説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】二つの電磁アクチュエータの相対的な配置関係とヨークの形状を工夫することによって、小型化にとって極めて好適なカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【解決手段】合成樹脂製の地板1に六つの軸1d〜1iが立設されている。回転子5,6は、軸1d,1eに回転可能に取り付けられ、出力ピン5c,6cを羽根室内でシャッタ羽根3,絞り羽根4に連結させている。ヨーク7,8は、脚部7b,8bに、コイル9,11を巻回したボビン10,12を嵌装していて、各部7c,8cが平行且つ隣接するようにして、対向する位置に形成した孔7d,8dを軸1f,1gに嵌合させている。カバー枠13は、孔13a,13bを、軸1h,1iに嵌合させている。そして、軸1f〜1iの先端を熱溶解させフランジ状に変形させることによって、二つの電磁アクチュエータが、地板1に対してコンパクトに取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各々が異なる少なくとも1枚の羽根を往復作動させるようにした二つの電磁アクチュエータを備えているカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、第1の電磁アクチュエータによってシャッタ羽根を往復作動させるようにしたシャッタ装置と、第2の電磁アクチュエータによって絞り羽根を往復作動させるようにした絞り装置とを一つにユニット化した羽根駆動装置が記載されている。そして、その特許文献1には、シャッタ装置とフィルタ装置とを一つにユニット化することや、絞り装置とフィルタ装置とを一つにユニット化することについても記載されている。また、文献をあげるまでもなく、第1の電磁アクチュエータによって開き専用のシャッタ羽根を往復作動させ、第2の電磁アクチュエータによって閉じ専用のシャッタ羽根を往復作動させるようにした羽根駆動装置も知られており、そのほかにも、第1の電磁アクチュエータによって第1の絞り羽根を往復作動させ、第2の電磁アクチュエータによって第1の絞り羽根とは異なる大きさの絞り開口を有している第2の絞り羽根を往復作動させるようにしたものや、第1の電磁アクチュエータによって第1のフィルタ羽根を往復作動させ、第2の電磁アクチュエータによって第1のフィルタ羽根とは異なる濃度の第2のフィルタ羽根を往復作動させるようにした羽根駆動装置も知られている。
【0003】
また、それらの羽根駆動装置に使用可能な電磁アクチュエータとしては、種々の構成をしたものが知られているが、特許文献1に記載の電磁アクチュエータは、永久磁石を有していて一体的に形成した出力ピンを羽根部材に連結させている回転子と、基部と二つの脚部とで略U字形をしており二つの脚部の先端を回転子の周面に対向させた磁極部としていて一方の脚部に嵌装したボビンにコイルを巻回しているヨークとを備えており、その回転子を、コイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ、所定の角度範囲内においてだけ回転させ得るように構成されている。そして、そのヨークは、地板に設けられた窪みに嵌め込まれ、地板との間に羽根室を構成するカバー板を地板に取り付けるとき、地板に押し付けられて固定されるようになっている。しかしながら、このようなヨークの固定方法は特殊であり、これまで実施されてきた固定方法としては、下記の特許文献2に記載されているように、ヨークの基部を地板に対してネジで固定するようにしたものが多かった。本発明は、略U字形のヨークを備えた二つの電磁アクチュエータを、撮影光路用の開口部を間にして配置するのではなく、特許文献1に記載されている構成のように、互いに近い位置に配置するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−33914号公報
【特許文献2】実用新案登録第2599957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の単体のデジタルカメラには、種々のデザインが採用されている。そのため、羽根駆動装置としては、極力それらの多くのものに採用できるようにするために、地板を小さくして小型化をする必要がある。また、携帯用情報端末機器等の小型の機器に内蔵されるカメラの場合にも、当然のことながら小型化が要求されている。そこで、そのような観点から、特許文献1に記載されている羽根駆動装置の構成を見てみると、長方形をしている地板の大きさをこれ以上小さくするのは極めて難しい。その最も大きい原因は、二つの電磁アクチュエータの地板に対する相互の配置関係にある。しかも、特許文献2に記載されているように、ヨークの基部をネジで地板に取り付けようとすると、かえって地板の長手方向の大きさが大きくなってしまうことになる。