説明

カラーフィルター用顔料分散体の製造方法

【課題】低粘度で保存安定性に優れ、かつ、粗大顔料粒子が極力存在しないようにするためのカラーフィルター用顔料分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の第1工程及び第2工程を有する、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法である。
第1工程:少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程、
第2工程:第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は主としてパーソナルコンピュータ用のモニターとして使用されてきたが、近年になって、パーソナルコンピュータ用のモニターとしてだけでなくテレビ用のモニターへの展開も急速に行われるようになってきており、その発色にはカラーフィルターが用いられている。現在、カラーフィルターの着色層は、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤とする顔料分散法と呼ばれる方法で製造することが主流となっている。一般に、顔料を微細で安定な粒子として分散させることができれば、可視光に対する散乱が少なくなる。
顔料の分散方法としては、メディアミル分散機を用いて、撹拌・混合によるせん断力・摩擦力、メディア同士の衝撃力等により、粒子を解砕・粉砕する方法が知られている。
しかし、顔料を微細化すればするほど、分散した粒子が再凝集し易く、それに起因する粒子径の増大や粘度の増大が起こり、分散状態を安定化させることが困難となる。
【0003】
これまで、カラーフィルターの高品質化(高輝度化、高コントラスト化等)を実現させるため、顔料や顔料分散剤を最適化することや、着色層中に含まれる顔料を微細化すること等が検討されてきた。
特許文献1には、顔料及びバインダーを含有する混合物を、特定の回転速度比とロール間隙を有する二本ロールミルにより練肉してシート状物とする工程を複数回行った後、粉砕するカラーチップの製造方法が開示されている。
特許文献2には、各種酸化物、有機結合剤、及び分散剤をミキサーやロール等の分散混練装置で混練して高粘度のスラリーとし、複数のロール間を通過して一定厚みのセラミック電子デバイス用セラミックグリーンシートを連続的に製造する方法が開示されている。
特許文献3には、緑色顔料、黄色顔料、色素誘導体及び透明樹脂を含有する混合物を、ロールミルにより練肉してシート状物とする工程を複数回行い、粉砕することで得られる緑色共チップを有機溶剤に溶解してなるカラーフィルター用緑色着色組成物が開示されている。しかしながら、これらの方法はロールミル処理を行う際のロール間の間隙、即ち組成物の厚み(膜厚)が0.5〜3mmとかなり大きく、近年のカラーフィルター顔料分散体に求められる品質、特にコントラスト比を向上できるほど顔料を微細化できない。
また特許文献4には、アントラキノン化合物、カチオン性高分子分散剤、及び有機溶媒をロールミルで混練した後、ビーズミルで分散調製して得られた赤色顔料分散体組成物を感光性樹脂組成物に配合してなる赤色カラーレジストインキが開示されている。しかしながら、ビーズミル分散に実際に用いられているビーズ径は0.3mmφと大きいため、近年のカラーフィルター顔料分散体に求められる品質、特にコントラスト比を向上できるほど顔料を微細化できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−119559号公報
【特許文献2】特開2000−232035号公報
【特許文献3】特開2007−206483号公報
【特許文献4】特開平10−338832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、低粘度で保存安定性に優れ、かつ、粗大顔料粒子が極力存在しないようにするためのカラーフィルター用顔料分散体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法において、顔料を特定条件でロールミル処理して薄膜にした後、小粒径のメディア粒子を充填したメディア式分散機で処理するという2段階分散処理により、顔料を段階的に小粒化することにより上記課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、下記の第1工程及び第2工程を有する、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法を提供する。
第1工程:少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程、
第2工程:第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低粘度で保存安定性に優れ、かつ、粗大粒子が極力存在しないカラーフィルター用顔料分散体を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、下記の第1工程及び第2工程を有することを特徴とする。
第1工程:少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程、
第2工程:第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程
以下、本発明で用いる各成分、及び各工程について説明する。
【0009】
<顔料>
本発明に用いられる顔料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用できる。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
色相は特に限定されるものではなく、赤色、黄色、青色、オレンジ、緑色、バイオレット等の有彩色顔料や白色顔料を用いることができる。
無機顔料としては、例えばカーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属塩化物等が挙げられる。無機黒色顔料としてはカーボンブラックが好ましく、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0010】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
赤系有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、ジアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、アゾレーキ顔料、キナクリドン顔料、ペリレン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロロピロール系顔料等が挙げられる。
より具体的には、Colour Index(The Society of Dyersand Colourists 出版、1997年版)でピグメント(Pigment)に分類されている化合物等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表される、C.I.ピグメント レッド254、同255等のジケトピロロピロール系顔料が特に好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Irgaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)で表されるジケトピロロピロール系顔料の製造方法に特に制限はない。例えば、ベンゾニトリル又はハロゲン化ベンゾニトリルとブロモ酢酸エステル等のハロゲン化酢酸エステルを、亜鉛粉末等の還元剤の存在下で反応させることにより、又は得られた化合物を更にスルホン化することにより製造することができる。
