説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】光量制御用開口部を有する光量制御羽根とシャッタ羽根とが、余り制約を受けずに、一つの羽根室内に配置できるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】羽根室内には、回転子9の出力ピン9cによって同時に相反する方向へ回転させられるシャッタ羽根5,6と、回転子10の出力ピン10cによって同時に相反する方向へ回転させられる絞り羽根7と補助羽根8が配置されている。また、それらは、地板1側から、絞り羽根7、シャッタ羽根6と補助羽根8、シャッタ羽根5、の順に配置されており、補助羽根8は、常に、シャッタ羽根5と絞り羽根7の間にあって、露光用開口部1aに臨むことはない。そして、撮影に際して、シャッタ羽根5,6だけが作動させられるときには、補助羽根8が、絞り羽根7の光量制御用開口部7aを覆っているので、シャッタ羽根5の先端部は、光量制御用開口部7aの縁に衝突することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根と光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)とを一つの羽根室内に配置したカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に記載されているシャッタ装置は、2枚のシャッタ羽根が、駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられ、開き作動の場合には、露光開口の中央部から開き始め、閉じ作動の場合には、露光開口の中央部を最後にして閉じるように構成されている。そして、2枚のシャッタ羽根にこのような作動を行わせる場合には、閉じ作動を行うとき、各々のシャッタ羽根が光軸に対して垂直な面で作動せず、傾いたり撓んだりすることによって、両者の先端部同士が衝突してしまうことがあるため、それらの先端部を長くして、露光開口を全開にしているときでも、それらの先端部が重なっているようにしている。ところが、そのような構成にすると、各々のシャッタ羽根が大きくなることから、シャッタ羽根の先端を長くしなくても、シャッタ羽根同士が衝突しないようにするために、二つの地板の間を中間板で仕切ることによって二つの羽根室を構成し、2枚のシャッタ羽根を別々の羽根室内で作動させるようにしたシャッタ装置が、下記の特許文献2に記載されている。
【0003】
ところで、シャッタ装置と光量制御装置(絞り装置,フィルタ装置)とを一つのユニットとして構成する場合があるが、そのような場合にも、シャッタ羽根と光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)とが作動中に衝突しないようにする必要がある。そのため、そのようなユニットを構成する場合は、従来から、上記のようにして二つの羽根室を構成し、一方の羽根室にはシャッタ羽根を、他方の羽根室には光量制御羽根を配置するのが一般的であった。ところが、そのような構成は、中間板がかなり大きな部材であることや、その取付構成が必要であることなどを考えると、コストの面では、決して好ましいとは言えなかった。そこで、中間板を設けることなく、2枚のシャッタ羽根と1枚の絞り羽根とを一つの羽根室に配置したとしても、作動中に各羽根間で衝突が起きないようにした構成が、下記の特許文献3で知られている。そして、この構成において、絞り羽根に形成されている円形の光量制御用開口部をNDフィルタシートで覆うようにすれば、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化したものになる。本発明は、このように、シャッタ羽根と光量制御羽根とを一つの羽根室内に配置したカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−177447号公報
【特許文献2】特開2005−99167号公報
【特許文献3】特開2004−205996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載された羽根駆動装置の場合、2枚のシャッタ羽根は互いに隣接していて、どのような作動状態でも常にそれらの一部が重なっており、絞り羽根は一方のシャッタ羽根とだけ隣接していて、どのような作動状態でも常にそれらの一部が重なっているようにして配置されている。そして、2枚のシャッタ羽根は、特許文献1に記載されているシャッタ羽根のように、先端部を長く形成していないが、閉じ作動を行うときには、挟みのようにしてそれらの回転軸側から先端部に向けて順に重なっていく形状になっているため、両者の先端部同士が衝突することがない。その代わり、先端部を長くしたシャッタ羽根のように、露光開口の中央部から開き始め、中央部を最後にして閉じていくようにはできなくなっている。また、2枚のシャッタ羽根は、絞り羽根が露光開口に進入した状態のときにも、退避した状態のときにも、作動中にそれらの先端部が光量制御用開口部に重なることがない。そのため、シャッタ羽根が作動中に傾いたり撓んだりすることがあったとしても、いずれの先端部も光量制御用開口部の縁に衝突するようなことがない。
【0006】
