説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】取付作業の極めて簡単な帯状部材を設けることによって、羽根室内での2枚の羽根の衝突を防止できるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】主地板1に立設されている羽根軸1g,1hに対し、駆動ピン4cによって相反する方向へ同時に往復回転させられる2枚のシャッタ羽根7,8が、回転可能に取り付けられている。また、2枚のシャッタ羽根7,8の間に配置されている直線状の帯状部材9は、その両端に形成された孔を、主地板1に立設された二つの取付軸1n,1pに対して、それらの軸方向へ移動可能に取り付けられている。そのため、2枚のシャッタ羽根7,8が作動中に衝突することのないカメラ用羽根駆動装置を低コストで実現することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚のシャッタ羽根や光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)を一つの羽根室内に配置したカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に記載されているシャッタ装置は、2枚のシャッタ羽根が、駆動手段によって同時に相反する方向へ往復回転させられ、開き作動の場合には、露光開口の中央部から開き始め、閉じ作動の場合には、露光開口の中央部を最後にして閉じるように構成されている。そして、2枚のシャッタ羽根にこのような作動を行わせる場合には、閉じ作動を行うとき、各々のシャッタ羽根が光軸に対して垂直な面で作動するのが理想であるが、実際には、傾いたり撓んだりすることによって、両者の先端部同士が衝突してしまうことがあるため、それらの先端部を長くして、露光開口を全開にしているときでも、それらの先端部が重なり合っているようにしている。ところが、そのような構成にすると、各々のシャッタ羽根が大きくなってしまうことから、シャッタ羽根の先端を長くしなくても、シャッタ羽根同士が衝突しないようにするために、二つの地板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、2枚のシャッタ羽根を別々の羽根室内で作動させるようにしたシャッタ装置が、下記の特許文献2に記載されている。
【0003】
そして、特許文献2に記載されているように二つの地板の間を中間板で仕切ることによって二つの羽根室を構成した場合には、2枚のシャッタ羽根を別々の羽根室内で作動させるようにすることができるだけではなく、シャッタ装置と光量制御装置(絞り装置,フィルタ装置)とを一つのユニットとして構成する場合にも、シャッタ羽根と光量制御羽根(絞り羽根又はフィルタ羽根)とを異なる羽根室に配置することによって、それらの羽根が作動中に衝突しないようになるし、また、二つの光量制御装置を一つのユニットとして構成する場合にも、各々の羽根を異なる羽根室に配置することによって、光量制御羽根同士(絞り羽根同士、絞り羽根とフィルタ羽根、フィルタ羽根同士)が作動中に衝突しないようになる。本発明は、このように、相反する方向へ回転し、露光開口を中央部から開き始め中央部を最後に閉じ終わるようにした2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置や、シャッタ装置と光量制御装置とを一つのユニットとして構成した羽根駆動装置や、二つの光量制御装置を一つのユニットとして構成した羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−177447号公報
【特許文献2】特開2005−99167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているように、二つの地板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成した場合には、羽根同士の衝突は完全に防止される。ところが、そのようにした構成は、中間板がかなり大きな部材であるため、コストの面で好ましくないという問題点がある。また、中間板が二つの地板の間で好適に固定されるようにするためには、二つの地板や中間板の外周部などの形状に工夫を凝らす必要があって取付構成が複雑になり、加工上やコストの面で好ましくないという問題点がある。他方、中間板を設けなくても、一つの羽根室内に配置された複数枚の羽根が衝突を起こさないようにした構成も提案されている。