説明

カラーフィルター用着色組成物及びそれを用いたカラーフィルター、並びに表示装置

【課題】現像溶解性に優れるとともに、NMPに対する耐性と電気信頼性の高いカラーフィルター用着色組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂、架橋性モノマー、光重合開始剤、着色剤及び溶媒を含み、前記着色剤が、下記一般式(I)で表されるカチオン性染料、及びアニオン性化合物とエポキシ化合物に由来する重合体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用着色組成物及びそれを用いたカラーフィルター、並びに表示装置に関し、特に、耐熱性、耐光性、耐溶剤性、電気信頼性が高く、かつ着色層の基板への密着性が高いカラーフィルター用着色組成物、それを用いたカラーフィルター及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置に、カラーフィルターが用いられることがある。該カラーフィルターは、基板に着色層を積層した構造を有し、該着色層には、耐熱性、耐光性が求められている。
着色層に用いる材料として、トリアリールメタン系染料が知られており、熱や光への耐久性を向上させるために、トリアリールメタン染料の対アニオンに芳香族スルホン酸を用いた例が知られている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0003】
中でも特許文献1では、芳香族スルホン酸の芳香環に光重合性の官能基を導入し、含有する光重合性樹脂および架橋性モノマーに化学結合を形成することで耐久性を向上させている。より具体的には、トリアリールメタン系色素単量体又は該色素単量体を重合して得られる重合体と、対アニオンとして光反応性基を持つ芳香族スルホン酸を有し、バインダーとして樹脂を含有するカラーフィルター用として好適な感光性着色組成物が提案されている(特許文献1参照)。この感光性着色組成物によれば、耐光性、耐熱性、及び透明性の優れたカラーフィルター用感光性着色組成物が得られるとしている(特許文献1、段落0008参照)。
また、特許文献2には、特定構造のトリアリールメタン染料と対アニオンとして芳香族スルホン酸イオンとを有する着色剤を含む組成物が記載されている。
しかし、芳香族スルホン酸を対アニオンにもつトリアリールメタン染料は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエステル系溶媒やアクリル酸樹脂および架橋性モノマーへの溶解性に乏しいため、均一なインキ組成物を与えず、たとえ溶液にできても塗膜中で染料が析出するため、染料の特徴である高い透過性を損なってしまうなどの課題があり、カラーフィルター用着色剤としての仕様を十分に満たしていないために未だ実用に至っていない。
【0004】
一方、トリアリールメタンなどカチオン性染料の耐久性を向上する手段として、対アニオンにイミド酸イオンを用いることが特許文献3に開示されている。当該対アニオンにイミド酸を用いたトリアリールメタン系染料は、PGMEAなどのエステル系溶媒やアクリル酸樹脂および架橋性モノマーへの高い溶解性を示し、均一な塗膜を与える。また芳香族スルホン酸イオンを対アニオンにもつトリアリールメタン系染料に比べ染料そのものの耐久性も優れ、カラーフィルター用着色染料として有望である。
しかしながら、イミド酸を用いたトリアリールメタン系染料をアクリル酸樹脂、および架橋性モノマー、光重合性開始剤と溶媒とを混合した組成物は、塗布膜の耐溶剤性が乏しく、電気信頼性が低いといった問題があった。
【0005】
また、染料や顔料を塗膜中に固定化し、十分な耐熱性を得るために、アルコキシシランなどの金属アルコキシドを導入することが提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。例えば、特許文献5では、ゾル−ゲル法を用いて、金属−酸素結合からできた重合体の網目構造の中に顔料が包接されているか、又は顔料が金属−酸素結合からできた重合体に化学結合した着色膜を得ることができるために、有機溶媒等によって顔料が溶出することがないとされている(特許文献5、段落0028参照)。
【0006】
また、バインダーポリマー、架橋性モノマー、光重合開始剤、着色剤としての染料、及び光架橋性官能基と脱水重合反応によりシロキサン結合を生成する反応基を有するシラン化合物を含有するカラーフィルター用着色剤組成物が提案されている(特許文献6参照)。このカラーフィルター用着色剤組成物は、着色剤として染料を使用して、透明性、着色性に優れ、かつ高耐久性を有するとされている(特許文献6、段落0004参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4266627号明細書
【特許文献2】特開2008−304766号公報
【特許文献3】特開2007−503477号公報
【特許文献4】米国特許第4948843号公報
【特許文献5】特開平6−308314号公報
【特許文献6】特開2000−47020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、特許文献1及び2に開示される従来のトリアリールメタン系染料を用いた着色組成物では、耐熱性はある程度確保できるものの、耐光性については十分でなく、しかも製版プロセスの際に露光感度が低く硬化不良となり、現像溶解性が低いという問題があった。
【0009】
ところで、液晶ディスプレイに使用されるカラーフィルターでは、配向膜が必須の構成要件であり、配向膜としてポリイミドの膜を使用することが多い。ポリイミド膜は、その製造過程で溶媒として、通常、N−メチルピロリドン(以下「NMP」と省略する。)が用いられるが、カラーフィルターに接する形で該ポリイミド膜が用いられる場合に、該カラーフィルターが、NMPに対する耐性を有することが求められる。カラーフィルターとして、従来用いられる顔料分散レジストを使用する場合には、このような問題は生じないが、染料を用いる系では、染料がNMPに溶出する性質を有することは、非常に大きな問題であり、NMPに接した場合であっても、染料が膜中に固定化されていることが要求される。
【0010】
また、染料を液晶カラーフィルター用着色材として用いる場合には、その着色塗膜が十分な電気信頼性を有することが求められる。染料はそれ自身が液晶層中に入り込み、液晶層中を移動することにより、該液晶層に印加された電圧を一定期間中保持することを妨げる。特に酸性染料や塩基性染料などイオン性の染料を用いる場合、染料が液晶層に溶出する性質を有することは、結果的にカラー液晶表示装置の表示不良が発生してしまうため、染料が膜中に固定化されていることが要求される。
なお、電気信頼性は、硬化性着色組成物を用いて液晶セルを作製した場合の電圧保持率により評価することができ、電気信頼性が高いとは該電圧保持率が高いことをいう。
【0011】
上記NMP耐性や電気信頼性の課題は着色塗膜の直上に保護層を設けることで克服できる。しかし、保護層は一般的に光硬化性ないし熱硬化性の有機樹脂からなるため、その溶液を着色塗膜に塗布する際に使用する溶媒に対する耐溶媒性が最低限必要となる。また、保護層を形成するために工程数が増えるため、保護層を用いることは望ましくない。
【0012】
上述の特許文献3に開示されるカチオン性染料は、レジストを十分に硬化させても染料の溶媒や液晶への溶出を抑制することができず、さらに保護層形成時の溶液に対する耐性にも乏しいため、カラーフィルター用の着色組成物として用いることはできない。
また、上述の特許文献1及び4〜6に開示される、対イオンにアルコキシシランなどの金属アルコキシドを導入したカチオン性染料は、膜中に染料が固定化されており、有機溶媒に染料が流出し難いものとはなっているが、上記特許文献4〜6に記載のゾル−ゲル法を用いた着色組成物は露光−現像プロセスによってパターニングする際、その現像溶解性が著しく低くなるため、さらなる改良が必要であることが、本発明者らの検討により明らかとなった。
【0013】
すなわち、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、電気化学的、熱的に安定なだけでなく、有機溶媒や樹脂への良好な溶解性をも両立でき、現像溶解性に優れるとともに、NMPに対する耐性と電気信頼性の高いカラーフィルター用着色組成物、それを用いたカラーフィルター及び表示装置を提供することを目的とする。
なお、ここで現像溶解性とは、露光・現像プロセスにおける未露光部分の現像溶解性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、カラーフィルター用着色組成物の着色剤として、トリアリールメタン系染料におけるカチオン性染料と、この対アニオンとして、エチレン性不飽和結合を導入した特定のスルホニルイミド酸イオンを用い、該対アニオンと、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物とを共重合体させることにより、耐熱性を維持しつつ、有機溶媒や樹脂に対する溶解性と耐光性とを両立させることができるとともに、NMPに対する耐性を向上させ、さらには高い電気信頼性が得られることを見出した。また、本発明者は、上記着色剤において、上記対アニオンと、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物と、マクロモノマー等のエチレン性不飽和結合を有する化合物とを共重合させることにより、塗膜とした時のコントラスト及び耐熱性を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は、
(1)バインダー樹脂、架橋性モノマー、光重合開始剤、着色剤及び溶媒を含み、前記着色剤が、(A)下記一般式(I)で表されるカチオン性染料、及び(B)下記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、下記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とを含む重合体を含有する、カラーフィルター用着色組成物、
【0016】
【化1】

