説明

カラーフィルタおよびカラーフィルタの製造方法

【課題】カラーフィルタを構成する複数の着色透明画素が画素境界部で互いに延出して重なりまたは隣接する場合に、着色透明画素の色配列領域全体を覆う透明導電膜の特に前記画素境界部上にクラックを発生させないカラーフィルタとその製造方法を提供すること。
【解決手段】単一色の着色透明画素が基板上で3色以上の規則的な繰り返しにより色配列され、色配列領域の全表面を覆うように透明導電膜を設けたカラーフィルタであって、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部に限定して、画素境界部を構成する2色とは異なる色の着色透明画素材料からなるオーバーコート層を透明導電膜の下に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等に使用されるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、コンピュータ端末やテレビ画像表示を中心に、多色カラー表示に必要な薄型軽量の表示装置として、急速に普及が進んでいる。カラー液晶表示装置を構成する主要部である液晶表示パネルとして種々の構成が提案されており、アクティブマトリクス駆動タイプのTN(Twisted Nematic)方式やVA(Vertical Alignment)方式の表示装置用の液晶表示パネルが一般的に多用されている。
【0003】
前記TN方式やVA方式の多色カラー表示装置用の液晶表示パネルは、液晶を挟む2枚の基板のそれぞれに設けた電極により多色の画素分割駆動を行い、液晶配向膜の機能により液晶を選択的に配向して、画像を表示する。カラーフィルタ(以下、CFと略称する)側の構造は、図2に代表的な例を部分拡大して模式断面図で示すと、透明な基板1上に遮光性を与えるブラックマトリクス2と、その開口部を選択的に埋めて色画素を構成する赤色画素3rや緑色画素3gや青色画素3b等の着色透明画素を設けて表示色を色分解し、それらの有効領域全体を覆う共通電極層として透明導電膜4を設ける構成となっている。さらに前記多色カラー表示装置用の液晶表示パネルを構成するには、CF上に液晶配向膜を覆って配向処理を施した後、液晶と接するように配置することにより達成できる。
【0004】
一方、特に小型のカラー液晶表示装置の高精細化を実現するために、画素の狭ピッチ化とブラックマトリクス(以下、BMと略称する)の線幅の細線化が進んでいる。従来には、BM上にオーバーラップする着色透明画素は、隣り合う異なる色の着色透明画素と重なるまで延出することは少なく、BMの線幅内で隣の着色透明画素とギャップを隔てて配置されることが多かったが、BMの細線化に伴い、BM上で互いに異なる色の着色透明画素が重なることを許容する設計がなされるようになり、図2のように、BM上で比較的大きな凹凸を伴う断面形状を呈することが生じやすい。
【0005】
前記液晶表示パネルの構造において、パネルの表示品質を高く維持する上で、カラーフィルタ表面を平坦化することが好ましい。従って、上述のようにBM上で異なる着色透明画素が重なることを許容する場合は、重なり部分を後工程で研磨したり、重なり部分を構成する着色透明画素の縁辺部をBM面に対して緩やかな傾斜を持たせる工夫などにより、表面の凹凸の悪影響を軽減した(特許文献1および2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−230124号公報
【特許文献2】特開2006−227295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カラーフィルタの着色透明画素がブラックマトリクス上で延出して互いに異なる着色透明画素同士が重なり合い、表面の凹凸を生じ易いことは、上述の対策をもってしても完全には避けられない。まして、着色透明画素の配列の形態によっては、2つの着色透明画素の重なりのみならず、3つの着色透明画素の重なりも発生し、盛り上がりがさらに大きくなる。また、重なり部の盛り上がりが大きくなった着色透明画素の縁辺部には微小な凹部
も発生し易い。
【0008】
このような表面の凹凸を有する着色透明画素の色配列領域全体をブラックマトリクスも含めて覆う共通電極層としての透明導電膜を形成すると、その製造工程の途中または、透明導電膜形成後の熱処理等の工程において、透明導電膜にクラックが発生することがある。クラックは、ブラックマトリクス表面の着色透明画素の重なり部または隣接する部分に起点を生じることが多い。また、生じた起点からブラックマトリクス開口部の画素面上にまで容易に延長増大することが多く、透明導電膜に発生するクラックを有するカラーフィルタを液晶表示パネルに組み込むと、液晶配向駆動に不均一が生じ、表示不良を引き起こす。
【0009】
本発明は、前記の問題点に鑑みて提案するものであり、本発明が解決しようとする課題は、カラーフィルタを構成する複数の着色透明画素が画素境界部で互いに延出して重なりまたは隣接する場合に、着色透明画素の色配列領域の全表面を覆う透明導電膜の特に前記画素境界部上にクラックを発生させないカラーフィルタとその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、単一色の着色透明画素が基板上で3色以上の規則的な繰り返しにより色配列され、色配列領域の全表面を覆うように透明導電膜を設けたカラーフィルタであって、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部に限定して、画素境界部を構成する2色とは異なる色の着色透明画素材料からなるオーバーコート層を透明導電膜の下に設けたことを特徴とするカラーフィルタである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