説明

カラーの取付構造

【課題】削り屑を装着孔から外部に排出することなく、樹脂部材にカラーを取り付ける。
【解決手段】ボルトが挿通される挿通孔41Aが形成された金属製のカラー40と、このカラー40が装着される装着孔26が貫通して形成された取付片25とを備え、前記装着孔26に対して前記カラー40を固定するカラーの取付構造であって、前記カラー40には、径方向外側に突出する食い込み部44が形成されており、前記装着孔26の内壁には、前記カラー40を前記装着孔26に挿入して前記ボルトの締め付ける方向である時計回りに回動させることで、前記食い込み部44が周方向に食い込む固定部30が設けられているところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コネクタなどに用いられる樹脂部材に対してボルトを締結する場合には、ボルトが挿通されるボルト挿通孔の周辺部がボルトの締付けトルクによって変形してしまう虞があることから、樹脂部材に対してボルト挿通孔を有する金属製のカラーが取り付けられることで、ボルト挿通孔の周辺部が補強される。
【0003】
樹脂部材にカラーを取り付ける構造としては、例えば、下記特許文献1に記載の取付構造が知られている。この取付構造は、樹脂部材に貫通して形成された装着孔に対して金属製のカラーが装着孔の軸方向に圧入される構造となっており、カラーの外周面が装着孔の内周面に対して装着孔の軸方向に圧入されることで、樹脂部材にカラーが取り付け固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−310724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、装着孔の内周面に対してカラーの外周面を装着孔の軸方向に圧入すると、装着孔の内周面がカラーの外周面によって削られてしまう場合があり、削られた削り屑はカラーによって押し出されて装着孔から外部に排出されしまう。そして、排出された削り屑がコネクタの端子金具などに付着すると、導通接続時に接続不良を引き起こしてしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、削り屑を装着孔から外部に排出することなく、樹脂部材にカラーを取り付けることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として本発明は、螺合して締め付ける締結部材が挿通される挿通孔が形成された金属製のカラーと、このカラーが装着される装着孔が貫通して形成された樹脂部材とを備え、前記装着孔に対して前記カラーを固定するカラーの取付構造であって、前記カラーには、径方向外側に突出する食い込み部が形成されており、前記装着孔の内壁には、前記カラーを前記装着孔に挿入して前記締結部材の締め付け方向である周方向に回動させることで、前記食い込み部が周方向に食い込む固定部が設けられているところに特徴を有する。
【0008】
このような構成のカラーの取付構造によると、カラーを装着孔に挿入して周方向に回動させて、固定部に対して食い込み部を周方向に食い込ませることで、カラーを樹脂部材に取り付け固定することができる。また、食い込み部を装着孔の軸方向ではなく、周方向に圧入させることから、削り屑が発生する場合においても、削り屑が周方向に押し込まれる状態となり、削り屑がカラーによって押し出されて装着孔から削り屑が外部に排出されることを抑制することができる。また、締結部材を締め付ける際に、カラーが共回りする場合においても、食い込み部が食い込む方向に回転することから、食い込み部が固定部から外れてしまうことを防止することができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
前記食い込み部は、回動方向先端側に向うほど薄肉となる楔状に形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、固定部を押し退けるようにして食い込み部が固定部に食い込むことになることから、固定部が食い込み部によって削り取られることを抑制することができる。
【0010】
前記食い込み部が通過した部分には、前記食い込み部によって押圧されて弾性変形し、前記食い込み部による押圧状態が解除されることで弾性復帰した前記固定部が配されている構成としてもよい。
このような構成によると、食い込み部が通過した部分には、弾性復帰した固定部が配されるので、食い込み部の後方に固定部が配されない場合に比べて、固定部によって食い込み部を保持する保持力を向上させることができる。
【0011】
前記カラーの外面には、径方向外側に突出する突出部が形成されており、前記装着孔の内壁には、前記カラーを周方向に回動させる際に、前記突出部を案内する案内溝が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、案内溝によって突出部を案内することで、装着孔に対してカラーを傾いた状態にすることなく、確実にカラーを周方向に回動させることができる。これにより、食い込み部を固定部に対して確実に食い込ませることができる。
