説明

カラーフィルター用インクジェットインク、カラーフィルター及びその製造方法、並びに液晶表示装置

【課題】インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、顔料分散性が高く、光学性能を向上可能なカラーフィルター用インクジェットインクを提供する。
【解決手段】顔料と、下記式(A)を含む重合体Aブロックと(B)を含む重合体Bブロックとが連結したブロック共重合体で、Aブロックの一部が(C)で表される4級アンモニウム塩化され、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下である顔料分散剤と、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、硬化剤と、沸点が180℃〜260℃で常温での蒸気圧が0.5mmHg以下のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを溶剤全量に対して80質量%以上含有する溶剤とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インクジェットインク、カラーフィルター及びその製造方法、並びに液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、液晶ディスプレイの需要が増加している。また、最近においては家庭用の液晶テレビの普及率も高まっており、益々液晶ディスプレイの市場は拡大する状況にある。さらに近年普及している液晶ディスプレイは大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。このような状況において、液晶ディスプレイを構成する部材についてはより低コストで高品質なものを高生産性で製造することが望まれており、特に液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルターにおいては、従来高コストであったことからこのような要望が高まっている。
【0003】
このようなカラーフィルターにおいては、通常赤(R)、緑(G)、および青(B)の3原色の着色パターンを備え、R、G、およびBのそれぞれの画素に対応する電極をON、OFFさせることで液晶がシャッタとして作動し、R、G、およびBのそれぞれの画素を光が通過してカラー表示が行われるものである。
【0004】
従来行われているカラーフィルターの製造方法としては、例えば染色法が挙げられる。この染色法は、まずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィー工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことによりR、G、およびBのカラーフィルター層を形成する。
【0005】
また、他の方法としては顔料分散法がある。この方法は、まず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらにこの工程を3回繰り返すことにより、R、G、およびBのカラーフィルター層を形成する。
【0006】
さらに他の方法としては、電着法や、熱硬化樹脂に顔料を分散させてR、G、およびBの3回印刷を行った後、樹脂を熱硬化させる方法等を挙げることができる。
【0007】
しかしながら、いずれの方法も、R、G、及びBの3色を着色するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になるという問題や、同様の工程を繰り返すため歩留まりが低下するという問題がある。
【0008】
これらの問題点を解決したカラーフィルターの製造方法として、特許文献1には、熱硬化性樹脂を含有する着色インクをインクジェット方式で基板上に吹き付け、加熱することにより着色層(画素部)を形成する方法が示されている。
【0009】
透明基板上のブラックマトリクス層に囲まれた領域にインクジェット方式により画素が形成されると、そのインクとブラックマトリクス層表面との親和性やブラックマトリクス層の高さ、吐出するインク量などの関係から、ブラックマトリクス層に囲まれた開口部における画素の形状は、当該画素の外縁部又はその近傍において膜厚の薄い部分を有し、且つ当該膜厚の薄い部分よりも画素の中心側に膜厚の最も厚い部分を有するような凸型形状となったり、逆に、当該画素の外縁部又はその近傍において膜厚の厚い部分を有し、且つ当該膜厚の厚い部分よりも画素の中心側に膜厚の最も薄い部分を有するような凹型形状となったり、さらに、その表面が凹凸形状になるなど、不均一な画素になりやすい。
【0010】
画素を平坦化する試みとして、特許文献2には、インクジェットインクの隔壁に対する接触角や粘度が開示されている。また、特許文献3には、インクジェット方式を用いて着色組成物を吐出後、着色層形成時の加熱温度や加熱時間を特定したカラーフィルターの製造方法が開示されている。
【0011】
また、インクジェット方式用のインクとして、特許文献4には、顔料分散剤として側鎖に4級アンモニウム塩基を有するAブロックと4級アンモニウム塩基を有さないBブロックからなるA−Bブロック共重合体及び/又はB−A−Bブロック共重合体を含むカラーフィルター用熱硬化性樹脂組成物が開示されているが、画素形状については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−21910号公報
【特許文献2】特開2008−33125号公報
【特許文献3】特開2008−76828号公報
【特許文献4】特開2004−339330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
インクジェット方式により形成された着色層は、不均一な形状になりやすいため、当該着色層と同一の平均膜厚、同一の材料の構成比を有する平坦な着色層、例えばスピンコート法により形成された着色層に比べて輝度、及びコントラストが低くなる傾向にあるという問題がある。従って、インクジェット方式により形成された着色層の膜厚において、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)の差をT−B差とした場合に、当該T−B差を小さくすることが求められている。従来、インクジェットインク中の熱硬化性樹脂を調製したり、添加剤を添加することにより平坦化が試みられてきたが、熱硬化性樹脂のみで平坦化を調製するには限界があり、また、添加剤は添加可能な量が限られるために平坦化の効果を発揮させるには不十分であった。
また、近年液晶表示装置の高コントラスト化の要求が高まっており、このような要求を達成するため、顔料の微細化が求められている。しかしながら、上記特許文献に開示されている技術では、微細化された顔料に対する顔料分散性が不十分となってしまい、着色層のコントラストを向上させる効果が不十分となっていた。
【0014】
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、かつ微細化された顔料に対する顔料分散性が高く、光学性能を向上可能なカラーフィルター用インクジェットインク、及び当該インクジェットインクを用いて形成されたカラーフィルター及びその製造方法、並びにこのカラーフィルターを有する液晶表示装置を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、顔料分散剤に着目し、後述する特定の顔料分散剤を用いることによって、顔料分散安定性に優れ、かつ、前記T−B差が小さい平坦な着色層を形成可能で、光学性能を向上可能なカラーフィルター用インクジェットインクが得られ、その目的に適合し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0016】
すなわち、本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクは、
少なくとも、顔料、
少なくとも下記式(A)で表されるくり返し単位を含むAブロックと下記式(B)で表されるくり返し単位を含むBブロックとが連結したブロック共重合体であり、Aブロックの一部が下記式(C)で表される構造に4級アンモニウム塩化され、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下であるブロック共重合体からなる顔料分散剤、
少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、
硬化剤、及び、
主溶剤として沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを溶剤全量に対して80質量%以上の割合で含有する溶剤を含有することを特徴とする。
【0017】
【化1】

