説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】露光開口へ進退する羽根が、その作動終了時にストッパに当接したとき、衝撃力が小さく、早期に停止できるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】地板1の羽根取付け軸1d,1eに取り付けられたシャッタ羽根12,13は、回転子3の出力ピン3cにより相反する方向へ往復回転させられる。地板1のボール設置孔1jに配置されたボール14は、圧縮コイルばね16により、ボール押さえ部材15を介して付勢され、その一部を羽根室内に突き出している。カバー板2に設けられた孔2eに配置されているはボール20は、ボール14と対向するようにして、その一部を羽根室内に突き出している。そして、シャッタ羽根12,13が作動を終了するときには、いずれか一方が、ボール14、20の一方の球面に案内され、それらの間に、ボール14を押し上げながら入り込み、効果的な制動を受けながらストッパ1fに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置などのカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のレンズシャッタ装置(以下、シャッタ装置という)は、1枚の羽根を往復回転させたり、2枚の羽根を相反する方向へ同時に往復回転させたりして、露光開口を開閉するようにしたものが殆どである。また、コンパクトカメラや情報端末機器内蔵カメラに採用されている絞り装置やフィルタ装置の場合には、1枚の羽根を往復回転させて、露光開口へ進退させるようにしたものが多い。そして、それらの装置は、単独でユニット化されることもあるが、それらのうちの二つ以上を一つのユニットとして構成することもある。
【0003】
ところで、周知のように、デジタルカメラに採用されているシャッタ装置の場合には、シャッタ羽根が露光開口を閉鎖してストッパに当接したとき、その衝撃で大きくバウンドし、露光開口の一部を一時的に開いてしまうと、撮像情報の転送時にスミア現象を発生させる要因になる。また、シャッタ羽根が露光開口を全開にしてストッパに当接したとき、その衝撃で大きくバウンドし、露光開口の一部を一時的に閉じてしまうと、次の撮影開始までの時間を長くせざるを得なくなって、連続撮影(連写)を行えるようにする場合には不利になる。
【0004】
他方、絞り装置やフィルタ装置の場合には、絞り羽根やフィルタ羽根が露光開口へ進入したとき、ストッパに当接して大きくバウンドすると、カメラのレリーズボタンを押してから、実際に撮影が開始されるまでの時間を遅らせざるを得なくなって、意図した画像を得るためのタイミングを逸する要因になってしまうし、露光開口から退去したとき、ストッパに当接して大きくバウンドすると、上記のシャッタ装置の場合と同様に、次の撮影開始までの時間を長くせざるを得なくなって、連続撮影をし得るようにする場合には不利になる。
【0005】
更に、絞り装置やフィルタ装置の場合には、動画撮影中に、絞り羽根やフィルタ羽根を撮影光路内に進退させる場合があるが、周知のように、最近の動画撮影用カメラは、同時録音機能を有しているのが普通であるから、ストッパに当接したときの衝撃が大きいと、その衝撃音が録音されてしまうという問題がある。
【0006】
これらの理由から、カメラ用駆動装置においては、羽根がストッパへ当接するときの衝撃力を極力小さくすることが要求されている。そして、そのような要求に応える方法の一つとしては、ストッパに当接する直前に、シャッタ羽根に対して制動力が加わるようにし、ストッパに当接したときには、衝撃力が小さくて、バウンドが抑制されるようにしたカメラ用シャッタが、下記の特許文献1に記載されている。本発明は、そのように、少なくとも1枚の羽根が、回転作動の終了時に、制動力を受けてからストッパに当接するようにしたカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−123581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のバウンド抑制機構は、地板の羽根室側の面に形成されたストッパの近傍位置に球面状の凸部を形成しておき、シャッタ羽根は、露光開口の閉じ作動の終了段階において、その先端がその凸部に接触して進路を変えさせられ、凸部との間の摩擦力によって制動されながらストッパに当接するように構成されている。そして、このバウンド抑制機構の場合には、シャッタ羽根の先端は、一方の面が凸部に接触しているときは、他方の面が、補助地板(地板との間に羽根室を構成している部材であって、本発明のカバー板に相当する)には接触しないように構成されている。
【0009】