しかしながら、そのようにすると、例えば、同時に相反する方向へ往復作動させられる2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置の場合には、それらの羽根の形状を、開き作動の場合には露光開口の中央部から開き始め、閉じ作動の場合には露光開口の中央部を最後にして閉じることの可能な形状にすることができなくなるなど、所望の羽根形状が得にくくなってしまうという問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、従来の中間板のような大きな部材を設けることなく、小さい部材であって取付作業の極めて簡単な帯状部材を設けることによって、2枚の羽根の衝突を防止できるようにしたコスト面で有利なカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、被写体光路用の開口部を有していている主地板と、被写体光路用の開口部を有していて前記主地板との間に一つの羽根室を構成している補助地板と、前記主地板の羽根室側の面に立設された第1羽根取付軸に取り付けられており往復回転することによって前記開口部に進退させられる第1羽根と、前記主地板の羽根室側の面に立設された第2羽根取付軸に取り付けられていて前記第1羽根よりも前記補助地板側に配置されており往復回転することによって前記開口部に進退させられる第2羽根と、両端に設けている孔を前記主地板の羽根室側の面に立設された二つの取付軸に対してそれらの軸方向へ移動可能に嵌合させていて前記第1羽根と前記第2羽根の間に配置されている帯状部材と、を備えているようにする。
【0008】
その場合、前記帯状部材の孔を嵌合させている前記二つの取付軸の一方が、前記第1羽根取付軸と前記第2羽根取付軸のいずれか一方であるようにしたり、前記帯状部材の孔を嵌合させている前記二つ取付軸は、前記第1羽根取付軸と前記第2羽根取付軸であって、前記帯状部材は、前記開口部を囲む弧状をしているようにすると、取付軸が兼用され、コスト上で有利になる。
【0009】
また、前記第1羽根と前記第2羽根は、同じ駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられるシャッタ羽根であるようにしてもよいし、また、前記第1羽根と前記第2羽根のうち、一方が、第1駆動手段によって往復回転させられるシャッタ羽根であり、他方が、第2駆動手段によって往復回転させられる光量制御羽根であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、2枚の羽根の衝突を防止するために、それらの間に配置する部材が帯状部材であって、主地板への取り付けは、その両端に設けた孔を二つの取付軸に対して嵌合させるだけであるから、従来の中間板に比較して、小さい部材であるばかりでなく、取付作業も簡単であり、コスト面で極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した四つの実施例によって説明する。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4及び図5は、実施例2を説明するためのものであり、図6及び図7は、実施例3を説明するためのものであり、図8及び図9は、実施例4を説明するためのものである。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、同じ駆動手段によって同時に相反する方向へ往復作動させられる2枚のシャッタ羽根が、開き作動を行う場合には露光開口の中央部から開き始め、閉じ作動を行う場合には露光開口の中央部を最後にして閉じるように構成したシャッタ装置である。そして、この種のシャッタ装置は、銀塩フィルムを使用するカメラにも、各種情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラにも採用することが可能であるが、本実施例の作動は、デジタルカメラに採用された場合で説明する。尚、図1は、撮影待機状態を示す平面図であり、図2は、撮影終了状態を示す平面図であり、図3は、装置を構成する部材の重なり関係を説明するための断面図である。
【0013】
先ず、主に図1及び図3を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例の主地板1は、合成樹脂製であって、図3から分かるように比較的厚く、複雑な形状をしており、図1に示されているように、その略中央部に円形をした被写体光路用の開口部1aを形成している。また、この主地板1には、所定の間隔を空けて補助地板2が取り付けられ、両者の間に一つの羽根室を構成している。この補助地板2は、図3にだけ示してあり、図1及び図2においては省略してあるが、平面形状は主地板1と略同じ形状をしており、その略中央部には円形をした被写体光路用の開口部を形成している。しかしながら、その開口部よりも上記の開口部1aの方が直径が小さいため、本実施例における露光開口は、開口部1aによって規制されている。また、この補助地板2は、複数箇所で、熱カシメといわれている方法で、主地板1に取り付けられている。そして、この取り付け方は周知であるが、本実施例の場合には、図3に、それらのうちの1箇所が示されているように、主地板1に一体成形されている2段状をした軸1bの先端を、補助地板2に設けた孔に挿入した後、熱溶解させてフランジ状に変形させている。
【0014】
