説明

カメラ用羽根駆動装置

【課題】地板とカバー板の間に、電磁アクチュエータを配置することによって、装置の薄型化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供すること。
【解決手段】地板1とカバー板2との間に、電磁アクチュエータの構成部材と、仕切り板15と、絞り羽根16と、シャッタ羽根17,18が配置されている。電磁アクチュエータの構成部材である固定子枠5は、L字形の両端に設けたボビン部5a,5bにコイル6,7を巻回していて、それらの端部を四つの端子ピン5c,5d,5e,5fに巻き付けており、そこにフレキシブルプリント配線板10を半田で接合している。そして、端子ピン5c,5d,5e,5fを中心に盛り上がって形成された半田部11〜14は、カバー板2に形成された四つの孔2k,2m,2n,2p内に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁アクチュエータによって、少なくとも1枚の羽根を往復作動させるようにしたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用羽根駆動装置としては、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置,レンズバリア装置が知られているが、各装置の羽根は、最近では、電磁アクチュエータによって往復作動させられるようになっている。また、それらの装置は、単独でユニット化されることもあるが、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置の場合には、それらの二つ以上をユニット化することもある。そして、下記の特許文献1,2には、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化したものが記載されている。
【0003】
特許文献1,2の記載からも分かるように、最近のカメラ用羽根駆動装置の一般的な構成は、地板とカバー板の間に羽根室を構成し、その羽根室内においては、少なくとも1枚の羽根を地板に対して回転可能に取り付けている。また、電磁アクチュエータは、地板の羽根室外側の面に取り付けられていて、回転子は、その出力ピンを、地板の孔に貫通させ、羽根室内で羽根に連結させており、回転子の往復回転によって羽根が往復回転させられるようにしている。
【0004】
また、電磁アクチュエータの構成部材であって地板から一番離れて配置されている固定子枠(特許文献1においては、モータ枠)には、フレキシブルプリント配線板が重ねられている。そして、このフレキシブルプリント配線板は、それに設けた孔を、固定子コイルの端部を巻き付けた端子ピンに嵌合させ、半田付けされることによって、固定子コイルに対して電気的に接続されている。本発明は、このような構成を改良したカメラ用羽根駆動装置に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−75397号公報
【特許文献2】特開2010−85436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載のカメラ用羽根駆動装置に採用されている電磁アクチュエータは、装置全体の薄型化に適した構成をしているが、最近では、装置の尚一層の薄型化が要求されている。ところで、特許文献1,2に記載されているような構成の場合には、特許文献1の図3からも分かるように、半田部が、フレキシブルプリント配線板の外側に、端子ピンを中心にして盛り上がって形成されることになる。そのため、この半田部の存在が、装置全体としての薄型化をはばむ要因になっているほか、ユニットでの取り扱い上やカメラへの組み付け作業上で、フレキシブルプリント配線板が引っ張られるなどしたときに、半田を損傷させる要因や、フラックスが羽根に付着する要因にもなっている。