【0018】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基を表す。)
【0021】
【化3】

【0022】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。R6は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0023】
顔料分散安定性の点から、前記Bブロックを構成する前記式(B)のR5はブチル基またはエトキシエチル基であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るカラーフィルターの製造方法は、(1)基板上の所定領域に、前記本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、(2)当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明のカラーフィルターは、基板上に少なくとも着色層を備えてなり、当該着色層が前記本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクを硬化させて形成したものであることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る表示パネルは、前記本発明に係るカラーフィルターを備える表示パネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、分散安定性が高く、硬化後の耐熱性に優れ、かつ、画素形状が平坦でコントラストが高い、カラーフィルター用インクジェットインクを提供する。
【0028】
また、本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ、画素形状が平坦でコントラストの高いカラーフィルターと、その製造方法を提供する。
【0029】
更に本発明によれば、耐熱性に優れ、かつ、画素形状が平坦でコントラストの高いカラーフィルターを用いた表示パネルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のカラーフィルターの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0032】
<カラーフィルター用インクジェットインク>
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクは、少なくとも、(1)顔料、
(2)少なくとも下記式(A)で表されるくり返し単位を含むAブロックと下記式(B)で表されるくり返し単位を含むBブロックとが連結したブロック共重合体であり、Aブロックの一部が下記式(C)で表される構造に4級アンモニウム塩化され、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下であるブロック共重合体からなる顔料分散剤、
(3)少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、
(4)硬化剤、及び、
(5)主溶剤として沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを溶剤全量に対して80質量%以上の割合で含有する溶剤を含有することを特徴とする。
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0035】
【化5】

【0036】
(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基を表す。)
【0037】
【化6】

【0038】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。R6は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0039】
以下、本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクの構成成分について説明する。
【0040】
(顔料)
本発明に用いられる顔料は、カラーフィルター着色層を形成した際に所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、種々の有機又は無機顔料を、単独で又は2種以上混合して用いることができる。中でも有機顔料は、発色性が高く、耐熱性も高いので、好ましく用いられる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。
【0041】
C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド177等のレッド系ピグメント;ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23等のバイオレット系ピグメント;及び、ピグメントグリーン7、ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58等のグリーン系ピグメント。
【0042】
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0043】
カラーフィルターの基板上に、後述する本発明のインクジェットインクを用いて遮光層のパターンを形成する場合には、インク中に遮光性の高い黒色顔料を配合する。遮光性の高い黒色顔料としては、例えば、カーボンブラックや四三酸化鉄などの無機顔料、或いは、シアニンブラックなどの有機顔料を使用できる。
【0044】
本発明に用いられる顔料の平均粒径としては、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜100nmの範囲内であることが好ましく、10〜50nmの範囲内であることがより好ましい。当該顔料の平均粒径が上記範囲であることにより、本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて製造された液晶表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積(重量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径を求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)または走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0045】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクにおいて、顔料の含有量は、カラーフィルターの着色層とした場合に、所望の発色が可能であればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の重量(P)と、当該顔料以外の固形分の重量(V)との比(P/V比)は、赤色着色層を形成する場合0.4〜1.1、好ましくは0.5〜1.0、緑色着色層を形成する場合0.5〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、青色着色層を形成する場合0.2〜0.6、好ましくは0.3〜0.5である。上記範囲は、インクの吐出性能、インクの決壊防止、得られる膜物性のバランスの点から好ましい。P/V比が低すぎると、充分な着色力を得るためには画素形成領域に付着させるインクの液滴量を多くしなければならないため、画素形成領域からインクが決壊するなどの問題が起こる場合がある。一方、P/V比が高すぎると、吐出ヘッドで目詰まりや飛行曲がりが発生する等の吐出性能が低下したり、膜の表面が荒れるなどの問題が起こる場合がある。なお、固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の多官能性モノマー等も含まれる。
【0046】
(顔料分散剤)
着色層の色特性を優れたものにするためには、着色層を形成するインクに微細化した顔料を多量に分散させる必要がある。そのため、顔料分散剤のインク中含有量も、インク塗膜の物性に影響を及ぼすほど高くなる。
本発明においては、カラーフィルター用インクジェットインクの顔料分散剤として特定のブロック共重合体を用いることにより、顔料分散性、顔料分散安定性に優れたインクが得られ、当該インクを用いて耐熱性、平坦性に優れた着色層を形成できる。
【0047】
本発明に用いられる顔料分散剤は、少なくとも下記式(A)で表わされるくり返し単位を含むAブロックと下記式(B)で表わされるくり返し単位を含むBブロックとが連結したブロック共重合体であり、Aブロックの一部が下記式(C)で表わされる構造に4級アンモニウム塩化され、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下であるブロック共重合体からなる。
【0048】
【化7】

