説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】半田付け時において、プリント配線板のランドの孔から進入したフラックスが、アクチュエータ室に流入しないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】回転子12は、地板1に回転可能に取り付けられ、出力ピン12cをシャッタ羽根9,10の長孔9a,10aに嵌合させている。ヨーク14は、脚部14b,14cの磁極部を回転子12の永久磁石部12aの外周面に対向させている。コイル15を巻回して脚部14bに嵌装されたボビン16は、板状部16d,16eに立設した端子ピン16f,16gをモータ枠2の切欠孔2aに挿入している。端子ピン16gは、フレキシブルプリント配線板3の孔3bに挿入され、巻き付けていたコイル15の接続端をランドに半田21で接合させている。半田付け時に、孔3bから板状部16e側に流入したフラックスは、地板1の外方へ流れ、ヨーク14の磁極部や永久磁石部12aには付着しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根や絞り羽根などの羽根を電磁アクチュエータで駆動するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用の羽根駆動装置としては、レンズシャッタ装置,フォーカルプレンシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置などが知られているが、それらのうち、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置の場合には、最近では、その殆どが、電磁アクチュエータを駆動源として、1枚又は複数枚の羽根を往復作動させるようにしている。そして、その羽根の往復作動は、回転の場合が殆どであるが、中には、スライドさせるようにしたものもあるし、複数枚のうちの1枚だけをスライドさせ、残りの羽根を回転させるようにしたものもある。また、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置の場合には、単独でユニット化することもあるが、それらの二つ又は三つを一つのユニットとして構成することもある。そして、複数の装置を一つのユニットに構成する場合は、各々の羽根を、別々の羽根室に配置することもあるし、共通の羽根室に配置することもあるが、電磁アクチュエータは、少なくとも装置の数だけ必要になる。
【0003】
また、電磁アクチュエータとしては、ステップモータを用いることもあるが、最近では電流制御式のモータを用いるのが一般的である。この電磁アクチュエータは、2極に着磁された永久磁石製の回転子が、固定子コイルに対する電流の供給方向に対応した方向へ回転させられ、その出力ピンによって羽根を往復作動させるようにしたものであるが、現在実施されているものは、固定子の構成の違いにより、二つのタイプに大別することができる。第1のタイプのものは、固定子コイルが、回転子を収容している固定子枠の外側に、回転子の二つの軸受け部を囲むようにして巻回されているものであり、第2のタイプのものは、固定子コイルが、略U字形をしたヨークに巻回されているものである。
【0004】
下記の特許文献1には、そのような第1のタイプの電磁アクチュエータを駆動源としたシャッタ装置の一例が実施例1として記載され、また、第2のタイプの電磁アクチュエータを駆動源としているシャッタ装置の一例が実施例2として記載されているが、本発明は、それらのうち、第2のタイプの電磁アクチュエータを駆動源として上記の各種の羽根を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【0005】
【特許文献1】特開2007−101660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている上記の第2のタイプの電磁アクチュエータは、逃げ孔(特許文献1では孔26b。以下、カッコ内は特許文献1における部材,部位)を有していて地板(地板21)に取り付けられており地板との間にアクチュエータ室を構成しているモータ枠(モータ枠26)と、永久磁石(永久磁石31a)を有していて出力ピン(出力ピン31c)を羽根室内で羽根(シャッタ羽根24,25)に連結している回転子(回転子31)と、略U字形をしていて二つの脚部の先端部を磁極部として永久磁石の外周面に対向させているヨーク(ヨーク28)と、ヨークの一方の脚部に嵌装されていてコイル(コイル29)を巻回している筒部とその筒部の両側に形成されていて一部を上記の逃げ孔に挿入している二つのフランジ部とそれらのフランジ部に形成されていて上記の逃げ孔から外方へ突き出している二つの端子ピンとからなるボビン(ボビン30)と、で構成されている。
【0007】