図3に示されているように、主地板1の羽根室外の面には、三つの軸1c,1d,1eが一体成形によって立設されており、それらのうちの軸1d,1eには、上記した熱カシメによって、合成樹脂製の固定子枠3が取り付けられ、主地板1との間にアクチュエータ室を構成している。そして、本実施例の電磁アクチュエータは、全ての構成部材を詳細に示していないが、特開2006−72174号公報に示されている電磁アクチュエータと、殆ど似た構成をしている。
【0015】
即ち、本実施例の回転子4は、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石4aと、その永久磁石に一体化された合成樹脂製の腕部4bと、その腕部4bの先端に形成された駆動ピン4cからなっていて、上記の軸1cに回転可能に取り付けられている。そして、駆動ピン4cは、主地板1に円弧状に形成された周知の長孔1f(図3に断面形状だけが示されている)から羽根室内に挿入され、その先端を、補助地板2の同じ形状をした長孔2aに挿入している。尚、本実施例では、腕部4bと駆動ピン4cが合成樹脂製になっているが、それらを永久磁石製にすることも知られている。
【0016】
次に、固定子の構成を説明する。上記の固定子枠3には、中空のボビン部3aと二つの端子ピン3b,3cとが、一体成形で形成されている。また、ボビン部3aの周囲にはコイル5が巻回されていて、その両端が端子ピン3b,3cに巻き付けられている。そして、その両端は、固定子枠3に取り付けられている図示していないフレキシブルプリント配線板に半田付けされている。また、本実施例のヨーク6は、平面形状が示されていないが、上記の特開2006−72174号公報に記載されているヨークのように略U字形をしており、二つの脚部の一方をボビン部3aの中空部に挿入している。そして、このヨーク6は、二つの脚部の先端部を磁極部とし、上記の回転子4を挟むようにして周面に対向させている。尚、本実施例の場合には、固定子枠3にボビン部3aを一体成形で形成しているが、この種の電磁アクチュエータには、それらを別部材として構成したものも知られている。
【0017】
図1に示されているように、主地板1の羽根室側の面には、二つの羽根軸1g,1hと、四つのストッパ軸1i,1j,1k,1mと、二つの取付軸1n,1pとが一体成形で立設されており、それらの先端は、補助地板2に形成された夫々の孔に挿入されている。また、羽根室内には、2枚のシャッタ羽根7,8と、帯状部材9が配置されている。それらのうち、主地板1側に配置されているシャッタ羽根7は、長孔7aを有していて、上記の羽根軸1gに回転可能に取り付けられており、補助地板2側に配置されているシャッタ羽根8は、長孔8aを有していて、上記の羽根軸1hに回転可能に取り付けられている。そして、それらのシャッタ羽根7,8の長孔7a,8aには、上記の回転子4の駆動ピン4cが嵌合されている。また、シャッタ羽根7,8の間に配置されている帯状部材9は、直線状をしていて、その両端に形成されている孔を、上記の取付軸1n,1pに対して、それらの軸方向へ移動可能に嵌合させている。尚、上記の電磁アクチュエータは、図1におけるシャッタ羽根8と略重なるようにして、主地板1の羽根室外の面に取り付けられている。
【0018】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根7,8は、開口部1aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、電磁アクチュエータのコイル5には通電されていない。ところが、周知のように、このとき、回転子4は、その永久磁石4aの磁極とヨーク6の二つの磁極部との対向配置関係によって反時計方向へ回転するように付勢されており、それによって、駆動ピン4cには、図1において略下方へ移動し、シャッタ羽根7,8を相反する方向へ回転させる力が与えられている。しかしながら、シャッタ羽根7,8は、ストッパ軸1i,1jに接触して、その回転を阻止されているため、この状態が維持されている。
【0019】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル5に対して順方向の電流が供給される。そのため、回転子4は、時計方向へ回転させられ、駆動ピン4cを、図1において略上方へ移動させていくので、シャッタ羽根7は時計方向へ回転され、シャッタ羽根8は反時計方向へ回転される。それによって、2枚のシャッタ羽根7,8は、開口部1aを閉じていくが、本実施例の場合には、2枚のシャッタ羽根7,8の先端部間に帯状部材9が介在しているので、この閉じ作動中にそれらの先端部同士が衝突することはない。その後、シャッタ羽根7,8が開口部1aの中央部を覆い終わると、その直後に、シャッタ羽根7がストッパ軸1kに当接し、シャッタ羽根8がストッパ軸1mに当接することによって、回転子4の回転が停止させられる。図2は、その停止状態を示したものである。
【0020】