【0049】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0050】
【化8】

【0051】
(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基を表す。)
【0052】
【化9】

【0053】
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。R6は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【0054】
上記顔料分散剤は、ポリ(メタ)アクリレート系の熱分解しにくく、且つ、熱膨張収縮しにくい主鎖骨格を有する重合体からなる。このため、該顔料分散剤を用いたインクジェットインクは、着色硬化膜が製造段階での加熱工程又は製造後の高温環境に置かれても塗膜不良を起こし難いと推測される。なお本発明において(メタ)アクリレートとはアクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0055】
以下、顔料分散剤をAブロック、Bブロック、ブロック共重合体の順に説明する。
1.Aブロック
本発明の顔料分散剤を構成するAブロックは顔料親和性部位であり、上記式(A)で表わされるくり返し単位を含み、その一部が上記式(C)で表わされる構造に4級アンモニウム塩化されている。
本発明において、上記式(A)で表わされるくり返し単位を含むAブロックとは、Aブロック内に上記式(A)又は(C)で表わされるくり返し単位が50モル%以上の割合で、好ましくは80モル%以上の割合で、最も好ましくは式(A)又は(C)で表わされるくり返し単位のみが含まれていることを意味する。
【0056】
上記式(A)及び(C)のR1、R2が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、上記式(A)のR1、R2の環状構造としては、例えば下記式(D)のものが、上記式(C)のR1、R2の環状構造としては、下記式(E)が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
これらの環状構造は、さらに置換基を有していてもよい。R1〜R2間の置換基として、より好ましいのは、置換基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0059】
上記式(A)及び(C)の鎖状の炭化水素基は、例えば炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
【0060】
上記式(A)及び(C)において、2価の連結基Xとしては、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−R7−基、−COO−R8−基(但し、R7及びR8は直接結合、炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−:R’及びR”は、各々独立にアルキレン基)である)等が挙げられ、好ましくは−COO−R8−基である。−COO−R8−基の中でも、R8がメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基であることが更に好ましく、エチレン基であることが特に好ましい。
【0061】
上記式(A)で表わされる構成単位としては、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルアミン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアミン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
式(C)で表わされる4級アンモニウムブロマイド構造を含む繰返し単位は、前記式(A)で表わされる構成単位を、臭素化合物で4級化したものである。Aブロック中の式(A)で表わされる構成単位の一部を式(C)で表わされる4級アンモニウム塩とすることで、インクの顔料分散性に加え、溶剤再溶解性に優れ、インクジェットシステム全体における顔料粒子の凝集やノズルでのインクの乾燥による、異物の発生吐出不良を抑制することができる。Aブロック中の式(A)で表わされる構成単位のうち、5〜90モル%が4級アンモニウム塩化していることが好ましく、10〜50モル%が4級アンモニウム塩化していることが特に好ましい。
【0063】
本発明に用いられる顔料分散剤1g中の4級アンモニウム塩基の量は、顔料分散性の点から、通常0.1〜20mmolであることが好ましい。
【0064】
上記式(A)で表わされる構成単位、及び上記式(C)で表わされる構成単位は、それぞれ1種又は2種以上含まれていてもよい。
当該Aブロック中に、2種以上の式(A)で表される構成単位が存在する場合、各構成単位は該ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合のいずれの態様で含有されていてもよい。
また、Aブロック内に存在する上記式(C)の構成単位はAブロック内の一部に局在しても、ランダムに存在されていてもよい。
【0065】
2.Bブロック
本発明の顔料分散剤を構成するBブロックは上記式(B)で表わされるくり返し単位を含み、該Bブロックのガラス転移温度が30℃以下であることを特徴とする。本発明において、上記式(B)で表わされるくり返し単位を含むBブロックとは、Bブロック内に上記式(B)の他にこれ以外の構造が含まれていてもよいことを示す。
本発明において、上記式(B)で表わされるくり返し単位を含むBブロックとは、Bブロック内に上記式(B)で表わされるくり返し単位が50モル%以上の割合で、好ましくは80モル%以上の割合で、最も好ましくは式(B)で表わされるくり返し単位のみが含まれていることを意味する。
【0066】
本発明において、溶剤可溶部であるBブロックのガラス転移温度は、30℃以下とされる。
本発明のインクジェットインクは、インクジェット方式でカラーフィルターの基材上に所定の画素パターン状に塗布され、溶剤を除去した後、形成されたインク層が加熱硬化されて画素となる。顔料分散剤のBブロック部分のガラス転移温度を30℃以下とすることで、溶剤を除去する過程において高濃度まで流動性を保つことが可能となり、画素部が平坦化する。また、熱硬化性樹脂を加熱すると一度軟化してから熱硬化するが、本発明においては、顔料分散剤のBブロック部分のガラス転移温度が30℃以下であるため、当該顔料分散剤を含有するインク層は、加熱硬化中に軟化状態下で流動性を保持し、平坦化すると推測される。その結果、画素部は平坦化し、カラーフィルターのコントラスト、輝度が向上するものと推察される。
なお、本発明においてBブロックのガラス転移温度とは、ブロック共重合体を合成する途中で得られるBブロックの部分のみからなる重合体のガラス転移温度のことである。Bブロックのガラス転移温度は、示差走査熱量測定法(例えば、(株)島津製作所社製 示差走査熱量計DSC-60)により求めることができる。
【0067】
上記式(B)において、R5は、置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよいアラルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、エトキシエチル基、ベンジル基、フェニル基、シクロヘキシル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンタニルオキシエチル基、イソボニル基、フェニルエチル基等が挙げられるが、顔料分散安定性の観点から、ブチル基又はエトキシエチル基が好ましい。
【0068】
上記式(B)で表される構成単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチルアクリル酸グリシジル、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー等が挙げられる。
中でも、顔料分散性を調製する点で、ブチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、上記式(B)で表わされる構成単位は、1種又は2種以上含まれていてもよい。
【0069】
当該Bブロック中に、2種以上の式(B)で表される構成単位が存在する場合、各構成単位は該ブロック中においてランダム共重合又はブロック共重合のいずれの態様で含有されていてもよい。
【0070】
3.ブロック共重合体
本発明の顔料分散剤に用いられるブロック共重合体は、前記Aブロックと前記Bブロックとが連結したブロック共重合体で、A−Bブロック共重合体の他、B−A−Bブロック共重合体が含まれる。
【0071】
上記ブロック共重合体は、例えば特開2002−31713号公報記載のリビング重合法等により調製される。
【0072】
本発明で用いる顔料分散剤がA−Bブロック共重合体であっても、B−A−Bブロック共重合体であっても、その共重合体を構成するAブロック/Bブロック比は、分散性の点から、5/95〜80/20、特に10/90〜70/30(重量比)であることが好ましい。
【0073】
また、顔料分散性の点から、アミン価は2〜150mgKOH/gであることが好ましい。なお、アミン価は固形分1gあたりのアミン価を示し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めたのち、水酸化カリウムの当量に換算した値をいう。
【0074】
更に、この共重合体からなる顔料分散剤の分子量は、4級アンモニウム塩化する前のブロック共重合体において、ポリスチレン換算の重量平均分子量で1000〜30,000の範囲が好ましい。共重合体の分子量が1000未満であると分散安定性が低下し、30,000を超えるとインクジェット吐出性が低下する傾向にある。なお、重量平均分子量(Mw)は臭化リチウムを10ミリモル/リットル含むN−メチルピロリドンを展開液としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(例えば、HLC−8120、東ソー株式会社製)により求めた値をいう。
【0075】
本発明において、顔料分散剤は単独で又は2種以上混合して使用することができる。
【0076】
顔料分散剤は、インクの固形分を100質量%とした時に、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは5〜25質量%の割合で用いる。
【0077】
(エポキシ化合物)
本発明に係るカラーフィルター用インクジェットインクには、熱硬化性を付与するために、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が用いられる。1分子中にエポキシ基を2個以上を有するエポキシ化合物は、エポキシ基を2個以上、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個を1分子中に有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)である。エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。エポキシ化合物としては、カルボン酸により硬化しうる公知の多価エポキシ化合物を挙げることができ、このようなエポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
【0078】
エポキシ化合物としては、硬化膜に耐溶剤性や耐熱性を付与するために通常バインダー成分として用いられる比較的分子量の高い重合体と、硬化膜の架橋密度を高くしたり、低粘度化によりインクジェット吐出性能を向上させるために、比較的分子量の低い化合物とを併用することが好ましい。
【0079】
通常バインダー成分として用いられる比較的分子量の高い重合体であるエポキシ化合物(以下、「バインダー性エポキシ化合物」ということがある)としては、少なくとも下記式(F)で表される構成単位及び下記式(G)で表される構成単位から構成され且つグリシジル基を2個以上有する重合体を用いることができる。
【0080】
【化11】