上記の顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、顔料表面に対して有機溶媒との親和性を高め、分散安定性を高めるという観点から、樹脂や高分子、顔料誘導体等により予め表面処理を施した顔料を用いてもよく、顔料組成物中に含有させて分散処理を行ってもよい。
【0014】
<水不溶性分散剤>
本発明で用いられる水不溶性分散剤は、顔料を有機溶媒中で安定に微細化した状態で分散させうるものであればよく、公知の高分子分散剤を使用することができる。水不溶性分散剤は、カラーフィルター等を形成する場合はバインダーとしての働きも有すると考えられる。
ここで、水不溶性分散剤とは、分散剤を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である分散剤をいう。溶解量は、分散剤が塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、分散剤の塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性分散剤としては、例えば、特開平3−277673号公報、特開平10−339949号公報、特表2003−517063号公報等に記載の主鎖にアミド系骨格を有し、側鎖がメタクリル酸エステルによるマクロモノマーからなるグラフトポリマー;特公平7−96654号公報、特開平7−207178号公報等に記載の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を有するポリエステル系オリゴマー;オルガノシロキサンポリマー(信越化学工業株式会社製、KP341、KP575等);(メタ)アクリル酸系(共)重合体(共栄油脂化学工業株式会社製、ポリフローNo.75、90、95等);その他市販品として、日本ルーブリゾール社製のソルスパース3000、5000、9000、12000、13240、13940、17000、20000、24000、26000、28000等の各種ソルスパース分散剤、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB−821、822、880、881等の各種アジスパー分散剤、三洋化成株式会社製のイソーネットS−20、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperbyk−161、162、2001、2163、2164等各種Disperbyk分散剤等が挙げられる。
上記の分散剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
特に、少なくとも顔料に吸着性を有するモノマーを含む構成単位と、有機溶媒に親和性を有するモノマーを含む構成単位からなるグラフトポリマーが、分散安定性を向上する観点から好ましい。これらは顔料や有機溶媒種により適宜選択して用いることができる。
例えば、顔料としてジケトピロロピロール系顔料、有機溶媒をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)とした場合、主鎖にアミド基を有し、側鎖がマクロモノマーからなるグラフトポリマーが好ましく、より具体的には、主鎖にアミド基を有するモノマー由来の構成単位を有し、側鎖にメタクリル酸エステルのマクロマー由来の構成単位を有するグラフトポリマー(x)や、主鎖にメタクリル酸エステルマクロマー由来の構成単位を有し、側鎖にポリオキサゾリン由来の構成単位を有するグラフトポリマー(y)等が好ましい。
これらの中では、前記のグラフトポリマー(x)がより好ましい。
【0016】
〔グラフトポリマー(x)〕
グラフトポリマー(x)は、下記の主鎖と側鎖とを有するものが特に好ましい。
主鎖:N−ビニル−2−ピロリドン由来の構成単位(a)と、水酸基含有モノマー由来の構成単位(b)とを含有し、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(a)の含有量が2〜30重量%、該構成単位(b)の含有量が5〜30重量%である。
側鎖:数平均分子量が800〜4,000であるアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー由来の構成単位(c)を含有し、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(c)の含有量が65〜92重量%である。
グラフトポリマー(x)中の構成単位(a)、(b)及び(c)の含有量は、グラフトポリマー(x)を製造する際の構成単位(a)、(b)及び(c)それぞれに相当するモノマーの仕込み量に相当する。
【0017】
グラフトポリマー(x)の主鎖が、N−ビニル−2−ピロリドン由来の構成単位(a)を含有することにより、顔料の分散性に優れたものになると考えられる。その観点から、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(a)の含有量は2〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。該構成単位(a)の含有量が2重量%以上であれば、顔料に十分に吸着することができ、顔料の分散性の向上に寄与することができ、構成単位(b)と(c)とのバランスの観点から、その上限が30重量%以下であれば本発明の効果を有効に発現できる。
【0018】
グラフトポリマー(x)の主鎖に含有される構成単位(b)を形成する水酸基含有モノマーとしては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
CH2=C(R4)COO(R5O)nH (2)
(式中、R4は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、R5はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基、nは平均付加モル数を示し、1〜60の数である。)
式(2)において、R4の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられ、R5のヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子が挙げられる。nは好ましくは1〜30の数である。
5O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン墓、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)が挙げられる。
【0019】
水酸基含有モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、顔料分散体の粘度安定性に優れる観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0020】