このようにして、図2に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル5に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給されるため、回転子4は反時計方向へ回転させられ、その駆動ピン4cを、図2において略下方へ移動させていく。そのため、シャッタ羽根7,8は、相反する方向へ回転させられ、開口部1aをその略中央部から開放していく。そして、シャッタ羽根7,8が開口部1aを全開にすると、その直後に、シャッタ羽根7はストッパ軸1iに当接し、シャッタ羽根8がストッパ軸1jに当接することによって、回転子4の回転が停止させられる。その後、コイル5への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。尚、本実施例の作動はデジタルカメラに採用された場合で説明したが、銀塩フィルムカメラに採用された場合には、周知のように、図2に示された状態が撮影待機状態になって、シャッタ羽根7,8の開閉作動によって撮影が行われる。
【0021】
このように、本実施例によれば、特許文献2に記載されているように、中間板を主地板1と補助地板2の間に固定する必要がないので、二つの地板1,2の相互の取付構成が簡単で済み、組立作業も帯状部材9の両端に設けられた孔を取付軸1n,1pに対して嵌合させるだけであるから簡単である。しかも、中間板の場合には、大きな部材であって、羽根軸1g,1h、ストッパ軸1i,1j,1k,1m、駆動ピン4cを貫通させるための孔を夫々所定箇所に形成しなければならないが、本実施例の帯状部材9は二つの孔を形成するだけである。そのため、本実施例の構成は、中間板を備える場合に比較して、コスト面で極めて有利になっている。そして、このことは、以下に説明する各実施例の場合も同じである。
【実施例2】
【0022】
次に、図4及び図5に示した実施例2を説明するが、図4は、上記の図1と同様にして示した撮影待機状態の平面図であり、図5は、上記の図2と同様にして示した撮影終了状態の平面図である。そして、本実施例の構成は、上記の実施例1における帯状部材9の形状と、その取り付け方が異なっているだけであるため、その他の構成部材とそれらの部位については、図1及び図2で用いた符号を付け、それらについての説明を省略する。また、本実施例の場合にも、2枚のシャッタ羽根7,8は、実施例1の場合と同じ構成の電磁アクチュエータによって、同時に相反する方向へ回転させられるようになっているため、その開閉作動は、実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、本実施例の作動説明も省略する。
【0023】
本実施例の帯状部材11は、開口部1aの大部分を囲むような弧状をしていて、シャッタ羽根7,8の間に配置されている。また、主地板1には、実施例1で設けられていた取付軸1n,1pが設けられていない。そのため、本実施例の帯状部材11は、その両端に設けた孔を、羽根軸1g,1hに嵌合させている。このように構成しても、シャッタ羽根7,8は、支障なく開閉作動を行うことが可能である。また、このように構成したことによって、帯状部材11が、実施例1の帯状部材9よりも部品としては大きくなるが、主地板1に専用の二つの取付軸を設けなくて済むので、実施例1の場合よりも全体としてはコスト減になる。尚、本実施例の場合には、帯状部材11の二つの取付軸を、二つの羽根軸1g,1hで兼用しているが、一方の取付軸だけを兼用させ、他方の取付軸は、図1に示されている取付軸1nか取付軸1pを用いるようにしても差し支えない。
【実施例3】
【0024】
次に、図6及び図7に示した実施例3を説明するが、図6は、図1と同じようにして示した撮影待機状態の平面図であり、図7は、図2と同じようにして示した撮影終了状態の平面図である。本実施例は、第1駆動手段によって往復回転させられる1枚のシャッタ羽根と、露光開口よりも小さい開口部(絞り開口部)を有していて第2駆動手段によって往復回転させられる1枚の絞り羽根とを、一つの羽根室内に配置したデジタルカメラ用の羽根駆動装置として構成したものである。そして、本実施例における第1駆動手段と第2駆動手段は、実施例1で説明した構成の電磁アクチュエータである。そのため、それらの電磁アクチュエータの具体的な構成については、説明を省略する。
【0025】
先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例の主地板21は、合成樹脂製であって、その略中央部に円形をした被写体光路用の開口部21aを形成している。また、この主地板21には、図示していないが、実施例1における補助地板2と類似の形状をした補助地板が、その補助地板2と同様にして、所定の間隔を空けて取り付けられ、両者の間に一つの羽根室を構成している。そして、この補助地板にも、その略中央部には円形をした被写体光路用の開口部が形成されているが、本実施例の場合にも、主地板21の開口部21aが露光開口を規制している。
【0026】
