説明

カラーフィルター基板およびその製造方法

【課題】本発明の課題は、青画素の透過率低下を抑制でき、高透過率とホワイトバランスを両立できるカラーフィルター基板を得ることである。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明は以下の構成からなる。
透明基板上に、少なくともパターン形状の赤緑青画素、および非パターン形状の透明保護膜を有するカラーフィルター基板において、赤および緑画素の領域は、赤および緑画素上に透明保護膜が形成され、青画素の領域は、透明保護膜上に青画素が積層されていることを特徴とするカラーフィルター基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置等に使用するカラーフィルター基板およびその製造方法に液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は軽量、薄型、低消費電力等の特性を活かし、テレビ、ノートパソコン、携帯情報端末、スマートフォン、デジタルカメラ等様々な用途で使用されている。
【0003】
液晶表示装置をカラー表示するために必要な部材であるカラーフィルター基板は、一般的に、ブラックマトリクスを設けたガラス基板上に赤緑青画素を形成した後、赤緑青画素上に透明保護膜層を形成することによって製造される。
【0004】
例えば、特許文献1では、ポリグリシジルメタクリレートおよび硬化剤からなる透明保護膜を、ブラックマトリックスおよび赤緑青画素上に形成させることで、表面平坦性、耐溶剤性、ITO耐性などを改善している。
【0005】
一方、特許文献2では、ブラックマトリックスおよび赤緑青画素上に、非感光性樹脂を用いて透明保護膜層を形成させ、さらにその上層に感光性樹脂層を用いて柱上凸部を形成し、柱上凸部に青色顔料を含有させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−50289号公報
【特許文献2】特開2000−347021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、ポリグリシジルメタクリレートおよび硬化剤からなる透明保護膜を、ブラックマトリックスおよび赤緑青画素上に形成させることで、表面平坦性、耐溶剤性、ITO耐性などを改善している。しかし、この方法では、透明保護膜層を220℃で熱硬化する工程において、下層の青画素も熱処理されるため青画素の透過率が低下することが懸念される。
【0008】
すなわち、一般的なカラーフィルター基板は、特許文献1のように赤緑青画素上に透明保護膜が形成された構成であるため、透明保護膜層を220℃で熱硬化する工程において、下層の青画素も熱処理されることになり、特に高透過率が望まれる青画素においては、青画素の熱硬化工程および透明保護膜の熱硬化工程において、青画素が2回熱処理されるために、透過率が大きく低下し、カラーフィルター基板のホワイトバランスと高透過率が両立できないのではないかと本発明者らは考えた。
【0009】
そこで、本発明者らは、青画素が透明保護膜の熱硬化を受けぬよう、透明保護膜上に青画素を積層させることを着想した。
【0010】
ここで、特許文献2では、透明保護膜層の上層に感光性樹脂層を用いて柱上凸部を形成し、柱上凸部に青色顔料を含有させることが記載されているが、柱上凸部は青画素とするためのものではなく、透明保護膜下層に青画素が存在し、透明保護膜層の熱硬化工程にさらされるため、やはり青画素の透過率が低下することが懸念される。
【0011】
本発明の課題は、青画素の透過率低下を抑制でき、高透過率とホワイトバランスを両立できるカラーフィルター基板を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成からなる。
1.透明基板上に、少なくともパターン形状の赤緑青画素、および非パターン形状の透明保護膜を有するカラーフィルター基板において、赤および緑画素の領域は、赤および緑画素上に透明保護膜が形成され、青画素の領域は、透明保護膜上に青画素が積層されていることを特徴とするカラーフィルター基板。
2.青画素の膜厚が、0.4〜1.7μmである(1)記載のカラーフィルター基板。
3.(1)または(2)に記載のカラーフィルター基板の製造方法であって、少なくとも下記工程をこの順に含むことを特徴とするカラーフィルター基板の製造方法。
(1)赤および緑画素がパターン状に形成された透明基板上に、透明非感光性樹脂を非パターン形状に塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、透明非感光性樹脂層を形成する工程
