説明

カラス防止用ゴミ袋

【課題】 従来のカラス防止用ゴミ袋よりもカラス忌避効果の高いゴミ袋の提供。
【解決手段】 全光線透過率が20%未満である合成樹脂フィルムからなることを特徴とするカラス防止用ゴミ袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたカラス忌避効果を備えた、カラスによるゴミ散乱を防止するためのカラス防止用ゴミ袋に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、家庭から出される生ゴミの多くは、当該生ゴミをビニールに入れゴミ収集場所に置く方式で処理されている。この際、ゴミ集荷回収車が当該ゴミ収集場所まで回収に来る間における、カラスによるゴミの食い散らしが社会問題となっている。即ち、家庭のゴミ収集場所や公園のゴミ収集場所等にゴミの入ったビニール袋を置いておくと、カラスがこのゴミ袋を食いちぎって中のものを道いっぱいに撒き散らし、この後かたづけに難儀していることは周知のことである。この対策として、地方によってはカラスが出没しない夜間にゴミの収集を行っている所さえある。特に、腐敗物が散乱したり、ガラスなどの危険物が散乱したりすることは不衛生のみならず、幼児に対して極めて危険そのものである。このような問題の下、新たなカラス対策として、例えば、特許文献1には、カラスが黄色系の色を忌避する傾向にあることに着目し、色が社団法人日本塗料工業会塗料用標準色発行見本帳における黄色系(マンセル値2.5Y8/14,5YR7/12,7.5YR7/14,10YR7.5/14の近似色)の色で製造されたカラス対策用ゴミ袋が提案されている。同様に、特許文献2にも、全光線透過率が20%以上であって300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が50%以下である鳥害防止用合成樹脂フィルムが提案されている。
【特許文献1】特開2005−65677
【特許文献2】特開2005−200147
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、前記従来のカラス防止用ゴミ袋は、これらの特許文献に記載されているようにカラス忌避にある程度の効果が認められるが、その効果は必ずしも十分でないことが、本発明者らの実験により確認済みである。そこで、本発明は、前記従来のカラス防止用ゴミ袋よりもカラス忌避効果の高いゴミ袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意研究した結果、前記特許文献2では不適とされた全光線透過率の範囲に設定すると、実はカラス忌避効果が顕著に高まることを見出し、本発明(1)〜(3)を完成させたものである。
【0005】
即ち、本発明(1)は、全光線透過率が20%未満である合成樹脂フィルムからなることを特徴とするカラス防止用ゴミ袋である。
【0006】
本発明(2)は、300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が15%以下である、前記発明(1)のカラス防止用ゴミ袋である。
【0007】
本発明(3)は、合成樹脂フィルムが、ポリエチレン樹脂又はポリエチレン樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物であり、当該合成樹脂フィルムに光散乱性のある無機粒子及び有機粒子から選択される少なくとも一種の粒子とを、混合・成形することにより得られたものである、前記発明(1)又は(2)のカラス防止用ゴミ袋である。ここで、光散乱性のある無機粒子及び有機粒子の例としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカ、タルク、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、アルミナ、リン酸カルシウム、マイカ、澱分、木質分、樹脂ビーズ等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来のカラス防止用ゴミ袋と比較し、より高いカラス忌避効果を達成できる。尚、本発明によりカラスの高い忌避効果を奏する理由は必ずしも定かでないが、これまで注目されてきた色相よりもむしろ、ゴミ袋内の生ゴミがカラスに視認できない程度に不透明であることの方が実は重要であると推定される。特に、本発明(3)のように所定の樹脂の不透明性の高い種類及び樹脂と無機粒子とを好適には所定量比で配合した場合には、カラスにとってはゴミ袋内部を視認できず、他方、人にとってはゴミ袋内部を視認できる、という両者にとって好適な光学的性質のゴミ袋を得ることができる。即ち、カラス忌避効果が担保できると共に、自治体が要求している透明性も満足したゴミ袋を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、全光線透過率が20%未満である合成樹脂フィルムからなることを特徴とするカラス防止用ゴミ袋である。尚、下限値は特に限定されないが、人が内部のゴミを視認できる状態を担保するためには5%以上であることが好適である。また、より好適な範囲は、5〜15%である。ここで、全光線透過率はJIS K7105に準じて測定したものである。更に、前記全光線透過率に基づくカラス忌避の効果を更に引き上げるために、300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が15%以下であることが好適である。以下、当該フィルムを構成する各成分を詳述する。
【0010】
まず、本発明の合成樹脂フィルムに使用する合成樹脂としては、フィルムの成形性、柔軟性、取り扱い性、収納物の収納性等を考慮すると熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂等のスチレン系樹脂、PMMA、PMS等のアクリル系樹脂に限らず、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、更にはポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂等が用いることができる。中でも低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、また数種の樹脂を組み合わせて混合して用いてもよい。
【0011】
