説明

カラーフィルター基板用着色組成物およびカラーフィルター基板

【課題】着色画素を形成させた後で、画素に十分な平坦性を持たせ、更には耐薬品性、吐出安定性に優れたインクジェットカラーフィルター基板用着色組成物を提供する。
【解決手段】インクジェットカラーフィルター基板用着色組成物が少なくとも、(A)着色剤、(B)高分子分散剤、(C)下記構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーおよび(D)有機溶媒を含有し、かつ(C)多官能アクリルモノマーの水酸基価が10〜80mgKOH/gである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法により製造されるカラーフィルター基板用着色組成物、特にカラー液晶ディスプレイパネルのカラーフィルター基板に好適な着色組成物、およびそれを用いたカラーフィルター基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイパネルには、主要な構成要素として、カラーフィルター基板と、液晶セル基板、バックライトユニットが含まれている。カラーフィルター基板には、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3原色がライン状またはモザイク状に繰り返しパターン化されている。液晶セル基板の液晶は、カラーフィルター基板と、TFT(薄膜トランジスタ)との間に封入されている。バックライトユニットは、液晶セル基板の裏面に設けた光源であり、このバックライトユニットから発する光が液晶パネルを通過する際、その透過率を液晶への印加電圧により制御し、画像が表示される。
【0003】
従来、カラーフィルター基板の製造は、顔料が分散されたフォトレジスト液を透明基板上に塗布してから、乾燥、露光、現像、及び硬化などの工程を繰り返すことによって製造されていた。しかし、液晶ディスプレイパネルの大型化に伴い、生産性が低く、低コストの要求が高くなっている。このような要求に伴い、インクジェット法によるカラーフィルター基板の製造が注目されてきている。
【0004】
インクジェット法を利用するカラーフィルター基板は、コストパフォーマンスの面で利点があり、広く検討がなされている。インクジェット法で液滴付与して着色画素を形成する場合は、遮光性の隔壁が設けられた基板上に、直接着色画素を形成してカラーフィルター基板を作製する。また、互いに隣接する着色画素間でRGBインクの混色を防ぐために、隔壁には撥液処理を施す方法が知られている(例えば特許文献1)。そして、吐出された着色画素のインクは乾燥、硬化処理を経て、カラーフィルター基板となる。
【0005】
しかしながら撥液性の持つ遮光層に囲まれた画素にインクを吐出することになるので、インクの形状が凸となり、それを熱硬化させるため、原理的に着色画素の平坦性が低下しやすい傾向を有しているのも事実である。着色画素の平坦性が悪いと、カラーフィルター基板と対向するTFT基板との距離が、一画素内や近傍の画素間で変化するのと同時に、封入させる液晶層の厚みも変化することから、色ムラや表示速度ムラが発生し、画像品質低下の原因となりやすい。
【0006】
着色画素の平坦性を得る方法としては、インクを吐出し、前記インクに含有する溶剤を半乾燥させ更に前記溶剤より沸点が低い溶剤を加え蒸発乾燥させる方法(例えば特許文献2)、着色剤にアゾ化合物の互変異性体を配位子とする金属錯体を含有し、かつ、顔料分散剤にアミノ基を含有させる方法(例えば特許文献3)、更には顔料濃度10〜15%の第1のインクと顔料濃度1〜5%のインクを使用し、これらを塗り分けることにより画素領域の平坦性を向上させるという方法(例えば特許文献4)が開示されている。しかし、これらの方法を用いた場合、ある程度平坦性を良くすることはできても工程が煩雑であったり、広い面積に塗布した場合の再現性に乏しかったりすることがあり、改善が望まれていた。さらに、上記文献では液晶ディスプレイパネル用カラーフィルター基板として必要な信頼性についてほとんど考慮されておらず、着色画素の強度不足により耐薬品性や耐熱性、耐水性などに問題を生じるおそれがあった。
【0007】
一方、インクジェット法でのカラーフィルター基板用インクに用いられる熱硬化成分としては、メラミン樹脂(例えば特許文献5)、エポキシ樹脂(例えば特許文献6)、アクリル樹脂(例えば特許文献7)、カルボキシル基を有する特定構造の多官能アクリルモノマーとメラミン化合物の組み合わせ(特許文献8)など様々なものが知られている。しかし、これらの熱硬化成分を用いた場合、カラーフィルター基板としての信頼性や着色画素の平坦性をある程度向上させることはできるが、インクジェット法によるカラーフィルター基板の連続生産を行う場合に吐出状態が不安定になることがしばしば発生し、歩留まり低下の原因となっていた。
【0008】
このようにカラーフィルター基板としての耐薬品性などの信頼性と着色画素の平坦性、さらにはインクジェット吐出安定性とを同時に満足するものはなく、解決が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−279610公報
【特許文献2】特開2008−83147公報
【特許文献3】特開2007−314600公報
【特許文献4】特開2004−177867公報
【特許文献5】特開平9−90115公報
【特許文献6】特開2007−219302公報
【特許文献7】特開2003−49105公報
【特許文献8】特開2010−237664公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、耐薬品性などの信頼性や画素平坦性に優れた高品位なカラーフィルター基板を、インクジェット法にて安価で歩留まり良く製造可能なカラーフィルター基板用着色組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、以下の構成により達成される。
すなわち、本発明のカラーフィルター基板用着色組成物は少なくとも、(A)着色剤、(B)高分子分散剤、(C)下記構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーおよび(D)有機溶媒を含有し、かつ(C)多官能アクリルモノマーの水酸基価が10〜80mgKOH/gであることを特徴とするカラーフィルター基板用着色組成物。
【0012】
【化1】

【0013】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明の着色組成物を用いることにより、耐薬品性などの信頼性に優れ画素平坦性良好でムラのないカラーフィルター基板を、低コストで安定的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のカラーフィルター基板用着色組成物は少なくとも、(A)着色剤、(B)高分子分散剤、(C)下記構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーおよび(D)有機溶媒を含有し、かつ(C)多官能アクリルモノマーの水酸基価が10〜80mgKOH/gであることを特徴とするカラーフィルター基板用着色組成物である。
【0016】
【化2】

【0017】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)
(A)着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料等を用いることができるが、耐熱性、透明性の面から有機顔料が好ましい。中でも透明性が高く、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れたものが好ましい。代表的な有機顔料の具体的な例をカラ−インデックス(CI)ナンバ−で示すと、次のようなものが好ましく使用されるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
【0018】
黄色顔料の例としては、ピグメントイエロ−(以下PYと略す)12、13、17、20、24、83、86、93、95、109、110、117、125、129、137、138、139、147、148、150、153、154、166、168、185などが使用される。また、オレンジ色顔料の例としては、ピグメントオレンジ(以下POと略す)13、36、38、43、51、55、59、61、64、65、71などが使用される。
【0019】
また、赤色顔料の例としては、ピグメントレッド(以下PRと略す)9、48、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、254などが使用される。また、紫色顔料の例としては、ピグメントバイオレット(以下PVと略す)19、23、29、30、32、37、40、50などが使用される。
【0020】
また、青色顔料の例としては、ピグメントブル−(以下PBと略す)15、15:3、15:4、15:6、22、60、64、80などが使用される。また、緑色顔料の例としては、ピグメントグリ−ン(以下PGと略す)7、10、36、58などが使用される。これらの顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基処理、塩基性処理などの表面処理をされていてもかまわない。
【0021】
上記顔料は、例えばカラーフィルター基板のR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)3色の画素が、CRT(陰極線管)蛍光体の色度特性、バックライトや液晶ディスプレイに用いる液晶特性に合うように、単独もしくは数色組み合わせて調色され使用される。
【0022】