ところが、このような構成の場合には、シャッタ羽根に対する制動力は、シャッタ羽根の一方の面と凸部との摩擦力によってだけ得られているので、一応の制動効果は得られるが、設計仕様によっては充分な制動力が得られない場合がある。また、シャッタ羽根は、制動を受けながらストッパに当接するが、バウンドは全くなくなるわけではなく、多少なりとも生じることになるが、その場合におけるバウンド方向への作動に対する制動力も充分に得られるとは言いがたい。更に、シャッタ羽根の先端が、ストッパ面に対して垂直に当接せず、斜めに当接することになるので、当接したときの衝撃で、シャッタ羽根が大きく変形され易い。そのため、上記のような、バウンド方向への作動時には、凸部に接触しない場合も発生するし、その変形によってシャッタ羽根の耐久性を損なわせる要因になってしまうこともある。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、少なくとも1枚の羽根を往復回転させ、露光開口へ進退させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、羽根が、その作動終了段階で、効果的な制動を受けながら好適な姿勢でストッパに当接し、衝撃力を小さくして早期に停止できるようにしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、被写体光路用の開口部を有していてカバー板との間に羽根室を構成しており羽根室側の面には少なくとも一つの羽根取付け軸と少なくとも一つのストッパを設けていると共に該ストッパの近傍位置には羽根室外から羽根室内まで貫通したボール設置孔を有している地板と、前記ボール設置孔に羽根室外から挿入され一部が羽根室内に突き出すようにして配置されているボールと、前記ボール設置孔に前記ボールのあとから挿入されている圧縮コイルばねと、前記地板の羽根室外の面に前記ボール設置孔を塞ぐように取り付けられているばね押さえ部材と、前記羽根取付け軸に回転可能に取り付けられており駆動手段によって往復回転させられて前記開口部に進退可能でありいずれか一方への回転終了段階には前記圧縮コイルばねを圧縮させて前記ボールと前記カバー板の羽根室側の面とに対して両面を接触させ前記ボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えているようにする。
【0012】
その場合、前記少なくとも1枚の羽根が、前記駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚の羽根であって、該2枚の羽根が前記開口部に進入するときには一方の羽根が、また、該2枚の羽根が前記開口部から退去するときには他方の羽根が、いずれもその回転終了段階において、前記ボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられるようにすると、部品点数の少ない好適な構成のカメラ用羽根駆動装置が得られる。
【0013】
また、上記のような構成のカメラ用羽根駆動装置において、前記カバー板の羽根室側の面には、前記ボールと対向するところに、所定の深さの孔が設けられていて、該孔には、一部が羽根室内に突き出ているようにして第2のボールが回転可能に配置されており、前記羽根は、その回転終了段階において、それらの二つのボールの間でそれらのボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられるようにすると、羽根の制動作動が円滑に行われ、耐久性も向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、少なくとも1枚の羽根を往復回転させて、露光開口へ進退させるようにしたカメラ用羽根駆動装置において、羽根が、その作動終了時に、その両面に摩擦抵抗力を与えられて制動されながらストッパに当接するようにしたから、充分な制動力が得られてストッパに当接したときの衝撃力を小さくし衝撃音も小さくすることができるほか、ストッパに当接した後のバウンド方向への作動に対する制動力も充分に得られるので、優れたバウンド防止効果が得られるという特徴がある。また、羽根は、当接する部位の近傍が、両面を押えられ、変形しにくい状態で、ストッパに対して略垂直に当接することになるので、当接による羽根の変形も好適に抑制され、羽根の耐久性が向上するという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】被写体側から見て示した実施例1の平面図である。
【図2】実施例1の要部を示す断面図である。
【図3】実施例1の変形例を示す部分断面図である。
