カメラ用羽根駆動装置
【課題】電磁アクチュエータによって、少なくとも2枚の羽根を相反する方向へ同時に回転させるようにした、設計の自由度に優れたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】電磁アクチュエータの回転子5は、永久磁石製であって、地板1の軸1kに回転可能に取付けられた本体部5aと、そこから径方向へ延伸して形成された腕部5bと、その腕部5bの先端に向けて順に設けられた二つの出力ピン5c,5dとで構成されている。シャッタ羽根3は、地板1の軸1eに回転可能に取付けられており、その長孔3aには上記の出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根4は、地板1の軸1fに回転可能に取付けられており、その長孔4aには上記の出力ピン5dが嵌合している。この構成によって、シャッタ羽根3,4は、長孔3a,4aの近傍領域が、相互に摺接しないようになっている。
【解決手段】電磁アクチュエータの回転子5は、永久磁石製であって、地板1の軸1kに回転可能に取付けられた本体部5aと、そこから径方向へ延伸して形成された腕部5bと、その腕部5bの先端に向けて順に設けられた二つの出力ピン5c,5dとで構成されている。シャッタ羽根3は、地板1の軸1eに回転可能に取付けられており、その長孔3aには上記の出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根4は、地板1の軸1fに回転可能に取付けられており、その長孔4aには上記の出力ピン5dが嵌合している。この構成によって、シャッタ羽根3,4は、長孔3a,4aの近傍領域が、相互に摺接しないようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに採用されるシャッタ装置や絞り装置などの羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに採用されている最近のレンズシャッタ装置(以下、単にシャッタ装置という)としては、下記の特許文献1にも記載されているように、2枚のシャッタ羽根を、相反する方向へ往復回転させるようにしたものが一般的である。そして、同じように構成された装置は、撮影レンズの前面に配置することによって、レンズバリア装置として使用することも可能であることが知られている。ところが、この種の2枚構成のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置の場合にも、よりよいものとするために、3枚目の羽根を備えるようにしたものが知られている。それらのうち、漏光防止のために備えるようにしたものが、下記の特許文献2に記載されており、作動時における開口口径を円形に近づけるために備えるようにしたものが、下記の特許文献3に記載されている。
【0003】
また、最近のカメラに採用されている絞り装置は、円形の絞り開口を形成した1枚の絞り羽根を往復回転させることによって、撮影光路用の開口部に進退させるようにしたものが一般的となっている。そして、そのような絞り装置において、絞り開口をNDフィルタ板で覆うようにすれば、フィルタ装置になることも知られている。このような絞り装置やフィルタ装置の場合にも、最近では小型化が要求されている。そこで、撮影光路から退いているときの収容スペースを小さくするために羽根の面積を小さくし、撮影光路用の開口部に進入させたとき、その開口部を覆い得なくなった領域を、もう一つの羽根によって覆うようにした構成が、下記の特許文献4に記載されている。このような絞り装置やフィルタ装置も、上記のシャッタ装置やレンズバリア装置と同様に、2枚の羽根を、相反する方向へ同時に回転させるようにした羽根駆動装置である。
【0004】
これらの装置の羽根は、最近では、電磁アクチュエータを駆動源として作動させられるようになっているが、中でも、ムービングマグネット型モータなどと称されている、低コストで小型化し易い電流制御式のアクチュエータが多く採用されている。この種のアクチュエータの回転子は、固定部材に回転可能に支承された本体部が、径方向に2極(又は4極)に着磁された略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて、略径方向へ延伸して一体的に形成された合成樹脂製の腕部には、回転軸と平行になるようにして出力ピンを設けたものが多いが、その腕部と出力ピンを本体部と同様に永久磁石製にしたものも知られている。そして、このような回転子は、所定の回転角度範囲内でだけ回転し、その出力ピンによって、直接又は間接に上記の各羽根を作動させるようにしているが、最近では装置が小型化されていることから、直接作動させるようにするのが一般的となっている。
【0005】
他方、この種の電磁アクチュエータの固定子としては、種々の構成のものが知られているが、実際に多く実施されているものを大きく分けると二つのタイプに分けることができる。その一つは、二つの脚部の先端を磁極部とした略U字形のヨークを備えていて、その一方の脚部に固定子コイルを巻回し、二つの磁極部を回転子の周面に対向させるように構成したものであり、もう一つは、二つの固定子枠で形成された収容室に回転子を収容し、その収容室を囲むようにして、それらの固定子枠の外側に固定子コイルを巻回するように構成したものである。そして、前者のように構成した電磁アクチュエータの一例は、特許文献1に記載されており、後者のように構成した電磁アクチュエータの一例は、特許文献1,3に記載されている。本発明は、これらの構成の電磁アクチュエータを駆動源とした上記の各カメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−241866号公報
【特許文献2】実公昭46−20534号公報
【特許文献3】特開平6−250260号公報
【特許文献4】特開2002−139765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような回転子の出力ピンにより2枚の羽根を同時に相反する方向へ回転させるようにした構成としては、特許文献1にも記載されているように、地板に対して各羽根を別々に回転可能に取り付け、それらの取付部間において、両者に形成されている長孔に出力ピンを嵌合させるようにしているのが一般的である。ところが、このような構成は、羽根相互の摺接面積が必要以上に大きく、羽根を高速で作動させる場合には、決して好ましい構成とはいえない。即ち、出力ピンに連結されている部位の近傍領域は、撮影光路用の開口部に進退する領域ではないから、出来れば相互に摺接しないようにするのが理想的であるにもかかわらず、それらの領域は、停止中も作動中も常に相互に接触するようになっているから、それだけ作動時における摩擦抵抗が大きくなってしまうことになる。そして、それらの領域を相互に接触しないようにすることは、一つの出力ピンで2枚の羽根を作動させるようにしている限り不可能である。
【0008】
また、上記したように、相反する方向へ同時に回転させられる2枚の羽根のほかに、第3の羽根を備えるようにすると、全体の羽根の枚数が多くなる分だけ、地板に対する羽根の取付け位置の設定が難しくなる。即ち、各羽根の作動量は、原則として、地板への取付け位置から出力ピンまでの距離と、羽根の回転角度によって決まるから、各羽根は、要求される作動量と、移動する出力ピンの位置とを考慮しながら取付け位置を決めることになるが、他の構成との関係で、その位置に取り付けることができないことがあったり、他の構成を変更しなければならなくなることがある。また、無理に羽根の取付け位置を変えようとすると、羽根の大きさ,形状を変えなければならなくなり、所定の大きさ,形状をした地板上の羽根室に収まらなくなってしまうことになる。その場合、出力ピンと嵌合する長孔の形状などを変えるという方法もあるが、小さな羽根のごく一部に形成さる長孔を、微妙なカム作用を必要とする形状に形成することは、製造上、決して好ましいことではない。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、永久磁石を有している回転子によって所定の角度範囲内でだけ一体的に回転する出力ピンが、少なくとも2枚の羽根を、相反する方向へ同時に回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、撮影光路用開口部の周りに構成部材をコンパクトにまとめ得るようにするために、羽根の大きさ,形状や、羽根の地板への取付け位置などを好適に決め得るようにした、設計の自由度に優れたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有する地板と、略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて前記地板に対して回転軸を垂直にして配置されており略径方向へ延伸して一体的に形成された腕部には先端に向けて順に第1出力ピンと第2出力ピンを有していて固定子コイルへの通電によって所定の回転角度範囲内で往復回転させられる回転子と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第1出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応して往復回転させられる第1羽根と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは相反する方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第2羽根と、を備えているようにする。
【0011】
その場合、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えているようにしてもよい。また、その上に、前記第2羽根が、前記第1出力ピンに連結されているようにしてもよいし、さらに、その上に、前記第1羽根と前記第3羽根とが、前記地板に対して同じ位置で回転可能に取り付けられているようにしてもよい。更に、その上に、前記地板に対して前記第2羽根と同じ位置で回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第2羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根、前記第2羽根及び前記第3羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第4羽根を備えているようにしてもよい。
【0012】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、上記の第3羽根の代わりに、前記地板に対してスライド可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し略直線的に往復作動させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えているようにしてもよい。更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記第1羽根又は前記第2羽根に、前記開口部よりも小さな開口部が形成されているようにしてもよいし、その場合、前記開口部よりも小さな開口部を形成している羽根に、該小さな開口部を覆うようにしてNDフィルタが取り付けられているようにしてもよい。更にまた、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記第1羽根と前記第2羽根とが、各々、複数枚の羽根からなり、該各複数枚の羽根は、前記地板に対して異なる位置で回転可能に取り付けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、回転子と一体的に回転する出力ピンが、2枚の羽根を相反する方向へ同時に回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、回転子から略径方向へ延伸するようにして形成された腕部に、出力ピンを二つ設けるようにしたので、作動中に、出力ピンとの連結部位の近傍領域同士を摺接させないようにすることもできるし、羽根の枚数を増やしたときには、二つの出力ピンとの種々の組み合わせ連結によって、羽根の大きさ,形状や羽根の地板への取付け位置などの選択幅が大きくなり、設計の自由度が広がるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した五つの実施例によって説明する。それらのうち、実施例1〜4は、本発明をシャッタ装置に適用したものであり、実施例5は、本発明を絞り装置に適用したものである。また、それらのシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラに採用することも、デジタルカメラに採用することも可能なものであるが、作動説明に際しては、それらの両方を説明することもないので、デジタルカメラに採用された場合で説明することにする。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4〜図6は、実施例2を説明するためのものである。また、図7及び図8は、実施例3を説明するためのものであり、図9及び図10は、実施例4を説明するためのものである。更に、図11は、実施例5を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
