説明

カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器

【課題】混色が防止され、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターの製造方法およびそのようなカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明のカラーフィルターの製造方法は、多数個のセルが設けられた基板上のセル内に、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから所定の組成のインクを吐出して製造する方法であり、基板を液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、セル内にインクを付与する工程と、付与されたインクを固化させ、着色部を形成する工程とを有し、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向において、セルの縁部から所定の幅で、インクの着弾を禁止する領域が設けられており、該領域の幅をL[μm]、インクの液滴の平均径をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦4.5の関係を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルターの製造方法、カラーフィルター、画像表示装置、および、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー表示を行う液晶表示装置(LCD)等には、一般に、カラーフィルターが用いられている。
カラーフィルターは、従来、着色剤、感光性樹脂、官能性モノマー、重合開始剤等を含む材料(着色層形成用組成物)で構成された塗膜を基板上に形成し、その後、フォトマスクを介して光を照射する感光処理、現像処理等を行う、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いて製造されてきた。このような方法では、通常、基板のほぼ全面に、各色に対応する塗膜を形成し、その一部のみを硬化させ、それ以外の大部分を除去するという操作を繰り返すことにより、各色が重なり合わないようにカラーフィルターを製造する。このため、カラーフィルターの製造において形成される塗膜は、最終的に得られるカラーフィルターには、その一部のみが着色層として残存するのみで、その大部分が製造工程において除去されることとなる。このため、カラーフィルターの製造コストが上昇するばかりでなく、省資源の観点からも好ましくない。
【0003】
一方、近年、インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、基板上に設けられた複数のセル内に着色層形成用の材料(着色層形成用インク。以下単にインクともいう。)を吐出し、カラーフィルターの着色層(着色部)を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような方法は、インクの液滴の吐出位置等の制御が容易で、着色層形成用組成物の無駄を少なくすることができるため、環境への負荷を低減することができ、また、製造コストも抑制することができる。
【0004】
ところで、カラーフィルターの製造に用いられるインクは、着色剤や樹脂材料等を含んでいる。このため、このようなインクは、一般に粘度が高い。また、カラーフィルターの製造において、インクの吐出は、通常、生産性の観点から、基板をインクジェットヘッドに対して相対的に移動させつつ行うものである。
上記のように比較的粘度の高いインクは吐出すると、尾引きが生じる場合がある。インクの着弾位置によっては、その尾引きが切れた場合であってもその尾引き部分(以下、サテライトと言う)が同一のセル内に回収されるが、このサテライトが、基板の相対的な移動に伴って、隣り合うセル内へ入ってしまう場合があり、これによって、隣り合うセル同士で混色が生じてしまうといった問題があった。その結果、所望とする発色の着色層を形成することができず、製造されるカラーフィルターの色再現性が低下するといった問題があった。また、セルの高さおよび形状を工夫してこのような混色を防ぐことも考えられるが、セルの高さを高くすると、吐出するインクの量も多くしなければならず、着色層の厚さも厚くなり、生産性や光の利用効率が低下してしまうといった問題があった。また、生産性を向上させるために、インクジェットヘッドからの吐出周波数を上げて、基板の相対的な移動速度を速くした場合、上記のような混色といった問題が顕著であった。
また、従来のインクを用いて着色層を形成する場合、インクがセル内全体に十分に行き渡らず、製造されるカラーフィルターに白抜け光の透過すじが生じたり、また、着色部の表面の平坦性が損なわれ、結果として、製造されるカラーフィルターのコントラストを低下させてしまうといった問題もあった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−372613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、混色が防止され、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターの製造方法を提供すること、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターを提供すること、また、該カラーフィルターを備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明のカラーフィルターの製造方法は、多数個のセルが設けられた基板上の前記セル内に、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから、着色剤と樹脂材料と液性媒体とを含むインクを吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
前記基板を、前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記セル内に前記液滴吐出ヘッドから前記インクの液滴を付与するインク付与工程と、
前記セル内に付与された前記インクから液性媒体を除去し、前記インク中に含まれる樹脂材料を硬化させ、着色部を形成する着色部形成工程とを有し、
前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向において、前記セルの縁部から所定の幅で、インクの着弾を禁止する着弾禁止領域が設けられており、
前記着弾禁止領域の幅をL[μm]、インクの液滴の平均径をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦4.5の関係を満足し、
前記樹脂材料は、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体W、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

これにより、混色が防止され、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターの製造方法を提供することができる。
【0008】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記着弾禁止領域の幅をL[μm]、前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向における前記セルの幅をL[μm]としたとき、0.025≦L/L≦0.5の関係を満足することが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0009】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記着弾禁止領域の幅Lは、3.0〜50.0μmであることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをさらに効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0010】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記インクの25℃における粘度は、13mPa・s以下であることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをさらに効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0011】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度は、30〜400mm/秒であることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより確実に防止することができる。
本発明のカラーフィルターの製造方法では、隣接するセルの間には、隔壁が設けられており、
前記隔壁の高さが、1.4〜2.6μmであることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記樹脂材料は前記重合体Wを含むものであり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w1の含有率が、25〜75wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w2の含有率が、2〜25wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w3の含有率が、5〜50wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w4の含有率が、3〜40wt%であることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0013】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記樹脂材料は前記重合体Zを含むものであり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z1の含有率が、50〜95wt%であり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z2の含有率が、3〜35wt%であり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z3の含有率が、3〜35wt%であることが好ましい。
これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0014】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記樹脂材料は、さらに、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含むものであることが好ましい。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0015】
本発明のカラーフィルターの製造方法では、前記樹脂材料は、さらに、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含む重合体Yを含むものであることが好ましい。
【化12】