【図4】被写体側から見て示した実施例2の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。上記したように、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置のいずれにも実施し得るものであり、また、それらの装置の二つ以上を一つのユニットとして構成したものにも実施し得るものである。しかしながら、それらの実施態様の全てを説明するまでもないので、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置を実施例1とし、1枚の絞り羽根を備えた絞り装置を実施例2として説明することにし、その他の態様については、それらの説明の中で適宜説明することにする。尚、図1及び図2は、実施例1を説明するためのものであり、図3は、実施例1の変形例を説明するためのものであり、図4は、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0017】
本実施例を図1及び図2を用いて説明するが、図1は、被写体側から見て、本実施例の撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、本実施例の構成部材の重なり関係を示した要部断面図である。そこで先ず、本実施例の構成を説明する。図1に示されているように、合成樹脂製の地板1は、平面外形形状が円形をしており、その中央部には光軸を中心にして円形に形成された被写体光路用の開口部1aを有していて、図1の下方領域には、円弧状に形成された長孔1bを有している。尚、図1においては、下記のカバー板2の一部が見えるようにするために、地板1の一部を破断して示してある。
【0018】
地板1の背面側、即ち固体撮像素子側には、合成樹脂製のカバー板2が適宜な手段によって取り付けられており、地板1との間に羽根室を構成している。このカバー板2は、平面外形形状が地板1と略同じであり、図示していないが、その中央部には光軸を中心にして円形に形成された被写体光路用の開口部が形成されている。しかしながら、本実施例の場合には、その開口部の直径よりも、上記の開口部1aの直径の方が小さいため、露光開口は、開口部1aによって規制されている。そして、このカバー板2には、上記の長孔1bと対向するところに、同じ形状をした長孔2a(図2参照)が形成されている。
【0019】
地板1の被写体側の面には、後述する2枚のシャッタ羽根12,13の駆動手段として、例えば特開2009−300661号公報に記載されているような、周知の構成をした電磁アクチュエータが取り付けられている。そして、その電磁アクチュエータは、回転子3と、固定子枠4と、コイル5と、ヨーク6とで構成されている。
【0020】
本実施例の回転子3は、円筒形をした本体部3aと、その本体部3aからラジアル方向へ延伸して形成された腕部3bと、その腕部3bの先端に形成された出力ピン3cとからなっていて、地板1に立設されている回転子取付け軸1cに回転可能に取り付けられており、図2に示されているように、その出力ピン3cを地板1の長孔1bに貫通させ、その先端をカバー板2の長孔2aに挿入している。そして、本実施例の場合には、この回転子3は、磁性体材料と合成樹脂材料との混合材を成形しておいてから着磁した永久磁石製であって、本体部3aは、径方向へ2極に着磁された状態になるように構成されているが、本体部3aだけを永久磁石製とし、腕部3bと出力ピン3cを合成樹脂製としたものも知られている。
【0021】
固定子枠4は、回転子3の抜け止めをするようにし、その長さ方向の両端を、ねじ7,8によって地板1に取り付けられている。そして、図2から分かるように、この固定子枠4には、筒状のボビン部4aが形成されており、その外側にコイル5が巻回されている。また、この固定子枠4には、図1に示されているように、端子ピン4b,4cが設けられており、コイル5は、その両端をそれらに巻き付け、図2に示されているフレキシブルプリント配線板9に半田10,11で接合されている。
【0022】
ヨーク6は、全体の形状が明示されていないが、上記した特開2009−300661号公報にも記載されているように、略U字状をしていて二つの脚部を有しており、一方の脚部を上記したボビン部4aの中空部に貫通させ、両方の脚部の先端近傍部を磁極部として、上記した回転子3の本体部3aの周面に対向させている。
【0023】
そして、このような構成の電磁アクチュエータにおいて、回転子3は、コイル5に対して順方向に電流を供給すると、図1の状態から時計方向へ回転させられ、その後、コイル5に対して逆方向に電流を供給すると、反時計方向へ回転させられるようになっている。尚、本実施例には、駆動手段として、このような構成をした電流制御式のアクチュエータを採用しているが、本発明の駆動手段としては、周知である他の構成をした電流制御式のアクチュエータを採用してもよいし、ステッピングモータを採用しても構わない。
