を二点鎖線で示してある。
【0015】
先ず、構成から説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって比較的厚く形成されており、略中央部には円形をした撮影光路用の開口部1aが形成されている。また、カバー板2は、地板1との間に羽根室を構成しており、開口部1aと対向するところに、開口部1aよりも直径の大きな開口部2aが形成されている。更に、地板1には、円弧状の長孔1bが形成されており、カバー板2には、その長孔1bと対向するところに、略同じ形状をした長孔2bが形成されている。
【0016】
地板1の羽根室外の面には、軸1cと柱1d,1eが一体成形によって立設されている。そのうち、柱1d,1eは、地板1が単体部品として製作された段階では、軸1cと同様に、円柱形に形成されていた部位である。そして、それらの軸1cと柱1d,1eには、ムービングマグネット型モータなどといわれている電流制御式のモータが取り付けられている。このモータは、永久磁石を有する回転子を、固定子コイルへの通電方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内でだけ回転させるモータである。そして、この種のモータには、主に固定子の構成の違いによって、種々のタイプのものが知られているが、本実施例に用いられているモータは、それらの中でも、装置の薄型化に適した構成をしていることから、通常、扁平モータなどといわれているものである。
【0017】
そこで、先ず、本実施例の回転子3は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石3aを有していて、上記の軸1cに回転可能に取り付けられている。また、その永久磁石3aと一体化されていて、径方向へ張り出した合成樹脂製のアームには、その先端に出力ピン3bが設けられている。そして、その出力ピン3bは、上記の長孔1bから羽根室内に挿入され、その先端を、カバー板2の長孔2bから羽根室外へ突き出している。尚、図2及び図3においては、永久磁石3aの磁極の境界を、便宜的に軸1cを通る1本の一点鎖線で示してある。
【0018】
本実施例の固定子枠4は、合成樹脂製であって、中空のボビン部4aを有しており、そこにコイル5が巻回されている。また、略U字形をしていて二つの脚部を有しているヨーク6は、その一方の脚部をボビン部4aの中空部に挿入しており、また、二つの脚部の先端を磁極部として、永久磁石3aの周面に対向させている。また、固定子枠4は、孔4b,4cを有していて、それらを、上記の柱1d,1eに嵌合させた後、柱1d,1eの先端を熱溶融させ、孔4b,4cよりも大きな鍔部1d−1,1e−1を形成したことによって、地板1に取り付けられている。
【0019】
地板1の羽根室側の面には、ストッパピン1fと、軸状部1gと、三つの柱1h,1i,1jと、柱状部1kが一体成形にて立設されている。それらのうち、ストッパピン1fは、その先端を、カバー板2に形成された孔2cに挿入している。また、軸状部1gは、地板1が単体部品として製作された段階では、地板1側から大径部位1g−1と小径部位1g−2に形成されていたが、大径部位1g−1の一部と小径部位1g−2の一部とを、カバー板2の孔2dに嵌合させた状態にしておいてから、小径部位1g−2の先端を熱溶融させ、孔2dよりも大きな鍔部1g−3を形成したことによって、カバー板2が軸状部1gから抜けないようにしている。そして、その大径部位1g−1には、羽根室内において、絞り羽根7が、回転可能に取り付けられている。また、この絞り羽根7は、地板1の開口部1aよりも直径の小さな絞り用の開口部7aと長孔7bを有しており、その長孔7bには、上記の出力ピン3bが挿入されている。
【0020】
このように、本実施例の場合には、絞り羽根7を取り付けている軸状部1gを、大径部位1g−1と小径部位1g−2とで構成しておき、小径部位1g−2の方を熱溶融させるようにしているので、軸状部1gの先端を溶融させ易くなっていると共に、そのときの熱が大径部位1g−1に伝わったときには温度上昇が抑制され、熱によって大径部位1g−1を変形させられてしまうということがないようになっている。そのため、絞り羽根7は、軸状部1gの先端を溶融させても、その回転には何の影響を受けることもない。尚、図1においては、大径部位1g−1と小径部位1g−2に、符号を付けるのを省略してある。