そこで、このような半田部と共に電磁アクチュエータを、地板とカバー板の間に配置するようにすることも考えられているが、そのような配置にしただけでは、半田の損傷防止やフラックスの羽根付着防止には対応することができても、装置の薄型化には寄与しない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、地板とカバー板の間に、予めフレキシブルプリント配線板を半田付けしている電磁アクチュエータを配置することによって、装置の薄型化を可能にしたカメラ用羽根駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用羽根駆動装置は、相互に取り付けられていて重ね合わせているいずれか一方の開口部を露光開口としている地板及びカバー板と、前記地板と前記カバー板との間に配置されている少なくとも1枚の羽根と、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて永久磁石を有する回転子の往復回転によって該回転子の出力ピンが前記少なくとも1枚の羽根を露光開口に進退させる電磁アクチュエータと、前記地板と前記カバー板との間で前記電磁アクチュエータに接続されているフレキシブルプリント配線板と、を備えていて、前記電磁アクチュエータが、前記地板と前記カバー板との少なくとも一方に回転可能に取り付けられた前記回転子と、平板状をしていて一方の面側に筒状のボビン部を有し他方の面側に二つの端子ピンを立設した固定子枠と、前記ボビン部に巻回され両端部を前記端子ピンに各々巻き付けたコイルと、前記ボビン部に対し二つの脚部の一方を貫通させそれらの脚部の先端側に設けた二つの磁極部を前記回転子の周面に対向させたヨークとからなっており、前記地板と前記カバー板の一方が、その板厚内に、前記フレキシブルプリント配線板と前記コイルの端部とを接合して前記端子ピンを中心にして盛り上がっている半田部の受入れ孔を少なくとも一つ有しているようにする。
【0009】
その場合、前記地板と前記カバー板との間には、前記地板の前記開口部と前記カバー板の前記開口部との三者のいずれかによって露光開口を決めるための開口部を有した仕切り板を配置していて、前記少なくとも1枚の羽根は、前記カバー板と前記仕切り板との間に配置され、前記電磁アクチュエータのうち前記回転子は、前記地板と前記仕切り板との間に配置されていて、前記出力ピンは、前記仕切り板に形成された孔を貫通して前記少なくとも1枚の羽根に連結されているようにするのが好ましい。
【0010】
また、前記固定子枠は、前記ボビン部と同一面側に第2のボビン部を有していて、前記二つの端子ピンと同一面側には前記第2のボビン部に巻回された第2のコイルの両端を巻き付ける二つの端子ピンを立設しており、また、前記地板と前記カバー板の間には、前記回転子と同じ構成をした第2の回転子が前記回転子と同様にして取り付けられていて、その第2の回転子の周面には、前記ヨークと同じ構成をしていて前記ヨークと同じようにして前記第2のボビン部に取り付けられた第2のヨークがその二つの磁極部を対向させており、さらに、前記地板と前記カバー板の間には、前記少なくとも1枚の羽根のほかに、前記第2の回転子の出力ピンによって露光開口に進退させられる第2の少なくとも1枚の羽根が配置されており、さらにまた、前記地板と前記カバー板の一方には、その板厚内に、前記フレキシブルプリント配線板と前記二つのコイルの前記四つの端部とを接合して、各々の前記端子ピンを中心にして盛り上がっている半田部の受入れ孔を少なくとも一つ有しているように構成してもよい。
【0011】
その場合、前記固定子枠が、各々の一部を重ね合わせた二つの固定子枠からなっていて、前記二つのボビン部と、前記二つずつの端子ピンとが、それらの二つの固定子枠に別々に設けられているようにしてもよい。また、前記第2の少なくとも1枚の羽根は、前記カバー板と前記仕切り板との間に配置され、前記第2の回転子は、前記地板と前記仕切り板との間に配置されていて、前記第2の回転子の出力ピンは、前記仕切り板に形成された孔を貫通して前記第2の少なくとも1枚の羽根に連結されているようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、地板とカバー板の間に、電磁アクチュエータを配置して、単にフレキシブルプリント配線板と接続するようにしただけではなく、地板とカバー板の一方の板厚内に孔を形成し、その中へ、フレキシブルプリント配線板とコイルの端部とを接合して端子ピンを中心に盛り上がっている半田部が入り込めるようにしたので、装置全体が薄型化されるという利点があり、特に、小型のデジタルカメラや、携帯電話,PDAなどの情報端末機器内蔵カメラに用いて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の平面図である。
【図2】実施例1の分解斜視図である。
【図3】図2に示されている固定子枠とフレキシブルプリント配線板との分解斜視図である。
