説明

カメラ装置、及びその撮影方法とプログラム

【課題】流し撮り撮影において主要被写体にぶれのない質の良い撮影画像を確実に得ることが可能とする。
【解決手段】記録用の被写体画像を撮像するCCD13とは別に、同一の被写体を撮像するCCD23を設け、撮影時におけるCCD13の露光時間内にCCD23に複数回の撮像動作を行わせる。複数回の撮像動作により相前後して撮像された画像間における被写体各部の移動量及び移動方向を示す動きベクトルを動き検出部38に検出させる。CPU31に、検出された動きベクトルのうち主要被写体の移動量及び移動方向を示す動きベクトルを特定させ、特定した動きベクトルに基づきCCD13の位置を制御するCCDシフト方式による手振れ補正処理を実施させる。撮影時における露光時間内においても主要被写体の相対的な動きが反映された正確な揺れ情報に基づく正しい手振れ補正を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し撮り撮影に用いて好適なカメラ装置、及びその撮影方法とプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、静止画撮影における撮影技法の1つに、撮影者が、移動被写体である主要被写体の移動方向にカメラを振りながら撮影するという流し撮りが知られている。この流し撮り撮影によれば、撮影画像中において主要被写体の像が静止して背景だけがボケることとなるので、撮影画像上で主要被写体の躍動感やスピード感を表現できる。
【0003】
しかし、流し撮りは、主要被写体とカメラとが相対的に静止した状態を、撮影者が手動でカメラを移動させて作り出さなければならないため、初心者にとっては失敗しやすい撮影技法であった。
【0004】
これを解決可能とする技術として、例えば下記特許文献1には、本撮影に先立つ「試し撮り」で得られた主要被写体の撮影画像中における移動速度を算出し、本撮影時には、算出した移動速度と予め入力された被写体の移動の向きとに基づいて、撮影画像中における主要被写体の像のぶれ(揺れ)を打ち消すように補正レンズを移動させながら、流し撮り撮影による撮影を行う技術が記載されている。
【0005】
かかる従来技術によれば、主要被写体に対する流し撮りを自動化できるので、初心者であっても流し撮りを実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−50149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、本撮影時における補正レンズの移動速度には、「試し撮り」時点で得た主要被写体の撮影画像中における移動速度(カメラの速度と被写体の速度との相対速度)、つまり撮影以前における移動速度を反映させているため、上記補正レンズの移動速度を、必ずしも本撮影時(露光期間内)における主要被写体の撮影画像中における移動速度と一致するとは限らない。
【0008】
そのため、上記従来技術では、試し撮り時の画像中における主要被写体の移動速度と、本撮影時における画像中における主要被写体の移動速度とが異なるものであった場合には、本撮影時において補正レンズの移動速度に対し画像中における主要被写体の正確な移動速度が反映されないので、主要被写体の像のぶれを打ち消すように補正レンズを適切に移動させることができない。
【0009】
その結果、上記従来技術では、本撮影で得られる撮影画像内で主要被写体の像にぶれが生じてしまい、流し撮りに失敗する場合があるという問題があった。
【0010】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、流し撮り撮影において主要被写体にぶれのない質の良い撮影画像を確実に得ることができるカメラ装置、及びその撮影方法とプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係るカメラ装置にあっては、第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置において、前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子と、この前記第2の撮像素子に、記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に複数回の撮像動作を行わせる第1の撮像制御手段と、前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する特定手段と、撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記特定手段により特定された前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する揺れ情報検出手段と、前記露光時間内に、前記揺れ情報検出手段により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する揺れ防止手