【0024】
地板1の羽根室側の面には、二つの羽根取付け軸1d,1eと、四つのストッパ1f,1g,1h,1iが立設されている。それらのうち、羽根取付け軸1d,1eは、図2に示されているように、その先端を、カバー板2に設けられた孔2b,2cに挿入している。また、四つのストッパ1f,1g,1h,1iも、その先端を、カバー板2に設けられた各々の孔に挿入しているが、図2においては、ストッパ1fの先端をカバー板2の孔2dに挿入している状態だけが示されている。
【0025】
本実施例の場合、羽根室内には、2枚のシャッタ羽根12,13が配置されている。それらのうち、地板1側に配置されているシャッタ羽根12は、上記の羽根取付け軸1dに回転可能に取り付けられている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根13は、上記の羽根取付け軸1eに回転可能に取り付けられている。そして、それらのシャッタ羽根12,13に形成されている図示していない周知の長孔の両方に、上記の回転子3の出力ピン3cが挿入されている。そのため、2枚のシャッタ羽根12,13は、回転子3が回転すると、同時に相反する方向へ回転させられるようになっている。尚、図1においては、開口部1aを閉鎖している状態のシャッタ羽根12,13を、二点鎖線で示してある。
【0026】
最後に、本実施例における制動機構の構成を説明する。図2に示されているように、地板1には、ストッパ1fの近傍位置に、羽根室外から羽根室内まで貫通したボール設置孔1jが形成されている。そして、そのボール設置孔1jには、羽根室外側から金属製のボール14が挿入されているが、そのボール14は、ボール設置孔1jの羽根室側の形状によって、その一部だけを羽根室内に突き出した状態で回転可能となるように配置されている。
【0027】
また、ボール設置孔1jには、ボール14を挿入した後、ボール押さえ部材15を挿入し、その軸部15aには圧縮コイルばね16を嵌装させている。そして、地板1の羽根室外の面には、ばね押さえ部材17が、圧縮コイルばね16の上端に接触し、且つボール押さえ部材15の上下動を可能にし、二つのねじ18,19によって、地板1に取り付けられている。
【0028】
他方、カバー板2には、上記のボール14と対向するところに、所定の深さを有する孔2eが形成されており、その中には、一部が羽根室内に突き出るようにして、金属製のボール20が回転可能に配置されている。そのため、二つのボール14,20は、それらの間にシャッタ羽根12,13のいずれも存在しない場合には、互いに接し得るようになっている。但し、本実施例の場合には、このように構成されているが、二つのボール14,20の間にシャッタ羽根12,13のいずれも存在していない場合には、1枚のシャッタ羽根の厚さ以内で、離れていることがあり得るようにしても差し支えない。
【0029】
次に、本実施例の作動を説明する。図1及び図2に示した状態は、撮影待機状態であって、シャッタ羽根12,13は、開口部1aを全開状態にしている。このとき、シャッタ羽根12は、ストッパ1hに接触していて、ボール12,13の間には存在しないが、シャッタ羽根13は、ストッパ1gに接触していて、その一部がボール12,13の間に存在している。
【0030】
また、このとき、電磁アクチュエータのコイル5には通電されていない。しかしながら、周知のように、回転子3は、その本体部3aの磁極とヨーク6の二つの磁極部との対向配置関係によって、図1において反時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、回転子3の出力ピン3cによって、シャッタ羽根12には反時計方向へ回転する力が加わり、シャッタ羽根13には時計方向へ回転する力が加わっている。
【0031】
ところが、上記のように、シャッタ羽根12はストッパ1hに接触し、シャッタ羽根13はストッパ1gに接触しているので、その回転が阻止され、図1に示された状態が安定して得られている。そのため、この撮影待機状態に置いては、図示していない固体撮像素子に被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。
【0032】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、それまで、固体撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号により、コイル5に対して順方向の電流が供給される。それにより、回転子3は、図1において時計方向へ回転させられ、出力ピン3cによって、シャッタ羽根12を反時計方向へ回転させ、同時に、シャッタ羽根13を時計方向へ回転させていく。