また、周知であるため、特許文献1には記載されていないが、このような構成の電磁アクチュエータは、実際には、モータ枠の外側の面にプリント配線板を取り付けるようにしている。そして、上記の二つの端子ピンは、コイルの接続端を巻き付けた状態のまま、回路パターンのランドに形成された孔を貫通させ、それらの接続端とランドとを、半田によって接合している。
【0008】
ところで、半田には、通常、フラックスが含有されているが、半田付け時に加熱し溶解すると、そのフラックスは、半田成分よりも粘性が劣ったものとなり、半田成分とは分離し易くなる。また、上記したように、端子ピンは、コイルの接続端を巻き付けた状態のままランドの孔に挿入する必要があるため、挿入した状態においては、両者の間に比較的大きな隙間ができている。そのため、半田付け時には、溶解したフラックスが、多かれ少なかれその隙間からアクチュエータ室側へ流れることになる。そして、流入したフラックスがヨークや回転子に流れて固化すると、回転子の回転に多大な影響を与えてしまうことになる。しかも、そのような事態が生じたときには、電磁アクチュエータを分解しなければならないので、その修復作業が極めて面倒になってしまう。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、特別な部材を設けることなく既存の部材の形状を一部工夫するだけで、半田付け時において、プリント配線板のランドの孔から進入してきたフラックスが、アクチュエータ室に流入して、ヨークの磁極部や回転子に付着しないようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、カバー板との間に少なくとも一つの羽根室を構成している地板と、前記羽根室内に配置されている少なくとも1枚の羽根と、前記地板に取り付けられていて前記羽根を往復作動させる少なくとも一つの駆動源とを備えていて、前記駆動源は、逃げ孔を有していて前記羽根室外において前記地板に取り付けられ前記地板との間にアクチュエータ室を構成しているモータ枠と、永久磁石を有していて前記アクチュエータ室内で前記地板に回転可能に取り付けられており出力ピンを前記羽根室内で前記羽根に連結している回転子と、二つの脚部を有していて略U字形をしておりそれらの脚部の先端部を磁極部として前記回転子の外周面に対向させているヨークと、前記ヨークの一方の脚部に嵌装した筒部と該筒部の両端に形成されていてそれらの一部を前記逃げ孔に挿入している二つのフランジ部のほか前記回転子側となるフランジ部から前記一方の脚部の長さ方向に張り出された板状部には前記逃げ孔から前記アクチュエータ室外へ突き出した一つ又は二つの端子ピンを有しているボビンと、前記筒部に巻回され接続端を前記端子ピンに巻き付けているコイルと、回路パターンのランドに設けた孔に前記端子ピンを挿入し該ランドを前記コイルに半田付けされているプリント配線板と、を備えた電磁アクチュエータであって、前記モータ枠は、前記逃げ孔の縁の周辺部位の一部を前記板状部に重ねて前記地板に取り付けられ、前記プリント配線板を上面とし、前記板状部を底面とし、前記逃げ孔の端面と前記回転子側のフランジ部とを側壁とした空間を形成しており、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスが、前記空間内に留まるようにする。
【0011】
また、前記板状部が、肉厚部と肉薄部とを有していて、該肉厚部には、前記端子ピンが立設され、該肉薄部の一部には、前記逃げ孔の縁の周辺部位の一部が重ねられており、前記空間は、前記プリント配線板を上面とし、該肉薄部を底面とし、且つ、前記逃げ孔の端面と、前記回転子側のフランジ部と、該肉厚部と肉薄部との段差側面とを前記側壁として形成されているようにしてもよい。
【0012】
そして、それらの場合、前記逃げ孔が、前記地板の板面外形端に対応する領域に形成された切欠孔であって、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスは、前記地板の板面外方に向けて流れ出し得るようにしてもよいし、さらにその場合において、前記側壁が、前記逃げ孔の端面と前記回転子側のフランジ部のほか、前記板状部に形成された壁部とで形成されていて、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスが、前記空間内に留まるようにしてもよい。また、いずれの場合であっても、前記モータ枠と前記板状部とは、両者の重なる部位の少なくとも一方が、肉薄部となるように形成されているようにすると、装置の薄型化に有利となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、ボビンに設けられている二つのフランジ部のうち、少なくとも回転子側となるフランジ部に板状部を形成し、その板状部に端子ピンを立設すると共に、その板状部と、プリント配線板と、モータ枠とによって囲まれた空間を構成するようにしたから、半田付け時において、プリント配線板のランドの孔からその空間に進入してきたフラックスが、アクチュエータ室に流入してしまい、ヨークの磁極部や回転子に付着してしまうようなことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。