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明に係るカメラ装置にあっては、撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された相前後する画像間において前記複数の被写体の各々の移動量を個別に検出する個別移動量検出手段を更に備え、前記特定手段は、前記個別移動量検出手段によって検出された前記複数の被写体の各々の移動量に基づき主要被写体を特定することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記特定手段は、前記複数の被写体のうちで前記個別移動量検出手段によって検出された移動量が最も小さい被写体部分に相当する領域を前記主要被写体として特定することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4記載の発明に係るカメラ装置にあっては、前記揺れ防止手段は、撮影光軸と垂直な平面上での前記第1の撮像素子の位置を前記揺れ情報に基づき補正することによって、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5記載の発明に係る撮影方法にあっては、第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置において、記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子に複数回の撮像動作を行わせる工程と、前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する工程と、撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記主要被写体を特定する工程により特定された前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する工程と、前記露光時間内に、前記揺れ情報を検出する工程により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、請求項6記載の発明にあっては、第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置が有するコンピュータに、
記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子に複数回の撮像動作を行わせる処理と、
前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する処理と、
前記露光時間内に、前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する処理と、
撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記揺れ情報を検出する処理により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する処理と
を実行させることを特徴とするプログラムとした。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、流し撮り撮影において主要被写体にぶれのない質の良い撮影画像を確実に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るデジタルカメラの正面図である。
【図2】同デジタルカメラの電子回路構成の概略を示すブロック図である。
【図3】主カメラブロック及び副カメラブロックの動作中にワークメモリに確保されるバッファ領域を示した概念図である。
【図4】流し撮りモードによるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】流し撮りモードでのデジタルカメラの動作内容を示すタイミングチャートである。
【図6】ユーザが設定可能な背景の流れの度合と、流れの度合に応じた規定移動量を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図にしたがって説明する。図1は、本発明のカメラ装置であるデジタルカメラの正面図である。
【0020】
図示したようにカメラ本体1の正面には沈胴式の第1の撮像レンズ2と、固定式の第2の撮像レンズ3とが配置されており、カメラ本体1の上面にはシャッタキー4が設けられている。シャッタキー4は半押し操作と全押し操作との2段階操作が可能な所謂ハーフシャッター機能を有する構成であり、半押し操作がAF(オートフォーカス)動作の開始指示等として使用され、全押し操作が撮影指示として使用される。なお、図示しないがカメラ本体1の背面側には、電源キー及び、記録モード、再生モードの各モードの切り替えを行うモード切替キー、ズームキー、MENUキー等の複数のスイッチ類と、撮影待機状態で被写体のライブビュー画像(スルー画像)を表示したり記録済の画像を再生表示する液晶モニタ(図2参照)とが設けられている。