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、二つの電磁アクチュエータの相対的な配置関係とヨークの形状を工夫することによって、小型化にとって極めて好適な構成であって、しかも地板に対してヨークを確実に取り付けられるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、撮影光路用の開口部を有している合成樹脂製の地板と、前記地板に取り付けられていて前記地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しているカバー板と、前記羽根室外において前記地板に取り付けられているカバー枠と、前記羽根室内に往復作動可能に配置されていて各々が少なくとも1枚の羽根からなる第1羽根及び第2羽根と、基部と二つの脚部とで略U字形をしており一方の脚部にはコイルを巻回したボビンを嵌装し他方の脚部には該基部に対する付け根近傍位置に孔を有していて該二つの脚部の先端に形成された磁極部を前記地板と前記カバー枠との間に配置している第1ヨークと、基部と二つの脚部とで略U字形をしており一方の脚部にはコイルを巻回したボビンを嵌装し他方の脚部には該基部に対する付け根近傍位置に孔を有していて該他方の脚部を前記第1ヨークの他方の脚部と略平行に隣接させ該二つの脚部の先端に形成された磁極部を前記地板と前記カバー枠との間に配置している第2ヨークと、永久磁石を有していて前記第1ヨークの二つの磁極部の間に回転可能に配置されており一体化されている出力ピンを前記羽根室内で前記第1羽根に連結させている第1回転子と、永久磁石を有していて前記第2ヨークの二つの磁極部の間に回転可能に配置されており一体化されている出力ピンを前記羽根室内で前記第2羽根に連結させている第2回転子と、を備えており、前記二つのヨークは、それらの前記孔を前記地板に立設された二つの軸に嵌合させ、該二つの軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられているようにする。
【0008】
その場合、前記二つのヨークと前記二つの回転子とは、該二つの回転子を前記開口部側にして配置されているようにすると、装置のコンパクト化に有利となる。また、前記カバー枠と前記二つのボビンとが、合成樹脂で一体成形されているようにすると、部品点数が削減され、低コスト化が可能になる。また、前記カバー枠は、複数の孔を有していて、それらの孔を前記地板に立設された複数の軸に嵌合させ、該複数の軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられているようにすると、ねじなどの固定部材が不要になり、一層低コスト化が可能になる。
【0009】
更に、前記カバー枠は、前記第1回転子をカバーする第1カバー枠と、前記第2回転子をカバーする第2カバー枠とに分かれていて、前記第1ヨークに嵌装されている前記ボビンと該第1カバー枠とが合成樹脂で一体成形されており、前記第2ヨークに嵌装されている前記ボビンと該第2カバー枠とが合成樹脂で一体成形されているようにすると、低コスト化が可能なうえに、コイルの巻回が容易になる。そして、その場合には、前記第1カバー枠と前記第2カバー枠の少なくとも一方は、少なくとも一つの孔を有していて、該孔を前記地板に立設された軸に嵌合させ、該軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられているようにしてもよいし、前記第1カバー枠と前記第2カバー枠とは、それらの一部を薄くして重合させており、前記地板側となる重合部に形成されている孔又は切欠き部と、他方の重合部に形成されている孔とを前記地板に立設された軸に嵌合させ、該軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、基部と二つの脚部とで略U字形をしている二つのヨークを、ボビンを嵌装していない脚部同士を略平行にし且つ隣接して配置するようにしたので、地板上での配置効率がよく、地板を小さくして装置の小型化を図ることが可能になる。また、カバー枠は、主にヨークの磁極部と回転子をカバーしているだけであって、ヨークの基部近傍は露出されているので、カバー枠が存在しない分だけ、その空間にカメラ側の部材の配置が可能になる。更に、二つのヨークは、隣接している脚部の付け根近傍位置に、対向するようにして地板への取付孔を形成しているので、従来よりもヨークの長さを短くして装置の小型化が図れるようになるし、従来と同じ長さにした場合には、ボビンの長さを長くしてコイルの巻き数を多くすることができるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置にも、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置にも適用することができるものである。