しかしながら、そのようにシャッタ羽根と絞り羽根が衝突しないのは、羽根の形状によることもあるが、主な理由は、シャッタ羽根の駆動手段と絞り羽根の駆動手段とを、そのような衝突の生じ得ない位置関係にして配置しているからである。ところが、カメラの仕様によっては、両方の駆動手段を、そのような都合のよい位置関係にして配置することのできないことがある。特に、最近ではカメラが小型化されていて、羽根駆動装置は、その地板の大きさや形状に厳しい制約を受けるため、むしろ、そのように配置できないことの方が多くなっている。しかも、特許文献1に記載されているシャッタ羽根のように、先端部を細長くしたい場合には、シャッタ羽根が傾いたり撓み易くなるうえに、先端部の作動域が大きくなるため、その先端部が光量制御用開口部の縁に衝突しないようにするのが一層困難になる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、一つの羽根室内に、シャッタ羽根と、光量制御用開口部を有する光量制御羽根を配置し、それらを夫々の駆動手段で往復回転させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、シャッタ羽根の先端部が、作動中に、光量制御羽根の光量制御用開口部と重なる状態になっても、シャッタ羽根の傾きや撓みによって、その先端部が光量制御用開口部の縁に衝突しないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、露光用開口部を有していて両者間に一つの羽根室を構成している二つの地板と、前記羽根室内に回転可能に配置されていて第1駆動手段によって前記露光用開口部の開閉作動を行う少なくとも1枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有していて前記羽根室内に回転可能に配置されており第2駆動手段によって前記露光用開口部に対して進退作動を行う光量制御羽根と、前記羽根室内においてその一部が前記少なくとも1枚のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間でそれらに重なるようにして回転可能に配置されており前記第2駆動手段によって前記光量制御羽根とは同時に相反する方向へ回転させられるが前記露光用開口部には進退しない補助羽根と、を備えているようにする。
【0009】
その場合、前記光量制御羽根が前記露光用開口部から退いているとき、前記補助羽根は、前記光量制御用開口部の少なくとも一部と重なっているようにすると、最も好適な構成になる。また、前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、前記第1駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根であって、前記露光用開口部の全開時にはそれらの先端部が重なる形状をしており、一方のシャッタ羽根は、その一部が前記補助羽根を間にして前記光量制御羽根と重なるように配置され、他方のシャッタ羽根は、その一部が前記一方のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間でそれらに重なっているが、前記補助羽根とは重ならず且つ作動上で干渉しないように配置されているようにすると、性能面でも優れたカメラ用羽根駆動装置が得られる。
【0010】
また、本発明は、前記光量制御羽根が、絞り羽根であって、前記光量制御用開口部が、前記露光用開口部よりも小さい開口部であるようにしてもよいし、前記光量制御羽根が、フィルタ羽根であって、前記光量制御用開口部が、NDフィルタシートで覆われているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、一つの羽根室内にシャッタ羽根と光量制御羽根とを配置しているにもかかわらず、光量制御羽根とは同じ駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられる補助羽根を設け、その補助羽根を、露光開口には進退させないようにして、常に光量制御羽根とシャッタ羽根との間で作動させるようにしたので、シャッタ羽根の先端部が、作動中に、光量制御羽根の光量制御用開口部と重なる状態になっても、シャッタ羽根の傾きや撓みによって、その先端部が光量制御用開口部の縁に衝突してしまうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。本発明は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置にも、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置にも適用することができるものである。また、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラにも採用することができるものである。しかしながら、実施例では、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置をデジタルカメラに採用した場合で説明し、その他のことは適宜その過程で説明を加えることにする。尚、図1は、撮影待機状態を示す実施例の平面図であり、図2は、構成部材の重なり関係を分かり易く示した実施例の断面図である。また、図3は、図1の状態から開始したシャッタ羽根の閉じ作動の途中の状態を示す平面図であり、図4は、その閉じ作動が終了した状態を示す平面図である。更に、図5は、図1の状態から絞り羽根が露光開口に進入した状態を示す平面図であり、図6は、図5の状態からシャッタ羽根の閉じ終わった状態を示す平面図である。