グラフトポリマー(x)の主鎖が、水酸基含有モノマー由来の構成単位(b)を含有することにより、顔料分散体の粘度安定性が向上するものと考えられる。その観点から、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(b)の含有量は5〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。該構成単位(b)の含有量が5重量%以上であれば、十分な粘度安定性に寄与することができ、構成単位(b)と(c)とのバランスの観点から、その上限が30重量%以下であれば本発明の効果を有効に発現できる。
【0021】
また、グラフトポリマー(x)の側鎖が、数平均分子量が800〜4000であるアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー由来の構成単位(c)を含有することにより、(A)有機顔料の分散性を向上し、顔料分散体の低粘度化に寄与しうると考えられる。その観点から、グラフトポリマー(x)中の該構成単位(c)の含有量は65〜92重量%であり、好ましくは65〜85重量%であり、より好ましくは65〜80重量%である。該構成単位(c)の含有量が65重量%以上であれば、(A)有機顔料を十分に分散させることができ、構成単位(b)と(c)とのバランスの観点から、その上限が92重量%以下であれば本発明の効果を有効に発現できる。
【0022】
本発明のグラフトポリマーの側鎖に含有される構成単位(c)を形成するアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーは、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を有し、その片末端に重合性官能基を有するものである。アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー由来の構成単位(c)を含有する側鎖は、この片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーを共重合することにより得ることができ、該構成単位(c)は、側鎖に1種又は2種以上含まれていてもよい。
その具体例としては、片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体、又は片末端に重合性官能基を有する、アルキル(メタ)アクリレートと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0023】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、顔料分散体の低粘度化を促進する観点から、好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくは炭素数1〜6、特に好ましくは炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するものが好ましい。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及び(イソ)プロピル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらのアルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、本明細書にいう「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在している場合とそうでない場合の双方を意味し、これらの基が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方を意味する。
【0024】
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましい。
アルキル(メタ)アクリレートと共重合する他のモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーや、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート系マクロマー中、アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有量は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましく、実質的に100重量%が特に好ましい。「実質的に」とは、不純物程度の量の他のモノマー由来の構成単位を含有してもよいことを意味する。
【0025】
アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの数平均分子量は、顔料分散体の低粘度化を促進する観点から、800〜4,000であり、好ましくは1,000〜3,500であり、より好ましくは1,500〜3,000である。その数平均分子量が800以上であれば、十分な立体反発を生じて分散性を向上させることができ、4,000以下であることが顔料分散体の低粘度化に適している。
なお、アルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのラウリルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定することができる。
【0026】
〔グラフトポリマー(x)の製造〕
グラフトポリマー(x)は、N−ビニル−2−ピロリドン、水酸基含有モノマー、及びアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーを含有するモノマー混合物(以下、「モノマー混合物」という)を共重合して得ることが好ましい。モノマー混合物には、本発明を損なわない範囲内で、更にアルキル(メタ)アクリレート等を含有していてもよい。
モノマー混合物中におけるN−ビニル−2−ピロリドンの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性の観点から、2〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
モノマー混合物中における水酸基含有モノマーの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性の観点から、5〜30重量%であり、好ましくは5〜25重量%であり、より好ましくは10〜20重量%である。
モノマー混合物中におけるアルキル(メタ)アクリレート系マクロマーの含有量は、顔料分散体中の(A)有機顔料の分散安定性を向上させる観点から、65〜92重量%であり、好ましくは65〜85重量%であり、より好ましくは65〜80重量%である。
【0027】
グラフトポリマー(x)は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、前記モノマー混合物を共重合させることによって製造することができる。これらの重合法の中では、顔料分散体に有機溶媒を用いる観点から、溶液重合法が好適である。
溶液重合法で用いる有機溶媒としては、グラフトポリマーと親和性の高い有機溶媒が好ましく、前記の有機溶媒を用いることができる。
重合の際には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、tert−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルペルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。
ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モル当たり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加することができる。
モノマー混合物の重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、有機溶媒の種類等によって異なるが、重合温度は、通常30〜100℃、好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、重合温度等の条件により異なり一概に決めることはできないが、通常1〜20時間程度である。また、重合雰囲気は、窒素ガスやアルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成した分散剤を単離することができる。また、得られた分散剤は、再沈澱を繰り返したり、膜分離法、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
【0028】
得られるグラフトポリマー(x)の重量平均分子量(Mw)は、顔料分散体中の(A)有機顔料、特にジケトピロロピロール系顔料の分散安定性を向上させる観点から、5,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000が更に好ましく、6,000〜70,000が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのラウリルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー(GPC)法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
【0029】
<有機溶媒>
有機溶媒は特に限定されず、分散処理を行う条件下で液状の有機溶媒であればよい。
有機溶媒の好適例としては、顔料と水不溶性分散剤との分散性の観点から、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;プロピレングリコール等の多価アルコール;エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル等の他、酢酸エチル、シリコーンオイル、高級アルコール、油脂等及び下記一般式(3)で表される化合物等が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、R3は水素原子又はメチル基を示す。)
一般式(3)において、R1及びR2の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、及びtert−ブチル基が挙げられる。これらの中では、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0032】
上記の有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
またロールミル工程中に有機溶媒が蒸発し分散体の組成が変わり、分散性に影響を与えることを抑えという観点から、ロールミル工程時に用いる有機溶媒の飽和蒸気圧が低いものが好ましい。有機溶媒の20℃における飽和蒸気圧が1kPa以下のものが好ましく、0.5kPa以下のものがより好ましく、0.1kPa以下のものが更に好ましい。
【0033】
分散体中の顔料の量は、分散時の生産性を向上させる観点から、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。また、分散時のハンドリング性を確保する観点から、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下、更に好ましくは40重量%以下である。
分散体中の水不溶性分散剤の量は、分散処理過程で不足する事のない添加量とする事が分散安定性を向上させる観点から好ましい。具体的には、顔料重量に対して、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。また、適度な粘度の分散体を得る観点から、顔料重量に対して、200重量%以下、好ましくは100重量%以下、より好ましくは80重量%以下である。
分散体中の有機溶媒の量は、顔料濃度や水不溶性分散剤、その他添加剤を除いた量であるが、各製造工程での分散処理時の操作性及び顔料を微細化させるという観点から、各製造工程において適宜選択される。
【0034】
<カラーフィルター用顔料分散体の製造>
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法においては、下記の第1工程及び第2工程を行う。
第1工程:少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程、
第2工程:第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程
【0035】
〔第1工程〕
第1工程は、少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程である。
少なくとも顔料、有機溶媒、水不溶性分散剤を含有する混合物をロールミルに供する前に、混合装置を用いて予め混合してもよい。混合装置としては、例えば、ニーダー、プラネタリーミキサー、エクストルーダ等の混練混合装置、ディスパー、ホモミキサー等の攪拌式混合装置、アトライター等の密閉式ミル等の公知の混合装置を使用できるが、ロールミルにて予備分散処理を行うため、混合物中の固形分濃度を高める必要があり、混練式混合装置を用いるのが好ましい。混練式混合装置の中では、ニーダー、プラネタリーミキサー、ハイビスミックス(プライミクス株式会社、商品名)、トリミックス(株式会社井上製作所、商品名)等のバッチ式混練装置、1軸押出機、2軸押出機(エクストルーダー)等の連続式混練装置が好ましい。
各成分の混合順序に特に制限はないが、顔料の嵩比重を考慮して生産性を高める観点、及び顔料と有機溶媒とを混合させ易さという観点から、有機溶媒に顔料を添加することが好ましい。水不溶性分散剤は、顔料を添加する前後に添加することが好ましい。
【0036】
次に上記で得られた混合物を、ロールミルを用いて予備分散処理を行う。ロールミルとしては、予備分散工程での顔料粗大粒子量を低減させ、顔料の分散性を向上させるという観点から、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いる。ここで、操作性の簡便さ及び制御のし易さという観点から、3本ロールミルが好ましい。
ロールミルを用いた予備分散処理において、ロール間の間隙を調整することで顔料粗大粒子量や分散体粘度を制御することができる。顔料の粗大粒子量を低減させるという観点から、このロール間の間隙は小さいほど好ましい。ロール間の間隙を測定する場合、その間隙が数ミリメートル程度であれば実測することも可能であるが、数マイクロメートル程度となると正確に実測できなくなる。そこで、本発明においては、ロール間隙を測定する代わりに、「ロール上の混合物の平均膜厚」を下記計算式(4)を用いて換算することで、ロール間の間隙の代用として定義する。
ロール上の混合物の平均膜厚[μm]={混合物の処理速度[g/min]/(混合物の密度[g/cm3]×混合物が存在するロール面積[cm2]×エプロン側ロールの回転数[rpm])}×104 (4)