また、互いに異なる大きさの絞り開口を有した絞り羽根を備えている二つの絞り装置をユニット化した羽根駆動装置にも、互いに異なる濃度のフィルタ羽根を備えている二つのフィルタ装置をユニット化した羽根駆動装置にも適用することが可能である。更に、絞り装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置にも適用することが可能である。また、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラにも採用することができるものである。しかしながら、実施例では、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置をデジタルカメラに採用した場合で説明することにし、その他のことについては、適宜説明することにする。
【実施例1】
【0012】
本実施例は、一つの羽根室内に、第1電磁アクチュエータによって往復回転させられる1枚のシャッタ羽根と、地板に形成された撮影光路用の開口部よりも小さい絞り開口部を有していて第2電磁アクチュエータによって往復回転させられる1枚の絞り羽根と、を備えたカメラ用羽根駆動装置として構成したものである。そして、図1は、その斜視図であり、図2は、分解斜視図である。そこで先ず、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって比較的厚い部材であり、平面形状は長方形をしている。そして、その長さ方向の一端側には、図1から分かるように、円形をした撮影光路用の開口部1aが形成されている。また、その他端側は、図2から分かるように、凹凸形状をした肉厚部1bとして形成されている。
【0013】
図2に示されているカバー板2は、薄い合成樹脂製であって、地板1と略同じ平面形状をしており、地板1との間に羽根室を構成している。そして、その羽根室内には、地板1側にシャッタ羽根3が配置され、カバー板2側に絞り羽根4が配置されているが、それらの羽根3,4には、根元部に円形の孔3a,4aと長孔3b,4bが形成されているほか、絞り羽根4の先端部には、上記の開口部1aよりも小さくて絞り開口を規制するための開口部4cが形成されている。また、カバー板2には、上記の開口部1aと対向するところに、同じ形状をした撮影光路用の開口部2aが形成されているほか、円弧状をした二つの長孔2b,2cと、円形をした七つの孔2d,2e,2f,2g,2h,2i,2jが形成されている。更に、カバー板2には、絞り羽根4の先端部で隠れたところと、根元部で隠れたところにも、円形をした孔が一つずつ形成されているほか、切欠き部2kが形成されている。そして、カバー板2は、地板1の羽根室側の面に立設されている図示していない三つの軸を、上記の孔2h,2iと、絞り羽根4の先端部で隠れている孔に挿入し、それらの先端を熱溶解させフランジ状に変形させることによって取り付けられている。
【0014】
また、地板1の羽根室側の面には、図示していない二つの羽根軸が立設されており、それらの先端を上記の孔2d,2gに挿入している。そして、孔2dに挿入されている羽根軸には、シャッタ羽根3の孔3aが回転可能に嵌合され、孔2gに挿入されている羽根軸には、絞り羽根4の孔4aが回転可能に嵌合されているが、絞り羽根4の羽根軸は、カバー板2を地板1に組み付けるときの位置決め軸の役目もしている。また、地板1の羽根室側の面には、図示していないが、絞り羽根4の羽根軸と共にカバー板を組み付けるときの位置決めの役目をする軸が立設されており、その先端が上記の孔2jに嵌合させられている。更に、地板1の羽根室側の面には、ストッパ1cと、図示していない三つのストッパが設けられていて、ストッパ1cは、その先端を上記の切欠き部2kに挿入している。また、図示していない三つのストッパのうち二つのストッパは、それらの先端を上記の孔2e,2fに挿入し、残りの一つのストッパは、その先端を、絞り羽根4の根元部で隠れている孔に挿入している。尚、先端を孔2e,2fに挿入している二つのストッパがシャッタ羽根3のストッパであり、他の二つのストッパが絞り羽根4のストッパである。
【0015】
地板1の肉厚部1bには、羽根室とは反対側の面に六つの軸1d,1e,1f,1g,1h,1iが立設されている。それらのうち、軸1d,1eは深い窪み内に立設されていて、それらに、全く同じ構成をした回転子5,6が回転可能に取り付けられている。また、図示されていないが、それらの窪み内には、上記の長孔2b,2cと対向するところに、同じ形状の長孔が形成されている。回転子5は、本体部5aの径方向に2極に着磁された永久磁石製であって、腕部5bの先端に設けられた出力ピン5cは、その窪み内の長孔を貫通して、羽根室内においてシャッタ羽根3の長孔3bに嵌合し、その先端を上記の長孔2bに挿入している。また、回転子6も、本体部6aの径方向に2極に着磁された永久磁石製であって、腕部6bの先端に設けられた出力ピン6cは、窪み内の長孔を貫通して、羽根室内において絞り羽根4の長孔4bに嵌合し、その先端を上記の長孔2cに挿入している。尚、本実施例の回転子5,6は、本体部5a,6aだけではなく、腕部5b,6bと出力ピン5c,6cも永久磁石製であるが、周知のように、それらを合成樹脂製にしても構わない。