【0021】
カバー板2は、地板1の四隅に立設された三つの柱1h,1i,1jと柱状部1kとによって地板1に取り付けられている。それらのうち、三つの柱1h,1i,1jは、地板1の製作時には円柱形をしていたが、カバー板2に形成された孔2e,2f,2gに貫通させた後、上記の柱1d,1eの場合と同様にして、それらの先端を熱溶融させ、鍔部1h−1,1i−1,1j−1を形成するようにしている。そのため、カバー板2は、柱1h,1i,1jの軸方向へは殆ど移動することができない。
【0022】
また、図1(b)に示されているように、柱状部1kは、地板1の製作時には、地板1側から、一番断面積の大きな第1部位1k−1と、次に断面積の大きい第2部位1k−2と、一番断面積の小さな第3部位1k−3とに形成されていた。そのうち、第1部位1k−1は、図2において略三角形をした部位であって、その一番長い辺から開口部1a側に張り出して形成された平面部をストッパ面としている。また、第2部位1k−2は、断面形状が略D字形をしていて、その周面に形成された平面部は、上記のストッパ面と同一面になるように形成されている。そのため、第2部位1k−2は、その周面が第1部位1k−1の周面よりは外側にならないように形成されている。また、第3部位1k−3は、図1(b)に二点鎖線で示されているように、製作時には円柱形に形成されていて、その周面も第2部位1k−2の周面よりは外側とならないように形成されていた。従って、柱状部1kは、複雑な形状はしているが、成形加工はし易いようになっている。
【0023】
地板1が製作されたときには、このような形状をしていた柱状部1kは、カバー板2を取り付けるに際しては、先ず、カバー板2に形成されている孔2hに対して、第2部位1k−2までを挿入し、第1部位1k−1と第2部位1k−2との間の段差面でカバー板2を受けるようにする。それによって、図1から分かるように、第2部位1k−2は、全体が孔2hの中に入っており、第3部位1k−3の一部も入った状態になる。次に、カバー板2から羽根室外へ突き出ている第3部位1k−3の先端を熱溶融させ、孔2hよりも外形の大きな鍔部1k−4を形成する。それによって、カバー板2が地板1に取り付けられたことになり、柱状部1kの軸方向へは殆ど移動することができない状態になる。
【0024】
ところで、そのようにして第3部位1k−3の先端を溶融するときには、かなりの高温で加熱することになるため、その熱が第1部位1k−1まで伝達されてその形状を変形させ、ストッパ面の平面性が損なわれてしまうのではないかという心配がある。しかしながら、本実施例の場合には、従来と同じ熱を加えても、その熱は、先ず、溶融途中の第3部位1k−3の非溶融部を通ってから第2部位1k−2に伝わるので、第3部位1k−3よりも断面積の大きな第2部位1k−2に伝わっても、熱容量が大きくて温度は大きく上がらない。その後、さらに断面積の大きな第1部位1k−1に伝わったとしても、熱容量が一段と大きいので、第1部位1k−1での温度上昇は抑制され、ストッパ面の形状には何の影響も与えることがない。
【0025】
尚、本実施例の場合には、柱状部1kが、上記の形状をしているが、三つの部位間における断面積の大きさ関係を守りさえすれば、各部位は、どのような断面形状をしていても差し支えない。本実施例の場合、柱状部1kが、方形をした地板1の隅に立設されている関係で、第1部位1k−1が上記のような略三角形に形成されているが、もっと地板1の中央へ寄ったところへ立設するようにした場合には、例えば、第2部位1k−2の断面形状よりも大きなD字形にすると、好適な構成になる。また、本実施例の場合には、第1部位1k−1に形成されているストッパ面を、ストッパピン1fのストッパ面と同様に、平面状に形成しているが、これは、当接時の衝撃で絞り羽根7が破損されるのを防止したり、停止状態において絞り羽根7を所定の姿勢に保つためであるが、そのような必要のない場合には、平面である必要はなく、円弧面であっても差し支えない。
【0026】