【実施例】
【0013】
本実施例は、一つの羽根室内に、第1駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられる2枚のシャッタ羽根と、露光開口よりも小さい光量制御用開口部を有していて第2駆動手段によって往復回転させられる1枚の絞り羽根と、シャッタ羽根と絞り羽根の間でそれらに重なるようにして配置されていて第2駆動手段によって往復回転させられるが露光開口には進退しない補助羽根とを備えている羽根駆動装置として構成したものである。そこで、先ず、主に図1及び図2を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、図2から分かるように比較的厚く、複雑な形状をしている。この地板1には、図1に示されているように、その略中央部に円形をした露光用開口部1aが形成されており、その露光用開口部1aを間にした対称位置には二つの円弧状の長孔1b,1cが形成されている。そして、この地板1は、後述する補助地板2との間に羽根室を構成し、羽根室とは反対側において、後述する二つの固定子枠3,4との間に二つのアクチュエータ室を構成している。
【0014】
この地板1の羽根室側の面には、四つの羽根軸1d,1e,1f,1gと、八つのストッパ軸1h,1i,1j,1k,1m,1n,1p,1qが一体成形で立設されている。そのほか、この羽根室側の面には複数の取付軸が一体成形で立設されているが、図1においてはそれらの図示を省略してあり、図2においてはそれらのうちの二つの取付軸1r,1sだけを示してある。また、この地板1には、図2に示されているように、アクチュエータ室側の面に四つの取付軸1t,1u,1v,1wと、二つの回転子軸1x,1yが一体成形で立設されている。そして、二つの取付軸1r,1sを含む羽根室側の取付軸は、補助地板2に形成された孔を貫通し、その先端を熱溶解で鍔状に変形させられて、補助地板2を取り付けている。また、アクチュエータ室側の取付軸1t,1u,1v,1wは、固定子枠3,4に形成された孔を貫通し、その先端を熱溶解で鍔状に変形させられて、固定子枠3,4を取り付けている。
【0015】
図1においては、補助地板2の図示を省略してあるが、平面形状は地板1と略同じ形状をしていて、その略中央部には、上記の露光用開口部1aに対応するところに、露光用開口部2a(図2参照)が形成されている。しかしながら、本実施例においては、露光用開口部1aの方が直径が小さいため、撮影のための露光開口は、露光用開口部1aによって規制されている。また、この補助地板2には、上記の円弧状の長孔1b,1cに対応するところに、それらと略同じ形状をした二つの長孔2b,2c(図2参照)が形成されている。更に、この補助地板2には、上記の四つの羽根軸1d,1e,1f,1gと、八つのストッパ軸1h,1i,1j,1k,1m,1n,1p,1qと、取付軸1r,1sを含む複数の取付軸とを嵌合させるために複数の孔が形成されているが、それらのうち、羽根軸1d,1e,1f,1gを嵌合させる孔2d,2e,2f,2gと、取付軸1r,1sを嵌合させる孔(符号なし)だけが図2に示されている。
【0016】
このようにして、地板1と補助地板2の間に構成された羽根室には、2枚のシャッタ羽根5,6と、1枚の絞り羽根7と、1枚の補助羽根8とが配置されているが、その重なり順序は、最も地板1側にあるのが光量制御羽根としての絞り羽根7であり、次がシャッタ羽根6と補助羽根8であり、最も補助地板2側にあるのがシャッタ羽根5である。そして、シャッタ羽根5,6は、長孔5a,6aを有していて上記の羽根軸1d,1eに回転可能に取り付けられている。また、絞り羽根7は、上記の露光用開口部よりも直径の小さな光量制御用開口部7aと長孔7bを有していて上記の羽根軸1fに回転可能に取り付けられている。また、補助羽根8は、長孔8aを有していて上記の羽根軸1gに回転可能に取り付けられている。尚、本実施例のシャッタ羽根5,6は、図1に示された形状からも分かるように、特許文献1に記載されているタイプのシャッタ羽根である。
【0017】
他方、シャッタ羽根5,6の駆動手段であるアクチュエータと、絞り羽根7と補助羽根8の駆動手段であるアクチュエータは、上記の羽根室の反対側に配置されている。これらの二つのアクチュエータは全く同じ構成をしていて、特開2005−241866号公報の実施例3〜5(図6〜11)に記載されているアクチュエータの構成と実質的に同じである。しかしながら、それらのアクチュエータの具体的な構成は、本発明とは直接関係がないため、図1においては、固定子の形状を省略してあり、回転子9,10の平面形状だけを示してある。そのため、固定子を構成する部材の平面形状で不明の点があるようであれば、上記の公報を参照されたい。
【0018】
そこで、先ず、本実施例の回転子9,10は、夫々上記の回転子軸1x,1yに回転可能に取り付けられている。これらの回転子9,10は、永久磁石製であって、径方向に2極に着磁された円筒部9a,10aと、アーム部9b,10bと、出力ピン9c,10cとで構成されている。そして、一方の出力ピン9cは、地板1の長孔1bから羽根室内に挿入され、シャッタ羽根5,6の長孔5a,6aに嵌合し、その先端を、補助地板2の長孔2bから羽根室外へ突き出している。また、他方の出力ピン10cは、地板1の長孔1cから羽根室内に挿入され、絞り羽根7と補助羽根8の長孔7b,8aに嵌合し、その先端を、補助地板2の長孔2cから羽根室外へ突き出している。尚、この種のアクチュエータにおいては、上記のアーム部9b,10bと、出力ピン9c,10cとを合成樹脂製としたものも知られている。
