説明

カラムアッセンブリ、流体処理カラム及びその特性測定方法

【課題】カラムを複数に分割可能とすることにより、層別のサンプリングが可能となるカラムアッセンブリ及び流体処理カラムと、この流体処理カラムの特性測定方法を提供する。
【解決手段】複数のユニットカラム2が直列に分離可能に連結されてなり、内部に充填材10が充填されるカラムアッセンブリ1であって、流体の流通口8aを有したエンド部材8が両端に着脱可能に装着されているカラムアッセンブリ1。このカラムアッセンブリ1に充填材10を充填した流体処理カラム。この流体処理カラムに流体を流通させた後、ユニットカラム2同士を分離し、ユニットカラム内の充填材10の分析を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短いカラムを複数個連結したカラムアッセンブリに係り、特に液体クロマトカラム、イオン交換カラム、吸着カラム、濾過カラムなどのカラムに用いるのに好適なカラムアッセンブリに関する。また、本発明は、このカラムアッセンブリを用いた流体処理カラムと、この流体処理カラムの特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着、イオン交換、濾過などの分野では、カラム試験機を作成し、処理条件の最適化を行ったり実機の効果確認を行ったりすることが多い。その際に、例えばイオン交換の場合、特定条件において通水又は再生を行った際に、イオン交換樹脂層のどこまでイオン交換が進んでおり、イオン交換帯の形状がシャープなのかブロードなのかを分析することはイオン交換性能に直結するため非常に重要である。
【0003】
特許文献1の実施例においては、ガラス製円筒カラムにイオン交換樹脂を充填し、インジウムを飽和吸着させた後、樹脂中のインジウム吸着量を分析することが記載されている。しかし、この単純なガラス製円筒カラムを用いた試験では、インジウムの飽和吸着量を得ることは可能であるが、カラム内のイオン交換樹脂にどのようにインジウムが吸着していくか、すなわちイオン交換速度的な解析を行うことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−53370号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カラムの一端から他端にかけて層別に充填材をサンプリングすることが可能な流体処理カラム及びその特性測定方法と、そのためのカラムアッセンブリとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のカラムアッセンブリは、複数のユニットカラムが直列に分離可能に連結されてなり、内部に充填材が充填されるカラムアッセンブリであって、流体の流通口を有したエンド部材が両端に着脱可能に装着されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2のカラムアッセンブリは、請求項1において、前記ユニットカラムの端部にフランジが設けられており、隣接する各ユニットカラムのフランジ同士を重ね合わせ、着脱可能な結合具で結合することによりユニットカラム同士が分離可能に連結されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3のカラムアッセンブリは、請求項1又は2において、前記ユニットカラムの長さがユニットカラムの直径(内径)の0.5〜5倍であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の流体処理カラムは、請求項1ないし3のいずれか1項のカラムアッセンブリと、該カラムアッセンブリ内に充填された充填材とを有し、流体が一端側から他端側に流通されるものである。
【0010】
請求項5の流体処理カラムの特性測定方法は、請求項4の流体処理カラムに流体を流通させた後、ユニットカラム同士を分離し、ユニットカラム内の充填材の分析を行うことを特徴とするものである。
【0011】
請求項6の流体処理カラムの特性測定方法は、請求項5において、ユニットカラム同士を分離するに際し、ユニットカラム同士の連結を解除した後、一方のユニットカラムをカラムアッセンブリの軸心線に対して傾動させてユニットカラム同士の間に隙間を生じさせ、この隙間からプレートを挿入し、カラムアッセンブリ内の充填材をユニットカラム同士の間で分断した後、ユニットカラム同士を分離することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラムを複数に分割可能としたことにより、層別のサンプリングが可能となり、吸着・イオン交換の場合には、吸着・イオン交換帯の把握ができ、砂濾過の場合であれば、目詰まりがどこまで進んでいるか、生物濾過の場合であれば、入口から出口にかけてどのような生物相となっているか、などの分析にも活用可能なカラムアッセンブリ及び流体処理カラムと、この流体処理カラムの特性測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係るカラムアッセンブリの断面図である。
【図2】図1のII部分の拡大図である。
【図3】ユニットカラムの分離方法を説明する断面図である。
【図4】結合具の平面図である。
【図5】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。この実施の形態では、カラムアッセンブリ1は軸心方向を鉛直方向としている。
【0015】
図1は実施の形態に係るカラムアッセンブリ1のカラム軸心線方向の断面図であり、複数個のユニットカラム2が結合具3を介して連結されている。上側のユニットカラム2の下端部及び下側のユニットカラム2の上端部にはフランジ2aが設けられており、Oリング4を介在させてフランジ2a,2aを重ね合わせ、結合具3によってフランジ2a,2a同士を連結している。この実施の形態では、フランジ2aは、外周ほど肉薄となるテーパ形断面形状である。
【0016】
結合具3は、このテーパ面に係合するV溝状内周面を有している。この結合具3は、第4図の通り、1対の半円弧形状のブロック3a,3bの一端同士をヒンジピン3cで連結し、他端側をボルト3dで締め付けるようにしたものであるが、結合具3はこれ以外の各種構造のものを用いることができる。例えば、一方のブロック3aは、四分円弧状の2個の短ブロックをヒンジピンで連結したものであってもよい。
【0017】