【0081】
(R10は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基である。R11は炭素数1〜12の炭化水素基である。R12は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0082】
式(F)で表される構成単位をバインダー性エポキシ化合物の構成単位として用いることにより、本発明のインクジェットインクから形成される硬化塗膜に充分な硬度および透明性を付与することができる。式(F)において、R10として好ましいのは水素又はメチル基であり。R11は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、直鎖脂肪族、脂環式、芳香族いずれの炭化水素基であってもよく、さらに付加的な構造、例えば二重結合、炭化水素基の側鎖、スピロ環の側鎖、環内架橋炭化水素基等を含んでいてもよい。
【0083】
上記式(F)で表される構成単位を誘導するモノマーとして具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、パラ−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0084】
式(G)で表される構成単位は、重合体中にエポキシ基(エポキシの反応点)を導入するために用いられる。当該重合体を含有するインクジェットインクは保存安定性に優れており、保存中および吐出作業中に粘度上昇を生じ難いが、その理由の一つは式(G)中のエポキシ基がグリシジル基だからであると推測される。
式(G)において、R12として好ましいのは水素またはメチル基である。式(G)で表される構成単位を誘導するモノマーとして、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを例示することができ、特にグリシジルメタクリレート(GMA)が好ましい。
【0085】
前記重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、上記重合体は、カラーフィルターの各細部に必要とされる性能、例えば硬度や透明性等が確保できる限り、式(F)あるいは式(G)以外の主鎖構成単位を含んでいてもよい。そのようなモノマーとして具体的には、アクリロニトリル、スチレン等を例示することができる。
【0086】
前記バインダー性エポキシ化合物中の式(F)の構成単位と式(G)の構成単位の含有量は、10:90〜90:10の範囲にあるのが好ましい。式(F)の構成単位の量が上記の比90:10よりも過剰な場合には、硬化の反応点が少なくなって架橋密度が低くなるおそれがあり、一方、式(G)の構成単位の量が上記の比10:90よりも過剰な場合には、嵩高い骨格が少なくなって硬化収縮が大きくなるおそれがある。
【0087】
また、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に3,000以上、特に4,000以上であることが好ましい。上記バインダー性エポキシ化合物の分子量が3,000よりも小さすぎるとカラーフィルターの細部としての硬化層に要求される強度、耐溶剤性等の物性が不足し易いからである。一方、上記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で表した時に20,000以下であることが好ましく、更に15,000以下であることが特に好ましい。当該分子量が20,000よりも大きすぎると粘度上昇が起こり易くなり、インクジェット方式で吐出ヘッドから吐出する時の吐出量の安定性や吐出方向の直進性が悪くなるおそれや、長期保存の安定性が悪くなるおそれがあるからである。なお上記バインダー性エポキシ化合物は、例えば特開2006−106503号公報の段落番号0148に記載されているような方法で合成することができる。
【0088】
本発明に用いるバインダーには、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物(以下、「多官能エポキシ化合物」ということがある。)であって、上記バインダー性エポキシ化合物よりも分子量が小さいものを用いても良い。中でも、上述のように上記バインダー性エポキシ化合物と当該多官能エポキシ化合物を併用することが好ましい。この場合、多官能エポキシ化合物のポリスチレン換算の重量平均分子量は、これと組み合わせるバインダー性エポキシ化合物よりも小さいことを条件に、4,000以下が好ましく、3,000以下が特に好ましい。インクジェットインクに比較的分子量が小さい多官能エポキシ化合物を添加すると、インクジェットインク中にエポキシ基が補充されてエポキシの反応点濃度が増加し、架橋密度を高めることができる。
【0089】
なお、エポキシ化合物のポリスチレン換算重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができ、測定条件としては、例えば、テトラヒドロフランを展開液とし、HLC−8220(東ソー株式会社製)を用いて測定することができる。
【0090】
多官能エポキシ化合物の中でも、酸−エポキシ反応の架橋密度を上げるためには、一分子中にエポキシ基を4個以上有するエポキシ化合物を用いるのが好ましい。特に、インクジェット方式の吐出ヘッドからの吐出性を向上させるために前記バインダー性エポキシ化合物の重量平均分子量を10,000以下とした場合には、硬化層の強度や硬度が低下し易いので、そのような4官能以上の多官能エポキシ化合物をインクジェットインクに配合して架橋密度を充分に上げるのが好ましい。
【0091】
多官能エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2個以上含有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
【0092】
より具体的には、商品名エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名YDF−175S(東都化成社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂、商品名YDB−715(東都化成社製)などの臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA1514(大日本インキ化学工業社製)などのビスフェノールS型エポキシ樹脂、商品名YDC−1312(東都化成社製)などのハイドロキノン型エポキシ樹脂、商品名EPICLON EXA4032(大日本インキ化学工業社製)などのナフタレン型エポキシ樹脂、商品名エピコートYX4000H(ジャパンエポキシレジン社製)などのビフェニル型エポキシ樹脂、商品名エピコート157S70(ジャパンエポキシレジン社製)などのビスフェノールA型ノボラック系エポキシ樹脂、商品名エピコート154(ジャパンエポキシレジン社製)、商品名YDPN−638(東都化成社製)などのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、商品名YDCN−701(東都化成社製)などのクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、商品名EPICLON HP−7200(大日本インキ化学工業社製)などのジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、商品名エピコート1032H60(ジャパンエポキシレジン社製)などのトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、商品名VG3101M80(三井化学社製)などの3官能型エポキシ樹脂、商品名エピコート1031S(ジャパンエポキシレジン社製)などのテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、商品名デナコールEX−411(ナガセ化成工業社製)などの4官能型エポキシ樹脂、商品名ST−3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、商品名エピコート190P(ジャパンエポキシレジン社製)などのグリシジルエステル型エポキシ樹脂、商品名YH−434(東都化成社製)などのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、商品名YDG−414(東都化成社製)などのグリオキザール型エポキシ樹脂、商品名エポリードGT−401(ダイセル化学社製)などの脂環式多官能エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアネート(TGIC)などの複素環型エポキシ樹脂などを例示することができる。また、必要であれば、エポキシ反応性希釈剤として、商品名ネオトートE(東都化成社製)などを混合することができる。
【0093】
エポキシ化合物は、インクの固形分を100質量%とした時に、好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは20〜65質量%の割合で用いる。
上記バインダー性エポキシ化合物と、必要に応じて配合される多官能エポキシ化合物の配合割合は、重量比(バインダー性エポキシ化合物:多官能エポキシ化合物)ではバインダー性エポキシ化合物を95:5〜5:95の割合で配合するのが好ましい。
【0094】
(硬化剤)
本発明に用いられるバインダーには、通常、硬化剤が組み合わせて配合される。硬化剤としては、例えば、多価カルボン酸無水物または多価カルボン酸を用いる。
多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
また、本発明に用いられる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0095】
これら硬化剤は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。本発明に用いられる硬化剤の配合量は、エポキシ基を含有する成分(バインダー性エポキシ化合物と多官能エポキシ化合物の合計量)100重量部当たり、通常は1〜100重量部の範囲であり、好ましくは5〜50重量部である。硬化剤の配合量が1重量部未満であると、硬化が不充分となり、強靭な塗膜を形成することができないおそれがある。また、硬化剤の配合量が100重量部を超えると、塗膜の基板に対する密着性が劣るおそれがある。
【0096】
(溶剤)
インクの急激な粘度上昇やインクジェット吐出装置の目詰まりが発生せず、吐出の直進性や安定性に悪影響を及ぼさないで吐出性を向上させるために、主溶剤として沸点が180℃〜260℃、特に210℃〜260℃で且つ常温(特に18℃〜25℃の範囲)での蒸気圧が0.5mmHg(66.7Pa)以下のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを溶剤全量に対して80質量%以上の割合で含有する溶剤を用いる。主溶剤は、できるだけ高い配合割合で用いるのが望ましく、好ましくは90重量%以上とし、最も好ましくは100重量%の単独溶剤である。
【0097】
上記した主溶剤は、乾燥が遅いためインクジェットでの間欠吐出性に優れる一方、塗膜形成時に乾燥が遅いことから、生産効率に問題がある場合があるので、生産効率を向上させる目的で、主溶剤に、より低沸点溶剤を混合しても良い。主溶剤と組み合わせて用いることが好ましい他の副溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルのようなグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールオリゴマーエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールオリゴマーエーテルエステル類;酢酸エチル、安息香酸プロピルのような脂肪族又は芳香族エステル類;炭酸ジエチルのようなジカルボン酸ジエステル類;3−メトキシプロピオン酸メチル、3―エトキシプロピオン酸エチルのようなアルコキシカルボン酸エステル類;アセト酢酸エチルのようなケトカルボン酸エステル類;エタノール、イソプロパノール、フェノールのようなアルコール類又はフェノール類;ジエチルエーテル、アニソールのような脂肪族又は芳香族エーテル類;2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジエチレングリコール、トリプロピレングリコールのようなグリコールオリゴマー類;2−エトキシエチルアセテートのようなアルコキシアルコールエステル類;アセトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類等が挙げられる。
【0098】
溶剤は、カラーフィルター用インクジェットインク全量に対して、通常は40〜95重量%の割合で用いることが好ましい。溶剤が少なすぎると、インクジェットインクの粘度が高く、インクジェットインクの場合にはインクジェットヘッドからの吐出が困難になる。また、溶剤が多すぎると、所定のインク層形成部位からインクが決壊し、当該インク層形成部位に堆積させることのできるインク堆積量が不充分となり、乾燥後の膜厚が薄すぎて、それに伴い充分な透過色濃度を得ることができなくなる。
【0099】
(任意添加成分)
(1)触媒
本発明のインクジェットインクには、硬化樹脂層の硬度および耐熱性を向上させるために、酸−エポキシ間の熱硬化反応を促進できる触媒を添加してもよい。そのような触媒としては、加熱硬化時に活性を示す熱潜在性触媒を用いることができる。
熱潜在性触媒は、加熱されたとき、触媒活性を発揮し、硬化反応を促進し、硬化物に良好な物性を与えるものであり、必要により加えられるものである。この熱潜在性触媒は、60℃以上の温度で酸触媒活性を示すものが好ましく、このようなものとしてプロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、オニウム化合物類等が挙げられ、前記特開平4−218561号公報に記載されているような各種の化合物を使用することができる。熱潜在性触媒は、1分子中に熱硬化性官能基を2個以上有する化合物及び硬化剤の合計100重量部に対して、通常は0.01〜10.0重量部程度の割合で配合する。
【0100】
(2)その他成分
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクには、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤を含むものであってもよい。該添加剤としては、例えば、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤、充填剤等などが挙げられる。
【0101】
(カラーフィルター用インクジェットインクの調製)
カラーフィルター用インクジェットインクの調製方法としては、前述した顔料と、顔料分散剤と、エポキシ化合物と、硬化剤と、所望により用いられる各種添加成分とを、溶剤中に均一に溶解又は分散させ得る方法であればよく、特に制限はされず、公知の混合手段を用いて混合することにより、調製することができる。
当該樹脂組成物の調製方法としては、例えば(1)溶剤中に、上記の顔料分散剤及び顔料を添加し、分散機を用いて分散させることによって、顔料分散液を作製した後、これにバインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを添加し混合する方法、(2)溶剤中に、上記の顔料分散剤と、顔料と、バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを同時に投入し、混合する方法、及び(3)溶剤中に、上記の顔料分散剤と、バインダーと、所望により用いられる各種添加成分とを添加し、混合したのち、これに顔料を加えて混合する方法などを挙げることができる。
これらの方法の中で、上記(1)の方法が、顔料の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。この場合、顔料分散液中の溶剤の含有量としては、該顔料の分散性や顔料分散経時安定性、得られるカラーフィルターの色度などの観点から、60〜90重量%の範囲が好ましい。
【0102】
上記(1)の方法における顔料分散液の調製において、顔料の分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミル等が挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2mmが好ましく、より好ましくは0.1〜1mmである。また、分散後、5.0〜0.2μm程度のメンブランフィルタで濾過することが好ましい。これにより、顔料の分散性に優れた顔料分散液が得られる。
【0103】
<カラーフィルター>
次に、本発明のカラーフィルターについて説明する。