【0033】
そして、開口部1aが閉鎖されると、その直後に、シャッタ羽根12の一部が、少なくとも二つのボール14,20の一方の球面に接触して案内されてゆき、やがて、ボール14を押し圧縮コイルばね16を圧縮させることによって、二つのボール14,20の間に入り込んでいく。そのため、シャッタ羽根12は、先ず、二つのボール14,20の一方に最初に接触したときに進行方向を変えられながら制動され、次に、二つのボール14,20の間に入り込んでからは両面に生じる摩擦力によって大きく制動されるようになる。そして、シャッタ羽根12は、二つのボール14,20の間で姿勢を整えられ、ストッパ1fに対して略垂直に当接する。
【0034】
そのため、本実施例の場合には、シャッタ羽根12がストッパ1fに当接するときの衝撃が非常に小さくなり、バウンドが好適に抑制される。また、シャッタ羽根12は、二つのボール14,20の間に密着した状態で、近傍位置にあるストッパ1fに当接するので、その当接による変形も抑制されるし、バウンド方向への動きにも制動力が作用することになる。更に、本実施例の場合には、シャッタ羽根12がストッパ1fに当接した瞬間には、シャッタ羽根13がストッパ1iに当接していないので、周知のように、慣性によるシャッタ羽根13の反時計方向への回転によっても、シャッタ羽根12のバウンドが抑制される。従って、シャッタ羽根12,13の閉じ作動は、好適に停止させられる。そして、図1においては、そのような停止状態のシャッタ羽根12,13が、二点鎖線で示されている。
【0035】
このようにして、シャッタ羽根12,13の閉じ作動が終了すると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されるが、このとき、仮に、シャッタ羽根12,13がバウンドして一時的に再露光が行われてしまうと、スミア現象を発生させることになるが、上記のように、本実施例の場合には、バウンドが好適に抑制され、シャッタ羽根12,13が早期に停止するので、転送のタイミングも早くすることが可能になっている。
【0036】
そして、記憶装置への転送が終了すると、コイル5に対して逆方向の電流が供給され、回転子3が反時計方向へ回転させられるので、シャッタ羽根12は反時計方向へ回転され、シャッタ羽根13は時計方向へ回転させられて、開口部1aを開いていく。その過程において、二つのボール14,20は、それらの間からシャッタ羽根12が抜け出すので、圧縮コイルばね16の付勢力によって互いに接触し合うようになる。
【0037】
このようにして、シャッタ羽根12,13の開き作動が最終段階になると、今度は、シャッタ羽根13の一部が、二つのボール14,20の一方の球面に接触して案内されてゆき、その後、ボール14を押し圧縮コイルばね16を圧縮させることによって、二つのボール14,20の間に入り込んでいく。そのため、シャッタ羽根13は、閉じ作動時におけるシャッタ羽根12の場合と同様に、好適に制動されながら好適な姿勢でストッパ1gに当接する。他方、このとき、シャッタ羽根12の方は、ストッパ1hに当接する。従って、シャッタ羽根12,13の開き作動は、バウンドを抑制され早期に図1の状態に復帰させられるので、次の撮影を直ちに開始させることが可能になる。
【0038】
尚、本実施例の場合には、ボール設置孔1jの内部において、ボール14と圧縮コイルばね16との間にボール押さえ部材15を介在させているが、ボール設置孔1jの内部にはボール押さえ部材15を配置せず、ボール14と圧縮コイルばね16とを直接接触するようにしても、ボール14を回転し得るようにすることは可能である。また、本実施例のシャッタ装置は、2枚のシャッタ羽根12,13を備えていて、それらを同時に相反する方向へ回転させるように構成したものであるが、本発明は、周知のように、シャッタ羽根13を省き、シャッタ羽根12だけによって開口部1aを開閉するように構成しても差し支えない。そして、そのように構成した場合には、閉じ作動時においてのみ、好適にバウンドを抑制するシャッタ装置が得られる。
【0039】
次に、図3を用いて、実施例1の変形例を説明する。図3は、実施例1における制動機構の変形例を示したものであって、この変形例においては、実施例1におけるボール20を備えておらず、カバー板2には、ボール14と対向するところに、略円錐台形をした突起部2fを形成している。その他の部材と部位は、実施例1の場合と同じであるため、同じ符号を付けてある。そして、あらためて説明しなくても分かるように、このような構成からも、実施例1の制動機構の場合と略同等の作用効果を得ることが可能である。
【0040】