主地板21の羽根室側の面には、二つの羽根軸21b,21cと、四つのストッパ軸21d,21e,21f,21gと、一つの取付軸21hとが一体成形で立設されており、それらの先端は、実施例1の場合と同様に、補助地板に形成された夫々の孔に挿入されている。また、羽根室内には、1枚のシャッタ羽根22と、1枚の絞り羽根23と、帯状部材24が配置されている。そして、それらのうち、主地板1側に配置されているシャッタ羽根22は、長孔22aを有していて、上記の羽根軸21bに回転可能に取り付けられており、補助地板側に配置されている絞り羽根23は、長孔23aと絞り開口部23bとを有していて、上記の羽根軸21cに回転可能に取り付けられている。また、シャッタ羽根22と絞り羽根23の間に配置されている帯状部材24は、直線状をしていて、その両端に形成されている孔を、上記の羽根軸21cと取付軸21hに対して、それらの軸方向へ移動可能に嵌合させている。
【0027】
上記したように、シャッタ羽根22を往復回転させる第1駆動手段と、絞り羽根23を往復回転させる第2駆動手段は、いずれも実施例1で説明した電磁アクチュエータである。そして、シャッタ羽根22を駆動する第1電磁アクチュエータは、図6におけるシャッタ羽根22と略重なるようにして、主地板21の羽根室外の面に取り付けられており、回転子と一体の駆動ピン25は、主地板21に形成されている図示していない長孔を貫通し、羽根室内でシャッタ羽根22の長孔22aに挿入されている。そのため、図6において、回転子が時計方向へ回転すると、駆動ピン25は略左上方へ移動するようになっている。また、絞り羽根23を駆動する第2電磁アクチュエータは、図6における開口部21aの右側において、絞り羽根23の一部とシャッタ羽根22の一部に重なるようにして、主地板21の羽根室外の面に取り付けられており、回転子と一体の駆動ピン26は、主地板21に形成されている図示していない長孔を貫通し、羽根室内で絞り羽根23の長孔23aに挿入されている。そのため、図1において、回転子が反時計方向へ回転すると、駆動ピン26は略左下方へ移動するようになっている。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明する。図6は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根22は開口部21aを全開にしている。また、絞り羽根23は開口部21aに進入しておらず、退避状態にある。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、夫々の電磁アクチュエータのコイルには通電されていない。しかしながら、第1電磁アクチュエータの回転子は、このとき、その永久磁石とヨークの磁極部との対向配置関係によって、反時計方向へ回転するように付勢されており、第2電磁アクチュエータの回転子は、同じ理由によって、時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、駆動ピン25は、シャッタ羽根22を時計方向へ、駆動ピン26は、絞り羽根23を時計方向へ回転させようとしているが、シャッタ羽根22がストッパ軸21dに接触し、絞り羽根23がストッパ軸21fに接触して、この状態が維持されている。
【0029】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光を測定し、その結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合には、最初に絞り羽根23を開口部1aに進入させておいてから実際の撮影が開始されるが、先ずは、被写体光を制限しないで撮影すると判断された場合を説明する。その場合には、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータのコイルに対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子は時計方向へ回転させられるので、駆動ピン25によって、シャッタ羽根22は反時計方向へ回転させられ、開口部21aを閉じていくが、このときシャッタ羽根22と絞り羽根23の間には帯状部材24が介在しているので、シャッタ羽根22の先端が絞り羽根23に衝突することがない。そして、開口部21aが完全に閉鎖されると、その直後に、シャッタ羽根22がストッパ軸21eに当接することにより、回転子の回転が停止させられる。
【0030】
このようにして、シャッタ羽根22の閉じ作動が停止すると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、第1電磁アクチュエータのコイルに対して、上記とは異なり逆方向の電流が供給される。そのため、回転子は反時計方向へ回転させられ、駆動ピン25によってシャッタ羽根22を時計方向へ回転させるので、シャッタ羽根22は開口部21aを開放していくが、このときにも、シャッタ羽根22は、絞り羽根23に衝突するようなことはない。そして、シャッタ羽根22は、露光用開口部21aを全開にすると、その直後に、ストッパ軸21dに当接して停止させられる。その後、第1電磁アクチュエータのコイルへの通電を断つと、図6の状態に復帰したことになる。