【0016】
また、上記の軸1f,1gには、ヨーク7,8が取り付けられている。ヨーク7は、基部7aと二つの脚部7b,7cとで略U字形をしており、二つの脚部7b,7cの先端を磁極部として回転子5の本体部5aの周面に対向させている。そして、一方の脚部7bには、コイル9を巻回した筒状のボビン10を嵌装しており、他方の脚部7cの付け根近傍位置には上記の軸1fに嵌合させる孔7dが形成されている。また、ヨーク8も、基部8aと二つの脚部8b,8cとで略U字形をしており、二つの脚部8b,8cの先端を磁極部として回転子6の本体部6aの周面に対向させている。そして、一方の脚部8bには、コイル11を巻回した筒状のボビン12を嵌装しており、他方の脚部8cの付け根近傍位置には上記の軸1gに嵌合させる孔8dが形成されている。即ち、本実施例の二つのヨーク7,8は共通部品であり、コイル9,11を巻回したボビン10,12も共通部品であるが、ヨーク8はヨーク7を裏返した状態にしておいてボビン12を嵌装していることになる。そして、これらのヨーク7,8は、孔7d,8dを、軸1f,1gに嵌合させた後、それらの軸1f,1gの先端を熱溶解させフランジ状に変形させることによって地板1に取り付けられている。
【0017】
更に、本実施例のカバー枠13は、二つの孔13a,13bを有していて、それらを上記の軸1h,1iに嵌合させた後、それらの軸1h,1iの先端を熱溶解させフランジ状に変形させることによって地板1に取り付けられている。しかしながら、本発明は、このような取付け構成に限定されず、複数のネジで取り付けるようにしても差し支えない。
【0018】
このように構成されている本実施例によれば、二つのヨーク7,8が、それらの四つの脚部7b,7c,8b,8cを略平行にし、しかも、両者の脚部7c,8cを隣接させて配置されているため、図1から分かるように、地板1の幅方向の寸法を、ぎりぎりまで小さくすることが可能になっている。その上、ボビン10,12を嵌装している脚部7b,8bを外側にし、他方の脚部7c,8cを内側にして配置したことによって、二つの回転子5,6の本体部5a,6a同士を内側に寄せ、出力ピン5c,6cを脚部7b,8b側で作動させるようにしているので、地板1の幅を小さくしても、地板の長さ方向の寸法を大きくすることなく、各羽根3,4との連結構成が好適に得られるようになっている。
【0019】
また、ヨーク7,8の脚部7b,8bは、ボビン10,12を嵌装させる必要があることから、比較的直線状に形成されている。そのため、他方の脚部7c,8cの磁極部を回転子5,6の本体部5a,6aの周面に対向させようとすると、それらの付け根近傍位置の形状に設計上の余裕が生まれることになる。そこで、本実施例の場合には、その領域に地板1への取り付け用の孔7d,8dを形成するようにしている。従って、特許文献2に記載されているようにして取り付け用の孔を形成する場合よりも、ヨークの長さが短くて済み、地板1の長さ方向の寸法を短くすることが可能になっている。また、観点をかえて言えば、地板1の長さ方向の寸法を短くしなくてよい場合には、その分だけヨーク7,8の脚部7a,7b,8a,8bの長さを長くすることができるので、ボビン10,12の長さを長くしてコイル9,11の巻き数を多くし、駆動力のパワーアップが図れることになる。
【0020】
更に、本実施例の場合、カバー枠13は、回転子5,6とヨーク7,8の磁極部をカバーしているだけであり、ボビン10,12をカバーしていない。そのため、全体としての装置の薄型化が図られている。また、ヨーク7,8の基部7a,8aや脚部7c,8cの付け根部もカバーしていないので、ヨーク7,8の取付け作業がし易く、カバー枠13の取付け作業と連続して行うことが可能である。また、ヨーク7,8は、軸1f,1gの先端をフランジ状に変形させて取り付けられるので、ネジで取り付けるよりもコスト的に有利であり、しかも、変形されたフランジ部はカバー枠13よりも薄いこともあって、取付部近傍の空間が大きくなり、羽根駆動装置以外の部材との配置構成にとって有利になる。そして、本実施例のこれらの特徴は、下記の実施例2の場合にも言えることである。
【0021】
