カラムリアクター及びその製造方法
【課題】強度的に優れ、カラムリアクターとしての機能を安定して発揮できるカラムリアクター及びその製造方法を提供すること目的としている。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入し、成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させて、得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得たのち、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させ、その後、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させて、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されているカラムリアクターを得るようにした。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入し、成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させて、得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得たのち、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させ、その後、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させて、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されているカラムリアクターを得るようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品分野や小規模合成などの広範囲な有機合成反応分野に好適なカラムリアクター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造の連続した骨格と空隙とを有する多孔質体は一般的にポリマーモノリスやモノリス型多孔体と呼ばれており、主に高速液体クロマトグラフィー分野でカラムと呼ばれる分離媒体として用いられている。このような分離媒体としては、無機材料から形成されるシリカゲルと、有機材料から形成される有機ポリマーに大別される。シリカゲルの分離媒体は、溶媒による材料の膨潤が少なく、物質移動による拡散の影響が小さいことに特徴があるため、主に高性能分離媒体として用いられている。一方、有機ポリマーの分離媒体は、酸・アルカリ等のpH耐久性に優れ、シリカで起こる生体系試料の非特異的吸着がないことに特徴があるため、環境分析や生体試料の分離に好適に用いられている。これにより、有機ポリマーの三次元網目構造の研究・開発は様々なされており、また各種の有機ポリマーをクロマトグラフィーの分離媒体として用いることも提案されており、実用化が検討されている。
【0003】
カラムリアクターは、小規模の有機合成反応を行う上で非常に有利であり、医薬品業界のみならず、フローケミストリーという新しい学術分野においても、その開発が熱望されている。これらの分野に、ポリマーモノリスを用いたカラムリアクターの研究は、創薬を目的にヨーロッパを中心に行われているが、わが国では、あまり研究されていない。
【0004】
非特許文献1では、粒子充填型高速液体クロマトグラフィー用カラムを用いた固定化触媒のリアクター用途について、エナンチオマ的に純粋な化合物の合成、検出システムとの組み合わせや超ミクロ定量分析、触媒特性及び生体触媒の安定性に及ぼす固定化の影響、化学薬品、製剤、臨床及び商品分野におけるプレカラム、ポストカラムまたは分析カラムにおける固定化触媒の反応容器の適用について紹介されているが、従来の高分子粒子充填型カラムを用いた場合、送液の際の溶媒による粒子の膨潤や、高性能化のための微小粒子の使用によるカラム負荷圧の上昇により、カラムリアクターの機能を最大限に発揮できない。
【0005】
ポリマーモノリスの調製方法は特許文献1のように、微粒子の確率的な凝集、接合に基づいて骨格が形成される核生成−成長過程により生成した微粒子凝集型のポリマーモノリスの調製方法や、特許文献2〜5のように、リビングラジカル重合法やエポキシ樹脂の熱硬化重合による三次元網目構造の骨格と連通する空隙を有する多孔体が開示されているが、カラムリアクターとしての効果を高めるための触媒を導入した製造方法やカラムリアクターとしての利用方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平07−501140号公報(特許第3168006号公報)
【特許文献2】国際公開WO2006/073173A1
【特許文献3】国際公開WO2007/083348A1
【特許文献4】国際公開WO2006/126387A1
【特許文献5】国際公開WO2007/043485A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】GIRELLI ANNA MARIA, MATTEI ENRICO, J Chromatogr B, Vol.819, No.1, Page3-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、強度的に優れ、カラムリアクターとしての機能を安定して発揮できるカラムリアクター及びその製造方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のカラムリアクターは、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に記載のカラムリアクターは、上記請求項1のカラムリアクターにおいて、触媒金属が貴金属であることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に記載のカラムリアクターは、上記請求項1または請求項2のカラムリアクターにおいて、触媒金属が、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかであることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項4に記載のカラムリアクターの製造方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項5に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4のカラムリアクターの製造方法において、金属補足能を有する化合物がトリアジンチオール誘導体であることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項6に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4または請求項5のカラムリアクターの製造方法において、触媒金属イオンが、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかの元素を含むイオンであることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項7に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4〜請求項6のいずれかのカラムリアクターの製造方法において、成形型がカラムの被覆部となることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるカラムリアクターは、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されているので、反応溶液をカラム内に流すだけで、触媒金属の働きによって、各種の有機合成反応を連続的に安定して行うことができる。
しかも、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスを用いたので、粒子充填型高速液体クロマトグラフィー用カラムに比べ、膨潤の問題も少なく、強度的に優れ、カラムリアクターとしての機能を安定して発揮できる。
【0017】
一方、本発明にかかるカラムリアクターの製造方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備える。
【0018】
すなわち、本発明にかかるカラムリアクターの製造方法は、混合溶媒中に金属補足能を有する化合物を組み込み込んだので、重合によって得られるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、金属補足能を有する化合物が、均一に分散された状態で三次元網目構造をした多孔質体となる。しかも、金属補足能を有する化合物を組み込まない場合に比べ、緻密な骨格構造となり、比表面積の大きな多孔質体とすることができる。金属補足能を有する化合物が化学結合によって組み込まれているので、金属補足能を有する化合物を物理的に組み込む場合に比べ、均一に分散された状態に安定して存在するようになる。
【0019】
そして、上記のようにして得られた金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させるようにしたので、触媒金属粒子がエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に均一分散状態で担持され、安定した触媒能を備えた本発明のカラムリアクターを得ることができる。
また、成形型内で重合反応させて三次元網目構造多孔体を得ることができる、すなわち、閉空間内でも製造することができるので、成形型として閉空間となるカラムの被覆部となるものを用いれば、そのままカラムリアクターとして使用できる。しかも、径も自由に選択できマイクロリアクターとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】三次元網目構造多孔体の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図2】実施例1で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図3】実施例2で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図4】実施例3で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図5】実施例4で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図6】実施例5で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図7】実施例4のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の重合過程中でのポリマーモノリスに含まれる溶媒のIRスペクトルである。
【図8】実施例4のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1のTG測定結果である。
【図9】実施例8で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図10】実施例9で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図11】実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図12】実施例11で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図13】実施例12で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図14】実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2のTG測定結果である。