【0021】
図2は、上記デジタルカメラの電気的構成の概略を示すブロック図であり、デジタルカメラは同一の被写体を個別に撮影し、略同一内容の2種類の被写体画像を取り込むための主カメラブロック11と副カメラブロック21とを備えている。
【0022】
主カメラブロック11は、前述した沈胴式の第1の撮像レンズ2を含む結像光学系ブロック12と、CCD13(撮像素子)、位置補正部14、ISP(Image Signa1 Processor)15、光学系駆動制御部16とから構成されている。
【0023】
結像光学系ブロック12は、前記第1の撮像レンズ2であってズームレンズ及びフォーカスレンズを構成するレンズ群と、絞り及びメカニカルシャッタと、それらを駆動するためのズーム用及びフォーカス用のモータやアクチュエータから構成される。結像光学系ブロック12の各部の動作はCPU31の命令に従い光学系駆動制御部16が生成する駆動信号によって制御される。
【0024】
CCD13はタイミング発生器32により生成される駆動信号により駆動され、前記結像光学系ブロック12により結像された被写体の光学像を光電変換し、撮像信号としてISP15に出力する。CCD13は記録用の被写体画像(撮影画像)の取得に使用されるものであって、撮影時の手振れ防止を実現するために、位置補正部14により撮影光軸と垂直な平面内での垂直方向及び水平方向の位置調整が可能となっている。
【0025】
位置補正部14は、CCD13を垂直方向に移動させる垂直用アクチュエータと、水平方向に移動させる水平用アクチュエータとから構成され、CPU31から送られる後述する主要被写体の相対的な移動量及び移動方向を示す移動量情報に応じてCCD位置制御部33が生成する駆動信号により駆動され、露光面上での主要被写体の相対的な移動を打ち消すようにCCD13を垂直方向及び水平方向へ移動させる。すなわち本実施形態においては位置補正部14とCCD位置制御部33とCPU31とによって本発明の揺れ防止手段が実現されている。
【0026】
ISP15は、CCD13から出力された撮像信号のノイズ除去やISO感度に応じたゲイン調整を行い、デジタルの画像信号に変換した後、データフォーマット変換(ベイヤー配列から輝度信号Y、色差信号Cb、Crへの変換)等を行い、Y,Cb,Crの画像データとして出力する。
【0027】
一方、前記副カメラブロック21は、前述した固定式の第2の撮像レンズ3を含む結像光学系ブロック22と、CCD23、ISP(Image Signa1 Processor)25から構成されている。結像光学系ブロック22は単焦点レンズ、及び開度が固定の絞りから構成される。
【0028】
CCD23は、後述する流し撮りモードでの撮影時に画角内の移動体の動きを検出するためのセンサとして使用される本発明の第2の撮像素子であって、主カメラブロック11のCCD13と比べて解像度が低く(有効画素数が少なく)、かつタイミング発生器32により個別に生成されるCCD13側とは異なる駆動信号によって、CCD13よりも高いフレームレートで駆動されるものであり、画像データを高速で取り込み可能となっている。ISP25は主カメラブロック11のISP15と同様の信号処理を行い、CCD23から出力された撮像信号をY,Cb,Crの画像データに変換する。
【0029】
また、主カメラブロック11と副カメラブロック21とからそれぞれ出力された画像データ(Y,Cr,Cbの各データ)はワークメモリ34へ個別に転送される。なお、以下の説明においては、主カメラブロック11から出力された画像データを主画像データ、副カメラブロック21から出力された画像データを副画像データと呼ぶことにより両者を区別する。
【0030】
ワークメモリ34はDRAM等であって、主カメラブロック11及び副カメラブロック21の動作中には、ワークメモリ34の内部には、図3に示したように主画像バッファ領域341と、第1の副画像バッファ領域342aと第2の副画像バッファ領域342bとが確保され、主画像バッファ領域341に主画像データが記憶され、第1の副画像バッファ領域342aと第2の副画像バッファ領域342bとに、相前後する最新2フレーム分の副画像データが個別に記憶される。
【0031】
そして、撮影待機状態でワークメモリ34へ転送された主画像データは表示処理部35へ送られる。表示処理部35はVRAMを含み、主画像データに解像度変換処理を行って表示データを生成して液晶モニタ36に出力し、液晶モニタ36に画像を表示させる。すなわち撮影待機状態において所定のフレームレートで主カメラブロック11から取り込まれた画像をライブビュー画像として液晶モニタ36に表示させる。
【0032】
また、シャッタキー4の全押しに応答してワークメモリ34へ転送された撮影時の主画像データは、CPU31によってJPEG等の所定のファイルフォーマットの画像データに圧縮された後、画像メモリ37に記憶される。なお、画像メモリ37に記憶された画像データ(記録画像データ)は、CPU31によって必要に応じて読み出されて伸張され、ワークメモリ34内に展開された後、表示処理部35を介して液晶モニタ36において再生表示される。
