説明

カラービデオカメラ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、線順次色差出力型の単板式撮像素子に特有の輪郭部分の偽色を排除するようにしたカラービデオカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】図3に示す従来のカラービデオカメラ1は、被写体の映像を撮像レンズ系を介して単板式の固体撮像素子2上に結像させ、これをサンプルホールド回路3にてサンプリングする。サンプルホールド回路3は、互いに逆相の2種類のサンプリングパルスφ1,φ2により信号の画素分離を行い、サンプリング出力を色分離回路4に供給する。固体撮像素子2には、図示のごとく、マゼンタ(Mg),緑(G),シアン(Cy),イエロウ(Ye)の4色をモザイク状に配列した補色カラーフィルタを用いており、色差信号R−Y,−(B−Y)が交互に繰り返し出力される。補色カラーフィルタによる変調色信号成分は、第nラインについては、(Mg+Ye)−(G+Cy)=2R−Gであり、第n+1ラインについては、(G+Cy)−(Mg+Cy)=G−2Bという具合に、等価的にR−Y,−(B−Y)と見なすことのできる2R−G,G−2Bなる信号が1ラインごとに交互に出力される線順次信号となる。色分離回路4は、固体撮像素子2の出力を低域濾波して変調色信号成分を除去し、これにより第nラインからは、(Mg+Ye)+(G+Cy)=2R+3G+2Bまた第n+1ラインからは(G+Cy)+(Mg+Cy)=2R+3G+2Bのごとく、等価的にY=0.3R+0.59G+011Bと見なすことのできる輝度信号Yを得ている。
【0003】ただし、前述の色差信号R−Y,B−Yは、1ライン置きに得られる線順次信号であり、このためライン間の隙間を埋める必要がある。このため、現ラインの色差信号を1ライン期間遅延し、これをもってライン補間することで同時化する方法がとられ、同時化された色差信号R−Y,B−Yが色分離回路4からマトリクス回路5に供給される。マトリクス回路5は、輝度信号Yと一対の色差信号R−Y,B−Yからマトリクス演算により3原色信号R,G,Bを生成する。マトリクス回路5から得られた3原色信号R,G,Bは、続くプロセス回路6においてホワイトバランス制御やガンマ補正等の信号処理を受ける。
【0004】ところで、プロセス回路6が出力する3原色信号R,G,Bのうち、緑色信号Gは直接バッファアンプ回路7を介して外部出力されるが、赤色信号Rと青色信号Bについては、それぞれ色輪郭補正用の加算回路8,9において輝度輪郭信号を加算したのち、バッファアンプ回路10,11を経由して外部出力される。ここでは、色分離回路4から得られる輝度信号Yを輝度輪郭検出回路12に送り込み、ライン遅延回路12aにて1ライン期間だけ遅延した輝度信号Yを、減算回路12bにおいて現在の輝度信号Yから減算することで、輝度輪郭信号を生成するようにしている。こうして輝度輪郭検出回路12から得られた輝度輪郭信号は、輪郭部分で発生する偽色を相殺するため、加算回路8,9おいてそれぞれ赤色信号Rと青色信号Bに加算される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来のカラービデオカメラ1は、単板式固体撮像素子2から得られる線順次色差信号R−Y,B−Yをライン補間により同時化する構成であるため、隣接する走査線間で信号相関が薄れる色輪郭部分では、図4(A),(B)に示したように、ライン補間に伴う偽色信号の発生が避けられず、従って前述のごとく、輝度輪郭検出回路12にて検出した輝度輪郭信号を加算することで偽色を相殺する構成をとる。しかし、輝度信号Yを1次微分することで得た輝度輪郭信号を色輪郭信号とみなして用いる構成であるため、色輪郭の補正精度に問題があり、例えば色変化が有りながら輝度は変化しないような被写体の輪郭部分で、輝度輪郭信号が出力されないために、実際には色輪郭補正が行われなかったり、或はその逆に色変化を伴わないで輝度だけが変化するような被写体の輪郭部分で、誤った色輪郭補正が行われる結果、偽色輪郭が付加されてしまうことがある等の課題を抱えていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記課題を解決したものであり、単板式撮像素子から得られる線順次色差信号から、ライン補間により同時化された3原色信号を出力する色信号処理手段と、この