説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】複数の電磁アクチュエータが個別の羽根を駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置において、小型化,薄型化された構成を維持しつつ低コスト化を図ること。
【解決手段】合成樹脂製の枠部材7は、一体成形した二つのボビン部7a,7bにコイル8,9を巻回しており、合成樹脂製の地板1に立設されている取付軸1m,1n,1p,1qに対して、熱カシメによって取り付けられている。二つの回転子5,6は、地板1に形成されている二つの回転軸1r,1sに回転可能に取り付けられている。二つのヨーク10,11は、それらの一方の脚部10a,11aを、ボビン部7a,7bの中空部に嵌合させ、枠部材7と共に上記の取付軸1q,1pに取り付けられている。そして、回転子5と一体の駆動ピン5cは、羽根室内でシャッタ羽根4に連結されており、回転子6と一体の駆動ピン6cは、羽根室内で絞り羽根3に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根などの羽根部材を、羽根室内において往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置の中には、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置を、各々単独でユニット化するのではなく、それらのうち、二つ以上の装置を一つのユニットとして構成する場合がある。そして、その場合には、各装置の羽根を一つの羽根室に配置することもあるし、個別の羽根室に配置することもある。また、最近では、各装置の羽根を夫々の電磁アクチュエータによって往復作動させるのが普通になっている。そのため、そのように二つ以上の装置を一つのユニットとして構成する場合には、二つ以上の電磁アクチュエータを備えることになる。
【0003】
また、上記の各装置を単独でユニット化する場合でも、電磁アクチュエータを二つ以上備えることがある。例えば、シャッタ装置の中には、露光作動時において、開き作動だけを行うシャッタ羽根と閉じ作動だけを行うシャッタ羽根とを、夫々別の電磁アクチュエータで作動させるようにしたものがある。また、絞り装置の場合には、異なる直径の絞り開口を有する複数枚の絞り羽根を備えていて、それらを選択的に露光用の開口部へ進退させるようにしたものがあるし、フィルタ装置の場合にも、異なる面積又は異なる濃度のNDフィルターシートを取り付けた複数枚のフィルタ羽根を備えていて、それらを選択的に露光用の開口部へ進退させるようにしたものがあるが、それらの装置の場合にも、夫々の羽根を個別に作動させるために、複数の電磁アクチュエータを備えたものがある。本発明は、そのように、複数の電磁アクチュエータを備えていて、それらが異なる羽根を個別に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0004】
ところで、このようなカメラ用羽根駆動装置は、最近では、小型のデジタルカメラなどのほか、パソコン,携帯電話等の情報端末機器用カメラにも内蔵されることが多くなってきたため、小型化はもとよりとして、特に薄型化を強く要求されるようになってきた。そのため、上記のような複数の電磁アクチュエータを備えたカメラ用羽根駆動装置の場合には、電磁アクチュエータを、いかにして薄型化できるかが問題となってくるが、そのような要求に応えられるカメラ用羽根駆動装置の一例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−156616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているカメラ用羽根駆動装置の場合は、一つの電磁アクチュエータに、ヨークが2枚重ねで用いられている。これは、ヨークの一部によって、本来のヨーク以外の役目を行わせるのに必要な形状を得るためであって、その場合、ヨークは、金属部品であることから、1部品とするよりも2部品として加工した方がコスト的に有利であると考えているからである。そのため、もしも、そのような他の役目をさせる必要がなく、ヨークを1部品とする場合であっても、このように2枚重ねにした場合の2枚分の厚さが必要になる。このことを考慮して、特許文献1に記載されているカメラ用羽根駆動装置を見てみると、構造上の点で、これ以上の薄型化を図ることは極めて困難であると言わざるを得ない。そのため、その次に、この種のカメラ用羽根駆動装置において要求されることは、そのような小型化,薄型化された構成を維持しつつ、如何にして低コスト化を図るかということになる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、永久磁石を有している回転子が、地板と枠部材の間に回転可能に配置されていて、二つの脚部を有しているヨークが、一方の脚部を枠部材に設けられたボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として回転子の周面に対向させているように構成した電磁アクチュエータを複数備えていて、それらの電磁アクチュエータが、各々異なる種類の羽根を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、上記の枠部材を、複数の電磁