先ず、実施例1を、図1〜図3を用いて説明するが、図1は、地板と共に羽根室を構成しているカバー板を取り除き、本実施例の羽根室内の構成を分かり易く示した平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。また、図2は、本実施例の構成部材の重なり関係を分かり易くするために、上記のカバー板も含めて示した断面図である。更に、図3は、図1と同様にして示した本実施例の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【0016】
そこで、先ず、図1及び図2を用いて、構成を説明する。地板1は、合成樹脂で比較的厚く形成されており、略中央部に円形をした開口部1aを有している。図2から分かるように、地板1には、カバー板2が取り付けられ、両者の間に羽根室を構成している。このカバー板2は、地板1と略同じ外形をしており、開口部1aと重なるところに開口部1aよりも直径の大きな開口部が形成されている。そのため、本実施例における撮影光路用の開口部は、開口部1aによって規制されていることになる。尚、地板1に対するカバー板2の取付け方は、地板1の羽根室側の面に設けられた複数の軸1b(図1においては図示省略)を、カバー板2に形成された孔に挿入し、反対側に突き出た先端を熱溶解によって鍔状に変形させ、一体化するようにしている。図2においては、先端を変形されたそれらの軸1bを二つだけ示してある。
【0017】
地板1には、上記の開口部1aのほかに、円弧状をした二つの長孔1c,1dが形成されているが、カバー板2にも、それらと重なるところに略同じ形状をした長孔2a,2b(図2参照)が形成されている。また、地板1の羽根室側の面には、上記の複数の軸1bのほかに、二つの軸1e,1fが形成されており、それらの先端は、図2に示されているように、カバー板2に設けられた二つの孔(符号を付けていない)を貫通している。更に、地板1の羽根室外の面には、四つのストッパピン 1g,1h,1i,1jが形成されており、それらの先端は、カバー板2の外周に形成されている図示していない逃げ部から羽根室外にまで伸びている。
【0018】
羽根室内には、2枚のシャッタ羽根3,4が配置されている。それらのうち、地板1側に配置されているシャッタ羽根3は、長孔3aを有していて、地板1の軸1eに回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根4は、長孔4aを有していて、地板1の軸1fに回転可能に取り付けられている。
【0019】
地板1の羽根室外の面には、特許文献1に記載されているタイプの電磁アクチュエータが取り付けられている。先ず、地板1の軸1kに回転可能に取り付けられている回転子5は、永久磁石製であって、円筒形をした本体部5aと、そこから径方向へ延伸した腕部5bと、その腕部5bの先端に向けて順に形成された二つの出力ピン5c,5dとで構成され、本体部5aは径方向に2極となるように着磁されている。そして、出力ピン5cは、地板1の長孔1cを貫通し、羽根室内でシャッタ羽根3の長孔3aに嵌合し、先端をカバー板2の長孔2aに挿入している。また、出力ピン5dは、地板1の長孔1dを貫通し、羽根室内でシャッタ羽根4の長孔4aに嵌合し、先端をカバー板2の長孔2bに挿入している。尚、本実施例の回転子5は、全て永久磁石製であるが、腕部5bと出力ピン5c,5dについては、合成樹脂製としても構わない。
【0020】
地板1には、固定子枠6が取り付けられている。その取付け方は、固定子枠6に形成された三つの孔に、地板1に設けられた上記の軸1kと、そのほかの二つの軸1m,1nを挿入し、反対側へ突き出た先端を熱溶解で鍔状に変形させることによって一体化されている。また、この固定子枠6は、合成樹脂製であって、中空部を有するボビン部6aが一体成形によって形成されており、そこに固定子コイル7が巻回されている。本実施例のヨーク8は、略U字形をしていて、二つの脚部8a,8bの先端を磁極部とし、それらを回転子5の本体部5aの円周面に対向させている。そして、このヨーク8は、一方の脚部8aを上記のボビン部6aに挿入し、基部に形成された孔を上記の軸1nに嵌合させることによって固定されている。
【0021】
次に、本実施例の作動を、デジタルカメラに採用した場合で説明する。図1は、シャッタ羽根3,4が開口部1aを全開にした撮影待機状態を示したものである。そのため、この状態では、固体撮像素子には被写体光が当たっているので、撮影者は、液晶表示装置で被写体像を観察できるようになっている。また、周知であるため詳細には説明しないが、このとき、回転子5は、本体部5aの二つの磁極とヨーク8の二つの磁極部との相対位置関係によって、時計方向への回転力が付与されているが、シャッタ羽根3がストッパピン1gに接触し、シャッタ羽根4がストッパピン1hに接触しているため、この停止状態を維持されている。しかも、このとき、シャッタ羽根3,4は、先端側の一部が重なっているだけであり、出力ピン5c,5dとの連結部近傍領域は重なっていない。
【0022】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始される。そして、所定の時間が経過すると、固定子コイル7に対して正方向の通電が行われる。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられるので、出力ピン5cは、シャッタ羽根3を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させる。そのため、2枚のシャッタ羽根3,4は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後には、シャッタ羽根3がストッパピン1iに当接し、シャッタ羽根4がストッパピン1jに当接することによって停止する。その停止状態が図3に示されている。
【0023】
このように、本実施例の場合には、図1の状態から図3の状態になるまで、シャッタ羽根3,4は、出力ピン5c,5dとの連結部近傍領域を全く接触させない。そのため、従来のように、常に接触させている場合に比較し、作動の起動性がよくなり、作動速度も速くなるという特徴がある。しかしながら、本実施例のようにして、出力ピンを二つ設ける場合であっても、従来のように、それらとの連結部近傍領域同士を常に接触させておくように構成することも可能である。このことからも分かるように、本発明は、回転子から径方向へ張り出した一つの腕部に対し、その長さ方向に二つの出力ピンを順に形成したことによって、地板に対する羽根の取付け位置や、羽根の大きさ,形状などの選択幅が広がり、設計の自由度が大きくなることを特徴としたものである。そのため、後記する実施例2〜4のように、3枚羽根を作動させるようにする場合にも、簡単な設計の羽根形状で、極めてコンパクトに構成することも可能になる。
【0024】
このようにして、シャッタ羽根3,4の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、固定子コイル7に、先ほどとは異なり逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、出力ピン5dによってシャッタ羽根4を反時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根3,4は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根3がストッパピン1gに当接し、シャッタ羽根4がストッパピン1hに当接することによって停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、図1の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0025】
尚、本実施例の電磁アクチュエータは、上記のような構成をしているが、本発明のカメラ用羽根駆動装置の駆動源として使用することのできる電磁アクチュエータは、そのような構成をしたものに限定されず、特許文献1に記載されているものも含め、永久磁石を有する回転子と一体の腕部に出力ピンを設けていて、羽根を往復回転させ得る電磁アクチュエータであれば、どのようなものでも構わない。また、本実施例の場合には、同時に相反する方向へ往復回転する2枚のシャッタ羽根3,4を備えているが、シャッタ羽根3側を複数枚の羽根で構成し、シャッタ羽根4側も複数枚の羽根で構成しても構わない。但しその場合には、各側の複数枚の羽根は、同じ出力ピンに連結されるが、地板1に対しては異なる位置に取り付けられることになる。また、そうすることによって、一部の羽根が相手側の羽根と重なるようになることもある。そして、このように構成した場合には、各側の複数枚の羽根同士は開口部1aを全開にしたときに重畳されるので、1枚当たりの羽根を小さくすることができ、本実施例の場合よりも、地板1の面積を小さくすることが可能になる。
【実施例2】
【0026】
次に、実施例2を、図4〜図6を用いて説明するが、図4は、上記の図1と同じようにして示した平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。また、図5は、上記の図2と同じようにして示した断面図である。更に、図6は、上記の図3と同じようにして示した平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。尚、本実施例は、シャッタ羽根を3枚備えたものであるが、電磁アクチュエータの構成は、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、電磁アクチュエータの構成部材及び部位には、実施例1の場合と同じ符号を付けることにより、それらについての説明を省略する。また、そのことから、図4及び図6においては、電磁アクチュエータの固定子の図示を省略した。更に、本実施例の場合、羽根室を構成している地板とカバー板の形状は、実施例1の場合と類似している。そのため、実施例1の場合と同じ部位には同じ符号を付けることによって、それらについての説明を省略し、異なる点だけを説明することにする。また、図4及び図6では、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してあるし、3枚のシャッタ羽根のストッパピンの図示も省略してある。
【0027】
そこで、先ず、図4及び図5を用いて、実施例1とは異なる構成を説明する。地板1の羽根室側の面には、実施例1における二つの軸1e,1fの代わりに三つの軸1p,1q,1rが形成されており、それらの先端は、図5に示されているように、カバー板2に設けられた三つの孔(符号を付けていない)を貫通している。また、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根9,10,11が、地板1側から順に配置されている。そして、図4から分かるように、シャッタ羽根9は、長孔9aを有していて、上記の軸1pに回転可能に取り付けられており、その長孔9aには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根10は、長孔10aを有していて、上記の軸1qに回転可能に取り付けられており、シャッタ羽根11は、長孔11aを有していて、上記の軸1rに回転可能に取り付けられており、それらの二つの長孔10a,11aには、回転子5の腕部5bに設けられている出力ピン5dが嵌合している。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明するが、実施例1の場合と同じ点については省略するなどして、簡潔に説明する。図4は、撮影者が、液晶表示装置で被写体像を観察できる撮影待機状態を示したものである。本実施例の場合には、このとき、回転子5は、本体部5aの二つの磁極とヨーク8の二つの磁極部との相対位置関係によって、反時計方向への回転力を付与されている。ところが、シャッタ羽根9,10,11が図示していないストッパピンに接触しているため、この状態が維持されている。
【0029】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始する。そして、所定の時間が経過すると、固定子コイル7に対して逆方向(注:電流の供給方向は、実施例1に合せて説明する)の通電が行われる。そのため、回転子5は時計方向へ回転させられるので、出力ピン5cは、シャッタ羽根9を反時計方向へ回転させる。また、出力ピン5dは、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11を時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根9,10,11は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後には、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その停止状態が図6に示されている。