(2)該透明非感光性樹脂層上に青色感光性樹脂を塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、青色感光性樹脂層を形成する工程
(3)該青色感光性樹脂層にフォトマスクを介して露光する工程
(4)現像液により該青色感光性樹脂層のみをエッチングする工程
(5)該透明非感光性樹脂層および該青色感光性樹脂層を160〜210℃で一括加熱処理する工程
【発明の効果】
【0013】
本発明のカラーフィルター基板は、透明保護膜上に青画素が形成され、青画素の熱処理工程が1回削減できるため、青画素の透過率低下を抑制でき、高透過率とホワイトバランスを両立できる。
【0014】
さらに、本発明は、透明保護膜および青画素を一括で160〜210℃で熱処理することによって、低コストで、高透過率でホワイトバランスに優れるカラーフィルター基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】比較例1のカラーフィルター基板の断面図
【図2】比較例2のカラーフィルター基板の断面図
【図3】実施例1のカラーフィルター基板の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のカラーフィルター基板の例を図3に示す。本発明のカラーフィルター基板は、赤および緑画素の領域は、パターン形状の赤および緑画素上に非パターン形状の透明保護膜が形成され、青画素の領域は、非パターン形状の透明保護膜上にパターン形状の青画素が形成された構成であることを特徴とする。これによって本発明は、カラーフィルター基板製造時の加熱処理工程における青画素の透過率低下を抑制でき、カラーフィルター基板のホワイトバランスと高透過率を両立したことを特徴とする。
【0017】
通常、パターン形状の青画素中に含まれるバインダー樹脂、光重合開始剤、高分子分散剤等は、200℃以上の加熱処理工程で黄変し青画素の透過率を低下させることが懸念される。ここで、図2に示すような一般的なカラーフィルター基板は、青画素上に透明保護膜が形成されるため、青画素の加熱処理工程および透明保護膜の加熱処理工程において、青画素が2回熱処理される。一方、本発明のカラーフィルター基板は、透明保護膜上に青画素が形成されるため、青画素の加熱処理工程が1回で済むため、青画素の透過率低下を抑制できる。
【0018】
また、一般的な色度規格であるsRGB色までカラーフィルター基板の色再現範囲を広げるためには、赤および緑画素の着色剤を高濃度にすることが望まれる。画素中の着色剤を高濃度にすると、画素中の樹脂濃度が低下するため、赤および緑画素の耐溶剤性が低下することが懸念される。本発明のカラーフィルター基板は、赤および緑画素のパターンは、透明保護膜の下に形成されるため、カラーフィルター基板の耐溶剤性は良好となる。
【0019】
本発明において、赤画素領域の赤画素の膜厚は、1.8〜2.5μmの範囲が好ましい。赤画素の膜厚が1.8μmより薄いとカラーフィルター基板の色再現範囲が狭くなる場合があり、赤画素の膜厚が2.5μmより厚いとカラーフィルター基板の表面段差が大きくなる場合がある。一方、赤画素領域の透明保護膜の膜厚は、1.0〜3.0μmの範囲が好ましい。透明保護膜の膜厚が1.0μmより薄いと赤画素の耐溶剤性が不良となる場合があり、透明保護膜の膜厚が3.0μmより厚いと透明保護膜を均一に作製することが困難な場合がある。
【0020】
本発明において、緑画素領域の緑画素の膜厚は、1.8〜2.5μmの範囲が好ましい。緑画素の膜厚が1.8μmより薄いとカラーフィルター基板の色再現範囲が狭くなる場合があり、緑画素の膜厚が2.5μmより厚いとカラーフィルター基板の表面段差が大きくなる場合がある。一方、緑画素領域の透明保護膜の膜厚は、1.0〜3.0μmの範囲が好ましい。透明保護膜の膜厚が1.0μmより薄いと緑画素の耐溶剤性が不良となる場合があり、透明保護膜の膜厚が3.0μmより厚いと透明保護膜を均一に作製することが困難な場合がある。
【0021】
本発明において、青画素領域の透明保護膜の膜厚は、緑および赤画素領域の透明保護膜の膜厚よりも厚くなる。すなわち、赤および緑画素がパターン状に形成された基板上に、透明非感光性樹脂を塗布すると、透明非感光性樹脂が青画素領域に流れ込むためである。本発明では、青画素領域の透明保護膜の膜厚は、1.5μm以上が好ましく、1.6μm以上がより好ましい。透明保護膜の膜厚が1.5μmより薄いと赤および緑画素の耐溶剤性が不良となる場合がある。一方、青画素領域の透明保護膜の膜厚は、4.0μm以下が好ましく、3.5μm以下が更に好ましい。透明保護膜の膜厚が4.0μmより厚いと透明保護膜を均一に作製することが困難な場合がある。