アクチュエータに共通した一部材とすることによって、小型化,薄型化された構成を維持しつつ低コスト化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、露光用の開口部を有する地板と、コイルを巻回した中空の複数のボビン部を有していて前記地板に取り付けられている枠部材と、各々が永久磁石を有していて前記地板と前記枠部材との間において少なくともそれらの一方に回転可能に取り付けられている複数の回転子と、各々が二つの脚部を有していてそれらの脚部の一方を前記各ボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記各回転子の周面に対向させており前記各コイルへの通電により前記回転子を個々に往復回転させる複数のヨークと、各々が異なる羽根に個々に連結されていて前記各回転子の往復回転によって該羽根を回転させ前記開口部に進退させる複数の羽根駆動手段と、を備えているようにする。
【0009】
その場合、前記枠部材が、略平行な二つの部位とそれらを繋ぐ部位とで前記開口部を囲むようにした略コ字状に形成されており、それらの略平行な二つの部位には、前記ボビン部が一つずつ形成されていて、該繋ぐ部位と前記地板との間には、二つの前記回転子が配置されているようにすると、小型化に適した極めてコンパクトな構成になり、その上、前記略平行な二つの部位の先端部が、各々、前記ヨークと共に前記地板に取り付けられているようにすると、さらに好ましい構成になる。更に、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、前記各駆動手段が、前記各回転子に一体化されていて該各回転子と共に所定の角度範囲内で往復作動する駆動ピンであり、該駆動ピンは、前記地板に形成された孔から羽根室内に挿入され、該羽根室内で前記各羽根に連結されているようにすると、コスト的にさらに有利な構成になる。また、前記駆動手段の一つが、同時に相反する方向へ回転する2枚の羽根に連結されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、永久磁石を有している回転子が、地板と枠部材の間に回転可能に配置されていて、二つの脚部を有しているヨークが、一方の脚部を枠部材に設けられたボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として回転子の周面に対向させているように構成した電磁アクチュエータを複数備えていて、それらの電磁アクチュエータが、各々異なる種類の羽根を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、上記の枠部材を、複数の電磁アクチュエータに共通した一部材とすることによって部品点数を少なくしただけではなく、枠部材に対するコイルの巻回や地板に対する枠部材の組立に必要な工数を低減できるようにしたので、装置の小型化と薄型化を図れる上に、低コスト化が可能になるという特徴を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。上記したように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、単独のシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置に適用することができるし、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ以上を一つのユニットとして構成した装置にも適用することができるものである。しかも、それらの装置は、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することもできるし、各種情報端末機器用カメラやビデオカメラを含むデジタルカメラにも採用することのできるものである。しかしながら、それらの全ての場合について個々に具体例を挙げて説明するまでもないので、実施例としては、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものを説明する。
【実施例】
【0012】
本実施例は、シャッタ羽根を1枚備えたシャッタ装置と、絞り羽根を1枚備えた絞り装置とを、一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置である。そして、このカメラ用羽根駆動装置は、銀塩フィルムカメラに採用することも可能であるが、本実施例の場合には、特にデジタルカメラに採用された場合を前提にして説明することにする。尚、図1は、実施例の平面図であって、露光用の開口部を全開状態とした撮影待機状態を示したものであり、図2は、一目で分かるようにするために展開状態にして示した実施例の要部断面図であり、図3は、組立前における実施例の分解斜視図である。また、図4〜図6は、図1と同様にして示した実施例の平面図であって、図4は、図1においてシャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものであり、図5は、図1において絞り羽根を露光用の開口部に臨ませた状態を示したものであり、図6は、図5においてシャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものである。
【0013】