本発明のカラーフィルターは、透明基板と、当該透明基板上に設けられた着色層とを少なくとも備えるカラーフィルターであって、当該着色層の少なくとも1つが前記本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて形成されてなる着色層を有することを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルターについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルターの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルター10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3R,3G,3Bとを有している。
本発明のカラーフィルターは、前述した本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて着色層を形成することにより、顔料分散性に優れ、且つインクジェット方式を用いて形成した場合に平坦性に優れた着色層を形成可能なことから、良好な光学性能を有している。
【0104】
(透明基板)
本発明のカラーフィルターにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルターに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルターの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
【0105】
(遮光部)
本発明のカラーフィルターにおける遮光部は、透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルターに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。インクジェット方式により着色層を形成する場合、遮光部は、インクを所定領域に付着させるための隔壁であり、各着色層の間及び着色層形成領域の外側を取り囲むように設けられることにより、表示画像のコントラストを向上させることができる。
【0106】
遮光部は、スパッタリング法、真空蒸着法等によるクロム等の金属薄膜であっても良い。或いは、遮光部は、樹脂バインダー中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた樹脂層であってもよい。遮光性粒子を含有させた樹脂層の場合には、感光性レジストを用いて現像によりパターニングする方法、遮光性粒子を含有するインクジェットインクを用いてパターニングする方法、感光性レジストを熱転写する方法等がある。
遮光部の厚さは、金属薄膜の場合は1000〜2000Å程度とし、遮光性樹脂層の場合は、0.5〜2.5μm程度とする。
【0107】
(着色層)
着色層は、前述した本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用いて形成される。着色層をインクジェット方式により形成する場合、当該着色層の厚みは、該着色層の領域内で不均一となることが特徴である。例えば、図1の3R,3G,3Bに示したように、着色層の外縁部又はその近傍に厚みの小さい部分を有し、且つ当該厚みの小さい部分よりも画素の中心側に厚みの最大部を有するような形状、すなわち、中央部付近が盛り上がった断面形状を有する。厚みが着色層の領域内で不均一であるとは、厚みの差が0.1μm以上の場合をいう。着色層の厚みは、例えば、光学干渉方式の三次元非接触表面形状計測装置(米国マイクロマップ製Micromap557N)を用いて測定することができる。
【0108】
本発明においてカラーフィルターの着色層は、平均厚みが2.0μmの時に、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)の差(T−B差)が0.7μm以下であることが好ましく、更に0.6μm以下であることが好ましい。
【0109】
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の平均厚みは、塗布方法、カラーフィルター用インクジェットインクの固形分濃度や粘度等を調製することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましく、さらに1〜2.5μmの範囲であることが好ましい。
【0110】
当該着色層は、例えば下記の方法により形成することができる。
まず、青(B)用、緑(G)用及び赤(R)用の顔料がそれぞれ配合された前記本発明のカラーフィルター用インクジェットインクを用意する。そして、透明基板1の表面に、遮光部2のパターンにより画成された各色(R、G、B)の着色層形成領域に、対応する色のカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させてインク層を形成する。
【0111】
次に、各色のインク層を乾燥し必要に応じてプリベークした後、加熱することによりインク層が硬化して着色層3R,3G,3Bが形成される。
なお、本発明のカラーフィルターは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0112】
<液晶表示装置>
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルター10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルター10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルターが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0113】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、及びMVA(Multi−domain Vertical Alignment)方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
【実施例】
【0114】
次に、本発明を実施例により、更に具体的に説明する。これらの記載により本発明が何ら制限されるものではない。
【0115】
1.顔料分散剤の合成
(顔料分散剤1)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar(アルゴン)置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、methyl trimethylsilyl dimethylketene acetal 2.32g、tetrabutyl ammonium 3−chlorobenzoate(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、ブチルメタクリレート40gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート13.3gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ポリブチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は5,400、分子量分布は1.17であった。
得られたポリブチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.346gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤1の20wt%BCA溶液を得た。
【0116】
(顔料分散剤2)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、methyl trimethylsilyl dimethylketene acetal 2.32g、tetrabutyl ammonium 3−chlorobenzoate(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、エトキシエチルメタクリレート40gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート13.3gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ポリエトキシエチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は6,000、分子量分布は1.14であった。
得られたポリエトキシエチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.346gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤2の20wt%BCA溶液を得た。
【0117】
(顔料分散剤3)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、methyl trimethylsilyl dimethylketene acetal 2.32g、tetrabutyl ammonium 3−chlorobenzoate(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、ベンジルメタクリレート(BzMA)15g、2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)10g、ブチルメタクリレート(BMA)10g、メチルメタクリレート(MMA)5gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート 13.3gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ポリ(BzMA/2EHMA/BMA/MMA)−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は8,000、Mw/Mn=1.20であった。
得られたポリ(BzMA/2EHMA/BMA/MMA)−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.346gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤3の20wt%BCA溶液を得た。
【0118】
(顔料分散剤4)
シュレンク管にブチルアクリレート 4.8g、アニソール4.8g、4,4’−dinonyl−2,2’−bipyridyl 1g、p−toluenesulfonyl chloride 240mgを入れて脱気を行った後、ArフローしながらCuCl 125mgを加え密閉した。90℃で24時間攪拌した後、開栓しTHFに溶解した。中性アルミナを通した後、溶媒を除去してポリブチルアクリレートを得た。
次にシュレンク管に上記で合成したポリブチルアクリレート4g、ジメチルアミノエチルアクリレート1.4g、o−dichlorobenzene 4g、hexamethyltriethylenetetramine 279mgを入れて脱気を行った後、ArフローしながらCuCl 120mgを加え密閉した。90℃で16時間攪拌した後、開栓しTHFに溶解した。中性アルミナを通した後、溶媒を除去してポリブチルアクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルアクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は5,600、分子量分布は1.34であった。
得られたポリブチルアクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルアクリレート4gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.231gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤4の20wt%BCA溶液を得た。
【0119】
(顔料分散剤5)
シュレンク管にブチルアクリレート 4.8g、アニソール4.8g、4,4’−dinonyl−2,2’−bipyridyl 1g、p−toluenesulfonyl chloride 240mgを入れて脱気を行った後、ArフローしながらCuCl 125mgを加え密閉した。90℃で24時間攪拌した後、開栓しTHFに溶解した。中性アルミナを通した後、溶媒を除去してポリブチルアクリレートを得た。
次にシュレンク管に上記で合成したポリブチルアクリレート4g、ジメチルアミノエチルメタクリレート1.4g、o−dichlorobenzene 4g、hexamethyltriethylenetetramine 279mgを入れて脱気を行った後、ArフローしながらCuBr 174mgを加え密閉した。90℃で16時間攪拌した後、開栓しTHFに溶解した。中性アルミナを通した後、溶媒を除去してポリブチルアクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は5,700、分子量分布は1.36であった。
得られたポリブチルアクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート4gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.231gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤5の20wt%BCA溶液を得た。
【0120】
(顔料分散剤6)
500mlの4口セパラブルフラスコを減圧して乾燥後、Ar置換した。Arフローしながら、脱水THF100g、methyl trimethylsilyl dimethylketene acetal 2.32g、tetrabutyl ammonium 3−chlorobenzoate(TBACB)の1Mアセトニトリル溶液0.15ml、メシチレン0.2gを加えた。そこに滴下ロートを用いて、メチルメタクリレート40gを45分かけて滴下した。反応が進むと発熱するため、氷冷することにより、温度を40℃未満に保った。1時間後、ジメチルアミノエチルメタクリレート13.3gを15分かけて滴下した。1時間反応させた後、メタノール5gを加えて反応を停止させた。溶剤を減圧除去して、ポリメチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレートを得た。GPC測定(NMP LiBr10mM)により求めた重量平均分子量は5,600、Mw/Mn=1.18であった。
得られたポリメチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに3−bromo−propene 0.346gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、室温で5時間反応させて顔料分散剤6の20wt%BCA溶液を得た。
【0121】
(顔料分散剤7)
顔料分散剤1の合成過程で得られたポリブチルメタクリレート−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに塩化ベンジル0.242gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、100℃で5時間反応させて顔料分散剤7の20wt%BCA溶液を得た。
【0122】
(顔料分散剤8)
顔料分散剤3の合成過程で得られたポリ(BzMA/2EHMA/BMA/MMA)−b−ポリジメチルアミノエチルメタクリレート6gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに溶解させ、20wt%溶液を作製した。そこに塩化ベンジル0.242gをジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートに20wt%濃度で溶解させたBCA溶液を滴下して加え、100℃で5時間反応させて顔料分散剤8の20wt%BCA溶液を得た。
【0123】
<ガラス転移温度測定>
顔料分散剤1〜4及び6の合成時に、Bブロックの重合が完了した段階で、反応液を少量抜き取り、溶媒を除去した。
上記顔料分散剤1〜4及び6のBブロック部(溶剤可溶部)を、示差走査熱量計DSC−60((株)島津製作所社製)を用いて、温度範囲−100℃〜200℃、昇温速度10℃/minの条件下で測定し、ベースラインがシフトする温度をガラス転移温度とした。
なお、顔料分散剤5、7及び8のBブロックはそれぞれ、顔料分散剤4、1及び3のBブロックと同一である。
【0124】
【表1】