【0017】
[式(I)中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6は、各々結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。]
【0018】
【化2】

【0019】
[式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基を示す。Xは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基を示し、Yは二価の有機基を示す。]
【0020】
【化3】

【0021】
[式(III)中、R8は、水素原子又はメチル基を示す。Aは二価の有機基を示す。]
【0022】
(2)前記(B)成分が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位、前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位からなる重合体である、上記(1)に記載のカラーフィルター用着色組成物、
(3)前記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物の少なくとも1種が、マクロモノマーである、上記(2)に記載のカラーフィルター用着色組成物、
(4)前記マクロモノマーが、下記一般式(IV)及び/又は(V)で表される構成単位を含む、上記(3)に記載のカラーフィルター用着色組成物、
【0023】
【化4】

【0024】
[式(IV)中、R9は、水素原子又はメチル基を示し、R10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、−[CO−(CH2b−O]c−R13、−CO−O−R14又は−O−CO−R15で示される1価の基である。
11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を示す。
13は、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO又は−CH2COOR16で示される1価の基であり、R16は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
14は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、又は−[CO−(CH2b−O]c−R13で示される1価の基である。
15は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。
10に含まれるアルキル基、アラルキル基、又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
kは5〜200の整数を示す。aは1〜18の整数、bは1〜5の整数、cは1〜18の整数を示す。]
【0025】
【化5】

【0026】
[式(V)中、mは1〜5の整数、nは5〜200の整数を示す。]
【0027】
(5)前記マクロモノマーが、エチレン性不飽和結合を有する官能基と、前記一般式(IV)又は(V)で表される構成単位とが二価の有機基を介して連結された構造を有する、上記(4)に記載のカラーフィルター用着色組成物、
(6)前記エチレン性不飽和結合を有する官能基が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基である、上記(2)〜(5)のいずれかに記載のカラーフィルター用着色組成物、
(7)前記一般式(II)におけるXがパーフルオロアルキル基である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のカラーフィルター用着色組成物、
(8)前記一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4、及びR6が炭素数1〜20のアルキル基である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載のカラーフィルター用着色組成物、
(9)さらに顔料を含む、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のカラーフィルター用着色組成物、
(10)基板上に少なくとも着色層を備えてなり、該着色層が上記(1)〜(9)のいずれかに記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて形成したものであるカラーフィルター、及び、
(11)上記(10)に記載のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、耐熱性を維持しつつ、有機溶媒や樹脂に対する溶解性と耐光性とを両立させることができるとともに、NMPに対する優れた耐性を有し、かつ優れた電気信頼性を有するカラーフィルター用着色組成物、それを用いたカラーフィルター及び液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の液晶表示装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
<カラーフィルター用着色組成物>
本実施形態のカラーフィルター用着色組成物は、バインダー樹脂、架橋性モノマー、光重合開始剤、着色剤及び溶媒を含み、該着色剤が、(A)下記一般式(I)で表されるカチオン性染料、及び(B)下記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、下記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とを含む重合体を含有することを特徴とする。
【0031】
【化6】

【0032】
上記式(I)中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6は、各々結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。
【0033】
【化7】

【0034】
上記式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基を示す。Xは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基、Yは二価の有機基を示す。
【0035】
【化8】

【0036】
上記式(III)中、R8は、水素原子又はメチル基を示す。Aは二価の有機基を示す。
【0037】
(着色剤)
まず、本実施形態における着色剤について説明する。
本実施形態における着色剤は、(A)一般式(I)で表されるカチオン性染料、及び(B)一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とを含む重合体を含有するものである。
【0038】
〔(A)カチオン性染料〕
本実施形態における(A)カチオン性染料は、下記一般式(I)で表される。
【0039】
【化9】

【0040】
上記式(I)中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6は、各々結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。
【0041】
一般式(I)において、前記R1〜R6におけるアルキル基としては、飽和アルキル基、不飽和アルキル基、及びシクロアルキル基が挙げられ、これらは、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、ヒドロキシ基及びシアノ基等の置換基を有していてもよい。
より具体的には、該アルキル基は直鎖または分岐若しくは環状のアルキル基でもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基、i−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、i−アミル基、ネオペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、t−アミル基、1,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−エチル−2−メチルプロピル基、直鎖または分岐のヘプチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、1,5−ジメチルヘキシル基、t−オクチル基、分岐したノニル基、分岐したデシル基、分岐したウンデシル基、分岐したドデシル基、分岐したトリデシル基、分岐したテトラデシル基、分岐したペンタデシル基、分岐したヘキサデシル基、分岐したヘプタデシル基、分岐したオクタデシル基、直鎖または分岐のノナデシル基、直鎖または分岐のエイコサニル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロドデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基、シス−ミルタニル基、イソピノカンフェニル基、ノルアダマンチル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基、1−(1−アダマンチル)エチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基、キヌクリジニル基、シクロペンチルエチル基、ビシクロオクチル基が好ましく挙げられる。
【0042】
前記R1〜R6におけるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、アンスラキノニル基、ピレニル基、及び複素環基が挙げられ、これらはアルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、置換カルバモイル基、置換スルファモイル基、置換アミノ基、置換オキシカルボニル基、置換オキシスルホニル基、アルキルチオ基、アリールスルホニル基、及びフェニル基等の置換基を有していてもよい。
【0043】
より具体的に、例えば置換基を有するフェニル基としては、o−、m−もしくはp−メチルフェニル基、o−、m−もしくはp−エチルフェニル基、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル基、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル基、o−、m−もしくはp−tert−ブチルフェニル基、o−、m−もしくはp−アミノフェニル基、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル基、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル基、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル基、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル基、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル基、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル基、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルファニル)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル基、o−、m−もしくはp−クロロフェニル基、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル基、o−、m−もしくはp−ヨードフェニル基、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルなどが挙げられる。
また、例えば置換基としてアルキル基を有するアリール基としては、ベンジル基、4−メトキシフェニルエチル基、3−メトキシフェニルエチル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−tert−ブチルベンジル基、2−(トリフルオロメチル)ベンジル基、3−(トリフルオロメチル)ベンジル基、4−フルオロベンジル基、3−ヨードベンジル基、4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル基、3−(トリフルオロメトキシ)ベンジル基及び4−(トリフルオロメチルスルファニル)ベンジル基などが挙げられる。
【0044】
さらに、前記一般式(I)中、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6のいずれかは、結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよく、環としては、例えば、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、ヘキサメチレンイミン等が挙げられる。このようなR12N−、R34N−、及びR56N−で表される置換基として、例えば、ピロリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、N−エチルピペラジンノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、N−エチル−N−イソブチルアミノ基、N−エチル−ベンジルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、N−エチル−N−テトラフルフリルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、5員環及び6員環が好ましい。
【0045】
これらの中でも、一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4及びR6が各々独立にアルキル基であることが、色素の製造しやすさの点でより好ましく、該アルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましく、エチル基又はメチル基であることが特に好ましい。
また、前記のようにR1、R2、R3、R4及びR6は各々異なっていても同一であってもよいが、色素構造の観点からはすべて同一であることが好ましい。
【0046】
前記一般式(I)で表されるカチオン性染料は、例えば、下記例示化合物(1)で示される化合物が挙げられる。
【0047】
【化10】

【0048】
前記(A)一般式(I)で表されるカチオン性染料は、既知の方法で合成することができる。合成法としては、例えば「総説合成染料」(堀口博著、三共出版、1968年)に記載の方法が参考になる。
【0049】
〔(B)重合体〕
本実施形態における着色剤は、前記(A)カチオン性染料の他に、(B)下記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、下記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とを含む重合体を含有する。
すなわち、該重合体は、少なくとも前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物と、前記一般式(III)で表される化合物とを共重合させてなる重合体である。
【0050】
【化11】

【0051】
上記式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基を示す。Xは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基を示し、Yは二価の有機基を示す。
【0052】
【化12】