、画素境界部が、画素縁辺部の遮光性下地としてブラックマトリクスパターンによって予め規定されることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、着色透明画素の色配列が、赤色、緑色、青色の3色からなり、オーバーコート層が、赤色画素と緑色画素との画素境界部上に青色材料で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、着色透明画素を、フォトリソグラフィ法により赤色、緑色の順にパターン形成した後、青色の画素形成に際して、青色画素の形成と同時に、同一材料によるオーバーコート層を赤色画素と緑色画素との画素境界部上にフォトリソグラフィ法により形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、透明導電膜を設けたカラーフィルタにおいて、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部に限定して、画素境界部を構成する2色とは異なる色の着色透明画素材料からなるオーバーコート層を透明導電膜の下に設けたので、画素境界部上の透明導電膜にクラックを発生させないカラーフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のカラーフィルタの一例を示す模式断面図である。
【図2】従来のカラーフィルタの一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明のカラーフィルタの構成を透明導電膜形成前の状態により詳細に説明するための模式図であって、(a)は拡大した平面図、(b)は(a)の点線円内をさらに拡大表示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に従って、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルタの一例を部分拡大して示す模式断面図である。図の縦横比は誇張してあり、膜厚方向の縦の拡大を大きく示す。
【0017】
本発明のカラーフィルタは、単一色の着色透明画素が基板1上で3色以上の規則的な繰り返しにより色配列され、色配列領域の全表面を覆うように透明導電膜4を設けたカラーフィルタであって、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部に限定して、画素境界部を構成する2色とは異なる色の着色透明画素材料からなるオーバーコート層5を透明導電膜4の下に設けたことを特徴とする。
【0018】
本例では、画素境界部が、画素縁辺部の遮光性下地としてブラックマトリクス(BM)2のパターンによって予め規定される最も一般的な形態を示している。BMは、液晶表示パネルの各画素間を遮光して仕切ることにより、表示品質を高めることができるものであって、カーボン等の遮光性の顔料を含む感光性樹脂を塗布後に露光、現像するフォトリソグラフィー法により、あるいは金属や金属酸化物等の無機薄膜を成膜後にフォトリソグラフィ法とエッチング法により、パターン形成することができる。
【0019】
着色透明画素の色配列は、本例では赤色画素3r、緑色画素3g、青色画素3bの3色からなり、オーバーコート層5が、赤色画素3rと緑色画素3gとの画素境界部上に青色材料で構成される。着色透明画素は、材料として所望の着色顔料を用いて、BMのパターン形成について説明した第一の製法例と同様に、顔料を含む感光性を有する透明樹脂によるフォトリソグラフィー法により形成できる。各色画素の配置とBMの位置合わせ精度を考慮して、BM線幅の一部をオーバーラップさせて開口部に隙間を作らないようにする必要があるが、画素が狭ピッチ化しBMの細線化が進んだ場合に多く採用される本例のように、互いに異なる隣り合う着色透明画素がBM表面上に延出して互いに重なり合う重なり部を有するような設計も行われる。
【0020】
透明導電膜4は、ITO(インジウム・錫・酸化物)等の薄膜で形成し、スパッタリング法や真空蒸着法等の一般的な薄膜形成方法が利用される。透明導電膜にクラックが発生する現象は、有機樹脂膜を含む着色層を下地としてその表面を覆う無機薄膜の透明導電膜が膜のストレスを解放する結果と見られており、特に無機薄膜の下地の有機層の微小な凹凸を起点として発生しやすい傾向が認められる。透明導電膜を成膜するスパッタリング法や真空蒸着法等の薄膜形成工程の成膜条件により膜の内部応力をできるだけ緩和して、クラックを低減することもある程度可能である。しかし、透明電極層の優れた電気的光学的特性とクラックの完全防止とを両立させる条件を選択することは難しい。
【0021】
また、画素境界部上の透明導電膜4にクラックを発生させる要因として、前述の表面凹凸という形態的な要因の他に、透明導電膜の成膜工程の途中、または、透明導電膜形成後の熱処理等の処理工程中に、下地の着色透明画素を構成する樹脂が受ける熱による収縮が考えられる。特に、熱収縮率の高い樹脂の含有率が大きい場合に、下地から透明導電膜に及ぼすストレスが大きくなる。さらに、互いに異なる材料からなる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部においては、前記の形態的要因と熱収縮変化に伴う要因とが相俟って透明導電膜に最もクラックを発生させ易い箇所となる。
【0022】
図3は、本発明のカラーフィルタの構成を透明導電膜形成前の状態により詳細に説明するための模式図であって、(a)は拡大した平面図、(b)は(a)の点線円内をさらに拡大表示した断面図である。