R(レッド)の場合を例にあげると、PR−254とPR−177の組合せ、PR−254とPY−138の組合せ、PR−254とPY−139の組合せ、PR−209とPO−38の組合せ等で色度が調色される。
【0023】
G(グリーン)の場合は、PG−7やPG−36さらにはPG−58と上記黄色顔料、例えば、PY−17、PY−83の組合せやPY−138の組合せ、PY−139の組合せ、PY−150の組合せ等で色度が調色される。
【0024】
B(ブルー)の場合は、PB15:3やPB15:6をPV23などと組み合わせて調色される。
【0025】
(B)高分子分散剤としては、通常、カラーフィルター基板用に使用されるものであれば、特に限定されず、ポリエステル、ポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリイミン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、などのポリマー、またはこれらの共重合体など、種々のものを単独、または混合して用いることができる。
【0026】
これらの高分子分散剤の中でも、特に顔料分散安定性と多官能アクリルモノマーとの相溶性の観点から、ポリエステル系高分子分散剤であることが好ましい。ポリエステル系高分子分散剤としては、例えばアクリル系共重合体の側鎖にポリエステル構造を有するものや、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどの窒素含有ポリマーとポリエステル構造とを併せ持つグラフト型ポリマー、ポリエステルを有するリン酸エステルや、ポリエステルを有するウレタン樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも窒素含有ポリマーとポリエステル構造とを併せ持つグラフト型ポリエステル系高分子分散剤が分散安定性の観点からより好ましい。
【0027】
窒素含有ポリマーとしては、より具体的にはポリアルキレンイミンとして例えば、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、市販品としてSP−003、SP−006、SP−012、SP−018、SP−200、SP−1000(日本触媒(株)製)などを挙げることができ、ポリアリルアミンとしてはアリルアミンを重合開始剤の存在下で60℃〜150℃で1時間〜24時間加熱して重合することで得たものの他、市販品として“PAA”(日東紡製)HCL−01、HCL−05、HCL−3L、HCL−10Lのようなアリルアミン塩酸塩重合体、同じく01、03、05、08、15、15C、25のようなアリルアミンフリー重合体、同じくSAのようなアリルアミンアミド硫酸塩重合体、同じくD11−HCL、D41−HCL、D19−HCL、D19A、1112CLのようなアリルアミンとジアリルアミンやジメチルアリルアミンの共重合体や、同じくU5000のような部分メトキシカルボニル化アリルアミン、同じくAC5050Aのような部分メチルカルボニル化などを挙げることができる。また、ポリビニルアミンとしては、特開平2−222404号公報や特開平6−122712号公報に記載の公知の方法により得ることができる。これらの中でもポリアリルアミンを有する場合、顔料への吸着が特に促進され少ない使用量で分散安定性を確保できるため特に好ましい。
【0028】
ポリエステルとしてはポリε−カプロラクトン、ポリδ−バレロラクトン、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン、ポリβ−プロピオラクトン、ポリγ−ブチロラクトン等のラクトン類を開環重合したものや、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシアルキルカルボン酸類を縮重合したもの、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸などのジカルボン酸類もしくはこれらの酸無水物類と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのジアルコール類とを縮重合したものが挙げられ、特にポリε−カプロラクトンを用いると顔料分散性が良好なため好ましい。
【0029】
これら高分子分散剤は、上記のものを骨格として顔料分散特性や溶剤への溶解性などを考慮しさらに様々な構造を有することができ、中でもカルボキシル基を有するポリエステル、カルボキシル基を有するポリアミド、カルボキシル基を有するポリエステルアミド、リン酸基を有するポリリン酸エステル、スルホン酸基を有するポリスルホン酸エステルなどを挙げることができ、さらには脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、各種酸無水物、多価アルコール、有機アミン、窒素含有複素環などを挙げることができる。
【0030】
ポリエステル系高分子分散剤としては、市販のものを使用することもでき、例えば、”ソルスパース”(ルーブリゾール社製)24000SC、24000GR、27000、28000、32000、32500、”アジスパー”(味の素ファインテクノ社製)PB711、821、822、824、827、880、881等を挙げることができる。
【0031】
これらの高分子分散剤はインク全固形分に対して10〜30質量%含有することが望ましく、さらに好ましくは15〜25質量%である。10質量%未満だと顔料の分散においての粘度安定性が困難となり、30質量%を越えると画素領域を乾燥する際の着色組成物の流動性が変化するため、画素領域の平坦状態が変化してしまう。なお、ここでいう固形分とは溶剤を除く全ての成分を含み、着色剤、高分子分散剤、反応性モノマーの他、各種ポリマーやオリゴマー、添加剤など常温常圧で固形のものであっても液状のものであってもいずれも固形分として含む。また、インク全固形分とは着色組成物における溶剤を除く全ての成分を表す。
【0032】
また、一般的にはこれらの高分子分散剤だけではインクジェット法カラーフィルター基板用着色組成物に要求される高度な保存安定性を確保することは難しく、高分子分散剤に加えてアクリルポリマーやマレイミドなど比較的高分子量のポリマーを併用することが多い。しかし、本発明は(B)高分子分散剤以外には高分子量のポリマーを含有しないことがより好ましい。具体的にはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による分子量測定による重量平均分子量Mw値が、1万を超えるものを含有しないことが好ましく、さらに4000を超えるポリマーを含まないことがより好ましい。これは、Mwが1万を超えるポリマーを含有するとポリマー自体の粘度が高いため着色組成物としての粘度も高くなってしまい平坦性も悪くなる傾向にあるためである。着色組成物に含まれるものとしてはポリマーであってもMwが4000未満のものや、いわゆるオリゴマーと呼ばれるような比較的低分子量のものが好ましい。さらに、低分子量である反応性モノマーを使用することにより、着色組成物としての粘度を低くすることができるためインクが画素内に広がりやすくなり平坦性向上の効果を得ることができる。
【0033】
高分子量のポリマーを併用しなくとも顔料の分散安定性を良好とするためには上記ポリエステル構造を有する高分子分散剤の中でも、アミン価と酸価の両方を持つものが好ましく、固形分換算のアミン価が5〜50でありかつ酸価が5〜50のものが好ましく、更にはアミン価が10〜20でありかつ酸価が10〜20のものがより好ましい。また、水酸基価が1〜20のものが好ましく、さらに2〜10のものがより好ましい。水酸基価が20を超えると高分子分散剤を有機溶剤へ溶解した場合の粘度が高くなる傾向があるため好ましくなく、1を下回ると有機溶剤への溶解性が極端に低下するため好ましくない。
【0034】
これらの高分子分散剤を使用することで顔料などの着色剤を安定に分散することができるため高コントラストで品位に優れたカラーフィルター基板を製造することができるとともに、さらには後述する多官能アクリルモノマーとの相溶性に優れ安定的にインクジェット吐出が可能な着色組成物を得ることができる。
【0035】
本発明での着色組成物では、分散機を用いて直接顔料を分散させる方法や、分散機を用いて有機溶媒中に顔料を分散して顔料分散液を作製し、その後希釈ワニスと混合する方法などにより製造される。顔料の分散方法には特に限定はなく、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなど、種々の方法をとりうるが、分散効率と微分散化からビーズミルが好ましい。ビーズミルとしては、コボールミル、バスケットミル、ピンミル、ダイノーミルなどを用いることができる。ビーズミルのビーズとしては、チタニアビーズ、ジルコニアビーズ、ジルコンビーズなどを用いるのが好ましい。
【0036】
かかる方法によって顔料分散液を調整した後、多官能アクリルモノマー、溶剤、その他添加剤等を混合した希釈ワニスを用意し、顔料分散液と混合することで、着色組成物を得ることができる。
【0037】
(C)多官能アクリルモノマーとしては、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好適である。
【0038】
【化3】

【0039】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)
これらの多官能アクリルモノマーの製造方法としては特に限定されない。例えば、出発原料としては、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール、ペンタペンタエリスリトールなどの多価アルコールを用いることができ、これらの混合物の他、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサペンタエリスリトールなど他の多価アルコールとの混合物を挙げることができる。中でもトリペンタエリスリトールを主成分とすることが好ましく、多価アルコール中の割合としてトリペンタエリスリトールを好ましくは40〜98質量%、より好ましくは70〜95質量%含むことが好ましく、50〜90質量%が特に好ましい。