【図4】実施例1の固定子枠の変形例を図3と同じようにして示した分解斜視図である。
【図5】実施例2を図2と同じようにして示した分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明するが、本発明の構成は、それらの実施例の構成だけに限定されるものではない。そのため、その他の構成については、各実施例の説明の中で随時説明することにする。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4は、実施例1の変形例を説明するためのものであり、図5は、実施例2を説明するためのものである。また、各実施例の構成説明に際して用いられる「被写体側」とは、装置全体の各分解斜視図(図2,図5)の下方側のことをいい、「撮像素子側」とは、それらの分解斜視図の上方側のことをいうが、周知のように、実施製品としては、反対向きに配置してもよいことは言うまでもない。
【実施例1】
【0015】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。本実施例は、2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置と1枚の絞り羽根を備えた絞り装置とをユニット化したものであって、図1は、撮像素子側から見た平面図であり、図2は、その分解斜視図であり、図3は、図2に示されている固定子枠とフレキシブルプリント配線板との分解斜視図である。
【0016】
最初に、本実施例の構成を説明する。本実施例の地板1は、比較的厚い合成樹脂製の板状部材であって、平面外形形状は略正方形をしており、その中央部に、円形をした被写体光路用の開口部1aを有している。また、地板1の三方の側面に形成されたくぼみの中には、合計四つの係合部1b,1c,1d,1eが形成されているが、図2では、それらのうちの二つの側面に形成された係合部1b,1cの形状が分かり易く示されている。
【0017】
地板1の撮像素子側の面には、四つの軸1f,1g,1h,1iと五つのストッパ1j,1k,1m,1n,1pが立設されている。また、図2から分かるように、軸1f,1gの立設されている近傍領域には、複雑な形状をした凹部が形成されている。これらの凹部の形状については詳細に説明しないが、後述する電磁アクチュエータの構成部材の一部を受け入れ、被写体光路に対して直交する方向への動きを規制し得るように形成されている。本実施例は、このような地板1の撮像素子側の面に、他の構成部材を順に組み付けてゆき、最後に、一番撮像素子側に配置されるカバー板2を取り付けることによって、ユニットの組立が完了するようになっている。そのため、以下においては、その組み付け順にしたがって説明する。
【0018】
先ず、最初に組み付けられる電磁アクチュエータについて説明する。本実施例の電磁アクチュエータは、回転子と固定子からなっていて、地板1に対しては、回転子と固定子を別々に組み付けるようになっている。そして、その組付け順は、回転子を先に組み付けても、固定子を先に組み付けてもよいようになっているが、ここでは、回転子の方が先であることにして説明する。上記した地板1の軸1gは2段軸になっていて、根元側の軸部が先端側の軸部より太くなっている。そして、根元側の軸部の直径は、軸1fの直径と同じであり、先端側の軸部の直径は、軸1h,1iの直径と同じである。そこで、軸1fには回転子3が回転可能に取り付けられ、軸1gの根元側の軸部には回転子4が回転可能に取り付けられている。
【0019】
また、それらの回転子3,4は、同じ構成をしており、軸1f,1gに取り付けられる部位である円筒状の本体部3a,4aと、それらの本体部3a,4aから径方向へ伸びている腕部3b,4bと、それらの腕部3b,4bの先端に形成された出力ピン3c,4cとからなっている。そして、これらの回転子3,4は、永久磁石製であって、本体部3a,4aが、径方向に2極に着磁されている。但し、周知であるように、腕部3b,4bと出力ピン3c,4cとを合成樹脂製であるようにしたものであっても構わない。
【0020】
次に、固定子について説明する。本実施例の固定子は、固定子枠5と、二つのコイル6,7と、二つのヨーク8,9とで構成されている。それらのうち、平板状をしている固定子枠5は、図3に示されているように、略L字型をしていて、その両端には、地板1と対向する面側となるようにして筒状のボビン部5a,5bを設けており、また、反対側の面には、四つの端子ピン5c,5d,5e,5fを立設している。