【0012】
前記固定部は、前記案内溝の内壁のうち、径方向外側に配された内壁であって、前記食い込み部は、前記突出部における径方向外側の側面から径方向外側に突出して形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、食い込み部がカラーの軸心から最も離れた位置に配されることになるので、案内溝における幅方向の内壁に食い込み部を食い込ませるために必要な力を低減させることができる。
【0013】
前記突出部は、前記案内溝の奥部に当接可能に形成されており、前記突出部が前記案内溝の奥部に当接した際に、前記食い込み部は前記固定部に食い込んで、前記固定部に保持されている構成としてもよい。
このような構成によると、突出部が案内溝の奥部に当接することで、食い込み部が固定部に食い込んだことを確認することができ、カラーを装着孔に確実に取り付け固定することができる。
【0014】
前記案内溝には、前記突出部を下方から受ける受部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、カラーを装着孔に挿入した際に、突出部を受部によって下方から受け止めることで、カラーが装着孔から抜け落ちることを規制しつつ、突出部を案内溝に案内することができる。これにより、カラーを装着孔から抜け落ちることを防ぎつつ、カラーを回動させる場合に比べて、カラーを容易に回動させることができる。
【0015】
前記案内溝は、上方に臨んで形成され、前記突出部を上方から収容する収容部と、前記収容部に収容された前記突出部を周方向に案内して収容する案内部とを備えており、前記案内溝の下側には、前記収容部と周方向にずれた位置に配され、前記収容部の内部空間と前記案内部の内部空間とに連なる型抜き溝が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、案内溝を上下方向に型開きする成形金型によって成形することができる。これにより、スライド型などを用いて案内溝を形成する場合に比べて、案内溝を容易に形成することができ、製造コストを低減させることができる。
【0016】
前記型抜き溝は、前記突出部よりも周方向に小さく形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、食い込み部が固定部に食い込む前に、型抜き溝を突出部が通過して、装着孔からカラーが抜け落ちることを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、削り屑を排出することなく、樹脂部材にカラーを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】コネクタの平面図
【図2】コネクタの側面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】装着孔の内壁を装着孔の軸心から見た模式図
【図5】コネクタハウジングの装着孔にカラーを挿入した状態を示す平面図
【図6】図5のB−B線断面図
【図7】コネクタハウジングの底面図
【図8】カラーの平面図
【図9】カラーの側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態1>
本発明の実施形態について図1乃至図9を参照して説明する。
本実施形態は、図示しない金属製のケースに取り付けられ、ケース内に収容された図示しない機器に接続されると共に、ケースの外側に配された図示しない相手側コネクタと接続されるコネクタ10を例示している。
【0020】
コネクタ10は、合成樹脂製のコネクタハウジング20と、コネクタハウジング20に保持される端子金具Mとを備えて構成されている。
【0021】
コネクタハウジング20は、図2に示すように、ハウジング本体部21と、このハウジング本体部21の前側に形成された嵌合部22と、ハウジング本体部21の後端下部から下方に延びる取付部23とを有している。
ハウジング本体部21は、嵌合部22の後部から斜め下後方に延びた形態をなし、嵌合部22の後端部と取付部23の上端部とに連設されている。
【0022】
嵌合部22は、相手側コネクタに嵌合可能に形成されており、前方に向かって開口した略角筒状をなしている。嵌合部22の内部空間には嵌合部22の奥部から突出する三本の端子金具Mが配されている。
【0023】
各端子金具Mは、コネクタハウジング20内に保持されている。また、各端子金具Mは、嵌合部22からハウジング本体部21の内部を通って取付部23まで延びた形態をなし、嵌合部22側の一端が相手側コネクタに設けられた相手側端子と接続可能とされ、取付部23側の他端がケース内の機器に接続可能とされている。