【0022】
青画素領域の青画素の膜厚は、0.4μm以上であることが好ましく、0.7μm以上であることがより好ましい。青画素の膜厚が0.4μmより薄いと、カラーフィルター基板の表面段差が不良となる場合がある。一方、青画素領域の青画素の膜厚は、1.7μm以下であることが好ましく、1.6μm以下であることがより好ましい。青画素の膜厚が1.7μmより厚いと、カラーフィルター基板の表面段差が良好になる。
【0023】
本発明のカラーフィルター基板の透明保護膜は、非パターン形状であることが必要であり、樹脂、溶媒などを混合した透明非感光樹脂を用いて形成されることが好ましい。
【0024】
本発明のカラーフィルター基板の透明保護膜に使用できる樹脂の例としては、エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シロキサン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。非感光性であれば開始剤、モノマー等の感光成分が不溶のため、カラーフィルター基板の表面段差や透過率が高くなる。
【0025】
本発明のカラーフィルター基板に使用できる溶媒の例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等が挙げられる。
【0026】
本発明のカラーフィルター基板の青画素はパターン形状であることが必要であり、着色剤、感光性樹脂、溶剤等を混合した青色感光性樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0027】
青画素に使用できる着色剤の例としては、C.I.ピグメントブルー(PB)15:6、C.I.ピグメントバイオレット(PV)23、C.I.アシッドレッド(AR)52、AR92、AR289等が挙げられる。
【0028】
本発明で使用できる感光性樹脂としては、アクリル系、エポキシ系、シロキサン系等が挙げられ、カラーフィルター基板の製造コストを安くできるため感光性アクリル系樹脂が好ましく、感光アクリル系樹脂には、バインダーポリマー、多官能モノマー、光重合開始剤を含有させることがさらに好ましい。
【0029】
なお、本発明において、樹脂としてアクリル系樹脂を用いた場合、バインダーポリマー、アクリルモノマー、および高分子分散剤を樹脂成分とし、着色剤を着色剤成分とする。
【0030】
バインダーポリマーの例としては、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物の共重合体等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、あるいは酸無水物等が挙げられる。
【0031】
多官能モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0033】
本発明では、青画素同様に赤および緑画素も、着色剤、感光性樹脂、溶剤等を混合した赤色感光性樹脂および緑色感光性樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0034】
赤画素に使用する着色剤の例としては、C.I.ピグメントレッド(PR)149、PR166、PR177、PR179、PR209、PR254等が挙げられる。
【0035】
緑画素に使用する着色剤の例としては、C.I.ピグメントグリーン(PG)7、PG36、PG58、C.I.ピグメントイエロー(PY)138、PY150、PY138等が挙げられる。
【0036】
本発明のカラーフィルター基板に使用される透明基板の例としては、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。
【0037】
次に、本発明のカラーフィルター基板の製造方法についてその一例を説明する。本発明のカラーフィルター基板は、下記(1)〜(5)の工程の順番で製造することが好ましい。
(1)赤および緑画素がパターン状に形成された透明基板上に、透明非感光性樹脂を非パターン形状に塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、透明非感光性樹脂層を形成する工程
(2)該透明非感光樹脂層上に青色感光性樹脂を塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、青色感光性樹脂層を形成する工程
(3)該青色感光樹脂層にフォトマスクを介して露光する工程
(4)現像液により該青色感光性樹脂層のみをエッチングする工程