【0021】
また、二つのコイル6,7は、上記のボビン部5a,5bの外側に巻回されている。そして、図示していないが、コイル6の両端部は、図3において、固定子枠5の上面を這わされ、端子ピン5c,5dに巻き付けられている。他方、もう一方のコイル7の両端部も、同様にして固定子枠5の上面を這わされ、端子ピン5e,5fに巻き付けられている。
【0022】
更に、二つのヨーク8,9は、図2にから分かるように、略U字形をしており、各々の二つの脚部の先端近傍部位を、回転子3,4の本体部3a,4aの周面に対向させるための磁極部としている。そして、ヨーク8は、図2の左上方から、直線状をしている方の脚部を、固定子枠5のボビン部5aに貫通させ、もう一方のヨーク9は、図2の左下方から、直線状をしている方の脚部を、固定子枠5のボビン部5bに貫通させている。
【0023】
ところで、本実施例の固定子は、このように構成された状態で、地板1に装着されるわけではない。その前に、固定子枠5に対してフレキシブルプリント配線板10を取り付けておいてから、フレキシブルプリント配線板10と一緒に装着するようにしている。そのため、ここで、固定子枠5に対するフレキシブルプリント配線板10の取付け方を説明しておく。
【0024】
固定子枠5に対するフレキシブルプリント配線板10の取付けは、固定子枠5のボビン部5a,5bにコイル6,7を巻回し、それらの端部を端子ピン5c,5d,5e,5fに巻き付けた状態であって、ボビン部5a,5bに対しては、ヨーク8,9を取り付けていない状態において行われる。その場合には、周知のように、フレキシブルプリント配線板10に形成された四つの孔を端子ピン5c,5d,5e,5fに嵌合させておいて、半田付けする。そのため、図3から分かるように、半田付け後における半田部11,12,13,14は、端子ピン5c,5d,5e,5fを中心に盛り上がった形状になる。そして、その後に、フラックスなどの汚れを洗浄したものが、組み付け用に供される。
【0025】
尚、本実施例の固定子枠5は、上記のような形状をしているが、図4には、その変形例が示されている。即ち、この変形例は、本実施例の固定子枠5が二つの固定子枠5A,5Bに分けられていて、固定子枠5Aには、固定子枠5のボビン部5aと端子ピン5c,5dに相当する、ボビン部5A−1と端子ピン5A−2,5A−3が設けられ、また、固定子枠5Bには、固定子枠5のボビン部5bと端子ピン5e,5fに相当する、ボビン部5B−1と端子ピン5B−2,5B−3が設けられている。そして、それらの固定子枠5A,5Bの一部を重ね合わせておいてから、フレキシブルプリント配線板10を半田付けするようにしている。
【0026】
本発明は、回転子を二つ備えている場合には、固定子枠を、本実施例の固定子枠5のように1部材とすることに限定されず、2部材としても構わないが、2部材とする場合には、この変形例のように、それらの一部を重ね合わせた構成にすると、重ね合わせないようにした場合に比較して、半田付け作業やその後の洗浄作業がし易くなるほか、半田付け後の下組み部品段階における搬送作業なども容易になる。
【0027】
また、本実施例の場合には、固定子枠5に四つの端子ピン5c,5d,5e,5fを立設しているが、本発明は、このような構成に限定されず、特許文献2にも記載されているように、端子ピンを三つにして、一つの端子ピンを二つのコイル6,7の共通の端子ピンとし、コイル6の一方の端部と、コイル7の一方の端部との両方を巻き付けるようにしても構わない。そのように構成すると、スペース的にもコスト的にも有利になる。
【0028】
本実施例は、このようにして、固定子枠5にフレキシブルプリント配線板10を取り付けておいた後、上記のようにして、固定子枠5のボビン部5a,5bにヨーク8,9を取り付けておき、それらの構成部材を地板1に装着するようにする。そのため、その装着状態においては、ヨーク8,9と、コイル6,7を巻回したボビン部5a,5bの一部とが、上記した地板1の2箇所の凹部に挿入された状態になり、被写体光路に対して直交する方向の動きが規制されると共に、周知のように、ヨーク8,9の各々の二つの磁極部が、回転子3,4の本体部3a,4aの周面に対向した状態になる。
【0029】