ユニットカラム2の連結数は充填材量に応じて適宜増減させることができ、2個以上であればよく、特に限定されないが、通常は2〜20個程度とされる。2個のユニットカラム2のみを連結するときは、一端にフランジ2aを有し、他端側の外周面に雄ネジ2bが刻設されたものを用いる。3個以上のユニットカラムを連結するときには、上記の雄ネジ2b付きのユニットカラム2,2の間に、両端にフランジ2aが設けられた両フランジ型のユニットカラムを配置し、隣接するユニットカラム同士を結合具3で連結する。
【0018】
ユニットカラム2の雄ネジ2bに対し、エンド部材としてのキャップ8の雌ネジを螺合させることにより、ユニットカラム2の端部にキャップ8が装着される。このキャップ8には、流体の流通口8aが設けられている。キャップ8とユニットカラム2の端面との間には、目皿5、円環形の押えリングプレート6及びOリング7が介在されている。
【0019】
各ユニットカラム2の長さは、ユニットカラム2の直径(内径)の0.5〜5倍特に1〜3倍程度が好適である。
【0020】
このように複数のユニットカラムが直列に連結されたカラムアッセンブリ1内に充填材10(第2図、第3図)が充填されることにより流体処理カラムが構成される。充填材としては、粒状のイオン交換樹脂、キレート樹脂、ゼオライト、ケイソウ土などの各種吸着材又は濾材、イオン交換繊維などの繊維体が例示される。なお、充填材を充填するに際しては、一方のキャップを取り外して充填してもよく、ユニットカラム間を分離してその開口部から充填してもよい。
【0021】
この流体処理カラムに被処理流体を一方の流通口8aから他方の流通口8aに流通させて処理を行う。被処理流体は液体、気体のいずれでもよい。
【0022】
所定時間又は所定量の流体を流通させた後、流体の流通を停止し、各ユニットカラム2を分離し、各ユニットカラム2内部の充填材の状態を測定ないし分析し、特性評価を行う。これにより、たとえば、イオン交換体カラムや吸着材カラムの場合、被処理水の通水後であれば、前段からどこまでどのように吸着が進んでいるかが分り、また、再生剤の通液後であれば、後段からどこまでどのように再生が進んでいるかが分る。
【0023】
また、砂濾過の場合であれば、目詰まりがどこまで進んでいるかが分る。生物濾過の場合であれば、入口から出口にかけてどのような生物相となっているかなどの分析を行うこともできる。
【0024】
なお、ユニットカラム2同士を分離するには、第3図のように、まず結合具3を取り外した後、上側のユニットカラム2を少し傾けてユニットカラム2同士の間に隙間をあけ、この隙間から薄いプレート11を差し込み、充填材10を上下に分断するように該プレート11を押し込み、その後、ユニットカラム2,2を分離するのが好ましい。このようにすれば、上側のユニットカラム2内の充填材10と下側のユニットカラム2内の充填材とを、殆ど外部に漏出させることなく、正確にユニットカラム2同士の継目に沿って分断することができる。
【0025】
充填材10が繊維である場合、プレート11の先端をナイフエッジとし、繊維状充填材を切り分けながら押し込み得るようにしてもよい。
【実施例】
【0026】
新品の陰イオン交換樹脂は、通常Cl型(イオン交換基にClイオンが吸着されている状態)であるため、あらかじめ、再生(イオン交換基にOHイオンを吸着させる工程)を行う必要がある。
【0027】
そこで、新品の陰イオン交換樹脂を、ユニットカラム(内径40mm、長さ60mm。アクリル樹脂製)を12本連結した第1図〜第4図に示すカラムアッセンブリに充填し、再生薬品(2%NaOH)を所定時間、上向流にて通水した。その後、第3図の方法によって各ユニットカラム2に分離し、イオン交換樹脂のどれだけがCl型からOH型に置換しているかを調べた。その他の実験条件は次の通りである。
再生LV:10m/h
再生時間:15min
再生レベル:70g−NaOH/L−R
【0028】
この結果を第5図に示す。第5図の横軸のzは、カラムアッセンブリの全長に対する、測定箇所のカラムアッセンブリ下端部からの距離の比を表わす。第5図の通り、本発明のカラムアッセンブリ及び流体処理カラムを用いることにより、どれだけCl型からOH型に置換しているか簡単に測定できる。
【符号の説明】
【0029】
1 カラムアッセンブリ
2 ユニットカラム
3 結合具
4,7 Oリング
5 目皿
10 充填材
11 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニットカラムが直列に分離可能に連結されてなり、内部に充填材が充填されるカラムアッセンブリであって、
流体の流通口を有したエンド部材が両端に着脱可能に装着されていることを特徴とするカラムアッセンブリ。
【請求項2】
請求項1において、前記ユニットカラムの端部にフランジが設けられており、
隣接する各ユニットカラムのフランジ同士を重ね合わせ、着脱可能な結合具で結合することによりユニットカラム同士が分離可能に連結されていることを特徴とするカラムアッセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ユニットカラムの長さがユニットカラムの直径(内径)の0.5〜5倍であることを特徴とするカラムアッセンブリ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項のカラムアッセンブリと、該カラムアッセンブリ内に充填された充填材とを有し、流体が一端側から他端側に流通される流体処理カラム。
【請求項5】
請求項4の流体処理カラムに流体を流通させた後、ユニットカラム同士を分離し、ユニットカラム内の充填材の分析を行うことを特徴とする流体処理カラムの特性測定方法。
【請求項6】
請求項5において、ユニットカラム同士を分離するに際し、ユニットカラム同士の連結を解除した後、一方のユニットカラムをカラムアッセンブリの軸心線に対して傾動させてユニットカラム同士の間に隙間を生じさせ、
この隙間からプレートを挿入し、カラムアッセンブリ内の充填材をユニットカラム同士の間で分断した後、ユニットカラム同士を分離することを特徴とする流体処理カラムの特性測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−202765(P2012−202765A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66276(P2011−66276)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)