【0030】
この図6を見ると分かるように、本実施例の場合には、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根11とシャッタ羽根9とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根10が覆っている。また、見方を変えれば、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根11とシャッタ羽根10とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根9が覆っているともいえる。要するに、本実施例は、シャッタ羽根を3枚にすることによって、1枚当たりのシャッタ羽根を小さくすることを可能にし、シャッタ装置の小型化が図れるようにしたものである。しかしながら、それだけではなく、本実施例は一つの腕部5bの長さ方向に二つの出力ピン5c,5dを設けているから、出力ピンを一つしか備えていない場合に比較し、地板1に対する3枚のシャッタ羽根9,10,11の取付け位置、即ち軸1p,1q,1rの形成位置の選択幅が広がっている。
【0031】
そこで、本実施例の場合には、軸1p,1q,1rの形成位置を図4に示したようにすることにより、各長孔9a,10a,11aを簡単な形状に形成できるようにしている。即ち、本実施例においては、各長孔9a,10a,11aは、全て短い同じ長さの直線状に形成されていて、その長さ方向の延長線上に軸1p,1q,1rがあるように設計されている。そのため、各羽根9a,10a,11aの作動量と軸1p,1q,1rの位置との関係を割り出すのが設計時に容易となるほか、金型の設計・製作が極めて容易になる。ところが、出力ピンが一つの場合には、曲線状の長孔を形成しなければならなかったり、全て直線状とする場合には、その長さを異なるようにしたり、長さ方向の線分を軸1p,1q,1rに対して傾けて形成しなければならなかったりする。それに対して、本実施例の回転子5のように、腕部5bの長さ方向の異なる位置に二つの出力ピン5c,5dを設けた場合には、従来のように設計することもできるし、本実施例のように好適な設計もすることができ、設計の自由度が大きくなっている。
【0032】
上記のようにして、シャッタ羽根9,10,11の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、固定子コイル7に、先ほどとは異なる正方向の通電が行われると、図6において回転子5は反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cは、シャッタ羽根9を時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、シャッタ羽根10を時計方向へ、シャッタ羽根11を反時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根9,10,11は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、図4の撮影待機状態に復帰したことになる。
【実施例3】
【0033】
次に、実施例3を、図7及び図8を用いて説明するが、図7は、上記の図4と同じようにして、シャッタ羽根の全開状態を示した平面図であり、図8は、上記の図6と同じようにして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。また、上記の二つの実施例の説明から容易に理解することができるので、本実施例の説明には、断面図を用いない。尚、本実施例の場合も、シャッタ羽根を3枚備えているが、電磁アクチュエータは、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、図7及び図8においては、図4及び図6の場合と同じ符号を付け、回転子だけを示してある。また、地板1についても、実施例1の場合と実質的に同じ部位には同じ符号を付けてある。更に、図7及び図8においては、図4及び図6の場合と同様に、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してあるし、3枚のシャッタ羽根のストッパピンの図示も省略してある。
【0034】
そこで、先ず、同じようにシャッタ羽根を3枚備えていた実施例2とは異なる構成を説明する。地板1の羽根室側の面には、実施例2における三つの軸1p,1q,1rの代わりに、二つの軸1s,1tが形成されている。また、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根12,13,14が地板1側から順に配置されている。そして、シャッタ羽根12は、長孔12aを有していて、上記の軸1sに回転可能に取り付けられており、その長孔12aには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根13は、長孔13aを有していて、やはり上記の軸1sに回転可能に取り付けられているが、その長孔13aには、出力ピン5dが嵌合している。更に、シャッタ羽根14は、長孔14aを有していて、上記の軸1tに回転可能に取り付けられていて、その長孔14aには、出力ピン5cが嵌合している。
【0035】
次に、本実施例の作動を、実施例2の説明に準じて簡潔に説明する。図7は、撮影者が、液晶表示装置で被写体像を観察できる撮影待機状態を示したものであり、このとき、回転子5は、実施例2の場合と同様に、反時計方向への回転力を付与されているが、シャッタ羽根12,13,14が図示していないストッパピンに接触し、この状態を維持されている。撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影が開始する。そして、所定時間後に、図示を省略してある固定子コイル7に、逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって、シャッタ羽根13を反時計方向へ、シャッタ羽根14を時計方向へ回転させる。また、出力ピン5dは、シャッタ羽根12を反時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根12,13,14は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。このようにして、撮影が終了し、停止した状態が図8に示されている。
【0036】
この図8を見ると分かるように、本実施例の場合にも、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根14とシャッタ羽根12とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根13が覆っているともいえるし、また、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根14とシャッタ羽根13だけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根12が覆っているともいえる。即ち、本実施例の場合にも、シャッタ羽根を3枚にすることによって、1枚当たりのシャッタ羽根を小さくすることを可能にし、シャッタ装置の小型化を図れるようにしている。そして、実施例2の場合と同様に、シャッタ羽根12,13,14の各長孔12a,13a,14aは、全て短い同じ長さの直線状に形成されていて、それらの長さ方向の延長線上に軸1s,1tがあるように設計されているので、設計や製作のし易い構成となっている。従来のように、回転子5に出力ピンを一つだけ設けた場合には、このように構成することは不可能である。
【0037】
このようにして、シャッタ羽根12,13,14の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、図示を省略した固定子コイル7に、先ほどとは異なり正方向の通電が行われると、図8において回転子5が反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cが、シャッタ羽根13を時計方向へ、シャッタ羽根14を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dが、シャッタ羽根12を時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根12,13,14は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その後、図示を省略した固定子コイル7に対する通電を断つと、図7の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0038】
尚、本実施例の場合には、二つのシャッタ羽根12,13が、共に軸1sに回転可能に取り付けられていて、回転子5の回転によって同じ方向へ異なる速度で回転するように構成されているが、それと同様にして、もう1枚のシャッタ羽根をシャッタ羽根14と共に軸1tに対して回転可能に取り付けておき、その長孔に主力ピン5dを嵌合させ、回転子5が回転したとき、シャッタ羽根14と同じ方向へ異なる速度で回転するように構成しても構わない。
【実施例4】
【0039】
次に、実施例4を、図9及び図10を用いて説明するが、図9は、上記の図4と同じようにして、シャッタ羽根の全開状態を示した平面図であり、図10は、上記の図6と同じようにして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。そして、本実施例の説明にも、実施例3の場合と同じ理由で、断面図を用いない。また、電磁アクチュエータは、本実施例の場合も、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、図9及び図10においては、同じ符号を用い回転子だけを示してある。また、地板1についても、実施例1の場合と実質的に同じ部位には同じ符号を付けてある。更に、図9及び図10においては、図4及び図6の場合と同様に、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してある。
【0040】
先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例も、シャッタ羽根を3枚備えているが、実施例2,3とは、おもむきの異なる構成をしている。地板1の羽根室側の面には、二つの軸1u,1vと三つのガイド軸1x,1y,1zが形成されていて、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根15,16,17が配置されている。それらのうち、一番、地板1側に配置されているシャッタ羽根15は、三つの長孔15b,15c,15dを有しており、長孔15bには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5dを嵌合させ、長孔15cには、ガイド軸1xを嵌合させ、長孔15dには、ガイド軸1y,1zを嵌合させている。また、シャッタ羽根16は、長孔16aを有していて、軸1uに回転可能に取り付けられており、その長孔16aには、やはり出力ピン5dが嵌合している。更に、図示を省略したカバー板2に隣接して配置されているシャッタ羽根17は、長孔17aを有していて、軸1vに回転可能に取り付けられており、その長孔17aには、出力ピン5cが嵌合している。
【0041】
次に、本実施例の作動を、簡単に説明する。図9は、撮影待機状態を示したものであって、回転子5には、実施例2,3の場合と同様に、反時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、シャッタ羽根15には、ガイド軸1x,1y,1zに案内されて下方へ移動させられる力が作用し、シャッタ羽根16には、時計方向へ回転させられる力が作用し、シャッタ羽根17には、反時計方向へ回転させられる力が作用しているが、シャッタ羽根15の二つの長孔15c,15dの上端が、ガイド軸1x,1yに接触していることによって、この状態が維持されている。このことからも分かるように、本実施例の場合には、ガイド軸1x,1yが、この状態でのシャッタ羽根15のストッパピンの役目をしており、ガイド軸1zも、後述の説明からも分かるように、シャッタ羽根15のストッパピンの役目をしている。そして、シャッタ羽根16,17については、上記の各実施例のように、ストッパピンを設けてもよいが、本実施例の場合には設けていない。