【0053】
上記式(III)中、R8は、水素原子又はメチル基を示す。Aは二価の有機基を示す。
【0054】
上記一般式(II)で表されるアニオン性化合物は、エチレン性不飽和結合を有するスルホニルイミド酸イオンであり、また、前記(A)カチオン性染料の対アニオンである。
上記一般式(II)において、Xを構成するアルキル基としては、前記R1〜R6におけるアルキル基と同様のものが挙げられ、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい。特に炭素数が1〜3であり、水素原子の一部又は全部がフッ素原子に置換されたフッ化アルキル基が好ましく、中でもすべての水素原子がフッ素原子に置換されているパーフルオロアルキル基が、イミド酸の酸性度を高め、染料の安定性を向上させる点で特に好ましい。
具体的には、例えば、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、フルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2−フルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−フルオロプロピル基等を挙げることができる。
【0055】
次に、Yで表される二価の有機基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアリールアルキレン基などが挙げられる。具体的には、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、各種ブチレン基などが挙げられ、アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。また、アリールアルキレン基としては、アリールメチレン基、アリールエチレン基、アリールプロピレン基などが挙げられる。これらのうち、炭素数7〜10のアリールアルキレン基が原料の入手および製造上の容易さの点から好ましく、特にアリールメチレン基、アリールエチレン基、アリールプロピレン基が好ましい。
なお、アリールアルキレン基では、オルト体、メタ体及びパラ体があるが、立体障害がないとの観点から、パラ体であることが好ましい。
【0056】
前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物としては、例えば、下記例示化合物(2)〜(4)が挙げられる。
【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
【化15】

【0060】
これらのアニオン性化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
次に、前記一般式(III)で表される化合物は、エチレン性不飽和結合を有するエポキシ化合物であり、前記一般式(III)において、R8は、水素原子又はメチル基を示す。
前記一般式(III)において、Aで表される二価の有機基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するアルキレン基、炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するオキシアルキレン基、カルボニルオキシアルキレン基などが挙げられる。具体的には、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、各種ブチレン基などが挙げられ、オキシアルキレン基としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどが挙げられ、カルボニルオキシアルキレン基としてはカルボニルオキシメチレン基などが挙げられる。これらのうち、カルボニルオキシアルキレン基が原料の入手および製造上の容易さの点から好ましく、特にカルボニルオキシメチレン基が好ましい。
【0062】
前記一般式(III)で表される化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本実施形態において、(B)重合体が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位のほかに、前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位を含むことにより、該着色剤を含有する着色組成物を用いてなるカラーフィルターは、NMP耐性、及び高い電気信頼性を有するものとなる。
この理由は、該着色剤を含有する着色組成物の塗膜を加熱した際に、該着色剤の構成要素として含まれるエポキシ基が、バインダー樹脂として着色組成物に含有されるアクリル酸樹脂などに含まれるカルボン酸基と熱硬化反応を生じ得るため、着色剤が塗膜中に固定化され、その結果、塗膜中から該着色剤が溶出しにくくなっているためと考えられる。なお、上記塗膜中の反応は無溶媒で生じるため、該着色剤に含まれる全てのエポキシ基が均一で過不足なく反応を完結させるわけではない。該着色剤は同一分子内に複数のエポキシ基を含むので、そのうちのいずれかのエポキシ基が塗膜中の成分と反応すれば塗膜中に固定化され、目的とする高いNMP耐性と電気信頼性を有することが可能となる。
【0064】
前記(B)重合体は、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位及び前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位以外に、前記一般式(II)及び(III)で表される化合物以外の、エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。
該構成単位を含むことにより、該着色組成物に含まれる該着色剤以外の成分との相溶性向上に寄与し、その結果、該着色剤成分に起因する相分離を抑制することができるため、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位及び前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位のみからなる重合体と比較して、得られるカラーフィルターのコントラスト及び耐熱性を向上させることができる。
【0065】
前記エチレン性不飽和結合を有する官能基としては、好ましくはエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられ、具体的には、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、ビニルシクロアルキル基等が挙げられる。これらのうち、反応性および合成の容易さの観点から、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、及び(メタ)アクリロイル基が好ましい。
前記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物は、製造上の容易さの観点から、分子内に1個のエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物であることが好ましい。
【0066】
前記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル(メタ)アクリレートや、後述するマクロモノマーなどが挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本実施形態において、前記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物がマクロモノマーであることが、本実施形態の着色組成物を用いてなるカラーフィルターのコントラスト向上、及び耐熱性の観点から好ましい。本実施形態におけるマクロモノマーとは、分子内に好ましくは1個のエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む、重量平均分子量1000以上の化合物をいう。
当該着色組成物中の該着色剤に含まれるカチオン染料成分の濃度を確保する観点から、前記マクロモノマーの重量平均分子量は1000〜10000の範囲であることが好ましい。
【0068】
前記マクロモノマーの構造については、特に制限はないが、例えば、下記一般式(IV)及び/又は(V)で表される構成単位を含むマクロモノマーが好ましく用いられる。
【0069】
【化16】

【0070】
上記式(IV)中、R9は、水素原子又はメチル基を示し、R10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、−[CO−(CH2b−O]c−R13、−CO−O−R14又は−O−CO−R15で示される1価の基である。
11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を示す。
13は、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO又は−CH2COOR16で示される1価の基であり、R16は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
14は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、又は−[CO−(CH2b−O]c−R13で示される1価の基である。
15は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。
10に含まれるアルキル基、アラルキル基、又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
kは5〜200の整数を示し、該着色組成物塗膜中への相溶性及び該着色剤に含まれるカチオン染料成分の濃度を確保する観点から、5〜30の整数であることが好ましい。aは1〜18の整数、bは1〜5の整数、cは1〜18の整数を示す。
【0071】
【化17】