【0040】
これらの多価アルコールを出発原料とし、反応方法としては(メタ)アクリル酸によりエステル化反応を行う方法、上記多価アルコールをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンなどで変性させて変性多価アルコールを合成した後、(メタ)アクリル酸にてエステル化反応を行う方法、カプロラクトンと(メタ)アクリル酸を予めエステル化しておいた後に、多価アルコールと反応させ上記多官能アクリルモノマーを合成する方法、多価アルコールと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンから選ばれる群の少なくとも一つと、(メタ)アクリル酸を一括して反応させる方法などを挙げられる。中でも上記多価アルコールをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンなどで変性させ変性多価アルコールを合成した後、(メタ)アクリル酸にてエステル化する方法が反応の容易性の観点から、より好ましい。
【0041】
多価アルコールをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンなどで変性させる反応を行う際には触媒を添加することができ、塩化第一スズ、オクチル酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイドなどのスズ系触媒の他、リン酸や陽イオン交換樹脂などを挙げることができる。また、不純物低減の観点から無触媒で反応することも好ましい。反応温度としては、通常80℃〜220℃、好ましくは100℃〜200℃であり、特に無触媒で反応させる場合は温度が重要となり165℃〜185℃が好ましい。上記の条件にて、通常1時間〜48時間加熱撹拌することで、変性多価アルコールを得ることができる。
【0042】
出発原料である多価アルコールをエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε−カプロラクトンなどで変性させて変性多価アルコールを合成する際の変性度としては、0〜3が好ましく、0.5〜2がより好ましい。
【0043】
上記反応は無溶剤で行うこともできるが、反応の均一性を確保するために溶媒を添加することが好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素や、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどの酢酸エステル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘキサノンなどの脂環式ケトンを使用することができる。これらの溶剤の中でも原料及び反応生成物の溶解性に優れるため芳香族炭化水素が好ましく、さらには上記変性多価アルコールの合成反応を無触媒で行う場合には沸点が165℃〜185℃の芳香族炭化水素を含むことがより好ましく、具体的にはメシチレン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、p−シメン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼンなどを含むことがより好ましい。これらの溶剤は適宜2種類以上を混合することもでき、他の溶剤を含むこともできるが、混合溶剤の沸点としては165℃〜185℃の範囲内であることが反応温度の制御が簡単となるため好ましい。
【0044】
このように合成した変性多価アルコールは、分液操作や溶剤留去、再沈などにより精製してから次のエステル化反応を行うこともできるが、精製せずに次のエステル化反応を行ってもよい。
【0045】
合成した変性多価アルコールを(メタ)アクリル酸にてエステル化する方法としては、変性多価アルコールと(メタ)アクリル酸を触媒および重合禁止剤の存在下で加熱する方法が挙げられる。その際反応系に生成する水分は除去することが好ましく、例えば溶剤と共沸させることで水分離器を通じて水分を除去することができる。
【0046】
エステル化反応に用いる触媒としては、塩化アルミニウム、リン酸、硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のほか、シリカ、アルミナ、ゼオライト等の固体酸、スルホン酸型イオン交換樹脂等が挙げられ、添加量としては変性多価アルコールに対して0.3質量%〜10質量%が好ましい。
【0047】
重合禁止剤は原料に含まれる場合はそのまま用いてもよいが、反応時にさらに追加することが好ましく、具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、p−ベンゾキノン、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ヒドロキノン、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ヒドロキノンの他、カテコール、tert−ブチルカテコールなどのカテコール系や、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、アミン系などの重合禁止剤を使用することができる。中でもカテコール系のものを用いた場合には加熱による(メタ)アクリル酸の重合を伴うゲル化を抑制し、エステル化を効率良く進行させることができるため、特に好ましい。重合禁止剤の添加量としては、反応溶液に対して0.03質量%〜1質量%が好ましく、0.1質量%〜0.5質量%がより好ましい。
【0048】
溶剤としては、上記変性多価アルコールの合成時に使用したものと同様のものが挙げられ、溶液の粘度が上がりすぎる場合は適宜溶剤を追加添加しても良い。
【0049】
このようなエステル化反応は、通常60℃〜180℃、好ましくは90〜140℃で加熱して行うことができ、反応時間は適宜設定することができるが、通常1〜48時間、好ましくは3〜12時間である。
【0050】
このようにして得られた上記(1)式で表される多官能アクリルモノマーは、分液操作や溶剤留去、再沈などにより精製してから使用することもでき、精製せずにそのまま使用することもできる。
【0051】
上記(1)式で表される多官能アクリルモノマーは単一化学構造式の化合物であっても複数の化学構造式で表される混合物であっても何ら差し支えないが、多官能アクリルモノマーの製造時の作りやすさの観点から、混合物であることが好ましい。さらには、(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちn=1の多官能アクリルモノマーおよびn=2の多官能アクリルモノマーを含有し、さらに(C´)下記構造式(2)で表される多官能アクリルモノマーを含有してなり、かつ(C)および(C´)の多官能モノマーの全量に対してn=1で表される多官能アクリルモノマーが40〜98質量%の範囲で含有することがより好ましく、n=1で表される多官能アクリルモノマーが50〜90質量%の範囲で含有することが更に好ましい。
【0052】
【化4】

【0053】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれかを表す。但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。)
多官能モノマーの混合割合が上記の範囲を外れ、例えば(C´)構造式(2)で表されるジペンタエリスリトール誘導体が多すぎる場合は、平坦性がやや悪化する傾向があるため好ましくなく、(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちn=2で表されるテトラペンタエリスリトール誘導体が多すぎる場合は、多官能モノマーの製造時の反応の制御が難しくゲル化物が発生するおそれがあるため好ましくない。より具体的には(C´)構造式(2)で表されるジペンタエリスリトール誘導体の含有率は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%であり、(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちn=2で表されるテトラペンタエリスリトール誘導体の含有率は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは3〜35質量%である。
【0054】
これらの(C´)構造式(2)で表されるジペンタエリスリトール誘導体、(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちn=1で表されるトリペンタエリスリトール誘導体、(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちn=2で表されるトリペンタエリスリトール誘導体の各含有率については、公知の分析方法によって調べることができ、例えば、ポリスチレン換算によるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により調べることができる。
【0055】
また、上記構造式(1)の多官能アクリルモノマーの変性度は、多官能アクリルモノマー1モルあたりにおける、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトンの各ユニットのモル数の総和を意味する。すなわち上記構造式(1)におけるXが、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Acのいずれかとなっているaの総和として表すことができる。