【図15】実施例14のESCAワイドスキャンスペクトルによるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの表面分析結果である。
【図16】実施例14で得られたPdナノ粒子が骨格表面に担持されたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの断面を走査型電子顕微鏡により五万倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図17】比較例であるPdナノ粒子が骨格表面に担持されていないエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの走査型電子顕微鏡により五万倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図18】実施例15のPd(0)担持前後のTG曲線の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポリマーモノリスは、柱状の有機高分子の三次元分岐網目構造を骨格として有し、且つ骨格間に空隙を有して形成されている多孔体であって、基礎となる構造は、図1に示すように、骨格と空隙(マクロ孔)がお互いに絡み合った三次元的な網目構造を有している。クロマトグラフィーを中心とした分析分野では、これらの形状を有する材料のことを慣用的に「モノリス」といい、有機原料から調製された有機高分子のモノリス型多孔体のことを、ポリマーモノリスと呼ばれることが多い。
【0022】
モノリスは,大きく分類すると、ゾル−ゲル法によって調製されるシリカなどを主にした無機系多孔体と、有機高分子を主にした有機系多孔体に分けることができる。カラムリアクターには、図1に示すような有機高分子を主にした有機系多孔体を用いることが好ましい。有機系多孔体を用いる利点は、安価でかつ調製工程が著しく容易であることであり、さらに、これらの中で、エポキシ樹脂と硬化剤の反応によって調製される熱硬化性樹脂型有機系多孔体は特に原料が安価であり、かつ、調製工程が容易である点が有用である。
【0023】
また、上記ポリマーモノリスの多孔体を形成する骨格内には、メソポアと呼ばれるマクロ孔より小さなサイズの細孔(メソポア)を有しており、これらの構造は三次元網目構造のような連続孔を形成しているだけでなく、一様な貫通孔や骨格を構成している格子間の空隙と見られる構造を有しているように観察されることもある。尚、これらのメソポアは,多孔体の表面積を大きくする為に有効である。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、原料に用いるエポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせ及びポロゲンの使用によって形成することができる。
エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせは、大きく分類すると、芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせに分けることができる。
尚、エポキシ樹脂と硬化剤は、それぞれ1種類又は2種以上混在して使用してもよい。エポキシ樹脂又は硬化剤のいずれか一方でも芳香族系の原料を用いた場合、得られるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの耐熱性が向上する。
【0025】
本発明に使用可能なエポキシ樹脂のうち、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンべ−スなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートなどのトリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂等、複素芳香環を含むエポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族エポキシ樹脂として、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。上記の中でも、好ましくは、分子内にグリシジル基が二つ以上有するエポキシ樹脂であり、特に好ましくは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンである。
【0026】
本発明に使用される硬化剤のうち、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族硬化剤としては、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族アミン、無水フタル酸や無水トリメット酸、無水ピロメット酸などの芳香族酸無水物、フェノール系化合物、フェノール系樹脂、フェノールホルムアルデヒド型ノボラックやフェノールアルキル型ノボラック等のノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ヒドラジド類、トリアジン環などの複素芳香環を有する芳香族アミン、1,1,1',1'−テトラメチル−4,4'−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等の芳香族ポリアミン類及び芳香族ポリアミンヒドラジド類などが挙げられる。また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族硬化剤としては、エチレンジアミンやジエチレントリアミン、4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなどの脂肪族アミン類、アジピン酸ジヒドラジドやセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの脂肪族ヒドラジド類、イソホロンジアミンやメンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンやこれらの変性品などの脂環族ポリアミン類、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)などの脂肪族ポリアミンヒドラジド類、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類やポリアミノアミド類など、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマープロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマーN,N−ジメチルホルムアミド溶液、スピログリコールや2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オールなどのグリコール類、その他アミンアダクト系硬化剤などが挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスのマクロ孔やメソポアの空隙となりえるポロゲンを用いる。エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができ、且つエポキシ樹脂と硬化剤が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶剤をポロゲンとして用いることができ、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどエステル類、又はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。上記の中でも、好ましくは、分子量600以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。分子量600以上のポリエチレングリコール或いはポリプロピレングリコールで室温中において蝋質(半固形)状であっても重合温度においてエポキシ樹脂や硬化剤と相溶し且つ液状であればポロゲンとして使用できる。
【0028】
ここで、上記のポロゲンとしては、重合溶媒に反応誘起相分離性化合物である有機高分子を溶解させて溶液を調製し、反応誘起相分離性化合物を含む重合溶媒をポロゲンとして使用することができる。重合溶媒としては、低分子化合物および有機高分子が溶解する溶媒であれば特に限定されず、リビングラジカル重合に一般的に用いる溶媒を用いればよい。例えば、トルエン等のアルキルベンゼン、クロロベンゼンやジクロロベンゼン等のハロゲン置換ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン(メシチレン)、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、メタノールやエタノール等のアルコール、アセトンやテトラヒドロフラン等のケトン、ベンゼン、水などが挙げられる。
【0029】
反応誘起相分離性化合物である有機高分子としては、重合溶媒に溶解するなど、重合系に均一な状態で加えることができる有機高分子である限り特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリエチレングルコール、ポリエチレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート等のビニル系ポリマー、及び、これらの共重合体等が挙げられる。尚、これらが単独で用いられてもよいし、併用されても構わない。有機高分子を重合溶液に溶解する時、均一な溶液に調製する必要がある。
【0030】
重合系にこのようなポロゲンを加えることにより、共連続構造を形成する相分離が誘起される原因は明確ではないが、低分子化合物の重合が進行するに従って有機高分子との相溶性が低下し、このとき、低分子化合物の重合体の分子量分布がある範囲に収まる(分子量分布が狭い)などの条件が揃うことにより、スピノーダル分解による相分離が誘起されるなどの理由が考えられる。
【0031】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの製造において、全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率が0.65を超すと、柱状のエポキシ樹脂硬化物の三次元分岐網目状構造の骨格からなる非粒子凝集型の硬化物多孔体を得ることが困難となるおそれがある。
【0032】
上記において、エポキシ樹脂と硬化剤の添加割合は上記の全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率を満足する範囲のなかで、エポキシ基1当量に対して、硬化剤当量(アミン当量)が0.6〜1.5の範囲になるように調整するのが好ましい。硬化剤当量比が0.6より少ない場合はエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下する場合がある。また1.5より多くなると、未反応の官能基が多くなり、未反応のまま硬化物中に残留したり、あるいは架橋密度向上を阻害する要因と成りえたりと好ましくない。