【0042】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影が開始する。そして、所定時間後に、図示を省略してある固定子コイル7に、逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって、シャッタ羽根16を反時計方向へ回転させる。また、同時に、出力ピンは、シャッタ羽根15を上方へ略直線的にスライドさせると共に、シャッタ羽根17を時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根15,16,17は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根15の長孔15c,15dの下端がガイド軸1x,1zに当接して停止する。このようにして、撮影が終了し、停止した状態が図10に示されている。
【0043】
この図10を見れば分かるように、本実施例の場合も、上記の実施例2,3の場合と同様に、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根16,17だけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根15が覆うようになっている。しかしながら、本実施例の場合には、シャッタ羽根15は、地板1に対して回転可能に取り付けられておらず、ガイド軸1x,1y,1zに案内されて略直線的に作動させられる点が、実施例2,3とは大きく異なっている。また、本実施例では、シャッタ羽根15の長孔15bが、シャッタ羽根16,17の長孔16a,17aよりも長いが、図9と図10を比較してみれば分かるように、長孔16a,17aと略同じ長さにすることも可能である。
【0044】
このようにして、シャッタ羽根15,16,17の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、図示を省略した固定子コイル7に、先ほどとは異なる正方向の通電が行われると、図10において回転子5が反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cが、シャッタ羽根16を時計方向へ回転させ、出力ピン5dが、シャッタ羽根17を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根15を下方へスライドさせる。それによって、シャッタ羽根15,16,17は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根15の長孔15c,15dの上端がガイド軸1x,1yに当接することによって停止する。その後、図示を省略した固定子コイル7に対する通電を断つと、図9の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0045】
尚、上記の各実施例は、いずれも、本発明を、シャッタ装置として実施する場合の態様であるが、周知のように、これらの構成の装置を、各種のカメラのレンズバリア装置として使用することも可能である。また、上記の各実施例の作動説明は、それらのシャッタ装置が、情報端末機器に内蔵されるカメラを含むデジタルカメラに採用された場合で説明したが、周知のように、それらのシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラに採用することも可能であって、その場合には、シャッタ羽根が開口部1aを閉鎖した状態が撮影待機状態となり、撮影に際してレリーズボタンが押されると、回転子5の往復回転によって、シャッタ羽根は、開口部1aを全開状態にしてから閉鎖状態へ復帰するように作動する。
【実施例5】
【0046】
次に、実施例5を説明するが、本実施例は、本発明を、絞り装置として実施する場合の態様である。そして、図11は、上記の図3と同じようにして羽根室内を示した平面図であり、絞り羽根による撮影光路の規制状態を示したものである。そのため、地板1との間に羽根室を構成しているカバー板2の図示は省略されている。尚、本実施例の構成は、上記の実施例1における2枚のシャッタ羽根3,4を、2枚構成の絞り羽根18,19に置き換えただけであり、電磁アクチュエータの構成を含めたその他の構成は、実施例1の構成と全く同じである。そのため、図11においては、それらの構成部材及び部位に、図3の場合と同じ符号を付けているので、それらについての説明を省略する。また、図11においては、図3に示した二つの円弧状の長孔1c,1dの図示が省略されている。
【0047】
そこで、実施例1とは異なる構成について説明する。上記したように、本実施例の構成は、実施例1におけるシャッタ羽根3,4に代えて、絞り羽根18,19を羽根室内に配置したものである。それらのうち、地板1側に配置されている絞り羽根18は、長孔18aを有していて、地板1の軸1eに回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されている絞り羽根19は、長孔19aのほか、開口部1aよりも直径の小さな絞り開口規制用の開口部19bを有していて、地板1の軸1fに回転可能に取り付けられている。そして、回転子5の腕部5bに設けられている一方の出力ピン5cは、絞り羽根18の長孔18aに嵌合しており、他方の出力ピン5dは、絞り羽根19の長孔19aに嵌合している。
【0048】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図11は、撮影に際して測光した結果、被写体光が強いため、開口部1a内に絞り羽根18,19を進入させ、撮影光路を開口部19bによって規制するようにした状態を示したものである。即ち、このとき、回転子5には、反時計方向へ回転する力が付与されていて、出力ピン5cによって、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dによって、絞り羽根19を時計方向へ回転させようとしているが、絞り羽根18,19がストッパピン1i,1jに接触しているため、回転させることができず、このように、開口部19bを開口部1aと同心上に配置した状態を維持させられている。
【0049】
従って、撮影は、この状態で行われることになるが、本実施例の場合には、この状態のとき、絞り羽根19が、開口部1a内の領域のうち、本来であれば覆わなければならないのに覆い得ない領域を、絞り羽根18が覆うようにしている。仮に、その覆い得ない領域を、絞り羽根19だけで覆い得るようにするために、絞り羽根19を大きくすると、絞り羽根19を開口部1aから退かせても、その一部が、開口部1a内に残ってしまうことになるからである。そのため、絞り羽根18を用いず、絞り羽根19だけで絞り制御が行えるようにした場合よりも、本実施例の方が、地板1が小さくて済み、装置の小型化が可能になっているということである。
【0050】
この状態で、撮影が終了すると、その直後に、固定子コイル7に対して逆方向(注:電流の供給方向は、実施例1に合せている)の通電が行われ、回転子5は、時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって絞り羽根18を時計方向へ回転させ、出力ピン5dによって絞り羽根19を反時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根18,19は、開口部1aから退いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、絞り羽根18がストッパピン1gに当接し、絞り羽根19がストッパピン1hに当接して停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、撮影待機状態になる。そして、その撮影待機状態においては、周知のように、回転子5には、時計方向へ回転する力が付与されるから、絞り羽根18,19がストッパピン1g,1hに押し付けられ、その状態が維持される。
【0051】
また、次の撮影に際して、被写体光が強い場合には、固定子コイル7に対して正方向の通電が行われ、回転子5は、反時計方向へ回転させられる。そのため、出力ピン5cは、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、絞り羽根19を時計方向へ回転させることによって、絞り羽根18,19を開口部1aに進入させていく。そして、絞り羽根18がストッパピン1iに当接し、絞り羽根19がストッパピン1jに当接して停止した状態が、図11に示された状態である。
【0052】
尚、本実施例は、本発明を、絞り装置として実施する場合の態様であるが、周知のように、絞り羽根19の開口部19bを覆うようにして、絞り羽根19にNDフィルタ板を取り付けると、本実施例の装置はフィルタ装置になる。従って、本発明は、フィルタ装置としても構成することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】羽根室内を示した実施例1の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図2】実施例1の構成部材の重なり関係を示した断面図である。
【図3】図1と同様にして示した実施例1の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図4】羽根室内を示した実施例2の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図5】実施例2の構成部材の重なり関係を示した断面図である。
【図6】図4と同様にして示した実施例2の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図7】羽根室内を示した実施例3の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図8】図7と同様にして示した実施例3の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図9】羽根室内を示した実施例4の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図10】図9と同様にして示した実施例4の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図11】羽根室内を示した実施例5の平面図であって、絞り羽根による撮影光路の規制状態を示したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 地板
1a,15a,19b 開口部
1b,1e,1f,1k,1m,1n,1p〜1v 軸
1c,1d,2a,2b,3a,4a,9a,10a,11a,12a,13a,14a,15b〜15d,16a,17a,18a,19a 長孔
1g〜1j ストッパピン
1x,1y,1z ガイド軸
2 カバー板
3,4,9〜17 シャッタ羽根
5 回転子
5a 本体部
5b 腕部
5c,5d 出力ピン
6 固定子枠
6a ボビン部
7 固定子コイル
8 ヨーク
8a,8b 脚部
18,19 絞り羽根
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラに採用されるシャッタ装置や絞り装置などの羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに採用されている最近のレンズシャッタ装置(以下、単にシャッタ装置という)としては、下記の特許文献1にも記載されているように、2枚のシャッタ羽根を、相反する方向へ往復回転させるようにしたものが一般的である。そして、同じように構成された装置は、撮影レンズの前面に配置することによって、レンズバリア装置として使用することも可能であることが知られている。ところが、この種の2枚構成のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置の場合にも、よりよいものとするために、3枚目の羽根を備えるようにしたものが知られている。それらのうち、漏光防止のために備えるようにしたものが、下記の特許文献2に記載されており、作動時における開口口径を円形に近づけるために備えるようにしたものが、下記の特許文献3に記載されている。
【0003】
また、最近のカメラに採用されている絞り装置は、円形の絞り開口を形成した1枚の絞り羽根を往復回転させることによって、撮影光路用の開口部に進退させるようにしたものが一般的となっている。そして、そのような絞り装置において、絞り開口をNDフィルタ板で覆うようにすれば、フィルタ装置になることも知られている。このような絞り装置やフィルタ装置の場合にも、最近では小型化が要求されている。そこで、撮影光路から退いているときの収容スペースを小さくするために羽根の面積を小さくし、撮影光路用の開口部に進入させたとき、その開口部を覆い得なくなった領域を、もう一つの羽根によって覆うようにした構成が、下記の特許文献4に記載されている。このような絞り装置やフィルタ装置も、上記のシャッタ装置やレンズバリア装置と同様に、2枚の羽根を、相反する方向へ同時に回転させるようにした羽根駆動装置である。
【0004】