【0037】
ロールミルにおいて、混合物は、まずフィード側ロール(第1ロール)とその隣のロール(第2ロール)との間に供給され、次いで第2ロールと第3ロールとの間、そして第3ロールと第4ロールとの間へと、混合物をロールに順次巻き付かせることで分散され、最後にエプロン側ロールにて、分散された混合物が回収される。ここで、混合物は、フィード側ロールでは全体に巻き付くものの、それ以降、第2ロールでは下側のみ、第3ロールでは上側のみへと順次巻き付いていく。このフィード側ロールは、粗大顔料粒子の微細化には、実質的に寄与しないことから、上記計算式(4)において「混合物が存在するロール面積」とは、フィード側ロールを除いて混合物が存在する面積と定義する。例えば、3本ロールミルでは、第2ロールの下側半分の面積と第3ロールの上側半分の面積のうち混合物が存在する面積の合計が、混合物が存在するロール面積となる。
【0038】
ロール上の混合物の平均膜厚は、粗大顔料粒子を低減するという観点から、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。一方、生産性を保持するという観点及びロール同士が接触する危険性を回避するという観点から、ロール上の混合物の平均膜厚は0.08μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
ロールミルによる予備分散の際にロール上混合物の膜厚を調整する工程において、1回の処理(1パス)のみでも所望の膜厚まで制御することは可能であるが、特に顔料へのダメージを低減させ色材の保存安定性を保持するという観点から、ロール上混合物の膜厚を調整する工程は2回以上行うことが好ましい。この場合、膜厚調整を行うパス毎にロール上での混合物の膜厚を薄くする方がより好ましい。ロール上混合物の膜厚を調整する工程の回数は、煩雑性や生産性の観点から、好ましくは10回以下、より好ましくは5回以下である。
【0039】
本発明に用いるロールミルは、クラウン加工のない(クラウンレス)、表面が鏡面のように平滑な円筒状ロールを用いることが好ましい。一般に、ロールミルに用いられているロールは、中心部が両端部よりやや膨らんだ形状(クラウン)をしている。例えば、3本ロールを用いる場合は、中間ロール、両側ロール、又は全てのロールにクラウン加工を施すことが行われている。クラウン量はロール処理時圧力、温度等使用条件により各種選定されるが、上記のようなロール上混合物の膜厚を調整する工程を複数回行う場合や、ロール上の混合物の膜厚が薄くなる場合は、クラウン量(膨らみ量)の設定が困難であり、均一な膜厚を形成することが難しい。そこで、本発明に用いるロールミルはクラウン加工のないロールが好ましい。
ロールミルのロールの材質に特に制限はなく、樹脂、ゴム、鉄、セラミック製等を用いることができる。これらの中では、分散体への金属製不純物を低減するという観点から、樹脂、ゴム、セラミックス製ロールが好ましく、顔料を微細化しやすいという観点から、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス製ロールがより好ましい。
【0040】
予備分散終了後における顔料の平均粒径(体積粒度分布における50%通過粒子径:D50)を好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.15μm以下に調整する。
また顔料の粗大粒子の含有量を低減させる観点から、予備分散終了後におけるD90(体積粒度分布における90%通過粒子径)を好ましくは1μm以下、より好ましくは0.6μm以下、更に好ましくは0.4μm以下に調整する。なお、平均粒径(D50)、及びD90は、上記粒径範囲が測定可能な動的光散乱式粒度分布計によって測定することができる。
第1工程における分散処理時の有機溶媒の量は、30〜70重量%が好ましく、35〜55重量%が更に好ましい。有機溶媒の量が少なすぎると分散処理時の分散液の粘度が高すぎ、効率的に分散力を与えることができず、顔料粒径が小さくならない。一方、有機溶媒の量が多すぎると、付与する分散力が過多になるため顔料の再凝集を生じたり、分散液の粘度が上昇したり、保存安定性が悪化するおそれがある。
【0041】
〔第2工程〕
第2工程は、第1工程で得られた顔料分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程である。この工程を行うことにより、混合液中の100nm以上の粗大粒子を除去することができ、粒径の揃ったコントラスト比の高いカラーフィルター用顔料分散体を得ることができる。
第2工程に用いる装置としては、例えば、スターミル(アシザワ・ファインテック株式会社、商品名)、ウルトラアペックスミル(寿工業株式会社、商品名)、ペイントシェーカー、ピコミル(淺田鉄工株式会社、商品名)、マイクロメディア、DCPスーパーフロー、コスモ(ビューラー株式会社、商品名)、MSCミル(日本コークス工業株式会社、商品名)、サンドミル等のメディアミルが挙げられる。
使用するメディア粒子径は、分散処理の効率化の観点から、0.1mm以下であり、0.08mm以下がより好ましく、0.06mm以下が更に好ましい。一方、メディア粒子径が小さすぎると分散が進行しにくいことから、0.003mm以上が好ましく、0.005mm以上がより好ましく、0.01mm以上が更に好ましい。用いるメディアの材質としては、特に制限はないが、分散体への金属不純物を低減するという観点から、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス製のメディアが好ましい。
【0042】
第2工程を行う際には、有機溶媒を添加し分散体の粘度を調整することが好ましい。第2工程における分散処理時の有機溶媒の量は、50〜90重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。有機溶媒の量が少なすぎると分散処理時の分散液の粘度が高くなり、効率的に分散力を与えることができなくなるため、顔料粒径が小さくなりにくい。一方、有機溶媒の量が多すぎると、付与する分散力が過多になるため顔料の再凝集を生じたり、分散液の粘度が上昇したり、保存安定性が悪化するおそれがある。
第2工程終了後における100nm以上の粗大粒子量が少ないほうが、コントラスト比が高くなりやすいという点から、体積粒度分布における粗大粒子の積算量が5%以下が好ましく、3%以下がより好ましく、1%以下が更に好ましい。その下限は特に制限はないが、生産性及び保存安定性の観点から、0.01%以上が好ましい。
また、第2工程終了後における顔料の平均粒径(D50)は、70nm以下が好ましく、60nm以下がより好ましく、58nm以下が更に好ましい。
【0043】
前記の第1工程及び第2工程により、粗大粒子が少なく、保存安定性も良好なカラーフィルター用の顔料分散体を製造することができるが、顔料分散体の粘度低減及び顔料微細化という観点から、第2工程後に高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等を用いる工程を適宜組み合わせることもできる。また、分散体中に存在する粗大粒子を低減するという観点、及び分散中に存在する不要な分散剤を除去するという観点から、遠心分離やろ過を用いる工程等を適宜組み合わせることもできる。
本発明における顔料分散体の粘度は、1〜100mPa・s(20℃)が好ましく、5〜80mPa・s(20℃)がより好ましく、10〜50mPa・s(20℃)が更に好ましい。該粘度は、分散機の動力や、水不溶性分散剤、顔料及び有機溶媒の混合比率を調整することによって調整することができる。