次に、本実施例の作動を説明する。先ず、カメラの電源スイッチをオンにした撮影待機状態においては、シャッタ羽根3は、時計方向へ回転した位置で、カバー板2の孔2eに先端を挿入している図示していないストッパに接触し、開口部1aを全開にしている。また、絞り羽根4は、時計方向へ回転した位置で、絞り羽根4の根元部で隠れている孔に先端を挿入している図示していないストッパに接触し、開口部1aから退いている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、夫々の電磁アクチュエータのコイル9,11には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子5,6は、その本体部5a,6aの磁極とヨーク7,8の各々の二つの磁極部との対向配置関係によって、時計方向へ回転するように付勢されていて、その状態が維持されている。
【0022】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光を測定し、その結果によって、被写体光を減光して撮影すると判断された場合には、最初に絞り羽根4を開口部1aに進入させておいてから実際の撮影が開始されるが、先ずは、被写体光を減光しないで撮影すると判断された場合を説明する。その場合には、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル9に順方向の電流が供給され、回転子5は、反時計方向へ回転させられる。それによって、シャッタ羽根3は、出力ピン5cによって、反時計方向へ回転させられ、開口部1aを閉鎖した後、カバー板2の孔2fに先端を挿入した図示していないストッパに当接して停止する。
【0023】
その後、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されるが、それが終わると、コイル9に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給される。そのため、回転子5は時計方向へ回転させられ、その出力ピン5cによって、シャッタ羽根3を時計方向へ回転させ、開口部1aの開き作動を行わせる。そして、シャッタ羽根3は、開口部1aを全開にした直後に、カバー板2の孔2eに先端を挿入している図示していないストッパに当接し、停止する。その後、コイル9への通電を断つと、最初の撮影待機状態に復帰したことになる。
【0024】
次に、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、測光回路の測定結果によって、被写体光を減光して撮影すると判断された場合について説明する。その場合には、最初に、コイル11に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子6は、反時計方向へ回転させられるので、出力ピン6cによって、絞り羽根4を反時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根4は、露光用開口部1aに進入してゆき、開口部4cの中心が、開口部1aの中心位置までくると、ストッパ1cに当接して停止する。
【0025】
この状態になると、上記のようにして、実際の撮影が開始され、その後、コイル9に順方向の電流が供給されると、シャッタ羽根3の閉じ作動が行われる。そして、その閉じ作動の終了後、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されると、コイル9に対して逆方向の電流が供給され、シャッタ羽根3の開き作動が行われる。他方、コイル11に対しても、上記とは異なり逆方向の電流が供給されるので、回転子6は時計方向へ回転させられ、その出力ピン6cによって、絞り羽根4を時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根4は、開口部1aから完全に退くと、上記の図示していないストッパに当接して停止する。その後、二つのコイル9,11への通電を断つと、撮影待機状態に復帰したことになる。
【実施例2】
【0026】
本実施例も、一つの羽根室内に、各々の電磁アクチュエータによって往復回転させられる1枚のシャッタ羽根と1枚の絞り羽根とを配置したカメラ用羽根駆動装置として構成したものであり、図3は、その斜視図であり、図4は、分解斜視図である。そして、本実施例の構成部材の中には、実施例1の構成部材と同じものや、実質的に同じものが多い。そのため、それらの部材,部位には、実施例1の場合と同じ符号を付けておき、以下においては、異なる点だけを説明することにする。また、本実施例の作動は、実施例1の場合と全く同じである。そのため、その説明は省略する。
【0027】