【化13】

これにより、隣接するセル間において、着色部(インク)が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を効率よく形成することができる。
【0016】
本発明のカラーフィルターは、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターを提供することができる。
本発明の画像表示装置は、本発明のカラーフィルターを備えたことを特徴とする。
これにより、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能な画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能な電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《カラーフィルター》
まず、本発明のカラーフィルターの一例について説明する。
図1は、本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、カラーフィルター1は、基板11と、後述するようなカラーフィルター用インクを用いて成形された着色部12とを備えている。着色部12としては、互いに異なる色の第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cが設けられている。そして、隣接する着色部12の間には、隔壁13が設けられている。
【0018】
<基板>
基板11は、光透過性を有する板状の部材で、着色部12、隔壁13を保持する機能を有している。
基板11は、実質的に透明な材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター1を透過する光により、より鮮明な画像を形成することができる。
【0019】
また、基板11は、耐熱性、機械的強度に優れたものであるのが好ましい。これにより、例えば、カラーフィルター1の製造時に加わる熱による変形等を確実に防止することができる。このような条件を満足する基板11の構成材料としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ノルボルネン系開環重合体やその水素添加物等が挙げられる。
【0020】
<着色部>
着色部12は、後述するような本発明のカラーフィルターの製造方法により形成されたものである。
このように着色部12は、後述するような本発明のカラーフィルターの製造方法を用いて形成されたものであるため、各画素間での特性のばらつきが小さく、不本意な混色(複数種のカラーフィルター用インクの混合)等が確実に防止されている。このため、カラーフィルター1は、色むら、濃度むら等の発生が抑制された、信頼性が高いものとなっている。また、着色部12は、後述するような製造方法により形成されたものであるため、その表面は平坦性が高く、また、着色部12間での厚さのばらつきも小さい。その結果、カラーフィルター1は、着色部12の発色性に優れ、コントラストに優れたものとなっている。また、反射すじの発生も防止されたものとなっている。
【0021】
各着色部12は、後述する隔壁13により囲まれた領域であるセル14内に設けられている。
第1の着色部12A、第2の着色部12B、および第3の着色部12Cは、互いに異なる色のものである。例えば、第1の着色部12Aを赤色フィルター領域(R)、第2の着色部12Bを緑色フィルター領域(G)、第3の着色部12Cを青色フィルター領域(B)とすることができる。そして、一組の異なる色の着色部12A、12B、12Cで1画素を構成している。そして、カラーフィルター1においては、その横方向および縦方向に、着色部12が所定数配置されている。例えば、カラーフィルター1が、ハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1366×768個の画素が配置されており、フルハイビジョン用のカラーフィルターである場合には1920×1080個の画素が配置されており、スーパーハイビジョン用のカラーフィルターである場合には7680×4320個の画素が配置されている。なお、カラーフィルター1は、例えば、有効領域外に予備の画素を備えたものであってもよい。
【0022】
<隔壁>
隣接する着色部12の間には、隔壁(バンク)13が設けられている。これにより、隣接する着色部12同士が混色してしまうのをより確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
隔壁13は、透明な材料で構成されたものであってもよいが、遮光性を有する材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、コントラストに優れた画像を表示することができる。隔壁(遮光部)13の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、表示される画像のコントラストを特に優れたものとすることができる。
【0023】
隔壁13の高さは、1.4〜2.6μmであるのが好ましく、1.6〜2.5μmであるのがより好ましい。これにより、隣接する着色部12の間での混色(インクの混色)をより確実に防止することができる。また、カラーフィルター1を備えた画像表示装置、電子機器における視野角特性を優れたものとすることができる。なお、隔壁13の高さとは、セル14内の底部から隔壁13の最上部までの高さのことを指す。
【0024】
隔壁13は、いかなる材料で構成されたものであってもよいが、例えば、主として樹脂材料で構成されたものであるのが好ましい。これにより、後述するような方法で、隔壁13を容易に所望の形状を有するものとして形成することができる。また、隔壁13が遮光部としての機能を有するものである場合、その構成材料として、カーボンブラック等の光吸収性の材料を含むものであってもよい。
【0025】
《カラーフィルターの製造方法》
次に、本発明のカラーフィルターの製造方法について説明する。
図2は、カラーフィルターの製造方法を示す断面図、図3は、カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図、図5は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図、図6は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図、図7は、基板に形成されたセルの拡大平面図である。
【0026】
本発明のカラーフィルターの製造方法は、多数個のセルが設けられた基板を、液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、セル内に液滴吐出ヘッドから着色部形成用のインク(以下単に「インク」とも言う。)の液滴を付与するインク付与工程と、セル内に付与されたインクを固化させ、着色部を形成する着色部形成工程とを有するものである。また、本発明のカラーフィルターの製造方法は、後述するような樹脂材料を用いたインクを用いて行う。
【0027】
図2に示すように、本実施形態では、カラーフィルターの製造方法は、基板11を準備する基板準備工程(1a)と、基板11上に隔壁13を形成する隔壁形成工程(1b、1c)と、基板11を液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させ、インクジェット方式によりインク2を隔壁13で囲まれた領域(セル)14に付与するインク付与工程(1d)と、インク2から溶媒を除去した後硬化させて着色部12とする着色部形成工程(1e)とを有している。
【0028】
以下、各工程について詳細に説明する。
<基板準備工程>
まず、基板11を準備する(1a)。本工程で準備する基板11は、洗浄処理が施されたものであるのが好ましい。また、本工程で準備する基板11は、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理が施されたものであってもよい。
【0029】
<隔壁形成工程>
次に、基板11の隔壁形成用の感放射線性組成物を基板11の一方の面のほぼ全体に付与し、塗膜3を形成する(1b)。なお、基板11上に感放射線性組成物を付与した後、必要に応じて、プリベーク処理を行ってもよい。プリベーク処理は、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒という条件で行うことができる。
【0030】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、さらに、アルカリ現像液を用いた現像処理を行うことにより、隔壁13が形成される(1c)。PEBは、例えば、加熱温度:50〜150℃、加熱時間:30〜600秒、放射線照射強度:1〜500mJ/cmという条件で行うことができる。また、現像処理は、例えば、液盛り法、ディッピング法、振動浸漬法等により行うことができ、現像処理時間は、例えば、10〜300秒とすることができる。また、現像処理の後、必要に応じて、ポストベーク処理を行ってもよい。ポストベーク処理は、例えば、加熱温度:150〜280℃、加熱時間:3〜120分という条件で行うことができる。
【0031】
<インク付与工程>
次に、インクジェット方式により、後述するようなインク2を、隔壁13で囲まれたセル14内に付与する(1d)。
本工程は、形成すべき複数色の着色部12に対応する複数種のインク2を備えたカラーフィルター用インクセットを用いて行う。
【0032】
本実施形態において、インク2の吐出は、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて行う。
図3に示すように、本工程で用いる液滴吐出装置100は、インク2を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101からインク2が供給される吐出走査部102とを備える。吐出走査部102は、複数の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)114をキャリッジ105に搭載してなる液滴吐出手段103と、液滴吐出手段103の位置を制御する第1位置制御装置104(移動手段)と、前記工程で隔壁13が形成された基板11(以下、単に「基板11」とも言う。)を保持するステージ106と、ステージ106の位置を制御する第2位置制御装置108(移動手段)と、制御手段112とを備えている。タンク101と、液滴吐出手段103における複数の液滴吐出ヘッド114とは、チューブ110で連結されており、タンク101から複数の液滴吐出ヘッド114のそれぞれにインク2が圧縮空気によって供給される。
【0033】
第1位置制御装置104は、制御手段112からの信号に応じて、液滴吐出手段103をX軸方向、およびX軸方向に直交するZ軸方向に沿って移動させる。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで液滴吐出手段103を回転させる機能も有する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。第2位置制御装置108は、制御手段112からの信号に応じて、X軸方向およびZ軸方向の双方に直交するY軸方向に沿ってステージ106を移動させる。さらに、第2位置制御装置108は、Z軸に平行な軸の回りでステージ106を回転させる機能も有する。
【0034】
ステージ106は、X軸方向とY軸方向との双方に平行な平面を有する。また、ステージ106は、インク2を付与すべきセル14を有する基板11をその平面上に固定、または保持できるように構成されている。
上述のように、液滴吐出手段103は、第1位置制御装置104によってX軸方向に移動させられる。一方、ステージ106は、第2位置制御装置108によってY軸方向に移動させられる。つまり、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108によって、ステージ106に対する液滴吐出ヘッド114の相対位置が変わる。言い換えると、ステージ106に保持された基板11と、液滴吐出手段103とが相対的に移動する。本発明では、このように基板を液滴吐出手段(液滴吐出ヘッド)に対して相対的に移動させつつ、基板に対してインクの付与を付与する。
また、制御手段112は、インク2を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。
【0035】
図4に示すように、液滴吐出手段103は、それぞれほぼ同じ構造を有する複数の液滴吐出ヘッド114と、これらの液滴吐出ヘッド114を保持するキャリッジ105とを有している。本実施形態では、液滴吐出手段103に保持される液滴吐出ヘッド114の数は8個である。それぞれの液滴吐出ヘッド114は、後述する複数のノズル118が設けられた底面を有している。それぞれの液滴吐出ヘッド114のこの底面の形状は、2つの長辺と2つの短辺とを有する多角形である。液滴吐出手段103に保持された液滴吐出ヘッド114の底面はステージ106側を向いており、さらに、液滴吐出ヘッド114の長辺方向と短辺方向とは、それぞれX軸方向とY軸方向とに平行である。
【0036】
図5に示すように、液滴吐出ヘッド114は、X軸方向に並んだ複数のノズル118を有する。これら複数のノズル118は、液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXPが所定の値となるように配置されている。ノズルピッチHXPの具体的な値は、特に限定されないが、例えば、50〜90μmとすることができる。ここで、「液滴吐出ヘッド114におけるX軸方向のノズルピッチHXP」は、液滴吐出ヘッド114におけるノズル118のすべてをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像間のピッチに相当する。
【0037】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド114における複数のノズル118は、ともにX軸方向に延びるノズル列116Aと、ノズル列116Bとをなす。ノズル列116Aと、ノズル列116Bとは、間隔を空けて並行に配置されている。そして、本実施形態においては、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれにおいて、90個のノズル118が一定間隔LNPでX軸方向に一列に並んでいる。LNPの具体的な値は、特に限定されないが、100〜180μmとすることができる。
ノズル列116Bの位置は、ノズル列116Aの位置に対して、ノズルピッチLNPの半分の長さだけX軸方向の正の方向(図5の右方向)にずれている。このため、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズルピッチHXPは、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズルピッチLNPの半分の長さである。
【0038】
したがって、液滴吐出ヘッド114のX軸方向のノズル線密度は、ノズル列116A(またはノズル列116B)のノズル線密度の2倍である。なお、本明細書において「X軸方向のノズル線密度」とは、複数のノズルをY軸方向に沿ってX軸上に射像して得られた複数のノズル像の単位長さ当たりの数に相当する。もちろん、液滴吐出ヘッド114が含むノズル列の数は、2つだけに限定されない。液滴吐出ヘッド114はM個のノズル列を含んでもよい。ここで、Mは1以上の自然数である。この場合には、M個のノズル列のそれぞれにおいて複数のノズル118は、ノズルピッチHXPのM倍の長さのピッチで並ぶ。さらに、Mが2以上の自然数の場合には、M個のノズル列のうちの一つに対して、他の(M−1)個のノズル列は、ノズルピッチHXPのi倍の長さだけ重複無くX軸方向にずれている。ここで、iは1から(M−1)までの自然数である。
【0039】
さて、本実施形態では、ノズル列116Aおよびノズル列116Bのそれぞれが90個のノズル118からなるため、1つの液滴吐出ヘッド114は180個のノズル118を有する。ただし、ノズル列116Aの両端のそれぞれ5ノズルは「休止ノズル」として設定されている。同様に、ノズル列116Bの両端のそれぞれ5ノズルも「休止ノズル」として設定されている。そして、これら20個の「休止ノズル」からはインク2が吐出されない。このため、液滴吐出ヘッド114における180個のノズル118のうち、160個のノズル118がインク2を吐出するノズルとして機能する。
【0040】
図4に示すように、液滴吐出手段103においては、複数個の上記液滴吐出ヘッド114がX軸方向に沿って2列に配置されている。一方の列の液滴吐出ヘッド114と他方の列の液滴吐出ヘッド114とは、休止ノズル分を考慮して、Y軸方向から見て一部重なるように配置されている。これにより、液滴吐出手段103においては、基板11のX軸方向の寸法分の長さに渡り、インク2を吐出するノズル118が前記ノズルピッチHXPでX軸方向に連続するように構成されている。
本実施形態の液滴吐出手段103では、基板11のX軸方向の寸法分の長さ全体をカバーするように液滴吐出ヘッド114を配置しているが、本発明における液滴吐出手段は、基板11のX軸方向の寸法分の長さの一部をカバーするようにものでもよい。
【0041】
図6(a)および(b)に示すように、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、インクジェットヘッドである。より具体的には、それぞれの液滴吐出ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128とを備えている。振動板126と、ノズルプレート128との間には、タンク101から孔131を介して供給されるインク2が常に充填される液たまり129が位置している。
【0042】
また、振動板126と、ノズルプレート128との間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、1対の隔壁122とによって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、1対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129からインク2が供給される。
【0043】
振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、振動子124が位置する。振動子124は、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む1対の電極124A、124Bとを含む。この1対の電極124A、124Bとの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118からインク2が吐出される。なお、ノズル118からZ軸方向にインク2が吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0044】
制御手段112(図3参照)は、複数の振動子124のそれぞれに互いに独立に信号を与えるように構成されていてもよい。つまり、ノズル118から吐出されるインク2の体積が、制御手段112からの信号に応じてノズル118毎に制御されてもよい。また、制御手段112は、塗布走査の間に吐出動作を行うノズル118と、吐出動作を行わないノズル118とを設定することでもできる。
【0045】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124とを含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つの液滴吐出ヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。
上記のような液滴吐出装置100を用いて、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応するインク2を、セル14内に付与する。また、上記のような装置を用いることにより、セル14内に、効率よくかつ選択的にインク2を付与することができる。なお、図示の構成では、液滴吐出装置100は、インク2を保持するタンク101、チューブ110等を1色分しか有していないが、これらの部材を、カラーフィルター1が有する複数色の着色部12に対応する複数色分有するものであってもよい。また、カラーフィルター1の製造においては、複数色のインク2に対応する複数の液滴吐出装置100を用いてもよい。
上述したように、本実施形態では、基板11を液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、インク2を、セル14内に付与する。このようにインク2を付与することにより、カラーフィルター1の生産性を高めることができる。
【0046】
ところで、カラーフィルターの製造に用いられるインクは、着色剤や樹脂材料等を含んでいるため、一般に粘度が高い。また、カラーフィルターの製造において、インクの吐出は、通常、生産性の観点から、上述したように、基板をインクジェットヘッドに対して相対的に移動させつつ行うものである。上記のように比較的粘度の高いインクは吐出すると、糸引きが生じる場合がある。インクの着弾位置によっては、その糸引きが切れた場合であってもその糸引き部分が同一のセル内に回収されるが、この糸引き部分が、基板の相対的な移動に伴って、隣り合うセル内へ入ってしまう場合があり、これによって、隣り合うセル同士で混色が生じてしまうといった問題があった。その結果、所望とする発色の着色層を形成することができず、製造されるカラーフィルターの色再現性が低下するといった問題があった。また、セルの高さを高くしてこのような混色を防ぐことも考えられるが、セルの高さを高くすると、吐出するインクの量も多くしなければならず、着色層の厚さも厚くなり、生産性や光の利用効率が低下してしまうといった問題があった。また、生産性を向上させるために、基板の相対的な移動速度を速くした場合、このような混色といった問題が顕著であった。
【0047】
また、上記のような混色を防止する目的で、セルの中央部付近のみにインクを吐出した場合、インクがセル内全体に行き渡らず、製造されるカラーフィルターに光漏れ(白抜け、輝点)等が生じたり、また、着色部の表面の平坦性が損なわれ、結果として、製造されるカラーフィルターのコントラストを低下させてしまうといった問題があった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、後述するようなインクを用い、かつ、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向において、セルの縁部から所定の幅で、インクの着弾を禁止する着弾禁止領域を設けることにより、上記問題を解決できることを見出した。具体的には、着弾禁止領域の幅をL[μm]、インクの液滴の平均径をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦4.5の関係を満足する着弾禁止領域を設けることにより、隣接するセルにインクの糸引き部分が入るのを防止することができる。また、後述するようなインクを用いることにより、インクの糸引きを低減することができるとともに、セル内に吐出されたインクは、十分にセル内に濡れ広がる。その結果、隣接する着色部間での混色が防止され、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターを提供することができる。インクについては後に詳述する。
【0048】
これに対して、L/Lが下限値未満であると、隣接するセルにインクの糸引き部分が入るのを防止することができず、隣接する着色部間での混色が生じてしまう。一方、L/Lが前記上限値を超えると、セル内にインクを行き渡らせるのが困難となり、カラーフィルターの光漏れ(白抜け、輝点)の要因となる。
また、後述するようなインクを用いなかった場合、混色を十分に防止するのが困難となる。また、セル内にインクを行き渡らせるのが困難となり、形成される着色部表面に凹凸が生じ、製造されるカラーフィルターのコントラストが低下してしまう。
【0049】
このように本発明では、着弾禁止領域の幅をL[μm]、インクの液滴の平均径をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦4.5の関係を満足する着弾禁止領域を設けた点に特徴を有するが、0.6≦L/L≦4.3の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、本発明の効果をより顕著なものとすることができる。
【0050】
なお、本発明において、着弾禁止領域とは、液滴の中心を基準に考慮した領域で、着弾した際にその中心が入ることを禁止する領域のことを言う。
また、本発明において、インクの液滴の平均径とは、1回に吐出されたインクの体積から吐出された液滴を、その密度を1.0g/cmとして真球とした場合のその径の平均のことを言う。
【0051】
また、本発明において、基板の、液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向とは、基板が、液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動する主方向のことを指し、本実施形態においては、図中のY軸方向のことを言う。
本実施形態では、図7に示すように、Y軸方向(基板11の液滴吐出ヘッド114に対する相対的な移動方向)において、セル14の両方の縁部から所定の幅Xでインク2の着弾を禁止する着弾禁止領域141を設けている。
【0052】
このように両縁部に設けられた着弾禁止領域141は、基板11を液滴吐出ヘッド114に対して図7中右側に移動させる場合には、図7中左側の着弾禁止領域141内に液滴が着弾するのを禁止し、また、基板11を液滴吐出ヘッド114に対して図7中左側に移動させる場合には、図7中右側の着弾禁止領域141内に液滴が着弾するのを禁止するよう構成されている。これにより、基板11の液滴吐出ヘッド114に対する相対的な移動方向の自由度が向上し、カラーフィルター1の生産性を効果的に向上させることができる。
【0053】
着弾禁止領域141の幅をL[μm]、Y軸方向におけるセル14の幅をL[μm]としたとき、0.025≦L/L≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.033≦L/L≦0.4の関係を満足する満足するのがより好ましい。これにより、隣接するセル14間において、インク2が混色するのをより効果的に防止することができるとともに、平坦性の高い着色部を形成することができる。
【0054】
また、着弾禁止領域141の具体的な幅は、3.0〜50.0μmであるのが好ましく、5.0〜45.0μmであるのがより好ましい。これにより、隣接するセル14間において、インク2が混色するのをさらに効果的に防止することができる。
また、基板11の液滴吐出ヘッド114に対する相対的な移動速度は、30〜400mm/秒であるのが好ましく、50〜380mm/秒であるのがより好ましい。これにより、隣接するセル14間において、インク2が混色するのをより確実に防止することができる。
なお、本発明では、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として、ピエゾ素子の代わりに静電アクチュエータを用いるものでもよい。また、液滴吐出ヘッド114は、駆動素子として電気熱変換素子を用い、この電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して着色インクを吐出する構成であってもよい。
【0055】
<着色部形成工程(硬化工程)>
次に、セル14内のインク2から液性媒体(分散媒)を除去し、インク2中に含まれる樹脂材料を硬化させることにより固形状の着色部12とする(1e)。これにより、カラーフィルター1が得られる。
本工程は、通常、加熱により行うが、本工程においては、インク2を構成する液性媒体や樹脂材料の種類によっては、例えば、活性エネルギー線の照射や、カラーフィルター用インク2が付与された基板11を減圧環境下に置く等の処理を行ってもよい。活性エネルギー線を照射することにより、樹脂材料の硬化反応を効率よく進行させたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、樹脂材料の硬化反応を確実に進行させることができ、基板11等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。活性エネルギー線としては、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線、g線、i線、エキシマレーザー等を使用することができる。また、インク2が付与された基板11を減圧環境下に置くことにより、液性媒体(分散媒)をより効率よく除去することができたり、画素(セル)内での着色部の形状を、確実に好ましいものとすることができたり、加熱温度を比較的低いものとした場合であっても、液性媒体(分散媒)を確実に除去することができ、基板11等への悪影響の発生がより確実に防止される等の効果が得られる。
本工程での加熱温度は、特に限定されないが、50〜260℃であるのが好ましく、80〜240℃であるのがより好ましい。
【0056】
《インク(カラーフィルター用インク)》
次に、本発明のカラーフィルターの製造に用いるインク(カラーフィルター用インク)について詳細に説明する。
カラーフィルター用インク(以下単にインクとも言う。)は、着色剤と樹脂材料と液性媒体とを含むものである。
【0057】
<着色剤>
カラーフィルターは、通常、異なる複数色の着色部(一般に、RGBに対応する3色の着色)を有している。着色剤は、通常、形成すべき着色部の色調に応じて選択される。カラーフィルター用インクを構成する着色剤としては、例えば、各種顔料、各種染料を用いることができる。
【0058】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,53:1,57,57:1,57:2,58:2,58:4,60:1,63:1,63:2,64:1,81,81:1,83,88,90:1,97,101,102,104,105,106,108,108:1,112,113,114,122,123,144,146,149,150,151,166,168,170,171,172,174,175,176,177,178,179,180,185,187,188,190,193,194,202,206,207,208,209,215,216,220,224,226,242,243,245,254,255,264,265;C.I.ピグメントグリーン7,36,15,17,18,19,26,50,58;C.I.ピグメントブルー1,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,17:1,18,60,27,28,29,35,36,60,80;C.I.ピグメントイエロー1,3,12,13,14,15,16,17,20,24,31,34,35,35:1,37,37:1,42,43,53,55,60,61,65,71,73,74,81,83,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,116,117,119,120,126,127,128,129,138,139,150,151,152,153,154,155,156,157,166,168,175,180,184,185;C.I.ピグメントバイオレット1,3,14,16,19,23,29,32,36,38,50;C.I.ピグメントオレンジ1,5,13,14,16,17,20,20:1,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73,104;C.I.ピグメントブラウン7,11,23,25,33;C.I.ピグメントブラック1,7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
カラーフィルター用インクが着色剤として顔料を含むもの(顔料インク)である場合、着色剤として染料を含むもの(染料インク)に比べて、製造されるカラーフィルターの耐光性等をすぐれたものとすることができる。
特に、カラーフィルター用インクが、顔料(赤色顔料)として、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、および/または、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(赤色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、後に詳述するような分散剤、樹脂材料(硬化性樹脂組成物)と併用することによる効果がより顕著に発揮され、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができる。この結果、セルへのインク付与時においては、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
C.I.ピグメントレッド177の誘導体、C.I.ピグメントレッド254の誘導体として、下記式(14)または下記式(15)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、上述したような効果がさらに顕著に発揮される。
【0060】
【化14】