先ず、主に図1〜図3を用いて本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって比較的厚く形成されており、カバー板2との間に羽根室を構成している。そして、地板1には、円形をした露光用の開口部1aと、円弧状をした二つの長孔1b,1cが形成されている。また、カバー板2にも、上記の開口部1aと対向するところに円形をした露光用の開口部2aが形成されているが、開口部1aよりも直径が大きいため、本実施例の露光開口は、開口部1aによって規制されるようになっている。更に、カバー板2にも、上記の長孔1b,1cと対向するところに略同じ円弧状をした長孔2b,2cが形成されている。
【0014】
地板1の羽根室側の面には、四隅に四つの取付軸が一体成形で立設されているが、それらのうち、二つの取付軸1d,1eだけが図2に示されている。そして、それらの四つの取付軸は、カバー板2を取り付ける前には円柱状をしており、カバー板2の四隅に形成されている四つの孔2d,2e,2f,2gに貫通させた後、それらの先端を熱溶解し鍔状に変形させることによって、カバー板2を取り付けている。また、地板1の羽根室側の面には、二つの羽根軸1f,1gと、四つのストッパ軸1h,1i,1j,1kが立設されていて、それらの先端を、カバー板2の孔2h,2i,2j,2k,2m,2nに挿入している。
【0015】
羽根室内には、絞り羽根3とシャッタ羽根4が、絞り羽根3を地板1側にして配置されている。そして、絞り羽根3は、孔3aと、長孔3bと、上記の開口部1aよりも直径の小さな絞り開口用の開口部3cとを有していて、孔3aを上記の羽根軸1gに回転可能に嵌合させている。また、シャッタ羽根4は、孔4aと、長孔4bとを有していて、孔4aを上記の羽根軸1fに回転可能に嵌合させている。尚、本実施例の場合には、絞り羽根3とシャッタ羽根4を、同じ羽根室内に配置しているが、周知のように、地板1とカバー板2の間を中間板で仕切ることによって二つの羽根室を構成し、別々の羽根室に配置するようにしても構わない。
【0016】
他方、地板1の羽根室外には、四つの取付軸1m,1n,1p,1qと、二つの回転軸1r,1sとが、一体成形で立設されている。そして、それらのうち、回転軸1r,1sには、回転子5,6が回転可能に取り付けられている。これらの回転子5,6は、いずれも、径方向に2極に着磁された円筒状の永久磁石5a,6aと、その永久磁石5a,6aと一体成形されていて径方向へ張り出している合成樹脂製のアーム5b,6bと、そのアーム5b,6bの先端に設けられた駆動ピン5c,6cとからなっている。そして、一方の駆動ピン5cは、地板1の長孔1bから羽根室内に挿入され、シャッタ羽根4の長孔4bに嵌合し、その先端を、カバー板2の長孔2bから羽根室外へ突き出しており、他方の駆動ピン6cは、地板1の長孔1cから羽根室内に挿入され、絞り羽根3の長孔3bに嵌合し、その先端を、カバー板2の長孔2cから羽根室外へ突き出している。
【0017】
また、地板1に一体的に立設されている上記の四つの取付軸1m,1n,1p,1qには、合成樹脂製の枠部材7が取り付けられている。この枠部材7は、略平行な二つの部位と、それらの一端を繋ぐ部位とでコ字状に形成されており、上記の開口部1aを囲むようにして配置されている。そして、それらの略平行な二つの部位には、中空のボビン部7a,7b(図2参照)が形成されていて、そこにコイル8,9が巻回されている。また、この枠部材7は、四つの孔7c,7d,7e,7fを有しているほか、上記の略平行な二つの部位を繋ぐ部位によって、回転子5,6が回転軸1r,1sから抜けるのを防止するようにしている。
【0018】
尚、本実施例では、回転軸1r,1sを地板1にだけ立設しているが、それらの少なくとも一方を枠部材7に立設するようにしても差し支えないし、地板1と枠部材7の両方に短く立設するようにしても差し支えない。また、本実施例の回転子5,6は、上記のように永久磁石と合成樹脂とで製作されているが、アーム5b,6bと駆動ピン5c,6cとを含めて、全体を永久磁石製としても差し支えない。
【0019】
本実施例のヨーク10は、二つの脚部10a,10bと孔10cを有していて、一方の脚部10aを上記のボビン部7aの中空部に嵌合させている。そして、両方の脚部10a,10bの先端部を磁極部とし、回転子5の永久磁石5aを間にしてその周面に対向させている。また、もう一方のヨーク11は、二つの脚部11a,11bと孔11cを有していて、一方の脚部11aを上記のボビン部7bの中空部に嵌合させている。そして、両方の脚部11a,11bの先端部を磁極部とし、回転子6の永久磁石6aを間にしてその周面に対向させている。
【0020】
そして、ボビン部7a,7bにヨーク10,11の脚部10a,11aを嵌合させた枠部材7は、上記の孔7c,7dを、地板1の取付軸1m,1nに嵌合させた後、また、上記の孔7e,7fを、ヨーク11,10の孔11c,10cと共に地板1の取付軸1p,1qに嵌合させた後、それらの四つの取付軸1m,1n,1q,1pの先端を熱溶解させ、大きな鍔状に変形させることによって、地板1に取り付けられている。本実施例は、このように、一つの枠部材7に二つのボビン部7a,7bを設けるようにしたので、特許文献1に記載されているカメラ用羽根駆動装置のように、ボビン部を一つずつ形成した枠部材を二つ備えたものと比較し、部品点数が少ないばかりでなく、二つのコイル8,9の巻回工数や地板1への組み付け工数が少なくて済むようになり、低コスト化が可能になっている。