先ず、本実施例の地板1は、肉厚部1bに、実施例1における軸1h,1iを立設しておらず、その代わりに軸1jを立設している点が異なっているだけである。カバー板2は、実施例1の場合と全く同じであり、羽根室内に配置されているシャッタ羽根3と絞り羽根4も全く同じである。但し、図4に示されているカバー板2には、実施例1において、絞り羽根4の先端部に隠れていた孔が符号2mで示されており、絞り羽根4の根元部で隠れていた孔が符号2nで示されている。そして、実施例1において説明したように、孔2mは、地板1の羽根室側に立設されている図示していない軸が挿入される孔であって、その軸は、上記したように、図示していない他の二つの軸と共に、先端を熱溶解でフランジ状に変形させられ、カバー板2を取り付けるためのものである。また、孔2nは、絞り羽根4が時計方向へ回転するのを阻止するために、地板1に設けられている図示していないストッパの先端を挿入するための孔である。更に、回転子5,6とヨーク7,8も、実施例1の場合と全く同じである。
【0028】
しかしながら、本実施例は、実施例1におけるボビン10,12とカバー枠13の構成が、大きく異なったものとなっており、実施例1におけるカバー枠13を二つの部材に分離すると共に、それらの部材を実施例1におけるボビン10,12と合成樹脂の一体成形で製作したものにしてある。即ち、本実施例の第1カバー枠14は、略方形をしており回転子5とヨーク7の二つの磁極部とをカバーするカバー部14aと、コイル15を巻回しているボビン部14bとで構成されており、カバー部14aの一辺には約半分の厚さの肉薄部が設けられ、そこに半月形の切欠き部14c(孔でもよい)が形成されている。また、第2カバー枠16も略方形をしており、回転子6とヨーク8の二つの磁極部とをカバーするカバー部16aと、コイル17を巻回しているボビン部16bとで構成されており、カバー部16aの一辺には約半分の厚さの肉薄部が設けられ、そこに孔16cが形成されている。
【0029】
そして、これらのカバー枠14,16を地板1に取り付けるには、先ず、第1カバー枠14のボビン部14bの中空部にヨーク7の脚部7bを挿入しておいてから、ヨーク7の孔7dを軸1fに嵌合させると共に、切欠き部14cを軸1jに合せておく。次に、第2カバー枠16のボビン部16bの中空部にヨーク8の脚部8bを挿入しておいてから、ヨーク8の孔8dを軸1gに嵌合させると共に、孔16cを軸1jに嵌合させる。そして、軸1f,1g,1jの先端を熱溶解させフランジ状に変形させると、図3に示された構成が得られる。尚、本実施例の場合は、二つのカバー枠14,16が、このようにして取り付けられているが、本発明は、このような取り付け方に限定されず、カバー枠14,16を個別に、一箇所又は複数箇所で取り付けるようにしてもよい。そして、そのようにする場合には、各々、本実施例の軸1jのように先端を変形させて取り付けても、ネジで取り付けるようにしても構わない。
【0030】
このように、本実施例では、実施例1の場合には、カバー枠13,二つのボビン10,12の3部品であったのに対して、第1カバー枠14と第2カバー枠16との2部品で済むようにしている。そのため、量産上、コストの低減が可能になっている。しかしながら、二つのカバー枠14,16を一体成形で1部品にすれば、さらにコストの低減が可能になる。
【0031】
尚、上記の各実施例においては、地板1の平面形状が長方形をしているが、本発明の地板は、そのような形状に限定されるものではない。また、上記の各実施例の場合は、シャッタ羽根が1枚であるが、本発明は、周知のように、出力ピン5cによって相反する方向へ同時に往復作動させられる2枚のシャッタ羽根としてもよい。また、上記の各実施例においては、二つの回転子5,6と二つのヨーク7,8とは、二つの回転子5,6を撮影光路用の開口部1a側にして配置されているが、それらの配置を逆にして、ヨーク7,8の基部7a,8aを撮影光路用の開口部1a側にして配置するようにしても構わない。そのようにすると、回転子5,6の出力ピン5c,6cと各羽根3,4の長孔3b,4bとの連結部が、図1,図3において左下端近傍位置に配置されることになるため、地板1の長手方向の寸法を短くすることが可能になる。
【0032】
また、上記の各実施例は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化した羽根駆動装置であるが、絞り羽根4に、開口部4cを覆うようにしてNDフィルタシートを取り付ければフィルタ羽根になって、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化した羽根駆動装置になる。また、上記の各実施例におけるシャッタ羽根3を、開口部1a,4cとは大きさの異なる開口部を形成して絞り羽根とすれば、二つの絞り装置をユニット化した羽根駆動装置になるし、さらに、それらの絞り羽根にNDフィルタシートを取り付ければ、二つのフィルタ装置をユニット化した羽根駆動装置になる。更に、本実施例は、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、シャッタ羽根の開閉作動の順序と時機を変えることによって銀塩フィルムを使用するカメラにも採用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の斜視図である。