【0061】
【化15】

【0062】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(緑色顔料)として、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(緑色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、従来においては、安定的に分散させるのが極めて困難な材料であった。しかしながら、本発明者は、C.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、スルホン化された顔料誘導体を副顔料として同時に含むことにより、カラーフィルター用インク中における分散安定性を優れたものとすることができることを見出した。これにより、カラーフィルター用インクの発色性をさらに優れたものとすることができるとともに、着色部形成時において、顔料が高濃度化することによるカラーフィルター用インクのチキソトロピック性の上昇を抑制することができる。また、カラーフィルター用インク中における顔料の長期保存性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0063】
顔料として、C.I.ピグメントグリーン58とスルホン化された顔料誘導体とを含む場合、スルホン化された顔料誘導体として、下記式(16)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、製造されるカラーフィルターにおいて、より優れたコントラストの画像を表示することができる。
【0064】
【化16】

【0065】
C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、カラーフィルター用インク中における顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、2〜32重量部であるのが好ましく、7〜28重量部であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性をより優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターのコントラスト比、明度を特に優れたものとすることができる。
【0066】
また、特に、カラーフィルター用インクが、顔料(青色顔料)として、C.I.ピグメントブルー15:6およびC.I.ピグメントバイオレット23を含むものであると、当該カラーフィルター用インク(青色のカラーフィルター用インク)の発色性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0067】
カラーフィルター用インクが着色剤として顔料を含むもの(顔料インク)である場合、顔料の平均粒径は、10〜200nmであるのが好ましく、20〜180nmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性や、カラーフィルターインクの吐出安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性(耐光性等)を十分に優れたものとし、カラーフィルターにおける発色性、コントラスト等を特に優れたものとすることができる。
【0068】
また、染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、縮合多環芳香族カルボニル染料、インジゴイド染料、カルボニウム染料、フタロシアニン染料、メチン,ポリメチン染料等が挙げられる。染料の具体例としては、例えば、C.I.ダイレクトレッド2,4,9,23,26,28,31,39,62,63,72,75,76,79,80,81,83,84,89,92,95,111,173,184,207,211,212,214,218,221,223,224,225,226,227,232,233,240,241,242,243,247;C.I.アシッドレッド35,42,51,52,57,62,80,82,111,114,118,119,127,128,131,143,145,151,154,157,158,211,249,254,257,261,263,266,289,299,301,305,319,336,337,361,396,397;C.I.リアクティブレッド3,13,17,19,21,22,23,24,29,35,37,40,41,43,45,49,55;C.I.ベーシックレッド12,13,14,15,18,22,23,24,25,27,29,35,36,38,39,45,46;C.I.ダイレクトバイオレット7,9,47,48,51,66,90,93,94,95,98,100,101;C.I.アシッドバイオレット5,9,11,34,43,47,48,51,75,90,103,126;C.I.リアクティブバイオレット1,3,4,5,6,7,8,9,16,17,22,23,24,26,27,33,34;C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,7,10,15,16,20,21,25,27,28,35,37,39,40,48;C.I.ダイレクトイエロー8,9,11,12,27,28,29,33,35,39,41,44,50,53,58,59,68,87,93,95,96,98,100,106,108,109,110,130,142,144,161,163;C.I.アシッドイエロー17,19,23,25,39,40,42,44,49,50,61,64,76,79,110,127,135,143,151,159,169,174,190,195,196,197,199,218,219,222,227;C.I.リアクティブイエロー2,3,13,14,15,17,18,23,24,25,26,27,29,35,37,41,42;C.I.ベーシックイエロー1,2,4,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,39,40;C.I.アシッドグリーン16;C.I.アシッドブルー9,45,80,83,90,185;C.I.ベーシックオレンジ21,23等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
カラーフィルター用インク中における着色剤の含有率は、2〜25wt%であるのが好ましく、3〜20wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)からの吐出性(吐出安定性)を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な色濃度を確保することができる。
【0070】
<樹脂材料>
カラーフィルター用インクは、一般に、形成される着色部の基板に対する密着性を向上させる等の目的で、樹脂材料(バインダー樹脂)を含んでいる。
カラーフィルター用インクでは、樹脂材料は、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体W、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zのうちの少なくとも一方を含む。
【0071】
【化17】

【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
ところで、従来のカラーフィルターの製造に用いられているインクは、着色剤や樹脂材料等を含んでいるため、一般に粘度が高い。このように粘度の高いインクを吐出すると、尾引きが生じる場合がある。この尾引きが混色の原因となっていた。また、粘度の高いインクを用いた場合、セル内に着弾したインクは、セル内に十分に行き渡らすのが困難であった。特に、セルに上述したような着弾禁止領域を設けた場合には、上述したような尾引きによる混色を防止する効果は比較的高いものの、セル内にインクが濡れ広がらず、形成される着色部の平坦性が損なわれ、また、光漏れ(白抜け、輝点)等が生じてしまうといった問題が顕著であった。さらに、粘度の高いインクを吐出した場合、所望の位置に着弾させるのが困難で、着弾禁止領域を設けることによる効果が十分に得られないといった問題もある。
【0079】
これに対して、上記のような重合体W、Zは、ともにカラーフィルター用インク中において、着色剤を均一に分布させ、カラーフィルター用インクの粘度を低く保つ機能を有する。このような重合体を含むインクを用いることにより、前述したような着弾禁止領域を設けることによる効果との相乗効果により、確実に混色が防止され、形成される着色部は、平坦性が高いとともに、光漏れ(白抜け、輝点)等の発生が確実に防止されたものとなる。その結果、色再現性に優れるとともに、コントラストに優れた画像を表示することが可能なカラーフィルターを得ることができる。
【0080】
また、さらに、重合体W、Zは、着色剤(特に顔料)をインク中において均一に分布(分散)させることができるため、インクを吐出部(ノズル)から吐出する際において、吐出されるインクの液滴の量の均一性、吐出される液滴の着弾精度等(吐出安定性ともいう)を長期にわたって優れたものとすることができる。その結果、着弾禁止領域内へのインクの着弾が防止され、混色が生じるのを確実に防止することができる。
【0081】
また、重合体W、Zは、顔料の周囲に存在して顔料の粒子同士の凝集を防止し、長期にわたって顔料の分散安定性を優れたものとして維持する。このため、着色部内において着色剤が均一に分布し、製造されるカラーフィルターの明度、コントラスト比を優れたものとすることができる。
また、カラーフィルター用インクは重合体W、Zを含むことにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。
【0082】
また、重合体W、Zは、エポキシ基を有し、硬化性樹脂であるが、所定温度以下では実質的に硬化反応を進行させず、それ以上の温度で効率よく硬化反応を進行させることができる特性(以下、「硬化反応のスイッチング特性」ともいう)を有している。このような特性を有することにより、カラーフィルター用インクの保存時等において、重合体W、Zが不本意に硬化反応を起こすことが防止され、カラーフィルター用インクは、長期にわたって粘度等の物性の変化が少ないものとなる。この結果、長期にわたってカラーフィルター用インクの吐出安定性が優れたものとなる。一方で、カラーフィルター用インクを所定の温度以上に加熱することにより、重合体W、Zは素早く硬化反応を起こし、カラーフィルター用インクが硬化する。
【0083】
また、カラーフィルター用インクは重合体Wを含むことにより、着色剤を均一に分布させることのみならず、後述する分散剤の分散安定性も特に優れたものとすることができる。その結果、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
また、重合体W、Zは、上述したように顔料の分散安定性を向上させることに加え、機械的な力に対して極めて優れた安定性を有している。このため、後述するような製造方法を用いてカラーフィルター用インクを製造する際に(後述する微分散工程で)、原料として用いる顔料粒子の凝集体の微分散時に重合体W、Zを好適に用いることができる。これについては後述する。
【0084】
以下、カラーフィルター用インクに用いることができる樹脂材料の各成分について詳述する。
[重合体W]
重合体Wは、上記式(1)で表される単量体成分w1と上記式(2)で表される単量体成分w2と上記式(3)で表される単量体成分w3と上記式(4)で表される単量体成分w4とを含むものである。重合体Wとしては、例えば、下記式(17)で表されるものがある。
【0085】
【化24】

【0086】
重合体Wは、上述したような重合体Z、Wを含むことによる共通した機能に加え、重合体Wを含むことによる以下のような特有の機能を有する。
まず、カラーフィルター用インクは重合体Wを含むことにより、形成される着色部の耐薬品性、耐液性媒体性等を優れたものとすることができる。このため、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
なお、重合体Wは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Wが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分w1、w2、w3およびw4を含有するものである。
【0087】
(単量体成分w1)
重合体Wは、上記式(1)で表される単量体成分w1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分w1は、重合体Wにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Wの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Wの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分w1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0088】
重合体W中における単量体成分w1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、25〜75wt%であるのが好ましく、40〜60wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分w2、w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w1を含有しているのが好ましい。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、単量体成分w1の含有率の値としては、これらの化合物についての加重平均値(重量比に基づいた加重平均値)を採用することができる。以下、重合体Wの他の各単量体の含有率、重合体Z、X、Yの各単量体の含有率についても同様とする。
【0089】
(単量体成分w2)
重合体Wは、上記式(2)で表される単量体成分W2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりを良好なものとすることができ、着弾禁止領域を設けることによる効果をより顕著なものとすることができる。また、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部を好適に形成することができる。また、カラーフィルター用インクが顔料に加え分散剤を含むものである場合においては、単量体成分w2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性のみならず、分散剤の分散安定性も特に優れたものとすることができる。その結果、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0090】
重合体W中における単量体成分w2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜25wt%であるのが好ましく、5〜15wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1および後に詳述する単量体成分w3、w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w2を含有しているのが好ましい。
【0091】
(単量体成分w3)
重合体Wは、上記式(3)で表される単量体成分w3を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐液性媒体性等を優れたものとすることができる。
【0092】
また、単量体成分w3は、重合体Wにおいて、上述した単量体成分w1等と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0093】
また、単量体成分w3を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。
重合体W中における単量体成分w3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5〜50wt%であるのが好ましく、10〜40wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2および後に詳述する単量体成分w4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w3を含有しているのが好ましい。
【0094】
(単量体成分w4)
重合体Wは、上記式(4)で表される単量体成分w4を単量体成分として含有してなるものである。
重合体Wが単量体成分w4を含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから分散媒を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。
【0095】
また、単量体成分w4を単量体成分として含有することにより、樹脂材料全体としての疎水性を好適に調整することができ、樹脂材料を構成する各重合体の親和性、相溶性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0096】
重合体W中における単量体成分w4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、3〜40wt%であるのが好ましく、5〜30wt%であるのがより好ましい。重合体W中における単量体成分w4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分w1、w2、w3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Wが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分w4を含有しているのが好ましい。
【0097】
なお、重合体Wは、上述した単量体成分w1、w2、w3、w4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Wが、その他の単量体成分(単量体成分w1、w2、w3、w4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体W中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0098】
重合体Wの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Wの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0099】
[重合体Z]
重合体Zは、上記式(5)で表される単量体成分z1と上記式(6)で表される単量体成分z2と上記式(7)で表される単量体成分z3とを含むものである。重合体Zとしては、例えば、下記式(18)で表されるものがある。
【0100】
【化25】

【0101】
重合体Zは、上述したような重合体Z、Wを含むことによる共通した機能に加え、重合体Zを含むことによる以下のような特有の機能を有する。
前述したように、重合体Zは、硬化性樹脂であり、後述する着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の硬化に寄与する成分であるが、形成される着色部に適度な柔軟性を与え、着色部が設けられる基板等に変形(例えば、熱膨張、熱収縮等)が生じた場合であっても、その変形に追従し、基板等に対する着色部の密着性を保持させる機能を有している。これにより、例えば、製造されるカラーフィルターが画像表示に伴う急激な温度変化に繰り返しさらされた場合においても良好な密着性を保持することができ、光漏れ(白抜け、輝点)等の問題が発生するのをより確実に防止することができる。すなわち、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
なお、重合体Zは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Zが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分z1、z2およびz3を含有するものである。
【0102】
(単量体成分z1)
重合体Zは、上記式(5)で表される単量体成分z1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)をより確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分z1は、重合体Zにおいて、高温環境下での反応性に優れる一方で、機械的な力に対しては極めて優れた安定性を有している。このため、顔料とともに後述する微分散工程に供された場合であっても、本工程における重合体Zの変性、劣化が防止され、カラーフィルター用インクにおいて、重合体Zの機能を確実に発揮することができる。また、単量体成分z1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとすることができる。
【0103】
また、重合体Zが単量体成分z1を含有することにより、重合体Wと重合体Zとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0104】
重合体Z中における単量体成分z1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、50〜95wt%であるのが好ましく、60〜85wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分z2、z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。
また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z1を含有しているのが好ましい。
【0105】
(単量体成分z2)
重合体Zは、上記式(6)で表される単量体成分Z2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、基板上へのカラーフィルター用インクの濡れ広がりをより良好なものとすることができ、気泡の混入等が確実に防止され、基板との密着性に優れた着色部をより好適に形成することができる。また、カラーフィルター用インクが顔料に加え分散剤を含むものである場合においては、単量体成分z2を単量体成分として含有することにより、顔料の分散安定性のみならず、分散剤の分散安定性も特に優れたものとすることができる。その結果、顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの長期保存性を特に優れたものとすることができる。
【0106】
また、カラーフィルター用インクが重合体W、Zの両方を含む場合、重合体Zが単量体成分z2を含有することにより、重合体Wと重合体Zとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0107】
重合体Z中における単量体成分z2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、3〜35wt%であるのが好ましく、10〜25wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1および後に詳述する単量体成分z3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z2を含有しているのが好ましい。
【0108】
(単量体成分z3)
重合体Zは、上記式(7)で表される単量体成分z3を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分z3は、前述した単量体成分w1等と同様に、後述する着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の硬化に寄与する成分であるが、単量体成分y2、w1等が、形成される着色部の硬度を高いものとする機能を有しているのに対し、単量体成分z3は、形成される着色部に適度な柔軟性を与え、着色部が設けられる基板等に変形(例えば、熱膨張、熱収縮等)が生じた場合であっても、その変形に追従し、基板等に対する着色部の密着性を保持させる機能を有している。
【0109】
また、単量体成分z3は、重合体(重合体Z)中において、上述した単量体成分w1等と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)では反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下においては、十分な反応性を有するものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0110】
また、単量体成分z3を単量体成分として含有することにより、着色部の形成時、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから分散媒を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇し、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。
重合体Z中における単量体成分z3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜30wt%であるのが好ましく、5〜20wt%であるのがより好ましい。重合体Z中における単量体成分z3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分z1、z2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Zが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分z3を含有しているのが好ましい。
【0111】
なお、重合体Zは、上述した単量体成分z1、z2、z3以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Zが、その他の単量体成分(単量体成分z1、z2、z3以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Z中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0112】
重合体Zの重量平均分子量は、5000〜50000であるのが好ましく、6000〜15000であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Zの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0113】
上述したように本発明において、樹脂材料は、重合体W、重合体Z以外の樹脂成分(重合体)をさらに含むものであってもよい。
このような樹脂成分(重合体)としては、以下に述べるような重合体X、重合体Yが挙げられる。重合体X、Yは、主に着色部を硬質なものとして形成することに寄与する。カラーフィルター用インクが重合体W、Zとともに重合体X、Yを含むことにより、形成される着色部はより硬質なものとなり、製造されるカラーフィルターの耐久性が特に優れたものとなる。すなわち、より長期にわたってカラーフィルターの明度およびコントラスト比が優れたものとして維持される。また、重合体X、Yは、上述したような重合体W、Zとの親和性に優れ、これらを混合した場合であっても、カラーフィルター用インクの粘度は低いものとなる。さらに、カラーフィルター用インクに重合体X、Yを比較的多量に含ませた場合であっても、カラーフィルター用インクの粘度は低いものとして維持される。このため、カラーフィルター用インクは液滴の吐出安定性に優れたものとなる。
【0114】
[重合体X]
重合体Xは、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含むものである。重合体Xとしては、例えば、下記式(19)で表されるものがある。
【0115】
【化26】