【0024】
嵌合部22の幅方向両側の壁面には、一対のカムピン24が形成されている。一対のカムピン24は、相手側コネクタに設けられた図示しない一対のカム溝にそれぞれ係合可能とされており、カムピン24がカム溝内に進入すると、カムピン24とカム溝とのカム作用によってコネクタ10と相手側コネクタとが互いに引き寄せられて正規嵌合状態に至る。そして、コネクタ10と相手側コネクタとが正規嵌合状態に至ることで、端子金具Mと相手側コネクタに設けられた図示しない相手側端子金具とが導通可能に接続されるようになっている。
【0025】
取付部23は、図2及び図7に示すように、略円柱形状をなし、ケースに形成された図示しない取付孔に嵌合可能に形成されている。取付部23の下面からは、三本の端子金具Mが下方へ突出しており、取付部23が取付孔に嵌合されると、ケース内の機器に設けられた図示しない機器側端子と導通可能に接続されるようになっている。
【0026】
また、取付部23の上方でハウジング本体部21の後端下部には、ケースの外面に沿って張り出す取付片(本発明の「樹脂部材」の一例)25が形成されている。この取付片25は、図1および図2に示すように、取付部23を囲むようにして形成されており、ハウジング本体部21の後端下部から幅方向両側及び後側に張り出した平板状をなしている。そして、取付部23が取付孔に嵌合されると、ケースの表面に沿って配されるようになっている。
【0027】
さて、取付片25には、金属製のカラー40を装着するための装着孔26がそれぞれ形成されている。装着孔26は、図2および図6に示すように、略円形をなし、取付片25を板厚方向である上下方向に貫通して形成されており、カラー40は、図示しないボルトが挿通される挿通孔41Aを有している。なお、以下より、装着孔26およびカラー40の構造において、左右方向は、装着孔26の軸心および挿通孔41Aの軸心から各孔26,41Aの内面を見た時の左右を基準として説明する。
【0028】
カラー40は、金属製の板材をプレス、圧造等の加工手段によって成形したものであり、図8に示すように、ボルト(図示せず)が挿通される挿通孔41Aを有する円筒状のカラー本体部41から構成されている。カラー本体部41は、図6に示すように、装着孔26内に円滑に挿入可能とされており、カラー本体部41の上下方向の高さ寸法は、装着孔26の上下方向の長さ寸法よりも僅かに長く設定されている。そして、カラー本体部41が装着孔26に挿入されると、カラー本体部41における上下方向両端が取付片25の上面及び下面とから僅かに突出するように構成されている。これにより、挿通孔41Aの周辺部はカラー40によって補強される。そして、ボルトを挿通孔41Aに挿通させてケースにボルトを締め付けると、締め込みに伴ってカラー本体部41の下面がケースの表面に当接すると共に、カラー本体部41の上面がボルトの頭に当接した状態となり、ボルトの締付けトルクによって取付片25が破損したり、変形したりすることを防止することができる。
【0029】
挿通孔41Aの内壁には、図8に示すように、上下方向に切り欠いた形状の一対の治具挿入溝42が対向して形成されており、この治具挿入溝42に例えば略平板状の図示しない治具を挿入して、治具を挿通孔41Aの軸心を回動中心として回動させることでカラー本体部41を周方向に回動させることができるようになっている。
【0030】
カラー本体部41の外周面における上下方向略中央部には、図8及び図9に示すように、一対の突出部43が形成されている。一対の突出部43は、カラー本体部41の外周面から互いに離れるように径方向外側に突出して、かつ、カラー本体部41の外周面に沿うように円弧状に形成されている。また、各突出部43の周方向両端部に位置する端面43Aは、周方向と交差する方向に延びた形態とされ、互いに平行となるように配置されている。
【0031】
突出部43の径方向外側に位置する外側面43Bには、径方向外側に突出する食い込み部44が形成されている。食い込み部44は、突出部43の外側面43Bから外側面43Bの接線方向に延びて、その端部から突出部43まで延びる形態をなし、周方向左側から周方向右側に向かうほど徐々に薄くなる楔状に形成されている。
【0032】
装着孔26の内壁には、図4に示すように、突出部43を上方から収容して周方向である時計回りに案内する案内溝27が装着孔26の内壁に沿って形成されている。なお、図4は、説明の便宜上、装着孔26の内壁を平面で示している。
案内溝27は、径方向に凹んだ形態に形成されており、取付片25の上面から下方に延びた有底の収容部28と、収容部28の底部から時計回りに円弧状に切り欠かれた形態の案内部29とから構成されている。
【0033】