【0019】
本実施例の固定子枠3,4には、夫々中空のボビン部3a,4aが形成されていて、その外側にはコイル11,12が巻回されている。また、U字形をしていて二つの脚部を有しているヨーク13,14は、その一方の脚部をボビン部3a,4aの中空部に挿入し、二つの脚部の先端を磁極部として、上記の円筒部9a,10aの周面に対向させている。尚、本実施例の場合には、固定子枠3,4にボビン部3a,4aを一体成形で形成しているが、この種のアクチュエータには、それらを別部材として構成したものも知られている。そして、このように構成されたアクチュエータの場合には、コイル11,12に対する通電方向に対応した方向へ、回転子9,10が、所定の角度範囲内でだけ回転するようになっている。
【0020】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根5,6は、露光開口を規制している露光用開口部1aを全開にしており、それらの細長い先端部同士は重なっている。また、絞り羽根7は、露光用開口部1aに進入しておらず退避状態にある。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、夫々のアクチュエータのコイル11,12には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子9,10は、その円筒部9a,10aに着磁された磁極とヨーク13,14の各々の二つの磁極部との対向配置関係によって、反時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、出力ピン9cは、シャッタ羽根5を時計方向へ、シャッタ羽根6を反時計方向へ回転させようとしているが、シャッタ羽根5,6は、ストッパ軸1i,1hに押し付けられ、この状態が維持されている。また、出力ピン10cの方は、絞り羽根7を時計方向へ、補助羽根8を反時計方向へ回転させようとしているが、各羽根7,8は、ストッパ軸1j,1kに押し付けられて、この状態が維持されている。
【0021】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光を測定し、その結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合には、最初に絞り羽根7を露光用開口部1aに進入させておいてから実際の撮影が開始されることになるが、先ずは、被写体光を制限しないで撮影すると判断された場合を説明する。その場合には、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル11に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子9は、時計方向へ回転させられるので、出力ピン9cによって、シャッタ羽根5を反時計方向へ回転させ、シャッタ羽根6を時計方向へ回転させ、2枚のシャッタ羽根5,6に閉じ作動を行わせる。そして、その閉じ作動の途中の状態が、図3に示されている。
【0022】
この図3の状態から分かるように、本実施例の2枚のシャッタ羽根5,6は、露光用開口部1aの中心領域を最後に閉じるような理想に近い形状に形成されている。そして、それらの先端部は、相互の重なりを深めるように作動しているから、この閉じ作動中に、シャッタ羽根5,6同士が衝突するようなことはない。また、この状態のとき、シャッタ羽根5の方は、絞り羽根7の光量制御用開口部7aと重なるようになる。そのため、その作動中に傾いたり撓んだりすると、その先端部が円形をした光量制御用開口部7aの内側の縁に衝突してしまうことが、本実施例の場合には、シャッタ羽根5と絞り羽根7の間に補助羽根8が配置されていて、光量制御用開口部7aを覆っているので、そのような衝突は生じ得ない。尚、本実施例のシャッタ羽根5,6は、上記したように、特許文献1に記載されているタイプの形状をしているが、特許文献2,3に記載されているタイプの形状をしたシャッタ羽根の場合にも同じことが言える。
【0023】
シャッタ羽根5,6は、このようにして閉じ作動を行い、露光用開口部1aを閉鎖すると、その直後に、シャッタ羽根5は、その先端部がストッパ軸1nに当接し、シャッタ羽根6は、その先端部がストッパ軸1mに当接して停止する。図4は、その停止状態を示したものである。尚、この図4からも分かるように、シャッタ羽根5が、露光用開口部1aを覆っている部位の形状を、もう少し大きくすれば、シャッタ羽根5のみで露光用開口部1aを覆うことが可能になる。そのため、本発明の羽根駆動装置は、シャッタ羽根を1枚だけ備えたものであっても構わない。また、本実施例の場合には、上記のように、補助羽根8が光量制御用開口部7aを完全に覆うようにしているが、必ずしもそのように構成する必要はなく、シャッタ羽根5の先端部の形状や作動軌跡によっては、一部だけを覆えばよい場合もある。また、図4の停止状態においては、シャッタ羽根6の先端部がストッパ軸1mに接触していないが、閉じ作動終了時にストッパ軸1mに当接した後、停止時には、いずれか一方のシャッタ羽根の先端部が、このような非接触状態になる構成は、シャッタ羽根5,6のバウンドを抑制し、早期に停止させるための構成として周知であるため、その説明は省略する。