【0021】
次に、図1、及び図4〜図6を用いて、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、絞り羽根3とシャッタ羽根4は、露光開口を規制している開口部1aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、コイル8,9には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、一方の回転子5は、その永久磁石5aの磁極とヨーク10の二つの磁極部との対向配置関係による磁力で、時計方向へ回転され、駆動ピン5cによって、シャッタ羽根4を時計方向へ回転させるように付勢されているので、シャッタ羽根4はストッパ軸1hに押し付けられ、この状態が確実に維持されている。また、同様にして、他方の回転子6は、その永久磁石6aの磁極とヨーク11の二つの磁極部との対向配置関係による磁力で、反時計方向へ回転され、駆動ピン6cによって、絞り羽根3を反時計方向へ回転させるように付勢されているので、絞り羽根3はストッパ軸1iに押し付けられている。
【0022】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、図示していない測光回路による測定結果に基づいて、被写体光を減じて撮影するか、減じないで撮影するかが判断される。そこで先ず、被写体光を減じないで撮影すると判断された場合について説明する。その場合には、直ちに固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されることによって撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル8に順方向の電流が供給される。それによって、回転子5は、反時計方向へ回転させられることになり、シャッタ羽根4は、駆動ピン5cによって反時計方向へ回転させられ、開口部1aを閉じていく。そして、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根4がストッパ軸1jに当接して停止した状態が、図4に示されている。
【0023】
このような図4に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル8に対して上記とは異なり逆方向の電流が供給される。それによって、回転子5は時計方向へ回転させられるので、シャッタ羽根4は、駆動ピン5cによって時計方向へ回転させられ、開口部1aを開いていく。そして、シャッタ羽根4は、開口部1aを全開にした直後に、ストッパ軸1hに当接して停止する。また、その後、コイル8への通電を断つと、図1に示されている撮影待機状態に復帰したことになる。
【0024】
次に、撮影に際してレリーズボタンを押したとき、図示していない測光回路による測定結果に基づいて、被写体光を減じて撮影すると判断された場合について説明する。その場合には、最初に、コイル9の方に順方向の電流が供給される。そのため、回転子6は、時計方向へ回転させられることになり、絞り羽根3は、駆動ピン6cによって時計方向へ回転させられ、絞り開口用の直径の小さい開口部3cを開口部1aに進入させていく。そして、その開口部3cが開口部1aと略同心位置に達すると、絞り羽根3がストッパ軸1kに当接して停止する。図5は、そのときの状態を示したものである。このとき、コイル9に対して電流を供給し続けておくようにしてもよいが、電流の供給を断ったとしても、回転子6は、その永久磁石6aの磁極とヨーク11の二つの磁極部との対向配置関係による磁力で、時計方向へ回転するように付勢されるので、絞り羽根3はストッパ軸1kに押し付けられた状態を維持することが可能である。
【0025】
このようにして、図5に示された状態になると、上記のようにして固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出され、撮影が開始される。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル8に対して順方向の電流が供給されるので、シャッタ羽根4は、上記のようにして反時計方向へ回転させられ、開口部1aを閉じていく。そして、開口部1aを完全に閉鎖した直後に、シャッタ羽根4がストッパ軸1jに当接して停止した状態が、図6に示されている。
【0026】
図6に示された状態において、撮像情報が記憶装置に転送されると、上記のようにしてコイル8に対して逆方向の電流が供給されるが、このとき、コイル9に対しても逆方向の電流が供給される。そのため、シャッタ羽根4は、上記のようにして開口部1aを開いていくが、他方では、回転子6が反時計方向へ回転させられるので、絞り羽根3は、駆動ピン6cによって反時計方向へ回転させられ、開口部1aから退いていく。そして、絞り羽根3は、シャッタ羽根4が、開口部1aを全開にするのと相前後して開口部1aから完全に退き、その直後に、シャッタ羽根4はストッパ軸1hに当接して停止し、絞り羽根3はストッパ軸1iに当接して停止する。その後、コイル8,9への通電を断つと、図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0027】