【0056】
特に限定されるわけではないが説明のため例示すると、上記構造式(1)で表されるもののうち、下記構造式(1−A)で表されるn=1かつ変性度0の多官能アクリルモノマー、下記構造式(1−B)で表されるn=1かつ変性度1の多官能アクリルモノマー、下記構造式(1−C)で表されるn=1かつ変性度2の多官能アクリルモノマー、下記構造式(1−D)で表されるn=1かつ変性度8の多官能アクリルモノマー、下記構造式(1−E)で表されるn=1かつ変性度16の多官能アクリルモノマーなどを含むことができる。但し、実際の多官能アクリルモノマーは製造上の制約からこれらの混合物であることが多いため、変性度は多官能アクリルモノマー1モルにおける変性モル数の総和として求めることができる。
【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
好ましい変性度としては、0〜3が好ましく、0.5〜2がより好ましい。変性度が小さいと高分子分散剤の種類や他の添加剤の種類によっては相溶性が劣ることがあり結果として吐出安定性が若干不安定になるおそれがあり、変性度が3を超えると硬化後の膜がカラーフィルター基板の塗膜としての耐溶剤性などの信頼性に劣る傾向にあるため好ましくない。
【0063】
また、上記(1)で表されるもののうちXの少なくとも一部は−(COC10O)Hまたは−(COC10O)Ac(但しaは1〜5の整数を表し、Acは−COCH=CH、または−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)で表されるカプロラクトン変性されたものであり、かつ変性度aが0.5〜2であることがより好ましい。上記のようなカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを含有する場合は、変性されていない通常の多官能アクリルモノマー例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(略称DPHA)などと比べて高分子分散剤や溶剤との相溶性を著しく改善することができ、結果として平坦性良好でかつ吐出安定性の非常に優れたインクジェット法に適したカラーフィルター基板用着色組成物を得ることができる。
【0064】
なお、本発明における多官能アクリルモノマーとしては上記の構造を含むものが好適であるが、他の多官能アクリルモノマーを混合することもでき、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートカルバメート、変性ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、アジピン酸1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリル酸エステル、無水フタル酸プロピレンオキサイド(メタ)アクリル酸エステル、トリメリット酸ジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ロジン変性エポキシジ(メタ)アクリレート、アルキッド変性(メタ)アクリレートのようなオリゴマー、あるいはトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ジシクロペンタジエニルジアクリレート、もしくはこれらのアルキル変性物、アルキルエーテル変性物やアルキルエステル変性物、酸無水物による変性物などを用いることができる。
【0065】
多官能アクリルモノマーの水酸基価としては、上記(1)で表されるものであっても、他の多官能アクリルモノマーを混合したものであっても、多官能アクリルモノマー全体の水酸基価として、10〜80mgKOH/gが好ましく、15〜40mgKOH/gがより好ましい。水酸基価が80を上回る場合は水素結合の影響が大きくなり結果として着色組成物の流動性の悪化、ひいては画素平坦性の悪化に繋がるため好ましくなく、水酸基価が10を下回る場合は多官能アクリルモノマーの製造時や保存時にゲル物の発生などのおそれがあるため好ましくない。水酸基価が上記の範囲となることでカラーフィルター基板としての信頼性に優れ、かつインクジェット法で製造した際にも画素平坦性に優れた着色組成物を得ることができる。
【0066】
多官能アクリルモノマーは、インク全固形分に対して10〜60質量%含有することが好ましく、20〜50質量%含有することがより好ましい。上記範囲より少ないとカラーフィルター基板としての信頼性を確保することが難しくなるため好ましくなく、逆に上記範囲より多いと相対的に顔料濃度が低下するため所望の色を着色することが困難となる傾向にあり好ましくない。
【0067】
(D)有機溶剤としては特に限定されるものではないが、(D−1)1分子中にエステル構造を2つ以上有する溶剤、または(D−2)ラクトン構造を有する溶剤を含むことが好ましい。
【0068】
(D−1)1分子中にエステル構造を2つ以上有する溶剤としては、シュウ酸ジメチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸メチルエチル、マロン酸ジプロピル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸メチルエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの脂肪族ジカルボン酸ジアルキルエステル、フタル酸ジメチルなどの芳香族ジカルボン酸ジアルキルエステル、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテートなどのジアルコールジアセチル化物、トリアセチンなどのトリアセチル化物などを挙げることができる。
【0069】
(D−2)ラクトン構造を有する溶剤としては、β―プロピオラクトン、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、γ―カプロラクトン、ε―カプロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ウンデカラクトンなどが挙げられる。これらの溶剤を含むことで、高分子分散剤や多官能アクリルモノマーに対する良好な溶解性とインクジェット吐出安定性を両立し易く好ましい。さらには、有機溶剤としては(D−1)1分子中にエステル構造を2つ以上有する溶剤および(D−2)ラクトン構造を有する溶剤の両方を含有することがより好ましい。あくまで推測ではあるが、化学構造として直鎖と環状の違いはあるがともにエステル構造(−COO−)を持つため、高分子分散剤や多官能アクリルモノマーの溶解性のみならず、溶剤同士の相性も非常に良いために吐出安定性が更に良好になるものと思われる。特に限定されるわけではないが(D−1)1分子中にエステル構造を2つ以上有する溶剤と、(D−2)ラクトン構造を有する溶剤の混合比率としては、99/1〜10/90が好ましく、99/3〜70/30がより好ましい。
【0070】
有機溶剤としては他の溶剤を含むこともでき、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、などの(ポリ)アルキレングリコールエーテル系溶剤、あるいは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、アセト酢酸エチル、メチル―3―メトキシプロピオネート、3―メチル―3―メトキシブチルアセテート、安息香酸エチル、酢酸ベンジル、フェニルセロソルブアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、シクロヘキサノールアセテートなどのエステル類、あるいは、エタノール、イソプロパノール、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、ダイアセトンアルコール、3―メチル―3―メトキシブタノール、などのアルコール類、あるいは、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトニルアセトンなどのケトン類、あるいは、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類の他、イソホロン、N−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどを用いることができ、これらの単独、あるいは2種類以上の混合溶剤も好ましく用いることができる。更には多官能アクリルモノマーや高分子分散剤の持ち込み溶剤や、これら以外の溶剤を混合しても良い。
【0071】
これらの溶剤の中でも、膜厚の均一性、及び吐出ノズル部先端に顔料凝集物が生じるのを防止する観点から、沸点が比較的高い溶剤を使用するのが好ましい。一方、沸点が高すぎると乾燥性が悪化するので、具体的には、沸点は150℃〜260℃であることが好ましく、180〜240℃であることがより好ましい。
【0072】
本発明の着色組成物は、その他添加剤を含有していてもよい。例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物、ベンゾグアナミン化合物、シロキサン化合物、ベンゾオキサジン化合物、フェノール化合物などの熱硬化性化合物、密着改良剤、界面活性剤、などが挙げられる。
【0073】
エポキシ化合物としては、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、及び、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル等があげられる。