色信号処理手段が出力する緑色信号から色輪郭信号を抽出する色輪郭抽出手段と、前記色信号処理手段が出力する赤色信号及び青色信号と前記緑色信号のエッジ部分をそれぞれ比較し、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合にゲート信号を出力するゲート信号出力手段と、このゲート信号出力手段が出力するゲート信号を受けて動作し、前記色輪郭抽出手段が出力する色輪郭信号を前記ずれのある赤色信号又は青色信号に加算し、色輪郭を補正する色輪郭補正手段とを具備することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】この発明は、単板式撮像素子から得られる線順次色差信号から、ライン補間により同時化された3原色信号について、緑色信号から色輪郭信号を抽出し、赤色信号及び青色信号と前記緑色信号のエッジ部分をそれぞれ比較し、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合に、色輪郭信号を前記ずれのある赤色信号又は青色信号に加算して色輪郭を補正することにより、線順次色差出力型の単板式撮像素子に特有の輪郭部分の偽色を排除する。
【0008】
【実施例】以下、この発明の実施例について、図1,2を参照して説明する。図1は、この発明のカラービデオカメラの一実施例を示す回路構成図、図2は、図1に示した回路各部の信号波形図である。
【0009】図1に示すビデオカメラ21は、緑色信号Gから色輪郭を検出する色輪郭検出回路22と、この色輪郭検出回路22が出力する色輪郭信号にゲートをかける赤色信号用と青色信号用の一対のゲート回路23,24と、これら一対のゲート回路23,24の出力をそれぞれ低域濾波回路25,26を介して供給され、それぞれ赤色信号Rと青色信号Bに加算する加算回路27,28等を有する。色輪郭検出回路22は、ライン遅延回路22aにて1ライン期間だけ遅延した緑色信号Gを、減算回路22bにおいて現在の緑色信号Gから減算することで、色輪郭信号を生成する。ゲート回路23,24は、それぞれ偽色位置を検出するためのゲート制御回路29,30からゲート信号を送り込まれ、偽色位置においてだけ色輪郭信号の通過を許可する。ゲート回路23のためのゲート制御回路29は、赤色信号Rと緑色信号Gの排他的論理和をとり、その論理演算結果をゲート信号とするものであり、赤色信号Rと緑色信号Gのエッジ部分を比較したときに、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合にゲート信号を出力する。また、ゲート回路24のためのゲート制御回路30は、青色信号Bと緑色信号Gの排他的論理和をとり、その論理演算結果をゲート信号とするものであり、青色信号Bと緑色信号Gのエッジ部分を比較したときに、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合にゲート信号を出力する。
【0010】なお、実施例では、固体撮像素子2,サンプルホールド回路3,色分離回路4,マトリクス回路5及びプロセス回路6が、色信号処理手段を構成しており、色輪郭検出回路22が色輪郭抽出手段を、またゲート制御回路29,30がゲート信号出力手段を、そしてゲート回路23,24と低域濾波回路25,26及び加算回路27,28が、色輪郭補正手段をそれぞれ構成する。
【0011】ところで、偽色信号の発生パターンは、図2R>2(A)〜(D)までの4パターンに分類することができる。図2(A)は、緑色信号Gの立ち上がりエッジと青色信号Bの立ち上がりエッジは一致するが、赤色信号Rの立ち上がりエッジはそれよりも1ライン期間だけ遅れ、また緑色信号Gの立ち下がりエッジと赤色信号Rの立ち下がりエッジは一致するが、青色信号Bの立ち下がりエッジはそれよりも1ライン期間だけ遅れる場合のパターンである。図2(B)は、緑色信号Gと青色信号Bが立ち上がりエッジも立ち下がりエッジも一致するが、赤色信号Rだけが立ち上がりエッジも立ち下がりエッジも1ライン期間だけ遅れる場合のパターンである。図2(C)は、緑色信号Gの立ち上がりエッジと赤色信号Rの立ち上がりエッジは一致するが、青色信号Bの立ち上がりエッジはそれよりも1ライン期間だけ遅れ、また緑色信号Gの立ち下がりエッジと青色信号Bの立ち下がりエッジは一致するが、赤色信号Rの立ち下がりエッジはそれよりも1ライン期間だけ遅れる場合のパターンである。図2(D)は、緑色信号Gと赤色信号Rが立ち上がりエッジも立ち下がりエッジも一致するが、青色信号Bだけが立ち上がりエッジも立ち下がりエッジも1ライン期間だけ遅れる場合のパターンである。