【0072】
上記式(V)中、mは1〜5の整数、nは5〜200の整数を示し、該着色組成物塗膜中への相溶性及び該着色剤に含まれるカチオン染料成分の濃度を確保する観点から、nは5〜30の整数であることが好ましい。
【0073】
上記一般式(IV)及び/又は(V)で表される構成単位のうち、一般式(IV)において、R9が水素原子又はメチル基であり、R10が−CO−O−R14で表され、R14が炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、又は−[CO−(CH2b−O]c−R13で示される1価の基である構成単位を含むマクロモノマーであることがより好ましい。なお、R11〜R13、及びa〜cは、前記と同じである。
このような構成単位としては、例えば、炭素数1〜18のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、炭素数1〜5のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性モノ(メタ)アクリレートなどに由来する構成単位などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜18のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位が好ましい。
前記マクロモノマーは、上記構成単位を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
【0074】
前記マクロモノマーは、該マクロモノマーの製造上の観点から、前記エチレン性不飽和結合を有する官能基と、前記一般式(IV)又は(V)で表される構成単位とが二価の有機基を介して連結された構造を有するものであることがより好ましい。
前記二価の有機基は、特に制限はないが、マクロモノマーの製造上の観点から、前記エチレン性不飽和結合を有する官能基と、前記一般式(IV)又は(V)で表される構成単位とを連結するための反応性の官能基由来の構造を含む有機基であることが好ましい。上記反応性の官能基としては、例えば、水酸基、イソシアネート基、チオール基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基などが挙げられる。
マクロモノマーの製造方法は、特に制限はないが、例えば、リビング重合法や、連鎖移動剤を用いるラジカル重合法がよく知られている。ラジカル重合法の方が、モノマーの選択の自由度が大きい点で利用しやすい。例えば、メルカプトプロピオン酸のような、カルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下でモノマーをラジカル重合することにより、片末端にカルボキシル基を有するオリゴマーが得られる。このオリゴマーにグリシジルメタクリレートを付加すると、片末端にメタクリロイル基を有するオリゴマー、すなわち本実施形態におけるマクロモノマーが得られる。
また、このようなマクロモノマーは、適宜合成したものでもよいし、市販品であってもよい。マクロモノマーの市販品としては、例えば片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AB−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(「プラクセルFM5(商品名)」:ダイセル化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(「プラクセルFA10L(商品名)」:ダイセル化学(株)製)などが挙げられる。
その他含んでいてもよいマクロモノマーの市販品としては、例えば、片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AA−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(重量平均分子量:6000,「AS−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)などが挙げられる。
【0075】
前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、下記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位、好ましくは、さらにエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位からなる、本実施形態における(B)重合体の分子量は、該着色組成物塗膜中への相溶性及び該着色剤に含まれるカチオン染料成分の濃度を確保する観点から、重量平均分子量(Mw)が2000〜20000であることが好ましく、数平均分子量(Mn)が2000〜10000であることが好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜4.0であることが好ましい。
なお、本実施形態における(B)重合体は、前記(A)カチオン性染料と前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物とのイオン対を含むため、その分子量を直接的にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定することは困難だが、該着色組成物のモデル重合物として前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物の代わりにスチレン(関東化学(株)製)などを用いて同様の反応条件下で生成した重合物の分子量を前記GPC法を用いて測定することで、おおよその対応する該着色剤の分子量を見積もることができる。
【0076】
ここで、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物は、前記(A)カチオン性染料の対アニオンでもあることから、本実施形態における着色剤において、前記(A)カチオン性染料と、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位とは等モル量となる。したがって、前記(B)重合体において、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位に対する、該アニオン性化合物以外の化合物に由来する構成単位の割合が低い方が、着色剤中の(A)カチオン性染料の濃度が高くなるという点で好ましい。一方、(B)重合体における、該アニオン性化合物以外の化合物に由来する構成単位の割合が低すぎると、該着色剤を含有してなるカラーフィルターのNMP耐性や電気信頼性への寄与効果が低くなる。
上記観点から、前記(B)重合体において、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、これ以外の構成単位との質量比は、1/0.5〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/10であることがより好ましい。
【0077】
前記(B)重合体が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とからなる場合には、該構成単位の質量比は、前記着色剤を含有してなるカラーフィルターのNMP耐性、電気信頼性、コントラスト、及び耐熱性の観点から、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/6であることがより好ましく、1/1〜1/3であることがさらに好ましい。
前記(B)重合体における前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位の比率が高すぎると、該重合体を含有する着色剤と、着色組成物に含まれる該着色剤以外の成分との相分離を誘発しやすくなるものと考えられるが、前記一般式(II)及び(III)で表される化合物に由来する構成単位の質量比を上記範囲とすることで、着色組成物に含まれる各成分の相溶性を確保し、相分離を抑制することができるため、カラーフィルターの前記特性を向上させることができる。
【0078】
また、前記(B)重合体が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位、前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位からなる場合には、前記(B)重合体中の前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位と、エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位との質量比は、前記着色剤を含有してなるカラーフィルターのNMP耐性、電気信頼性、コントラスト、及び耐熱性の観点から、1/0.5〜1/20であることが好ましく、1/1〜1/10であることがより好ましく、1/1〜1/5であることがさらに好ましい。
【0079】
前記(B)重合体の製造方法は、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物、前記一般式(III)で表される化合物、好ましくは、さらにエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物を共重合しうる方法であれば、特に制限なく用いられる。例えば、前記一般式(II)で表される化合物の塩と、前記一般式(III)で表される化合物と、好ましくは、さらにエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物とを、反応溶媒中で熱ラジカル重合させて製造する方法が好ましい。
反応溶媒は、上記化合物及びその重合体を溶解させることができるものであれば、特に制限なく用いられる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒などが挙げられる。
【0080】
〔着色剤の製造方法〕
本実施形態における、前記(A)カチオン性染料、及び前記(B)重合体を含有する着色剤は、例えば、上記のようにして得られた前記(B)重合体の溶液に、対アニオンがCl-で示される(A)カチオン性染料を加え、塩交換を行うことにより合成することができる。
具体的には、前記(B)重合体を反応溶媒に溶解し、対アニオンがCl-で示される(A)カチオン性染料を加え、攪拌した後、生成した析出物を濾過により取り出すことにより合成できる。(A)カチオン性染料は、(B)重合体中の前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物由来の構成単位に対し等モル量になるように添加する。反応溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n―ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコール類、あるいはそれらの混合溶媒が挙げられ、反応温度としては例えば0℃から40℃が好適である。
【0081】
また、当該着色剤としては(A)一般式(I)で表されるカチオン性染料のほかに有機顔料を含んでいてもよい。ここで用い得る有機顔料としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:3、15:4、15:6、60などの青色顔料;C.I.ピグメントバイオレット1、19、23、29、32、36、38などのバイオレット色顔料などが挙げられる。中でも、C.I.ピグメントレッドバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、15:6から選ばれる少なくとも一つの顔料を含有していることが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:6を含有していることが特に好ましい。これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
前記有機顔料は、必要に応じて、ロジン処理、酸性基又は塩基性基が導入された顔料誘導体などを用いた表面処理、高分子化合物などによる顔料表面へのグラフト処理、硫酸微粒化法などによる微粒化処理、又は不純物を除去するための有機溶剤や水などによる洗浄処理、イオン性不純物のイオン交換法などによる除去処理などが施されていてもよい。
有機顔料は、粒径が均一であることが好ましい。また、顔料分散剤を含有させて分散処理を行うことで、顔料が溶液中で均一に分散した状態の顔料分散液を得ることができる。
前記の顔料分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、ポリエステル系、ポリアミン系、アクリル系などの界面活性剤などが挙げられ、単独でも2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
(バインダー樹脂)
本実施形態に使用するバインダー樹脂は、特に限定されないが、耐熱性、現像性、入手性等の観点から選ばれることが好ましい。また、アルカリ可溶性であることが好ましい。
アルカリ可溶性のバインダー樹脂としては、線状有機高分子重合体で、有機溶媒に可溶で、弱アルカリ水溶液で現像できるものが好ましい。このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマー、例えば特開昭59−44615号広報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、特開昭59−71048号公報に記載されているようなメタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等があり、また同様に側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体が有用である。この他に水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等やポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール等も有用である。
【0084】
また、上記アルカリ可溶性のバインダー樹脂は、親水性を有するモノマーを共重合したものであってもよく、この例としては、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2級および3級のアルキルアクリルアミド、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルトリアゾール、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、分岐または直鎖のプロピル(メタ)アクリレート、分岐または直鎖のブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他親水性を有するモノマーとしては、テトラヒドロフルフリル基、燐酸、燐酸エステル、4級アンモニウム塩、エチレンオキシ鎖、プロピレンオキシ鎖、スルホン酸およびその塩、モルホリノエチル基等を含んだモノマー等も有用である。
【0085】
また架橋効率を向上させるために、重合性基を側鎖に有してもよく、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有したポリマー等も有用である。これらの重合性基を含有するポリマーの例を以下に示すが、COOH基、OH基、アンモニウム基等のアルカリ可溶性基と炭素−炭素不飽和結合が含まれていればこれらに限定されない。
OH基を有する例えば2−ヒドロキシエチルアクリレートと、COOH基を含有する例えばメタクリル酸と、およびこれらと共重合可能なアクリル系若しくはビニル系化合物等のモノマーとの共重合体に、OH基と反応性を有するエポキシ環と炭素−炭素不飽和結合基を有する化合物、例えばグリシジルアクリレートのような化合物を反応させて得られる化合物等が使用できる。OH基との反応ではエポキシ環の他に酸無水物、イソシアネート基およびアクリロイル基を有する化合物も使用できる。また特開平6−102669号公報、特開平6−1938号公報に開示されるエポキシ環を有する化合物にアクリル酸のような不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物に、飽和若しくは不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる反応物も使用できる。
【0086】
COOH基のようなアルカリ可溶化基と炭素−炭素不飽和基とを併せ持つ化合物としては、例えばダイヤナールNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、Photomer6173(COOH基含有Polyurethane acrylic oligomer、Diamond Shamrock Co.Ltd.,製)、ビスコートR−264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業(株)製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)などが挙げられる。
【0087】
また、本実施形態に用いるバインダー樹脂としては、アルカリ可溶性フェノール樹脂も用いることができる。該アルカリ可溶性フェノール樹脂は、本実施形態のカラーフィルター用着色組成物をポジ型の組成物とする場合に好適に用いることができる。アルカリ可溶性フェノール樹脂としては、例えばノボラック樹脂またはビニル重合体等が挙げられる。
上記ノボラック樹脂としては、例えばフェノール類とアルデヒド類とを酸触媒の存在下に縮合させて得られるものが挙げられる。上記フェノール類としては、例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、ブチルフェノール、キシレノール、フェニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、ナフトールまたはビスフェノールA等が挙げられる。上記フェノール類は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドまたはベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記ノボラック樹脂の具体例としては、例えば、メタクレゾール、パラクレゾールまたはこれらの混合物とホルマリンとの縮合生成物が挙げられる。上記ノボラック樹脂は分別等の手段を用いて分子量分布を調節してもよい。また、ビスフェノールCやビスフェノールA等のフェノール性水酸基を有する低分子量成分を上記ノボラック樹脂に混合してもよい。
【0088】
これらの各種バインダー樹脂のなかで、本実施形態に用いるバインダー樹脂としては、耐熱性の観点から、ポリヒドロキシスチレン系樹脂;ポリシロキサン系樹脂;(メタ)アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂等のアクリル樹脂が好ましい。また、後述する基板との密着性、現像性向上の観点から、(メタ)アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂等のアクリル樹脂が好ましい。
なお、上記(メタ)アクリル系樹脂としてはベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等から選ばれるモノマーからなる共重合体、重合性側鎖を有する(メタ)アクリル系樹脂、例えば、サイクロマーPシリーズ、プラクセル CF200シリーズ(いずれもダイセル化学工業(株)製)、Ebecryl3800(ダイセルユーシービー(株)製)、ダイヤナ−ルNRシリーズ(三菱レイヨン(株)製)、ビスコートR264、KSレジスト106(いずれも大阪有機化学工業(株)製)等が好ましい。
【0089】
上記バインダー樹脂は、現像性、液粘度等の観点から、重量平均分子量(GPC法で測定されたポリスチレン換算値)が1000〜2×105の重合体が好ましく、2000〜1×105の重合体がさらに好ましく、3000〜5×104の重合体が特に好ましい。
また、バインダー樹脂の使用量は、現像性等の観点から、本実施形態のカラーフィルター用着色組成物中の全固形分に対して10〜90質量%の範囲が好ましく、20〜80質量%の範囲がさらに好ましく、30〜70質量%の範囲が特に好ましい。
【0090】
(架橋性モノマー)
本実施形態における架橋性モノマーは光重合可能であればいずれのものでも使用可能であるが、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物が好ましい。その具体例としては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの;特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報、特開昭51−37193号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート;およびこれらの混合物を挙げることができる。更に、日本接着協会誌Vol.20、No.7、300〜308頁に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものが挙げられる。
【0091】
上記架橋性モノマーとしては、(メタ)アクリルエステル系モノマーが好ましく、4官能以上の(メタ)アクリルエステル系モノマーが特に好ましい。
架橋性モノマーの組成物中における含有量は、硬化性等の観点から、全固形分に対して0.1〜90質量%の範囲が好ましく、1.0〜80質量%の範囲がさらに好ましく、2.0〜70質量%の範囲が特に好ましい。
【0092】
(光重合開始剤)
本実施形態における光重合開始剤は、上述の重合性を有するモノマーを重合させられるものであれば特に限定されないが、特性、開始効率、吸収波長、入手性、コスト等の観点で選ばれることが好ましい。
上記光重合開始剤としては、トリハロメチルトリアジン系化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン系化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン−ベンゼン−鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3−アリール置換クマリン化合物、等が挙げられ、α−アミノケトン化合物、フォスフィンオキサイド系化合物、メタロセン化合物、オキシム系化合物、トリアリールイミダゾールダイマーからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
また上記光重合開始剤としては、分解によって酸を発生しない化合物であることが好ましい。
【0093】
上記ハロメチルオキサジアゾール化合物等の活性ハロゲン化合物としては、特公昭57−6096号公報に記載の2−ハロメチル−5−ビニル−1,3,4−オキサジアゾール化合物等や、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0094】
トリハロメチル−s−トリアジン系化合物の光重合開始剤としては、特公昭59−1281号公報に記載のビニル−ハロメチル−s−トリアジン化合物、特開昭53−133428号公報に記載の2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−ハロメチル−s−トリアジン化合物および4−(p−アミノフェニル)−2,6−ジ−ハロメチル−s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0095】
また、上記α−アミノケトン系化合物としては、BASF(株)社製のイルガキュアシリーズ(イルガキュア907、イルガキュア369)、2−メチル−1−フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(ヘキシル)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−エチル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等が挙げられる。
【0096】
上記オキシム系化合物としては、特に限定されないが、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(4−メチルスルファニル−フェニル)−ブタン−1,2−ブタン−2−オキシム−O−アセタート、1−(4−メチルスルファニル−フェニル)−ブタン−1−オンオキシム−O−アセタート、ヒドロキシイミノ−(4−メチルスルファニル−フェニル)−酢酸エチルエステル−O−アセタート、ヒドロキシイミノ−(4−メチルスルファニル−フェニル)−酢酸エチルエステル−O−ベンゾアート等が挙げられる。
【0097】
これら光重合開始剤には増感剤や光安定剤を併用することができる。
その具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、9−フルオレノン、2−クロロ−9−フルオレノン、2−メチル−9−フルオレノン、9−アントロン、2−ブロモ−9−アントロン、2−エチル−9−アントロン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン、2,6−ジクロロ−9,10−アントラキノン、キサントン、2−メチルキサントン、2−メトキシキサントン、2−メトキシキサントン、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アクリドン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、ベンジル、ジベンザルアセトン、p−(ジメチルアミノ)フェニルスチリルケトン、p−(ジメチルアミノ)フェニル−p−メチルスチリルケトン、ベンゾフェノン、p−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(またはミヒラーケトン)、p−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンゾアントロン等や、特公昭51−48516号公報記載のベンゾチアゾール系化合物等や、チヌビン1130、同400等が挙げられる。
【0098】
本実施形態のカラーフィルター用着色組成物には、以上の光重合開始剤の他に、他の公知の光重合開始剤を使用することができる。
具体的には、米国特許第2,367,660号明細書に開示されているビシナールポリケトルアルドニル化合物、米国特許第2,367,661号明細書および同第2,367,670号明細書に開示されているα−カルボニル化合物、米国特許第2,448,828号明細書に開示されているアシロインエーテル、米国特許第2,722,512号明細書に開示されているα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3,046,127号明細書および第2,951,758号明細書に開示されている多核キノン化合物、米国特許第3,549,367号明細書に開示されているトリアリールイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組合せ、特公昭51−48516号公報に開示されているベンゾチアゾール系化合物/トリハロメチル−s−トリアジン系化合物等を挙げることができる。
【0099】
光重合開始剤の使用量は、架橋性モノマー固形分に対し、0.01質量%〜50質量%の範囲が好ましく、1質量%〜30質量%の範囲がより好ましく、1質量%〜20質量%の範囲が特に好ましい。光重合開始剤の使用量が0.01質量%〜50質量%の範囲内にあると、分子量が低くなりすぎて膜強度が弱くなるのを防止することができる。
【0100】
(溶媒)
本実施形態で用いられる溶媒は、組成物の溶解性、塗布性を満足すれば基本的に特に限定されないが、特に染料、バインダー樹脂の溶解性、塗布性、安全性を考慮して選ばれることが好ましい。
好適な溶媒としては、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等の3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル);
【0101】
2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等の2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル);ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等;
【0102】
エーテル類、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート等;ケトン類、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等;芳香族炭化水素類、例えばトルエン、キシレン等が好ましい。
【0103】
これらのうち、本実施形態に用いられる溶媒としては、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等がより好ましい。
【0104】
本実施形態のカラーフィルター用着色組成物には、必要に応じて各種添加物、例えば充填剤、上記以外の高分子化合物、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することかできる。
これらの添加物の具体例としては、ガラス、アルミナ等の充填剤;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフロロアルキルアクリレート等の結着樹脂以外の高分子化合物;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の界面活性剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の密着促進剤;2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール等の酸化防止剤:2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、アルコキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;およびポリアクリル酸ナトリウム等の凝集防止剤を挙げることができる。
【0105】
また、現像除去をしようとする領域のアルカリ溶解性を促進し、現像性の更なる向上を図る場合には、本実施形態のカラーフィルター用着色組成物に有機カルボン酸、好ましくは分子量1000以下の低分子量有機カルボン酸の添加を行うことができる。具体的には、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、ジエチル酢酸、エナント酸、カプリル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、ジメチルマロン酸、メチルコハク酸、テトラメチルコハク酸、シトラコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;トリカルバリル酸、アコニット酸、カンホロン酸等の脂肪族トリカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、クミン酸、ヘメリト酸、メシチレン酸等の芳香族モノカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、トリメシン酸、メロファン酸、ピロメリト酸等の芳香族ポリカルボン酸;フェニル酢酸、ヒドロアトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、マンデル酸、フェニルコハク酸、アトロパ酸、ケイ皮酸、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸ベンジル、シンナミリデン酢酸、クマル酸、ウンベル酸等のその他のカルボン酸が挙げられる。
【0106】
<カラーフィルター及び液晶表示装置>
本実施形態のカラーフィルターは、基板上に少なくとも着色層を備えてなり、該着色層が前記本実施形態のカラーフィルター用着色組成物を用いて形成したものである。
本実施形態のカラーフィルターは、前記カラーフィルター用着色組成物を基板上に回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布方法により塗布して着色層を形成し、所定のマスクパターンを介して露光し、現像液で現像することによって、ネガ型もしくはポジ型の着色されたパターンを形成することで製造することができる。また、前記カラーフィルターの製造方法には、必要により上記レジストパターンを加熱および/または露光により硬化する工程を含まれていてもよい。
この際に使用される放射線としては、特にg線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられる。
【0107】
上記基板としては、例えば液晶表示素子等に用いられるソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスおよびこれらに透明導電膜を付着させたものや、撮像素子等に用いられる光電変換素子基板、例えばシリコン基板等や、相補性金属酸化膜半導体(CMOS)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を光学的に隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの基板上に必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止あるいは基板表面の平坦化の為に、下塗り層を設けてもよい。
【0108】
上記本実施形態のカラーフィルターの製造に用いる現像液としては、本実施形態のカラーフィルター用着色組成物を溶解し、一方、放射線照射部を溶解しない組成物であればいかなるものも用いることができる。具体的には種々の有機溶媒の組み合わせやアルカリ性の水溶液を用いることができる。
上記有機溶媒としては、本実施形態の組成物を調製する際に使用される前述の溶媒が挙げられる。
【0109】
アルカリ性の水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム,硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−〔5.4.0〕−7−ウンデセン等のアルカリ性化合物を、濃度が0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜1質量%となるように溶解したアルカリ性水溶液が使用される。なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に、現像後、水で洗浄する。
【0110】
前記本実施形態のカラーフィルターは、有機または無機EL素子、液晶表示素子やCCD等の固体撮像素子に用いることができ、本実施形態の表示装置は、このカラーフィルターを備えたものである。
例えば、図1に示すように、本発明の液晶表示装置40は、得られたカラーフィルター10(表示側基板)と、TFTアレイ基板(液晶駆動側基板)を有する対向基板20を対向させ、両基板の内面側周縁部をシール剤により接合すると、両基板は所定距離のセルギャップを保持した状態で貼り合わされる。そして、基板間の間隙部に液晶を満たして密封し、液晶層30とすることにより、液晶パネルに属するアクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置が得られる。なお、ここで、本発明のカラーフィルター10は透明基板1、遮光部2、及び着色層3を有する。
また、有機EL素子の場合は例えば、発光層に本発明のカラーフィルターを積層して用いることができる。
【0111】
(保護層)
前記本実施形態のカラーフィルターは、カラーフィルターを保護することを目的に、着色層を覆うように透明樹脂層を形成することができる(以下、「保護層」と称する)。当該保護層は、公知のネガ型の光硬化性透明樹脂組成物又は熱硬化性透明樹脂組成物を用いることができ、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂から形成されるものであることが、透明度及び強度の点から好ましい。
このような保護層を設けることにより、NMP耐性や電気信頼性の課題は克服できるが、本発明のカラーフィルター用着色組成物は、保護層を設けるまでもなく、NMP耐性及び電気信頼性に優れるため、カラーフィルター用着色組成物として好適である。また、保護層を設けたとしても、該着色剤を用いたカラーフィルター用着色組成物として好適な性能は低下するものではない。
【実施例】
【0112】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0113】
[合成例1]
((p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩の合成)
p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩5g(24.3mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)1mLをn−ヘプタン50mLに添加し、塩化チオニル4.51g(37.9mmol)を室温下で滴下した。滴下終了後、内温を70〜75℃に制御して2時間反応させた。n−ヘプタン層を分液し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液、ついで水にて有機層を洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水、濃縮し、p−ビニルベンゼンスルホニルクロライドを得た。収量は1.83g(収率:37%)であった。
次いで、東京化成工業(株)製トリフルオロメタンスルホンアミド1.34g(9.00mmol)を塩化メチレン25mL中に溶解し、内温を5℃以下に冷却した。内温が10℃を超えないように和光純薬工業(株)製トリエチルアミン1.82g(18.0mmol)を滴下し、滴下終了後、10℃以下で、合成したp−ビニルベンゼンスルホニルクロライド1.83g(9.0mmol)を添加した。5℃以下で1時間攪拌した後、室温下で5時間さらに攪拌し、該反応液に水100mLを加え抽出した。分液した有機層を水洗し、硫酸ナトリウムで脱水し、有機層をエバポレーターで減圧濃縮して、下記構造式(5)で示される(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.95g(収率90%)を得た。
上記(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩について、下記の分析結果より、目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):102(+)、314(−)
・元素分析値:CHN実測値(42.93%、5.42%、6.94%);理論値(43.26%、5.57%、6.73%)
【0114】
【化18】