【0031】
次に、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、測光回路の測定結果によって、被写体光を制限して撮影すると判断された場合について説明する。上記したように、図6の状態においては、第2電磁アクチュエータの回転子は、時計方向への回転の極限位置で停止している。そこで、この場合には、先ず、その第2電磁アクチュエータのコイルに対して、逆方向の電流が供給される。それによって、回転子は、反時計方向へ回転させられ、駆動ピン26によって、絞り羽根23を反時計方向へ回転させるため、絞り羽根23は開口部21a内に進入していくが、絞り羽根23とシャッタ羽根22との間には帯状部材24が介在しているので、その作動中に絞り羽根23がシャッタ羽根22に衝突してしまうようなことはない。そして、絞り開口部23bの中心が、開口部21aの中心位置までくると、絞り羽根23がストッパ軸21gに当接して停止する。
【0032】
この状態になると、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータのコイルに対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子は時計方向へ回転させられるので、駆動ピン25によって、シャッタ羽根22は反時計方向へ回転させられ、開口部21aを閉じていく。そして、開口部21aが完全に閉鎖されると、その直後に、シャッタ羽根22がストッパ軸21eに当接することにより、回転子の回転が停止させられる。その停止状態が、図7に示された状態である。
【0033】
この図7の状態において、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されると、第1電磁アクチュエータのコイルに対して逆方向の電流が供給されるので、回転子は反時計方向へ回転させられ、その駆動ピン25によって、シャッタ羽根22を時計方向へ回転させる。そのため、シャッタ羽根22は開口部21aを開いていく。他方、第2電磁アクチュエータのコイルに対しては順方向の電流が供給されるので、回転子は時計方向へ回転させられ、その駆動ピン26によって、絞り羽根23を時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根23は開口部21aから退いていく。そして、シャッタ羽根22は、開口部21aを全開にした直後に、ストッパ軸21dに当接して停止させられ、絞り羽根23は、開口部21aから完全に退いた直後に、ストッパ軸21fに当接して停止させられる。その後、両方の電磁アクチュエータのコイルに対する通電を断つと、図6の状態に復帰したことになる。
【0034】
このように、本実施例の帯状部材24は、実施例1の帯状部材9と同様に直線状をしているが、実施例1の場合には、帯状部材9を取り付けるために、二つの専用の取付軸1n,1pを設けていたのに対して、本実施例の場合には、専用の取付軸としては取付軸21hだけであって、他方の取付軸を絞り羽根23の羽根軸21cで兼用させている。そのため、本実施例の構成は、帯状部材24を取り付けるために、専用の取付軸を二つ設ける場合に比べて、コスト面で有利な構成になっている。また、帯状部材24を、直線状に形成するのではなく、開口部21aを囲むような弧状に形成すれば、その一端の取付軸を、羽根軸21bで兼用させるようにすることもできる。
【0035】
尚、本実施例は、一つの羽根室内に、シャッタ羽根22と、絞り羽根23とを配置した羽根駆動装置であるが、本実施例の絞り羽根23は、絞り開口部23bを覆うようにしてNDフィルターシートを取り付ければ、同じ光量制御羽根の一つであるフィルタ羽根になることが知られている。そのため、本発明の羽根駆動装置は、羽根室内に、シャッタ羽根とフィルタ羽根とを配置した羽根駆動装置として構成することもできる。また、本実施例のシャッタ羽根をフィルタ羽根に代えることによって、絞り羽根とフィルタ羽根とを配置した羽根駆動装置として構成することもできる。また、本実施例のシャッタ羽根を絞り羽根に代えることによって、絞り開口部23bの大きさの異なる2枚の絞り羽根を配置した羽根駆動装置として構成することもできる。更に、本実施例のシャッタ羽根と絞り羽根とを、各々濃度の異なるフィルターシートを取り付けたフィルタ羽根とすることによって、2枚のフィルタ羽根を配置した羽根駆動装置として構成することも可能である。そして、羽根室内に2枚の光量制御羽根を配置している羽根駆動装置として構成した場合には、デジタルカメラだけではなく、銀塩フィルムを使用するカメラにも採用することが可能である。また、これらのことは、下記の実施例4の場合にも、言えることである。
【実施例4】
【0036】
