説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】装置全体をスリムに構成しても、羽根を作動方向に長く形成することなく、羽根が好適に作動し得るようにした、2枚の羽根を相反する方向へ直線的に往復作動させるカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】シャッタ羽根4,5には、カム溝4d,5dが形成されている。補助板6は、カム溝4d,5dの形成されている領域近傍で、シャッタ羽根4,5の間に重ねて配置されている。ステッピングモータ2の出力軸2aに一体化された駆動部材3は、アーム部3a,3bの先端に設けた駆動ピン3c,3dを羽根室内に挿入しており、駆動ピン3cは、シャッタ羽根4のカム溝4dと補助板6の一方の孔6aに挿入され、駆動ピン3dは、補助板6の他方の孔6bとシャッタ羽根5のカム溝5dとに挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一つの電磁駆動手段によって2枚の羽根部材を略直線的に相反する方向へ往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られているが、それらのいずれの装置の中にも、2枚の羽根部材を略直線的に相反する方向へ往復作動させ、被写体光路を開閉したり、被写体光の光量を調節するようにしたものがある。そして、そのような構成のうち、一つの電磁駆動手段によって、2枚の絞り羽根を相反する方向へ直線的に往復作動させるようにした絞り装置が、下記の特許文献1に実施例1として記載されている。
【0003】
この絞り装置においては、電磁駆動手段としてのモータは、被写体光路用の開口部を形成している地板に対し、回転子の回転軸が光軸と平行になるようにして取り付けられている。また、回転子には、回転軸を中心にして略相反する径方向に張り出した二つのアームが一体化されており、それらのアームの先端に形成された二つの駆動ピン(出力ピン)が、2枚の絞り羽根に直線状に形成されている長孔に対し、個々に挿入されている。そして、各々の駆動ピンは、被写体光路用の開口部と回転子とを通る線に対するモータ本体の両側の領域で、約40〜50度の角度範囲で往復作動させられるようになっており、その往復作動によって、2枚の絞り羽根が、上記の線に沿って相反する方向へ直線的に往復作動させられるようになっている。
【0004】
特許文献1に記載されている絞り装置は、このような構成をしているため、モータを、被写体光路用の開口部に近接させて配置させることができる。そのため、絞り装置全体としては、絞り羽根の作動方向の寸法を短くすることが可能になる。ところが、上記したように、この絞り装置の場合には、二つの駆動ピンが、被写体光路用の開口部と回転子とを通る線に対するモータ本体の両側領域で作動するように構成されていることから、必然的に、その両側領域を大きくせざるを得ない構成になっている。
【0005】
ところが、最近のカメラは、デザインが多様化してきており、上記のような構成の絞り装置の場合にも、また上記の絞り装置と基本構成を同じくするその他の羽根駆動装置の場合にも、装置全体を、羽根の作動方向と直行する方向の寸法(幅の寸法)を小さくし且つその寸法が略均一であるようなスリムな形状にすることが要求されるようになってきた。そして、そのような要求に応じられるものとして、上記の二つの駆動ピンを、被写体光路用の開口部とモータの出力軸との間で作動させるようにした絞り装置が、下記の特許文献2に記載されているが、本発明は、その絞り装置のような基本構成を有するカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235058号公報
【特許文献2】特開2008−209541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献2に記載されている絞り装置は、二つの駆動ピン(カムピン)を、被写体光路用の開口部とモータの出力軸との間で作動させるようにしたため、特許文献1に記載されている絞り装置の場合よりも全体として略均一な幅をした細長い形状になっている。しかし、その反面、絞り羽根の作動方向に沿った長手方向の寸法は必然的に大きくなっている。また、二つの駆動ピンを被写体光路用の開口部とモータの出力軸との間で作動させているため、各絞り羽根に形成されていて各駆動ピンを挿入させる孔を、特許文献1に記載されている絞り装置のような直線状の長孔にすると、絞り羽根の作動ストロークを好適に得ることができなくなってしまう。そのため、各駆動ピンを挿入させるための孔は、複雑な形状をしたカム溝として形成されている。