【0116】
【化27】

【0117】
【化28】

【0118】
【化29】

【0119】
【化30】

【0120】
このような重合体Xを含むことにより、カラーフィルター用インクに含まれる樹脂材料を構成する各重合体成分の親和性(樹脂材料全体としての親和性)を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の透明性を非常に高いものとすることができる。このようなことから、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むらの発生やコントラストの低下等をより確実に防止することができる。また、重合体Xを含むことにより、樹脂材料全体としての硬化反応のスイッチング特性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の耐液性媒体性等を特に優れたものとすることができる。このようなことから、カラーフィルター用インクを用いて製造されるカラーフィルターの耐久性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
なお、重合体Xは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Xが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分x1、x2、x3およびx4を含有するものである。
【0121】
(単量体成分x1)
重合体Xは、上記式(8)で表される単量体成分x1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分x1を含有することにより、樹脂材料についての硬化反応のスイッチング特性を特に優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができる。また、単量体成分x1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0122】
重合体X中における単量体成分x1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分x2、x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x1を含有しているのが好ましい。
【0123】
(単量体成分x2)
重合体Xは、上記式(9)で表される単量体成分x2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分x1や後に詳述する単量体成分x3とともに含有すること)により、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりをより良好なものとすることができるとともに、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、重合体Yと重合体Xとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。また、単量体成分x2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を特に優れたものとすることができる。
【0124】
重合体X中における単量体成分x2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、5〜60wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1および後に詳述する単量体成分x3、x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x2を含有しているのが好ましい。
【0125】
(単量体成分x3)
重合体Xは、上記式(10)で表される単量体成分x3を単量体成分として含有してなるものである。
単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の耐薬品性、耐液性媒体性等を優れたものとすることができる。これにより、着色部形成工程(硬化工程)の後に、薬品塗布や洗浄(特に、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液等を用いた洗浄)等の後処理を行った場合であっても、これらによる悪影響の発生を確実に防止することができる。
【0126】
また、単量体成分x3は、重合体Xにおいて、上述した単量体成分x1と同様に、比較的低い温度(例えば、100℃以下)での反応性が十分に低いのに対し、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下では、十分な反応性を示すものである。このため、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。
【0127】
また、単量体成分x3を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、重合体Xと、他の重合体W、Z、Yとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0128】
重合体X中における単量体成分x3の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x3の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2および後に詳述する単量体成分x4の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x3を含有しているのがより好ましい。
【0129】
(単量体成分x4)
重合体Xは、上記式(11)で表される単量体成分x4を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、基板上に付与されたカラーフィルター用インクから分散媒を除去する際に、固形分濃度の上昇に伴ってカラーフィルター用インクの粘度が上昇することをより確実に防止することができる。
【0130】
また、単量体成分x4は、その末端に水酸基を有している。このような構造を有することにより、比較的低い温度(例えば、100℃以下)における反応性を十分に低いものとしつつ、着色部形成工程(硬化工程)で施す熱処理のような加熱環境下における反応性をさらに高めることができる。これにより、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)をより好適に進行させることができる。
【0131】
また、単量体成分x4を単量体成分として含有することにより、例えば、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができ、カラーフィルター用インクの長期保存性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
重合体X中における単量体成分x4の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、2〜20wt%であるのが好ましく、3〜15wt%であるのがより好ましい。重合体X中における単量体成分x4の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分x1、x2、x3の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Xが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分x4を含有しているのが好ましい。
【0132】
なお、重合体Xは、上述した単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Xが、その他の単量体成分(単量体成分x1、x2、x3、x4以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体X中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのが好ましい。
【0133】
重合体Xの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
また、重合体Xの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
【0134】
[重合体Y]
重合体Yは、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含むものである。重合体Yとしては、例えば、下記式(20)で表されるものがある。重合体Yは、実質的に単一の化合物からなるものであってもよいし、複数種の化合物の混合物であってもよい。ただし、重合体Yが複数種の化合物の混合物である場合、各化合物が、単量体成分y1およびy2を含有するものである。
【0135】
【化31】