次に、図8及び図9に示した実施例4を説明するが、図8は、上記の図6と同様にして示した撮影待機状態の平面図であり、図9は、上記の図7と同様にして示した撮影終了状態の平面図である。そして、本実施例の構成は、上記の実施例3における帯状部材24の形状と、その取り付け方が異なっているだけであるため、その他の構成部材とそれらの部位については、図6及び図7で用いた符号を付け、それらについての説明を省略する。また、本実施例の場合にも、シャッタ羽根22と絞り羽根23は、実施例3の場合と同じ構成のアクチュエータによって、同じように回転させられるようになっているため、本実施例の作動説明も省略する。
【0037】
本実施例の帯状部材31は、開口部21aの約半分を囲むような弧状をしていて、シャッタ羽根22と絞り羽根23の間に配置されている。また、主地板21には、実施例3で設けられていた取付軸21hが設けられていない。そのため、本実施例の帯状部材31は、その両端に設けた孔を、羽根軸21b,21cに嵌合させている。このように構成しても、シャッタ羽根22と絞り羽根23は衝突し合うことなく、個々に往復回転させることが可能である。また、このように構成したことによって、帯状部材31が、実施例3の帯状部材24よりも部品としては大きくなるが、主地板21に専用の二つの取付軸を設けなくて済むので、実施例3の場合よりも全体としてはコスト減になる。
【0038】
尚、上記の各実施例においては、電磁アクチュエータが、特開2006−72174号公報に記載されている電磁アクチュエータと類似の構成をしたものであることを前提にして説明したが、本発明の駆動手段は、この種の電磁アクチュエータに限定されるものではなく、2枚の羽根を往復作動させることが可能であれば、ステップモータであっても構わないし、ばねを使用した機械的な駆動手段であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】撮影待機状態を示す実施例1の平面図である。
【図2】撮影終了状態を示す実施例1の平面図である。
【図3】実施例1の断面図である。
【図4】撮影待機状態を示す実施例2の平面図である。
【図5】撮影終了状態を示す実施例2の平面図である。
【図6】撮影待機状態を示す実施例3の平面図である。
【図7】撮影終了状態を示す実施例3の平面図である。
【図8】撮影待機状態を示す実施例4の平面図である。
【図9】撮影終了状態を示す実施例4の平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1,21 主地板
1a,2a,21a 開口部
1b,1c,1d,1e 軸
1f,2a,7a,8a,22a,23a 長孔
1g,1h,21b,21c 羽根軸
1i,1j,1k,1m,21d,21e,21f,21g ストッパ軸
1n,1p,21h 取付軸
2 補助地板
3 固定子枠
3a ボビン部
3b,3c 端子ピン
4 回転子
4a 永久磁石
4b 腕部
4c,25,26 駆動ピン
5 コイル
6 ヨーク
7,8,22 シャッタ羽根
9,11,24,31 帯状部材
23 絞り羽根
23b 絞り開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光路用の開口部を有していている主地板と、被写体光路用の開口部を有していて前記主地板との間に一つの羽根室を構成している補助地板と、前記主地板の羽根室側の面に立設された第1羽根取付軸に取り付けられており往復回転することによって前記開口部に進退させられる第1羽根と、前記主地板の羽根室側の面に立設された第2羽根取付軸に取り付けられていて前記第1羽根よりも前記補助地板側に配置されており往復回転することによって前記開口部に進退させられる第2羽根と、両端に設けている孔を前記主地板の羽根室側の面に立設された二つの取付軸に対してそれらの軸方向へ移動可能に嵌合させていて前記第1羽根と前記第2羽根の間に配置されている帯状部材と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記帯状部材の孔を嵌合させている前記二つの取付軸の一方が、前記第1羽根取付軸と前記第2羽根取付軸のいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記帯状部材の孔を嵌合させている前記二つ取付軸は、前記第1羽根取付軸と前記第2羽根取付軸であって、前記帯状部材は、前記開口部を囲む弧状をしていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第1羽根と前記第2羽根は、同じ駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられるシャッタ羽根であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第1羽根と前記第2羽根のうち、一方が、第1駆動手段によって往復回転させられるシャッタ羽根であり、他方が、第2駆動手段によって往復回転させられる光量制御羽根であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate