説明

カメラ

【課題】露光時に動作するシャッタとは別に、開閉可能な保護部を備え、撮像素子の表面や、光学部材の表面等に付着した異物を除去できるカメラを提供する。
【解決手段】シャッタユニット3と光学ローパスフィルタ6との間に開閉可能に設けられた保護シャッタ2に清掃部4を設ける。保護シャッタ2が開閉動作を行うと、清掃部4が光学ローパスフィルタ6の表面に接触しながら移動して、光学ローパスフィルタ6の表面に付着した異物の除去を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子や光学ローパスフィルタ等、撮影光が通過する部分に付着した異物を除去することが可能であり、レンズ交換可能なカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像素子を用いたデジタルカメラでは、レンズ交換時に進入する塵埃や、部品の摩耗により発生する塵埃等の異物が、撮像素子の表面や、光学ローパスフィルタ及び赤外カットフィルタ等の光学部材の表面等に付着し、撮影画像中に写り込んでしまうという問題があった。
レンズ交換時に進入する塵埃を防止するために、露光時に動作するシャッタとは別に、開閉可能な保護シャッタ(保護部)を設ける技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
しかし、特許文献1に記載の保護シャッタは、撮影時には開状態となり、撮像素子や光学ローパスフィルタ等を保護することができない。したがって、ミラーやシャッタ等の動作により発生する塵埃等が撮像素子や光学ローパスフィルタ等に付着することを防止できなかった。
そして、撮像素子や光学ローパスフィルタ等に付着した塵埃等の異物は、手作業によって取り除く必要があった。
【特許文献1】特開2005−266152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、露光時に動作するシャッタとは別に、開閉可能な保護部を備え、撮像素子の表面や、光学部材の表面等に付着した異物を除去できるカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、撮像素子(5)と、光学系(9)が着脱可能に装着される開口部(10)と、前記撮像素子よりも光路の前記開口部側に設けられ、前記撮像素子を前記開口部側の空間から遮断する開閉可能な保護部(2)と、前記保護部の前記撮像素子側に設けられ、前記撮像素子の表面、又は、前記撮像素子よりも光路の前記開口部側に設けられた被写体光が通過する透光部材(6)の表面に付着した異物の除去を行う清掃部(4)と、を備えるカメラである。
請求項2の発明は、請求項1に記載のカメラにおいて、前記撮像素子(5)による撮影時に開閉動作を行うシャッタ(3)を備え、前記保護部(2)は、前記撮像素子と前記シャッタとに挟まれる位置に配置されていること、を特徴とするカメラである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のカメラにおいて、前記保護部(2)は、前記光学系(9)を取り外す動作に連動して閉じること、を特徴とするカメラである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記保護部(2)の開閉を操作する操作部材(1)を備えること、を特徴とするカメラである。
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記保護部(2)を駆動する駆動部を有し、前記駆動部は、主電源が投入されたときに前記保護部を駆動すること、を特徴とするカメラである。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記清掃部(4)は、前記保護部(2)の開動作と閉動作との少なくとも一方において、前記撮像素子(5)の表面、又は、前記透光部材(6)の表面の清掃を行うこと、を特徴とするカメラである。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、前記清掃部(4)は、前記保護部(2)の開動作時、及び/又は、閉動作時に、前記撮像素子(5)の表面の全面、又は、前記透光部材(6)の表面の全面を一方向に移動しながら清掃を行うこと、を特徴とするカメラである。
なお、符号を付した構成は適宜改良してもよい。また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよく、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らない。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、露光時に動作するシャッタとは別に、開閉可能な保護部を備えたカメラにおいて、撮像素子の表面や、光学部材の表面等に付着した異物を除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施の形態について、更に詳しく説明する。
【0008】
(実施形態)
図1は、本実施形態のカメラから交換レンズを取り外した状態を示す図である。図1(a)は、撮像素子の中心を通る断面図を示し、図1(b)は、保護シャッタを撮像素子側から見た図である。
図2は、本実施形態のカメラに交換レンズを取り付けた状態を示す図である。図2(a)及び図2(b)は、それぞれ図1(a)及び図1(b)と同様に示した図となっている。
本実施形態のカメラは、マウント開口部10に対して交換レンズ9(図2参照)が着脱自在な一眼レフカメラであり、操作レバー1,保護シャッタ2,シャッタユニット3,清掃部4,撮像素子5,光学ローパスフィルタ6,ミラー7,ファインダ光学系8を備えている。