次に、本実施例の作動を説明する。図2は、撮影待機状態を示したものであって、絞り羽根7は、開口部1aから退いている。このとき、モータのコイル5には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子3は、その永久磁石3aの磁極とヨーク6の二つの磁極部との対向配置関係によって、反時計方向へ回転するように付勢されており、それによって、絞り羽根7を時計方向へ回転させるように付勢している。そのため、絞り羽根7は、柱状部1kの第1部位1k−1に押し付けられて、確実にこの状態を維持されている。
【0027】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、先ず、測光回路の測定結果によって、被写界からの光を減光しないで撮影するのか、減光して撮影するのかが決定される。そして、減光しないで撮影すると決定した場合には、この図2の状態で撮影が行われる。他方、減光して撮影すると決定した場合には、コイル5に対して順方向へ電流が供給される。それによって、回転子3は時計方向へ回転させられ、絞り羽根7を反時計方向へ回転させる。その後、絞り羽根7は、ストッパピン1fに当接して停止させられるが、図3は、その停止状態を示したものである。そして、この状態で撮影が行われる。
【0028】
撮影が終了すると、今度は、コイル5に対して逆方向へ電流が供給される。そのため、回転子3は反時計方向へ回転させられ、絞り羽根7を時計方向へ回転させる。それによって、絞り羽根7は、開口部1aから完全に退いた後、柱状部1kの第1部位1k−1に形成された平面状のストッパ面に当接して停止させられる。そして、その直後に、コイル5に対する通電が断たれると、図2に示された待機状態に復帰したことになる。
【0029】
ところで、本実施例の場合には、柱状部1kの第2部位1k−2の周面に形成されている平面部が、第1部位1k−1の周面に形成されているストッパ面と同一平面になるように形成されている。即ち、絞り羽根7の作動空間に向いている面だけには、第1部位1k−1と第2部位1k−2との間に段差部がないように形成されている。その理由は、絞り羽根7の作動空間に向いている面にも段差部を設けると、カバー板2の取り付け状態において、その段差面とカバー板2が密着していない場合に、絞り羽根7が復帰作動をしたとき、カバー板2と段差面の間に挟まってしまう恐れがあるからである。
【0030】
しかしながら、カバー板2と段差面が密着するように製作されている場合や、それらの間の隙間よりも絞り羽根7の厚さの方が厚い場合には、そのような恐れは全くないことになるから、そのように製作された場合には、本実施例のように配慮する必要はなく、第2部位1k−2を、例えば円柱状に形成しても一向に差し支えないことになる。尚、軸状部1gの大径部1g−1の一部が、カバー板2の孔2dに入り込んでいるのも、絞り羽根7が、作動中に、大径部1g−1と小径部1g−2との段差部と、カバー板2との間に、挟まらないようにするためである。
【0031】
このように、本実施例の場合には、柱状部1kが、カバー板2を取り付ける役目と絞り羽根7のストッパの役目とを兼用しているため、それらの役目をする部位を別々に設ける場合に比較して、地板1の製作コストが低減するほか、地板1の羽根室側の面の有効活用が行え、地板1の平面面積を小さくすることが可能になる。即ち、本実施例の場合において、柱状部1kを、ストッパピン1fのように、ストッパの役目をするだけのものにした場合には、柱1h,1i,1jと同様な柱を、柱状部1kの外側に設ける必要が生じることから、その設置面積分だけ地板1の面積を大きくせざるを得なくなってしまう。また、本実施例の場合には、柱状部1kを一つだけ立設しているが、その数は一つに限定されるものではない。柱状部1kのほか、ストッパピン1fも柱状部として構成すれば、柱1iは不要となるので、柱1iの立設されている領域を他の目的で利用することが可能になるし、モータの固定子の配置構成を工夫した場合には、その領域が不要となり、地板1の平面形状を小さくすることも可能になる。
【0032】