【0033】
一方、ワークメモリ34へ転送された相前後する2フレーム分の副画像データは動き検出部38によって読み出される。動き検出部38は本発明の個別移動量検出手段であって、読み出した一組の副画像データを比較することによって、画像内(画角内)における移動体の移動量、及び移動方向を示す動きベクトルを周知のブロックマッチング法により取得する。そして、この動き検出部38により取得された動きベクトルに基づきCPU31により決定された後述する主要被写体の移動量情報が前述したCCD位置制御部33へ送られる。
【0034】
キー入力部39は、前述したシャッタキー4等の各種の操作キー含み各キーの操作状態を示すキー操作信号をCPU31へ出力する。
【0035】
CPU31は、フラッシュメモリ40に記憶されている種々のプログラムに従い、またキー入力部39から送られるキー操作信号に対応して動作することにより上述した各部の動作を制御するとともに、AF処理やAE処理、画像の圧縮・伸張処理を含む各種の処理を実行する。
【0036】
そして、CPU31は、記録モードの下位モードであって、流し撮り撮影での使用を目的としてデジタルカメラに予め用意されている流し撮りモードが設定されたときには、後述する処理を実行することにより本発明の撮像制御手段、揺れ情報検出手段、揺れ防止手段、第2の撮像制御手段、移動量検出手段、算出手段、撮影条件設定手段、移動量設定手段、個別移動量検出手段、特定手段、決定手段として機能する。
【0037】
なお、前記フラッシュメモリ40には上記プログラム以外にも、CPU31により使用される各種のデータが記憶されているとともに、ユーザにより必要に応じて変更されたり、CPU31により自動的に変更されたりする種々の設定データも記憶されている。
【0038】
次に、以上の構成からなるデジタルカメラの本発明に係る動作について説明する。図4は、ユーザにより流し撮りモードが設定されたときのCPU31の処理手順を示すフローチャートであり、また、図5は、そのときのデジタルカメラの動作内容を示すタイミングチャートである。なお、以下の説明では、便宜的に前述した主カメラブロック11を主カメラといい、副カメラブロック21を副カメラという。
【0039】
流し撮りモードが設定されると、CPU31は主カメラと副カメラによる撮像動作を直ちに開始する(ステップS1)。すなわち各々のCCD13,23を所定のフレームレートで周期的に駆動し、略同一内容の2種類の被写体画像を周期的に取り込み、各々の画像データ(主画像データと副画像データ)をワークメモリ34へ記録する撮影(撮像処理)を開始する。ここで、主カメラ側のフレームレートは、液晶モニタ36におけるライブビュー画像の更新周期に対応するフレームレート(例えば30fps)である。また、副カメラ側のフレームレートは主カメラ側よりも遙かに高いフレームレートである。
【0040】
これ以後、主画像バッファ領域341に記憶された主画像データが前記フレームレートで逐次更新され、同時に第1及び第2の副画像バッファ領域342a,342bに記憶された相前後する2フレーム分の副画像データのうち先に記憶された副画像データが前記フレームレートで最新のものに逐次更新される。
【0041】
そして、CPU31は主カメラによって撮影した撮影画像(主画像データ)をライブビュー画像として液晶モニタ36に表示させる(ステップS2)。また、ライブビュー画像を表示している間には、ユーザによって背景の移動量設定を指示するための所定のキー操作が行われたか否か、及びシャッタキー4が半押しされたか否かを逐次確認し(ステップS3,S5)、背景の移動量設定指示を検知したときには(ステップS3でYES)、ユーザに背景の規定移動量(特定の移動量)を設定する(ステップS4)。
【0042】
上記規定移動量は流し撮りによって得られる撮影画像において、躍動感やスピード感を表現するために確保すべき背景(移動する主要被写体以外の部分)の流れの度合に応じた移動量である。すなわち規定移動量は背景となる被写体部分の任意の点が撮影画像内で移動する(流れる)量をピクセル数で表した移動量であって、本実施形態においては、図6に示したように、流れの度合として「大」、「中」、「小」の3段階が選択可能であり、各々の度合に応じて規定移動量が予め決められている。
【0043】
そして、ステップS4においては、液晶モニタ36に所定の選択画面を表示させ、その選択画面においてユーザに所望する流れの度合をキー操作により選択させ、選択された度合に対応する規定移動量を前記フラッシュメモリ40に他の設定データとともに記憶する。なお、規定移動量の初期値には、所定のレベル(例えば「中」レベル)に対応するピクセル数が予め設定されている。
【0044】
一方、ライブビュー画像を表示している間にシャッタキー4が半押しされると(ステップS5でYES)、CPU31は画角内に存在する主要被写体を特定する(ステップS6)。係る処理では、その時点でワークメモリ34の第1及び第2の副画像バッファ領域342a,342bに記憶されている相前後する最新2フレーム分の副画像データを対象として、前記動き検出部38に、画像内全域における被写体各部の移動量及び移動方向を示す動きベクトルをブロックマッチング法により取得させる。