【0012】これらの4パターンに対し、色輪郭検出回路22からは、図2(E)に示したように、緑色信号Gの立ち上がりエッジと立ち下がりエッジにおいて、それぞれ正負の極性をもって1ライン期間だけ持続する色輪郭信号が得られる。これらの色輪郭信号は、ゲート制御回路23,24からのゲート信号によって開閉制御されるゲート回路23,24を通過し、それぞれ低域濾波回路25,26にてノイズ成分を取り除かれたのち、加算回路27,28に送り込まれる。
【0013】すなわち、図2(A)に示したパターンについては、まずゲート制御回路29の出力を受けてゲート回路23がゲートを開くため、立ち上がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた赤色信号Rの立ち上がり部分に、図2(A)に一点鎖線で示したごとく色輪郭信号が加算され、3原色信号の立ち上がりエッジはすべて一致することになる。そして次に、ゲート制御回路30の出力を受けてゲート回路24がゲートを開くため、立ち下がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた青色信号Bの立ち下がり部分に、図2(A)に二点鎖線で示したごとく色輪郭信号が負の極性をもって加算され、これにより3原色信号の立ち下がりエッジはすべて一致する。
【0014】また、図2(B)に示したパターンについては、まずゲート制御回路29の出力を受けてゲート回路23がゲートを開くため、立ち上がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた赤色信号Rの立ち上がり部分に、図2(B)に一点鎖線で示したごとく色輪郭信号が加算され、3原色信号の立ち上がりエッジはすべて一致することになる。次に、ゲート制御回路29の出力を受けて再びゲート回路23がゲートを開くため、立ち下がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた赤色信号Rの立ち下がり部分に、図2(B)に二点鎖線で示したごとく色輪郭信号が負の極性をもって加算され、これにより3原色信号の立ち下がりエッジはすべて一致する。
【0015】また、図2(C)に示したパターンについては、まずゲート制御回路30の出力を受けてゲート回路24がゲートを開くため、立ち上がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた青色信号Bの立ち上がり部分に、図2(C)に一点鎖線で示したごとく色輪郭信号が加算され、3原色信号の立ち上がりエッジはすべて一致することになる。そして次に、ゲート制御回路29の出力を受けてゲート回路23がゲートを開くため、立ち下がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた青色信号Bの立ち下がり部分に、図2(C)に二点鎖線で示したごとく色輪郭信号が負の極性をもって加算され、これにより3原色信号の立ち下がりエッジはすべて一致する。
【0016】さらに、図2(D)に示したパターンについては、まずゲート制御回路30の出力を受けてゲート回路24がゲートを開くため、立ち上がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた青色信号Bの立ち上がり部分に、図2(D)に一点鎖線で示したごとく色輪郭信号が加算され、3原色信号の立ち上がりエッジはすべて一致することになる。次に、ゲート制御回路30の出力を受けて再びゲート回路24がゲートを開くため、立ち下がりエッジが1ライン期間だけ他の色信号よりも遅れた赤色信号Rの立ち下がり部分に、図2(D)に二点鎖線で示したごとく色輪郭信号が負の極性をもって加算され、これにより3原色信号の立ち下がりエッジはすべて一致する。