【0136】
【化32】

【0137】
【化33】

【0138】
(単量体成分y1)
重合体Yは、上記式(12)で表される単量体成分y1を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の基板に対する密着性を特に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルターの耐久性を特に優れたものとすることができる。
【0139】
また、重合体Yが単量体成分y1を含有することにより、重合体Y中における単量体成分y2の反応性が必要以上に高くなることを防止することができる。その結果、カラーフィルター用インクの保存時や後述するインク付与工程等における樹脂材料の不本意な反応(重合反応)を確実に防止しつつ、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。すなわち、単量体成分y1を含有することにより、硬化反応のスイッチング特性を優れたものとすることができる。
【0140】
また、単量体成分y1を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
重合体Y中における単量体成分y1の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、30〜90wt%であるのが好ましく、40〜80wt%であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y1の含有率が前記範囲内の値であると、後に詳述する単量体成分y2の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y1を含有しているのが好ましい。
【0141】
(単量体成分y2)
重合体Yは、上記式(13)で表される単量体成分y2を単量体成分として含有してなるものである。
このような単量体成分y2を単量体成分として含有すること(特に、上述した単量体成分y1とともに含有すること)により、加熱環境下で行う着色部形成工程(硬化工程)においては、樹脂材料の硬化反応(重合反応)を好適に進行させることができる。特に、加熱環境下での着色部形成工程(硬化工程)において、樹脂材料の重合反応の立ち上がりを良好なものとすることができるとともに、後に詳述する重合体Wを、硬化反応に好適に関与させることができ、継続的に重合反応の進行させることができる。また、単量体成分y2を単量体成分として含有することにより、形成される着色部の硬度等を優れたものとすることができる。
【0142】
また、重合体Yが単量体成分y2を含有することにより、後に詳述する重合体Wとの親和性、相溶性を十分に優れたものとすることができる。その結果、カラーフィルター用インクの吐出安定性を優れたものとすることができ、また、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部は、透明性に優れ(樹脂材料の不透明性による光透過率の低下が防止され)、基板に対する密着性が特に優れ、クラック等の問題が生じにくいものとなる。
【0143】
重合体Y中における単量体成分y2の含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、10〜70wt%であるのが好ましく、20〜60wt%であるのがより好ましい。重合体Y中における単量体成分y2の含有率が前記範囲内の値であると、前述した単量体成分y1の機能を阻害することなく、上述したような効果をより顕著に発現させることができる。また、重合体Yが、複数種の化合物の混合物である場合、これらの化合物が、いずれも、上記のような含有率で単量体成分y2を含有しているのが好ましい。
【0144】
なお、重合体Yは、上述した単量体成分y1、y2以外の単量体成分(その他の単量体成分)を含むものであってもよい。これにより、例えば、上記のような特性を発揮しつつ、その他の単量体分の化学構造に由来する効果も得ることができる。
重合体Yが、その他の単量体成分(単量体成分y1、y2以外の単量体成分)を含むものである場合、重合体Y中におけるその他の単量体成分の含有率(複数種のその他の単量体成分を含む場合にはこれらの含有率の和)は、15wt%以下であるのが好ましく、10wt%以下であるのがより好ましい。
【0145】
重合体Yの重量平均分子量は、1000〜50000であるのが好ましく、1200〜10000であるのがより好ましく、1500〜5000であるのがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの経時的安定性(長期保存性)、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、カラーフィルターの生産性を十分に優れたものとし、さらに、カラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の平坦性をより確実に高いものとすることができ、カラーフィルターを用いて表示される画像における色むら等の発生をより効果的に防止することができる。
【0146】
また、重合体Yの分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1〜3であるのが好ましい。
なお、上述した各重合体は、最終的に上述したような構造(各単量体成分に対応する各部分構造)を有していればよく、上述した各単量体成分そのものを用いて合成されたものであってもよいし、上述した単量体成分とは異なる成分(前駆体、誘導体等)を用いて合成されたものであってもよい。
【0147】
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率は、0.5〜18wt%であるのが好ましく、1〜15wt%であるのがより好ましく、3〜10wt%であるのがさらに好ましい。
また、カラーフィルター用インク中における樹脂材料の含有率をC[wt%]、カラーフィルター用インク中における顔料の含有率をC[wt%]としたとき、0.2≦C/C≦9.0の関係を満足するのが好ましく、0.3≦C/C≦5.0の関係を満足するのがより好ましく、0.4≦C/C≦3.5の関係を満足するのがさらに好ましい。このような関係を満足することにより、製造されるカラーフィルターのコントラスト等をより優れたものとすることができたり、着色部厚さをより薄いものとした場合であっても十分なコントラストを確保することができる。なお、従来のカラーフィルター用インクでは、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じる等の不都合を生じやすかったが、本発明では、上記のように、顔料の含有率に対する樹脂材料の含有率を低いものとした場合であっても、形成される着色部の表面に不本意な凹凸が生じることを確実に防止することができる。すなわち、上記のような関係を満足することにより、本発明の効果はより顕著に発揮される。
なお、カラーフィルター用インクを構成する樹脂材料は、上述した以外の重合体(例えば、熱可塑性の重合体や上述した重合体W、Z、X、Y以外の硬化性の重合体)を含むものであってもよい。
【0148】
<液性媒体>
液性媒体(液状媒質)は、カラーフィルター用インクにおいて、着色剤を分散または溶解する機能を有するものである。そして、通常、カラーフィルター用インクを構成する液性媒体は、カラーフィルターを製造する過程において、その大部分が除去されるものである。また、液性媒体は樹脂材料を溶解させる溶剤としても機能する。
【0149】
液性媒体としては、例えば、エステル化合物、エーテル化合物、ヒドロキシケトン、炭酸ジエステル、環状アミド化合物等を用いることができ、中でも、〔1〕多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等)または多価アルコールエーテルのアルキルエーテル(例えば、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル等)、エステル(例えば、ホルメート、アセテート、プロピオネート等)、〔2〕多価カルボン酸(例えば、こはく酸、グルタル酸等)のエステル(例えば、メチルエステル等)、〔3〕分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基とを有する化合物(ヒドロキシ酸)のエーテル、エステル等、〔4〕多価アルコールとホスゲンとの反応で得られるような化学構造を有する炭酸ジエステルが好ましい。液性媒体として用いることのできる化合物としては、例えば、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、グルタル酸ジメチル、エチレングリコールジn−ブチレート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、1,6−ジアセトキシヘキサン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ブトキシプロパノール、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、オクタン酸エチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸シクロヘキシル、こはく酸ジエチル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、こはく酸ジメチル、1−ブトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、ジアセチン、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ブチルグリコレート、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ビス(2−プロポキシエチル)エーテル、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n−ノニルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0150】
液性媒体としては、これらの中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ビス(2−ブトキシエチル)エーテル、2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテート、およびジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、製造されるカラーフィルターの各部位での色むら、濃度むら等をより効果的に抑制することができるとともに、個体間での特性の均一性を特に優れたものとすることができる。また、着色剤、樹脂材料等を比較的多量にインク中に含ませた場合であっても、インクの物性の変化が比較的少ないものとなる。また、カラーフィルター用インク中に顔料が含まれる場合、顔料の含有率を高くした場合であっても、顔料の長期分散安定性を十分に優れたものとすることができ、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクのチキソトロピック性の上昇が抑制される。また、液性媒体が上記のような化合物で構成されたものであると、後述するようなカラーフィルターの製造方法において、セル内全体に、カラーフィルター用インクを確実に濡れ広がるようにすることができる。
【0151】
また、上述した中でも、液性媒体が、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むものである場合、インクの粘度を特に低いものとすることができ、インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、インクが基板上ですばやく隅々まで濡れ広がるため、得られるカラーフィルターの厚みが均一化することで、色再現性および消偏性(コントラスト比)を特に優れたものとすることができる。また、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートは、上述したような樹脂材料や後述するような分散剤と溶解度パラメータ(SP値)が近いためインクの顔料等の着色剤の分散安定性(インク中での均一性)が高く長期に渡って粘度変化が少ないものとなる。また、好適に着色剤、樹脂材料等の成分の劣化、凝集等を防止することができる。さらに、液性媒体が、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含むものである場合、水の液性媒体への溶解度を適度なものとすることができる。このため、インクの液性媒体は、外部からの吸湿を確実に防止することができる。また、液滴吐出装置のインクの流路等の内部に水が混入した場合であっても、水を好適に溶解し、除去することができる。この結果、インク中における水の含有量を特に少ないものとすることができ、液滴吐出ヘッドからのインクの液滴の吐出安定性(例えば、液滴の吐出量の均一性)をより長期にわたって、特に優れたものとすることができる。
【0152】
また、上述した中でも、液性媒体がビス(2−ブトキシエチル)エーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものである場合、インクがノズルの近傍で非常に乾燥しにくくなり、インクジェット工程における飛行曲がりの発生がより効果的に抑制される。また、ノズルの詰まりを防ぐために定期的にインクを少量排出するために行うフラッシング工程において、長距離のヘッド移動中におけるノズル近傍のインク乾燥を防ぐことができ、基板中に設けられたダミー画素などの捨て打ちエリアが不必要となる。また、インクが乾燥しにくくなることで、着色剤、樹脂材料等の成分の劣化、凝集、偏析をより確実に防止することができる。
【0153】
また、特に、液性媒体が1,3−ブチレングリコールジアセテートを含むものである場合、上述したような樹脂材料や分散剤と溶解度パラメータ(SP値)が近いためインクの分散安定性が高く長期に渡って粘度変化が少ないものとなる。また、液性媒体への水の溶解度を適度なものとすることができる。このため、インクの液性媒体は、外部からの過剰な水分の吸収を確実に防止しつつ、液滴吐出装置のインクの流路等の内部に多少の水分が混入した場合であっても、水を好適に溶解することで、分散の安定性・流動性を保持したまま流路内を移動することができる。
【0154】
また、液性媒体の25℃での粘度は、0.5〜20mPa・sであることが好ましく、1〜18mPa・sであることがより好ましい。このように、液性媒体が十分に低い粘度であることにより、カラーフィルター用インクの粘度を十分に低いものとすることができ、カラーフィルター用インクの液滴の均一性、吐出量の安定性を特に優れたものとすることができる。なお、液性媒体の粘度の測定は、例えば、E型粘度計(例えば、東機産業社製RE-01)を用いて行うことができ、特に、JIS Z8803に準拠して行うことができる。
【0155】
液性媒体の大気圧(1気圧)下における沸点は、160〜300℃であるのが好ましく、180〜290℃であるのがより好ましく、200〜280℃であるのがさらに好ましい。液性媒体の大気圧下における沸点が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0156】
また、液性媒体の25℃における蒸気圧は、0.7mmHg以下であるのが好ましく、0.1mmHg以下であるのがより好ましい。液性媒体の蒸気圧が前記範囲内と値であると、カラーフィルター用インクを吐出する液滴吐出ヘッドにおける目詰まり等をより効果的に防止することができ、カラーフィルターの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0157】
カラーフィルター用インク中における液性媒体の含有率は、50〜98wt%であるのが好ましく、55〜95wt%であるのがより好ましく、65〜93wt%であるのがさらに好ましい。液性媒体の含有率が前記範囲内の値であると、カラーフィルター用インクの液滴吐出ヘッドからの吐出性を特に優れたものとしつつ、製造されるカラーフィルターの耐久性を優れたものとすることができる。また、製造されるカラーフィルターにおいて、十分な着色濃度を確保することができる。
【0158】
<分散剤>
カラーフィルター用インクには、分散剤が含まれていてもよい。これにより、着色剤として顔料が含まれる場合、カラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散性を向上させることができ、インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。特に、重合体Wまたは重合体Zと分散剤とを併用することにより、これらの効果が相乗的に作用し合い、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
【0159】
分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤が挙げられる。
分散剤のより具体的な例としては、例えば、ディスパービック101、ディスパービック102、ディスパービック103、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070、ディスパービック2095、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4015、EFKA 4800、EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース38500、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)、Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、ヒノアクトKF−1000、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0160】
特に、カラーフィルターインクは、分散剤として、所定の酸価を有する分散剤(以下、酸価分散剤とも言う)と、所定のアミン価を有する分散剤(以下、アミン価分散剤とも言う)とを含むものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、カラーフィルター用インクの粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立される。その結果、カラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0161】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)、ヒノアクトKF−1000(川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0162】
また、アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)、KF−1525、ヒノアクト1300M、ヒノアクトT9050、ヒノアクトT6000、ヒノアクトT7000、ヒノアクトT8000、ヒノアクトT8000E(以上、川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
【0163】
上記のような分散剤(酸価分散剤およびアミン価分散剤)を用いることにより、形成される着色部の色味に悪影響を与えることなく、インク中における顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、アミン価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
【0164】
また、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零であるのが好ましい。
アミン価分散剤と酸価分散剤とを併用する場合、アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、25〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用した場合における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができ、また、酸価分散剤と併用した場合におけるカラーフィルター用インクの粘度の低減、安定化効果をより顕著に得ることができる。なお、分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
【0165】
また、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零であるのが好ましい。
また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用する場合、カラーフィルター用インク中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、当該カラーフィルター用インク中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、液滴の吐出安定性等を特に優れたものとすることができる。
また、分散剤としては、上記以外の分散剤を用いてもよい。
カラーフィルター用インク中における分散剤の含有率は、0.5〜15wt%であるのが好ましく、0.5〜8wt%であるのがより好ましい。
【0166】
<多価アルコール>
また、カラーフィルター用インクは、多価アルコールを含んでいてもよい。多価アルコールは、置換されていない水酸基を複数個含む化合物である。
多価アルコールは、着色部の形成時において、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を低下させることにより、着色部を平坦化させる機能を有するものである。
【0167】
一般に、着色部の形成は、隔壁で形成されたセル中にカラーフィルター用インクを付与し、付与したカラーフィルター用インクから液性媒体を除去し、さらにカラーフィルター用インクを固化させることによって行われる。このような場合、セル中のカラーフィルター用インク中における着色剤や後述するような樹脂材料等の固形分濃度が上昇し、液性媒体の除去に伴ってカラーフィルター用インクのチキソトロピック性および粘度が上昇する。特に、着色剤として顔料を用いた場合、このようなチキソトロピック性の上昇は顕著なものとなる。このように、チキソトロピック性が高いものとなることにより、カラーフィルター用インクは、比較的粘度が低い場合であっても、流動性を失い、固化しやすいものとなる。
【0168】
また、インクを加熱または真空乾燥によって乾燥する際には、セル中において、インクの外表面から液性媒体が揮発することによりインクが熱対流する現象(ベナードセル現象)が起こる。また、セル中のインク内で熱分布が生じることにより、インク中の液性媒体の揮発は、セルの特定の部分から起こりやすい。このため、セル中のカラーフィルター用インクは、均一な厚さとならず、凹凸ができやすい。
【0169】
このように、カラーフィルター用インクの粘度およびチキソトロピック性が上昇しつつ、セル内におけるインクの対流、特定の部分からの液性媒体の揮発が起こると、カラーフィルター用インクは、液性媒体の除去が進む比較的早い段階で、凹凸を有した形状で流動性を失い、固化する場合がある。このような場合、形成される着色部の表面は、凹凸が多くなりやすいものであった。
【0170】
これに対し、カラーフィルター用インクが多価アルコールを含むことにより、カラーフィルター用インクから液性媒体の大部分が除去された場合であっても、多価アルコールは残存し、カラーフィルター用インクはチキソトロピック性の上昇を抑えることができ、比較的長い時間、流動性を維持することができる。また、カラーフィルター用インクは、液性媒体が一定量除去された時点では、粘度が比較的高くなっており、対流が抑制されたものとなっている。このように、着色部形成時の後期において、比較的長い間、カラーフィルター用インクの対流が抑制されつつ、カラーフィルター用インクが流動性を有することにより、セル中のカラーフィルター用インクは、その表面が平坦な状態で流動性を失い、固化することができる。このため、このようなカラーフィルター用インクを用いた場合、形成される着色部は、厚さが均一なものとなる。この結果、製造されるカラーフィルターは、着色部における不本意な光の散乱が抑制され、明度およびコントラスト比が特に高いものとなる。
【0171】
また、このような多価アルコールは、着色部を形成する際に加熱することにより、分解または揮発してカラーフィルター用インクから除去される。このため、形成された着色部には多価アルコールが残存しにくく、インクに含まれる多価アルコールによる着色部の色度、明度等の変化が極めて少ないものである。
また、上述したようなグリコール縮合物モノアルキルエーテルと、多価アルコールとを組み合わせてインクに用いることにより、着色部形成時の液性媒体の揮発時においては、グリコール縮合物モノアルキルエーテルがインクの高い流動性を保ち、セル内でのインクの固形分濃度を均一なものとすることができる。また、液性媒体の大部分が除去された後には、多価アルコールが、セル内のインクの対流を防止しつつ、流動性を保つことにより、厚さが特に均一で表面が特に平滑な着色部が形成される。
【0172】
カラーフィルター用インクに用いることのできる多価アルコールとしては、上述したようにカラーフィルター用インクのチキソトロピック性を低下させるものであればよいが、例えば、ジオール化合物のオリゴマーが使用でき、具体的には、グリコール類のオリゴマー等を用いることができる。このような化合物は、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を容易に下げることができるとともに、着色部形成時においては、カラーフィルター用インクのセル内での対流を抑制することができる。特に、多価アルコールがグリコール類のオリゴマーである場合、上述したような効果はより顕著なものとなる。
【0173】
グリコール類のオリゴマーを構成するグリコール類としては、例えば、上述したようなグリコール類が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組みあわせて用いることができる。これらのうち、エチレングリコールまたは、1,3−プロパンジオールをグリコール類として用いることが好ましい。
また、多価アルコールとしては、エチレングリコールと1,2−プロピレングリコールとが混合して縮合したグリコール類のオリゴマーを用いてもよいし、エチレングリコールのオリゴマーと1,2−プロピレングリコールのオリゴマーとを混合して用いてもよい。
【0174】
また、多価アルコールとして、グリコール類のオリゴマーを用いる場合、末端の水酸基は、置換されていないことが好ましい。このように、多価アルコールが水酸基を有することで、多価アルコールの極性が比較的高いものとなり、多価アルコールの粘度は、容易に後述するような範囲となる。また、カラーフィルター用インクの後述するような基板(特にガラス基板)への親和性が優れたものとなり、カラーフィルター用インクは、セル中により好適に濡れ広がることができる。
【0175】
多価アルコールがオリゴマーである場合、多価アルコールの重合度は、3〜40であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させることができると共に、着色部形成時においては、セル中でのカラーフィルター用インクの対流を抑制することができる。
また、多価アルコールの分子量は150〜2000であることが好ましく、180〜1000であることがより好ましく、180〜500であることがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させることができると共に、着色部形成時においては、セル中でのカラーフィルター用インクの対流を抑制することができる。なお、多価アルコールがオリゴマーである場合、分子量は、重量平均分子量とすることができる。
【0176】
また、多価アルコールは、25℃、1atmの雰囲気下において、液体であることが好ましい。このように、多価アルコールが液体であることにより、カラーフィルター用インク中に均一に混合することができるとともに、着色部形成時におけるカラーフィルター用インクの固形分を相対的に少ないものとすることができる。このため、着色部形成時におけるインクのチキソトロピック性の上昇をより確実に抑制することができる。
【0177】
また、多価アルコールは、上述したような雰囲気下で液体である場合、回転式粘度計を用いて25℃、60rpmの条件で測定した粘度η60[mPa・s]は、40〜400mPa・sであることが好ましく、50〜300mPa・sであることがより好ましい。このように比較的粘度の高い液体を用いることにより、着色部の形成時において、セル中のカラーフィルター用インクは、粘度が比較的高いものとなり、セル内での対流が抑制される。
【0178】
また、カラーフィルター用インク中における多価アルコールの含有量は、0.3〜15.0wt%であることが好ましく、0.4〜13.0wt%であることがより好ましく、0.5〜6.0wt%であることがさらに好ましい。これにより、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性を十分に低下させつつ、カラーフィルター用インクの液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0179】
なお、カラーフィルター用インクのチキソトロピック性の指標としては、例えば、回転式のE型粘度計を用いて2つの異なる回転数での粘度を測定した場合の、得られた粘度の比(チキソ指数)で表わすことができる。具体的には、25℃のカラーフィルター用インクを回転数6rpmの条件で測定した粘度をη[mPa・s]、25℃のカラーフィルター用インクを回転数60rpmの条件で測定した粘度をη60[mPa・s]としたとき、カラーフィルター用インクのチキソ指数は、η/η60とすることができる。なお、η/η60が大きいほど、チキソトロピック性が高いものである。
また、カラーフィルター用インクのチキソ指数(η/η60)は、具体的には、1.06以下であることが好ましく、1.05以下であることがより好ましく、1.03以下であることがさらに好ましく上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0180】
<その他の成分>
カラーフィルター用インクは、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、各種架橋剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等のオニウム塩等の熱酸発生剤;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等の光酸発生剤;各種重合開始剤;酸架橋剤;増感剤;光安定剤;発光材料;レベリング剤;接着性改良剤;各種重合促進剤;各種光安定化剤;ガラス、アルミナ等の充填剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤;2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;ポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤等が挙げられる。
【0181】
架橋剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸、多官能エポキシモノマー、多官能アクリルモノマー、多官能ビニルエーテルモノマー、多官能オキセタンモノマー等を用いることができる。多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸等の脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイト等のエステル基含有酸無水物が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸無水物が好ましい。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。また、多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸等の脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸が挙げられるが、中でも、芳香族多価カルボン酸が好ましい。また、多官能エポキシモノマーの具体例としては、ダイセル化学工業株式会社製、商品名セロキサイド2021、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードGT401、ダイセル化学工業株式会社製、商品名エポリードPB3600、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、イソシアヌル酸トリグリシジル等が挙げられる。また、多官能アクリルモノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートトリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能ビニルエーテルモノマーの具体例としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、シキロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル等が挙げられる。また、多官能オキセタンモノマーの具体例としては、キシリレンジオキセタン、ビフェニル型オキセタン、ノボラック型オキセタン等が挙げられる。
【0182】
熱酸発生剤は、加熱により酸を発生する成分であり、前記の中でも、特に、スルホニウム塩およびベンゾチアゾリウム塩が好ましい。熱酸発生剤のより具体的な例としては、商品名として、サンエイドSI−45、同左SI−47、同左SI−60、同左SI−60L、同左SI−80、同左SI−80L、同左SI−100、同左SI−100L、同左SI−145、同左SI−150、同左SI−160、同左SI−110L、同左SI−180L(以上、三新化学工業社製品、商品名)、CI−2921、CI−2920、CI−2946、CI−3128、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)社製品、商品名)、CP−66、CP−77(旭電化工業社製品、商品名)、FC−520(3M社製品、商品名)等が挙げられる。
【0183】
光酸発生剤は、光により酸を発生する成分であり、より具体的な例としては、商品名として、サイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−950(以上、米国ユニオンカーバイド社製、商品名)、イルガキュア261(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、SP−150、SP−151、SP−170、オプトマーSP−171(以上、旭電化工業株式会社製、商品名)、CG−24−61(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製、商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー(株)社製、商品名)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481、CI−2734、CI−2855、CI−2823、CI−2758(以上、日本曹達社製品、商品名)、PI−2074(ローヌプーラン社製、商品名、ペンタフルオロフェニルボレートトルイルクミルヨードニウム塩)、FFC509(3M社製品、商品名)、BBI−102、BBI−101、BBI−103、MPI−103、TPS−103、MDS−103、DTS−103、NAT−103、NDS−103(ミドリ化学社製、商品名)、CD−1012(米国、Sartomer社製、商品名)等が挙げられる。
【0184】
レベリング剤は、インクの表面張力を低下させることにより、着色部を平坦化させるものである。このため、インクがレベリング剤を有することにより、重合体W、Zの効果と相乗的に作用し、セル中のインクの表面がより平坦になる。このため、形成される着色部はより平坦なものとなる。