【0033】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、エポキシ樹脂とポリアミン系硬化剤の混合物を、それらと非反応性であり、かつそれらを溶解可能なポロゲンに常温で又は加温して溶解し、さらに適宜、有機高分子の添加や金属アルコキシドからなるゾルの添加により調製し、加熱重合し、重合物とポロゲンがスピノーダル相分離後、相分離が進展して共連続構造が消滅する前に、架橋反応によって構造を固定させ、次いでポロゲンや添加物を除去することによって製造される。この場合、目的とする多孔構造が得られない場合は、硬化促進剤を添加することが効果的である場合もある。硬化促進剤としては、公知の物を使用することができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの空隙率は、エポキシ樹脂とその硬化剤に対するポロゲンの比率が空隙率となる。ここで、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの空隙率は20〜95%にコントロールすることが好ましい。より好ましくは50〜95%である。50%未満では分離媒体として使用する場合、低空隙率による圧力の上昇がある。高空隙率であるほど低圧・高性能カラムが調製可能であるが、ゲル強度に問題が生じる。それに対しては、多官能エポキシ樹脂や多官能硬化剤を用いることで解決でき、必要に応じて多官能エポキシ樹脂や多官能硬化剤を適宜使用し、架橋密度を高めるのが好ましい。これにより、骨格強度が向上し、乾燥段階においても収縮の小さい多孔体や耐熱性の高い多孔体の調製が可能となる。
【0035】
上記、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの調製において、製造時に金属補足能を有する化合物を反応系に添加して調製することが必要である。金属補足能を有する化合物としては、エポキシ樹脂と反応し、かつ触媒金属イオンに配位することで,高濃度に触媒金属イオンを吸着可能な化合物であれば特に限定されないが、アミノ基,チオール基を複数もつ化合物が好ましい。例えば、トリアジンチオール誘導体である6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールや1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール,エチレンジアミン,2−アミノベンゼンチオール,1−(3−アミノプロピル)イミダゾール,チオ尿素を使用することができる。
【0036】
担持させる触媒金属は,触媒活性を持つものであれば特に限定されないが、パラジウム,白金,ロジウムなど貴金属などが挙げられ、実際には、酢酸パラジウム,塩化パラジウム,塩化パラジウムナトリウム,塩化白金酸,塩化白金酸ナトリウム,塩化白金,塩化ロジウム等の溶液を用い、溶液中の貴金属元素を含むイオン、すなわち、貴金属の単原子イオンまたは錯イオンを、ポリマーモノリス内に分散状態で組み込まれた金属補足能を有する化合物に吸着させ,その後,還元操作により,金属ナノ粒子として担持される。
【0037】
本発明に用いるポリマーモノリスは、金属補足能を有する化合物を加えることにより、緻密な骨格構造を有する。これは、例えば、上記の6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールをエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの調製に用いた場合、6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールのチオールがエポキシ樹脂と反応し、硬化速度が促進したと考えられる。また、金属補足能を有する化合物の量を増加させることにより、ポリマーモノリスの表面積も大きくなる。
【0038】
さらに、調製条件における金属補足能を有する化合物の量は、そのまま金属補足能に大きな影響を与える為、例えば、Pd(II)イオンなどの金属触媒イオンの吸着量を上げるには、ポリマーモノリスの反応混合物調製段階において、金属補足能を有する化合物を多く投入することが必要である。
【0039】
本発明に用いるポリマーモノリスの調製温度は特に限定されない。好ましくは、30℃以上、200℃以下である。温度が高すぎる場合には、加熱のための設備等にコストがかかるという欠点がある。温度が室温以下の場合には、冷却のための設備等にコストがかかるという欠点がある。また、室温以下で重合するように反応混合物を調製すると、その反応混合物が室温では不安定で反応してしまうために、反応混合物の保管が困難になるという欠点がある。したがって、上記の、室温より少し高く、かつ過度に高すぎない温度範囲(例えば、50℃から100℃)は、実用的な意味において非常に好適である。
【0040】
本発明に用いるポリマーモノリスを得るには、大きな空隙(マクロ孔)を形成することを考慮しても、重合開始から構造固定まで、遅くとも1日で終了することが産業上の利用観点からも好ましい。また、相分離による曇点発生から三次元架橋による構造の固定まで、半日以内であることが好ましく、こうした条件を目安に重合温度が設定される。
【0041】
本発明ではポリマーモノリスの架橋を十分に行うために構造固定後、更にアフターキュアーを実施することが好ましい。重合溶媒やポロゲンを除去した後にアフターキュアーを実施すると、収縮が発生して多孔構造に変化を生じることがあるので、重合溶媒やポロゲンを除去せずに行う方が良い。また、使用した重合溶媒やポロゲンが低沸点溶剤の場合は、高沸点溶剤に置換した後アフターキュアーを行うなどの方法を採ることができる。架橋が不十分な多孔体をカラムリアクターとして使用すると骨格強度が低下するため、十分な架橋反応を行う必要がある。
【0042】
カラムの被覆部の材質は、特に限定されないが、例えば、溶融シリカ、フッ素樹脂等、一般的にカラムまたは分析装置のデバイス(デバイスのチップのようなもの)に用いられているものが挙げられる。
【0043】
本発明に用いるポリマーモノリスの孔径は、調製条件を変化させることにより、カラム負荷圧に応じて任意のサイズにコントロールすることが可能である。好ましくは、平均孔径は、0.1μm〜50μm以下であり、より好ましくは、0.5μm〜10μm以下であり、さらに好ましくは、1μm〜5μm以下である。加えて、この多孔体を重合により調製する調製溶液を0.1μm〜10mm径の閉領域内に直接流し込み、成形することが可能であり、さらに、マイクロリアクター用途として用いるために0.1μm〜500μm径の閉領域内、例えば、カラムの被覆部となる溶融シリカキャピラリー内に調製し、そのままカラムリアクターとして用いることや、マイクロチップ内に直接ポリマーモノリスを成形することも可能である。
【0044】
また、本発明に用いるポリマーモノリスは、骨格内にさらに1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えることも可能であり、この1nm〜1μmのメソポアにより表面積を拡大することができ、反応率の高いカラムリアクターを作成することができる。メソポアの孔径が1nm未満にすることは現実的に難しく、メソポアの孔径が1μmを超えるとポリマーモノリスの表面積をそれほど大きくすることができない。細孔(マクロ孔及びメソポア)径の測定は電子顕微鏡画像で確認することが最も簡略な方法であるが、水銀圧入法や窒素吸着法で測定することが可能である。
【0045】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
1.1652gのエポキシ樹脂としてのビスフェノールAジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製、以下、「BADGE」という)と、3.6013gの反応誘起相分離性を有するポロゲンである重合溶液としてのポリエチレングリコール(ナカライテスク(株)製、平均分子量200、以下、「PEG200」という)をサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.2641gの硬化剤としての4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン(東京化成工業(株)製、以下、「BACM」という) を加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図2に示した。
【0047】
[実施例2]
BADGE、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図3に示した。
【0048】
[実施例3]
BADGE、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図4に示した。
【0049】
[実施例4]
1.1652gのBADGEと、0.03gの金属補足能を有する化合物としての6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(以下、「TADT」という)を、3.8013gのPEG200に予め溶解させた溶液とをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.2641gのBACMを加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図5に示した。
【0050】
[実施例5]
BADGE、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例4と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図6に示した。
【0051】
また、上記実施例2で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b及び実施例4で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1についてそれぞれ比表面積を求めその結果を併せて表1に示した。
なお、比表面積は、各実施例と同じ配合割合の混合溶液をフッ素樹脂チューブ(外径8mm、内径6mm)内に入れ、オーブンで、140℃, 3時間、さらに150℃, 30分加熱した。オーブンから取り出し、室温で約1時間放置した後、フッ素樹脂チューブから固体を取り出し、で約3cmの長さに切断した後、60℃のイオン交換水に約10時間以上、メタノールにも同様に10時間以上浸した。このモノリスを、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃)で約8時間真空乾燥後,チッソガス吸着法により測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
上記実施例1〜実施例5から本発明の製造方法のように、金属補足能を有する化合物を混合溶液中に配合すれば、緻密な骨格構造をして比表面積の大きい多孔質なエポキシ樹脂系モノリスを得られることがよくわかる。
また、図2〜図4から、PEG200の量が多くなると共に厚いモノリス壁を持つモノリスが形成されることがわかる。また、図5及び図6からTADTの添加量を変化させて作製したモノリスについては、TADTの添加量が多くなるにつれて緻密な骨格構造を形成することがわかる。
【0054】
[実施例6]
実施例4と同様にしてエポキシ樹脂系モノリス2−b−1を得る重合過程における重合の完了時間を以下のようにIRスペクトルの測定により調べた。
実施例4と同様にして得た表1に示す実施例4と同様の組成にした反応前の混合溶液のとし、まず、この反応前の混合溶液のIRスペクトルの測定を行った。次に、この混合溶液を長さ約15cm(外径6mm、内径4mm)のフッ素樹脂チューブ内に入れ、140℃のオーブンで加熱を開始した。加熱開始から30分、60分、120分、180分ごとにオーブンからチューブを取り出し、チューブごと切断した。そして切断片の切り口からにじみ出る溶液のIRスペクトルを測定し、その結果を図7に示した。
図7に示すように、重合前の溶液に含まれていたBADGEのエポキシ環の吸収が、重合時間が進むにつれて減少している。そして、180分後のスペクトルから、エポキシ基の吸収がみられるが、重合開始から120分と180分のスペクトルを重ねても吸収の強度は変わらず、エポキシが減少した様子はみられなかった。このことから120分で重合が完了するものと判断できる。
【0055】
[実施例7]
実施例4で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1について熱分解挙動を熱重量分析(TG−DTA)により求め、その結果を図8に示した。図8に示すように、0℃から200℃までは目立った重量減少は見られず、なだらかに重量減少していることが分かった。