上記したように、本発明は、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置として、夫々単独で実施することも可能であるし、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のうちの二つ又は三つをユニット化したものとして実施することも可能であるが、実施例は、レンズシャッタ装置と絞り装置とをユニットとして構成したものである。また、実施例は、デジタルカメラにも、銀塩フィルムカメラにも採用することが可能であるが、作動説明は、デジタルカメラに採用した場合で説明する。尚、図1は、実施例の平面図であり、図2は、図1の一部拡大図であり、図3は、図2の断面図である。また、図4は、実施例の要部を示した斜視図であり、図5は、その一部の分解斜視図である。更に、図6は、図4と同様にして要部の変形例を示した斜視図である。
【実施例】
【0015】
先ず、本実施例の構成を説明する。地板1は、合成樹脂製であって比較的厚い部材であり、その両面は複雑な形状をしている。図1に示されているように、この地板1は、外形が円形をしていて、その中央部には円形をした撮影光路用の開口部1aを有しおり、その開口部1aの上方位置と、右方のやや下の位置には、貫通孔として形成された円弧状の長孔1b,1cを有している。そして、図1において、地板1の表面側には、図示していないレンズの一部を受け入れることができるようにするために、開口部1aを囲むようにして環状の凹部1dが形成されている。また、この地板1の表面側には、地板1よりも外形が僅かに小さい環状のモータ枠2が重ねられ、さらにその上には、モータ枠2と略同じ外形の環状部を有するフレキシブルプリント配線板3が重ねられており、それらは、三つのねじ4,5,6によって地板1に取り付けられている。尚、図1は、モータ枠2とフレキシブルプリント配線板3を一部切除して示してある。また、本実施例では、フレキシブルプリント配線板3を用いているが、比較的薄い硬質のプリント配線板を用いるようにしてもよい。
【0016】
図1において、地板1の背面側には、地板1と略同じ外形をした中間板7(図3参照)とカバー板8(図3参照)とが、所定の間隔を空けて、図示していない適宜な手段によって、地板1に順に取り付けられており、地板1と中間板7の間、及び中間板7とカバー板8の間に、夫々羽根室を構成している。また、中間板7とカバー板8にも、それらの中央部に、円形をした図示していない撮影光路用の開口部が形成されているが、それらの直径は開口部1aの直径よりも若干大きいため、本実施例においては、開口部1aが露光開口を規制するようになっている。
【0017】
図1において、地板1の背面側には、三つの羽根取付軸1e,1f,1gが立設されている。それらのうち、羽根取付軸1e,1fは、図3に示されているように、中間板7に形成された孔7a,7bを貫通し、それらの先端をカバー板8に形成された孔8a,8bに挿入している。また、図3には示されていない羽根取付軸1gも同様にして、中間板7に形成された孔を貫通し、その先端をカバー板8に形成された孔に挿入している。また、図3では図示を省略されているが、図1に示されている2枚のシャッタ羽根9,10が、地板1と中間板7との間の羽根室に配置され、絞り羽根11が、中間板7とカバー板8との間の羽根室に配置されている。そして、シャッタ羽根9は、長孔9aを有していて、上記の羽根取付軸1eに回転可能に取り付けられており、シャッタ羽根10は、長孔10aを有していて、上記の羽根取付軸1fに回転可能に取り付けられている。また、絞り羽根11は、長孔11aと、開口部1aよりも直径の小さな絞り開口用の開口部11bとを有していて、上記の羽根取付軸1gに回転可能に取り付けられている。
【0018】
尚、本実施例の場合には、2枚のシャッタ羽根9,10が備えられているが、周知のように、いずれか一方を大きくし、他方を省くことによって、1枚だけにしてもよい。また、シャッタ羽根9,10の一方又は両方を、2枚の分割羽根で構成し、3枚又は4枚構成としても構わない。また、本実施例のように、相反する方向へ回転させられる2枚の羽根のほかに、スライドさせられる羽根を加えた3枚構成にしても構わない。そしてさらに、相反する方向へスライドさせられる2枚構成にしても構わない。また、本実施例においては、シャッタ羽根9,10と絞り羽根11とを別々の羽根室に配置しているが、それらを一つの羽根室に配置することも知られている。また、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置を一つのユニットとして構成する場合において、シャッタ羽根,絞り羽根,フィルタ羽根を一つの羽根室に配置することも知られている。そのため、本発明においては、複数の装置をユニット化する場合でも、羽根室は複数とは限らない。