このようなレベリング剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の各種界面活性剤を用いることができる。レベリング剤の具体例としては、メガファックF−443,F−444,F−445,F−446,F−470,F−471,F−472SF,F−474,F−475,F−477,F−478,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−484,F−486,F−487,F−489,R−30(以上、大日本インキ化学工業(株)社製);ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム(株)製);サーフィノール104、サーフィノール82、サーフィノール2502、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノールSE、サーフィノールSE−F、サーフィノール504、サーフィノール61、サーフィノール2502、サーフィノール82、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF37、サーフィノールDF58、サーフィノールDF75、サーフィノールDF210、サーフィノールCT111、サーフィノールCT121、サーフィノールCT131、サーフィノールCT136、サーフィノールCT151、サーフィノールTG、サーフィノールGA、サーフィノールPSA−336、ダイノール604、エンバイロジェムAD−01、オレフィンE1004、オレフィンE1010、オレフィンPD−001、オレフィンPD−002W、オレフィンPD−004、オレフィンEXP.4001、オレフィンEXP.4036、オレフィンEXP.4051F、オレフィンSPC、オレフィンAF−103、オレフィンAF−104、オレフィンAK−02、オレフィンSK−14、オレフィンAE−3、オレフィンPD−003、オレフィンPD−201、オレフィンPD−202、オレフィンPD−301、オレフィンB、オレフィンP、オレフィンY、オレフィンA、オレフィンSTG、オレフィンSPC(以上、日信化学工業(株)社製);フォスファノールML−200、フォスファノールML−220、フォスファノールRD−510Y、フォスファノールRS−410、フォスファノールRS−610、フォスファノールRS−710、フォスファノールRL−210、フォスファノールRL−310、フォスファノールRB−410、フォスファノールRD−720N(以上、東邦化学工業(株)社製);Lanco Flow L、Lanco Flow U、SOLSPERSE20000(以上、Lubrizol Deutschland GmbH社製);フタージェント100、フタージェント100C、フタージェント110、フタージェント140A、フタージェント150、フタージェント150CH、フタージェントA−K、フタージェント501、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント222F、FTX−218、フタージェント300、フタージェント310、フタージェント400SW、フタージェント251、FTX−212M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C(以上、(株)ネオス社製);サーフロンS−111n、サーフロンS−113、サーフロンS−121、サーフロンS−131、サーフロンS−132、サーフロンS−141、サーフロンS−145、サーフロンS−381、サーフロンS−383、サーフロンS−393、サーフロンSC−101、サーフロンKH−40、サーフロンSA−100(以上、AGCセイミケミカル(株)社製);ユニダインDS−401、ユニダインDS−403、ユニダインNS−1602、ユニダインNS−1603、ユニダインNS−1605(以上、日進化成(株)社製)等が挙げられる。このような界面活性剤の中でも、ノニオン系の界面活性剤を用いるのが好ましい。これにより、形成される着色部の表面がより平坦化され、得られるカラーフィルターは、各部位での色むら、濃度むらが特に小さいものとなる。
【0185】
このようなノニオン系の界面活性剤の具体的な例としては、商品名として、メガファックF−443,F−444,F−445,F−446,F−470,F−471,F−472SF,F−474,F−475,F−477,F−478,F−479,F−480SF,F−482,F−483,F−484,F−486,F−487,F−489,R−30(以上、大日本インキ化学工業(株)社製);サーフィノール104、同左82、同左2502、同左420、同左440、同左465、同左485(以上、日信化学工業(株)社製);ノベックFC−4430、ノベックFC−4432(以上、住友スリーエム(株)社製);フタージェント250、フタージェント25、フタージェント222F、FTX−218、フタージェント251、FTX−212M、フタージェント250、FTX−245M、FTX−290M、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTS−230S、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−230G、FTS−240G、FTX−204D、FTX−208D、FTX−212D、FTX−216D、FTX−218D、FTX−220D、FTX−222D、FTX−720C、FTX−740C(以上、(株)ネオス社製)等が挙げられる。この中でも、大日本インキ化学工業(株)社製のメガファックF−444,F−484,F−479,F−477,F−489,F−487が特に好ましい。これにより、形成される着色部の表面はより確実に平坦化され、結果として、各部位での色むら、濃度むらがより確実に押さえられたカラーフィルターを得ることができる。また、このようなカラーフィルターを備えた画像表示装置では、表示部を見る角度によって、例えば、表示画像が暗くなるといった不具合をより確実に防止することができる。
【0186】
カラーフィルター用インクの25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、13mPa・s以下であるのが好ましく、4〜12mPa・sであるのがより好ましく、5〜11mPa・sであるのがさらに好ましい。カラーフィルター用インクの粘度が前記範囲内の値であると、後述するようなインクジェット方式による液滴吐出において、吐出されるカラーフィルター用インクの液適量のばらつきを特に小さいものとしつつ、液滴吐出ヘッドにおける目詰まりの発生等をより確実に防止することができる。なお、カラーフィルター用インクの粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0187】
≪カラーフィルター用インクの製造方法≫
次に、上述したようなカラーフィルター用インクの製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態の製造方法は、重合体Wおよび重合体Zのうち少なくとも一方が分散樹脂として溶剤に溶解した分散樹脂溶液を調製する分散樹脂溶液調製工程と、分散樹脂溶液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行い、顔料分散体を得る微分散工程と、顔料分散体と樹脂材料等とを混合する混合工程とを有する。
【0188】
<分散樹脂溶液調製工程>
分散樹脂溶液調製工程においては、重合体Wおよび重合体Zのうち少なくとも一方が分散樹脂として溶剤に溶解した分散樹脂溶液を調製する。このように、後述する顔料を微分散させる工程(微分散工程)に先立って、顔料と混合する液体(分散樹脂溶液)を調整することにより、原料として用いられる顔料粒子の凝集体を容易かつ確実に微粒子化(解砕)することができるとともに、微粒子化した顔料粒子の再度の凝集を防止することができる。これは、重合体W、Zが顔料粒子の周囲に存在することにより、顔料粒子同士の接触が防止され、顔料粒子同士の凝集が妨げられたものと考えられる。また、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体W、Zを含む分散樹脂溶液を用いることにより、後述する微分散工程を、比較的温和な条件で行うことができるため、カラーフィルター用インクの構成材料の不本意な変性、劣化等を確実に防止することができる。
【0189】
また、本明細書において、分散樹脂とは、顔料の凝集体を微分散する際に顔料の凝集体と混合して用いて、微分散の効率を向上させるために用いる樹脂をいう。また、分散樹脂は、微分散の効率を向上させるだけでなく、一旦分散した顔料の粒子の際凝集を防止することもできる。また、製造されたインクにおいては、分散樹脂は、他の樹脂とともにバインダー樹脂として機能する。
【0190】
また、本工程においては、分散剤を用いるのが好ましい。これにより、重合体W、Zと分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮される。また、本工程において分散剤を用いる場合、(重合体W、Zと溶剤との混合に先立って、または、重合体W、Zと溶剤との混合時に、)分散剤と溶剤とを含む混合物を攪拌する(分散剤を予備分散する)のが好ましい。これにより、得られる重合体W溶液中において、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができ、分散剤の機能をより効果的に発揮させることができる。ところで、上述した酸価分散剤およびアミン価分散剤は、本来、互いに電気的に引き付け合い易いという性質を有しているが、本実施形態のように、顔料の微分散(微分散工程)に先立って、分散剤を予備分散することにより、分散剤として酸価分散剤およびアミン価分散剤を用いた場合であっても、酸価分散剤およびアミン価分散剤を、会合状態を十分に解いた状態で、顔料粒子の表面に均一かつ安定的に付着させることができ、分散剤同士の凝集、顔料粒子同士の凝集等をより確実に防止することができ、顔料の分散安定性、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0191】
本工程で調製する分散樹脂溶液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤を含む場合は、その含有率の総和)は、特に限定されないが、5〜30wt%であるのが好ましく、6〜25wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散樹脂溶液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、40〜80wt%であるのが好ましく、53〜75wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。なお、溶剤としては、目的とするカラーフィルター用インクを構成する分散媒と同一の組成を有するものを用いてもよいし、異なる組成のものを用いてもよい。本工程で、溶剤として、目的とするカラーフィルター用インクを構成する分散媒とは異なる組成を有するものを用いた場合、例えば、後の工程で、所定の液体(溶剤)で希釈したり、減圧処理、加熱処理等を伴う液体(溶剤)の置換を行ったりすることにより、最終的に得られるカラーフィルター用インクにおいて、所望の組成を有する分散媒とすることができる。
【0192】
また、分散樹脂溶液中には、重合体W、Z以外の樹脂材料が含まれるものであってもよい。例えば、分散樹脂溶液は、熱可塑性樹脂等の他の樹脂材料を含むものであってもよい。
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、分散樹脂溶液を得ることができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0193】
攪拌機を用いた攪拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性、カラーフィルター用インクの吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0194】
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を十分に優れたものとしつつ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、重合体W、Z、分散剤等の熱等による劣化、変性等をより確実に防止することができる。
【0195】
<微分散工程>
次に、上記工程で得られた分散樹脂溶液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
上記のように、本工程で用いられる分散樹脂溶液は重合体Wまたは重合体Zのうち少なくとも一方を含むものであるため、顔料の微粒子化(解砕)を効率よく行うことができ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。これは、上述したように本工程において、重合体W、Zが顔料粒子の周囲に存在することにより、顔料粒子同士の接触が防止され、顔料の微粒子化(解砕)を促進するとともに、微粒子化した顔料粒子が再凝集すること防止するためであると考えられる。
【0196】
ところで、上述したように重合体W、Zは、硬化性樹脂である。重合体W、Zは、機械的な力に対しては安定な化合物である。このため、本工程において、分散樹脂として重合体W、Zを好適に用いることができる。
また、分散樹脂として熱可塑性樹脂等の硬化反応を起こさない樹脂を用いることも考えられるが、このような樹脂を用いた場合、製造されるカラーフィルター用インクの粘度が高いものとなりやすく、カラーフィルター用インクの粘度が高い場合、着色部の形成時の液性媒体の除去時において比較的早い段階でカラーフィルター用インクの流動性が失われやすい。また、最終的にカラーフィルター用インクを用いて形成される着色部の硬度、耐薬品性、耐溶剤性が低く、カラーフィルターの耐久性が劣るものとなる。このため、このようなカラーフィルターは、長期にわたって明度およびコントラスト比を優れたものとして維持することができない。これに対し、本実施形態では、硬化性樹脂である重合体W、Zを分散樹脂として用いることにより、カラーフィルター用インクに含まれる硬化性樹脂以外の樹脂を減らすことができるため、上記の問題を解決でき、最終的にカラーフィルター用インクを用いて形成されるカラーフィルターの耐久性をより優れたものとすることができる。
【0197】
また、一般の硬化性樹脂を分散樹脂として用いると、顔料の分散時において硬化反応が始まりやすく、増粘してインクを製造することが困難となる。
また、本実施形態では、顔料を微分散させる工程(微分散工程)において無機ビーズを多段で添加する。微分散工程において、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率を特に優れたものとすることができ、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子を十分に小さいものとすることができる。特に、酸価分散剤およびアミン価分散剤を併用する場合においては、このような材料を用いることによる効果と、重合体W溶液調製工程および多段での微分散工程を有する方法を用いることによる効果とが、相乗的に作用し合い、最終的に得られるカラーフィルター用インクは、顔料の分散安定性、および、液滴の吐出安定性が、非常に優れたものとなり、非常に優れたコントラストのカラーフィルターの製造に用いることができるもののとなる。
【0198】
本工程は、無機ビーズを多段で添加することにより行うものであればよく、3段以上に分けて無機ビーズを添加するものであってもよいが、無機ビーズを2段で添加するのが好ましい。これにより、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料粒子の長期分散安定性を十分に優れたものとしつつ、カラーフィルター用インクの生産性を特に優れたものとすることができる。
【0199】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0200】
[第1の処理]
本工程では、まず、前述した重合体W溶液調製工程で調製した分散樹脂溶液に顔料を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。
第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。これにより、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
【0201】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.5〜3.0mmであるのが好ましく、0.5〜2.0mmであるのがより好ましく、0.5〜1.2mmであるのがさらに好ましい。第1の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0202】
分散樹脂溶液に添加する顔料の使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
第1の処理は、顔料、第1の無機ビーズを重合体W溶液に添加した状態で、各種攪拌機を用いて攪拌することにより行うことができる。
【0203】
第1の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を効率よく進行させることができる。
【0204】
また、第1の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、重合体W、Z、分散剤等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0205】
[第2の処理]
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。
第2の処理は第1の無機ビーズを含む状態で行うものであってもよいが、第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。これにより、第2の処理における顔料の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができる。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0206】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。これにより、最終的に得られるカラーフィルター用インク中における顔料を、十分に微粒化(微分散)させたものとすることができ、カラーフィルター用インクにおける顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に特に優れたものとすることができるとともに、液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
【0207】
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。第2の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散樹脂溶液:100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
【0208】
第2の処理は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
第2の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を十分に進行させることができる。
【0209】
また、第2の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、カラーフィルター用インクの生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、分散剤等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0210】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。言い換えると、n段目の処理で用いる無機ビーズ(第nの無機ビーズ)の平均粒径は、(n−1)段目の処理で用いる無機ビーズ(第(n−1)の無機ビーズ)の平均粒径よりも小さいものであるのが好ましい。このような関係を満足することにより、顔料粒子の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られるカラーフィルター用インク中の顔料粒子の粒径をより小さいものとすることができる。
なお、微分散工程(例えば、第1の処理、第2の処理)においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0211】
<混合工程>
上記のような微分散工程で得られた顔料分散体を、多価アルコール、追加の樹脂材料等のカラーフィルター用インクに用いる材料と混合する(混合工程)。これにより、カラーフィルター用インクが得られる。本工程では、例えば、多価アルコール、重合体X、Y等の硬化性樹脂を顔料分散体と混合することができる。また、上述したような重合体W、Z、分散剤等の材料をさらに追加して顔料分散体と混合するものであってもよい。
【0212】
本工程は、第2の処理で用いた第2の無機ビーズを除去した状態で行うのが好ましい。第2の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
本工程は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
【0213】
攪拌機を用いた攪拌処理時間(本工程の処理時間)は、特に限定されないが、1〜60分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。
【0214】
なお、本工程では、前記工程で用いた溶剤とは異なる組成の液体を添加してもよい。これにより、前述した分散樹脂溶液調製工程での重合体W、Zの溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。
また、本工程においては、顔料分散体とカラーフィルター用インクの材料との混合に先立って、または、顔料分散体とカラーフィルター用インクの材料との混合の後に、前記工程で用いた溶剤の少なくとも一部を除去してもよい。これにより、分散樹脂溶液調製工程、微分散工程での溶剤の組成と、最終的に得られるカラーフィルター用インクでの分散媒の組成とを異なるものとすることができる。その結果、前述した分散樹脂溶液調製工程での重合体W、Zの溶解、分散剤の分散、および、微分散工程での顔料粒子の微分散を好適に行いつつ、所望の特性を有するカラーフィルター用インクを確実に得ることができる。溶剤の除去は、例えば、対象とする液体を、減圧雰囲気下に置いたり、加熱したりすることにより行うことができる。
【0215】
《インクセット》
上述したようなカラーフィルター用インクは、インクジェット方式によるカラーフィルターの製造に用いられるものである。カラーフィルターは、通常、フルカラー表示に対応するため、複数色の着色部(通常は、光の三原色に対応するRGBの3色)を有している。そして、これら複数色の着色部の形成には、それぞれに対応する色の複数種のカラーフィルター用インクが用いられる。すなわち、カラーフィルターの製造には、複数色のカラーフィルター用インクを備えるインクセットが用いられる。本発明においては、カラーフィルターの製造において、上述したようなカラーフィルター用インクが、少なくとも1種の着色部の形成に用いられるものであればよいが、全色の着色部の形成に用いられるのが好ましい。
【0216】
より具体的には、本発明のカラーフィルター用インクセットは、赤色の着色剤(特に、赤色の顔料)を含む赤色インクと、緑色の着色剤(特に、緑色の顔料)を含む緑色インクと、青色の着色剤(特に、青色の顔料)を含む青色インクとを備えたものであるのが好ましい。これにより、カラーフィルター用インクセットを用いて製造されるカラーフィルターの色再現域を特に広いものとすることができる。また、カラーフィルターにおいて、各色間での輝度バランスを容易に調整することができ、特に優れた画質の画像を好適に表示することができる。
【0217】
《画像表示装置》
次に、カラーフィルター1を有する画像表示装置(電気光学装置)である液晶表示装置の好適な実施形態について説明する。
図8は、液晶表示装置の好適な実施形態を示す断面図である。同図に示すように、液晶表示装置60は、カラーフィルター1と、カラーフィルター1の着色部12が設けられた面側に配された基板(対向基板)66と、カラーフィルター1と基板66との間の空隙に封入された液晶よりなる液晶層62と、カラーフィルター1の基板11の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図8中下側)に設けられた偏光板67と、基板66の液晶層62に対向する面とは反対の面側(図8中上側)に設けられた偏光板68とを有している。そして、カラーフィルター1の着色部12および隔壁13が設けられた面(着色部12および隔壁13の基板11に対向する面とは反対の面)には、共通電極61が設けられており、基板(対向基板)66の液晶層62、カラーフィルター1に対向する面には、カラーフィルター1の各着色部12に対応する位置に、マトリクス状に、画素電極65が配されている。さらに、共通電極61と液晶層62との間には配向膜64が設けられ、基板66(画素電極65)と液晶層62との間には配向膜63が設けられている。
【0218】
基板66は、可視光に対して光透過性を有する基板であり、例えば、ガラス基板である。
共通電極61、画素電極65は、可視光に対して光透過性を有する材料で構成されたものであり、例えば、ITO等で構成されている。
また、図中省略しているが、各画素電極65に対応するように、複数のスイッチング素子(例えば、TFT:薄膜トランジスタ)が設けられている。そして、各着色部12に対応する各画素電極65について、共通電極61との間での電圧の印加状態を制御することにより、各着色部12(各画素電極65)に対応する領域での、光の透過性を制御することができる。
【0219】
液晶表示装置60では、図示しないバックライトから発せられた光が、偏光板68側(図8中上側)から入射するようになっている。そして、液晶層62を透過し、カラーフィルター1の各着色部12(12A、12B、12C)に入射した光は、各着色部12(12A、12B、12C)に対応する色の光として、偏光板67(図8中下側)から出射する。
上述したように、着色部12は、本発明のカラーフィルターの製造方法を用いて形成されたものであるため、隣接する着色部12間での混色が防止され、また、その表面の平坦性の高いものである。その結果、液晶表示装置60は、色再現性およびコントラストに優れたものとなっている。
【0220】
《電子機器》
前述したようなカラーフィルター1を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図9は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【0221】
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
【0222】
図10は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0223】
図11は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0224】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0225】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0226】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0227】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。中でも、テレビは、近年の表示部の大型化の傾向が顕著であるが、このような大型の表示部(例えば、対角線長80cm以上の表示部)を有する電子機器では、従来のカラーフィルターの製造方法により製造されたカラーフィルターを適用した場合、隣接する着色部間で混色が生じ、色再現性に問題が生じ易く、また、着色部の平坦性が低く、コントラストに問題が生じ易かったが、本発明を適用すれば、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、上記のような大型の表示部を有する電子機器に適用した場合に、本発明の効果は、より顕著に発揮される。
【0228】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、着弾禁止領域をセルの両縁部に設けるものとして説明したが、これに限定されず、セルの一方の縁部にのち設けるものであってもよい。
また、前述した実施形態においては、各色の着色部に対応するカラーフィルター用インクを、セル内に付与した後に、一括で、セル内の各色のカラーフィルター用インクから分散媒を除去し、樹脂材料を硬化させるもの、すなわち、着色部形成工程(硬化工程)を1回のみ行うものとして説明したが、インク付与工程および着色部形成工程は、各色に対応して、繰り返し行うものであってもよい。
【0229】
また、カラーフィルター、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。例えば、本発明のカラーフィルターにおいては、着色部の基板に対向する面とは反対の面側に、着色部を被覆する保護膜が設けられていてもよい。これにより、着色部の損傷や劣化等をより効果的に防止することができる。
【0230】
また、インクは、前述したような方法によって得られるものに限定されない。
また、前述した実施形態では、カラーフィルター用インクセットが、光の三原色に対応する3種(3色)のカラーフィルター用インクを備える場合について中心的に説明したが、カラーフィルター用インクセットを構成するカラーフィルター用インクの数、種類(色)は、上述したものに限定されない。例えば、カラーフィルター用インクセットは、4種以上のカラーフィルター用インクを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0231】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]重合体の合成(重合体溶液の調製)
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA):180重量部を入れて、85℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(1)で表される単量体成分(化合物)w1:188重量部、上記式(2)で表される単量体成分(化合物)w2:34重量部、上記式(3)で表される単量体成分(化合物)w3:74重量部、上記式(4)で表される単量体成分(化合物)w4:74重量部、ラジカル開始剤としてのアゾビスジメチルバレロニトリル:64重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:386重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分w1、w2、w3、w4を含み上記式(17)で表される重合体Wとしての重合体W1を得た。
【0232】
(合成例2〜8)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した7種の重合体(重合体W2〜W8)が得られた。
【0233】
(合成例9〜12)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体W’1〜W’4)が得られた。
【0234】
(合成例13)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA):246重量部を入れて、80℃に加熱した。続いて、該フラスコ内に、上記式(5)で表される単量体成分(化合物)z1:273重量部、上記式(6)で表される単量体成分(化合物)z2:36重量部、上記式(7)で表される単量体成分(化合物)z3:41重量部、ラジカル開始剤としての:39重量部をメトキシブチルアセテート:360重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに3時間熟成させた。
その後、フラスコ内にグリシジルメタクリレート:26重量部、メトキノン:2重量部を加え、110℃で10時間反応させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分z1、z2、z3を含み上記式(18)で表される重合体Zとしての重合体Z1を得た。
【0235】
(合成例14〜18)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例13と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した5種の重合体(重合体Z2〜Z6)が得られた。
【0236】
(合成例19、20)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例13と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した2種の重合体(重合体Z’1、Z’2)が得られた。
【0237】
(合成例21)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA):314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(8)で表される単量体成分(化合物)x1:180重量部、上記式(9)で表される単量体成分(化合物)x2:90重量部、上記式(10)で表される単量体成分(化合物)x3:15重量部、上記式(11)で表される単量体成分(化合物)x4:15重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分x1、x2、x3、x4を含み上記式(19)で表される重合体Xとしての重合体X1を得た。
【0238】
(合成例22〜25)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例21と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体X2〜X5)が得られた。
【0239】
(合成例26)
攪拌機、還流冷却機、滴下漏斗、窒素導入管および温度計を備えた反応容器(フラスコ)に、溶媒(第1の液体成分)としてのジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA):314重量部を入れて、90℃に加熱した。続いて、ラジカル開始剤としての2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):20重量部、および、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(溶媒):30重量部を加えた後、該フラスコ内に、上記式(12)で表される単量体成分(化合物)y1:200重量部、上記式(13)で表される単量体成分(化合物)y2:100重量部、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN):50重量部をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート:200重量部に溶解させた溶液を滴下ポンプを用いて5時間かけて滴下し、さらに4時間熟成させた。その後、室温まで冷却して、溶剤中に溶解しており、単量体成分y1、y2を含み上記式(20)で表される重合体Yとしての重合体Y1を得た。
【0240】
(合成例27〜30)
重合体の合成に用いる溶媒(溶剤)の種類および各成分の比率を変更することにより、重合体を構成する単量体成分の比率を表1に示すように変更した以外は、前記合成例26と同様の操作を行った。その結果、溶剤中に溶解した4種の重合体(重合体Y2〜Y5)が得られた。
【0241】
合成例1〜30での重合体の合成に用いた材料の種類、使用量(合成例1〜30で合成した重合体の組成)を表1にまとめて示した。なお、表中、「S」は溶媒(溶剤)のことを意味し、特に、「S1」はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)のことを示し、「S2」は1,3−ブチレングリコールジアセテート(1,3−BGDA)のことを示し、「S3」は2−(2−メトキシ−1−メチルエトキシ)−1−メチルエチルアセテートのことを示し、「S4」はビス(2−ブトキシエチル)エーテルのことを示し、「S5」は3−エトキシプロピオン酸エチルのことを示す。また、表中には、各重合体の重量平均分子量Mwをあわせて示した。なお、上記のようにして合成した重合体は、いずれも、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1〜3の範囲内であった。
【0242】
【表1】