尚、本実施例は、1枚の絞り羽根7を往復回転させる絞り装置として構成したものであるが、本発明は、このような絞り口径用の開口部7aを有する1枚の絞り羽根を、直線的に往復作動させるようにした絞り装置として構成することも可能であるし、周知のように、同時に相反する方向へ直線的に往復作動させるようにした絞り装置として構成することも可能である。また、本実施例における絞り羽根7の代わりに、その開口部7aをフィルタ板で覆うようにしたフィルタ羽根を用いるようにしたり、フィルタ板だけで製作したフィルタ羽根を用いるようにすることによって、フィルタ装置とすることも可能である。
【0033】
また、本発明は、実施例における絞り羽根7をシャッタ羽根に代えることによって、1枚のシャッタ羽根を往復回転させるようにしたシャッタ装置として構成することも可能である。また、周知のように、2枚のシャッタ羽根を相反する方向へ同時に往復回転させるようにしたシャッタ装置として構成することもできるし、2枚のシャッタ羽根を同時に相反する方向へ直線的に往復作動させるようにしたシャッタ装置として構成することもできる。そして、それらの構成のシャッタ装置は、殆ど同じ構成のまま、レンズバリア装置として採用することも可能である。また、当然のことながら、本発明は、特許文献1に記載されているようなシャッタ装置に適用することも可能である。更に、本発明は、地板とカバー板との間に一つ又は複数の羽根室を構成することによって、上記のようなシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置の二つ以上を一つのユニットとして構成する場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(a)は絞り装置として構成した実施例の断面図であり、図1(b)は図1(a)の一部拡大断面図である。
【図2】図1の下方から見た実施例の平面図であって、絞り羽根が、撮影光路用の開口部から退いている状態を示したものである。
【図3】図2と同様にして見た実施例の平面図であって、絞り羽根が、絞り用の開口部を撮影光路用の開口部に臨ませている状態を示したものである。
【符号の説明】
【0035】
1 地板
1a,2a,7a 開口部
1b,2b,7b 長孔
1c 軸
1d,1e,1h,1i,1j 柱
1d−1,1e−1,1g−3,1i−1,1j−1,1k−4 鍔部
1f ストッパピン
1g 軸状部
1g−1 大径部位
1g−2 小径部位
1k 柱状部
1k−1 第1部位
1k−2 第2部位
1k−3 第3部位
2 カバー板
2c,2d,2e,2f,2g,2h,4b,4c 孔
3 回転子
3a 永久磁石
3b 出力ピン
4 固定子枠
4a ボビン部
5 コイル
6 ヨーク
7 絞り羽根


【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根室側の面から断面積の大きい部位の順であってその部位の周面がより断面積の大きい部位の周面より外側にはならないようにして第1部位,第2部位,第3部位を有している柱状部が該羽根室側の面に対して一体成形により少なくとも一つ立設されている合成樹脂製の地板と、前記地板との間に羽根室を構成していると共に前記柱状部を挿入するための孔を少なくとも一つ有しており該孔には前記第2部位の全体と前記第3部位の一部を挿入させ前記第3部位の先端を羽根室外に突き出させるカバー板と、前記羽根室内において駆動手段によって往復作動させられそのいずれかの作動時において前記第1部位の被当接部に当接させられる少なくとも1枚の羽根部材と、を備えていて、前記カバー板は、前記第3部位の先端を熱溶融して、前記孔よりも大きな外形の鍔部を形成することにより、前記地板に取り付けられていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記第2部位に、前記被当接部と同一になる面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。















【図1】
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【図2】
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【図3】
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