これらの装置の羽根は、最近では、電磁アクチュエータを駆動源として作動させられるようになっているが、中でも、ムービングマグネット型モータなどと称されている、低コストで小型化し易い電流制御式のアクチュエータが多く採用されている。この種のアクチュエータの回転子は、固定部材に回転可能に支承された本体部が、径方向に2極(又は4極)に着磁された略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて、略径方向へ延伸して一体的に形成された合成樹脂製の腕部には、回転軸と平行になるようにして出力ピンを設けたものが多いが、その腕部と出力ピンを本体部と同様に永久磁石製にしたものも知られている。そして、このような回転子は、所定の回転角度範囲内でだけ回転し、その出力ピンによって、直接又は間接に上記の各羽根を作動させるようにしているが、最近では装置が小型化されていることから、直接作動させるようにするのが一般的となっている。
【0005】
他方、この種の電磁アクチュエータの固定子としては、種々の構成のものが知られているが、実際に多く実施されているものを大きく分けると二つのタイプに分けることができる。その一つは、二つの脚部の先端を磁極部とした略U字形のヨークを備えていて、その一方の脚部に固定子コイルを巻回し、二つの磁極部を回転子の周面に対向させるように構成したものであり、もう一つは、二つの固定子枠で形成された収容室に回転子を収容し、その収容室を囲むようにして、それらの固定子枠の外側に固定子コイルを巻回するように構成したものである。そして、前者のように構成した電磁アクチュエータの一例は、特許文献1に記載されており、後者のように構成した電磁アクチュエータの一例は、特許文献1,3に記載されている。本発明は、これらの構成の電磁アクチュエータを駆動源とした上記の各カメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−241866号公報
【特許文献2】実公昭46−20534号公報
【特許文献3】特開平6−250260号公報
【特許文献4】特開2002−139765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のような回転子の出力ピンにより2枚の羽根を同時に相反する方向へ回転させるようにした構成としては、特許文献1にも記載されているように、地板に対して各羽根を別々に回転可能に取り付け、それらの取付部間において、両者に形成されている長孔に出力ピンを嵌合させるようにしているのが一般的である。ところが、このような構成は、羽根相互の摺接面積が必要以上に大きく、羽根を高速で作動させる場合には、決して好ましい構成とはいえない。即ち、出力ピンに連結されている部位の近傍領域は、撮影光路用の開口部に進退する領域ではないから、出来れば相互に摺接しないようにするのが理想的であるにもかかわらず、それらの領域は、停止中も作動中も常に相互に接触するようになっているから、それだけ作動時における摩擦抵抗が大きくなってしまうことになる。そして、それらの領域を相互に接触しないようにすることは、一つの出力ピンで2枚の羽根を作動させるようにしている限り不可能である。
【0008】
また、上記したように、相反する方向へ同時に回転させられる2枚の羽根のほかに、第3の羽根を備えるようにすると、全体の羽根の枚数が多くなる分だけ、地板に対する羽根の取付け位置の設定が難しくなる。即ち、各羽根の作動量は、原則として、地板への取付け位置から出力ピンまでの距離と、羽根の回転角度によって決まるから、各羽根は、要求される作動量と、移動する出力ピンの位置とを考慮しながら取付け位置を決めることになるが、他の構成との関係で、その位置に取り付けることができないことがあったり、他の構成を変更しなければならなくなることがある。また、無理に羽根の取付け位置を変えようとすると、羽根の大きさ,形状を変えなければならなくなり、所定の大きさ,形状をした地板上の羽根室に収まらなくなってしまうことになる。その場合、出力ピンと嵌合する長孔の形状などを変えるという方法もあるが、小さな羽根のごく一部に形成さる長孔を、微妙なカム作用を必要とする形状に形成することは、製造上、決して好ましいことではない。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、永久磁石を有している回転子によって所定の角度範囲内でだけ一体的に回転する出力ピンが、少なくとも2枚の羽根を、相反する方向へ同時に回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、撮影光路用開口部の周りに構成部材をコンパクトにまとめ得るようにするために、羽根の大きさ,形状や、羽根の地板への取付け位置などを好適に決め得るようにした、設計の自由度に優れたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有する地板と、略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて前記地板に対して回転軸を垂直にして配置されており略径方向へ延伸して一体的に形成された腕部には先端に向けて順に第1出力ピンと第2出力ピンを有していて固定子コイルへの通電によって所定の回転角度範囲内で往復回転させられる回転子と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第1出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応して往復回転させられる第1羽根と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは相反する方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第2羽根と、を備えているようにする。
【0011】
その場合、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えているようにしてもよい。また、その上に、前記第2羽根が、前記第1出力ピンに連結されているようにしてもよいし、さらに、その上に、前記第1羽根と前記第3羽根とが、前記地板に対して同じ位置で回転可能に取り付けられているようにしてもよい。更に、その上に、前記地板に対して前記第2羽根と同じ位置で回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第2羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根、前記第2羽根及び前記第3羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第4羽根を備えているようにしてもよい。
【0012】
また、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、上記の第3羽根の代わりに、前記地板に対してスライド可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し略直線的に往復作動させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えているようにしてもよい。更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記第1羽根又は前記第2羽根に、前記開口部よりも小さな開口部が形成されているようにしてもよいし、その場合、前記開口部よりも小さな開口部を形成している羽根に、該小さな開口部を覆うようにしてNDフィルタが取り付けられているようにしてもよい。更にまた、本発明のカメラ用羽根駆動装置においては、前記第1羽根と前記第2羽根とが、各々、複数枚の羽根からなり、該各複数枚の羽根は、前記地板に対して異なる位置で回転可能に取り付けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、回転子と一体的に回転する出力ピンが、2枚の羽根を相反する方向へ同時に回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、回転子から略径方向へ延伸するようにして形成された腕部に、出力ピンを二つ設けるようにしたので、作動中に、出力ピンとの連結部位の近傍領域同士を摺接させないようにすることもできるし、羽根の枚数を増やしたときには、二つの出力ピンとの種々の組み合わせ連結によって、羽根の大きさ,形状や羽根の地板への取付け位置などの選択幅が大きくなり、設計の自由度が広がるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した五つの実施例によって説明する。それらのうち、実施例1〜4は、本発明をシャッタ装置に適用したものであり、実施例5は、本発明を絞り装置に適用したものである。また、それらのシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラに採用することも、デジタルカメラに採用することも可能なものであるが、作動説明に際しては、それらの両方を説明することもないので、デジタルカメラに採用された場合で説明することにする。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4〜図6は、実施例2を説明するためのものである。また、図7及び図8は、実施例3を説明するためのものであり、図9及び図10は、実施例4を説明するためのものである。更に、図11は、実施例5を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
先ず、実施例1を、図1〜図3を用いて説明するが、図1は、地板と共に羽根室を構成しているカバー板を取り除き、本実施例の羽根室内の構成を分かり易く示した平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。また、図2は、本実施例の構成部材の重なり関係を分かり易くするために、上記のカバー板も含めて示した断面図である。更に、図3は、図1と同様にして示した本実施例の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【0016】
そこで、先ず、図1及び図2を用いて、構成を説明する。地板1は、合成樹脂で比較的厚く形成されており、略中央部に円形をした開口部1aを有している。図2から分かるように、地板1には、カバー板2が取り付けられ、両者の間に羽根室を構成している。このカバー板2は、地板1と略同じ外形をしており、開口部1aと重なるところに開口部1aよりも直径の大きな開口部が形成されている。そのため、本実施例における撮影光路用の開口部は、開口部1aによって規制されていることになる。尚、地板1に対するカバー板2の取付け方は、地板1の羽根室側の面に設けられた複数の軸1b(図1においては図示省略)を、カバー板2に形成された孔に挿入し、反対側に突き出た先端を熱溶解によって鍔状に変形させ、一体化するようにしている。図2においては、先端を変形されたそれらの軸1bを二つだけ示してある。
【0017】
地板1には、上記の開口部1aのほかに、円弧状をした二つの長孔1c,1dが形成されているが、カバー板2にも、それらと重なるところに略同じ形状をした長孔2a,2b(図2参照)が形成されている。また、地板1の羽根室側の面には、上記の複数の軸1bのほかに、二つの軸1e,1fが形成されており、それらの先端は、図2に示されているように、カバー板2に設けられた二つの孔(符号を付けていない)を貫通している。更に、地板1の羽根室外の面には、四つのストッパピン 1g,1h,1i,1jが形成されており、それらの先端は、カバー板2の外周に形成されている図示していない逃げ部から羽根室外にまで伸びている。
【0018】
羽根室内には、2枚のシャッタ羽根3,4が配置されている。それらのうち、地板1側に配置されているシャッタ羽根3は、長孔3aを有していて、地板1の軸1eに回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根4は、長孔4aを有していて、地板1の軸1fに回転可能に取り付けられている。
【0019】
地板1の羽根室外の面には、特許文献1に記載されているタイプの電磁アクチュエータが取り付けられている。先ず、地板1の軸1kに回転可能に取り付けられている回転子5は、永久磁石製であって、円筒形をした本体部5aと、そこから径方向へ延伸した腕部5bと、その腕部5bの先端に向けて順に形成された二つの出力ピン5c,5dとで構成され、本体部5aは径方向に2極となるように着磁されている。そして、出力ピン5cは、地板1の長孔1cを貫通し、羽根室内でシャッタ羽根3の長孔3aに嵌合し、先端をカバー板2の長孔2aに挿入している。また、出力ピン5dは、地板1の長孔1dを貫通し、羽根室内でシャッタ羽根4の長孔4aに嵌合し、先端をカバー板2の長孔2bに挿入している。尚、本実施例の回転子5は、全て永久磁石製であるが、腕部5bと出力ピン5c,5dについては、合成樹脂製としても構わない。
【0020】