(5)該非透明感光性樹脂層および該青色感光性樹脂層を160〜210℃で一括加熱処理する工程
上記(1)〜(5)工程のように、透明樹脂膜および青画素を一括形成させることで、青画素の加熱処理工程が1回で済むため、青画素の透過率低下を抑制でき、カラーフィルター基板のホワイトバランスと高透過率を両立でき、かつ、加熱処理工程を低減できるため、カラーフィルターの製造コストを大幅に低下させることができる。
【0038】
上記(1)工程において、透明非感光樹脂の予備加熱温度は、80〜160℃の範囲が好ましい。予備加熱温度が80℃より低いと、透明非感光樹脂膜中に溶媒が残存することで次工程の青色感光性樹脂の塗布性が不良となる場合がある。一方、予備加熱温度が160℃よりも高いと、赤および緑画素の透過率が低下する場合がある。
【0039】
上記(2)青色感光性樹脂の予備加熱温度は、80〜160℃が好ましい。予備加熱温度が80℃より低いと、青色感光性樹脂中に溶媒が残存することで次工程の露光感度が低下する場合がある。一方、予備加熱温度が160℃よりも高いと、赤緑青画素の透過率が低下する場合がある。
【0040】
本発明では、上記(5)工程において、非透明感光性樹脂層および青色感光性樹脂層を一括で加熱処理し熱硬化することが好ましい。これによって、カラーフィルター製造工程の加熱処理工程における青画素の透過率低下を抑制でき、カラーフィルター基板のホワイトバランスと高透過率を両立できる。
【0041】
非透明感光性樹脂層および青色感光性樹脂層の一括加熱処理温度は、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。加熱処理温度が160℃より低いと青画素の硬化が不充分で青画素の耐溶剤性が不良となる場合がある。一方、一括加熱処理温度は、230℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。加熱処理温度が230℃より高いと青画素の透過率低下が大きく、青画素の透過率が低下する場合がある。
【0042】
赤緑青感光性樹脂および透明非感光性樹脂を基板上に塗布する方法としては、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ダイコーター、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0043】
青色感光性樹脂層を露光する方法としては、超高圧水銀灯、ケミカル灯、高圧水銀灯等を用いることができる。
【0044】
青色感光性樹脂層をエッチングする方法としては、アルカリ現像等が挙げられる。アルカリ現像に使用するアルカリ性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチルアミン、メチルジエチルアミン等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
<評価方法>
(カラーフィルター基板の色度および透過率測定)
赤緑青画素領域に、赤緑青画素および透明保護膜が形成されたカラーフィルター基板を作製した。カラーフィルター基板の赤緑青画素領域のC光源XYZ表色系における色度座標(x、y)および透過率(Y)は、大塚電子(株)製、顕微分光光度計“MCPD−2000”を用いて測定した。
【0046】
(カラーフィルター基板のホワイトの色度および透過率測定)
赤緑青画素領域の(x、y、Y)加法混色により、ホワイトの(x、y、Y)を算出した。ホワイトxが0.320〜0.330の範囲で、かつ、ホワイトyが0.320〜0.330の範囲であった場合に、カラーフィルター基板のホワイトバランスが良好と判断した。一方、ホワイト色度(x、y)が大きいほど、通常ホワイト(Y)が大きくなる傾向があるため、ホワイトxが0.320〜0.330の範囲で、かつ、ホワイトyが0.320〜0.330の範囲の場合について、ホワイトYが高いほどカラーフィルター基板の透過率が高いと判定した。
【0047】
(カラーフィルター基板の赤画素領域の膜厚)
透明基板上のパターン形状の赤画素を作製し、赤画素膜厚を東京精密(株)製、表面段差計“サーフコム1400D”を用いて測定した。つぎに、赤画素上に非パターン形状の透明保護膜を形成させ、赤画素領域の総膜厚を測定した。総膜厚と赤画素膜厚との差から、赤画素領域の透明保護膜の膜厚を算出した。
【0048】
(カラーフィルター基板の緑画素領域の膜厚)
赤画素領域と同様にして、緑画素領域の膜厚を測定した。
【0049】
(カラーフィルター基板の青画素領域の膜厚)