【0125】
2.顔料分散液の調製
(顔料分散液1)
顔料、分散剤、及び有機溶剤を下記の割合で混合し、直径2mmのジルコニアビーズを30重量部加え、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて1時間振とうし、次いでその分散液30質量部と粒径0.1mmのジルコニアビーズ60質量部とをマヨネーズビンに入れ、ペイントシェーカーにて5時間振とうして、顔料分散液1を調製した。
<顔料分散液の組成>
・顔料:C.I.ピグメントグリーン58:4.5重量部
・顔料分散剤1:2.7重量部
・BCA(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート):22.8重量部
【0126】
(顔料分散液2〜5)
前記顔料分散液1の調製において、顔料分散剤1をそれぞれ顔料分散剤2〜5に変えた以外は顔料分散液1の調製と同様にして、それぞれ顔料分散液2〜5を調製した。
【0127】
(比較顔料分散液1〜3)
前記実施例1の調製において、顔料分散剤1をそれぞれ顔料分散剤6〜8に変えた以外は実施例1の調製と同様にして、比較顔料分散液1〜3の顔料分散液を調製した。
【0128】
<顔料分散安定性評価>
顔料分散液1〜5及び比較顔料分散液1〜3ついて、調製直後と、40℃で1週間放置後のせん断粘度を測定した。粘度測定には、日本シイベルヘグナー(株)社製「MCR301(型番)」を用いて、せん断速度が100rpmのときのせん断粘度を測定した。なお比較顔料分散液2及び3は分散直後からゲル化したため、静置後のせん断粘度は測定していない。
【0129】
【表2】