【0056】
[実施例8]
1.001gのエポキシ樹脂としての分子内にエポキシ基を4つ持つ、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製、以下、「TETRAD−C」という)と、3.795gのPEG2003.795gとをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、BACM 0.502gを入れ、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図9に示した。
【0057】
[実施例9]
1.001gのTETRAD−Cと、0.022gのTADTを、3.802gのPEG200に予め溶解させた溶液とをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.503gのBACMを加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図10に示した。
【0058】
[実施例10]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図11に示した。
【0059】
[実施例11]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図12に示した。
【0060】
[実施例12]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図13に示した。
また、上記実施例8で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d、実施例10で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2、及び実施例12で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4についてそれぞれ上記と同様の方法で比表面積を求めその結果を併せて表2に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
[実施例13]
実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2について熱分解挙動を熱重量分析(TG−DTA)により求め、その結果を図13に示した。図14に示すように、50℃〜60℃ 付近にかけて重量が減少しているのは、モノリス内部に残っていた溶媒の蒸発が、原因であると考えられる。また、100℃から160℃付近においては、重量減少がほとんどないことがわかった。
すなわち、エポキシ樹脂としてBADGEを用いたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1に比べ、エポキシ樹脂としてTETRAD−Cを用いたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の方が、160℃付近まで熱的に安定で、熱分解開始温度が高く、耐熱性に優れていることがわかる。
【0063】
[実施例14]
実施例4と同様にして混合溶液をチューブ内で重合させたのち、チューブごと5cmにカットして、このエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1が入った状態のカットしたチューブをコネクタ(異形ジョイント、株式会社サンプラテック製)にセットした。そして、シリンジポンプを使用して、60℃条件下、15mlのイオン交換水を2ml/hでチュー85mlのイオン交換水を10ml/hで続けて送液した。後に、室温下、50mlのアセトンを10ml/hで送液し、続いて20mlのアセトンとテトラヒドロフランの混合溶媒(7:3)(以下、「混合溶媒A」という)を4ml/hで送液した。すなわち、これらの溶液をそれぞれ送液することで、重合未反応物および、溶媒のPEG200を除去した。
次に、上記のようにしてチューブ内のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1を洗浄したのち、60℃条件下、16mlの触媒金属イオンを含む溶液としてのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒1ml]を1ml/hで、18mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒1ml]を2ml/hで、100mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒A1ml]を4ml/hで連続して送液し、Pd(II)イオンを骨格表面に配位させた。
続いて、混合溶媒Aを4ml/hで10mlをチューブ内に送液して洗浄を行った。そして,60℃条件下で、NaBH415.2mg/H2O1mlを混合溶媒A5mlで溶解した5mlの還元剤溶液を2ml/hでチューブ内に送液し、次いで、50mlのNaBH420.0mg/H2O10mlの還元剤溶液を20ml/hで送液しPd(II)イオンの還元を行った。
さらに、60℃条件下で、HClの0.5mol/l水溶液を20ml/hでチューブ内に送液し、洗浄を行って、本発明のカラムリアクターサンプルを得た。
また、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1表面上でのPdの存在を確認するために、Pd(II)イオン吸着前、吸着後、還元後のそれぞれのモノリスの表面分析をESCA(X線光電子分析装置)により行い、ESCAワイドスキャンスペクトルを、図15に示した。
図15に示すように、Pd(II)吸着前のモノリスには、Pdの光電子ピークは観測されなかったが、Pd(II)イオン吸着後、還元後のモノリスには、Pdの光電子ピークが観測された。このことから、Pd(II)イオンの吸着およびPd(0)の生成が確認できた。
また、得られたカラムリアクターサンプルのエポキシ樹脂系ポリマーモノリス部分の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五万倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図16に示した。
そして、比較のために、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五万倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図17に示した。
図16及び図17を比較すると、Pd(0)を担持前の図17に示すエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1は、骨格表面が平滑であるのに対し、図16に示すように、担持後は、骨格表面が小さいが凸凹しており、明らかにPd(0)のナノ粒子が担持されていることがわかる。
【0064】
[実施例15]
実施例10と同様にして混合溶液をチューブ内で重合させたのち、実施例14と同様にして重合未反応物および、溶媒のPEG200を除去した。
次に、室温で、20mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/混合溶媒1ml]を1ml/hでチューブ内に送液し、Pd(II)イオンを骨格表面に配位させた。
続いて、室温で、20mlのNaBH420.0mg/H2O10mlの還元剤溶液を1ml/hで送液しPd(II)イオンの還元を行った。
さらに、60℃条件下で、30mlのHCl0.5mol/l水溶液を5ml/hでチューブ内に送液したのち、30mlのイオン交換水を5ml/hで送液し、洗浄を行って、本発明のカラムリアクターサンプルを得た。
また、Pd担持前であるエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2と担持後の得られたカラムリアクターサンプルのTG曲線を求め、その結果を図18に示した。
図18に示すように、それぞれのモノリスの熱分解後の灰分残渣の値を比較すると、Pd(0)担持前では、1.80重量%、担持後では、25.0重量%であった。この二つの数値の差23.2重量%であり、この値がPd(0)の含有率であると考えられる。
【0065】
[実施例16]
実施例15で得られたカラムリアクターサンプルと、背圧コントロールカラムとしてのPd担持前の実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2からなるカラムを、シリンジポンプに接続した。
そして、カラムリアクターの温度が130℃になるまで、反応溶媒のエタノールを3ml/hで送液した。
温度センサーが130℃で安定した後、原料溶液(組成比は、パラヨード安息香酸エチル2.40mmol、スチレン3.61mmol、トリエチルアミン3.64mmol、エタノール10ml)を1ml/hの送液スピードで計3ml送液し、カラムリアクターサンプル内で以下の反応式のとおり、Heck反応を行わせた。
【0066】
【化1】
SHAPE \* MERGEFORMAT
そして、溶出液中から再結晶により単離した化合物の,質量スペクトル分析,および赤外吸収スペクトルの結果から上記反応式に示すスチルベン誘導体の生成を確認した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品分野や小規模合成などの広範囲な有機合成反応分野に好適なカラムリアクター及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三次元網目構造の連続した骨格と空隙とを有する多孔質体は一般的にポリマーモノリスやモノリス型多孔体と呼ばれており、主に高速液体クロマトグラフィー分野でカラムと呼ばれる分離媒体として用いられている。このような分離媒体としては、無機材料から形成されるシリカゲルと、有機材料から形成される有機ポリマーに大別される。シリカゲルの分離媒体は、溶媒による材料の膨潤が少なく、物質移動による拡散の影響が小さいことに特徴があるため、主に高性能分離媒体として用いられている。一方、有機ポリマーの分離媒体は、酸・アルカリ等のpH耐久性に優れ、シリカで起こる生体系試料の非特異的吸着がないことに特徴があるため、環境分析や生体試料の分離に好適に用いられている。これにより、有機ポリマーの三次元網目構造の研究・開発は様々なされており、また各種の有機ポリマーをクロマトグラフィーの分離媒体として用いることも提案されており、実用化が検討されている。
【0003】
カラムリアクターは、小規模の有機合成反応を行う上で非常に有利であり、医薬品業界のみならず、フローケミストリーという新しい学術分野においても、その開発が熱望されている。これらの分野に、ポリマーモノリスを用いたカラムリアクターの研究は、創薬を目的にヨーロッパを中心に行われているが、わが国では、あまり研究されていない。
【0004】
非特許文献1では、粒子充填型高速液体クロマトグラフィー用カラムを用いた固定化触媒のリアクター用途について、エナンチオマ的に純粋な化合物の合成、検出システムとの組み合わせや超ミクロ定量分析、触媒特性及び生体触媒の安定性に及ぼす固定化の影響、化学薬品、製剤、臨床及び商品分野におけるプレカラム、ポストカラムまたは分析カラムにおける固定化触媒の反応容器の適用について紹介されているが、従来の高分子粒子充填型カラムを用いた場合、送液の際の溶媒による粒子の膨潤や、高性能化のための微小粒子の使用によるカラム負荷圧の上昇により、カラムリアクターの機能を最大限に発揮できない。
【0005】