【0115】
[合成例2]
(重合体1の合成)
冷却管を付した反応容器にシクロヘキサノン10gを加え、合成例1で得られた(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.73g(7.5mmol)と関東化学(株)製グリシジルメタクリレート(製品名;メタクリル酸グリシジル)3.2g(22.5mmol)を溶解させた。このものに2−メルカプトエタノール47mg(0.6mmol)を加えた後、100℃に加熱し攪拌した。攪拌しながら、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル49mg(0.3mmol)をシクロヘキサノン5.2gに溶解させた溶液を30分間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌した。反応液中における、シクロヘキサノン以外の成分の重量濃度は28質量%、2−メルカプトエタノールおよびα,α’−アゾビスイソブチロニトリルのモル量はシクロヘキサノン以外の成分に対してそれぞれ2モル%、1モル%であった。
室温に冷却した後、アセトン30gを加えて均一な溶液とし、このものをヘキサン2Lに滴下し生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。該析出物を減圧乾燥して、下記構造式(6)で示される重合体1(5.2g、質量収率91%)を得た。
重合体1は、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(6)におけるpとqの割合が1:3.1であることがわかった。
得られた重合体1の分子量は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体1の重量平均分子量(Mw)は9056、数平均分子量(Mn)は3904、分子量分布(Mw/Mn)は2.319であった。
【0116】
【化19】