【0017】このように、上記カラービデオカメラ21は、あらゆる被写体の撮像信号にほぼ満遍なく含まれる緑色信号Gから色輪郭信号を抽出することで、輝度輪郭からでは捕捉することのできない色輪郭を細大漏らさず捕捉することができ、これにより色変化が有りながら輝度は変化しないような被写体の輪郭部分で、輝度輪郭信号が出力されないために色輪郭補正が行われなかったり、或はその逆に色変化を伴わないで輝度だけが変化するような被写体の輪郭部分で、誤った色輪郭補正により偽色輪郭が付加されてしまうといった不都合を防止することができ、また色輪郭を抽出した緑色信号Gに対する赤色信号Rと青色信号Gのエッジ部分のずれを検出し、エッジ部分にずれがある場合は、これが偽色輪郭を発生する前に色輪郭信号をもって相殺するため、緑色信号Gに対する赤色信号Rと青色信号Bの輪郭を正確に揃えることができ、これにより線順次色差出力型の固体撮像素子2に特有の輪郭部分の偽色を適確に排除することができる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、単板式撮像素子から得られる線順次色差信号から、ライン補間により同時化された3原色信号について、緑色信号から色輪郭信号を抽出し、赤色信号及び青色信号と前記緑色信号のエッジ部分をそれぞれ比較し、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合に、色輪郭信号を前記ずれのある赤色信号又は青色信号に加算して色輪郭を補正する構成としたから、あらゆる被写体の撮像信号にほぼ満遍なく含まれる緑色信号から色輪郭信号を抽出することで、輝度輪郭からでは捕捉することのできない色輪郭を細大漏らさず捕捉することができ、これにより例えば輝度輪郭信号を用いて色輪郭を補正する従来のカラービデオカメラのごとく、色変化が有りながら輝度は変化しないような被写体の輪郭部分で、輝度輪郭信号が出力されないために色輪郭補正が行われなかったり、或はその逆に色変化を伴わないで輝度だけが変化するような被写体の輪郭部分で、誤った色輪郭補正により偽色輪郭が付加されてしまうといった不都合を排除することができ、また色輪郭を抽出した緑色信号に対する赤色信号と青色信号のエッジ部分のずれを検出し、エッジ部分にずれがある場合は、これが偽色輪郭を発生する前に色輪郭信号をもって相殺するため、緑色信号に対する赤色信号と青色信号の輪郭を正確に揃えることができ、これにより線順次色差出力型の単板式撮像素子に特有の輪郭部分の偽色を、適確に排除することができる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のビデオカメラの一実施例を示す回路構成図である。
【図2】図1に示した回路各部の信号波形図である。
【図3】従来のカラービデオカメラの一例を示す回路構成図である。
【図4】図3に示したカラービデオカメラ内での偽色発生を説明するための図である。
【符号の説明】
2 固体撮像素子
3 色信号処理手段(サンプルホールド回路)
4 色信号処理手段(色分離回路)
5 色信号処理手段(マトリクス回路)
6 色信号処理手段(プロセス回路)
21 カラービデオカメラ
22 色輪郭抽出手段(色輪郭検出回路)
23,24 色輪郭補正手段(ゲート回路)
25,26 色輪郭補正手段(低域濾波回路)
27,28 色輪郭補正手段(加算回路)
29,30 ゲート信号出力手段(ゲート制御回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 単板式撮像素子から得られる線順次色差信号から、ライン補間により同時化された3原色信号を出力する色信号処理手段と、この色信号処理手段が出力する緑色信号から色輪郭信号を抽出する色輪郭抽出手段と、前記色信号処理手段が出力する赤色信号及び青色信号と前記緑色信号のエッジ部分をそれぞれ比較し、該エッジ部分に1ライン期間のずれが存在する場合にゲート信号を出力するゲート信号出力手段と、このゲート信号出力手段が出力するゲート信号を受けて動作し、前記色輪郭抽出手段が出力する色輪郭信号を前記ずれのある赤色信号又は青色信号に加算し、色輪郭を補正する色輪郭補正手段とを具備することを特徴とするカラービデオカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】第2951461号
【登録日】平成11年(1999)7月9日
【発行日】平成11年(1999)9月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−331797
【出願日】平成3年(1991)12月16日
【公開番号】特開平5−168029
【公開日】平成5年(1993)7月2日
【審査請求日】平成8年(1996)10月30日
【出願人】(000001937)日本電気ホームエレクトロニクス株式会社 (8)