説明

カラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクター

【目的】本発明は、特定の波長(波長帯)の光のみを透過し、必要な光の透過効率が高く、十分な耐久性を有しかつ安価で容易に作成可能なことを最も主要な目的としている。
【構成】本発明は、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が透光部に集光するように配設されたスリットとを備えたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクターに係り、特に特定の波長(波長帯)の光のみを透過し、かつ必要な光の透過効率が高く、しかも十分な耐久性を有するカラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、例えば液晶を用いたビデオプロジェクター(以下、液晶ビデオプロジェクターと称する)においては、要求される特定の波長(波長帯)の光のみを透過するためのカラーフィルターが多く用いられてきている。
【0003】図6は、この種の従来の液晶ビデオプロジェクターの構成例を示す概要図である。図6において、図示しない電球等の光源から発した照明光(白色光)1が、集光レンズ2を通ってカラーフィルター3を照明し、このカラーフィルター3と液晶パネル4を通過した光は、投影レンズ5によって図示しないスクリーン上に投影されて、カラーフィルター3と液晶パネル4で作られたカラー画像が、スクリーン上に結像するようになっている。
【0004】ここで、カラーフィルター3は、通常、図7R>7にその構成例を示すように、液晶パネル4のドットに対応させた赤(R)、緑(G)、青(B)の小さなドットで構成されるマトリックス状になっている。
【0005】ところで、このような液晶ビデオプロジェクターに用いられるカラーフィルターにおいては、品質面、および製造工程面で、次のような問題がある。
【0006】まず、品質面では、カラーのビデオプロジェクターは、投影像が明るく色がよいことが要求されることから、これに用いられるカラーフィルターとしては、以下のようなことが求められる。
【0007】(a)要求される特定の波長(波長帯)の光のみを透過すること。
【0008】(b)必要な光の透過効率がなるべく高いこと。
【0009】(c)強い光源で照らし続けても大丈夫なだけの十分な耐久性を有すること。
【0010】しかしながら、これらの条件を全て満たすようなカラーフィルターを作成することは、それに用いる染料等の制限から非常に困難である。
【0011】一方、製造工程面では、従来の方法では、カラーフィルターが赤、緑、青の3つの色の小さなドットで構成されていることから、小さなドットのパターンの着色工程を3回繰り返す必要があり、作成にかなり手間がかかる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来のカラーフィルターにおいては、特定の波長(波長帯)の光のみを透過し、光の透過効率が高く、十分な耐久性を有するカラーフィルターを作成することが非常に困難であり、しかも作成にかなり手間がかかるという問題があった。
【0013】本発明は上述のような問題を解決するために成されたもので、特定の波長(波長帯)の光のみを透過し、かつ必要な光の透過効率が高く、しかも十分な耐久性を有する安価で容易に作成可能なカラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクターを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、まず、請求項1に記載の発明では、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が透光部に集光するように配設されたスリットとを備えて構成している。
【0015】一方、請求項2に記載の発明では、液晶パネルを通過した照明光を、投影レンズによってスクリーン上に投影することにより、液晶パネルで作られたカラー画像をスクリーン上に結像するようにした液晶ビデオプロジェクターにおいて、液晶パネルの前または後ろに密着して配設され、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が透光部に集光するように、液晶パネルと投影レンズとの間の空間中に配設されたスリットとより成るカラーフィルターを備えて構成している。
【0016】
【作用】従って、本発明のカラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクターにおいては、カラーフィルターをホログラムを用いて構成することにより、ホログラムの回折光の角度で色の中心波長を定められるため、空間周波数の調節で任意の波長を選択することができる。
【0017】また、ホログラムパネルにブレーズド格子等を用いることにより、ほぼ100%の回折効率が得られるため、光の利用効率を著しく高めることができる。
【0018】さらに、ホログラムの材料は、透明な樹脂であれば何でも構わないため、耐久性が極めてよい。
【0019】さらにまた、カラーフィルターに透過型の単純なホログラムを用いることにより、エンボス成型や射出成型によって簡単に複製を行なえるため、安価でかつ容易に作成することができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】図1は、本発明によるカラーフィルターを適用した液晶ビデオプロジェクターの全体構成例を示す概要図であり、図6と同一部分には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0022】すなわち、本実施例の液晶ビデオプロジェクターは、図1に示すように、図6における集光レンズ2およびカラーフィルター3を省略し、これに代えてホログラムパネル6およびスリット7を備えて構成したものである。
【0023】ここで、ホログラムパネル6は、前記液晶パネル4の前に密着して配設され、前述したカラーフィルター3における、赤、緑、青のそれぞれの色のフィルターに対応した部分が、図2に示すようなそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラム6R、6G、6Bからなるものである。
【0024】すなわち、ホログラムパネル6のそれぞれの色に対応したホログラム6R、6G、6Bは、例えば赤色のホログラム6Rは、図3に示すように、赤色レーザー光で照射した時に、回折光がスリット7上に集光するようなもので、緑色、青色のホログラム6G、6Bも、それぞれ緑色、青色のレーザー光で照射した時に、回折光がそれぞれスリット7上に集光するようなものである。
【0025】また、スリット7は、透光部7aを有し、ホログラムパネル6からの各色に対応したそれぞの回折光が透光部7aに集光するように、液晶パネル4と投影レンズ5との間の空間中に配設されているものである。すなわち、ホログラムパネル6の中の各6R、6G、6Bホログラムに対応した色の単色光(レーザー光)で再生した時に、回折光がスリット7の透光部7aの位置に集光するような関係にあればよい。