【0074】
メラミン化合物としては、例えばメチル化メラミン、ブチル化メラミン、それらの混合エーテル化メラミン、メラミンアルキッド樹脂等が使用可能である。
【0075】
密着改良剤は、塗膜の基板への密着性を向上させる目的で、好ましく添加することができる。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。
【0076】
界面活性剤は、着色組成物の塗布性、および着色層の表面の均一性を良好にする目的で、あるいは、顔料の分散性を良好にする目的で添加することができる。かかる界面活性剤の添加量は、顔料に対して、好ましくは0.001〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%であるのがよい。添加量がこの範囲より少ないと、塗布性、着色膜表面の均一性の改良、あるいは顔料分散性の改良の効果が小さく、多すぎると逆に塗布性が不良となったり、顔料の凝集が起こる場合があるため好ましくない。具体的には、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなどの陰イオン界面活性剤、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの陽イオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンモノステアレートなどの非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤などがあげられる。前記界面活性剤は、1種または2種以上混合して用いることもできる。
本発明の着色組成物において、顔料は前記着色組成物の全固形分中に、10〜70質量%、好ましくは15〜50質量%の範囲で用いる。顔料の量が10%より少ないと、色純度が低く好ましくなく、70質量%より多いと、耐薬品性が著しく不良になるので好ましくない。
【0077】
次に本発明の着色組成物を用いたカラーフィルター基板の製造方法の例を示す。
(カラーフィルター基板の製造方法)
本発明のカラーフィルター基板の製造方法は、基板上の遮光性の隔壁で区画された凹部に、少なくとも、(A)着色剤、(B)高分子分散剤、(C)下記構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーおよび(D)有機溶媒を含有し、かつ(C)多官能アクリルモノマーの水酸基価が10〜80mgKOH/gであることを特徴とするカラーフィルター基板用着色組成物をインクジェット法により液滴付与して着色領域を形成し、形成された着色領域を過熱して熱硬化させる工程を少なくとも設けて構成したものである。
【0078】
【化10】

【0079】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)
前記着色画素の色は限定しないが、遮光性隔壁としての機能を有するブラックマトリクス(BM)の他、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、黄色(Y)の4色、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、黄色(Y)の6色など任意の構成を採ることができ、特に4色以上の構成の場合は、従来のフォトリソ法と比してコストメリットがより明確に向上するために好ましい。本発明の着色組成物を用いた構成とするので、作製されたカラーフィルター基板は、着色画素の平坦性に優れると共に、信頼性に優れ、吐出安定性に優れているため歩留まり良くカラーフィルター基板を製造することができる。
【0080】
本発明の着色組成物の物理的性状としては、できるだけ低粘度、かつ低粘弾性が好適である。具体的には、固形分濃度としては、15〜50質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。固形分濃度が15質量%より小さい場合は、インク液滴を多量に吐出しなければならないため混色の懸念があり、50質量%よりも高い場合にはノズルの詰まりが発生する可能性が高くなるため好ましくない。着色組成物の粘度としては、3〜20cPが好ましく、5〜10cPがより好ましい。粘度をこの範囲にすることで、安定したインクジェット吐出が可能になるとともに、着色組成物が画素内に均一に濡れ広がることができる。3cPより低い場合は吐出安定性が悪化する傾向にあり、20cPを超えると画素内に完全には濡れ広がらず、白抜けが発生しカラーフィルター基板の欠陥となる場合がある。着色組成物の表面張力としては、20〜40mN/mが好ましく、25〜35mN/mがより好ましい。表面張力が上記の範囲を超えると、インクジェット吐出において着色組成物の飛び散りなどが起こりやすく安定した吐出が困難となる。
【0081】
インクジェット法には、帯電したインクを連続的に噴射し電場により制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱したときの発砲を利用して間欠的に噴射する方法など、公知の方法から選択することができる。
【0082】
上記のいずれかの方法で着色画素を形成後、乾燥(プリベーク)を施した後、加熱により形成された着色画素を熱硬化して着色膜を形成する。したがって、熱硬化は着色画素が形成された基板に対し、ホットプレート、コンベクションオーブン(熱風乾燥機)、などにより行うことができる。
【0083】
前記着色画素を乾燥するときの温度、時間は、着色組成物の組成や形成された着色画素の厚みに依存するが、60〜150℃の温度範囲で 10分以上乾燥することが好ましい。更に90〜120℃の温度範囲で乾燥することがより好ましい。
【0084】
前記着色画素を熱硬化するときの温度、時間は、着色組成物の組成や形成された着色画素の厚みに依存するが、180〜270℃の温度範囲で30分間以上加熱することが好ましい。更に230〜270℃の温度範囲で加熱することがより好ましい。
【0085】
熱硬化後の着色画素の膜厚は、0.5〜3.0μmが好ましく、1.0〜2.5μmがより好ましい。また、前記カラーフィルター基板の製造に用いられる基板としては、通常、ソーダガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどの透明基板や、シリコン、ガリウム−ヒ素などの半導体基板などが用いられるが、特にこれらに限定されない。
【実施例】
【0086】
《多官能アクリルモノマーの製造》
合成例1
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、ε−カプロラクトンを244重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン344重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃
に加熱し12時間反応させ、変性度1のカプロラクトン変性多価アルコール(トリペンタエリスリトール誘導体が70質量%)を得た。
【0087】
次に、上記のカプロラクトン変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を22.4重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを22.5重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、下記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。
【0088】
【化11】

【0089】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、を表す。nは0〜2の整数を表す。)。
【0090】
《固形分濃度の調整》
アルミカップに上記の多官能アクリルモノマー溶液を1g秤取し、180℃のオーブンで60分間加熱して液分を蒸発させ、アルミカップに残った固形分を秤量し、固形分濃度を求めた。固形分濃度は50重量%を超えていたため、n−ブチルベンゼンにて希釈して固形分濃度を調整し、固形分濃度50重量%の多官能アクリルモノマー溶液(MF−1)を得た。
【0091】
《水酸基価の測定》
ビーカーに多官能アクリルモノマー溶液(MF−1)を6g秤取し、無水酢酸溶液を10ml加えて100℃で1時間加熱して水酸基をアセチル化した後、ピリジン/水溶液(体積比3/1)を10ml加えて更に1時間撹拌した、これに、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定を行うことで、多官能アクリルモノマーの固形分に対する水酸基価を求めた。多官能アクリルモノマー(MF−1)の水酸基価は18mgKOH/gであった。
【0092】
合成例2
合成例1と同様にして得られた変性度1のカプロラクトン変性多価アルコール(トリペンタエリスリトール誘導体が70質量%)のn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を21.3重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを21.4重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が39mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−2)を得た。
【0093】
合成例3