図3(a)に示すように、ブラックマトリクス2で規定される画素境界部の内、図中の縦方向のBM上で、ストライプ状の赤色、緑色、青色に分けて形成した着色透明画素3r、3g、3bの列のそれぞれの縁辺部が、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部を構成する。なお、画素境界部がBMで規定されない場合は、事実上BM幅に相当する画素縁辺部の重なり部または隣接領域を画素境界部と定義する。
【0023】
また、図3(b)に示す着色透明画素の重なり部8は、本例では、基板1上のブラックマトリクス2上で、赤色画素3rの縁辺部と緑色画素3gの縁辺部とが重なり合い、矢印引き出し線で示す微小な凹部9を形成している。前述の説明のとおり、透明導電膜に最もクラックを発生させ易い箇所が凹部9であるので、青色画素3bと同一の材料でオーバーコート層5を形成する。
【0024】
次に、本発明のカラーフィルタを製造する方法について述べる。
基板1としては、一般の液晶表示装置に用いられる無アルカリガラス等の透明基板が使用できる。BMパターンを前述のフォトリソグラフィー法により形成する際に、例えば、三菱マテリアル電子化成(株)製のチタンブラック12Sを遮光性顔料として使用することができる。着色透明画素を前述のフォトリソグラフィー法により形成する際に使用される材料の内、各色の顔料としては、例えば、赤色用顔料として、C.I.Pigment Red 254、およびC.I.Pigment Red 177、緑色用顔料として、C.I.Pigment Green 36、およびC.I.Pigment Yellow 150、青色用顔料として、C.I.Pigment Blue 15、およびC.I.Pigment Violet 23を使用することができる。
【0025】
上記各色の着色顔料にアクリル樹脂を含むワニスを加えて各色の分散体を作製し、その後、光硬化性モノマー、光重合開始剤、増感剤、溶剤を適宜加えて均一に混合、濾過して塗布用の感光性着色材料を得る。通常のフォトリソグラフィー法の手段により、1色目に赤色画素3rを所定の位置に形成し、同様の手段を繰り返して、2色目に緑色画素3gを赤色画素3rと隣り合う所定の位置に形成する。3色目の形成に際しては、3色目の青色画素3bを赤色画素3rと緑色画素3gとに挟まれた所定の位置に形成すると同時に、同一工程で、オーバーコート層5を赤色画素と緑色画素との画素境界部上に形成する。本例の光硬化性の感光性材料を使用の場合、露光工程に使用するフォトマスクの開口部を、青色画素3bに相当する領域とオーバーコート層5に相当する領域とに設けておくことにより、同時形成が可能である。すなわち、工程上の負荷を何ら増大させないで、透明導電膜のクラックを防止する方策を施すことができる。
【0026】
次に、カラーフィルタ製造の最後の工程として、ブラックマトリクスと着色透明画素のパターンが形成されたカラーフィルタの清浄表面に、ITOの透明導電膜を約100nmの厚さに均一にスパッタリング成膜することができる。
【0027】
なお、本例では、オーバーコート層5を赤色画素3rと緑色画素3gとの画素境界部上のみに設けて、他の種類の画素境界部上に設ける例を示していないが、他の、緑色画素3gと青色画素3bとの画素境界部上や、青色画素3bと赤色画素3rとの画素境界部上にオーバーコート層を設けることを妨げるものではない。但し複数種の画素境界部上に設ける場合には、製造工程が複雑になることは避けられない。
【0028】
一方、本例では、着色透明画素の形成順に都合の良い3色目の青色の材料によるオーバーコート層を形成しており、しかも青色材料は、前記分散体中の樹脂比率を他の着色材料の分散体に較べて低くできるので、相対的に熱収縮率を小さくして作製できる。このため、赤色画素3rと緑色画素3gとの画素境界部上に青色画素3bと同一の材料でオーバーコート層5を設けることで、最も効果の大きい対策を提供することができる。
【符号の説明】
【0029】
1・・・基板
2・・・ブラックマトリクス
3r・・・赤色画素
3g・・・緑色画素
3b・・・青色画素
4・・・透明導電膜
5・・・オーバーコート層
8・・・着色透明画素の重なり部
9・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一色の着色透明画素が基板上で3色以上の規則的な繰り返しにより色配列され、色配列領域の全表面を覆うように透明導電膜を設けたカラーフィルタであって、互いに異なる2色の画素縁辺部が重なりまたは隣接する画素境界部に限定して、画素境界部を構成する2色とは異なる色の着色透明画素材料からなるオーバーコート層を透明導電膜の下に設けたことを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項2】
画素境界部が、画素縁辺部の遮光性下地としてブラックマトリクスパターンによって予め規定されることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタ。
【請求項3】
着色透明画素の色配列が、赤色、緑色、青色の3色からなり、オーバーコート層が、赤色画素と緑色画素との画素境界部上に青色材料で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ。
【請求項4】
着色透明画素を、フォトリソグラフィ法により赤色、緑色の順にパターン形成した後、青色の画素形成に際して、青色画素の形成と同時に、同一材料によるオーバーコート層を赤色画素と緑色画素との画素境界部上にフォトリソグラフィ法により形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−47720(P2013−47720A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185798(P2011−185798)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】