地板1には、固定子枠6が取り付けられている。その取付け方は、固定子枠6に形成された三つの孔に、地板1に設けられた上記の軸1kと、そのほかの二つの軸1m,1nを挿入し、反対側へ突き出た先端を熱溶解で鍔状に変形させることによって一体化されている。また、この固定子枠6は、合成樹脂製であって、中空部を有するボビン部6aが一体成形によって形成されており、そこに固定子コイル7が巻回されている。本実施例のヨーク8は、略U字形をしていて、二つの脚部8a,8bの先端を磁極部とし、それらを回転子5の本体部5aの円周面に対向させている。そして、このヨーク8は、一方の脚部8aを上記のボビン部6aに挿入し、基部に形成された孔を上記の軸1nに嵌合させることによって固定されている。
【0021】
次に、本実施例の作動を、デジタルカメラに採用した場合で説明する。図1は、シャッタ羽根3,4が開口部1aを全開にした撮影待機状態を示したものである。そのため、この状態では、固体撮像素子には被写体光が当たっているので、撮影者は、液晶表示装置で被写体像を観察できるようになっている。また、周知であるため詳細には説明しないが、このとき、回転子5は、本体部5aの二つの磁極とヨーク8の二つの磁極部との相対位置関係によって、時計方向への回転力が付与されているが、シャッタ羽根3がストッパピン1gに接触し、シャッタ羽根4がストッパピン1hに接触しているため、この停止状態を維持されている。しかも、このとき、シャッタ羽根3,4は、先端側の一部が重なっているだけであり、出力ピン5c,5dとの連結部近傍領域は重なっていない。
【0022】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始される。そして、所定の時間が経過すると、固定子コイル7に対して正方向の通電が行われる。それによって、回転子5は反時計方向へ回転させられるので、出力ピン5cは、シャッタ羽根3を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させる。そのため、2枚のシャッタ羽根3,4は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後には、シャッタ羽根3がストッパピン1iに当接し、シャッタ羽根4がストッパピン1jに当接することによって停止する。その停止状態が図3に示されている。
【0023】
このように、本実施例の場合には、図1の状態から図3の状態になるまで、シャッタ羽根3,4は、出力ピン5c,5dとの連結部近傍領域を全く接触させない。そのため、従来のように、常に接触させている場合に比較し、作動の起動性がよくなり、作動速度も速くなるという特徴がある。しかしながら、本実施例のようにして、出力ピンを二つ設ける場合であっても、従来のように、それらとの連結部近傍領域同士を常に接触させておくように構成することも可能である。このことからも分かるように、本発明は、回転子から径方向へ張り出した一つの腕部に対し、その長さ方向に二つの出力ピンを順に形成したことによって、地板に対する羽根の取付け位置や、羽根の大きさ,形状などの選択幅が広がり、設計の自由度が大きくなることを特徴としたものである。そのため、後記する実施例2〜4のように、3枚羽根を作動させるようにする場合にも、簡単な設計の羽根形状で、極めてコンパクトに構成することも可能になる。
【0024】
このようにして、シャッタ羽根3,4の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、固定子コイル7に、先ほどとは異なり逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによってシャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、出力ピン5dによってシャッタ羽根4を反時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根3,4は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根3がストッパピン1gに当接し、シャッタ羽根4がストッパピン1hに当接することによって停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、図1の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0025】
尚、本実施例の電磁アクチュエータは、上記のような構成をしているが、本発明のカメラ用羽根駆動装置の駆動源として使用することのできる電磁アクチュエータは、そのような構成をしたものに限定されず、特許文献1に記載されているものも含め、永久磁石を有する回転子と一体の腕部に出力ピンを設けていて、羽根を往復回転させ得る電磁アクチュエータであれば、どのようなものでも構わない。また、本実施例の場合には、同時に相反する方向へ往復回転する2枚のシャッタ羽根3,4を備えているが、シャッタ羽根3側を複数枚の羽根で構成し、シャッタ羽根4側も複数枚の羽根で構成しても構わない。但しその場合には、各側の複数枚の羽根は、同じ出力ピンに連結されるが、地板1に対しては異なる位置に取り付けられることになる。また、そうすることによって、一部の羽根が相手側の羽根と重なるようになることもある。そして、このように構成した場合には、各側の複数枚の羽根同士は開口部1aを全開にしたときに重畳されるので、1枚当たりの羽根を小さくすることができ、本実施例の場合よりも、地板1の面積を小さくすることが可能になる。
【実施例2】
【0026】
次に、実施例2を、図4〜図6を用いて説明するが、図4は、上記の図1と同じようにして示した平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。また、図5は、上記の図2と同じようにして示した断面図である。更に、図6は、上記の図3と同じようにして示した平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。尚、本実施例は、シャッタ羽根を3枚備えたものであるが、電磁アクチュエータの構成は、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、電磁アクチュエータの構成部材及び部位には、実施例1の場合と同じ符号を付けることにより、それらについての説明を省略する。また、そのことから、図4及び図6においては、電磁アクチュエータの固定子の図示を省略した。更に、本実施例の場合、羽根室を構成している地板とカバー板の形状は、実施例1の場合と類似している。そのため、実施例1の場合と同じ部位には同じ符号を付けることによって、それらについての説明を省略し、異なる点だけを説明することにする。また、図4及び図6では、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してあるし、3枚のシャッタ羽根のストッパピンの図示も省略してある。
【0027】
そこで、先ず、図4及び図5を用いて、実施例1とは異なる構成を説明する。地板1の羽根室側の面には、実施例1における二つの軸1e,1fの代わりに三つの軸1p,1q,1rが形成されており、それらの先端は、図5に示されているように、カバー板2に設けられた三つの孔(符号を付けていない)を貫通している。また、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根9,10,11が、地板1側から順に配置されている。そして、図4から分かるように、シャッタ羽根9は、長孔9aを有していて、上記の軸1pに回転可能に取り付けられており、その長孔9aには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根10は、長孔10aを有していて、上記の軸1qに回転可能に取り付けられており、シャッタ羽根11は、長孔11aを有していて、上記の軸1rに回転可能に取り付けられており、それらの二つの長孔10a,11aには、回転子5の腕部5bに設けられている出力ピン5dが嵌合している。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明するが、実施例1の場合と同じ点については省略するなどして、簡潔に説明する。図4は、撮影者が、液晶表示装置で被写体像を観察できる撮影待機状態を示したものである。本実施例の場合には、このとき、回転子5は、本体部5aの二つの磁極とヨーク8の二つの磁極部との相対位置関係によって、反時計方向への回転力を付与されている。ところが、シャッタ羽根9,10,11が図示していないストッパピンに接触しているため、この状態が維持されている。
【0029】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、その直後から撮影のための電荷の蓄積が開始する。そして、所定の時間が経過すると、固定子コイル7に対して逆方向(注:電流の供給方向は、実施例1に合せて説明する)の通電が行われる。そのため、回転子5は時計方向へ回転させられるので、出力ピン5cは、シャッタ羽根9を反時計方向へ回転させる。また、出力ピン5dは、シャッタ羽根10を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根11を時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根9,10,11は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後には、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その停止状態が図6に示されている。
【0030】
この図6を見ると分かるように、本実施例の場合には、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根11とシャッタ羽根9とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根10が覆っている。また、見方を変えれば、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根11とシャッタ羽根10とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根9が覆っているともいえる。要するに、本実施例は、シャッタ羽根を3枚にすることによって、1枚当たりのシャッタ羽根を小さくすることを可能にし、シャッタ装置の小型化が図れるようにしたものである。しかしながら、それだけではなく、本実施例は一つの腕部5bの長さ方向に二つの出力ピン5c,5dを設けているから、出力ピンを一つしか備えていない場合に比較し、地板1に対する3枚のシャッタ羽根9,10,11の取付け位置、即ち軸1p,1q,1rの形成位置の選択幅が広がっている。
【0031】
そこで、本実施例の場合には、軸1p,1q,1rの形成位置を図4に示したようにすることにより、各長孔9a,10a,11aを簡単な形状に形成できるようにしている。即ち、本実施例においては、各長孔9a,10a,11aは、全て短い同じ長さの直線状に形成されていて、その長さ方向の延長線上に軸1p,1q,1rがあるように設計されている。そのため、各羽根9a,10a,11aの作動量と軸1p,1q,1rの位置との関係を割り出すのが設計時に容易となるほか、金型の設計・製作が極めて容易になる。ところが、出力ピンが一つの場合には、曲線状の長孔を形成しなければならなかったり、全て直線状とする場合には、その長さを異なるようにしたり、長さ方向の線分を軸1p,1q,1rに対して傾けて形成しなければならなかったりする。それに対して、本実施例の回転子5のように、腕部5bの長さ方向の異なる位置に二つの出力ピン5c,5dを設けた場合には、従来のように設計することもできるし、本実施例のように好適な設計もすることができ、設計の自由度が大きくなっている。
【0032】
上記のようにして、シャッタ羽根9,10,11の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、固定子コイル7に、先ほどとは異なる正方向の通電が行われると、図6において回転子5は反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cは、シャッタ羽根9を時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、シャッタ羽根10を時計方向へ、シャッタ羽根11を反時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根9,10,11は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、図4の撮影待機状態に復帰したことになる。
【実施例3】
【0033】