【0045】
動き検出部38における動きベクトルの具体的な取得方法は、以下の通りである。すなわち、先に取得された一方の副画像データにおいて画像内全域を複数ブロックに分割し、いずれかのブロックを処理対象として、後に取得された他方の副画像データにおける上記のブロックと同じ大きさの比較領域について処理対象ブロックとの類似度を求める。なお、類似度はブロック間対応画素の輝度の差分絶対和(SAD: Summation of Absolute Difference)によって求め、SADが小さい程類似度が高いと判断する。そして、係る処理を他方の副画像データにおける比較領域をずらしながら全体の領域に対して行い、最も類似度が高い領域を移動先の領域とする。係る処理を、一方の副画像データの全てのブロックを処理対象として繰り返し行い、全てのブロックについて動きベクトルを算出する。
【0046】
そして、CPU31は、上記のように動き検出部38により取得された動きベクトルにより示される移動量が最小のブロック(複数ブロック)に対応する被写体領域を主要被写体として特定する。なお、ステップS6における主要被写体の具体的な特定方法については任意であり、前述したブロックマッチング法とは異なる方法を用いて行うようにしても構わない。
【0047】
引き続き、CPU31は、上記のように特定した主要被写体にピントを合わせるためのAF処理を行う(ステップS7)。係るAF処理は周知のコントラスト検出方式によるものであり、前述した第1の撮像レンズ2のフォーカスレンズを移動させる間に、その間に(主カメラから出力される)主画像データにおいて、前述した主要被写体として特定した被写体領域(又は、その被写体領域を含む所定面積の領域)を対象としてコントラストの変化を検出することによりフォーカス位置をサーチして、主要被写体にピントを合わせる。
【0048】
次に、CPU31は、ステップS6で特定した主要被写体を除く被写体部分を背景被写体として特定し(ステップS8)、さらに、特定した背景被写体の移動量情報を特定する(ステップS9)。ここでは、ステップS6で動き検出部38により取得された上記背景被写体に対応する被写体部分(前述したブロック)の動きベクトルの中で、取得数が最も多い同一の動きベクトル(移動量、移動方向が一致する動きベクトル)を代表となる動きベクトルとして決定し、その動きベクトルの移動量を背景被写体の移動量情報として特定する。
【0049】
次に、CPU31は、前述したステップS4で設定した背景の規定移動量、または初期値として設定されている背景の規定移動量をフラッシュメモリ40から読み出し(ステップS10)、読み出した規定移動量に基づき撮影時における露光時間(シャッタ速度)を算出する(ステップS11)。ここで算出する露光時間は、前述した背景被写体が上記規定移動量(決められたピクセル数)だけ画角内で移動するのに要する時間であって、具体的には規定移動量と、ステップS9で取得した背景被写体の移動量(移動量情報)と、副カメラ側のフレームレートとに基づき下記式から算出する。
露光時間 = 規定移動量 / 背景被写体の移動量 × フレームレート
【0050】
そして、ここで算出した露光時間を基準として適正露出を得るための他の撮影条件、すなわちISO感度と絞り値を決定し、それらを撮影時の撮影条件として設定する(ステップS12)。以後、シャッタキー4が全押しされるまでは(ステップS13でNO)、シャッタキー4の半押しが維持されている間には前述したステップS6〜ステップS12の処理を繰り返し、シャッタキー4の半押しが解除された場合には、前述したステップS2以降の処理を繰り返する。また、その間にシャッタキー4が全押しされたら(ステップS13でYES)、記録用の画像の生成に向けて直ちに主カメラ側のCCD13の露光を開始する(ステップS14)。つまり本撮影を開始する。
【0051】
その後、CPU31はステップS6と同様に、前記動き検出部38に逐次更新される最新2フレーム分の副画像データを対象として、画像内全域における被写体の各部の移動量及び移動方向を示す動きベクトルを取得させ、取得された動きベクトルに基づき主要被写体を特定し、その揺れ情報を取得する(ステップS15)。すなわち取得された動きベクトルのうちで移動量が最小の動きベクトルを主要被写体の揺れ情報として取得する。
【0052】
引き続き、CPU31は特定した揺れ情報をCCD位置制御部33へ送り、揺れ情報に応じた駆動信号をCCD位置制御部33に生成させ、位置補正部14に主カメラ側のCCD13を揺れ情報により示される移動方向と逆方向に、揺れ情報により示される移動量だけ移動(シフト)させる(ステップS16)。すなわちCCD13の主要被写体に対する相対的な移動を打ち消す所謂CCDシフト方式による手振れ補正処理を実施する。
【0053】