収容部28は、上方に向かって開口した形態をなし、突出部43を収容可能に形成されている。また、収容部28内には、食い込み部44及び突出部43が収容部28の内面に引っ掛かることなく、収容されるように設定されている。そして、突出部43が収容部28内に完全に収容されると、突出部43が収容部28の底壁(本発明の「受部」の一例)28Aによって下方から受け止められるようになっている。つまり、カラー本体部41が装着孔26に上方から挿入されると、図6に示すように、突出部43が収容部28の底壁28Aによって受け止められ、装着孔26からカラー40が抜け落ちることを防止できるようになっている。
【0034】
案内部29は、突出部43を左側から収容可能に形成されている。案内部29内には、突出部43が収容部28内に収容された状態からカラー本体部41を時計回りに回動させることで、突出部43が案内されるようになっており、突出部43が案内部29内に案内されると、カラー本体部41が装着孔26と同軸状態で回動するようになっている。これにより、装着孔26に対してカラー本体部41を傾いた状態にさせることなく、周方向に確実に回動させることができるようになっている。
また、案内部29は、収容部28よりも径方向に小さく形成されており、案内部29の径方向の幅寸法は、突出部43が径方向に突出した突出寸法とほぼ同じに設定されている。そして、カラー本体部41を時計回りに回動させて突出部43が案内部29内に案内されると、案内部29の径方向外側の内壁である固定部30に対して突出部43の食い込み部44が時計回りに食い込み、固定部30に対して食い込み部44が圧入されるようになっている。
【0035】
ここで、食い込み部44は、周方向右側に向かうほど薄肉な楔状に形成されていることから、食い込み部44が固定部30に食い込む際に、固定部30を削ることなく径方向外側に押し退けて固定部30に食い込む。そして、食い込み部44が通過した部分(食い込み部44の周方向左側)には、径方向外側に押し出された固定部30が弾性復帰した状態となり、食い込み部44は、周方向左側に配された固定部30によって抜け止めされる。これにより、取付片25に対してカラー40を取り付け固定することができると共に、カラー40によって装着孔26の内壁が削られることを抑制することができる。
【0036】
また、仮に食い込み部44が固定部30を削ってしまい、削り屑が発生する場合においても、食い込み部44が周方向に圧入されることから、削り屑は周方向右側に向かって押し込まれる状態となり、削り屑が装着孔26から外部に排出されることを抑制することができるようになっている。
【0037】
案内部29の右側奥部には、図3および図7に示すように、突出部43の右側の端面43Aと当接可能な位置決め面31が突出部43の右側の端面43Aに対応して形成されており、位置決め面31は、カラー40が正規の装着位置まで回動して、食い込み部44が固定部30に食い込んだ状態になると、突出部43の右側の端面43Aと面当たりするように設定されている。すなわち、カラー40を時計回りに回動させて、突出部43の右側の端面43Aが位置決め面31に面当たりして、カラー40が回動しなくなることで、カラー40が正規の装着位置に至り、食い込み部44が固定部30に食い込んだことを確認することができるようになっている。
【0038】
案内部29の下側には、案内部29から取付片25の下面まで延びる型抜き溝32が形成されている。型抜き溝32は、図4及び図7に示すように、案内部29を下方に臨ませるように取付片25の下面に円弧状に開口している。また、型抜き溝32は、案内部29の右側端部である位置決め面31の位置から収容部28の右側端部28Bよりもやや左側の位置まで周方向に延びた形態をなしており、案内部29よりも周方向に長く形成されている。
つまり、型抜き溝32は、収容部28よりも周方向右側にずれた位置に配され、案内部29の内部空間および収容部28の内部空間と連なった形態であって、型抜き溝32の左側端部は、収容部28の右側端部を通して上方に臨んだ形態となっている。すなわち、案内溝27は、収容部28から上方に引き抜く成形金型と、案内部29および型抜き溝32から下方に引き抜く成形金型とによって成形することができるようになっている。これにより、スライド型などを用いて案内溝を形成する場合に比べて、案内溝27を容易に形成することができる。ひいては、装着孔26を成形するための製造コストを低減させることができる。
【0039】
また、案内部29の周方向の長さ寸法は、突出部43の周方向の長さ寸法より短く形成されている。このため、図3に示すように、突出部43が位置決め面31に突き当たった状態において、突出部43は案内部29に完全に収容されず、突出部43の左側端部が収容部28から僅かに飛び出して、収容部28の底壁28Aによって下方から受け止められた状態となっている。すなわち、突出部43は、案内溝27内では、常に収容部28の底壁28Aによって下方から受け止められた状態となっている。これにより、食い込み部44が固定部30に固定される前に、突出部43が型抜き溝32の上方に配されて型抜き溝32に嵌り込み、突出部43が通過することでカラー40が装着孔26から抜け落ちることを防止することができるようになっている。