【0019】
地板1とモータ枠2の間には、地板1の表面を複雑な形状にすることによって、二つのアクチュエータ室が構成されているが、それらのアクチュエータ室の構成と、そこに配置されている部材の構成は、実質的に同じである。そして、図1に示されているように、地板1には、各アクチュエータ室に、回転子取付軸1h,1iが立設されていて、それらに、回転子12,13が回転可能に取り付けられている。それらのうち、回転子12は、図3に示されているように、円柱形をしていて2極に着磁された永久磁石部12aと、その永久磁石部12aに一体成形された合成樹脂製の腕部12bと、その腕部12bの先端に形成された出力ピン12cとからなっていて、その出力ピン12cを、地板1に形成された上記の長孔1bに挿入して、シャッタ羽根9,10に形成された上記の長孔9a,10a(図1参照)に嵌合させており、その先端を、中間板7とカバー8に、長孔1bと同じ形状に形成された長孔7c,8cに挿入している。
【0020】
他方、もう一方の回転子13は、上記の回転子12と全く同じ構成をしていて、2極に着磁された円柱形の永久磁石部13aと、合成樹脂製の腕部13bと、その先端に設けられた出力ピン13cとからなっており、その出力ピン13cを、地板1に形成された上記の長孔1cと、中間板7に形成された図示していない同じ形状の長孔に挿入して、絞り羽根11に形成された上記の長孔11aに嵌合させており、その先端を、カバー8に、長孔1cと同じ形状に形成されている図示していない長孔に挿入している。尚、本実施例の回転子12,13は、このように、永久磁石と合成樹脂の一体成形で製作されているが、周知のように、永久磁石だけで製作することも知られている。そのため、本発明の回転子は、本実施例の構成に限定されるものではない。
【0021】
図1に示されているように、二つのアクチュエータ室の一方には、ヨーク14と、コイル15を巻回したボビン16とが配置されおり、他方には、ヨーク17と、コイル18を巻回したボビン19とが配置されている。また、モータ枠2には、各アクチュエータ室を覆っている領域の一部に、地板1の板面の外形端と対応している側を開いた切欠孔2a,2bが形成されている。そして、ヨーク14,17は、夫々、被位置決め部14a,17aと、二つの脚部14b,14c,17b,17cとを有した略U字形をしていて、それらの脚部14b,14c,17b,17cの先端部を磁極部として、回転子12,13の永久磁石部12a,13aの外周面に対向させている。
【0022】
また、ボビン16,19は、夫々、ヨーク14,17の脚部14b,17bに嵌装した筒部16a,19aと、それらの両端に形成されている二つのフランジ部16b,16c,19b,19cと、各々のフランジ部16b,16c,19b,19cからヨーク14,17の脚部14b,14c,17b,17cの長さ方向へ張り出された板状部16d,16e,19d,19eと、各板状部16d,16e,19d,19eに立設された端子ピン16f,16g,19f,19gとを有している。更に、上記のフレキシブルプリント配線板3に形成されている回路パターンは、略円形をした四つのランドを有していて、それらには、上記の端子ピン16f,16g,19f,19gを挿入させた円形の孔3a,3b,3c,3dが形成されている。そして、それらのランドと、端子ピン16f,16g,19f,19gに巻き付けられたコイル15,18の接続端とは、半田20,21,22,23によって接合されている。
【0023】
ところで、図1は、装置全体を示したものであるため、各アクチュエータ室の構成とそこに配置されている部材の構成を細部まで理解できるように図示することができない。そこで、上記では説明できなかった構成も含めて、シャッタ羽根9,10の駆動源となる電磁アクチュエータの要部の構成を、図2〜図5を用いて詳しく説明する。尚、図4及び図5においては、フレキシブルプリント配線板3に形成されている回路パターンの図示が省略されている。
【0024】
図4に示されているように、アクチュエータ室は、その一部が、地板1の外周部の外側から見えるようになっていて、モータ枠2は、その外周部に設けられた受け部1j,1kの上に載っている。このように、アクチュエータ室が、地板1の外周部の外側から見えるようになっているのは、地板1の外径を少しでも小さくしたいからである。図3に示されているように、ヨーク14は、ボビン16を一方の脚部14bに嵌装した状態で、地板1に立設された位置決めピン1mに上記の被位置決め部14aを合わせ、地板1に設けられた押さえ部1nと、モータ枠2に設けられた押さえ部2cとによって挟持されている。また、ヨーク14は、地板1に設けられた図示していない部位によって、位置決めピン1mを中心にした回転を阻止されているほか、押さえ部1n,2cのほかにも、同様の形状をした図示していない押さえ部が、地板1とモータ枠2とに複数ずつ設けられていて、それらによって、ヨーク14の他の部位が挟持されている。