次に、実施例3を、図7及び図8を用いて説明するが、図7は、上記の図4と同じようにして、シャッタ羽根の全開状態を示した平面図であり、図8は、上記の図6と同じようにして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。また、上記の二つの実施例の説明から容易に理解することができるので、本実施例の説明には、断面図を用いない。尚、本実施例の場合も、シャッタ羽根を3枚備えているが、電磁アクチュエータは、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、図7及び図8においては、図4及び図6の場合と同じ符号を付け、回転子だけを示してある。また、地板1についても、実施例1の場合と実質的に同じ部位には同じ符号を付けてある。更に、図7及び図8においては、図4及び図6の場合と同様に、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してあるし、3枚のシャッタ羽根のストッパピンの図示も省略してある。
【0034】
そこで、先ず、同じようにシャッタ羽根を3枚備えていた実施例2とは異なる構成を説明する。地板1の羽根室側の面には、実施例2における三つの軸1p,1q,1rの代わりに、二つの軸1s,1tが形成されている。また、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根12,13,14が地板1側から順に配置されている。そして、シャッタ羽根12は、長孔12aを有していて、上記の軸1sに回転可能に取り付けられており、その長孔12aには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5cが嵌合している。また、シャッタ羽根13は、長孔13aを有していて、やはり上記の軸1sに回転可能に取り付けられているが、その長孔13aには、出力ピン5dが嵌合している。更に、シャッタ羽根14は、長孔14aを有していて、上記の軸1tに回転可能に取り付けられていて、その長孔14aには、出力ピン5cが嵌合している。
【0035】
次に、本実施例の作動を、実施例2の説明に準じて簡潔に説明する。図7は、撮影者が、液晶表示装置で被写体像を観察できる撮影待機状態を示したものであり、このとき、回転子5は、実施例2の場合と同様に、反時計方向への回転力を付与されているが、シャッタ羽根12,13,14が図示していないストッパピンに接触し、この状態を維持されている。撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影が開始する。そして、所定時間後に、図示を省略してある固定子コイル7に、逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって、シャッタ羽根13を反時計方向へ、シャッタ羽根14を時計方向へ回転させる。また、出力ピン5dは、シャッタ羽根12を反時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根12,13,14は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。このようにして、撮影が終了し、停止した状態が図8に示されている。
【0036】
この図8を見ると分かるように、本実施例の場合にも、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根14とシャッタ羽根12とだけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根13が覆っているともいえるし、また、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根14とシャッタ羽根13だけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根12が覆っているともいえる。即ち、本実施例の場合にも、シャッタ羽根を3枚にすることによって、1枚当たりのシャッタ羽根を小さくすることを可能にし、シャッタ装置の小型化を図れるようにしている。そして、実施例2の場合と同様に、シャッタ羽根12,13,14の各長孔12a,13a,14aは、全て短い同じ長さの直線状に形成されていて、それらの長さ方向の延長線上に軸1s,1tがあるように設計されているので、設計や製作のし易い構成となっている。従来のように、回転子5に出力ピンを一つだけ設けた場合には、このように構成することは不可能である。
【0037】
このようにして、シャッタ羽根12,13,14の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、図示を省略した固定子コイル7に、先ほどとは異なり正方向の通電が行われると、図8において回転子5が反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cが、シャッタ羽根13を時計方向へ、シャッタ羽根14を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dが、シャッタ羽根12を時計方向へ回転させる。それによって、シャッタ羽根12,13,14は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、図示していない各々のストッパピンに当接し停止する。その後、図示を省略した固定子コイル7に対する通電を断つと、図7の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0038】
尚、本実施例の場合には、二つのシャッタ羽根12,13が、共に軸1sに回転可能に取り付けられていて、回転子5の回転によって同じ方向へ異なる速度で回転するように構成されているが、それと同様にして、もう1枚のシャッタ羽根をシャッタ羽根14と共に軸1tに対して回転可能に取り付けておき、その長孔に主力ピン5dを嵌合させ、回転子5が回転したとき、シャッタ羽根14と同じ方向へ異なる速度で回転するように構成しても構わない。
【実施例4】
【0039】
次に、実施例4を、図9及び図10を用いて説明するが、図9は、上記の図4と同じようにして、シャッタ羽根の全開状態を示した平面図であり、図10は、上記の図6と同じようにして、シャッタ羽根の閉鎖状態を示した平面図である。そして、本実施例の説明にも、実施例3の場合と同じ理由で、断面図を用いない。また、電磁アクチュエータは、本実施例の場合も、実施例1で説明したものと実質的に同じである。そのため、図9及び図10においては、同じ符号を用い回転子だけを示してある。また、地板1についても、実施例1の場合と実質的に同じ部位には同じ符号を付けてある。更に、図9及び図10においては、図4及び図6の場合と同様に、図1及び図3に示された長孔1c,1dの図示を省略してある。
【0040】
先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例も、シャッタ羽根を3枚備えているが、実施例2,3とは、おもむきの異なる構成をしている。地板1の羽根室側の面には、二つの軸1u,1vと三つのガイド軸1x,1y,1zが形成されていて、羽根室内には、3枚のシャッタ羽根15,16,17が配置されている。それらのうち、一番、地板1側に配置されているシャッタ羽根15は、三つの長孔15b,15c,15dを有しており、長孔15bには、回転子5の腕部5bに設けられた出力ピン5dを嵌合させ、長孔15cには、ガイド軸1xを嵌合させ、長孔15dには、ガイド軸1y,1zを嵌合させている。また、シャッタ羽根16は、長孔16aを有していて、軸1uに回転可能に取り付けられており、その長孔16aには、やはり出力ピン5dが嵌合している。更に、図示を省略したカバー板2に隣接して配置されているシャッタ羽根17は、長孔17aを有していて、軸1vに回転可能に取り付けられており、その長孔17aには、出力ピン5cが嵌合している。
【0041】
次に、本実施例の作動を、簡単に説明する。図9は、撮影待機状態を示したものであって、回転子5には、実施例2,3の場合と同様に、反時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、シャッタ羽根15には、ガイド軸1x,1y,1zに案内されて下方へ移動させられる力が作用し、シャッタ羽根16には、時計方向へ回転させられる力が作用し、シャッタ羽根17には、反時計方向へ回転させられる力が作用しているが、シャッタ羽根15の二つの長孔15c,15dの上端が、ガイド軸1x,1yに接触していることによって、この状態が維持されている。このことからも分かるように、本実施例の場合には、ガイド軸1x,1yが、この状態でのシャッタ羽根15のストッパピンの役目をしており、ガイド軸1zも、後述の説明からも分かるように、シャッタ羽根15のストッパピンの役目をしている。そして、シャッタ羽根16,17については、上記の各実施例のように、ストッパピンを設けてもよいが、本実施例の場合には設けていない。
【0042】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影が開始する。そして、所定時間後に、図示を省略してある固定子コイル7に、逆方向の通電が行われると、回転子5は時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって、シャッタ羽根16を反時計方向へ回転させる。また、同時に、出力ピンは、シャッタ羽根15を上方へ略直線的にスライドさせると共に、シャッタ羽根17を時計方向へ回転させる。そのため、3枚のシャッタ羽根15,16,17は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根15の長孔15c,15dの下端がガイド軸1x,1zに当接して停止する。このようにして、撮影が終了し、停止した状態が図10に示されている。
【0043】
この図10を見れば分かるように、本実施例の場合も、上記の実施例2,3の場合と同様に、相反する方向へ同時に回転させられるシャッタ羽根16,17だけでは開口部1aを完全に閉鎖できない領域をシャッタ羽根15が覆うようになっている。しかしながら、本実施例の場合には、シャッタ羽根15は、地板1に対して回転可能に取り付けられておらず、ガイド軸1x,1y,1zに案内されて略直線的に作動させられる点が、実施例2,3とは大きく異なっている。また、本実施例では、シャッタ羽根15の長孔15bが、シャッタ羽根16,17の長孔16a,17aよりも長いが、図9と図10を比較してみれば分かるように、長孔16a,17aと略同じ長さにすることも可能である。
【0044】
このようにして、シャッタ羽根15,16,17の閉じ作動が終了すると、その直後に、固体撮像素子で光電変換された撮像情報が記憶装置に転送される。そして、その後、図示を省略した固定子コイル7に、先ほどとは異なる正方向の通電が行われると、図10において回転子5が反時計方向へ回転させられ、出力ピン5cが、シャッタ羽根16を時計方向へ回転させ、出力ピン5dが、シャッタ羽根17を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根15を下方へスライドさせる。それによって、シャッタ羽根15,16,17は、開口部1aを開いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根15の長孔15c,15dの上端がガイド軸1x,1yに当接することによって停止する。その後、図示を省略した固定子コイル7に対する通電を断つと、図9の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0045】
尚、上記の各実施例は、いずれも、本発明を、シャッタ装置として実施する場合の態様であるが、周知のように、これらの構成の装置を、各種のカメラのレンズバリア装置として使用することも可能である。また、上記の各実施例の作動説明は、それらのシャッタ装置が、情報端末機器に内蔵されるカメラを含むデジタルカメラに採用された場合で説明したが、周知のように、それらのシャッタ装置は、銀塩フィルムカメラに採用することも可能であって、その場合には、シャッタ羽根が開口部1aを閉鎖した状態が撮影待機状態となり、撮影に際してレリーズボタンが押されると、回転子5の往復回転によって、シャッタ羽根は、開口部1aを全開状態にしてから閉鎖状態へ復帰するように作動する。
【実施例5】
【0046】
次に、実施例5を説明するが、本実施例は、本発明を、絞り装置として実施する場合の態様である。そして、図11は、上記の図3と同じようにして羽根室内を示した平面図であり、絞り羽根による撮影光路の規制状態を示したものである。そのため、地板1との間に羽根室を構成しているカバー板2の図示は省略されている。尚、本実施例の構成は、上記の実施例1における2枚のシャッタ羽根3,4を、2枚構成の絞り羽根18,19に置き換えただけであり、電磁アクチュエータの構成を含めたその他の構成は、実施例1の構成と全く同じである。そのため、図11においては、それらの構成部材及び部位に、図3の場合と同じ符号を付けているので、それらについての説明を省略する。また、図11においては、図3に示した二つの円弧状の長孔1c,1dの図示が省略されている。