また、このような変形例をさらに変形し、突起部2fの表面を球面にしてもよいし、カバー板2のボール14に対向しているところから孔2dまでの間を、同じ高さに形成しても同等の作用効果が得られる。更に、シャッタ羽根を1枚だけ備えている場合には、カバー板2に突起部2fを形成せず、カバー板2の羽根室側の面とボール14の間に、シャッタ羽根を入り込ませるようにしてもよい。そして、ここで、制動機構について述べたことは、下記の実施例2の場合にも言えることである。
【実施例2】
【0041】
次に、図4を用いて実施例2を説明する。本実施例の羽根駆動装置は、絞り装置として構成したものであり、図4は、その平面図である。本実施例の地板21は、被写体光路用の開口部21aを有していて、右上方領域には、円弧状の長孔21bが形成されている。また、地板21の背面側には図示していないカバー板が取り付けられていて、両者の間に羽根室を構成している。また、そのカバー板は、平面外形形状が地板21と略同じであり、中央部には被写体光路用の開口部が形成されているが、その開口部の直径は、開口部21aの直径よりも大きい。そして、そのカバー板にも、上記の長孔21bと対向するところに、同じ形状をした長孔が形成されている。
【0042】
地板21の被写体側の面には、電磁アクチュエータが取り付けられているが、その構成は、実施例1で説明した電磁アクチュエータの構成と実質的に同じであるため、図4においては、その回転子22だけが二点鎖線で示されている。そのため、この回転子22も、本体部22aと、腕部22bと、出力ピン22cとからなっていて、径方向に2極に着磁されている本体部22aが、地板21に立設されている図示していない回転子取付け軸に対して回転可能に取り付けられている。そして、出力ピン22cは、上記の長孔21bを貫通し、その先端を、カバー板の長孔に挿入している。
【0043】
地板1の羽根室側の面には、羽根取付け軸21cと、二つのストッパ21d,21eが立設されており、それらの先端を、実施例1の場合と同様にして、カバー板に形成された各々の孔に挿入している。また、羽根取付け軸21cには、絞り羽根23が回転可能に取り付けられている。この絞り羽根23は、開口部21aよりも直径の小さな絞り開口23aと長孔23bを有していて、その長孔23bには、上記の出力ピン22cが挿入されている。尚、図4においては、開口部21aに進入している状態の絞り羽根23を、二点鎖線で示してある。
【0044】
本実施例の場合には、制動機構が、ストッパ21dの近傍位置と、ストッパ21eの近傍位置とに一つずつ設けられている。しかしながら、それらの制動機構の構成は、実施例1の制動機構と全く同じである。そのため、それらについての詳細な図示を省略し、図4においては、実施例1のボール14に相当するボール24,25と、実施例1のばね押さえ部材17に相当するばね押さえ部材26,27だけが示されている。
【0045】
次に、本実施例の作動を説明する。図4は、絞り羽根23が開口部21aから退いている状態を示したものである。このとき、電磁アクチュエータの図示していないコイルには通電されていないが、周知のようにして、回転子22には、時計方向へ回転する力が与えられている。ところが、このとき、絞り羽根23は、ボール24と、それに対向するようにしてカバー板側に設けられた図示していないボールとの間に挟まれていて、ストッパ21dに接触している。そのため、この状態が安定的に維持されている。
【0046】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、測光装置によって被写体光が測定され、その測定結果によって、減光して撮影すると判断された場合には、図示していない電磁アクチュエータのコイルに通電し、回転子22を反時計方向へ回転させる。そのため、絞り羽根23は、出力ピン22cによって時計方向へ回転させられ、開口部21a内に進入していく。そして、その進入作動の最終段階になると、絞り羽根23の先端が、実施例1で説明したシャッタ羽根12の場合と同様にして、ボール25と、それに対向するようにしてカバー板側に設けられた図示していないボールとのいずれかの球面で案内され、両者の間に入り込んでいく。
【0047】
そのため、絞り羽根23は、二つのボールの間で好適に制動されながら、ストッパ21eに対して略垂直に当接するので、ストッパ21eに当接するときの衝撃が非常に小さくなり、バウンドが好適に抑制される。また、絞り羽根23は、二つのボールの間に密着した状態で近傍位置にあるストッパ21eに当接するので、その当接による変形も抑制されるし、バウンド方向への動きにも制動力が作用することになる。従って、絞り羽根23は、従来よりも早期に静止するので、直ちに固体撮像素子での実際の撮影開始を可能にし、タイミングを大きく遅らせることなく、意図した画像を得ることが可能になる。
【0048】