【0025】
図5には、ボビン16のフランジ部16b,16cの形状が分かり易く示されている。これらのフランジ部16b,16cは、図3に示された状態において、その一部がモータ枠2の切欠孔2aに挿入されている。それによって、図3における上下方向の寸法を小さくし、装置の薄型化が図られている。また、本実施例においては、板状部16d,16eも切欠孔2aに挿入されている。そして、その切欠孔2aの形状は、図5に分かり易く示されている。このことからも分かるように、切欠孔2aは、一種の逃げ孔である。上記したように本実施例では、地板1の外径を少しでも小さくするため、通常は、切欠き形状ではない完全な逃げ孔にするところを、切欠孔2aとして形成したものである。従って、本発明における逃げ孔は、本実施例のような切欠孔2aに限定されるものではない。
【0026】
ボビン16の板状部16eは、図5から分かるように、肉厚部と、それよりも面積の大きな肉薄部とを有している。そして、その肉薄部は、図3及び図4からも分かるように、その外周部の一部が、モータ枠2の切欠孔2aの縁の周辺部位と重なっているが、モータ枠2の方も、板状部16eの肉薄部と重なっている部位を肉薄部として形成してある。この図5に示された板状部16eの形状と切欠孔2aの形状とを念頭において図2を見てみると、板状部16eがヨーク14を覆っている領域では、板状部16eの肉薄部とモータ枠2の肉薄部とが完全に重なっていることを理解することができる。
【0027】
尚、本実施例では、端子ピン16f,16gの立設面が切欠孔2aの中にあるようにしたいため、板状部16d,16eを、図3においてフランジ部16b,16cの上端位置に形成しているが、図3を見れば分かるように、板状部16d,16eとヨーク14との間隔には余裕があるので、このように余裕がある場合であって、端子ピン16f,16gの立設面が切欠孔2aの中になくてもよい場合には、板状部16d,16eを、ヨーク14に近い位置に形成するようにしてもよい。それによって、装置の薄型化が損なわれるようなことはない。また、そのように構成した場合には、本実施例のように、板状部16eとモータ枠2に肉薄部を形成する必要がない場合があるし、いずれか一方にだけ形成するだけでよい場合もある。
【0028】
ボビン16は、端子ピン16f,16gを、コイル15の接続端を巻き付けた状態にしておいて、フレキシブルプリント配線板3のランドの孔3a,3bに挿入し、それらの接続端をランドに半田付けしている。そして、その半田付け作業は、当然のことながら、図3に示されているように、フレキシブルプリント配線板3を上側にし、カバー板8を下側にして行われる。しかしながら、図2から分かるように、端子ピン16f,16gと孔3a,3bの縁との間には、比較的大きな隙間が空いているので、半田を過熱した際に、フラックスが、その隙間から板状部16d,16e側に流れ込んでくる。
【0029】
ところが、本実施例の場合は、フレキシブルプリント配線板3と板状部16eの肉薄部との間に、板状部16eの肉厚部に形成されている肉薄部との段差側面と、フランジ部16cと、切欠孔2aの端面とを壁とした空間が形成されていて、図2及び図4から分かるように、地板1の外側方向、即ち図2の下方が解放されているように構成されているため、孔3bから板状部16e側に流れ込んできたフラックスは、多量であっても、ヨーク14に流れ落ちることがなく、地板1の外側方向へ流れ出すようになっている。そのため、本実施例では、フラックスが、アクチュエータ室内に落下して、ヨーク14の脚部14bの磁極部や、その磁極部と僅かな間隔で配置されている回転子12に付着し、固化してしまうようなことがない。他方、孔3aから板状部16d側に流れ込んできたフラックスは、ヨーク14に流れ落ちることがあるが、磁極部までは達しないので問題にするほどではない。しかし、問題がある場合には、板状部16e側の構成と同じ構成を採用すればよい。
【0030】
上記のように、本実施例は、孔3bから板状部16e側に流れ込んできたフラックスが、ヨーク14に流れ落ちることなく、地板1の外側方向へ流れ出し得るように構成しているが、本発明は、図6に示されている変形例のように、板状部16eに壁部16hを形成し、フラックスが、上記の空間に溜まり、そこで固化してしまうようにしても差し支えない。更に、本発明は、モータ枠2に、本実施例のような切欠孔2aではなく、上記したような完全な孔形状の逃げ孔を形成しても構わないので、そのようにする場合には、逃げ孔の端面の一部に、変形例における壁部16hの役目をさせるようにすることによって、孔3bから板状部16e側に流れ込んできたフラックスを、上記の空間内に溜め、そこで固化させることになる。