【0024】
このようにして、図4に示した状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル11に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給される。それによって、回転子9は反時計方向へ回転させられ、その出力ピン9cによって、シャッタ羽根5を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根6を反時計方向へ回転させることによって、2枚のシャッタ羽根5,6に開き作動を行わせる。そして、シャッタ羽根5,6は、露光用開口部1aを全開にすると、その直後に、シャッタ羽根5はストッパ軸1iに当接し、シャッタ羽根6はストッパ軸1hに当接して停止する。その後、コイル11への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0025】
尚、以上の説明からも分かるように、本実施例における補助羽根8を設けず、シャッタ羽根6がその作動中においても、絞り羽根7の光量制御用開口部7aを覆っているようにすれば、シャッタ羽根5の先端部と光量制御用開口部7aの縁との衝突を避けることが可能であるが、そのようにした場合には、シャッタ羽根6が大きくなってしまい、ひいては地板1を大きくせざるを得なくなってしまうが、本実施例の構成によれば、そのようにしなくても済むようになっている。また、後述の補助羽根8の作動説明からも分かるように、本実施例においては、シャッタ羽根6を、補助羽根8と略同じ面で作動させても干渉しないように構成されているので、4枚の羽根を備えているにもかかわらず、地板1と補助地板2の間隔が小さくて済むようになっている。
【0026】
次に、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、測光回路の測定結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合について説明する。その場合には、最初に、コイル12に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子10は、図1の状態から時計方向へ回転させられるので、出力ピン10cによって、絞り羽根7を反時計方向へ回転させ、補助羽根8を時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根7は、露光用開口部1aに進入していくが、補助羽根8は、露光用開口部1aから遠ざかる方向へ作動させられるので、補助羽根8がシャッタ羽根6に衝突することはあり得ない。そして、光量制御用開口部7aの中心が、露光用開口部1aの中心位置までくると、絞り羽根7がストッパ軸1pに当接し、補助羽根8がストッパ軸1qに当接して停止する。図5は、その停止状態を示したものであるが、当然のことながら、この状態においてもシャッタ羽根5の先端部は、補助羽根8と重なっている。また、この停止状態のとき、補助羽根8がストッパ軸1qに接触していない理由は、上記の図4の状態におけるシャッタ羽根6の場合と同じである。
【0027】
この状態になると、上記のようにして、実際の撮影が開始され、その後、コイル11に順方向の電流が供給されると、シャッタ羽根5,6の閉じ作動が行われるが、そのときには、シャッタ羽根5,6の先端部の作動軌跡内に絞り羽根7の光量制御用開口部7aが存在しないので、それらの間での衝突は生じることがなく、しかも、シャッタ羽根5は、補助羽根8との重なり状態を維持したまま作動させられていく。図6は、そのようにして閉じ作動が終了し、シャッタ羽根5,6の停止した状態を示したものである。この図6の状態で、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されると、コイル11に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給され、シャッタ羽根5,6の開き作動が行われる。他方、コイル12に対しても、上記とは異なり逆方向の電流が供給されるので、回転子10は反時計方向へ回転させられ、その出力ピン10cによって、絞り羽根7を時計方向へ回転させ、補助羽根8を反時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根7が、露光用開口部1aから完全に退くと、絞り羽根7はストッパ軸1jに当接し、補助羽根8はストッパ軸1kに当接して停止する。その後、二つのコイル11,12への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0028】
このように、本実施例においては、補助羽根8が、シャッタ羽根5と絞り羽根7の間に配置されていて、装置を大きくすることなく、シャッタ羽根5の先端部と絞り羽根7の光量制御用開口部7aとの衝突を好適に防止しているが、そのほかにも重要な役目を果たしている。即ち、上記したように、撮影待機状態においては、コイル12に通電されていなくても、回転子10には反時計方向へ回転する力が付与されている。ところが、その力は強力とはいえない。そのため、補助羽根8が設けられていないときは、カメラの構え方によっては、絞り羽根7が重力で反時計方向へ回転しやすい姿勢になることがあり、被写体光を制限しないで撮影するときに、絞り羽根7の一部が露光用開口部1a内に臨んでしまう可能性がある。ところが、本実施例のように、補助羽根8が設けられていると、絞り羽根7が重力で反時計方向へ回転するためには、補助羽根8を重力に逆らって時計方向へ回転させる力を必要とするため、結果的に、絞り羽根7は回転できず、図1の状態を維持させられるわけである。