合成例1と同様にして得られた変性度1のカプロラクトン変性多価アルコール(トリペンタエリスリトール誘導体が70質量%)のn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を20.2重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを20.3重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が72mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−3)を得た。
【0094】
合成例4
合成例1の出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、4/90/6)とした以外は合成例1と同様にして、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が38mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−4)を得た。
【0095】
合成例5
合成例1の出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、2/95/3)とした以外は合成例1と同様にして、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が80mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−5)を得た。
【0096】
合成例6
合成例1の出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、15/50/35)とした以外は合成例1と同様にして、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が24mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−6)を得た。
【0097】
合成例7
合成例1の出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、20/40/40)とした以外は合成例1と同様にして、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が27mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−7)を得た。
【0098】
合成例8
合成例1の出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は30/30/40)とした以外は合成例1と同様にして、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が48mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−8)を得た。
【0099】
合成例9
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、ε−カプロラクトンを488重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン588重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃
に加熱し12時間反応させ、変性度2のカプロラクトン変性多価アルコールを得た。
【0100】
次に、上記のカプロラクトン変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を13.1重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを13.2重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が15mgKOH/gで変性度2のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−9)を得た。
【0101】
合成例10
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、ε−カプロラクトンを732重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン832重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃
に加熱し12時間反応させ、変性度3のカプロラクトン変性多価アルコールを得た。
【0102】
次に、上記のカプロラクトン変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を9.3重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを9.4重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が12mgKOH/gで変性度3のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−10)を得た。
【0103】
合成例11
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、ε−カプロラクトンを1462重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン1562重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃に加熱し12時間反応させ、変性度6のカプロラクトン変性多価アルコールを得た。
【0104】
次に、上記のカプロラクトン変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を4.9重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを5.0重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が10mgKOH/gで変性度6のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−11)を得た。
【0105】
合成例12
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、ε−カプロラクトンを122重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン222重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃に加熱し12時間反応させ、変性度0.5のカプロラクトン変性多価アルコールを得た。
【0106】
次に、上記のカプロラクトン変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を34.7重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを34.8重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式(3)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が34mgKOH/gで変性度0.5のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−12)を得た。
【0107】
合成例13
オートクレーブ中に、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン100重量部を仕込み、エチレンオキサイドガスを注入しながら窒素雰囲気下で170℃に加熱し12時間反応させ、変性度1のエチレンオキサイド変性多価アルコールを得た。
【0108】
次に、上記のエチレンオキサイド変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を39.6重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを39.7重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、下記構造式(4)で表されるエチレンオキサイド変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が22mgKOH/gで変性度1のエチレンオキサイド変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−13)を得た。
【0109】
【化12】

【0110】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CHを表す。nは0〜2の整数を表す。)。
【0111】
合成例14
オートクレーブ中に、出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部、プロピレンオキサイドを124重量部、溶媒としてn−ブチルベンゼン224重量部を仕込み、窒素雰囲気下で170℃に加熱し12時間反応させ、変性度1のプロピレンオキサイド変性多価アルコールを得た。
【0112】
次に、上記のプロピレンオキサイド変性多価アルコールのn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を34.4重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを34.5重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、下記構造式(5)で表されるプロピレンオキサイド変性された多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が16mgKOH/gで変性度1のプロピレンオキサイド変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−14)を得た。