【0117】
(着色剤Aの合成)
上記のようにして製造した重合体1 0.8gをアセトン20mLに溶解し、下記構造式(7)で示されるカチオン性染料である、東京化成工業(株)製Basic Blue 7(CI−42595)を、重合体1の共重合比から算出される、上記構造式(5)で示される化合物由来の構成単位のモル数に対する等モル量を攪拌しながら加え、さらに室温で1時間攪拌した。
エバポレーターで溶液中のアセトンを濃縮し、水100mLを加え析出物を濾取し、水で洗浄した。該析出物を減圧乾燥して、下記構造式(8)で示される着色剤A 1.2g(収率67%)を得た。着色剤Aは、1H NMR解析より、目的の化合物であることを確認し、下記構造式(8)におけるpとqの割合が1:2.9であることがわかった。
【0118】
【化20】

【0119】
【化21】

【0120】
[合成例3]
(重合体2の合成)
重合体1の合成におけるグリシジルメタクリレートの量を10.7g(75mmol)とした以外は、合成例2と同様にして、上記構造式(6)で示される重合体2を得た。
重合体2は、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、前記構造式(6)におけるpとqの割合が1:10.5であることがわかった。
得られた重合体2の分子量は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体2の重量平均分子量(Mw)は9570、数平均分子量(Mn)は4122、分子量分布(Mw/Mn)は2.322であった。
【0121】
(着色剤Bの合成)
着色剤Aの合成における重合体1を重合体2とした以外は、合成例2と同様にして、前記構造式(8)で示される着色剤Bを収率74%で得た。着色剤Bは、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、前記構造式(8)におけるpとqの割合が1:11であることがわかった。
【0122】
[合成例4]
(重合体3の合成)
重合体1の合成におけるグリシジルメタクリレートの使用量を5.4g(38mmol)とし、さらに関東化学(株)製メチルメタクリレート5.7g(57mmol)を加えた以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(9)で示される重合体3を得た。
重合体3について、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(9)におけるpとqとrの割合が1:5.1:7.5であることがわかった。
得られた重合体3の分子量は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体3の重量平均分子量(Mw)は8600、数平均分子量(Mn)は3567、分子量分布(Mw/Mn)は2.412であった。
【0123】
【化22】

【0124】
(着色剤Cの合成)
着色剤Aの合成における重合体1を重合体3とした以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(10)で示される着色剤Cを収率74%で得た。
下記構造式(10)で示される着色剤Cは、1H NMR解析より、目的の化合物であることを確認し、下記構造式(10)におけるpとqとrの割合が1:5.5:7.3であることがわかった。
【0125】
【化23】