【0008】
ところが、このような構成を採用した場合には、絞り羽根の外形形成縁やカム溝の縁に加工上での僅かなバリがあったり、絞り羽根に加工上での反りや捩れがあったり、作動中に絞り羽根に反り,捩れ,傾きなどが生じたりすると、一方の絞り羽根が被写体光路用の開口部側からモータ側に作動し且つ他方の絞り羽根がモータ側から被写体光路用の開口部側に作動するとき、一方の絞り羽根の作動上での先端が、他方の絞り羽根のカム溝に入り込んで干渉してしまうことがある。また、反対に、他方の絞り羽根がモータ側に作動し且つ一方の絞り羽根が被写体光路用の開口部側に作動するときにも、他方の絞り羽根の作動上での先端が、一方の絞り羽根のカム溝に入り込んで干渉してしまうことがある。
【0009】
そのため、特許文献2に記載されている絞り装置の場合には、そのような干渉が生じないようにするために、2枚の絞り羽根は、カム溝よりもモータ側となる領域を地板の長手方向に拡張しておき、いずれの絞り羽根がモータ側から被写体光路用の開口部側へ作動し終わったときでも、その拡張された領域が、他方の絞り羽根のカム溝と重なっているようにしている。ところが、このように構成した場合には、上記のような絞り羽根同士の干渉を防止することは可能になるが、上記のような拡張領域を設けたために、各絞り羽根の長さが長くなっており、その分だけ絞り装置全体の長さが長くなり、カメラ設計のレイアウト上で、制約を受けてしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、回転子を有する電磁駆動手段によって所定の角度範囲で往復作動させられる二つの駆動ピンが、その回転子の回転軸と、地板に形成された被写体光路用の開口部との間において、2枚の羽根に形成されているカム溝に個々に挿入されていて、その往復作動によって2枚の羽根を、相反する方向へ直線的に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、従来のように2枚の羽根の長さを長くして、装置全体を羽根の作動方向に長くしなくても、作動中における一方の羽根の端部と他方の羽根のカム溝との干渉が防止できるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、被写体光路用の開口部を有していて全体として細長い平面形状をしている地板と、前記地板の長手方向に前記開口部とは所定の間隔をあけ前記地板に対して回転子の回転軸を垂直にして取り付けられている電磁駆動手段と、相互に所定の角度間隔をあけて設けられた第1駆動ピンと第2駆動ピンとを有していて前記電磁駆動手段によって前記回転子の回転軸を中心にして往復回転させられ該二つの駆動ピンを前記回転軸と前記開口部との間の領域で往復作動させる駆動部材と、前記地板の長手方向に細長く形成されていて一端側に設けている第1カム溝に前記第1駆動ピンを挿入させ前記回転子の往復回転によって前記地板の長手方向に往復作動させられ前記開口部に対して進退させられる第1羽根と、前記地板の長手方向に細長く形成されていて一端側に設けている第2カム溝に前記第2駆動ピンを挿入させ前記回転子の往復回転によって前記地板の長手方向に前記第1羽根とは相反する方向へ往復作動させられ前記開口部に対して進退させられる第2羽根と、二つの孔を前記第1駆動ピンと前記第2駆動ピンに嵌合させて前記第1羽根と前記第2羽根の間に重ねて配置されており前記駆動部材と共に往復作動させられる補助板と、を備えているようにする。
【0012】
その場合、前記電磁駆動手段は、ステッピングモータであって、前記駆動部材は、そのステッピングモータの出力軸に一体化されているように構成してもよいし、あるいは、前記電磁駆動手段は、前記回転子が固定子コイルへの電流の供給方向に対応した方向へ所定の角度範囲においてだけ回転可能な電流制御式のモータであって、前記駆動部材は、前記回転子に一体化されているように構成してもよい。
【0013】