【0029】
尚、本実施例は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置として説明したが、本実施例の絞り羽根7に、光量制御用開口部7aを覆うようにしてNDフィルタシートを取り付ければ、絞り羽根7がフィルタ羽根になり、本実施例の羽根駆動装置は、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置になる。その場合、光量制御用開口部7aは、本実施例のように、露光用開口部1aより小さくてもよいが、同じか大きくしても構わない。また、本実施例は、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、銀塩フィルムを使用するカメラに採用された場合には、図4に示された状態を撮影待機状態として、シャッタ羽根5,6に往復作動を行わせ、絞り羽根7と補助羽根8を本実施例と同様に作動させることになる。そして、それらの態様は、全て本発明の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】撮影待機状態を示す実施例の平面図である。
【図2】構成部材の重なり関係を分かり易く示した実施例の断面図である。
【図3】図1の状態から開始したシャッタ羽根の閉じ作動の途中の状態を示す平面図である。
【図4】図1の状態から開始したシャッタ羽根の閉じ作動の終了状態を示す平面図である。
【図5】図1の状態から絞り羽根が露光開口に進入した状態を示す平面図である。
【図6】図5の状態から開始したシャッタ羽根の閉じ作動の終了状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 地板
1a,2a 露光用開口部
1b,1c,2b,2c,5a,6a,7b,8a 長孔
1d,1e,1f,1g 羽根軸
1h,1i,1j,1k,1m,1n,1p,1q ストッパ軸
1r,1s,1t,1u,1v,1w 取付軸
1x,1y 回転子軸
2 補助地板
2d,2e,2f,2g 孔
3,4 固定子枠
3a,4a ボビン部
5,6 シャッタ羽根
7 絞り羽根
7a 光量制御用開口部
8 補助羽根
9,10 回転子
9a,10a 円筒部
9b,10b アーム部
9c,10c 出力ピン
11,12 コイル
13,14 ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用開口部を有していて両者間に一つの羽根室を構成している二つの地板と、前記羽根室内に回転可能に配置されていて第1駆動手段によって前記露光用開口部の開閉作動を行う少なくとも1枚のシャッタ羽根と、光量制御用開口部を有していて前記羽根室内に回転可能に配置されており第2駆動手段によって前記露光用開口部に対して進退作動を行う光量制御羽根と、前記羽根室内においてその一部が前記少なくとも1枚のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間でそれらに重なるようにして回転可能に配置されており前記第2駆動手段によって前記光量制御羽根とは同時に相反する方向へ回転させられるが前記露光用開口部には進退しない補助羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記光量制御羽根が前記露光用開口部から退いているとき、前記補助羽根は、前記光量制御用開口部の少なくとも一部と重なっていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽駆動装置。
【請求項3】
前記少なくとも1枚のシャッタ羽根が、前記第1駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚のシャッタ羽根であって、前記露光用開口部の全開時にはそれらの先端部が重なる形状をしており、一方のシャッタ羽根は、その一部が前記補助羽根を間にして前記光量制御羽根と重なるように配置され、他方のシャッタ羽根は、その一部が前記一方のシャッタ羽根と前記光量制御羽根の間でそれらに重なっているが、前記補助羽根とは重ならないようにして配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽駆動装置。
【請求項4】
前記光量制御羽根が、絞り羽根であって、前記光量制御用開口部が、前記露光用開口部よりも小さい開口部であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽駆動装置。
【請求項5】
前記光量制御羽根が、フィルタ羽根であって、前記光量制御用開口部が、NDフィルタシートで覆われていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−316477(P2007−316477A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147950(P2006−147950)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】