【0126】
[合成例5]
(マクロモノマーaの合成)
冷却管を付した反応容器にシクロヘキサノン80gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メチルメタクリレート100g、2−メルカプトエタノール4g、シクロヘキサノン30g、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1gの混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応させた。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、昭和電工(株)製のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名;カレンズMOI)8.74g、オクチル酸スズ0.125g、p−メトキシフェノール0.125g、及びシクロヘキサノン20gを加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーaの47.4%溶液を得た。
得られたマクロモノマーaの分子量を、GPC測定にて、N−メチルピロリドン、0.01モル/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、重量平均分子量(Mw)は3539、数平均分子量(Mn)は1573、分子量分布(Mw/Mn)は2.24であった。
【0127】
(重合体4の合成)
冷却管を付した反応容器にシクロヘキサノン12.5gを仕込み、マクロモノマーa溶液13.3g(有効固形分6.3g)、グリシジルメタクリレート3.56g(25mmol)、合成例1で得られた(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.0g(5.0mmol)、2−メルカプトエタノール129mg(1.65mmol)を加えた。この混合物を、攪拌しながら、100℃まで昇温し、シクロヘキサノン12.5g、マクロモノマーa溶液13.3g(有効固形分6.3g)、グリシジルメタクリレート3.56g(25mmol)、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.0g(5.0mmol)、2−メルカプトエタノール129mg(1.65mmol)、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル272mg(1.63mmol)の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル30mg(0.16mmol)、シクロヘキサノン3gの混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成させた。
室温に冷却した後、アセトン30gを加えて均一な溶液とし、このものをヘキサン2Lに滴下し生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。該析出物を減圧乾燥して、下記構造式(11)で示される重合体4(20.4g、質量収率88%)を得た。
重合体4は、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(11)におけるpとqとrの割合が1:4.0:0.8であることがわかった。
得られた重合体4の分子量は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体4の重量平均分子量(Mw)は9521、数平均分子量(Mn)は4374、分子量分布(Mw/Mn)は2.177であった。
【0128】
【化24】

【0129】
(着色剤Dの合成)
着色剤Aの合成における重合体1を重合体4とした以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(12)で示される着色剤Dを収率78%で得た。下記構造式(12)で示される着色剤Dは、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(12)におけるpとqとrの割合が1:4.0:0.6であることがわかった。
【0130】
【化25】

【0131】
[合成例6]
(着色剤Eの合成)
前記構造式(7)で示される東京化成工業(株)製Basic Blue 7(CI−42595)1.85g(3.60mmol)をメタノール30mLに溶解し、合成例1で製造した、前記構造式(5)で示される(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩を攪拌しながら、1.31g(3.60mmol)を加え、さらに室温で1時間攪拌した。エバポレーターで溶液中のメタノールを濃縮し、水100mLを加え析出物を濾取し、水で洗浄した。該析出物を減圧乾燥して、下記構造式(13)で示される着色剤E 2.33g(収率82%)を得た。下記構造式(13)で示される着色剤Eは、下記の分析結果より目的の化合物であることを確認した。
・MS(ESI)(m/z):478(+)、314(−)
・元素分析値:CHN実測値(63.78%、6.09%、7.11%);理論値(63.62%、5.97%、7.07%)
【0132】
【化26】

【0133】
[合成例7]
(重合体5の合成)
合成例1で得られた(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩2.2g(5.5mmol)をシクロヘキサノン5gに溶解させた。このものに2−メルカプトエタノール8.5mg(0.11mmol)を加えた後、100℃に加熱し攪拌した。攪拌しながらα,α’−アゾビスイソブチロニトリル9.0mg(0.055mmol)をシクロヘキサノン3gに溶解させた溶液を20分間かけて滴下し、さらに3時間加熱攪拌した。
室温に冷却した後、アセトン8gを加えて均一な溶液とし、このものをヘキサン1Lに滴下し生成した析出物を濾取し、ヘキサンで洗浄した。該析出物を減圧乾燥して、下記構造式(14)で示される重合体5(1.8g、質量収率82%)を得た。
下記構造式(14)で示される重合体5は、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認した。
得られた重合体5は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体5の重量平均分子量(Mw)は3023、数平均分子量(Mn)は1500、分子量分布(Mw/Mn)は2.015であった。
【0134】
【化27】

【0135】
(着色剤Fの合成)
着色剤Aの合成における重合体1を重合体5とした以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(15)で示される着色剤Fを収率84%で得た。下記構造式(15)で示される着色剤Fは、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認できた。
【0136】
【化28】

【0137】
[合成例8]
(重合体6の合成)
重合体1の合成におけるグリシジルメタクリレートをメチルメタクリレートとしたこと以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(16)で示される重合体6を得た。重合体6は、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(16)におけるpとrの割合が1:2.0であることがわかった。
得られた重合体6は、(p−ビニルフェニル)トリフルオロメタンスルホニルイミド酸トリエチルアミン塩をスチレンに置き換え、同様の反応条件により得られたモデルポリマーのGPC測定結果との比較から求めた。該GPC測定の結果、重合体6の重量平均分子量(Mw)は7659、数平均分子量(Mn)は3267、分子量分布(Mw/Mn)は2.344であった。
【0138】
【化29】

【0139】
(着色剤Gの合成)
着色剤Aの合成における重合物1を重合物6とした以外は、合成例2と同様にして、下記構造式(17)で示される着色剤Gを収率74%で得た。下記構造式(17)で示される着色剤Gは、1H NMR解析より目的の化合物であることを確認し、下記構造式(17)におけるpとrの割合が1:1.6であることがわかった。
【0140】
【化30】