このような構成をした電磁アクチュエータの次に、地板1に対して、仕切り板15が取り付けられている。この仕切り板15は、合成樹脂製の薄い板部材であって、地板1の開口部1aと重なるところに、開口部1aよりも直径の小さな円形の開口部15aを形成しているほか、円弧状の二つの長孔15b,15cと、円形をした四つの孔15d,15e,15f,15gを形成している。
【0030】
そして、長孔15b,15cには、上記の回転子3,4の出力ピン3c,4cが挿入されており、孔15dには、上記の軸1gの直径の小さい先端側の軸部が嵌合している。また、孔15e,15fには、上記の軸1h,1iが嵌合している。仕切り板15は、このようにして取り付けられることによって、孔15dの周辺部位が、軸1gからの回転子4の抜け止めをし、図2における下端部位が、軸1fからの回転子3の抜け止めをしている。尚、孔15gについては、後述のカバー板2のところで説明する。
【0031】
仕切り板15の次には、絞り羽根16が取り付けられている。この絞り羽根16は、仕切り板15の開口部15aよりも直径の小さな円形の絞り開口16aを有しているほか、円形の孔16bと長孔16cを有している。そして、この絞り羽根16は、孔16bを、上記の軸1iに回転可能に嵌合させ、長孔16cには、上記の回転子3の出力ピン3cを挿入させている。
【0032】
絞り羽根16の次には、2枚のシャッタ羽根17,18が取り付けられている。先ず、地板1側に配置されているシャッタ羽根17は、円形の孔17aと長孔17bを有していて、孔17aを上記の軸1hに回転可能に嵌合させ、長孔17bには、上記の回転子4の出力ピン4cを挿入させている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根18は、円形の孔18aと長孔18bを有しているほか、円弧状の長孔18cを有していて、孔18aを上記の軸1gの先端側の軸部に対して回転可能に嵌合させ、長孔18bには、上記の回転子4の出力ピン4cを挿入させている。尚、円弧状の長孔18cについては、下記のカバー板2のところで説明する。
【0033】
最後に、カバー板2について説明する。本実施例のカバー板2は、合成樹脂製であって、地板1よりは薄いが、仕切り板15よりはかなり厚い板部材であり、平面外形形状は地板1と略同じ形状をしている。このカバー板2の外周縁部には、地板1に向けて可撓性を有する四つのフック部2a,2b,2c,2dが形成されているが、図2においては、それらのうちの三つのフック部2a,2b,2cの形状が、分かり易く示されている。そして、このカバー板2は、それらのフック部2a,2b,2c,2dを一時的に撓ませて、地板1の側面に形成されている上記の係合部1b,1c,1d,1eに引っ掛けることによって地板1に取り付けられている。
【0034】
このようにして地板1に取り付けられているカバー板2は、地板1の開口部1aと仕切り板15の開口部15aとに重なるところに、被写体光路用の開口部2eを有している。本実施例の場合、この開口部2eの直径は、地板1の開口部1aの直径より小さいが、仕切り板15の開口部15aの直径よりも大きい。そのため、本実施例において、露光開口は、仕切り板15の開口部15aによって規制されているが、周知のように、開口部1a,2eのうちのいずれか一方の直径を一番小さくして、露光開口を規制させるようにしても構わない。
【0035】
また、このカバー板2には、九つの円形の孔2f,2g,2h,2i,2j,2k,2m,2n,2pと、二つの円弧状の孔2q,2rが形成されていて、外周縁部には、三つの逃げ部2s,2t,2uが形成されている。そして、カバー板2が地板1に取り付けられた状態のときは、孔2f,2g,2hには、カバー板2の板厚内において、地板1の軸1i,1h,1gの先端が挿入されている。また、円弧状の長孔2q,2rには、カバー板2の板厚内において、回転子3,4の出力ピン3c,4cの先端が挿入されている。
【0036】
また、孔2i,2jには、カバー板2の板厚内において、地板1のストッパ1k,1pの先端が挿入されており、孔2k,2m,2n,2pには、カバー板2の板厚内において、上記の半田部11,12,13,14が挿入されている。更に、逃げ部2s,2t,2uは、カバー板2が地板1に取り付けられた状態のとき、ストッパ1j,1m,1nの先端と干渉しないようにするためのものである。
【0037】