次に、本発明における光透過性に関する各パラメータ(全光線透過率、300nm〜600nmの波長域の光線透過率)を規定範囲にする際に使用される顔料、染料又は添加剤としては、例えば、黄色酸化鉄、チタン黄等の酸化チタン、黄色有機顔料、例えば、イソインドリン系、ジスアゾ系、モノアゾレーキ系、オレンジ系有機顔料、例えば、ピラゾロン系、赤系有機顔料、例えば、ナフトール系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾレーキ系、アシッドイエロー2、ダイレクトレッド28等の染料等を挙げることができ、これらを単独又は二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
ここで、特に全光線透過率を20%未満にするに際しては、樹脂としては、結晶が高く白濁する種類、混合性の悪い樹脂の混合、例えばポリエチレンとポリチレンテレフタレートの混合が好適であり、更に、当該樹脂と光散乱性物質(光拡散物質)、例えば、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、シリカ、タルク、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、アルミナ、リン酸カルシウム、マイカ、澱分、木質分、樹脂ビーズ等よりから選択される少なくとも一種の無機粒子又は有機粒子とを組み合わせて用いることがより好適である。尚、光散乱性物質は、多孔質や中空多孔質等の形態であってもよく、物質の平均粒子径は、特に限定されないが、0.05〜30μmが好ましく、0.1〜10μmの範囲にあるものがより好ましい。形状は、粒子である必要はなく繊維状であってもよい。また、光散乱性物質の含有量は、全重量を基準として、好適には0.1〜40重量%であり、より好適には0.1〜20重量%である。
【0013】
更には、カラス忌避剤、例えば、唐辛子の成分であるカプサイシンやわさび等を添加してもよい。この場合、フィルムを溶融成形する際に練りこんだり、フィルムの製膜後、カラス忌避剤含有液でコーティングする方法によりフィルムに適用する。
【0014】
次に、本発明に係るゴミ袋の製造方法を説明する。本発明のゴミ袋は、上記合成樹脂フィルムを使用して公知の方法で製造可能である。ここで、合成樹脂フィルムの成形方法も特に限定されず、インフレーション法、Tダイキャスト法、カレンダー成形法等の公知の方法が可能である。また、当該合成樹脂フィルムは、単層に限らず多層構造とすることも可能である。更にまた、上述した光線透過特性を満足する範囲で、不織布や織布等と貼り合わせたものも本発明の範囲内である。なお、合成樹脂フィルムの厚みは、10〜100μm程度、好ましくは10〜80μm程度である。
【実施例】
【0015】
以下、本発明に係る実施例を説明する。尚、本発明は、当該実施例により限定されるものではない。
【0016】
製造例1
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のペレット100重量部に対し、酸化チタン(平均粒径:0.4μm)を1重量部とイソインドリン黄(平均粒径:0.3μm)を0.1重量部添加し、ヘンシェルミキサーで約30秒間均一に混合した後、30mmφ二軸混練押出機を用い、190℃にて混練し、ポリエチレン樹脂組成物のペレットを得た。次いで、混合したペレットを180℃において、直径25cm、厚み30ミクロンのインフレーションフィルムに成型した後、長さ40cmに切断し、下端をヒートシールして本製造例に係るゴミ袋を得た。ここで、図1は、当該フィルムの光学特性を示したチャートである。当該図より、当該フィルムの全光透過率は11.3%であり、300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が7.7%であった。
【0017】
製造例2
樹脂として30重量%のLLDPEと70重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)に対して、イソインドリン黄(平均粒径:0.3μm)を0.1重量部添加した以外は、実施例1と同様の手法に基づき(処理温度を適宜変更)、ゴミ袋を得た。ここで、図2は、当該フィルムの光学特性を示したチャートである。当該図より、当該フィルムの全光透過率は13.3%であり、300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が8.1%であった。
【0018】
試験例
製造例1及び製造例2に係るゴミ袋について、特許文献2での試験方法である「カラス視覚試験」に従い、カラスによる食い付き試験を行った。その結果、いずれのゴミ袋についても、大部分が6番目及び7番目に選択された。尚、いずれのゴミ袋についても外部から内容物が視認可能であった。このことから、ゴミ袋内の生ゴミがカラスに視認できない程度に不透明であることがカラス忌避に有効であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1に係る合成樹脂フィルムの光線透過特性を示したチャートである。
【図2】図2は、実施例2に係る合成樹脂フィルムの光線透過特性を示したチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全光線透過率が20%未満である合成樹脂フィルムからなることを特徴とするカラス防止用ゴミ袋。
【請求項2】
300nm〜600nmの波長域の光線透過率の平均値が15%以下である、請求項1記載のカラス防止用ゴミ袋。
【請求項3】
合成樹脂フィルムが、ポリエチレン樹脂又はポリエチレン樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物であり、当該合成樹脂フィルムに光散乱性のある無機粒子及び有機粒子から選択される少なくとも一種の粒子とを、混合・成形することにより得られたものである、請求項1又は2記載のカラス防止用ゴミ袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−210786(P2007−210786A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35257(P2006−35257)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(501272731)株式会社ティー・ティー・シー (7)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】