【図2】実施例1の分解斜視図である。
【図3】実施例2の斜視図である。
【図4】実施例2の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 地板
1a,2a,4c 開口部
1b 肉厚部
1c ストッパ
1d,1e,1f,1g,1h,1i,1j 軸
2 カバー板
2b,2c,3b,4b 長孔
2d,2e,2f,2g,2h,2i,2j,2m,2n,3a,4a,7d,8d,13a,13b,16c 孔
2k,14c 切欠き部
3 シャッタ羽根
4 絞り羽根
5,6 回転子
5a,6a 本体部
5b,6b 腕部
5c,6c 出力ピン
7,8 ヨーク
7a,8a 基部
7b,7c,8b,8c 脚部
9,11,15,17 コイル
10,12 ボビン
13 カバー枠
14 第1カバー枠
14a,16a カバー部
14b,16b ボビン部
16 第2カバー枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有している合成樹脂製の地板と、前記地板に取り付けられていて前記地板との間に少なくとも一つの羽根室を構成しているカバー板と、前記羽根室外において前記地板に取り付けられているカバー枠と、前記羽根室内に往復作動可能に配置されていて各々が少なくとも1枚の羽根からなる第1羽根及び第2羽根と、基部と二つの脚部とで略U字形をしており一方の脚部にはコイルを巻回したボビンを嵌装し他方の脚部には該基部に対する付け根近傍位置に孔を有していて該二つの脚部の先端に形成された磁極部を前記地板と前記カバー枠との間に配置している第1ヨークと、基部と二つの脚部とで略U字形をしており一方の脚部にはコイルを巻回したボビンを嵌装し他方の脚部には該基部に対する付け根近傍位置に孔を有していて該他方の脚部を前記第1ヨークの他方の脚部と略平行に隣接させ該二つの脚部の先端に形成された磁極部を前記地板と前記カバー枠との間に配置している第2ヨークと、永久磁石を有していて前記第1ヨークの二つの磁極部の間に回転可能に配置されており一体化されている出力ピンを前記羽根室内で前記第1羽根に連結させている第1回転子と、永久磁石を有していて前記第2ヨークの二つの磁極部の間に回転可能に配置されており一体化されている出力ピンを前記羽根室内で前記第2羽根に連結させている第2回転子と、を備えており、前記二つのヨークは、それらの前記孔を前記地板に立設された二つの軸に嵌合させ、該二つの軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記二つのヨークと前記二つの回転子とは、該二つの回転子を前記開口部側にして配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記カバー枠と前記二つのボビンとが、合成樹脂で一体成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記カバー枠は、複数の孔を有していて、それらの孔を前記地板に立設された複数の軸に嵌合させ、該複数の軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記カバー枠は、前記第1回転子をカバーする第1カバー枠と、前記第2回転子をカバーする第2カバー枠とに分かれていて、前記第1ヨークに嵌装されている前記ボビンと該第1カバー枠とが合成樹脂で一体成形されており、前記第2ヨークに嵌装されている前記ボビンと該第2カバー枠とが合成樹脂で一体成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項6】
前記第1カバー枠と前記第2カバー枠の少なくとも一方は、少なくとも一つの孔を有していて、該孔を前記地板に立設された軸に嵌合させ、該軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項7】
前記第1カバー枠と前記第2カバー枠とは、それらの一部を薄くして重合させており、前記地板側となる重合部に形成されている孔又は切欠き部と、他方の重合部に形成されている孔とを前記地板に立設された軸に嵌合させ、該軸の先端を熱溶解させ変形させることによって前記地板に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−83203(P2008−83203A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261075(P2006−261075)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】