このほか、カバー板2の地板1側の面には、図1に示されている、断面がお結び状をした押さえピン2vと、断面が円形をした押さえピン2wが立設されている。そして、押さえピン2vは、仕切り板15の外縁に形成された逃げ部によって、仕切り板15とは干渉せずに、その先端面でヨーク8の脚部を押さえるようになっている。また、押さえピン2wは、上記のシャッタ羽根18の円弧状の長孔18cと、仕切り板15の孔15gに挿入されていて、その先端面でヨーク9の脚部を押さえている。そのため、シャッタ羽根18は、押さえピン2wには干渉することなく、軸1gを中心にして所定の角度範囲内で往復回転が可能になっている。
【0038】
このような構成説明から分かるように、本実施例の場合には、半田部11,12,13,14が、カバー板2の板厚内において、孔2k,2m,2n,2pに挿入されている。そのため、特許文献1,2に記載のようにしてフレキシブルプリント配線板を取り付けた場合や、単に地板とカバー板の間にフレキシブルプリント配線板を配置するようにした場合に比較して、フレキシブルプリント配線板から盛り上がっている半田部11,12,13,14の高さ分だけ、装置全体の薄型化が可能になっている。
【0039】
尚、本実施例においては、カバー板2に形成されている孔2k,2m,2n,2pが、貫通孔として形成されているが、カバー板2の厚さが、何らかの理由によって、本実施例の場合よりも厚くせざるを得ないような場合には、貫通孔でなくても差し支えない。また、本実施例の場合には、半田部11,12,13,14ごとに一つずつ孔2k,2m,2n,2pを形成しているが、一つの孔に複数の半田部を挿入するようにしても差し支えない。そして、これらのことは、それらの孔を形成している部材が異なるとはいえ、下記の実施例2の場合にも、言えることである。
【0040】
次に、本実施例の作動を簡単に説明する。図1は、撮影待機状態を示したものである。そのため、このときには、カメラの電源スイッチはオンになっていて開口部15aは全開になっているので、図示していない撮像素子には被写体光が当たっていて、撮影者は、モニターにより、被写体像を観察することが可能になっている。
【0041】
撮影に際してレリーズボタンを押すと、その初期段階において、測光装置が被写体光の測定結果によって、被写体光を減じて撮影するか、減じないで撮影するかを判断する。そして、被写体光を減じて撮影すると判断した場合には、絞り羽根16を開口部15a内に進入させておいてから実際の撮影が開始され、また、被写体光を減じないで撮影すると判断した場合には、直ちに実際の撮影が開始される。しかし、実際の撮影工程は、両者とも同じであるため、本実施例の作動説明は、前者の場合についてだけ説明することにする。
【0042】
被写体光を減じて撮影すると判断した場合には、先ず、コイル6に対して順方向の電流が供給され、回転子3を時計方向へ回転させる。そのため絞り羽根16は、出力ピン3cによって反時計方向へ回転され、ストッパ1kに当接して停止させられる。それによって、撮影は、絞り開口16aを通過した被写体光によって行われることになる。
【0043】
絞り羽根16の回転が停止すると、撮像素子に蓄積されていた電荷が放出されることによって撮影が開始され、新たな電荷が撮像素子に蓄積されていく。そして、撮像素子に当たる被写体光の明るさに対応した時間が経過すると、今度はコイル7に対して順方向の電流を供給し、回転子4を時計方向へ回転させる。そのため、出力ピン4cによって、2枚のシャッタ羽根17,18は相反する方向へ回転させられ、絞り開口16aを閉鎖する。そして、シャッタ羽根17,18の回転が、ストッパ1n,1pに当接して停止すると、撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。
【0044】
撮像情報が記憶装置に記憶されると、二つのコイル6,7に対して逆方向への電流が供給されるので、回転子3,4はいずれも反時計方向へ回転させられる。そのため、絞り羽根16は、出力ピン3cによって時計方向へ回転させられ、ストッパ1jに当接して停止する。また、2枚のシャッタ羽根17,18は、出力ピン4cによって相反する方向へ回転させられ、ストッパ1m,1nに当接して停止する。その後、コイル6,7に対する通電を断つと、図1に示された撮影待機状態に復帰したことになる。
【0045】
尚、本実施例のカメラ用羽根駆動装置は、シャッタ装置と絞り装置とをユニット化したものであるが、このような構成において、絞り開口16aをフィルタシートで覆った構成にすると、シャッタ装置とフィルタ装置とをユニット化したものになる。また、本実施例から回転子3と絞り羽根16とを無くし、固定子枠5を、図4に示した固定子枠5Bだけにした構成にすれば、シャッタ装置だけをユニット化したものになる。そして、本実施例のように構成する場合であっても、シャッタ装置だけをユニット化する場合であっても、シャッタ羽根の大きさを本実施例の場合よりも大きくすれば、シャッタ羽根は1枚だけでもよいことになる。