以後、CPU31は、ステップS12で設定した露光時間が経過するまでの間(ステップS17がNO)、ステップS15,S16による手振れ補正処理を副カメラ側のフレームレートで繰り返し実施する。やがて上記の露光時間が経過したら(ステップS17でYES)、CPU31は、主画像バッファ領域341に記憶された主画像データに対して色調整やコントラスト調整等の画質に関する所定の画像処理、及び処理後の画像データを圧縮といった撮影処理を行った後(ステップS18)、圧縮後の画像データを画像ファイルとして画像メモリ37に記録し(ステップS19)、流し撮りモードによる処理を終了する。
【0054】
以上のように本実施形態においては、流し撮りモードが設定されているときの本撮影では、露光期間中においても副カメラによる被写体の撮像動作を継続して行い、副カメラによって取得した副画像データに基づき主要被写体の揺れ情報を検出し、その検出結果を用いてCCDシフト方式による手振れ補正を行うようにした。
【0055】
そのため、本撮影時の露光時間内において主要被写体のカメラ本体1に対する相対的な移動方向や移動量が本撮影の直前の時点から変化したり、さらには変動したりする場合であっても、露光時間内には主要被写体の相対的な動きが反映された正確な揺れ情報に基づく正しい手振れ補正を行うことができる。したがって、撮影画像において主要被写体(移動被写体)にぶれが生じることがなく、流し撮り撮影において主要被写体にぶれのない質の良い撮影画像を確実に得ることができる。
【0056】
しかも、本実施形態においては、シャッタキー4が全押しされる以前の段階で、画角内での移動量が最も小さい被写体部分を主要被写体であると自動的に特定し、露光時間内には、自動的に特定した主要被写体の揺れ情報に基づいた手振れ補正を行うようにした。したがって、シャッタキー4を全押しする以前に主要被写体を手動で設定するといった煩雑な操作をユーザに強いることなく主要被写体を特定することができる。つまりユーザに負担をかけることなく質の良い撮影画像を確実に得ることができる。
【0057】
また、本実施形態では、本撮影時における主カメラブロック11のCCD13の露光時間を、露光時間内に背景被写体が規定移動量(決められたピクセル数)だけ画角内で移動するのに要する時間に設定するようにした。したがって、背景被写体が特定の所定の移動量だけぶれた(流れた)撮影画像を確実に得ることができ、その結果、撮影画像において主要被写体(移動被写体)の躍動感やスピード感をより確実に表現できる。
【0058】
加えて、ユーザが上記の規定移動量を必要に応じて変更することができるようにしたことから、背景被写体がユーザの所望する程度だけぶれた(流れた)撮影画像を確実に得ることができる。つまり、撮影画像の躍動感やスピード感の度合いにユーザの意図を反映させることができる。なお、本実施形態においては、ユーザが設定可能な規定移動量、つまり流れの度合を「大」、「中」、「小」の3段階としたが、規定移動量をさらに細かく設定できるようにしてもよいし、さらには、規定移動量を段階的に設定するのではなく、無段階に設定できるようにしてもよい。
【0059】
なお、本実施形態では、シャッタキー4が半押しされたことをトリガとして主要被写体であると自動的に特定する構成としたが、主要被写体を特定するタイミングは、シャッタキー4が全押しされる以前であれば任意であり、例えば所謂ハーフシャッター機能を有していないシャッタキーを備えた構成においては、流し撮りモードが設定された時点で主要被写体の特定を開始すればよい。
【0060】
また、本実施形態では、主要被写体の揺れ情報に基づいた手振れ補正をCCDシフト方式で行う構成について説明したが、これに限らず、本発明は例えば撮影光学系に設けられた補正レンズをシフトさせて像ブレを補正する光学式の手振れ補正が可能な構成のものにも適用可能であり、その場合には、主要被写体の揺れ情報に基づいて上記補正レンズをシフトさせればよい。また、撮像素子としてCCDを用いる場合について説明したが、撮像素子は例えばCMOSイメージセンサ等であっても構わない。
【0061】
また、本実施形態では、相前後する最新2フレーム分の副画像データを対象として、動き検出部38に、動きベクトルを取得させるようにした。しかし、最新のフレームで取得された最新の副画像データと、この最新の副画像データより所定フレーム分(例えば2フレーム分)前のフレームで取得された副画像データとを対象として、動き検出部38に、動きベクトルを取得させるようにしてもよい。この場合、第1及び第2の副画像バッファ領域342a,342bに記憶される2フレーム分の副画像データは、所定フレーム周期が経過する度に、先に記憶された副画像データが最新の副画像データに逐次更新されることとなる。
【0062】
また、ここでは本発明を一般的なデジタルカメラに適用した場合について説明したが、これに限らず本発明は、例えば静止画撮影機能を有するデジタルビデオカメラや、携帯電話端末等に内蔵されている他のカメラ装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
2 第1の撮像レンズ
3 第2の撮像レンズ
4 シャッタキー