【0141】
[調製例1]
(感光性透明樹脂組成物1の調製)
以下の組成からなる、不揮発成分40質量%の感光性透明樹脂組成物1を調製した。
・アクリル酸樹脂のPGMEA溶液(有効成分42質量%、樹脂:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=62/38(質量比)、酸価:70mgKOH/g、重量平均分子量:9000、PGMEA=プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート):21質量部
・多官能アクリレートモノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(商品名;アロニックスM403、東亞合成(株)製)):4.8質量部
・光重合開始剤(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名;イルガキュア907、BASF(株)社製)):2質量部
・光増感剤(4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン):0.25質量部
【0142】
[実施例1]
(カラーフィルター用着色組成物1の調製)
以下の各成分を混合、攪拌して、不揮発成分が20質量%のカラーフィルター用着色組成物1を調製した。
・10質量%の着色剤Aのシクロヘキサノン溶液:15質量部
・感光性透明樹脂組成物1:10質量部
・フッ素系添加剤(商品名;メガファックR−08MH、DIC(株)製):0.02質量部
【0143】
(評価1;NMP耐性、耐熱性、コントラストの評価)
上記カラーフィルター用着色組成物1を塗液として、これをスピンコート法によりガラス基板上に塗布し、80℃で乾燥させ、塗膜側から高圧水銀灯にて紫外光を100mJ/m2露光し、硬化させることより評価用の塗膜を作製した。この塗膜を用いて、以下の方法により、NMP耐性及び耐熱性、コントラストの評価を行った。
【0144】
−NMP耐性−
NMP耐性評価用のサンプルとして、高圧水銀灯により露光硬化した後に230℃30分の加熱をして十分に硬化させた塗膜を用いて、NMP耐性を評価した。
NMP耐性は、ガラス基板上の上記塗膜表面にNMPを1滴滴下し、5分静置した後ワイプ(商品名;ベンコットリントフリーAZ−8、ガードナー社製)でNMPを拭い、NMP滴下前後での塗膜の分光、すなわちΔEab値を、オリンパス(株)製顕微分光装置「OSP−SP200」を用いて測定し、色差を算出することで評価した。色差が小さいほどNMPによる溶出が少なく、NMP耐性が高いことを示す。
【0145】
−耐熱性−
塗膜を作製したガラス基板を、該基板面が接するようにホットプレート上に載置し、80℃で3分間放置後、高圧水銀灯により100mJ/m2露光した。次に、該ガラス基板を200℃で30分間放置した。処理前後の色差(ΔEab値)を上記と同様にして算出した。なお、ΔEab値は小さい方が耐熱性に優れることを示す。
【0146】
−コントラスト評価−
前記耐熱性の評価の項と同様にして200℃で30分間放置し、作製したガラス基板のコントラスト値を、壺坂電気(株)製コントラスト測定装置「CT−1B」を用いて測定した。得られたコントラスト値が大きいほど光の散乱度合いが少なく、液晶表示装置のカラーフィルターとして使用した場合の漏れ光が少なくなり、液晶パネルの明暗をはっきりさせることができる。
コントラスト値を大きくするためには、塗膜が均一であることが求められる。結晶の析出や相分離などが生じた不均一な塗膜ではコントラスト値が小さくなる。
【0147】
(評価2;電気信頼性の評価)
−電圧保持率の測定−
層構成として、ガラス基板/ITO(酸化インジウムスズ)電極/上記着色樹脂組成物からなる塗膜/液晶/ITO電極からなる測定用セルを準備し、下記の条件で電圧保持率測定システム(VHR−1A型、(株)東陽テクニカ製)を用いて電圧保持率を測定した。
<条件>
ITO電極間距離 :5μm
印加電圧パルス振幅 :5V
印加電圧パルス周波数:60Hz
印加電圧パルス幅 :16.67msec
この評価で、電圧保持率が80%以上であると電気信頼性が高いと評価できる。
なお、上記電気信頼性の評価に用いられるカラーフィルター用着色組成物からなる塗膜は、具体的には下記方法で作製した。
【0148】
<塗膜の作製方法>
上記カラーフィルター用着色組成物を、ガラス基板のITO電極側にスピンコーターで塗布し、プリベークを行って膜厚2.0〜2.4μmの塗膜を形成した。次いで、塗膜に365nm、405nm及び436nmの各波長を含む紫外線を、60mJ/cm2の露光量で所定のパターン状に照射した。その後、0.04質量%水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、純水で1分間洗浄して乾燥し、基板のポストベークを行って上記カラーフィルター用着色組成物からなる塗膜を作製した。
【0149】
[実施例2]
カラーフィルター用着色組成物1における着色剤Aを着色剤Bとし、その配合量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルター用着色組成物2を調製した。
・10質量%の着色剤Bのシクロヘキサノン溶液:20質量部
・感光性透明樹脂組成物1:10質量部
・フッ素系添加剤(商品名;メガファックR−08MH、DIC(株)製):0.02質量部
調製したカラーフィルター用着色組成物2を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0150】
[実施例3]
カラーフィルター用着色組成物2における着色剤Bを着色剤Cとした以外は、実施例2と同様にしてカラーフィルター用着色組成物3を調製した。
調製したカラーフィルター用着色組成物3を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0151】
[実施例4]
カラーフィルター用着色組成物2における着色剤Bを着色剤Dとした以外は、実施例2と同様にしてカラーフィルター用着色組成物4を調製した。
調製したカラーフィルター用着色組成物4を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
[実施例5]
以下の各成分を混合、攪拌して、不揮発成分が20質量%のカラーフィルター用着色組成物5を調製した。
・10質量%の着色剤DのPGMEA溶液:12質量部
・10質量%分散顔料液:8質量部
・感光性透明樹脂組成物1:10質量部
・フッ素系添加剤(商品名;メガファックR−08MH、DIC(株)製):0.0 2質量部
・PGMEA
また、上記分散顔料液は、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:6を22質量部、分散剤としてDisperbyk−2001(ビックケミー社製)を18質量部(固形分換算)、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)60質量部を、ビーズミルにより処理して調製した後に、上記質量%になるようにPGMEAを混合したものを用いた。
調製したカラーフィルター用着色組成物5を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0153】
[比較例1]
カラーフィルター用着色組成物1における着色剤Aを着色剤Eとし、その配合量を以下のようにした以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルター用着色組成物6を調製した。
・10質量%の着色剤Eのシクロヘキサノン溶液:10質量部
・感光性透明樹脂組成物1:20質量部
・フッ素系添加剤(商品名;メガファックR−08MH、DIC(株)製):0.02質量部
調製したカラーフィルター用着色組成物6を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0154】
[比較例2]
カラーフィルター用着色組成物6における着色剤Eを着色剤Fとした以外は、比較例1と同様にしてカラーフィルター用着色組成物7を調製した。
調製したカラーフィルター用着色組成物7を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0155】
[比較例3]
カラーフィルター用着色組成物1における着色剤Aを着色剤Gとした以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルター用着色組成物8を調製した。
調製したカラーフィルター用着色組成物8を用いて、実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表1の結果に示すように、実施例1〜5のカラーフィルター用着色組成物は、(A)前記一般式(I)で表されるカチオン性染料と、(B)前記一般式(II)及び(III)で表される化合物に由来する構成単位を含む重合体を含有する着色剤A〜Dを用いているため、比較例1〜3と比べていずれもNMP耐性及び電気信頼性に優れることがわかる。
また、前記(B)成分の構成単位として、前記一般式(II)及び(III)で表される化合物由来の構成単位の他に、エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物であるメチルメタクリレート又はマクロモノマー由来の構成単位を含む実施例3〜5では、該構成単位を含まない実施例1及び2と比較して、より高いコントラストが得られ、かつ耐熱性に優れることがわかる。特に、上記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物としてマクロモノマーを用いた実施例4及び5では、上記効果が顕著に見られる。
【0158】
一方、(A)カチオン性染料と、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物とからなる着色剤を用いた比較例1では、コントラスト及び耐熱性は良好であるものの、NMP耐性及び電気信頼性が低く、比較例2に示すように、比較例1の上記アニオン性化合物を重合体としても、上記特性の改善は見られない。
比較例3は、前記(B)重合体が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、メチルメタクリレート由来の構成単位からなるものであるが、該重合体が前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位を含まないため、実施例1〜5に比べてNMP耐性及び電気信頼性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のカラーフィルター用着色組成物を用いて着色層を形成すると、電気化学的、熱的に安定なだけでなく、有機溶媒や樹脂への良好な溶解性をも両立でき、現像溶解性に優れるとともに、NMPに対する耐性と電気信頼性の高いカラーフィルターが得られる。
このため、本発明のカラーフィルターは、有機または無機EL素子、液晶表示素子やCCD等のカラーフィルターに適している。
【符号の説明】
【0160】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルター
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、架橋性モノマー、光重合開始剤、着色剤及び溶媒を含み、前記着色剤が、(A)下記一般式(I)で表されるカチオン性染料、及び(B)下記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位と、下記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位とを含む重合体を含有する、カラーフィルター用着色組成物。
【化1】

[式(I)中、R1〜R6は、各々独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R1とR2、R3とR4、及びR5とR6は、各々結合して環構造あるいは複素環構造の一部を形成していてもよい。]
【化2】

[式(II)中、R7は、水素原子又はメチル基を示す。Xは水素原子の少なくとも一部がフッ素原子に置換されていてもよいアルキル基を示し、Yは二価の有機基を示す。]
【化3】

[式(III)中、R8は、水素原子又はメチル基を示す。Aは二価の有機基を示す。]
【請求項2】
前記(B)成分が、前記一般式(II)で表されるアニオン性化合物に由来する構成単位、前記一般式(III)で表される化合物に由来する構成単位、及びエチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物に由来する構成単位からなる重合体である、請求項1に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和結合を有する官能基を含む化合物の少なくとも1種が、マクロモノマーである、請求項2に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項4】
前記マクロモノマーが、下記一般式(IV)及び/又は(V)で表される構成単位を含む、請求項3に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【化4】

[式(IV)中、R9は、水素原子又はメチル基を示し、R10は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、−[CO−(CH2b−O]c−R13、−CO−O−R14又は−O−CO−R15で示される1価の基である。
11及びR12は、各々独立に水素原子又はメチル基を示す。
13は、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CH2CHO又は−CH2COOR16で示される1価の基であり、R16は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
14は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R11)−CH(R12)−O]a−R13、−[(CH2b−O]c−R13、又は−[CO−(CH2b−O]c−R13で示される1価の基である。
15は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。
10に含まれるアルキル基、アラルキル基、又はアリール基は、置換基を有していてもよい。
kは5〜200の整数を示す。aは1〜18の整数、bは1〜5の整数、cは1〜18の整数を示す。]
【化5】

[式(V)中、mは1〜5の整数、nは5〜200の整数を示す。]
【請求項5】
前記マクロモノマーが、エチレン性不飽和結合を有する官能基と、前記一般式(IV)又は(V)で表される構成単位とが二価の有機基を介して連結された構造を有する、請求項4に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項6】
前記エチレン性不飽和結合を有する官能基が、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、又はアリル基である、請求項2〜5のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項7】
前記一般式(II)におけるXがパーフルオロアルキル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項8】
前記一般式(I)におけるR5が水素原子であり、R1、R2、R3、R4、及びR6が炭素数1〜20のアルキル基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項9】
さらに顔料を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色組成物。
【請求項10】
基板上に少なくとも着色層を備えてなり、該着色層が請求項1〜9のいずれか1項に記載のカラーフィルター用着色組成物を用いて形成したものであるカラーフィルター。
【請求項11】
請求項10に記載のカラーフィルターと、対向基板と、前記カラーフィルターと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有する液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−194466(P2012−194466A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59595(P2011−59595)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】