更に、前記第1羽根と前記第2羽根が、各々開口形成縁を有しており、前記回転子は、該二つの開口形成縁によって、前記開口部よりも小さい一つの開口が形成されたとき、又は前記開口部よりも小さくて互いに大きさの異なる複数の開口の各々が形成されたとき、回転を停止され得るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、回転子を有する電磁駆動手段によって所定の角度範囲で往復回転させられる駆動部材が二つの駆動ピンを有していて、それらの二つの駆動ピンが、回転子の回転軸と、地板に形成された被写体光路用の開口部との間において、2枚の羽根に形成されたカム溝に個々に挿入されていて、駆動部材の往復回転によって2枚の羽根を、相反する方向へ直線的に往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、補助板を2枚の羽根の間に重ねて配置し、該補助板に形成されている二つの孔に二つの駆動ピンを嵌合させるようにしたものであるから、従来のように2枚の羽根の長さを長くし、装置全体を羽根の作動方向に長くしなくても、作動中における一方の羽根の端部と他方の羽根のカム溝との干渉を好適に防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シャッタ羽根の全開状態を示した実施例の平面図である。
【図2】図1に示されている2枚のシャッタ羽根のうち、一方のシャッタ羽根を示した平面図である。
【図3】図1に示されている2枚のシャッタ羽根のうち、他方のシャッタ羽根を示した平面図である。
【図4】シャッタ羽根の閉鎖状態を示した実施例の平面図である。
【図5】シャッタ羽根の全開状態から閉鎖状態に至る過程における七つの状態を示した説明図であって、図5(a)は実施例の場合を、図5(b)は比較例の場合を示したものである。
【図6】実施例の特徴を説明するために要部を拡大して示した平面図であって、図6(a)はシャッタ羽根の開き作動中における一つの状態を、図6(b)はシャッタ羽根の閉じ作動中の一つの状態を示したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置として構成することが可能であるが、実施例は、シャッタ装置として構成したものである。従って、実施例を変形させた態様や、その他の絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置とする場合の態様については、実施例の説明中や、実施例の説明後に説明することにする。
【実施例】
【0017】
先ず、図1〜図3を用いて本実施例の構成を説明する。尚、図1は、シャッタ羽根が露光開口を全開にしている状態を示した平面図であり、図2は、本実施例の2枚のシャッタ羽根のうち、一方のシャッタ羽根を示した平面図であり、図3は、本実施例の2枚のシャッタ羽根のうち、他方のシャッタ羽根を示した平面図である。
【0018】
図1に示されている地板1は、合成樹脂製であって、長手方向の中央よりも左寄りに、円形をした被写体光路用の開口部1aを有している。この地板1には、左下方の一部を除き、略全周にわたって壁部1bが同じ高さで形成されている。また、その左下方部には肉厚部1cが形成されており、そこにカメラ本体への取付け孔1dが形成されている。そして、取付け孔1dの周囲はドーナツ状に高く形成されていて、その頂面は壁部1bの頂面と同じ高さになっている。
【0019】
図示していないが、この地板1には、図1の手前側に、薄い板材で、地板1と略同じ平面形状に製作されたカバー板が、壁部1bの頂面に接触するようにして取り付けられ、地板1との間に羽根室を構成している。即ち、実際には、地板1の上端,下端,左端においては、図示していないフック部が壁部1bに一つずつ形成されており、カバー板は、それらのフック部に掛け止めされ、地板1の右端の位置においては、図示していないビスによって壁部1bにねじ止めされている。そして、そのカバー板にも、地板1の開口部1aと取付け孔1dに対向するところに、同じ形状をした開口部と取付け孔が形成されている。
【0020】
地板1には、羽根室とは反対側の面に、図示していない適宜な手段により、本発明の電磁駆動手段の一例である、ステッピングモータ2が取り付けられている。このステッピングモータ2は、図示していない回転子の回転軸を地板1に対して垂直にして取り付けられており、地板1側に突き出ている出力軸2aには、駆動部材3が一体化されている。尚、本実施例においては、出力軸2aは回転子の回転軸と同じ部材であるが、周知のように、ステッピングモータ2の構成次第では、必ずしも同じ部材とは限らない。
【0021】