ポリマーモノリスの調製方法は特許文献1のように、微粒子の確率的な凝集、接合に基づいて骨格が形成される核生成−成長過程により生成した微粒子凝集型のポリマーモノリスの調製方法や、特許文献2〜5のように、リビングラジカル重合法やエポキシ樹脂の熱硬化重合による三次元網目構造の骨格と連通する空隙を有する多孔体が開示されているが、カラムリアクターとしての効果を高めるための触媒を導入した製造方法やカラムリアクターとしての利用方法は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平07−501140号公報(特許第3168006号公報)
【特許文献2】国際公開WO2006/073173A1
【特許文献3】国際公開WO2007/083348A1
【特許文献4】国際公開WO2006/126387A1
【特許文献5】国際公開WO2007/043485A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】GIRELLI ANNA MARIA, MATTEI ENRICO, J Chromatogr B, Vol.819, No.1, Page3-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて、強度的に優れ、カラムリアクターとしての機能を安定して発揮できるカラムリアクター及びその製造方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のカラムリアクターは、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の請求項2に記載のカラムリアクターは、上記請求項1のカラムリアクターにおいて、触媒金属が貴金属であることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項3に記載のカラムリアクターは、上記請求項1または請求項2のカラムリアクターにおいて、触媒金属が、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかであることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項4に記載のカラムリアクターの製造方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備えることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項5に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4のカラムリアクターの製造方法において、金属補足能を有する化合物がトリアジンチオール誘導体であることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項6に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4または請求項5のカラムリアクターの製造方法において、触媒金属イオンが、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかの元素を含むイオンであることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項7に記載のカラムリアクターの製造方法は、請求項4〜請求項6のいずれかのカラムリアクターの製造方法において、成形型がカラムの被覆部となることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるカラムリアクターは、カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されているので、反応溶液をカラム内に流すだけで、触媒金属の働きによって、各種の有機合成反応を連続的に安定して行うことができる。
しかも、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスを用いたので、粒子充填型高速液体クロマトグラフィー用カラムに比べ、膨潤の問題も少なく、強度的に優れ、カラムリアクターとしての機能を安定して発揮できる。
【0017】
一方、本発明にかかるカラムリアクターの製造方法は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備える。
【0018】
すなわち、本発明にかかるカラムリアクターの製造方法は、混合溶媒中に金属補足能を有する化合物を組み込み込んだので、重合によって得られるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、金属補足能を有する化合物が、均一に分散された状態で三次元網目構造をした多孔質体となる。しかも、金属補足能を有する化合物を組み込まない場合に比べ、緻密な骨格構造となり、比表面積の大きな多孔質体とすることができる。金属補足能を有する化合物が化学結合によって組み込まれているので、金属補足能を有する化合物を物理的に組み込む場合に比べ、均一に分散された状態に安定して存在するようになる。
【0019】
そして、上記のようにして得られた金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させるようにしたので、触媒金属粒子がエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に均一分散状態で担持され、安定した触媒能を備えた本発明のカラムリアクターを得ることができる。
また、成形型内で重合反応させて三次元網目構造多孔体を得ることができる、すなわち、閉空間内でも製造することができるので、成形型として閉空間となるカラムの被覆部となるものを用いれば、そのままカラムリアクターとして使用できる。しかも、径も自由に選択できマイクロリアクターとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】三次元網目構造多孔体の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図2】実施例1で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図3】実施例2で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図4】実施例3で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図5】実施例4で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図6】実施例5で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図7】実施例4のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の重合過程中でのポリマーモノリスに含まれる溶媒のIRスペクトルである。
【図8】実施例4のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1のTG測定結果である。
【図9】実施例8で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dの断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図10】実施例9で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図11】実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図12】実施例11で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図13】実施例12で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4の断面を走査型電子顕微鏡により五千倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図14】実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2のTG測定結果である。
【図15】実施例14のESCAワイドスキャンスペクトルによるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの表面分析結果である。
【図16】実施例14で得られたPdナノ粒子が骨格表面に担持されたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの断面を走査型電子顕微鏡により五万倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図17】比較例であるPdナノ粒子が骨格表面に担持されていないエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの走査型電子顕微鏡により五万倍に拡大して撮影した写真の写しである。
【図18】実施例15のPd(0)担持前後のTG曲線の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のポリマーモノリスは、柱状の有機高分子の三次元分岐網目構造を骨格として有し、且つ骨格間に空隙を有して形成されている多孔体であって、基礎となる構造は、図1に示すように、骨格と空隙(マクロ孔)がお互いに絡み合った三次元的な網目構造を有している。クロマトグラフィーを中心とした分析分野では、これらの形状を有する材料のことを慣用的に「モノリス」といい、有機原料から調製された有機高分子のモノリス型多孔体のことを、ポリマーモノリスと呼ばれることが多い。
【0022】
モノリスは,大きく分類すると、ゾル−ゲル法によって調製されるシリカなどを主にした無機系多孔体と、有機高分子を主にした有機系多孔体に分けることができる。カラムリアクターには、図1に示すような有機高分子を主にした有機系多孔体を用いることが好ましい。有機系多孔体を用いる利点は、安価でかつ調製工程が著しく容易であることであり、さらに、これらの中で、エポキシ樹脂と硬化剤の反応によって調製される熱硬化性樹脂型有機系多孔体は特に原料が安価であり、かつ、調製工程が容易である点が有用である。
【0023】
また、上記ポリマーモノリスの多孔体を形成する骨格内には、メソポアと呼ばれるマクロ孔より小さなサイズの細孔(メソポア)を有しており、これらの構造は三次元網目構造のような連続孔を形成しているだけでなく、一様な貫通孔や骨格を構成している格子間の空隙と見られる構造を有しているように観察されることもある。尚、これらのメソポアは,多孔体の表面積を大きくする為に有効である。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、原料に用いるエポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせ及びポロゲンの使用によって形成することができる。
エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせは、大きく分類すると、芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と芳香族硬化剤の組み合わせ、非芳香族エポキシ樹脂と非芳香族硬化剤の組み合わせに分けることができる。
尚、エポキシ樹脂と硬化剤は、それぞれ1種類又は2種以上混在して使用してもよい。エポキシ樹脂又は硬化剤のいずれか一方でも芳香族系の原料を用いた場合、得られるエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの耐熱性が向上する。
【0025】