【0130】
3.インクジェットインクの調製
(実施例1)
顔料分散液1の顔料分散液及び、その他の成分を充分に混合して、顔料分散剤1を含有する下記組成のインクジェットインク(実施例1)を調製した。
<組成>
・顔料分散液1の顔料分散液:100重量部
・グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(共重合比=20/80、Mw=10,000):6.5重量部
・多官能エポキシ化合物(エピコート154、油化シェルエポキシ社製):1.3重量部
・ネオペンチルグリコールグリシジルエーテル:0.65重量部
・トリメリット酸:1.3重量部
・BCA:59重量部
【0131】
(実施例2〜5)
実施例1のインクジェットインクの調製において、顔料分散液をそれぞれ顔料分散液2〜5に代えた以外は、実施例1と同じ組成でインクジェットインク(それぞれ実施例2〜5)を調製した。
【0132】
(比較例1)
実施例1のインクジェットインクの調製において、顔料分散液を比較顔料分散液1に代えた以外は、実施例1と同じ組成でインクジェットインク(比較例1)を調製した。
【0133】
<コントラスト測定>
実施例1〜5及び比較例1のインクジェットインクをそれぞれガラス基板(NHテクノグラス(株)社製、「NA35」)上に、スピンコーターを用いて塗布した後、減圧乾燥装置にて溶剤を除去、90℃のホットプレートで5分間プリベークし、240℃のオーブンで40分間ポストベークして、緑色カラーフィルター基板を作成した。
得られた緑色カラーフィルター基板のコントラスト値を壺坂電気(株)社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用いて測定した。
【0134】
4.画素の作成
厚み0.7mmで10cm×10cmのガラス基板(旭硝子(株)製)上に、フォトリソグラフィー法により線幅20μm、膜厚2.4μmのブラックマトリックスパターンを形成した。上記基板のブラックマトリックスにより区画された画素形成部に、実施例1〜5及び比較例1のインクジェットインクをそれぞれインクジェット方式によって、正確且つ均一に付着させた。その後、減圧乾燥機にて溶剤を除去し、100℃のクリーンオーブン内で20分間プリベークを行い、さらに240℃のクリーンオーブン内で40分間ポストベークを行って、基板上に最終膜厚が2.0μmとなる画素パターンを形成した。
【0135】
<画素形状の評価>
画素形状は光学干渉方式の三次元非接触表面形状計測装置(米国マイクロマップ製Micromap557N)を用いて測定した。画素の膜厚において、最も厚い部分(T)と最も薄い部分(B)を測定し、その差をT−B差とした。
【0136】
【表3】