本実施例の駆動部材3は、相互に所定の角度間隔を有していて径方向へ略同じ長さに張り出した二つのアーム部3a,3bを形成しており、それらの先端には、駆動ピン3c,3dを設けている。そして、駆動部材3は、それらの駆動ピン3c,3dを、地板1に形成されている円弧状の長孔1eに貫通させ、羽根室内に臨ませている。尚、本実施例の場合には、駆動部材3に二つのアーム3a,3bを形成しているが、それらのアーム3a,3bの間をつなげ、扇状などの形状に形成しても構わない。要するに、二つの駆動ピン3c,3dが相互に所定の角度間隔をあけて設けられていれば、駆動部材3は、どのような形状をしていてもよい。
【0022】
次に、羽根室内の構成を説明する。羽根室内には、全体として長く形成されている2枚のシャッタ羽根4,5と、豆状に小さく形成されている1枚の補助板6とが、それらの一部を重ねるようにして配置されている。先ず、シャッタ羽根4は、それらの三つの部材のうちでは最初に組み付けられていて、一番地板1側に配置されている。このシャッタ羽根4は、図2に示されているように、直線状をした二つのガイド溝4a,4bと、開口形成縁4cと、右端側に形成したカム溝4dとを有しており、図1に示されているように、ガイド溝4a,4bを、地板1に設けられたガイドピン1f,1gに嵌めていて、カム溝4dには、上記の駆動ピン3cが挿入されている。
【0023】
地板1に対して2番目に組み付けられている補助板6は、二つの孔6a,6bを有していて、図1に示されているように、それらの孔6a,6bを、上記の駆動ピン3c,3dに着脱可能に嵌めている。地板1に対して最後に組み付けられているシャッタ羽根5は、図3に示されているように、直線状をした二つのガイド溝5a,5bと、大きな円形に近い孔の左側の半分弱に形成した開口形成縁5cと、該シャッタ羽根5の右端側に形成したカム溝5dとを有しており、図1に示されているように、ガイド溝5a,5bを、地板1に設けられたガイドピン1f,1hに嵌めていて、カム溝5dには、上記の駆動ピン3dが挿入されている。
【0024】
尚、本実施例では、シャッタ羽根5の開口形成縁5cを、円形に近い孔の縁の一部として形成しているが、その孔の右側約半分を、シャッタ羽根4の形状に準じて、開放した形状にしても構わない。また、シャッタ羽根4の開口形成縁4cを、シャッタ羽根5の形状に準じて、円形に近い孔の縁の一部として形成しても構わない。更に、図2及び図3においては、各シャッタ羽根4,5の右側に、二点鎖線で、張り出して形成された領域4e´,5e´が示されているが、これは、後述する比較例のシャッタ羽根4´,5´の形状を説明するためのものである。
【0025】
次に、本実施例の作動を、図1のほかに、図4及び図5(a)を用いて説明する。尚、本実施例のシャッタ装置は、フィルムを用いるカメラに使用することも可能であるが、以下の作動説明は、各種の情報端末機器用カメラを含むデジタルカメラに採用された場合で説明する。また、図5(a)は、本実施例の駆動部材3と、2枚のシャッタ羽根4,5と、補助板6だけを示したものであって、それらに対する主な符号は、一番上の図についてだけ付けてある。
【0026】
図1は、シャッタ羽根の全開状態を示したものである。また、図5(a)においては、一番上の図(ステッピングモータ2の回転子が初期位置(「0 STEP」の位置)にあるときの図)が、この図1の状態に相当する。周知のように、この図1及び図5(a)の状態は、カメラの電源スイッチをオフにしているときの状態でもあり、オンにして撮影待機状態にしたときの状態でもあって、シャッタ羽根4は右方向への最大作動位置にあり、シャッタ羽根5は左方向への最大作動位置にあって開口部1aを全開にしているが、以下の説明においては、これらの図は、いずれも撮影待機状態を示したものとして説明する。そのため、この状態では、電子式ビューモニタで撮影前の被写体像を観察することが可能になっている。
【0027】
撮影に際してカメラのレリーズボタンを押すと、それまで固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されて撮影が開始され、固体撮像素子には撮影のための電荷が新たに蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、電子制御回路からの信号によってモータ駆動回路が働き、ステッピングモータ2の図示していない回転子は、時計方向に6ステップだけ連続して回転させられる。図5(a)における上から2番目以下の図は、その回転子の回転によって、駆動部材3を時計方向へ回転させたときの各ステップごとの回転位置を示したものである。