尚、本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものであるが、絞り羽根3の開口部3cをNDフィルタシ−トで覆うようにすれば、絞り羽根3がフィルタ羽根となって、シャッタ装置とフィルタ装置とを一つのユニットとして構成したものになるし、シャッタ羽根4をNDフィルタシートで製作すれば、シャッタ羽根4がフィルタ羽根となって、フィルタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものになる。また、シャッタ羽根4に、開口部1aよりも小さくて開口部3cとは異なる直径の開口部を形成するようにすれば、シャッタ羽根4が絞り羽根となって、二つの絞り装置を一つのユニットとして構成したものになるし、そのような二つの絞り用の二つの開口部をNDフィルタシートで覆うようにすれば、二つの絞り羽根はフィルタ羽根になって、二つのフィルタ装置を一つのユニットとして構成したものになる。更に、本実施例の絞り羽根3に開口部3cを形成しないでシャッタ羽根とした場合には、特開2003−186079号公報に記載されているように、撮影時において、一方のシャッタ羽根を開き専用とし、他方のシャッタ羽根を閉じ専用としたシャッタ装置として構成することも可能である。そして、それらの構成は、全て本発明の実施形態である。
【0028】
また、本実施例の場合には、枠部材7に二つのボビン部7a,7bを形成しているが、本発明は、そのような構成に限定されず、開口部1aを囲むようにして、ボビン部を直列的に三つ以上形成するようにしても構わない。そのように構成した場合には、三つ以上の電磁アクチュエータを備えたものとなるため、例えば、シャッタ装置と、絞り装置と、フィルタ装置とを、一つのユニットとして構成したカメラ用羽根駆動装置も得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例の平面図であって、露光用の開口部を全開状態とした撮影待機状態を示したものである。
【図2】実施例の要部断面図である。
【図3】組立前における実施例の分解斜視図である。
【図4】実施例の平面図であって、図1においてシャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものである。
【図5】実施例の平面図であって、図1において絞り羽根を露光用の開口部に臨ませた状態を示したものである。
【図6】実施例の平面図であって、図5においてシャッタ羽根を閉じ状態とした撮影終了直後の状態を示したものである。
【符号の説明】
【0030】
1 地板
1a,2a,3c 開口部
1b,1c,2b,2c,3b,4b 長孔
1d,1e,1m,1n,1p,1q 取付軸
1f,1g 羽根軸
1h,1i,1j,1k ストッパ軸
1r,1s 回転軸
2 カバー板
2d〜2k,2m,2n,3a,4a,7c〜7f,10c,11c 孔
3 絞り羽根
4 シャッタ羽根
5,6 回転子
5a,6a 永久磁石
5b,6b アーム
5c,6c 駆動ピン
7 枠部材
7a,7b ボビン部
8,9 コイル
10,11 ヨーク
10a,10b,11a,11b 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用の開口部を有する地板と、コイルを巻回した中空の複数のボビン部を有していて前記地板に取り付けられている枠部材と、各々が永久磁石を有していて前記地板と前記枠部材との間において少なくともそれらの一方に回転可能に取り付けられている複数の回転子と、各々が二つの脚部を有していてそれらの脚部の一方を前記各ボビン部に嵌合させ両方の脚部の先端を磁極部として前記各回転子の周面に対向させており前記各コイルへの通電により前記回転子を個々に往復回転させる複数のヨークと、各々が異なる羽根に個々に連結されていて前記各回転子の往復回転によって該羽根を回転させ前記開口部に進退させる複数の羽根駆動手段と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記枠部材が、略平行な二つの部位とそれらを繋ぐ部位とで前記開口部を囲むようにした略コ字状に形成されており、それらの略平行な二つの部位には、前記ボビン部が一つずつ形成されていて、該繋ぐ部位と前記地板との間には、二つの前記回転子が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記略平行な二つの部位の先端部が、各々、前記ヨークと共に前記地板に取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記各駆動手段が、前記各回転子に一体化されていて該各回転子と共に所定の角度範囲内で往復作動する駆動ピンであり、該駆動ピンは、前記地板に形成された孔から羽根室内に挿入され、該羽根室内で前記各羽根に連結されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記駆動手段の一つが、同時に相反する方向へ回転する2枚の羽根に連結されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−8947(P2008−8947A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176440(P2006−176440)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】