【0031】
次に、本実施例の作動を説明する。図1に示された状態は、カメラの電源がオンになっているが、二つのアクチュエータのコイル15,18には通電されていない状態である。このとき、周知の手段によって、回転子12,13には時計方向へ回転する力が付与されている。そのため、出力ピン12cによって、シャッタ羽根9は時計方向へ回転する力が付与され、シャッタ羽根10は反時計方向へ回転する力が付与されているが、図示していないストッパによって、この状態が維持されている。また、絞り羽根11は、反時計方向へ回転する力が付与されているが、図示していないストッパによって、この状態を維持されている。そのため、この状態においては、開口部1a(露光開口)は全開となっていて、液晶表示装置によって被写体像を観察できるようになっている。
【0032】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、先ず測光装置によって被写体光が測定され、被写体光が比較的暗い場合には、シャッタ9,10だけが作動させられ、被写体光が比較的明るい場合には、最初に、絞り羽根11が作動させられ、続いてシャッタ羽根9,10が作動させられる。そして、いずれの場合にも、シャッタ羽根9,10の作動は同じであるため、以下の作動説明では、重複を避けるために、被写体光が比較的明るい場合だけを説明する。
【0033】
先ず、絞り羽根11を作動させるためには、コイル18に対して、順方向に電流が供給される。そのため、回転子13は、反時計方向へ回転させられ、出力ピン13cによって絞り羽根11を時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根11は、開口部1aに進入して行き、その開口部11bの中心が開口部1aの中心に一致したとき、図示していないストッパに当接して停止させられる。それによって、固体撮像素子Cの受光量が減じられたことになる。
【0034】
次に、その状態で、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出される。それによって、それ以後は、撮影のための露光が開始され、新たな電荷の蓄積が行われていく。そして、露光時間制御回路によって制御された所定の時間が経過すると、その終了信号によって、コイル15に対し、順方向の電流が供給される。そのため、回転子12は、反時計方向へ回転させられ、出力ピン12cによって、シャッタ羽根9を反時計方向へ、シャッタ羽根10を時計方向へ回転させる。そして、絞り羽根11の開口部11bを閉鎖すると、その直後に、シャッタ羽根9,10は、図示していないストッパに当接して停止させられる。
【0035】
その後、固体撮像素子に蓄積された撮像情報が記憶装置に転送されると、コイル15,18に対して逆方向の電流が供給され、回転子12,13は、時計方向へ回転させられる。そして、一方の、回転子12が時計方向へ回転すると、出力ピン12cによって、シャッタ羽根9は時計方向へ回転させられ、シャッタ羽根10は反時計方向へ回転させられ、開口部1aを開いていく。そして、その開き作動は、開口部1aを全開にした直後に、シャッタ羽根9,10が図示していないストッパに当接することによって停止させられる。他方、絞り羽根11は、回転子13が時計方向へ回転すると、出力ピン13cによって、反時計方向へ回転させられ、開口部1aから退いていく。そして、その作動は、絞り羽根11が開口部1aから完全に退いた直後に、図示していないストッパに当接して停止させられる。その後、コイル15,18に対する通電が断たれると、図1に示した状態になり、次の撮影に備えることになる。
【0036】
尚、上記の作動説明は、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、フィルムカメラに採用された場合には、シャッタ羽根9,10は、撮影前は、開口部1aを閉じた状態にあり、撮影に際しては、開口部1aを全開にしてから、閉じ状態に復帰するようにする。また、本実施例は、レンズシャッタ装置と絞り装置とを一つのユニットとして構成したものであるが、上記したように、本発明は、それらを単独で構成しても構わない。その場合、レンズシャッタ装置は、そのままの構成でレンズバリア装置とすることができるし、絞り装置の場合には、絞り羽根11の開口部11bをNDフィルタシートで覆うことによってフィルタ装置とすることができる。
【0037】
更に、本実施例の場合には、端子ピン16fを板状部16dに立設しているが、板状部16eの面積を大きくすることによって、端子ピン16gと共に、その板状部16eに立設するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例の平面図である。