本発明に使用可能なエポキシ樹脂のうち、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンべ−スなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネートなどのトリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂等、複素芳香環を含むエポキシ樹脂、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンなどを挙げることができる。また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族エポキシ樹脂として、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。上記の中でも、好ましくは、分子内にグリシジル基が二つ以上有するエポキシ樹脂であり、特に好ましくは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、2,2,2,−トリ−(2,3−エポキシプロピル)−イソシアネート、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンである。
【0026】
本発明に使用される硬化剤のうち、芳香環由来の炭素原子を含む芳香族硬化剤としては、メタフェニレンジアミンやジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなどの芳香族アミン、無水フタル酸や無水トリメット酸、無水ピロメット酸などの芳香族酸無水物、フェノール系化合物、フェノール系樹脂、フェノールホルムアルデヒド型ノボラックやフェノールアルキル型ノボラック等のノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジドなどの芳香族ヒドラジド類、トリアジン環などの複素芳香環を有する芳香族アミン、1,1,1',1'−テトラメチル−4,4'−(メチレン−ジ−パラ−フェニレン)ジセミカルバジド等の芳香族ポリアミン類及び芳香族ポリアミンヒドラジド類などが挙げられる。また、芳香環由来の炭素原子を含まない非芳香族硬化剤としては、エチレンジアミンやジエチレントリアミン、4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなどの脂肪族アミン類、アジピン酸ジヒドラジドやセバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどの脂肪族ヒドラジド類、イソホロンジアミンやメンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタンやこれらの変性品などの脂環族ポリアミン類、1,6−ヘキサメチレンビス(N,N−ジメチルセミカルバジド)などの脂肪族ポリアミンヒドラジド類、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類やポリアミノアミド類など、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマープロピレングリコールモノメチルエーテル溶液、ビューレトリートリ−(ヘキサメチレン−N,N−ジメチルセミカルバジド)を主成分とするオリゴマーN,N−ジメチルホルムアミド溶液、スピログリコールや2−(5−エチル−5−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキサン−2−イル)−2−メチルプロパン−1−オールなどのグリコール類、その他アミンアダクト系硬化剤などが挙げられる。
【0027】
本発明の製造方法では、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスのマクロ孔やメソポアの空隙となりえるポロゲンを用いる。エポキシ樹脂及び硬化剤を溶かすことができ、且つエポキシ樹脂と硬化剤が重合した後、反応誘起相分離を生じさせることが可能な溶剤をポロゲンとして用いることができ、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのセロソルブ類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどエステル類、又はポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールなどのグリコール類などを挙げることができる。上記の中でも、好ましくは、分子量600以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。分子量600以上のポリエチレングリコール或いはポリプロピレングリコールで室温中において蝋質(半固形)状であっても重合温度においてエポキシ樹脂や硬化剤と相溶し且つ液状であればポロゲンとして使用できる。
【0028】
ここで、上記のポロゲンとしては、重合溶媒に反応誘起相分離性化合物である有機高分子を溶解させて溶液を調製し、反応誘起相分離性化合物を含む重合溶媒をポロゲンとして使用することができる。重合溶媒としては、低分子化合物および有機高分子が溶解する溶媒であれば特に限定されず、リビングラジカル重合に一般的に用いる溶媒を用いればよい。例えば、トルエン等のアルキルベンゼン、クロロベンゼンやジクロロベンゼン等のハロゲン置換ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン(メシチレン)、ジメチルホルムアミド、ホルムアミド、メタノールやエタノール等のアルコール、アセトンやテトラヒドロフラン等のケトン、ベンゼン、水などが挙げられる。
【0029】
反応誘起相分離性化合物である有機高分子としては、重合溶媒に溶解するなど、重合系に均一な状態で加えることができる有機高分子である限り特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリエチレングルコール、ポリエチレンオキシド、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート等のビニル系ポリマー、及び、これらの共重合体等が挙げられる。尚、これらが単独で用いられてもよいし、併用されても構わない。有機高分子を重合溶液に溶解する時、均一な溶液に調製する必要がある。
【0030】
重合系にこのようなポロゲンを加えることにより、共連続構造を形成する相分離が誘起される原因は明確ではないが、低分子化合物の重合が進行するに従って有機高分子との相溶性が低下し、このとき、低分子化合物の重合体の分子量分布がある範囲に収まる(分子量分布が狭い)などの条件が揃うことにより、スピノーダル分解による相分離が誘起されるなどの理由が考えられる。
【0031】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの製造において、全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率が0.65を超すと、柱状のエポキシ樹脂硬化物の三次元分岐網目状構造の骨格からなる非粒子凝集型の硬化物多孔体を得ることが困難となるおそれがある。
【0032】
上記において、エポキシ樹脂と硬化剤の添加割合は上記の全炭素原子に占める芳香環由来の炭素原子比率を満足する範囲のなかで、エポキシ基1当量に対して、硬化剤当量(アミン当量)が0.6〜1.5の範囲になるように調整するのが好ましい。硬化剤当量比が0.6より少ない場合はエポキシ樹脂硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性、耐溶剤性などが低下する場合がある。また1.5より多くなると、未反応の官能基が多くなり、未反応のまま硬化物中に残留したり、あるいは架橋密度向上を阻害する要因と成りえたりと好ましくない。
【0033】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスは、エポキシ樹脂とポリアミン系硬化剤の混合物を、それらと非反応性であり、かつそれらを溶解可能なポロゲンに常温で又は加温して溶解し、さらに適宜、有機高分子の添加や金属アルコキシドからなるゾルの添加により調製し、加熱重合し、重合物とポロゲンがスピノーダル相分離後、相分離が進展して共連続構造が消滅する前に、架橋反応によって構造を固定させ、次いでポロゲンや添加物を除去することによって製造される。この場合、目的とする多孔構造が得られない場合は、硬化促進剤を添加することが効果的である場合もある。硬化促進剤としては、公知の物を使用することができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の三級アミン、2−フェノール−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェノール−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類などを挙げることができる。
【0034】
エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの空隙率は、エポキシ樹脂とその硬化剤に対するポロゲンの比率が空隙率となる。ここで、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの空隙率は20〜95%にコントロールすることが好ましい。より好ましくは50〜95%である。50%未満では分離媒体として使用する場合、低空隙率による圧力の上昇がある。高空隙率であるほど低圧・高性能カラムが調製可能であるが、ゲル強度に問題が生じる。それに対しては、多官能エポキシ樹脂や多官能硬化剤を用いることで解決でき、必要に応じて多官能エポキシ樹脂や多官能硬化剤を適宜使用し、架橋密度を高めるのが好ましい。これにより、骨格強度が向上し、乾燥段階においても収縮の小さい多孔体や耐熱性の高い多孔体の調製が可能となる。
【0035】
上記、エポキシ樹脂系ポリマーモノリスの調製において、製造時に金属補足能を有する化合物を反応系に添加して調製することが必要である。金属補足能を有する化合物としては、エポキシ樹脂と反応し、かつ触媒金属イオンに配位することで,高濃度に触媒金属イオンを吸着可能な化合物であれば特に限定されないが、アミノ基,チオール基を複数もつ化合物が好ましい。例えば、トリアジンチオール誘導体である6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールや1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール,エチレンジアミン,2−アミノベンゼンチオール,1−(3−アミノプロピル)イミダゾール,チオ尿素を使用することができる。
【0036】
担持させる触媒金属は,触媒活性を持つものであれば特に限定されないが、パラジウム,白金,ロジウムなど貴金属などが挙げられ、実際には、酢酸パラジウム,塩化パラジウム,塩化パラジウムナトリウム,塩化白金酸,塩化白金酸ナトリウム,塩化白金,塩化ロジウム等の溶液を用い、溶液中の貴金属元素を含むイオン、すなわち、貴金属の単原子イオンまたは錯イオンを、ポリマーモノリス内に分散状態で組み込まれた金属補足能を有する化合物に吸着させ,その後,還元操作により,金属ナノ粒子として担持される。
【0037】
本発明に用いるポリマーモノリスは、金属補足能を有する化合物を加えることにより、緻密な骨格構造を有する。これは、例えば、上記の6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールをエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの調製に用いた場合、6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールのチオールがエポキシ樹脂と反応し、硬化速度が促進したと考えられる。また、金属補足能を有する化合物の量を増加させることにより、ポリマーモノリスの表面積も大きくなる。
【0038】
さらに、調製条件における金属補足能を有する化合物の量は、そのまま金属補足能に大きな影響を与える為、例えば、Pd(II)イオンなどの金属触媒イオンの吸着量を上げるには、ポリマーモノリスの反応混合物調製段階において、金属補足能を有する化合物を多く投入することが必要である。