【0028】
このようにして、駆動部材3が、図1の状態から時計方向へ回転させられると、一方の駆動ピン3cはカム溝4dの左側の形成縁を押してシャッタ羽根4を左方向へ直線的に作動させ、他方の駆動ピン3dはカム溝5dの右側の形成縁を押して、シャッタ羽根5を右方向へ直線的に作動させる。そのため、両方のシャッタ羽根4,5は、各々の開口形成縁4c,5cを開口部1a内に進入させてゆき、開口部1aを閉じていく。また、その際、補助板6は、駆動部材3によって移動させられていくので、カム溝4d,5dが補助板6によって覆われている領域も変っていく。そして、ステッピングモータ2の回転子が6ステップ回転して、シャッタ羽根4,5が開口部1aを閉鎖したところで停止した状態が、図5(a)における一番下の図、即ち図4に示された撮影終了状態である。
【0029】
この状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として画像情報処理回路で処理され、記憶装置に記憶される。そして、撮像情報が記憶装置に記憶されると、その終了信号によってモータ駆動回路が働き、ステッピングモータ2の回転子は、今度は逆方向に6ステップだけ連続して回転させられ、図4に示された状態から駆動部材3を反時計方向へ回転させる。
【0030】
駆動部材3が、図4の状態から反時計方向へ回転させられると、一方の駆動ピン3cはカム溝4dの右側の形成縁を押してシャッタ羽根4を右方向へ作動させ、他方の駆動ピン3dはカム溝5dの左側の形成縁を押して、シャッタ羽根5を左方向へ作動させる。そのため、シャッタ羽根4,5は、各々の開口形成縁4c,5cが開口部1a内を移動しながら、開口部1aを開いていく。また、その際、補助板6も、駆動部材3によって移動させられ、カム溝4d,5dが補助板6によって覆われている領域を変えていく。そして、ステッピングモータ2の回転子が6ステップ回転し、シャッタ羽根4,5が開口部1aを全開にして停止した状態が、図1に示された撮影待機状態である。尚、本実施例のシャッタ装置をフィルムを用いるカメラに採用した場合には、図4に示された状態が撮影待機状態となることは言うまでもない。
【0031】
ところで、本実施例の場合には、シャッタ羽根4,5は、その長さ(作動方向に沿った長さ)を必要以上に長くしなくても、上記のような開閉作動が安定して行えるようになっている。そこで、そのことを、主に、図5(a),(b)、及び図6(a),(b)を用いて詳しく説明する。図6(a)は、シャッタ羽根4,5が、図5(a)の一番上の図(「0 STEP」のときの図)の状態から閉じ作動を開始し、2番目の図(「1 STEP」のときの図)の状態になる寸前の状態を示したものである。
【0032】
そのため、この図6(a)の状態においては、シャッタ羽根4は左方向への作動中であり、シャッタ羽根5は右方向への作動中である。そして、このとき、シャッタ羽根4のカム溝4dの右側の形成縁の一部4Aと、シャッタ羽根5の作動方向の先端部の一部5Aとは、互いに接近しつつある。ところが、本実施例の場合には、シャッタ羽根4のカム溝4dの形成縁の一部4Aとシャッタ羽根5の作動方向の先端部の一部5Aとの間には、補助板6が存在しているため、このあと、シャッタ羽根4,5がどのような条件の下で作動を続けたとしても、それらの一部4A,5Aが噛み合ってしまうようなことはない。
【0033】
しかしながら、本実施例のように補助板6が存在していない場合は、問題である。例えば、シャッタ羽根5の作動方向の先端縁やシャッタ羽根4のカム溝4dの縁に加工上での僅かなバリがあったり、シャッタ羽根4,5に加工上での反りや捩れがあったり、作動中にシャッタ羽根4,5に反り,捩れ,傾きなどが生じたりすると、シャッタ羽根5の作動方向の先端部の一部5Aがシャッタ羽根4のカム溝4dに入り込んで干渉してしまうことがある。そして、これと同じようなことは、次の場合にも発生することになる。
【0034】
図6(b)は、シャッタ羽根4,5が、図5(a)の一番下の図(「6 STEP」のときの図)の状態から開き作動を開始し、下から3番目の図(「4 STEP」のときの図)の状態になる寸前の状態を示したものである。そのため、この図6(b)の状態においては、シャッタ羽根4は右方向への作動中であり、シャッタ羽根5は左方向への作動中である。そして、シャッタ羽根4の作動方向の先端の一部4Bと、シャッタ羽根5のカム溝5dの右側の形成縁の一部5Bとは、互いに重なり合う寸前の状態にある。このとき、本実施例のように補助板6が存在していないと、上記の閉じ作動の場合と同様の理由で、シャッタ羽根4の作動方向の先端部の一部4Bがシャッタ羽根5のカム溝5dに入り込んで干渉してしまうことがある。