【0243】
[2]カラーフィルター用インクセットの調製
(インクセット1)
酸価分散剤としてのディスパービック111と、アミン価分散剤としてのディスパービック166と、重合体W1と、溶剤(液性媒体)としての1,3−ブチレングリコールジアセテートとを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌を行うことにより、分散樹脂溶液を得た(分散樹脂溶液調整工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0244】
次に、以下に述べるようにして、分散樹脂溶液調整工程で得られた分散樹脂溶液に、顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた分散樹脂溶液に、顔料を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、C.I.ピグメントレッド177と上記式(14)で表される顔料誘導体との混合物と、C.I.ピグメントレッド254と上記式(15)で表される顔料誘導体との混合物と、上記式(16)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末とを用いた。また、このとき、分散樹脂溶液と顔料との混合物中における顔料の含有率が16wt%となるように、1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
【0245】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製)を添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、得られる顔料分散体中における顔料の含有率が13wt%となるように、1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
【0246】
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、顔料分散体を得た。
次に、上記のようにして得られた顔料分散体に、重合体X1と、重合体Y1と、ポリエチレングリコール#300(重量平均分子量:300)と、レべリング剤としてのメガファックF−444(大日本インキ化学工業(株)社製)とを加え、混合した(樹脂材料混合工程)。本工程は、上記の各材料を内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌することにより行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。これにより、目的とする赤色のカラーフィルター用インク(Rインク)を得た。得られたRインクの顔料の含有率は、7.3wt%であった。
【0247】
また、顔料の種類、各成分の使用量を変更した以外は、前記赤色のカラーフィルター用インクと同様にして、緑色のカラーフィルター用インク(Gインク)、青色のカラーフィルター用インク(Bインク)を調製した。これにより、R、G、Bの3色のインクからなるインクセット1が得られた。Rインクを構成する顔料の平均粒径、Gインクを構成する顔料の平均粒径、Bインクを構成する顔料の平均粒径は、それぞれ、70nm、70nm、70nmであった。また、Gインクの顔料としては、C.I.ピグメントグリーン58、上記式(16)で示される化学構造を有するスルホン化顔料誘導体の粉末を用い、最終的なGインク中の顔料の含有率を10.1wt%とした。また、Bインクの顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6を用い、最終的なBインク中の顔料の含有率を4.9wt%とした。
【0248】
(インクセット2〜15)
カラーフィルター用インクの材料の種類・含有量を表2、表3に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にしてカラーフィルター用インク(インクセット)を調製した。
なお、上記各インクセットでは、いずれも、重合体Z、Z’、W、W’および後述する樹脂材料Aを用いる場合には、これらを分散樹脂溶液調整工程で用い、重合体X、Yについては、混合工程で用いた。また、各重合体は、合成に用いた溶剤中に溶解させた溶液の状態で上記各実施例に使用した。なお、上記の各実施例、各比較例、および後述の表中の重合体の含有量、使用量は、溶液そのもののではなく、溶液中の各重合体の量を基にして記載した。
【0249】
前記インクセットでのカラーフィルター用インクの構成成分の種類、含有量等を表2、表3にまとめて示した。なお、表中、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントレッド177と式(14)で表される顔料誘導体との混合物「PR177D」、C.I.ピグメントレッド254と式(15)で表される顔料誘導体との混合物「PR254D」、式(16)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「SPD」、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、C.I.ピグメントイエロー150を「PY150」、ディスパービック111(酸価:50KOHmg/g)を「DA1」、ディスパービック2095(酸価:13KOHmg/g)を「DA2」、ディスパービック9075(アミン価:12KOHmg/g)を「DA3」、ディスパービック166(アミン価:115KOHmg/g)を「DA4」、ポリエチレングリコール#300(平均重量分子量:300、粘度:70mPa・s)を「PEG1」、ポリエチレングリコール#400(平均重量分子量:400、粘度:90mPa・s)を「PEG2」、ポリエチレングリコール#200(平均重量分子量:200、粘度:50mPa・s)を「PEG3」、ポリエチレングリコール#600(平均重量分子量:600、粘度:135mPa・s)を「PEG4」、ポリプロピレングリコール#400(分子量:400、粘度:70mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG1」、ポリプロピレングリコール#1000(平均重量分子量:1000、粘度:150mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG2」、ポリプロピレングリコール#2000(平均重量分子量:2000、粘度:310mPa・s、単量体成分:1,2−プロピレングリコール)を「PPG3」、レベリング剤(メガファックF−444、大日本インキ化学工業(株)社製))を「F444」、レベリング剤(オレフィンSPC、日信化学工業(株)社製)を「SPC」、YX8000(樹脂材料A、日本エポキシレジン社製)を「A」で示した。なお、分散剤の酸価は、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求め、アミン価は、DIN 16945に準拠する方法により求めた。
【0250】
なお、各実施例および各比較例で用いた、C.I.ピグメントレッド177と式(14)で表される顔料誘導体との混合物中における式(14)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。また、前記実施例および比較例で用いた、C.I.ピグメントレッド254と式(15)で表される顔料誘導体との混合物中における式(15)で表される顔料誘導体の含有率は、いずれも、0.1〜10wt%であった。なお、粘度の測定は、25℃の環境下、E型粘度計(東機産業社製、RE−01)を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0251】
【表2】