【0040】
本実施形態は、以上のような構成であって、次に、取付片25の装着孔26にカラー40を組み付ける方法について簡単に説明すると共に、その作用効果を説明する。
まず、取付片25の装着孔26に対してカラー40のカラー本体部41が同軸となるように、カラー40を装着孔26の上方に配置し、案内溝27の収容部28内に突出部43を挿入するようにして、装着孔26内にカラー本体部41を上方から挿入する。ここで、突出部43及び突出部43に設けられた食い込み部44は収容部28の内面に引っ掛かることなく挿入され、図6に示すように、収容部28の底壁28Aが突出部43を下方から受けることで、カラー40が装着孔26から下方に抜け落ちることなく、装着孔26に嵌り込む。
【0041】
次に、カラー本体部41の治具挿入溝42に治具を挿入して、カラー本体部41の軸心を回動軸として、治具を右回りに回動させることで、カラー本体部41を時計回りに回動させる。すると、収容部28内に収容された突出部43が案内部29内に左側から進入し、突出部43が案内部29内に案内されることで、カラー本体部41は、傾いた状態になることなく、時計回りに回動する。
カラー本体部41が時計回りに回動すると、食い込み部44が案内部29の固定部30に周方向に食い込み、図3に示すように、食い込み部44が固定部30に圧入される。このとき、食い込み部44は、楔状に形成されていることから、固定部30を径方向外側に押し退けながら、案内部29内に進入する。これにより、固定部30を削ることなく食い込み部44を固定部30に圧入させることができる。また、仮に削り屑が発生したとしても、削り屑が食い込み部44によって周方向に押し込まれる状態となり、削り屑が装着孔26から外部に排出されることを抑制することができる。
【0042】
さらに、カラー本体部41を時計回りに回動させると、突出部43の右側の端面43Aが案内部29の位置決め面31に面当たりすることで、突出部43が正規の位置に位置決めされてカラー40が正規の装着位置に至り、食い込み部44が固定部30に食い込んだことを確認することができる。
【0043】
ところで、食い込み部44を固定部30に食い込ませる時には、回動抵抗が上がることになるが、本実施形態によると、食い込み部44がカラー本体部41の軸心から最も離れた位置に形成されているので、固定部30に食い込み部44を食い込ませるために必要な力を低減させることができるようになっている。
【0044】
そして、カラー40が正規の装着位置に至ると、案内部29内における食い込み部44が通過した部分(食い込み部44の左側部分)には、径方向外側に押し退けられて、弾性復帰した固定部30が配され、食い込み部44は、固定部30によって抜け止めされた状態になる。これにより、カラー40を装着孔26内に抜け止めした状態で、取り付け固定することができるようになっている。
【0045】
以上のように、本実施形態によると、固定部30に対して食い込み部44を周方向に食い込ませることで、カラー40を取付片25に取り付け固定することができる。また、食い込み部44を装着孔26の軸方向ではなく、周方向に食い込ませることから、削り屑が発生する場合においても、削り屑が周方向に押し込まれる状態となり、削り屑が装着孔26から外部に排出されることを抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施形態によると、食い込み部44が楔状に形成されているので、食い込み部44が固定部30を押し退けるようにして固定部30に食い込み、固定部30が食い込み部44によって削り取られることを抑制することができる。
これにより、装着孔26から削り屑を外部に排出することなく、取付片25にカラー40を取り付けることができる。
【0047】
なお、本実施形態では、ボルトを締め付ける方向である時計回りにカラー本体部41を回動させることで、食い込み部44を固定部30に圧入する構成となっていることから、取付片25に対してボルトを締め付ける際に、カラー本体部41が共回りしようとする場合においても、固定部30に対して食い込み部44を食い込ませる方向に力が加わることになり、食い込み部44が固定部30から外れてしまうことを防止することができるようになっている。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、食い込み部44を突出部43に形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、カラー本体部の外周面に食い込み部を形成し、装着孔の内壁に対して食い込み部が周方向に食い込む構成としてもよい。
(2)上記実施形態では、食い込み部44を突出部43の外側面43Bに形成した構成としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、食い込み部を突出部の上面に形成してもよい。