【0046】
更に、本実施例から回転子4と2枚のシャッタ羽根17,18を無くし、固定子枠5を、図4に示した固定子枠5Aだけにした構成にすれば、絞り装置だけをユニット化したものになるし、その場合に、絞り開口16aをフィルタシートで覆った構成にすると、フィルタ装置だけをユニット化したものになる。また、それらのように、シャッタ装置,絞り装置,フィルタ装置を単独でユニット化した場合には、当然のことながら、本実施例の半田部11,12,13,14に相当する半田部は二つだけでよいことになる。そして、これらのことは、下記の実施例2についても言えることであり、それらは全て、本発明の実施態様である。
【実施例2】
【0047】
次に、上記の図2と同じようにして示した図5を用いて実施例2を説明する。本実施例の構成は、実施例1の構成に対して、固定子枠の形状と、地板に対する装着姿勢が異なっており、それに伴い、地板とカバー板の一部の形状が異なっているものである。そのため、実施例1の場合と全く同じ部材と部位には同じ符号を付け、それらについての説明を省略する。
【0048】
本実施例の固定子枠25は、実施例1の固定子枠5と同じように、略L字型の平板状をしていて、その両端にはボビン部25a,25bを設けているが、それらのボビン部25a,25bは、実施例1の場合とは異なり、固定子枠25の、カバー板22側となる面側にあるように形成されている。そして、それらのボビン部25a,25bには、実施例1の場合と同様に、コイル6,7が巻回されている。
【0049】
また、この固定子枠25にも、コイル6,7の端部を巻き付けている、実施例1の端子ピン5c〜5fに相当する四つの端子ピンが立設されているが、本実施例の場合には、それらは、地板21側の面に立設されていて、図2では目視することができない。そのため、本実施例の場合には、実施例1の半田部11〜14に相当する四つの半田部は、地板21側に盛り上がって形成されていることになる。
【0050】
また、本実施例の地板21には、実施例1の地板1には形成されていなかった四つの孔21K,21M,21N,21Pが形成されている。これらの孔は、実施例1のカバー板2に形成されている四つの孔2k,2m,2n,2pに相当する孔である。そのため、本実施例のカバー板22には、それらの四つの孔に相当する孔は形成されていない。そして、本実施例の地板21の場合には、固定子枠25に対応する領域が、実施例1の地板1に比べて、全体的に薄く形成されている。尚、地板21とカバー板22に付けられているその他の符号は、実施例1の場合と実質的に同じ部位に同じアルファベットを添えて付けたものである。そのため、それらについての説明は省略する。
【0051】
本実施例は、このように構成されているので、最後にカバー板22を地板21に取り付けた状態においては、固定子枠25の下面側にあって目視することのできない四つの半田部が、地板21の板厚内で、四つの孔21K,21M,21N,21Pに挿入されている。そのため、本実施例の場合にも、特許文献1,2に記載のようにしてフレキシブルプリント配線板を取り付けた場合や、単に地板とカバー板の間にフレキシブルプリント配線板を配置するようにした場合に比較して、フレキシブルプリント配線板から盛り上がっている半田部の高さ分だけ、装置全体の薄型化が可能になっている。
【0052】
尚、本実施例の作動は、実施例1の場合と同様にして行われるので、その説明を省略する。
【符号の説明】
【0053】
1,21 地板
1a,2e,15a,21a 開口部
1b〜1e,21b,21c 係合部
1f〜1i,21f〜21i 軸
1j,1k,1m,1n,1p,21j,21k,21m,21n,21p ストッパ
2,22 カバー板
2a〜2d,22a〜22c フック部
2f〜2k,2m,2n,2p,15d〜15g,16b,17a,18a,21K,21M,21N,21P,22f〜22j 孔
2q,2r,15b,15c,16c,17b,18b,18c,22q,22r 長孔
2s〜2u,22s〜22u 逃げ部
2v,2w 押さえピン
3,4 回転子
3a,4a 本体部
3b,4b 腕部
3c,4c 出力ピン
5,5A,5B,25 固定子枠