【0039】
本発明に用いるポリマーモノリスの調製温度は特に限定されない。好ましくは、30℃以上、200℃以下である。温度が高すぎる場合には、加熱のための設備等にコストがかかるという欠点がある。温度が室温以下の場合には、冷却のための設備等にコストがかかるという欠点がある。また、室温以下で重合するように反応混合物を調製すると、その反応混合物が室温では不安定で反応してしまうために、反応混合物の保管が困難になるという欠点がある。したがって、上記の、室温より少し高く、かつ過度に高すぎない温度範囲(例えば、50℃から100℃)は、実用的な意味において非常に好適である。
【0040】
本発明に用いるポリマーモノリスを得るには、大きな空隙(マクロ孔)を形成することを考慮しても、重合開始から構造固定まで、遅くとも1日で終了することが産業上の利用観点からも好ましい。また、相分離による曇点発生から三次元架橋による構造の固定まで、半日以内であることが好ましく、こうした条件を目安に重合温度が設定される。
【0041】
本発明ではポリマーモノリスの架橋を十分に行うために構造固定後、更にアフターキュアーを実施することが好ましい。重合溶媒やポロゲンを除去した後にアフターキュアーを実施すると、収縮が発生して多孔構造に変化を生じることがあるので、重合溶媒やポロゲンを除去せずに行う方が良い。また、使用した重合溶媒やポロゲンが低沸点溶剤の場合は、高沸点溶剤に置換した後アフターキュアーを行うなどの方法を採ることができる。架橋が不十分な多孔体をカラムリアクターとして使用すると骨格強度が低下するため、十分な架橋反応を行う必要がある。
【0042】
カラムの被覆部の材質は、特に限定されないが、例えば、溶融シリカ、フッ素樹脂等、一般的にカラムまたは分析装置のデバイス(デバイスのチップのようなもの)に用いられているものが挙げられる。
【0043】
本発明に用いるポリマーモノリスの孔径は、調製条件を変化させることにより、カラム負荷圧に応じて任意のサイズにコントロールすることが可能である。好ましくは、平均孔径は、0.1μm〜50μm以下であり、より好ましくは、0.5μm〜10μm以下であり、さらに好ましくは、1μm〜5μm以下である。加えて、この多孔体を重合により調製する調製溶液を0.1μm〜10mm径の閉領域内に直接流し込み、成形することが可能であり、さらに、マイクロリアクター用途として用いるために0.1μm〜500μm径の閉領域内、例えば、カラムの被覆部となる溶融シリカキャピラリー内に調製し、そのままカラムリアクターとして用いることや、マイクロチップ内に直接ポリマーモノリスを成形することも可能である。
【0044】
また、本発明に用いるポリマーモノリスは、骨格内にさらに1nm〜1μmの孔径のメソポアを備えることも可能であり、この1nm〜1μmのメソポアにより表面積を拡大することができ、反応率の高いカラムリアクターを作成することができる。メソポアの孔径が1nm未満にすることは現実的に難しく、メソポアの孔径が1μmを超えるとポリマーモノリスの表面積をそれほど大きくすることができない。細孔(マクロ孔及びメソポア)径の測定は電子顕微鏡画像で確認することが最も簡略な方法であるが、水銀圧入法や窒素吸着法で測定することが可能である。
【0045】
以下に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0046】
[実施例1]
1.1652gのエポキシ樹脂としてのビスフェノールAジグリシジルエーテル(ジャパンエポキシレジン(株)製、以下、「BADGE」という)と、3.6013gの反応誘起相分離性を有するポロゲンである重合溶液としてのポリエチレングリコール(ナカライテスク(株)製、平均分子量200、以下、「PEG200」という)をサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.2641gの硬化剤としての4,4’−メチレン−ビス−シクロヘキシルアミン(東京化成工業(株)製、以下、「BACM」という) を加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−aの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図2に示した。
【0047】
[実施例2]
BADGE、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−bの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図3に示した。
【0048】
[実施例3]
BADGE、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−cの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図4に示した。
【0049】
[実施例4]
1.1652gのBADGEと、0.03gの金属補足能を有する化合物としての6−(フェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(以下、「TADT」という)を、3.8013gのPEG200に予め溶解させた溶液とをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.2641gのBACMを加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図5に示した。
【0050】
[実施例5]
BADGE、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表1に示す配合量にした以外は、上記実施例4と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−2の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図6に示した。
【0051】
また、上記実施例2で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b及び実施例4で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1についてそれぞれ比表面積を求めその結果を併せて表1に示した。
なお、比表面積は、各実施例と同じ配合割合の混合溶液をフッ素樹脂チューブ(外径8mm、内径6mm)内に入れ、オーブンで、140℃, 3時間、さらに150℃, 30分加熱した。オーブンから取り出し、室温で約1時間放置した後、フッ素樹脂チューブから固体を取り出し、で約3cmの長さに切断した後、60℃のイオン交換水に約10時間以上、メタノールにも同様に10時間以上浸した。このモノリスを、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃)で約8時間真空乾燥後,チッソガス吸着法により測定した。
【0052】
【表1】
【0053】
上記実施例1〜実施例5から本発明の製造方法のように、金属補足能を有する化合物を混合溶液中に配合すれば、緻密な骨格構造をして比表面積の大きい多孔質なエポキシ樹脂系モノリスを得られることがよくわかる。
また、図2〜図4から、PEG200の量が多くなると共に厚いモノリス壁を持つモノリスが形成されることがわかる。また、図5及び図6からTADTの添加量を変化させて作製したモノリスについては、TADTの添加量が多くなるにつれて緻密な骨格構造を形成することがわかる。
【0054】
[実施例6]
実施例4と同様にしてエポキシ樹脂系モノリス2−b−1を得る重合過程における重合の完了時間を以下のようにIRスペクトルの測定により調べた。
実施例4と同様にして得た表1に示す実施例4と同様の組成にした反応前の混合溶液のとし、まず、この反応前の混合溶液のIRスペクトルの測定を行った。次に、この混合溶液を長さ約15cm(外径6mm、内径4mm)のフッ素樹脂チューブ内に入れ、140℃のオーブンで加熱を開始した。加熱開始から30分、60分、120分、180分ごとにオーブンからチューブを取り出し、チューブごと切断した。そして切断片の切り口からにじみ出る溶液のIRスペクトルを測定し、その結果を図7に示した。
図7に示すように、重合前の溶液に含まれていたBADGEのエポキシ環の吸収が、重合時間が進むにつれて減少している。そして、180分後のスペクトルから、エポキシ基の吸収がみられるが、重合開始から120分と180分のスペクトルを重ねても吸収の強度は変わらず、エポキシが減少した様子はみられなかった。このことから120分で重合が完了するものと判断できる。
【0055】
[実施例7]
実施例4で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1について熱分解挙動を熱重量分析(TG−DTA)により求め、その結果を図8に示した。図8に示すように、0℃から200℃までは目立った重量減少は見られず、なだらかに重量減少していることが分かった。
【0056】
[実施例8]
1.001gのエポキシ樹脂としての分子内にエポキシ基を4つ持つ、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製、以下、「TETRAD−C」という)と、3.795gのPEG2003.795gとをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、BACM 0.502gを入れ、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dを得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−dの断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図9に示した。
【0057】
[実施例9]
1.001gのTETRAD−Cと、0.022gのTADTを、3.802gのPEG200に予め溶解させた溶液とをサンプル瓶に入れ、溶液が均一になるまで混合攪拌した。この溶液に、0.503gのBACMを加えて、さらに混合攪拌した。
この混合溶液を、成形型としてのフッ素樹脂チューブ(外径6mm, 内径4mm)に流し入れ、140 ℃のオーブンで3時間加熱した。引き続き、150℃で30分間加熱した後、室温で約1時間放置した。フッ素樹脂チューブから重合体(固体)を取り出し、60℃のイオン交換水に約10時間以上浸した後、メタノールにも同様に10時間以上浸した。
その後、乾燥管付きガラスチューブオーブン(130℃、8時間)で真空乾燥し、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図10に示した。
【0058】
[実施例10]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図11に示した。
【0059】
[実施例11]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−3の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図12に示した。
【0060】
[実施例12]
TETRAD−C、TADT、PEG200及びBACMの配合量を表2に示す配合量にした以外は、上記実施例9と同様にしてエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4を得た。
そして、得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五千倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図13に示した。