【0113】
【化13】

【0114】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、のいずれか、但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、を表す。nは0〜2の整数を表す。)。
【0115】
合成例15
出発原料の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトールの混合物(混合比は、10/70/20)を100重量部に、アクリル酸を76.9重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを177重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、下記構造式(6)で表される多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が78mgKOH/gの多官能アクリルモノマー溶液(MF−15)を得た。
【0116】
【化14】

【0117】
(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、のいずれか、但しAcはアクリロイル基−COCH=CH、を表す。nは0〜2の整数を表す。)。
【0118】
合成例16
合成例1と同様にして得られた変性度1のカプロラクトン変性多価アルコール(トリペンタエリスリトール誘導体が70質量%)のn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を22.4重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテルを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを22.5重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。重合禁止剤が合成例1と異なるものを使用したためか、反応系内には、一部にアクリル酸重合体と思われるゲル化物が発生していた。10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、多官能アクリルモノマー溶液を製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価を測定したところ180mgKOH/gと異常に高い値が得られた。ゲル化に伴う副反応のためエステル化がうまく進行していないためであると思われるが、多官能アクリルモノマー(MF−16)として評価を行った。
【0119】
合成例17
合成例1と同様にして得られた変性度1のカプロラクトン変性多価アルコール(トリペンタエリスリトール誘導体が70質量%)のn−ブチルベンゼン溶液100重量部に対し、アクリル酸を17.9重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸1重量部、重合禁止剤としてtert−ブチルカテコールを0.1重量部、および溶剤としてn−ブチルベンゼンを21.4重量部添加し、乾燥空気雰囲気下、発生する水分を水分離器で除去しながら120℃で8時間反応を行った。反応終了後、10%水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、トルエンで数回抽出し、有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム溶液、飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムを添加して乾燥した後、減圧下で濃縮することで、上記構造式で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーを製造した。n−ブチルベンゼンで希釈して固形分濃度を50重量%に調整し、水酸基価が132mgKOH/gで変性度1のカプロラクトン変性多官能アクリルモノマー溶液(MF−17)を得た。
【0120】
実施例1
《着色組成物の調製》
顔料としてピグメントレッド177、ピグメントレッド254、及びピグメントイエロー150(42/30/28)の混合物を12重量部、ポリエステル系高分子分散剤として“ソルスパース”32500(ルーブリゾール(株)製)4.8重量部、エステル構造を2つ有する溶剤として1,3−ブチレングリコールジアセテート(以下BGDAとする)を83.2重量部混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
【0121】
次にこの顔料分散液100重量部に対し、合成例1で製造した固形分濃度50重量%の多官能アクリルモノマー溶液MF−1を40重量部、界面活性剤としてBYK361(ビックケミー(株)製)を0.2重量部、および溶剤としてBGDA39.8重量部とラクトン構造を有する溶剤としてγ−ブチロラクトン(以下GBLとする)20重量部を混合して、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0122】
実施例2〜15
実施例1において多官能アクリルモノマーとして使用した「MF−1」の代わりに「MF−2」〜「MF−15」を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0123】
実施例16
顔料としてピグメントグリーン58、ピグメントイエロー150(60/40)の混合物を12重量部、ポリエステル系高分子分散剤として“ソルスパース”32500(ルーブリゾール(株)製)4.8重量部、溶剤としてBGDAを83.2重量部混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
【0124】
次にこの顔料分散液100重量部に対し、合成例1で製造した固形分濃度50重量%の多官能アクリルモノマーMF−1を40重量部、界面活性剤としてBYK361(ビックケミー(株)製)を0.2重量部、および溶剤としてBGDA39.8重量部とGBL20重量部を混合して、緑色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0125】
実施例17
顔料として顔料としてピグメントブルー15:6、ピグメントバイオレット23(80/20)の混合物を12重量部、ポリエステル系高分子分散剤として“ソルスパース”32500(ルーブリゾール(株)製)4.8重量部、溶剤としてBGDAを83.2重量部混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
【0126】
次にこの顔料分散液100重量部に対し、合成例1で製造した固形分濃度50重量%の多官能アクリルモノマーMF−1を40重量部、界面活性剤としてBYK361(ビックケミー(株)製)を0.2重量部、および溶剤としてBGDA39.8重量部とGBL20重量部を混合して、青色着色組成物を得た。
【0127】
評価結果は、表1にまとめた。
【0128】
実施例18
実施例1において高分子分散剤として“ソルスパース”32500の代わりにポリエステル構造を持たないアクリル系共重合体のBYK2000(ビックケミー(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0129】
実施例19
実施例1において溶剤としてGBLの代わりにカプロラクトン構造を持つε−カプロラクトン(以下εCLとする)を混合した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0130】
実施例20
実施例1において溶剤としてGBLを添加せず、BGDA59.8重量部を混合した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0131】
実施例21
顔料としてピグメントレッド177、ピグメントレッド254、及びピグメントイエロー150(42/30/28)の混合物を12重量部、ポリエステル系高分子分散剤として“ソルスパース”32500(ルーブリゾール(株)製)4.8重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PMAとする)を83.2重量部混合した後、ジルコニアビーズが充填されたミル型分散機を用いて分散し、顔料分散液を得た。
【0132】
次にこの顔料分散液100重量部に対し、合成例1で製造した固形分濃度50重量%の多官能アクリルモノマーMF−1を40重量部、界面活性剤としてBYK361(ビックケミー(株)製)を0.2重量部、および溶剤としてPMA69.8重量部を混合して、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0133】
比較例1
実施例1において多官能アクリルモノマーとして使用した「MF−1」の代わりに「MF−16」を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。一部のノズルでインクの詰りや飛び散りが見られたが、そのまま測定を行った。評価結果は、表1にまとめた。
【0134】
比較例2
実施例1において多官能アクリルモノマーとして使用した「MF−1」の代わりに「MF−17」を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0135】