透明基板上に非パターン形状の保護膜を作製し、透明保護膜の膜厚を東京精密(株)製、表面段差計“サーフコム1400D”を用いて測定した。つぎに、透明保護膜上にパターン形状の青画素を形成させ、青画素領域の総膜厚を測定した。総膜厚と透明保護膜の膜厚との差から、青画素領域の青画素の膜厚を算出した。
【0050】
(カラーフィルター基板の表面段差)
赤緑青画素領域の最大総膜厚と最小総膜厚との差から、表面段差を算出した。
【0051】
(カラーフィルター基板の耐溶剤性)
赤画素、緑画素、保護膜、および青画素が形成されたカラーフィルター基板を作製した。このカラーフィルター基板を、25℃のN−メチルピロリドン中に5分間投入した後、240℃で30分間加熱処理を行った。処理前後のカラーフィルター基板について、C光源XYZ表色系における(x、y、Y)を行い、(L、a、b)を測定した。処理前後の(L、a、b)の差から、以下の式より色差ΔEabを算出した。
【0052】
色差ΔEab=[(ΔE2+(Δa2+(Δb21/2
赤緑青画素の色差ΔEabが3以下であれば、耐溶剤性が良好と判断した。
【0053】
調製例1
(赤画素を形成するための赤色感光性樹脂の調製)
95gのPR254(チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製、 “イルガポア”レッド、(商品名)BK−CF)、5gのPR177(大日精化製、“クロモファイン”レッド、(商品名) 6125EC)、67gのBYK6919、67gのACA250、および766gのPMAを混合後した。循環式ビーズミル分散機(ウイリー・エ・バッコーフェン社製“ダイノーミル”KDL−A)とチューブでつなぎ、メディアとして直径0.3mmのジルコニアビーズを使用して、周速10m/sで3時間の分散処理を行い、顔料分散液を作製した。
【0054】
この顔料分散液38.63gに、3.02gの“サイクロマー”ACA250、5.35gの“カヤラッド”DPHA、0.79gの“イルガキュア”907、0.39gの“カヤキュア”DETX−S、0.04gのBYK333、および51.78gのPMAを添加し、赤色感光性樹脂を調製した。
【0055】
赤色感光性樹脂における質量混合比は、PR254:PR177=95:5であり、顔料成分:樹脂成分=29:71であった。
【0056】
調製例2
(緑画素を形成するための緑色感光性樹脂の調製)
50gのPG36(DIC(株)製、“ファーストゲングリーン”、(商品名)2YK−CF)、50gのPY150(ランクセス(株)製、(商品名)E4GNGT)を使用したこと以外は調製例1と同様にして、顔料分散液を作製した。
【0057】
この顔料分散液46.67gに、1.43gの“サイクロマー”ACA250、4.33gの“カヤラッド”DPHA、1.06gの“イルガキュア”907、0.53gの“カヤキュア”DETX−S、0.04gのBYK333、および45.94gのPMAを添加し、緑色感光性樹脂を調製した。
【0058】
緑色感光性樹脂における質量混合比は、PG36:PY150=50:50であり、顔料成分:樹脂成分=36:64であった。
【0059】
調製例3
(透明保護膜を形成するための透明非感光樹脂の調製)
トリメリット酸 65.05gをγ−ブチロラクトン 280gに溶解した後に、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 74.95gを添加し、120℃で2時間加熱した。得られた溶液 20gに、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル 7g、ジエチレングリコールジメチルエーテル 15gを添加し、透明非感光性樹脂を調製した。
【0060】
調製例4
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
60gのPB15:6(東洋インキ社製“リオノール”ブルー、(商品名)7602)、40gのPV23(クラリアントジャパン社製、“ホスタパーム”バイオレット、(商品名)RL−COF02)を使用したこと以外は調製例1と同様にして、顔料分散液を作製した。
【0061】
この顔料分散液27.86gに、5.81gの“サイクロマー”ACA250、7.17gの“カヤラッド”DPHA、0.70gの“イルガキュア”907、0.35gの“カヤキュア”DETX−S、0.04gのBYK333、および57.70gのPMAを添加し、青色感光性樹脂を調製した。
【0062】
青色感光性樹脂における質量混合比は、PB15:6:PV23=60:40であり、顔料成分:樹脂成分=15:85であった。
【0063】
調製例5
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