【0047】
そこで、実施例1とは異なる構成について説明する。上記したように、本実施例の構成は、実施例1におけるシャッタ羽根3,4に代えて、絞り羽根18,19を羽根室内に配置したものである。それらのうち、地板1側に配置されている絞り羽根18は、長孔18aを有していて、地板1の軸1eに回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されている絞り羽根19は、長孔19aのほか、開口部1aよりも直径の小さな絞り開口規制用の開口部19bを有していて、地板1の軸1fに回転可能に取り付けられている。そして、回転子5の腕部5bに設けられている一方の出力ピン5cは、絞り羽根18の長孔18aに嵌合しており、他方の出力ピン5dは、絞り羽根19の長孔19aに嵌合している。
【0048】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図11は、撮影に際して測光した結果、被写体光が強いため、開口部1a内に絞り羽根18,19を進入させ、撮影光路を開口部19bによって規制するようにした状態を示したものである。即ち、このとき、回転子5には、反時計方向へ回転する力が付与されていて、出力ピン5cによって、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dによって、絞り羽根19を時計方向へ回転させようとしているが、絞り羽根18,19がストッパピン1i,1jに接触しているため、回転させることができず、このように、開口部19bを開口部1aと同心上に配置した状態を維持させられている。
【0049】
従って、撮影は、この状態で行われることになるが、本実施例の場合には、この状態のとき、絞り羽根19が、開口部1a内の領域のうち、本来であれば覆わなければならないのに覆い得ない領域を、絞り羽根18が覆うようにしている。仮に、その覆い得ない領域を、絞り羽根19だけで覆い得るようにするために、絞り羽根19を大きくすると、絞り羽根19を開口部1aから退かせても、その一部が、開口部1a内に残ってしまうことになるからである。そのため、絞り羽根18を用いず、絞り羽根19だけで絞り制御が行えるようにした場合よりも、本実施例の方が、地板1が小さくて済み、装置の小型化が可能になっているということである。
【0050】
この状態で、撮影が終了すると、その直後に、固定子コイル7に対して逆方向(注:電流の供給方向は、実施例1に合せている)の通電が行われ、回転子5は、時計方向へ回転させられ、出力ピン5cによって絞り羽根18を時計方向へ回転させ、出力ピン5dによって絞り羽根19を反時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根18,19は、開口部1aから退いてゆき、開口部1aを全開にした直後に、絞り羽根18がストッパピン1gに当接し、絞り羽根19がストッパピン1hに当接して停止する。その後、固定子コイル7に対する通電を断つと、撮影待機状態になる。そして、その撮影待機状態においては、周知のように、回転子5には、時計方向へ回転する力が付与されるから、絞り羽根18,19がストッパピン1g,1hに押し付けられ、その状態が維持される。
【0051】
また、次の撮影に際して、被写体光が強い場合には、固定子コイル7に対して正方向の通電が行われ、回転子5は、反時計方向へ回転させられる。そのため、出力ピン5cは、絞り羽根18を反時計方向へ回転させ、出力ピン5dは、絞り羽根19を時計方向へ回転させることによって、絞り羽根18,19を開口部1aに進入させていく。そして、絞り羽根18がストッパピン1iに当接し、絞り羽根19がストッパピン1jに当接して停止した状態が、図11に示された状態である。
【0052】
尚、本実施例は、本発明を、絞り装置として実施する場合の態様であるが、周知のように、絞り羽根19の開口部19bを覆うようにして、絞り羽根19にNDフィルタ板を取り付けると、本実施例の装置はフィルタ装置になる。従って、本発明は、フィルタ装置としても構成することが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】羽根室内を示した実施例1の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図2】実施例1の構成部材の重なり関係を示した断面図である。
【図3】図1と同様にして示した実施例1の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図4】羽根室内を示した実施例2の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図5】実施例2の構成部材の重なり関係を示した断面図である。
【図6】図4と同様にして示した実施例2の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図7】羽根室内を示した実施例3の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図8】図7と同様にして示した実施例3の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図9】羽根室内を示した実施例4の平面図であって、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。
【図10】図9と同様にして示した実施例4の平面図であって、シャッタ羽根の閉鎖状態を示したものである。
【図11】羽根室内を示した実施例5の平面図であって、絞り羽根による撮影光路の規制状態を示したものである。
【符号の説明】
【0054】
1 地板
1a,15a,19b 開口部
1b,1e,1f,1k,1m,1n,1p〜1v 軸
1c,1d,2a,2b,3a,4a,9a,10a,11a,12a,13a,14a,15b〜15d,16a,17a,18a,19a 長孔
1g〜1j ストッパピン
1x,1y,1z ガイド軸
2 カバー板
3,4,9〜17 シャッタ羽根
5 回転子
5a 本体部
5b 腕部
5c,5d 出力ピン
6 固定子枠
6a ボビン部
7 固定子コイル
8 ヨーク
8a,8b 脚部
18,19 絞り羽根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有する地板と、略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて前記地板に対して回転軸を垂直にして配置されており略径方向へ延伸して一体的に形成された腕部には先端に向けて順に第1出力ピンと第2出力ピンを有していて固定子コイルへの通電によって所定の回転角度範囲内で往復回転させられる回転子と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第1出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応して往復回転させられる第1羽根と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは相反する方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第2羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第2羽根が、前記第1出力ピンに連結されていることを特徴とする請求項2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第1羽根と前記第3羽根とが、前記地板に対して同じ位置で回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記地板に対して前記第2羽根と同じ位置で回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第2羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根、前記第2羽根及び前記第3羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第4羽根を備えていることを特徴とする請求項4に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記地板に対してスライド可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し略直線的に往復作動させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1羽根又は前記第2羽根に、前記開口部よりも小さな開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項8】
前記開口部よりも小さな開口部を形成している羽根に、該小さな開口部を覆うようにしてNDフィルタが取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項9】
前記第1羽根と前記第2羽根とが、各々、複数枚の羽根からなり、該各複数枚の羽根は、前記地板に対して異なる位置で回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有する地板と、略円柱形又は略円筒形をした永久磁石を有していて前記地板に対して回転軸を垂直にして配置されており略径方向へ延伸して一体的に形成された腕部には先端に向けて順に第1出力ピンと第2出力ピンを有していて固定子コイルへの通電によって所定の回転角度範囲内で往復回転させられる回転子と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第1出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応して往復回転させられる第1羽根と、前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは相反する方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第2羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記地板に対して回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第1羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記第2羽根が、前記第1出力ピンに連結されていることを特徴とする請求項2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第1羽根と前記第3羽根とが、前記地板に対して同じ位置で回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記地板に対して前記第2羽根と同じ位置で回転可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し前記第2羽根とは同じ方向へ同時に往復回転させられ前記第1羽根、前記第2羽根及び前記第3羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第4羽根を備えていることを特徴とする請求項4に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記地板に対してスライド可能に取り付けられていて前記第2出力ピンに連結されており前記回転子の往復回転に対応し略直線的に往復作動させられ前記第1羽根及び第2羽根と協働して前記開口部の開閉作動を行う第3羽根を備えていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1羽根又は前記第2羽根に、前記開口部よりも小さな開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項8】
前記開口部よりも小さな開口部を形成している羽根に、該小さな開口部を覆うようにしてNDフィルタが取り付けられていることを特徴とする請求項7に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項9】
前記第1羽根と前記第2羽根とが、各々、複数枚の羽根からなり、該各複数枚の羽根は、前記地板に対して異なる位置で回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−256721(P2007−256721A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82187(P2006−82187)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】
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