【0137】
<結果のまとめ>
表2のとおり顔料分散安定性評価の結果、顔料分散剤1〜5を含有する顔料分散液1〜5は静置前後で粘度がほとんど変化せず、顔料分散安定性が良好であった。一方、顔料分散剤6を含有する比較顔料分散液1は1週間静置後にはゲル化しており顔料分散安定性は不良であった。また、顔料分散剤7、8を含有する比較顔料分散液2、3は調製時から分散せず、ゲル化した。
【0138】
表3のとおり画素形状とコントラスト測定の結果、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下の溶剤可溶部をもつ顔料分散剤1〜5を含有する実施例1〜5は比較例1に対して、画素形状が平坦であり、高コントラストであった。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明のカラーフィルター用インクジェットインクは、インクジェット方式によっても平坦性の高い着色層を形成可能で、光学性能を向上可能であり、品質の良好なカラーフィルター及びそれを有する液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0140】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、顔料、
少なくとも下記式(A)で表されるくり返し単位を含むAブロックと下記式(B)で表されるくり返し単位を含むBブロックとが連結したブロック共重合体であり、Aブロックの一部が下記式(C)で表される構造に4級アンモニウム塩化され、Bブロックのガラス転移温度が30℃以下であるブロック共重合体からなる顔料分散剤、
少なくとも1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物、
硬化剤、及び、
主溶剤として沸点が180℃〜260℃で且つ常温での蒸気圧が0.5mmHg以下のジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを溶剤全量に対して80質量%以上の割合で含有する溶剤を含有する、カラーフィルター用インクジェットインク。
【化1】

(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【化2】

(式中、R4は水素原子又はメチル基を表す。R5は置換基を有していてもよい環状又は鎖状のアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシアルキル基を表す。)
【化3】

(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R1、R2が互いに結合して環状構造を形成する。R3は水素原子又はメチル基を表す。R6は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基、アルケニル基、アラルキル基を表す。Xは2価の連結基を表す。)
【請求項2】
前記式(B)におけるR5がブチル基またはエトキシエチル基である請求項1に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項3】
(1)透明基板上の所定領域に、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用インクジェットインクをインクジェット方式によって選択的に付着させて、インキ層を形成する工程と、
(2)当該インキ層を加熱することにより硬化させて、所定パターンの硬化層を形成する工程、
を含むことを特徴とする、カラーフィルターの製造方法。
【請求項4】
透明基板上に少なくとも着色層を備えてなり、当該着色層が請求項1又は2に記載のカラーフィルター用インクジェットインクを硬化させて形成したものであることを特徴とする、カラーフィルター。
【請求項5】
前記着色層上に、透明導電層及び/又はオーバーコート層が積層されている、請求項4に記載のカラーフィルター。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−37654(P2012−37654A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176399(P2010−176399)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】