(3)上記実施形態では、食い込み部44を楔状に構成したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、食い込み部を先端が尖った半円錐状や半角錐状に形成してもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、収容部28の底壁28Aによって突出部43を下方から受け止める構成にしたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、収容部28の底壁28Aによって食い込み部を下方から受け止める構成にしてもよい。
(5)上記実施形態では、突出部43の端面43Aが位置決め面31に面当たりする構成にしたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、突出部の右側端部が丸みを帯びた形態に形成され、その右側端部が位置決め面31に対して突き当たって位置決めされる構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:コネクタ
25:取付片(樹脂部材)
26:装着孔
27:案内溝
28A:底壁(受部)
30:固定部
32:型抜き溝
40:カラー
41A:挿通孔
43:突出部
44:食い込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺合して締め付ける締結部材が挿通される挿通孔が形成された金属製のカラーと、このカラーが装着される装着孔が貫通して形成された樹脂部材とを備え、前記装着孔に対して前記カラーを固定するカラーの取付構造であって、
前記カラーには、径方向外側に突出する食い込み部が形成されており、
前記装着孔の内壁には、前記カラーを前記装着孔に挿入して前記締結部材の締め付け方向である周方向に回動させることで、前記食い込み部が周方向に食い込む固定部が設けられていることを特徴とするカラーの取付構造。
【請求項2】
前記食い込み部は、食込み方向先端側に向うほど薄肉となる楔状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のカラーの取付構造。
【請求項3】
前記食い込み部が通過した部分には、前記食い込み部によって押圧されて弾性変形し、前記食い込み部による押圧状態が解除されることで弾性復帰した前記固定部が配されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のカラーの取付構造。
【請求項4】
前記カラーの外面には、径方向外側に突出する突出部が形成されており、
前記装着孔の内壁には、前記カラーを周方向に回動させる際に、前記突出部を案内する案内溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のカラーの取付構造。
【請求項5】
前記固定部は、前記案内溝の内壁のうち、径方向外側に配された内壁であって、
前記食い込み部は、前記突出部における径方向外側の側面から径方向外側に突出して形成されていることを特徴とする請求項4記載のカラーの取付構造。
【請求項6】
前記突出部は、前記案内溝の奥部に当接可能に形成されており、
前記突出部が前記案内溝の奥部に当接した際に、前記食い込み部は前記固定部に食い込んで前記固定部に保持されていることを特徴とする請求項4または請求項5記載のカラーの取付構造。
【請求項7】
前記案内溝には、前記突出部を下方から受ける受部が形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項6の何れか一項に記載のカラーの取付構造。
【請求項8】
前記案内溝は、上方に臨んで形成され、前記突出部を上方から収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記突出部を周方向に案内して収容する案内部とを備えており、
前記案内溝の下側には、前記収容部と周方向にずれた位置に配され、前記収容部の内部空間と前記案内部の内部空間とに連なる型抜き溝が形成されていることを特徴とする請求項4乃至請求項7の何れか一項に記載のカラーの取付構造。
【請求項9】
前記型抜き溝は、前記突出部よりも周方向に小さく形成されていることを特徴とする請求項8記載のカラーの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−108585(P2013−108585A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255027(P2011−255027)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】