調製例4と同じ材料を使用し、青色感光性樹脂における質量混合比を、PB15:6:PV23=60:40、顔料成分:樹脂成分=45:55に変更して、青色感光性樹脂を調製した。
【0064】
調製例6
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
調製例4と同じ材料を使用し、青色感光性樹脂における質量混合比を、PB15:6:PV23=60:40、顔料成分:樹脂成分=25:75に変更して、青色感光性樹脂を調製した。
【0065】
調製例7
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
調製例4と同じ材料を使用し、青色感光性樹脂における質量混合比を、PB15:6:PV23=60:40、顔料成分:樹脂成分=18:82に変更して、青色感光性樹脂を調製した。
【0066】
調製例8
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
調製例4と同じ材料を使用し、青色感光性樹脂における質量混合比を、PB15:6:PV23=60:40、顔料成分:樹脂成分=11:89に変更して、青色感光性樹脂を調製した。
【0067】
調製例9
(青画素を形成するための青色感光性樹脂の調製)
調製例4と同じ材料を使用し、青色感光性樹脂における質量混合比を、PB15:6:PV23=60:40、顔料成分:樹脂成分=10:90に変更して、青色感光性樹脂を調製した。
【0068】
比較例1
(透明保護膜無しの赤緑青画素を有するカラーフィルター基板の作製)
ガラス基板上に、調製例1で得られた赤色感光性樹脂をスピナーにより塗布し、その後熱風オーブン中90℃で10分間の予備加熱処理を行った。次に、フォトマスクを介して露光した後、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中を用いて、60秒間シャワー現像したのち、純水で洗浄した。得られたパターンニング基板を熱風オーブン中210℃で30分の加熱処理を行った。以上によりガラス基板上にパターン形状の赤画素を作製した。
【0069】
次に、赤画素と同様にして、調製例2で得られた緑色感光性樹脂を使用して、ガラス基板上にパターン形状の緑画素を作製した。
【0070】
次に、赤画素と同様にして、調製例4で得られた青色感光性樹脂を使用して、ガラス基板上にパターン形状の青画素を作製した。
【0071】
比較例2
(赤緑青画素上に保護膜が形成されたカラーフィルター基板の作製)
比較例1と同様にして、ガラス基板上に赤緑青画素を作製した。
【0072】
この基板上に、調製例3で得られた透明非感光性樹脂をスピナーにより塗布し、その後熱風オーブン中130℃で5分の予備加熱処理を行った。次に、熱風オーブン中210℃で30分の加熱処理を行った。
【0073】
実施例1
(赤緑画素上および青画素下に透明保護膜が形成されたカラーフィルター基板の作製)
下記の工程順により、カラーフィルター基板を作製した。
(1)比較例1と同様にして、ガラス基板上に赤および緑画素を作製した。この基板上に、調製例3で得られた透明非感光樹脂をスピナーにより塗布後、熱風オーブン中130℃で5分間の予備加熱処理を行った。
(2)透明非感光樹脂上に、調製例4で得られた青色感光性樹脂をスピナーにより塗布後、熱風オーブン中90℃で10分間の予備加熱処理を行った。
(3)フォトマスクを介して、青画素領域のみ紫外線露光を行った。露光量が200mj/cmなるように、露光時間を調整した。
(4)水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液中を用いて、60秒間シャワー現像したのち、純水で洗浄した。
(5)得られた基板を、熱風オーブン中210℃で30分保持することにより、透明非感光性樹脂層および青色感光性樹脂層の一括加熱処理を行った。
【0074】
カラーフィルター基板の顕微鏡観察を行ったところ、赤および緑画素領域は、青画素が紫外線露光されていないため透明保護膜上に残膜は無かった。一方、青画素領域は、青画素が紫外線露光されているため透明保護膜上に均一な青画素が形成されていた。
【0075】
図1〜図3に、比較例1、比較例2、実施例1で得られたカラーフィルター基板の断面図を示す。また、表1に、比較例1、比較例2、実施例1で得られたカラーフィルター基板の評価結果を示す。
【0076】