【0026】次に、以上のように構成した本実施例の液晶ビデオプロジェクターの作用について、図4および図5R>5を用いて説明する。
【0027】図1において、図示しない電球等の光源から発した照明光(白色光)1は、ホログラムパネル6を照明し、このホログラムパネル6と液晶パネル4を通過した光は、スリット7を通過し、投影レンズ5によって図示しないスクリーン上に結像される。
【0028】すなわち、ホログラムパネル6に白色光が照明されると、赤、緑、青のそれぞれの色に対応したホログラム6R、6G、6Bからの回折光は、虹色の直線上に広がり、例えば赤色に対応したホログラム6Rは、図4に示すように広がって、赤の回折光のみがスリット7を通過する。
【0029】赤、緑、青のそれぞれの色に対応したホログラム6R、6G、6Bからの回折光は、図5に示すように、それぞれ赤、緑、青の成分のみがスリット7を通過して投影レンズ5に届く。これにより、各ドットはスクリーン上にそれぞれ赤、緑、青の色のドットとして結像されて、カラーの画像が表現されるため、カラーフィルターとして作用する。
【0030】上述したように、本実施例では、液晶パネル4を通過した照明光1を、投影レンズ5によってスクリーン上に投影することにより、液晶パネル4で作られたカラー画像をスクリーン上に結像するようにした液晶ビデオプロジェクターにおいて、液晶パネル4の前に密着して配設され、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラム6R、6G、6Bからなるホログラムパネル6と、透光部7aを有し、ホログラムパネル6からの各色に対応したそれぞの回折光が透光部7aに集光するように、液晶パネル4と投影レンズ5との間の空間中に配設されたスリット7とより成るカラーフィルターを備えて構成するようにしたものである。
【0031】従って、次のような効果が得られるものである。
【0032】(a)カラーフィルターをホログラムを用いて構成することにより、ホログラムの回折光の角度で色の中心波長を定められるため、空間周波数の調節で任意の波長を選択する、すなわち特定の波長(波長帯)の光のみを透過することが可能となる。
【0033】(b)ホログラムパネル6に、ブレーズド格子、深溝グレーティング等のホログラムを用いることにより、特定の色の光を100%利用できる、すなわちほぼ100%の回折効率が得られるため、光の利用効率を著しく高めて、明るい画像を得ることが可能となる。
【0034】(c)ホログラムの材料は、透明な樹脂であれば何でも構わない、すなわちエンボスホログラムやインジェクションホログラム等で使っている樹脂(例えば、塩ビ板、透明プラスチック、UV硬化樹脂等)ため、材質さえ選べば耐久性が極めてよい。また、ホログラムの形状のみで色が定まるため、変色等の現象が起きることはない。
【0035】(d)本実施例で用いるホログラムは、透過型の単純なホログラムであり、表面レリーフ型のホログラムとして作成しておくことにより、エンボス成型や射出成型によって簡単に複製を行なうことができるため、従来のカラーフィルターよりも極めて安価にかつ容易に作成することが可能となる。
【0036】尚、上記実施例では、ホログラムパネル6を液晶パネル4の前に密着して配設する場合について説明したが、これに限らずホログラムパネル6を液晶パネル4の後に密着して配設するようにしてもよい。
【0037】また、上記実施例において、スリット7を配設する位置としては、液晶パネル4と投影レンズ5との間の空間中であればどこでもよいが、投影レンズ5に近い位置に配設するほうが好ましい。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が透光部に集光するように配設されたスリットとを備えて構成し、また液晶パネルを通過した照明光を、投影レンズによってスクリーン上に投影することにより、液晶パネルで作られたカラー画像をスクリーン上に結像するようにした液晶ビデオプロジェクターにおいて、液晶パネルの前または後ろに密着して配設され、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が透光部に集光するように、液晶パネルと投影レンズとの間の空間中に配設されたスリットとより成るカラーフィルターを備えて構成したので、特定の波長(波長帯)の光のみを透過し、かつ必要な光の透過効率が高く、しかも十分な耐久性を有する安価で容易に作成可能なカラーフィルターおよびそれを用いた液晶ビデオプロジェクターが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるカラーフィルターを適用した液晶ビデオプロジェクターの一実施例を示す概要図。
【図2】同実施例におけるホログラムパネルの構成例を示す概要図。
【図3】同実施例におけるホログラムパネルの働きを説明するための概要図。
【図4】同実施例における作用を説明するための概要図。
【図5】同実施例における作用を説明するための概要図。
【図6】従来の液晶ビデオプロジェクターの構成例を示す概要図。
【図7】図6におけるカラーフィルターの構成例を示す概要図。
【符号の説明】
1…照明光(白色光)、4…液晶パネル、5…投影レンズ、6…ホログラムパネル、6R、6G、6B…赤、緑、青のホログラム、7…スリット、7a…透光部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、前記ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が前記透光部に集光するように配設されたスリットと、を備えて成ることを特徴とするカラーフィルター。
【請求項2】 液晶パネルを通過した照明光を、投影レンズによってスクリーン上に投影することにより、前記液晶パネルで作られたカラー画像を前記スクリーン上に結像するようにした液晶ビデオプロジェクターにおいて、前記液晶パネルの前または後ろに密着して配設され、赤、緑、青のそれぞれの色に対応させた微小なドットのホログラムからなるホログラムパネルと、透光部を有し、前記ホログラムパネルからの各色に対応したそれぞの回折光が前記透光部に集光するように、前記液晶パネルと投影レンズとの間の空間中に配設されたスリットとより成るカラーフィルターを備えたことを特徴とする液晶ビデオプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−232319
【公開日】平成5年(1993)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−32275
【出願日】平成4年(1992)2月19日
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)