顔料分散体の品質の安定化、カラーフィルター作製時の製造条件の安定化の観点から、顔料分散液の保存前後で粒径又は粘度が変化しないことが好ましい。粒径変化率は1.2以下が好ましく、1.1以下がより好ましく、1.05以下がより好ましく、1.03以下が更に好ましい。粘度変化率は1.5以下が好ましく、1.3以下がより好ましく、1.1以下が更に好ましい。
【0044】
<カラーフィルター用顔料分散体>
本発明の製造方法により得られたカラーフィルター用顔料分散体は、粗大粒子が少ないためコントラスト比が高く、さらに分散体の粘度が低く、保存安定性にも優れているため、特にインクジェット法により作製されるカラーフィルター用着色組成物として有用である。すなわち、各種のバインダー、多官能モノマー、光重合開始剤、溶剤、添加剤等を添加、混合することにより、カラーフィルター用着色組成物(カラーレジスト色材)として用いることができる。
バインダーとしては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物等を挙げることができる。その重量平均分子量は、5000〜200,000が好ましい。バインダーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して20〜80重量%が好ましい。
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等を挙げることができる。多官能モノマーの含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類を挙げることができる。特に4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]が好ましい。光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。光重合開始剤の含有量は、顔料分散組成物中の全固形分に対して0.2〜10重量%が好ましい。
【実施例】
【0045】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。
実施例及び比較例で得られた平均粒径及び粗大粒子量の測定、粘度の測定、保存安定性(粘度変化率、粒径変化率)の評価は、以下の方法により行った。
(1)平均粒径(D50)、粗大粒子量の測定
顔料分散体の調製直後の粒径を、マルバーン社製ゼータサイザーを用いて測定し、体積粒度分布における50%通過粒子径(D50)を平均粒径とした。また顔料分散体の粒径分布のうち、100nm以上の累積粒度分布を粗大粒子量(体積%)とした。
(2)粘度の測定
顔料分散体の調製直後の粘度を、E型粘度計〔測定温度:20℃、測定時間:1分、回転数:20rpm、標準ローター(1°34′×R24)〕を用いて粘度を測定した。
(3)粘度安定性の評価
目的とする顔料分散体(第2工程で得られた顔料分散体)を調製した直後(保存前)の粘度を、上記(3)により測定した。同様にして、前記顔料分散体を40℃で1週間保存した後の粘度を測定し、保存前後の粘度変化を対比して、下記計算式(5)により粘度変化率を求め、保存安定性を評価した。
粘度変化率=1週間保存後の粘度/調製直後(保存前)の粘度 (5)
(4)粒径安定性の評価
目的とする顔料分散体(第2工程で得られた顔料分散体)を調製した直後(保存前)の粒径を、上記記載同様のマルバーン社製ゼータサイザーを用いて測定した。同様にして、前記顔料分散体を40℃で一週間保存した後の平均粒径(D50)を測定し、保存前後の平均粒径(D50)の変化を対比して、下記計算式(6)により粒径変化率を求め、保存安定性を評価した。
粒径変化率=7日間保存後の平均粒径/調製直後(保存前)の平均粒径 (6)
【0046】
製造例1(水不溶性高分子分散剤の製造)
窒素導入管を備え付けた反応容器に、メタクリル酸メチル50部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCA」という)25部、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)5部を量り込み、窒素シールをしながら75℃まで昇温した。次に、メタクリル酸メチル200部、BCA 100部、前記連鎖移動剤16.7部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)2部の混合物を3時間で滴下した。その後、BCA 125部、前記連鎖移動剤0.9部、前記重合開始剤2部の混合物を1時間かけて滴下し、更に2時間熟成し、メタクリル酸メチルマクロマー前駆体を合成した。得られたメタクリル酸メチルマクロマー前駆体をゲルクロマトグラフィー(GPC)法(溶離液として、クロロホルムを使用)によりポリスチレンを標準物質として測定した結果、数平均分子量(Mn)2,080、重量平均分子量(Mw)3,350であった。
次いで、窒素導入管を空気導入管に切替え、得られたマクロマー前駆体に気体ポンプで空気を吹き込み、グリシジルメタクリレート23.3部、テトラブチルアンモニウムブロマイド7.9部、p−メトキシフェノール0.8部、BCA 17部を添加し、90℃で10時間反応し、固形分(有効分)含有量60%のメタクリル酸メチルマクロマーを得た。得られたメタクリル酸メチルマクロマーをゲルクロマトグラフィー(GPC)法(溶離液として、クロロホルムを使用)によりポリスチレンを標準物質として測定した結果、数平均分子量(Mn)2,200、重量平均分子量(Mw)3,500であった。
【0047】
窒素導入管を備え付けた反応容器に、BCA 10部を計り込み、窒素シールをしながら80℃まで昇温した。この反応容器に得られたメタクリル酸メチルマクロマーを固形分として72.5部、N−ビニル−2−ピロリドン12.8部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート14.7部、BCA 80部の混合液230部、前記重合開始剤2部、及び2−メルカプトエタノール(連鎖移動剤)の0.4部を、2時間にわたって滴下し、滴下終了後さらに3時間反応させ、固形分(有効分)含有量60%のグラフトポリマー(水不溶性高分子分散剤)溶液を得た。
得られた分散剤をゲルクロマトグラフィー(GPC)法(溶離液として、クロロホルムを使用)によりポリスチレンを標準物質として測定した結果、数平均分子量(Mn)5,200、重量平均分子量(Mw)28,000であった。
【0048】
実施例1
(1)予備分散体(1)の製造
ジケトピロロピロール系顔料(A)(BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BK−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))10部、BCA 2.1部、製造例1で得られた水不溶性分散剤(固形分60%)15部をプラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製、PLM−2)に入れ、槽のジャケットに10℃の水を通水しながら公転回転数30rpmで5時間混合し、その後固形分65%に調整するためBCA 2.1部を追加し、槽のジャケットに30℃の水を通水しながらさらに公転回転数60rpmで1時間混合し混合物を得た。