5a,5b,5A−1,5B−1,25a,25b ボビン部
5c〜5f,5A−2,5A−3,5B−2,5B−3 端子ピン
6,7 コイル
8,9 ヨーク
10 フレキシブルプリント配線板
11,12,13,14 半田部
15 仕切り板
16 絞り羽根
16a 絞り開口
17,18 シャッタ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に取り付けられていて重ね合わせているいずれか一方の開口部を露光開口としている地板及びカバー板と、前記地板と前記カバー板との間に配置されている少なくとも1枚の羽根と、前記地板と前記カバー板との間に配置されていて永久磁石を有する回転子の往復回転によって該回転子の出力ピンが前記少なくとも1枚の羽根を露光開口に進退させる電磁アクチュエータと、前記地板と前記カバー板との間で前記電磁アクチュエータに接続されているフレキシブルプリント配線板と、を備えていて、前記電磁アクチュエータが、前記地板と前記カバー板との少なくとも一方に回転可能に取り付けられた前記回転子と、平板状をしていて一方の面側に筒状のボビン部を有し他方の面側に二つの端子ピンを立設した固定子枠と、前記ボビン部に巻回され両端部を前記端子ピンに各々巻き付けたコイルと、前記ボビン部に対し二つの脚部の一方を貫通させそれらの脚部の先端側に設けた二つの磁極部を前記回転子の周面に対向させたヨークとからなっており、前記地板と前記カバー板の一方が、その板厚内に、前記フレキシブルプリント配線板と前記コイルの端部とを接合して前記端子ピンを中心にして盛り上がっている半田部の受入れ孔を少なくとも一つ有していることを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。
【請求項2】
前記地板と前記カバー板との間には、前記地板の前記開口部と前記カバー板の前記開口部との三者のいずれかによって露光開口を決めるための開口部を有した仕切り板を配置していて、前記少なくとも1枚の羽根は、前記カバー板と前記仕切り板との間に配置され、前記電磁アクチュエータのうち前記回転子は、前記地板と前記仕切り板との間に配置されていて、前記出力ピンは、前記仕切り板に形成された孔を貫通して前記少なくとも1枚の羽根に連結されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項3】
前記固定子枠は、前記ボビン部と同一面側に第2のボビン部を有していて、前記二つの端子ピンと同一面側には前記第2のボビン部に巻回された第2のコイルの両端を巻き付ける二つの端子ピンを立設しており、また、前記地板と前記カバー板の間には、前記回転子と同じ構成をした第2の回転子が前記回転子と同様にして取り付けられていて、その第2の回転子の周面には、前記ヨークと同じ構成をしていて前記ヨークと同じようにして前記第2のボビン部に取り付けられた第2のヨークがその二つの磁極部を対向させており、さらに、前記地板と前記カバー板の間には、前記少なくとも1枚の羽根のほかに、前記第2の回転子の出力ピンによって露光開口に進退させられる第2の少なくとも1枚の羽根が配置されており、さらにまた、前記地板と前記カバー板の一方には、その板厚内に、前記フレキシブルプリント配線板と前記二つのコイルの前記四つの端部とを接合して、各々の前記端子ピンを中心にして盛り上がっている半田部の受入れ孔を少なくとも一つ有していることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項4】
前記固定子枠が、各々の一部を重ね合わせた二つの固定子枠からなっていて、前記二つのボビン部と、前記二つずつの端子ピンとが、それらの二つの固定子枠に別々に設けられていることを特徴とする請求項3に記載のカメラ用羽根駆動装置。
【請求項5】
前記第2の少なくとも1枚の羽根は、前記カバー板と前記仕切り板との間に配置され、前記第2の回転子は、前記地板と前記仕切り板との間に配置されていて、前記第2の回転子の出力ピンは、前記仕切り板に形成された孔を貫通して前記第2の少なくとも1枚の羽根に連結されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のカメラ用羽根駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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