【0252】
【表3】

【0253】
[3]カラーフィルターの製造
(実施例1)
上記のようにして得られたインクセット1を用いて、以下のようにして、カラーフィルターを製造した。
まず、両面にナトリウムイオンの溶出を防止するシリカ(SiO)膜が形成されたソーダガラス製の基板(G5サイズ:1100×1300mm)を用意し、洗浄処理を施した。
【0254】
次に、カーボンブラックを含む隔壁形成用の感放射線性組成物を、洗浄済の基板の一方の面の全体に付与し、塗膜を形成した。
次に、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒という条件でプリベーク処理を行った。
【0255】
その後、フォトマスクを介して、放射線を照射して、ポストエキスポジャーベーク処理(PEB)を行い、引き続き、アルカリ現像液を用いた現像処理を行い、さらに、ポストベーク処理を行うことにより、隔壁を形成した。PEBは、加熱温度:110℃、加熱時間:120秒、放射線照射強度:150mJ/cmという条件で行った。また、現像処理は、例えば、振動浸漬法により行った。現像処理時間は、60秒とした。また、ポストベーク処理は、加熱温度:150℃、加熱時間:5分という条件で行った。形成された隔壁(セル)の高さは、2.1μmであった。また、セルの基板の液滴吐出ヘッドに対する移動方向(Y軸方向)における幅Lは、100μmであった。
【0256】
次に、図3〜図6に示すような液滴吐出装置を用いて、隔壁で囲まれた領域としてのセル内に、インクを吐出した。この際、3色の着色インクを用いた。また、液滴吐出ヘッドとしては、ノズルプレートがエポキシ系接着剤(味の素ファインテクノ社社製、AE−40)で接合されたものを用いた。また、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向(Y軸方向)における各セルの両縁部から幅L(20.0μm)の領域(着弾禁止領域)に液滴が着弾しないように設定した。また、液滴吐出装置から吐出される液滴の平均径Lが5.0μmとなるように設定した。また、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度を300mm/秒となるよう設定した。
その後、ホットプレート上にて100℃で10分間の加熱処理を施し、さらに200℃のオーブン内で1時間加熱処理を施すことにより、3色の着色部が形成された。これにより、図1に示すようなカラーフィルターが得られた。
【0257】
(実施例2〜7)
セルの大きさを表4に示すように変更し、着弾禁止領域の幅L、液滴の平均径L、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度の設定を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。
(実施例8〜16)
インクセット1を、表4に示すインクセットに変更し、セルの大きさを表4に示すように変更し、着弾禁止領域の幅L、液滴の平均径L、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度の設定を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。
【0258】
(比較例1、2)
セルの幅Lを表4に示すように変更し、着弾禁止領域の幅L、液滴の平均径L、基板の液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度の設定を表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。
(比較例3〜7)
インクセット1を、表4に示すインクセットに変更した以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルターを製造した。
各実施例および各比較例における、セルの幅および高さ、液滴吐出装置の各設定を表4に示した。
【0259】
【表4】

【0260】
[4]カラーフィルターの評価
上記のようにして得られた各カラーフィルターを用いて、以下のような評価を行った。
[4.1]色再現性の評価
前記各実施例および各比較例において製造されたカラーフィルターを用いて、図8に示すような液晶表示装置を製造した。
【0261】
得られた各液晶表示装置ついて、標準C光源を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行った状態で、分光光度計(大塚電子社製、MCPD3000)により、透過スペクトルを測定し、xy表示系による色度(R(xy)、G(xy)、B(xy))を求め、NTSC比を算出し、以下の4段階の基準に従い、評価した。NTSC比が高いほど、色再現性が高いと言える。
A:100NTSC比が80%以上。
B:NTSC比が73以上、80%未満。
C:NTSC比が73%未満。
D:混色や光漏れ等により、画素毎にばらつきが大きく測定に意味が無い。
【0262】
[4.2]混色の評価
各実施例および各比較例で得られたカラーフィルターの任意の画素1000個を、顕微鏡によって観察し、下記基準に従い、混色の評価を行った。
A:混色も、隔壁へのインクの乗り上げも確認されなかった。
B:混色は確認されなかったが、隔壁へのインクの乗り上げが確認され、その発生率が1%以下であった。
C:混色は確認されなかったが、隔壁へのインクの乗り上げが確認され、その発生率が1%よりも高く、5%以下であった。
D:混色が確認された、または、隔壁へのインクの乗り上げの発生率が5%よりも高かった。
【0263】
[4.3]光漏れの評価
各実施例および各比較例のカラーフィルターを各10枚用いて、図8に示すような液晶表示装置をそれぞれ組み立てた。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、光漏れ(白抜け、輝点)の発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0264】
A:光漏れ(白抜け、輝点)の発生したカラーフィルターはない。
B:1〜2枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
C:3〜5枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
D:6〜9枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
E:10枚のカラーフィルターにおいて、光漏れ(白抜け、輝点)が認められる。
【0265】
[4.4]着色部の平坦性評価
各実施例および各比較例のカラーフィルターについて、表面粗さ測定機(KLA−Tencor社製、商品名:P−15)を用いて各着色部の最大の高さTmax[μm]と最小の高さTmin[μm]とを測定し、Tmin/Tmaxについて、下記の5段階の基準に従い、評価した。なお、Tmin/Tmaxは、各カラーフィルターの色ごとに求めたものであり、各色について無作為に100個の着色部を選んで測定した最大の高さと最小の高さとの比を平均して求めた。
【0266】
A:0.82≦Tmin/Tmax≦1.00
B:0.76≦Tmin/Tmax<0.82
C:0.71≦Tmin/Tmax<0.76
D:0.67≦Tmin/Tmax<0.71
E:Tmin/Tmax<0.67
【0267】
[4.5]色むら、濃度むら
前記各実施例および各比較例と同様にして、カラーフィルターを連続して製造し、それぞれ、5000枚目に製造されたカラーフィルターを用いて、同条件で図8に示すような液晶表示装置を製造した。
これらの液晶表示装置を用いて、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0268】
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0269】
[4.6]コントラスト比の評価
[4.5]で製造した前記各実施例および各比較例の液晶表示装置について、下記に示すような評価を行った。液晶表示装置を用いて、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示を行い、コントラストテスター(壺坂電機社製、CT−1)を用いて、淡色表示を行っていない場合と比較してのコントラスト比(CR)を求め、下記のようにして評価を行った。
【0270】
赤色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3300以上。
B:CRが2100以上3300未満。
C:CRが2100未満。
【0271】
緑色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが11500以上。
B:CRが5700以上11500未満。
C:CRが5700未満。
【0272】
青色の単色表示の場合、以下の3段階の基準に従い、評価した。
A:CRが3000以上。
B:CRが2700以上3000未満。
C:CRが2700未満。
これらの結果を表5に示す。
【0273】
【表5】

【0274】
表5から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたカラーフィルターは、混色が防止され、色再現性に優れたものであった。また、光漏れも無かった。また、着色部の平坦性も高いものであった。また、色むら・濃度むらも抑制され、コントラストにも優れていた。これに対して、比較例のカラーフィルターでは、満足行く結果が得られなかった。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】本発明のカラーフィルターの好適な実施形態を示す断面図である。
【図2】カラーフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図3】カラーフィルターの製造に用いる液滴吐出装置を示す斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出手段をステージ側から観察した図である。
【図5】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの底面を示す図である。
【図6】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は断面図である。
【図7】基板に形成されたセルの拡大平面図である。
【図8】液晶表示装置の実施形態を示す断面図である。
【図9】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0276】
1…カラーフィルター 11…基板 12…着色部 12A…第1の着色部 12B…第2の着色部 12C…第3の着色部 13…隔壁 14…セル 141…着弾禁止領域 2…カラーフィルター用インク 3…塗膜 60…液晶表示装置 61…共通電極 62…液晶層 63、64…配向膜 65…画素電極 66…基板(対向基板) 67、68…偏光板 100…液滴吐出装置 101…タンク 102…吐出走査部 103…液滴吐出手段 104…第1位置制御装置 105…キャリッジ 106…ステージ 108…第2位置制御装置 110…チューブ 112…制御手段 114…液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド) 116A、116B…ノズル列 118…ノズル 120…キャビティ 122…隔壁 124…振動子 124A、124B…電極 124C…ピエゾ素子 126…振動板 127…吐出部 128…ノズルプレート 129…液たまり 130…供給口 131…孔 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピュータ 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッタボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニタ 1440…パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数個のセルが設けられた基板上の前記セル内に、液滴吐出装置の液滴吐出ヘッドから、着色剤と樹脂材料と液性媒体とを含むインクを吐出して、カラーフィルターを製造する方法であって、
前記基板を、前記液滴吐出ヘッドに対して相対的に移動させつつ、前記セル内に前記液滴吐出ヘッドから前記インクの液滴を付与するインク付与工程と、
前記セル内に付与された前記インクから液性媒体を除去し、前記インク中に含まれる樹脂材料を硬化させ、着色部を形成する着色部形成工程とを有し、
前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向において、前記セルの縁部から所定の幅で、インクの着弾を禁止する着弾禁止領域が設けられており、
前記着弾禁止領域の幅をL[μm]、インクの液滴の平均径をL[μm]としたとき、0.5≦L/L≦4.5の関係を満足し、
前記樹脂材料は、下記式(1)で表される単量体成分w1と下記式(2)で表される単量体成分w2と下記式(3)で表される単量体成分w3と下記式(4)で表される単量体成分w4とを含む重合体W、下記式(5)で表される単量体成分z1と下記式(6)で表される単量体成分z2と下記式(7)で表される単量体成分z3とを含む重合体Zのうちの少なくとも一方を含むことを特徴とするカラーフィルターの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【請求項2】
前記着弾禁止領域の幅をL[μm]、前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動方向における前記セルの幅をL[μm]としたとき、0.025≦L/L≦0.5の関係を満足する請求項1に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項3】
前記着弾禁止領域の幅Lは、3.0〜50.0μmである請求項1または2に記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
前記インクの25℃における粘度は、13mPa・s以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項5】
前記基板の前記液滴吐出ヘッドに対する相対的な移動速度は、30〜400mm/秒である請求項1ないし4のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項6】
隣接するセルの間には、隔壁が設けられており、
前記隔壁の高さが、1.4〜2.6μmである請求項1ないし5のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂材料は前記重合体Wを含むものであり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w1の含有率が、25〜75wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w2の含有率が、2〜25wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w3の含有率が、5〜50wt%であり、
前記重合体Wを構成する全成分に占める前記単量体成分w4の含有率が、3〜40wt%である請求項1ないし6のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料は前記重合体Zを含むものであり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z1の含有率が、50〜95wt%であり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z2の含有率が、3〜35wt%であり、
前記重合体Zを構成する全成分に占める前記単量体成分z3の含有率が、3〜35wt%である請求項1ないし7のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂材料は、さらに、下記式(8)で表される単量体成分x1と下記式(9)で表される単量体成分x2と下記式(10)で表される単量体成分x3と下記式(11)で表される単量体成分x4とを含む重合体Xを含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【請求項10】
前記樹脂材料は、さらに、下記式(12)で表される単量体成分y1と下記式(13)で表される単量体成分y2とを含む重合体Yを含むものである請求項1ないし9のいずれかに記載のカラーフィルターの製造方法。
【化12】

【化13】

【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルター。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルターを備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項13】
請求項12に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−107622(P2010−107622A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277818(P2008−277818)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】