操作レバー1は、後述の保護シャッタ2を開閉させるときに使用する操作部材である。この操作レバー1を撮影者が手動で操作することにより、保護シャッタ2を任意のタイミングで開閉させることができる。
【0009】
保護シャッタ2は、シャッタユニット3と光学ローパスフィルタ6との間に設けられており、4枚の長方形の板状部材が互いに係合しており、図1に示す閉じた状態と、図2に示す開いた状態との間を移行するように移動可能である。保護シャッタ2は、不図示のアクチュエータを含む駆動機構によって開閉可能となっており、操作レバー1を操作したときには、不図示の制御部に駆動機構が制御されて開閉動作を行う。また、図1に示すように交換レンズ9を取り外した状態では、保護シャッタ2は、強制的に閉じた状態となる。
保護シャッタ2は、撮影動作中の露光時のみに開閉動作を行う従来から知られているシャッタユニット3とは異なり、高速駆動特性は必要とされない。それゆえ、シャッタユニット3よりも密閉性の高い構造とすることが可能であり、本実施形態の保護シャッタ2は、光学ローパスフィルタ6の設けられた空間を密閉することができるように形成されている。
よって、露光制御用のシャッタユニット3に加えて保護シャッタ2を設けることにより、シャッタユニット3のみでは防ぐことができないような微細な塵埃が光学ローパスフィルタ6に到達することを防止できる。
【0010】
清掃部4は、保護シャッタ2の光学ローパスフィルタ6側に設けられ、保護シャッタ2の開閉動作時に光学ローパスフィルタ6の表面に付着した異物の除去を行う部分である。清掃部4は、例えば、微細な起毛処理を施したり、弱い粘着性を有した部材を貼付けたりして、清掃動作時に光学ローパスフィルタ6の表面に接触して、光学ローパスフィルタ6の表面に付着した塵埃等を除去可能になっている。また、本実施形態の清掃部4は、光学ローパスフィルタ6の表面に帯電した静電気、及び、光学ローパスフィルタ6の表面に付着した塵埃等に帯電した静電気を除電する作用を有している。さらに、本実施形態の清掃部4は、光学ローパスフィルタ6の表面に接触して移動しても、光学ローパスフィルタ6の表面を傷つけることのないような表面処理が行われている。
【0011】
なお、清掃部4は、保護シャッタ2の開動作時、及び、閉動作時に、光学ローパスフィルタ6の表面の全面を一方向に移動しながら清掃を行うことができるように、保護シャッタ6の4枚の部材のうち、最も光学ローパスフィルタ6側にあって、かつ、最も移動量の大きい部材に設けられている。
また、保護シャッタ2が開状態にあるときに、清掃部4が位置する付近には、清掃部4に付着した塵埃等が清掃部4から脱落したときに、その脱落した塵埃等が飛散しないように保持する塵埃保持部(不図示)が設けられている。本実施形態の塵埃保持部は、粘着材が塗布されており、塵埃を粘着材により保持するようになっている。なお、粘着に限らず、静電気を利用して吸着する等してもよい。
【0012】
シャッタユニット3は、ミラー7と保護シャッタ2との間に設けられたフォーカルプレンシャッタであり、撮影動作時に開閉を行い、撮像素子5に到達する撮影光の露光時間を決める。
撮像素子5は、光学ローパスフィルタ6を通過した撮影光が撮像面に結像され、その像の情報を電気信号に置き換える素子である。撮像素子5により得られた画像データには、不図示の処理部によりデジタルデータ化や、必要な画像処理等が行われ、不図示の記憶部に記憶される。
【0013】
光学ローパスフィルタ6は、撮影光が通過する光路中にあって、撮像素子5よりも光路の被写体側に設けられ、被写体光が通過する透光部材である。光学ローパスフィルタ6を通過させることにより、撮像素子5に設けられたカラーフィルタに起因する色モアレを防止している。また、光学ローパスフィルタ6内には、不要な赤外領域の光を低減する赤外カットフィルタが重ねて設けられている。
ミラー7は、交換レンズ9に設けられた不図示の撮影光学系を通過した撮影光を反射してファインダ光学系8方向へ偏向する部材である。ミラー7は、撮影前の構図確認中は、撮影用の光路中にあって、撮影光をファインダ光学系へ導き、撮影時には、カメラ上方(図1(a)中の上方)等に退避し、撮影光が撮像素子5方向へ進むようにする。
ファインダ光学系8は、不図示のスクリーン、ペンタミラー又はペンタプリズム、接眼光学系等を備え、被写体像を観察可能とするファインダを形成する光学系である。
【0014】
次に、保護シャッタ2の開閉動作を利用した光学ローパスフィルタ6の表面の清掃動作について説明する。
上述したように、保護シャッタ2には、清掃部4が設けられており、保護シャッタ2を開閉動作させるときには、清掃部4が光学ローパスフィルタ6の表面に接触しながら移動し、光学ローパスフィルタ6の表面の清掃が行われる。この光学ローパスフィルタ6の表面の清掃動作、すなわち、保護シャッタ2の開閉動作は、次のタイミングで行われる。
【0015】
(1)カメラの電源投入時
カメラの電源が投入される前は、長時間放置されている可能性もあり、また、これから撮影を行うという場合であることから、このタイミングで清掃を行う。
【0016】
(2)交換レンズ9の着脱時
交換レンズ9を取り外したときには、強制的に保護シャッタ2が閉じて、光学ローパスフィルタ6の表面に異物が付着することを防止する。また、交換レンズを装着したときには、閉じていた保護シャッタ2が開放される。
【0017】
(3)撮影者が操作レバー1を操作したとき
このときには、撮影者が清掃動作を行いたいと判断したときであるから、清掃動作を行う。なお、交換レンズ9を取り外しているときには、操作レバー1を操作したとしても、保護シャッタ2は、閉じた状態を維持する。
【0018】
(4)あらかじめ設定しておいた回数の撮影を行ったとき