得られた混合物20部(密度1g/cm3)を、処理速度377g/minで3本ロールミル(ビューラー株式会社製、SDX−300、クラウンなし、炭化ケイ素製ロール、混合物が存在するロール面積1885cm2)を用いて、ロール温度20℃、ロール圧力2MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で予備分散処理し、予備分散体(1)を得た。このとき、前記計算式(4)より求めたロール上の混合物の平均膜厚(以下において同様である)は10μmであった。
(2)顔料分散体(1)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(1)20部にBCA 45部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(1)を得た。評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
(1)予備分散体(2)の製造
上記実施例1(1)で得られた予備分散体(1)20部にBCA 1.7部追加し固形分60%に調整した後、さらに3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、処理速度113g/min、ロール温度20℃、ロール圧力2.5MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で分散処理した。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は3μmであった。
さらに得られた分散体にBCA 2部追加し固形分を55%に調整した後、処理速度を38g/minとしたこと以外は、上記と同じ条件で3本ロールミルにて分散処理を行い予備分散体(2)を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は1μmであった。この予備分散体の粒径を粒径測定器LA−300(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、体積粒度分布における296nm以上の粒子量を積算したところ、35%であった。
(2)顔料分散体(2)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(2)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(2)を得た。評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
(1)予備分散体(3)の製造
(1−1)ジケトピロロピロール系顔料(A)(BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名:IRGAPHOR BK−CF、平均一次粒径30nm(カタログ値))10部、BCA 2.1部、製造例1で得られた水不溶性分散剤(固形分60%)15部をプラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製、PLM−2)に入れ、槽のジャケットに10℃の水を通水しながら公転回転数30rpmで5時間混合し、その後固形分55%に調整するためBCA 7.4部を追加し、槽のジャケットに30℃の水を通水しながらさらに公転回転数60rpmで1時間混合し混合物を得た。
得られた混合物23.6部(密度1g/cm3)を3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、処理速度113g/min、ロール温度20℃、ロール圧力1.5MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で分散処理し、予備分散体を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は3μmであった。
(1−2)得られた予備分散体23.6部にBCA 1部追加し固形分53%に調整した後、さらに3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、処理速度113g/min、ロール温度20℃、ロール圧力2MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で2度分散処理した。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は3μmであった。
さらに得られた分散体にBCA 1部追加し固形分を51%に調整した後、上記と同じ条件で3本ロールミルにて2度分散処理を行い予備分散体(3)を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は3μmであった。
(2)顔料分散体(3)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(3)25.5部にBCA 39.5部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(3)を得た。評価結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
(1)予備分散体(4)の製造
実施例3(1−1)で得られた予備分散体をさらに3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、ロール温度20℃、ロール圧力2MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で3度分散処理し、予備分散体(4)を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は1度目と2度目は4μm(処理速度151g/min、)、3度目は5μm(処理速度189g/min)であった。
(2)顔料分散体(4)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(4)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(4)を得た。評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
(1)予備分散体(5)の製造
実施例1(1)で得られた予備分散体(1)20部にBCA 1.7部追加し固形分60%に調整した後、さらに3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、処理速度113g/min、ロール温度20℃、ロール圧力2.5MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で分散処理した。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚の膜厚は3μmであった。
さらに、得られた分散体にBCA 4.3部追加し固形分を50%に調整した後、処理速度を18.9g/minとしたこと以外は、上記と同じ条件で3本ロールミルにて2度分散処理した。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は0.5μmであった。さらに、得られた分散体にBCA 2.9部追加し固形分を45%に調整した後、処理速度を5.67g/minとしたこと以外は、上記と同じ条件で3本ロールミルにて分散処理を行い予備分散体(5)を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は0.15μmであった。