【0035】
ところで、このようにシャッタ羽根4,5の干渉を防止するだけであれば、本実施例のように補助板6を設けなくても可能にすることができる。そのためには、特許文献2に記載されている絞り羽根の場合と同様に、シャッタ羽根4,5のカム溝4d,5dよりも右側となる領域を、右側に長く形成すればよいことになる。本実施例のシャッタ羽根4,5において、そのように形成した場合の一例を、本実施例の比較例として、図2及び図3に二点鎖線で示してある。そして、その比較例のシャッタ羽根4´,5´(各部位にも本実施例の符号に「´」を付けてある)の作動を、本実施例の場合と比較できるようにするために、図5(a)と同様にして、図5(a)の隣に図5(b)として示してある。
【0036】
図5(b)の一番上の図から分かるように、この状態において、シャッタ羽根5´の閉じ作動方向の先端5A´は、シャッタ羽根4´のカム溝4d´の右側に存在している。そのため、閉じ作動を開始して、シャッタ羽根4´が左方向へ作動し、シャッタ羽根5´が右側へ作動しても、両者が上記のように干渉することはあり得ない。また、図5(b)の一番下の図の状態においては、シャッタ羽根4´の開き作動方向の先端4B´は、シャッタ羽根5´のカム溝5d´の右側に存在している。そのため、開き作動においては、シャッタ羽根4´が右方向へ作動し、シャッタ羽根5´が左側へ作動するので、両者が上記のように干渉することはあり得ない。
【0037】
このように、比較例の場合にも、本実施例の場合と同様に、2枚のシャッタ羽根4´,5´の干渉を防止することが可能である。その上、本実施例のように、補助板6を備える必要がない。しかし、2枚のシャッタ羽根を比較例のように構成した場合には、シャッタ羽根の長さだけではなく、シャッタ装置全体の長さが、本実施例の場合よりも明らかに長くなってしまうので、その分だけ、カメラ内での配置スペースに制約を与えることになってしまう。そのため、本実施例の方が、部品は増えても、カメラ内での配置設計に自由度が増し、有利になっている。
【0038】
尚、本実施例の場合には、駆動部材3を、ステッピングモータ2の外部において、出力軸2aに一体化しているが、ステッピングモータ2の内部において回転子と一体化し、アーム部3a,3bをステッピングモータ2の外部に突き出すように構成しても構わない。また、本実施例の場合には、ステッピングモータ2をユニットとして製作し、それを地板1に取り付けているが、周知のように、ステッピングモータの各構成部材を地板1に対して個々に組み付けるようにしても構わない。更に、本実施例の場合には、電磁駆動手段としてステッピングモータ2を採用しているが、特許文献1にも記載されているような周知の電流制御式のモータを採用しても構わない。
【0039】
また、本実施例は、本発明をシャッタ装置に適用したものであるが、この装置は、そのままレンズバリア装置として採用することも可能である。そして、本実施例の場合には、シャッタ羽根4,5に曲線状の開口形成縁4c,5cを形成していて、開閉作動においては、それらの開口形成縁4c,5cによって形成される開口が、円形に近い形状で変化するようにしているが、シャッタ装置やレンズバリア装置とする場合には、必ずしもそのようにしなければならないという理由はないので、例えば、開口形成縁4c,5cを、図1の上下方向に直線となるように形成しても差し支えない。
【0040】
また、上記したように、本実施例は、シャッタ羽根4,5の開き作動と閉じ作動を、各々ステッピングモータ2の回転子を6ステップずつ回転させることによって行っている。しかし、周知のように、ステッピングモータ2は、回転方向と停止位置とを各ステップごとに自由に制御することができる。そのため、本実施例は、図5(a)において、上から3番目の図(「2 STEP」のときの図)の状態、4番目の図(「3 STEP」のときの図)の状態、5番目の図(「4 STEP」のときの図)の状態のうちの少なくとも一つの状態で停止させ得るようにすることによって、そのまま絞り装置とすることが可能である。
【0041】