また、上記実施例8で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d、実施例10で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2、及び実施例12で得たエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−4についてそれぞれ上記と同様の方法で比表面積を求めその結果を併せて表2に示した。
【0061】
【表2】
【0062】
[実施例13]
実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2について熱分解挙動を熱重量分析(TG−DTA)により求め、その結果を図13に示した。図14に示すように、50℃〜60℃ 付近にかけて重量が減少しているのは、モノリス内部に残っていた溶媒の蒸発が、原因であると考えられる。また、100℃から160℃付近においては、重量減少がほとんどないことがわかった。
すなわち、エポキシ樹脂としてBADGEを用いたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1に比べ、エポキシ樹脂としてTETRAD−Cを用いたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2の方が、160℃付近まで熱的に安定で、熱分解開始温度が高く、耐熱性に優れていることがわかる。
【0063】
[実施例14]
実施例4と同様にして混合溶液をチューブ内で重合させたのち、チューブごと5cmにカットして、このエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1が入った状態のカットしたチューブをコネクタ(異形ジョイント、株式会社サンプラテック製)にセットした。そして、シリンジポンプを使用して、60℃条件下、15mlのイオン交換水を2ml/hでチュー85mlのイオン交換水を10ml/hで続けて送液した。後に、室温下、50mlのアセトンを10ml/hで送液し、続いて20mlのアセトンとテトラヒドロフランの混合溶媒(7:3)(以下、「混合溶媒A」という)を4ml/hで送液した。すなわち、これらの溶液をそれぞれ送液することで、重合未反応物および、溶媒のPEG200を除去した。
次に、上記のようにしてチューブ内のエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1を洗浄したのち、60℃条件下、16mlの触媒金属イオンを含む溶液としてのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒1ml]を1ml/hで、18mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒1ml]を2ml/hで、100mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/上記混合溶媒A1ml]を4ml/hで連続して送液し、Pd(II)イオンを骨格表面に配位させた。
続いて、混合溶媒Aを4ml/hで10mlをチューブ内に送液して洗浄を行った。そして,60℃条件下で、NaBH415.2mg/H2O1mlを混合溶媒A5mlで溶解した5mlの還元剤溶液を2ml/hでチューブ内に送液し、次いで、50mlのNaBH420.0mg/H2O10mlの還元剤溶液を20ml/hで送液しPd(II)イオンの還元を行った。
さらに、60℃条件下で、HClの0.5mol/l水溶液を20ml/hでチューブ内に送液し、洗浄を行って、本発明のカラムリアクターサンプルを得た。
また、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1表面上でのPdの存在を確認するために、Pd(II)イオン吸着前、吸着後、還元後のそれぞれのモノリスの表面分析をESCA(X線光電子分析装置)により行い、ESCAワイドスキャンスペクトルを、図15に示した。
図15に示すように、Pd(II)吸着前のモノリスには、Pdの光電子ピークは観測されなかったが、Pd(II)イオン吸着後、還元後のモノリスには、Pdの光電子ピークが観測された。このことから、Pd(II)イオンの吸着およびPd(0)の生成が確認できた。
また、得られたカラムリアクターサンプルのエポキシ樹脂系ポリマーモノリス部分の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五万倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図16に示した。
そして、比較のために、エポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1の断面形状を、走査型電子顕微鏡を用いて五万倍に拡大して撮影し、その写真の写しを図17に示した。
図16及び図17を比較すると、Pd(0)を担持前の図17に示すエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−b−1は、骨格表面が平滑であるのに対し、図16に示すように、担持後は、骨格表面が小さいが凸凹しており、明らかにPd(0)のナノ粒子が担持されていることがわかる。
【0064】
[実施例15]
実施例10と同様にして混合溶液をチューブ内で重合させたのち、実施例14と同様にして重合未反応物および、溶媒のPEG200を除去した。
次に、室温で、20mlのPd(CH3COO)2溶液[Pd(CH3COO)20.5mg/混合溶媒1ml]を1ml/hでチューブ内に送液し、Pd(II)イオンを骨格表面に配位させた。
続いて、室温で、20mlのNaBH420.0mg/H2O10mlの還元剤溶液を1ml/hで送液しPd(II)イオンの還元を行った。
さらに、60℃条件下で、30mlのHCl0.5mol/l水溶液を5ml/hでチューブ内に送液したのち、30mlのイオン交換水を5ml/hで送液し、洗浄を行って、本発明のカラムリアクターサンプルを得た。
また、Pd担持前であるエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2と担持後の得られたカラムリアクターサンプルのTG曲線を求め、その結果を図18に示した。
図18に示すように、それぞれのモノリスの熱分解後の灰分残渣の値を比較すると、Pd(0)担持前では、1.80重量%、担持後では、25.0重量%であった。この二つの数値の差23.2重量%であり、この値がPd(0)の含有率であると考えられる。
【0065】
[実施例16]
実施例15で得られたカラムリアクターサンプルと、背圧コントロールカラムとしてのPd担持前の実施例10で得られたエポキシ樹脂系ポリマーモノリス2−d−2からなるカラムを、シリンジポンプに接続した。
そして、カラムリアクターの温度が130℃になるまで、反応溶媒のエタノールを3ml/hで送液した。
温度センサーが130℃で安定した後、原料溶液(組成比は、パラヨード安息香酸エチル2.40mmol、スチレン3.61mmol、トリエチルアミン3.64mmol、エタノール10ml)を1ml/hの送液スピードで計3ml送液し、カラムリアクターサンプル内で以下の反応式のとおり、Heck反応を行わせた。
【0066】
【化1】
SHAPE \* MERGEFORMAT
そして、溶出液中から再結晶により単離した化合物の,質量スペクトル分析,および赤外吸収スペクトルの結果から上記反応式に示すスチルベン誘導体の生成を確認した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されていることを特徴とするカラムリアクター。
【請求項2】
触媒金属が貴金属である請求項1に記載のカラムリアクター。
【請求項3】
触媒金属が、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかである請求項2に記載のカラムリアクター。
【請求項4】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、
前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、
重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、
金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備えることを特徴とするカラムリアクターの製造方法。
【請求項5】
金属補足能を有する化合物がトリアジンチオール誘導体である請求項4に記載のカラムリアクターの製造方法。
【請求項6】
触媒金属イオンが、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかの元素を含むイオンである請求項4または5に記載のカラムリアクターの製造方法。
【請求項7】
成形型がカラムの被覆部となることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載のカラムリアクターの製造方法。
【請求項1】
カラム状をしたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスの骨格表面に触媒金属が担持されていることを特徴とするカラムリアクター。
【請求項2】
触媒金属が貴金属である請求項1に記載のカラムリアクター。
【請求項3】
触媒金属が、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかである請求項2に記載のカラムリアクター。
【請求項4】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、金属補足能を有する化合物と、反応誘起相分離性能及びポロゲンとなる機能を有する重合溶液と、を含む混合溶液を、成形型内に注入する工程と、
前記成形型内で注入された混合溶液のエポキシ樹脂を重合させる重合工程と、
重合工程で得られた重合物中から前記重合溶液を除去して金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系ポリマーモノリスを得る工程と、
金属補足能を有する化合物が組み込まれたエポキシ樹脂系モノリス成形体に触媒金属イオンを含む溶液を含浸させたのち、触媒金属イオンを還元してエポキシ樹脂系モノリスの骨格表面に触媒金属を析出させてエポキシ樹脂系ポリマーモノリスに担持させる工程と、を備えることを特徴とするカラムリアクターの製造方法。
【請求項5】
金属補足能を有する化合物がトリアジンチオール誘導体である請求項4に記載のカラムリアクターの製造方法。
【請求項6】
触媒金属イオンが、パラジウム,白金,ロジウムのいずれかの元素を含むイオンである請求項4または5に記載のカラムリアクターの製造方法。
【請求項7】
成形型がカラムの被覆部となることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載のカラムリアクターの製造方法。
【図7】
【図8】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図8】
【図14】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−207777(P2010−207777A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59712(P2009−59712)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(505191803)株式会社エマオス京都 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508114454)地方独立行政法人 大阪市立工業研究所 (60)
【出願人】(505191803)株式会社エマオス京都 (9)
【Fターム(参考)】
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