なお、赤緑青画素および透明保護膜について、表1の膜厚となるように、赤緑青感光性樹脂および透明非感光性樹脂の塗布時のスピナー回転数を調整した。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1は、赤緑画素領域には赤緑画素上に透明保護膜が形成され、青画素領域では透明保護膜上に青画素が形成され、透明保護膜と青画素が一括加熱処理されたために、ホワイトバランス、ホワイト透過率、表面段差、耐溶剤性が良好であった。
【0079】
実施例1と比較して比較例1は、赤緑画素上に透明保護膜が形成されなかったため、赤および緑画素の耐溶剤性が不良であり、表面段差も不良であった。
【0080】
実施例1と比較して比較例2は、赤緑画素上に透明保護膜が形成されているものの、青画素上に透明保護膜層が形成された構成のため、ホワイトバランスとホワイト透過率が不良であった。比較例2の青画素の加熱処理が2回であったのに対し、実施例1の青画素の加熱処理は1回であったため、比較例2よりも実施例1のほうが、青画素領域の透過率が5%以上高くなった。
【0081】
実施例2〜6
調製例5〜9で得られた青色感光性樹脂を使用して、実施例1と同様にしてカラーフィルター基板を作製した。表2に、実施例1〜6で得られたカラーフィルター基板の評価結果を示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2は、赤緑青画素領域の色度(x、y)が同一となるように、青色感光性樹脂および青画素の膜厚を変化させた結果である。実施例2は、青画素膜厚が0.38μmであったため、青画素の総膜厚が薄くなり、カラーフィルター基板の表面段差が0.79μmで不良となった。一方、実施例6は、青画素膜厚が1.79μmであったため、青画素の総膜厚が厚くなり、カラーフィルター基板の表面段差が、0.66μmで不良であった。
【0084】
実施例7〜9
透明保護膜と青画素の一括加熱処理温度を150〜230℃に変更して、実施例1と同様にしてカラーフィルター基板を作製した。表3に、実施例1、実施例7〜9で得られたカラーフィルター基板の評価結果を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
表3は、赤緑青画素領域の色度(x、y)同一で、透明保護膜および青画素の一括加熱処理温度を変化させた結果である。
【0087】
実施例8は一括加熱処理温度が230℃であったため、実施例1と比較してホワイトバランスとホワイト透過率が不良であった。
【0088】
実施例9は、一括加熱処理温度が150℃であったため、実施例1と比較して青および緑画素の耐溶剤性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のカラーフィルター基板は、液晶ディスプレイ等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0090】
1.透明基板
2.赤画素
3.緑画素
4.青画素
5.透明保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、少なくともパターン形状の赤緑青画素、および非パターン形状の透明保護膜を有するカラーフィルター基板において、赤および緑画素の領域は、赤および緑画素上に透明保護膜が形成され、青画素の領域は、透明保護膜上に青画素が積層されていることを特徴とするカラーフィルター基板。
【請求項2】
青画素の膜厚が、0.4〜1.7μmである請求項1記載のカラーフィルター基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカラーフィルター基板の製造方法であって、少なくとも下記工程をこの順に含むことを特徴とするカラーフィルター基板の製造方法。
(1)赤および緑画素がパターン状に形成された透明基板上に、透明非感光性樹脂を非パターン形状に塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、透明非感光性樹脂層を形成する工程
(2)該透明非感光性樹脂層上に青色感光性樹脂を塗布後、80〜160℃で予備加熱処理し、青色感光性樹脂層を形成する工程
(3)該青色感光性樹脂層にフォトマスクを介して露光する工程
(4)現像液により該青色感光性樹脂層のみをエッチングする工程
(5)該透明非感光性樹脂層および該青色感光性樹脂層を160〜210℃で一括加熱処理する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88691(P2013−88691A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230389(P2011−230389)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】