また、電磁駆動手段として特許文献1に記載されているような電流制御式のモータを採用した場合にも、例えば、図5(a)において、一番上の図(「0 STEP」のときの図)の状態から、上から4番目の図(「3 STEP」のときの図)の状態になったとき、適宜なストッパで回転子の回転を停止させるようにすることによって、一つの絞り開口が得られる絞り装置とすることも可能である。更に、特許文献1に記載されているような電流制御式のモータを採用する場合には、周知のように、固定子側に、回転子の周面に対向させてホール素子を配置することによって、回転子を、所定の一つ又は複数の絞り開口制御位置で停止させるようにすることも可能である。
【0042】
更に、本実施例は、シャッタ羽根5に、開口形成縁5cを形成している孔を覆うようにしてシート状のNDフィルタを取り付け、上記の各絞り装置と同じように制御すれば、フィルタ装置とすることが可能になる。従って、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、実施例のようなシャッタ装置に限定されず、上記のような、レンズバリア装置,絞り装置,フィルタ装置も含むものである。また、それらのうち、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置については、単独でユニット化されたものに限定されず、他の装置とともにユニット化されたものも含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 地板
1a 開口部
1b 壁部
1c 肉厚部
1d 取付け孔
1e 長孔
1f,1g,1h ガイドピン
2 ステッピングモータ
2a 出力軸
3 駆動部材
3a,3b アーム部
3c,3d 駆動ピン
4,4´,5,5´ シャッタ羽根
4a,4b,5a,5b ガイド溝
4c,4c´,5c,5c´ 開口形成縁
4d,4d´,5d,5d´ カム溝
4B,4B´,5A,5A´ シャッタ羽根の先端部
4A,5B カム溝の形成縁の一部
6 補助板
6a,6b 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光路用の開口部を有していて全体として細長い平面形状をしている地板と、前記地板の長手方向に前記開口部とは所定の間隔をあけ前記地板に対して回転子の回転軸を垂直にして取り付けられている電磁駆動手段と、相互に所定の角度間隔をあけて設けられた第1駆動ピンと第2駆動ピンとを有していて前記電磁駆動手段によって前記回転子の回転軸を中心にして往復回転させられ該二つの駆動ピンを前記回転軸と前記開口部との間の領域で往復作動させる駆動部材と、前記地板の長手方向に細長く形成されていて一端側に設けている第1カム溝に前記第1駆動ピンを挿入させ前記回転子の往復回転によって前記地板の長手方向に往復作動させられ前記開口部に対して進退させられる第1羽根と、前記地板の長手方向に細長く形成されていて一端側に設けている第2カム溝に前記第2駆動ピンを挿入させ前記回転子の往復回転によって前記地板の長手方向に前記第1羽根とは相反する方向へ往復作動させられ前記開口部に対して進退させられる第2羽根と、二つの孔を前記第1駆動ピンと前記第2駆動ピンに嵌合させて前記第1羽根と前記第2羽根の間に重ねて配置されており前記駆動部材と共に往復作動させられる補助板と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記電磁駆動手段は、ステッピングモータであって、前記駆動部材は、そのステッピングモータの出力軸に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記電磁駆動手段は、前記回転子が固定子コイルへの電流の供給方向に対応した方向へ所定の角度範囲においてだけ回転可能な電流制御式のモータであって、前記駆動部材は、前記回転子に一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記第1羽根と前記第2羽根が、各々開口形成縁を有しており、前記回転子は、該二つの開口形成縁によって、前記開口部よりも小さい一つの開口が形成されたとき、又は前記開口部よりも小さくて互いに大きさの異なる複数の開口の各々が形成されたとき、回転を停止され得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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