【図2】図1の一部拡大図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】実施例の要部を示した斜視図である。
【図5】実施例の要部を示した分解斜視図である。
【図6】図4と同様にして要部の変形例を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 地板
1a,11b 開口部
1b,1c,7c,8c,9a,10a,11a 長孔
1d 凹部
1e,1f,1g 羽根取付軸
1h,1i 回転子取付軸
1j,1k 受け部
1m 位置決めピン
1n,2c 押さえ部
2 モータ枠
2a,2b 切欠孔
3 フレキシブルプリント配線板
3a,3b,3c,3d,7a,7b,8a,8b 孔
4,5,6 ねじ
7 中間板
8 カバー板
9,10 シャッタ羽根
11 絞り羽根
12,13 回転子
12a,13a 永久磁石部
12b,13b 腕部
12c,13c 出力ピン
14,17 ヨーク
14a,17a 被位置決め部
14b,14c,17b,17c 脚部
15,18 コイル
16,19 ボビン
16a,19a 筒部
16b,16c,19b,19c フランジ部
16d,16e,19d,19e 板状部
16f,16g,19f,19g 端子ピン
16h 壁部
20,21,22,23 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー板との間に少なくとも一つの羽根室を構成している地板と、前記羽根室内に配置されている少なくとも1枚の羽根と、前記地板に取り付けられていて前記羽根を往復作動させる少なくとも一つの駆動源とを備えていて、前記駆動源は、逃げ孔を有していて前記羽根室外において前記地板に取り付けられ前記地板との間にアクチュエータ室を構成しているモータ枠と、永久磁石を有していて前記アクチュエータ室内で前記地板に回転可能に取り付けられており出力ピンを前記羽根室内で前記羽根に連結している回転子と、二つの脚部を有していて略U字形をしておりそれらの脚部の先端部を磁極部として前記回転子の外周面に対向させているヨークと、前記ヨークの一方の脚部に嵌装した筒部と該筒部の両端に形成されていてそれらの一部を前記逃げ孔に挿入している二つのフランジ部のほか前記回転子側となるフランジ部から前記一方の脚部の長さ方向に張り出された板状部には前記逃げ孔から前記アクチュエータ室外へ突き出した一つ又は二つの端子ピンを有しているボビンと、前記筒部に巻回され接続端を前記端子ピンに巻き付けているコイルと、回路パターンのランドに設けた孔に前記端子ピンを挿入し該ランドを前記コイルに半田付けされているプリント配線板と、を備えた電磁アクチュエータであって、前記モータ枠は、前記逃げ孔の縁の周辺部位の一部を前記板状部に重ねて前記地板に取り付けられ、前記プリント配線板を上面とし、前記板状部を底面とし、前記逃げ孔の端面と前記回転子側のフランジ部とを側壁とした空間を形成しており、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスが、前記空間内に留まるようにしたことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記板状部が、肉厚部と肉薄部とを有していて、該肉厚部には、前記端子ピンが立設され、該肉薄部の一部には、前記逃げ孔の縁の周辺部位の一部が重ねられており、前記空間は、前記プリント配線板を上面とし、該肉薄部を底面とし、且つ、前記逃げ孔の端面と、前記回転子側のフランジ部と、該肉厚部と肉薄部との段差側面とを前記側壁として形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記逃げ孔が、前記地板の板面外形端に対応する領域に形成された切欠孔であって、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスは、前記地板の板面外方に向けて流れ出し得るようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記側壁が、前記逃げ孔の端面と前記回転子側のフランジ部のほか、前記板状部に形成された壁部とで形成されていて、前記半田付け時において前記ランドの孔から前記空間に流れてきたフラックスが、前記空間内に留まるようにしたことを特徴とする請求項3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記モータ枠と前記板状部とは、両者の重なる部位の少なくとも一方が、肉薄部となるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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