このようにして撮影が終了すると、電磁アクチュエータの図示していないコイルに対して、先ほどとは反対方向に電流が供給され、回転子22が時計方向へ回転させられる。そのため、絞り羽根23は反時計方向へ回転させられて、開口部21aから退いていく。そして、その退去作動の終了段階になると、絞り羽根23の一部が、ボール24と、それに対向するようにしてカバー板側に設けられた図示していないボールとのいずれかの球面で案内され、両者の間に入り込んでいく。
【0049】
そのため、絞り羽根23は、二つのボールの間で好適に制動されながら、ストッパ21dに対して略垂直に当接するので、ストッパ21dに当接するときの衝撃が非常に小さくなり、バウンドが好適に抑制される。また、絞り羽根23は、二つのボールの間に密着した状態で近傍位置にあるストッパ21dに当接するので、その当接による変形も抑制されるし、バウンド方向への動きにも制動力が作用することになる。従って、絞り羽根23は、従来よりも早期に図4の状態で静止することができるので、直ちに次の撮影を開始させることが可能になる。
【0050】
尚、上記の作動説明は、静止画像を撮影する場合を前提にして説明した。しかし、本実施例のようなタイプの絞り装置は、動画撮影の可能なカメラに採用され、撮影中に、絞り羽根を進退作動させる場合のあることが知られている。そして、最近では、動画撮影の可能なカメラは、同時録音が可能になっているのが普通である。そのため、そのような動画撮影の可能なカメラに対して本実施例の絞り装置を採用した場合には、絞り羽根がストッパに当接するときの衝撃音が殆どなく、極めて好適なものとなる。
【符号の説明】
【0051】
1,21 地板
1a,21a 開口部
1b,2a,21b,23b 長孔
1c 回転子取付け軸
1d,1e,21c 羽根取付け軸
1f,1g,1h,1i,21d,21e ストッパ
1j ボール設置孔
2 カバー板
2b,2c,2d,2e 孔
2f 突起部
3,22 回転子
3a,22a 本体部
3b,22b 腕部
3c,22c 出力ピン
4 固定子枠
4a ボビン部
4b,4c 端子ピン
5 コイル
6 ヨーク
7,8,18,19 ねじ
9 フレキシブルプリント配線板
10,11 半田
12,13 シャッタ羽根
14,20,24,25 ボール
15 ボール押さえ部材
15a 軸部
16 圧縮コイルばね
17,26,27 ばね押さえ部材
23 絞り羽根
23a 絞り開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光路用の開口部を有していてカバー板との間に羽根室を構成しており羽根室側の面には少なくとも一つの羽根取付け軸と少なくとも一つのストッパを設けていると共に該ストッパの近傍位置には羽根室外から羽根室内まで貫通したボール設置孔を有している地板と、前記ボール設置孔に羽根室外から挿入され一部が羽根室内に突き出すようにして配置されているボールと、前記ボール設置孔に前記ボールのあとから挿入されている圧縮コイルばねと、前記地板の羽根室外の面に前記ボール設置孔を塞ぐように取り付けられているばね押さえ部材と、前記羽根取付け軸に回転可能に取り付けられており駆動手段によって往復回転させられて前記開口部に進退可能でありいずれか一方への回転終了段階には前記圧縮コイルばねを圧縮させて前記ボールと前記カバー板の羽根室側の面とに対して両面を接触させ前記ボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられる少なくとも1枚の羽根と、を備えていることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記少なくとも1枚の羽根が、前記駆動手段によって同時に相反する方向へ回転させられる2枚の羽根であって、該2枚の羽根が前記開口部に進入するときには一方の羽根が、また、該2枚の羽根が前記開口部から退去するときには他方の羽根が、いずれもその回転終了段階において、前記ボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記カバー板の羽根室側の面には、前記ボールと対向するところに、所定の深さの孔が設けられていて、該孔には、一部が羽根室内に突き出ているようにして第2のボールが回転可能に配置されており、前記羽根は、その回転終了段階において、それらの二つのボールの間でそれらのボールを回転させながら前記ストッパに当接して停止させられるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−73096(P2013−73096A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213071(P2011−213071)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】