比較例3
実施例1において多官能アクリルモノマーとして使用した「MF−1」の代わりにトリペンタエリスリトールポリアクリレートを主成分とする“T−PE−A”(広栄化学工業製、水酸基価120mgKOH/g)のBGDA溶液(固形分濃度50重量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0136】
比較例4
実施例1において多官能アクリルモノマーとして使用した「MF−1」の代わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートの混合物である“KAYARAD”DPHA(日本化薬製、水酸基価51mgKOH/g)のBGDA溶液(固形分濃度50重量%)を使用した以外は実施例1と同様にして、赤色着色組成物を得た。評価結果は、表1にまとめた。
【0137】
(評価)
実施例および比較例で得られた着色組成物について、下記評価を行った。評価結果は表1にまとめた。
【0138】
《評価方法》
画素領域の平坦性
A.遮光層材料(BM−1)の作製
カーボン粉(MA−8、三菱マテリアル製)30重量部、アクリル共重合体溶液(“サイクロマーP”ACA−250、ダイセル化学工業)20重量部、シクロヘキサノン37重量部を混合し、ホモジナイザーにて1時間分散をおこなった後、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10重量部、光重合開始剤“イルガキュア”369(チバ・スペシャリティケミカルズ)3重量部を混合し、遮光層材料(BM−1)を得た。
【0139】
B.撥液層材料(PP−1)の作製
o−ナフトキノンジアジド/フェノールノボラック系ポジ型感光剤(マイクロポジットRC100、シプレー社)60重量部、“シンナー”C(シプレー社)20重量部、フッ素系界面活性剤(EF−123A、トーケムプロダクツ)5重量部、(F179、大日本インキ)5重量部を混合し、撥液層材料(PP−1)を得た。
【0140】
C.ブラックマトリクス(BM)の作製
コーニングジャパン株式会社製0.7mm厚ガラス基板“1737”上に、上記Aで作製した遮光層材料(BM−1)を熱処理後の膜厚が1.5μmとなるようスピンナーで塗布して塗膜を形成した。該塗膜を、120℃のホットプレートで120秒プリベークを行った後、キャノン株式会社製紫外線露光機“PLA−501F”を用い、各色画素の周辺部に格子状にBMが残るフォトマスクパターンを介して露光した。水酸化ナトリウムの2.0%の水溶液からなる現像液に浸漬してパターニングし、230℃のオーブンで30分ポストベークを行った。
【0141】
次に、遮光層パターンの上に撥液層材料(PP−1)を熱処理後の膜厚が0.5μmとなるようによりスピンナーにて塗布を行った。塗布後、90℃のホットプレートで120秒プリベークを行った。次に、遮光層パターンをマスクの代わりとしガラス基板側よりいわゆる裏露光を100mJ/cm(365nmの紫外線強度)で露光した。露光後、水酸化ナトリウムを0.5質量%、炭酸ナトリウムを0.4質量%含む溶液からなる現像液を用いてシャワー現像を60秒、続いて純水シャワーにより20秒リンスを行い、遮光層の上に撥液層を形成するようにパターニングを行った。次に、200℃のオーブンで空気中40分加熱硬化を行った。こうして、厚さ1.5μmの遮光層の上に厚さ0.5μmの撥液層が積層したブラックマトリクスを作製した。
【0142】
D.着色組成物の塗布
上記Cで作製したBM付き基板の画素部にインクジェット噴射装置を用いて対応する位置に、実施例および比較例で示した着色組成物を噴射し塗布した。塗布後、90℃で10分加熱し乾燥をさせた後、230℃のオーブンで30分加熱硬化を行った。
【0143】
E.カラーフィルター基板の評価
(画素平坦性)
上記Dで塗布した基板の画素領域における膜厚を触針式膜厚計(“サーフコム”、東京精密製)にて測定し、1画素内での膜厚の最大値と最小値の差を算出した。
【0144】
評価基準
◎:画素領域の膜厚差がほとんどなかった。(0.3μm未満)
○:画素領域の膜厚差が若干あった。(0.3μm以上0.5μm未満)
△:画素領域の膜厚差が大きかった。(0.5μm以上0.8μm未満)
×:画素領域の膜厚差が著しく大きかった。(0.8μm以上)。
【0145】
(耐薬品性)
熱硬化性着色組成物を、無アルカリガラス(日本電気硝子(株)製、OA10:50mm×70mm、厚さ0.7mm)基板表面上に、スピンコーター(ミカサ(株)製、1H−D2型)を用いて塗布した後、90℃のイナートオーブン(ダバイエスペック(株)製、PERFECTOVEN PV−210)内で10分間加熱乾燥を行い、膜厚1.5μmの塗膜を形成した。その後、230℃のイナートオーブン(ダバイエスペック(株)製、HIGHTEMPONEN PV−110)内で30分間加熱(ポストベイク)を行い、ガラス基板上に熱硬化性着色組成物の膜を作製した。
【0146】
次に前記で作製した基板の色度を、顕微分光装置(大塚電子(株)製、“MCPD−2000”)で測定した。
【0147】
前記で作成した基板をN−メチルピロリドン中に浸漬し、30分間放置した後、基板を取り出し、さらに230℃のイナートオーブン(ダバイエスペック(株)製、HIGHTEMPONEN PV−110)内で30分間加熱し、前記基板を顕微分光装置で測定した。浸漬前の色度と比較し、L系での色差ΔEを算出した。
【0148】
評価基準
◎:浸漬前との色度変化がほとんどなかった(ΔE<3)
○:浸漬前との色度変化が若干あった(3≦ΔE<5)
△:浸漬前との色度変化が大きかった(5≦ΔE<7)
×:浸漬前との色度変化が著しく大きかった(ΔE>7)。
【0149】
(吐出安定性)
インクジェット噴射装置を用いて、連続5分間の吐出と1分間のインターバルを30回繰り返した後、吐出状態をカメラにて観察した。
【0150】
評価基準
◎:全く問題なく吐出可能であった。
○:ごく一部のノズル(100ノズル中3個以下)からの吐出について不安定な様子が見られたが、問題となるレベルでは無かった。
△:一部のノズル(100ノズル中4個〜20個)からの吐出について不安定な様子が見られ、やや問題となるレベルであった。
×:かなりのノズル(100ノズル中21個以上)からの吐出について不安定な様子や詰りなどが発生し、吐出安定性に劣っていた。
【0151】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット法によりカラーフィルター基板を製造するためのカラーフィルター基板用着色組成物であって、該カラーフィルター基板用着色組成物が少なくとも、(A)着色剤、(B)高分子分散剤、(C)下記構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーおよび(D)有機溶媒を含有し、かつ(C)多官能アクリルモノマーの水酸基価が10〜80mgKOH/gであることを特徴とするカラーフィルター基板用着色組成物。
【化1】

(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれかを表す。但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。nは1〜3の整数を表す。)
【請求項2】
(C)構造式(1)で表される多官能アクリルモノマーのうちn=1の多官能アクリルモノマーおよびn=2の多官能アクリルモノマーを含有し、さらに(C´)下記構造式(2)で表される多官能アクリルモノマーを含有してなり、かつ(C)および(C´)の多官能モノマーの全量に対してn=1で表される多官能アクリルモノマーを40〜98質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター基板用着色組成物。
【化2】

(Xはそれぞれ独立して−H、−Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(CO)H、−(CO)Ac、−(COC10O)H、−(COC10O)Ac、のいずれかを表す。但しaは1〜5の整数を表し、Acはアクリロイル基−COCH=CH、またはメタクリロイル基−COC(CH)=CHのいずれかを表す。)
【請求項3】
前記(C)構造式(1)の多官能アクリルモノマーのうちXの少なくとも一部は−(COC10O)Hまたは−(COC10O)Ac(但しaは1〜5の整数を表し、Acは−COCH=CH、または−COC(CH)=CHのいずれかを表す)で表されるカプロラクトン変性された多官能アクリルモノマーであり、かつ変性度が0.5〜2であることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルター基板用着色組成物。
【請求項4】
前記(B)高分子分散剤が、ポリエステル系高分子分散剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター基板用着色組成物。
【請求項5】
前記(D)有機溶剤として、(D−1)1分子中にエステル構造を2つ以上有する溶剤、(D−2)ラクトン構造を有する溶剤、を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター基板用着色組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラーフィルター基板用着色組成物をインクジェット法によりパターン形成して得られたカラーフィルター基板。

【公開番号】特開2013−44857(P2013−44857A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181321(P2011−181321)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】