11 主カメラブロック
13 CCD
14 位置補正部
21 副カメラブロック
23 CCD
31 CPU
33 CCD位置制御部
34 ワークメモリ
38 動き検出部
40 フラッシュメモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置において、
前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子と、
この前記第2の撮像素子に、記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に複数回の撮像動作を行わせる第1の撮像制御手段と、
前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する特定手段と、
撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記特定手段により特定された前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する揺れ情報検出手段と、
前記露光時間内に、前記揺れ情報検出手段により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する揺れ防止手段と
を備えたことを特徴とするカメラ装置。
【請求項2】
撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された相前後する画像間において前記複数の被写体の各々の移動量を個別に検出する個別移動量検出手段を更に備え、
前記特定手段は、前記個別移動量検出手段によって検出された前記複数の被写体の各々の移動量に基づき主要被写体を特定することを特徴とする請求項1記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記特定手段は、前記複数の被写体のうちで前記個別移動量検出手段によって検出された移動量が最も小さい被写体部分に相当する領域を前記主要被写体として特定することを特徴とする請求項2記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記揺れ防止手段は、撮影光軸と垂直な平面上での前記第1の撮像素子の位置を前記揺れ情報に基づき補正することによって、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカメラ装置。
【請求項5】
第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置において、
記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子に複数回の撮像動作を行わせる工程と、
前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する工程と、
撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記主要被写体を特定する工程により特定された前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する工程と、
前記露光時間内に、前記揺れ情報を検出する工程により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する工程と
を含むことを特徴とする撮影方法。
【請求項6】
第1の撮像素子により撮像した複数の被写体を含む画像を記録するカメラ装置が有するコンピュータに、
記録用の被写体画像の生成に向けた撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記第1の撮像素子が撮像対象とする被写体を撮像する第2の撮像素子に複数回の撮像動作を行わせる処理と、
前記画像に含まれる複数の被写体の中から主要被写体を特定する処理と、
前記露光時間内に、前記第2の撮像素子の複数回の撮像動作により撮像された画像間における、前記主要被写体の移動量及び移動方向を含む揺れ情報を検出する処理と、
撮影時における前記第1の撮像素子の露光時間内に、前記揺れ情報を検出する処理により検出された揺れ情報に基づき前記第1の撮像素子に対する光学像の結像位置を補正し、前記第1の撮像素子の露光面における前記主要被写体の揺れを防止する処理と
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110754(P2013−110754A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−5930(P2013−5930)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−37260(P2009−37260)の分割
【原出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】