交換レンズ9の着脱等を行わなくても、多数の撮影を行うと、シャッタユニット3やミラー7等の動作によって発生する異物が光学ローパスフィルタ6の表面に付着するおそれがあるので、設定しておいた回数の撮影が行われたら、清掃動作を行う。なお、この動作は、自動的に清掃を行うと、撮影を中断してしまう場合もあるので、清掃を促すような表示を行うようにしてもよい。
なお、本実施形態では、上述の4つのタイミングで清掃動作(保護シャッタ2の開閉動作)を行うこととしたが、これらの中から適宜選択したタイミングのみで清掃動作を行うようにしてもよい。
【0019】
以上説明したように、本実施形態によれば、保護シャッタ2を設けたことにより、光学ローパスフィルタ6の表面に異物が付着する確率を低くすることができ、また、保護シャッタ2に清掃部4を設けたことにより、仮に光学ローパスフィルタ6の表面に異物が付着しても、清掃部4により異物の除去を行える。よって、常に異物の影響を受けない鮮明な画像を得ることができる。
【0020】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施形態において、清掃部が光学ローパスフィルタに接触して清掃を行う例を示したが、これに限らず、例えば、清掃部に静電気を帯電させる静電気付与部を設けて、清掃部に帯電した静電気により非接触で塵埃を吸着してもよい。
【0021】
(2)本実施形態において、光学ローパスフィルタの表面を清掃する例を示したが、これに限らず、撮像素子の表面を直接清掃してもよいし、光学ローパスフィルタ以外の透光部材(撮像素子よりも光路の被写体側に設けられた被写体光が通過する部材)の表面を清掃するものでもよい。
【0022】
(3)本実施形態において、清掃部は、保護シャッタの開動作と閉動作の両方において光学ローパスフィルタの表面の清掃を行う例を示したが、これに限らず、例えば、保護シャッタの開動作と閉動作との少なくとも一方において、撮像素子の表面、又は、光学ローパスフィルタの表面の清掃を行うようにしてもよい。
【0023】
(4)本実施形態において、保護シャッタ2は、4枚の板状の部材が平行に移動(いわゆる縦走り)する形態(フォーカルプレンシャッタと同様な形態)である例を示したが、これに限らず、例えば、光学ローパスフィルタの表面を覆うことができる大きさに形成された一枚の幕状の部材としてもよいし、上下方向、又は、左右方向に分かれて開閉動作する形態でもよいし、撮像素子の各辺に平行又は直交する方向意外の斜め方向に移動したり、回転移動したりする形態であってもよい。
【0024】
(5)本実施形態において、保護シャッタ2は、アクチュエータを含む駆動機構により駆動される例を示したが、これに限らず、例えば、撮影者の手動操作等を駆動力として利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のカメラから交換レンズを取り外した状態を示す図である。
【図2】本実施形態のカメラに交換レンズを取り付けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1:操作レバー、2:保護シャッタ、3:シャッタユニット、4:清掃部、5:撮像素子、6:光学ローパスフィルタ、7:ミラー、8:ファインダ光学系、9:交換レンズ、10:マウント開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
光学系が着脱可能に装着される開口部と、
前記撮像素子よりも光路の前記開口部側に設けられ、前記撮像素子を前記開口部側の空間から遮断する開閉可能な保護部と、
前記保護部の前記撮像素子側に設けられ、前記撮像素子の表面、又は、前記撮像素子よりも光路の前記開口部側に設けられた被写体光が通過する透光部材の表面に付着した異物の除去を行う清掃部と、
を備えるカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記撮像素子による撮影時に開閉動作を行うシャッタを備え、
前記保護部は、前記撮像素子と前記シャッタとに挟まれる位置に配置されていること、
を特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のカメラにおいて、
前記保護部は、前記光学系を取り外す動作に連動して閉じること、
を特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記保護部の開閉を操作する操作部材を備えること、
を特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記保護部を駆動する駆動部を有し、
前記駆動部は、主電源が投入されたときに前記保護部を駆動すること、
を特徴とするカメラ。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記清掃部は、前記保護部の開動作と閉動作との少なくとも一方において、
前記撮像素子の表面、又は、前記透光部材の表面の清掃を行うこと、
を特徴とするカメラ。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のカメラにおいて、
前記清掃部は、前記保護部の開動作時、及び/又は、閉動作時に、前記撮像素子の表面の全面、又は、前記透光部材の表面の全面を一方向に移動しながら清掃を行うこと、
を特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−65020(P2008−65020A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242435(P2006−242435)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】