(2)顔料分散体(5)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(5)28.9部にBCA 36.1部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(5)を得た。評価結果を表1に示す。
【0053】
実施例6
(1)予備分散体(6)の製造
実施例1(1)で得られた予備分散体(1)20部にBCA 1.7部追加し固形分60%に調整した後、さらに3本ロールミル(株式会社井上製作所製、HHC-178×356、クラウンあり、炭化ケイ素製ロール、混合物が存在するロール面積1991cm2)を用いて、処理速度160g/min、ロール温度20℃、ロール圧力2MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で分散処理した。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は4μmであった。
さらに、得られた分散体にBCA 2部追加し固形分を55%に調整した後、処理速度80g/minにしたこと以外は、上記と同じ条件で3本ロールミルにて分散処理を行い予備分散体(6)を得た。このとき、ロール上の混合物の平均膜厚は2μmであった。この予備分散体の粒径を粒径測定器LA−300(株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、体積粒度分布における296nm以上の粒子量を積算したところ、50%であった。
(2)顔料分散体(6)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(6)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(6)を得た。評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例7
(1)顔料分散体(7)の製造
上記実施例2(1)で得られた予備分散体(2)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.07mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(7)を得た。評価結果を表1に示す。
実施例8
(1)顔料分散体(8)の製造
上記実施例2(1)で得られた予備分散体(2)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.1mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(8)を得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
比較例1
(1)予備分散体(9)の製造
ジケトピロロピロール系顔料(A)(BASF社製、商品名:IRGAPHOR BK−CF)10部、BCA 2.1部、製造例1で得られた水不溶性分散剤(固形分60%)15部をプラネタリーミキサー(株式会社井上製作所製、PLM−2)に入れ、槽のジャケットに10℃の水を通水しながら公転回転数30rpmで5時間混合し、その後固形分65%に調整するためBCA 2.1部を追加し、槽のジャケットに30℃の水を通水しながら、さらに公転回転数60rpmで1時間混合し混合物を得た。
得られた混合物20部(密度1g/cm3)を、処理速度1134g/minで3本ロールミル(前記SDX−300)を用いて、ロール温度20℃、ロール圧力2MPa、エプロン側ロール回転数200rpm(ギア比1:3:9)の条件で3度分散処理し、予備分散体(9)を得た。このとき、ロールギャップ調整ダイヤルを使用して、ロール上の混合物の平均膜厚を30μmに調整した。
(2)顔料分散体(9)の製造
上記(1)で得られた予備分散体(9)20部にBCA 45部追加し、さらにφ0.05mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(9)を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
比較例2
(1)顔料分散体(10)の製造
実施例2(1)で得られた予備分散体(2)23.6部にBCA 41.4部追加し、さらにφ0.3mmのジルコニアビーズ130部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、固形分20%の顔料分散体(10)を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
比較例3
(1)顔料分散体(11)の製造
実施例5(1)で得られた予備分散体(5)28.9部にBCA 36.1部追加し、固形分20%の顔料分散体(11)を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
比較例4
(1)顔料分散体(12)の製造
ジケトピロロピロール系顔料(A)(BASF社製、商品名:IRGAPHOR BK−CF)10部、BCA 75部、製造例1で得られた水不溶性分散剤(固形分60%)15部、φ0.05mmジルコニアビーズ200部をポリビンに入れ、ペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて24時間振とうし、顔料分散体(12)を得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
比較例5
(1)顔料分散体(13)の製造
ジケトピロロピロール系顔料(A)(BASF社製、商品名:IRGAPHOR BK−CF)10部、BCA 75部、製造例1で得られた水不溶性分散剤(固形分60%)15部、φ0.3mmジルコニアビーズ200部をポリビンに入れ、予備分散処理工程としてペイントシェーカー(淺田鉄工株式会社製)にて3時間振とうし、次いでその分散液80部とφ0.05mmのジルコニアビーズ160部をポリビンに入れ、同様に本分散処理工程としてペイントシェーカーにて24時間振とうし、顔料分散体(13)を得た。評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から、実施例1〜7の顔料分散体は、100nm以上の粗大粒子が少なく、かつ、低粘度であり、また、保存後の粘度増加率及び粒径増加率が小さく、保存安定性に優れていることが分かる。
一方、比較例1から、第1工程におけるロール上の混合物の平均膜厚が20μmを超えると粗大粒子が低減せず、比較例2から、第2工程のメディア粒子径が0.1mmを超えると粗大粒子が低減しないことが分かる。
比較例3から、第1工程だけを行い、メディア式分散機の処理をしないと、粗大粒子が低減せず、顔料分散液の粘度が上昇し、保存安定性が悪化することが分かる。
比較例4から、第1工程がなく、メディア式分散機のみで処理すると、粗大粒子が低減しないことが分かる。
また、比較例5から、第1工程、第2工程ともメディア式分散機で処理すると、付与する分散力が過多になるため顔料の再凝集が起こり、分散液の粘度が上昇し、保存安定性が悪化することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、低粘度で保存安定性に優れ、かつ粗大顔料粒子が極めて少ないカラーフィルター用顔料分散体を効率的に製造することができる。また、得られたカラーフィルター用顔料分散体は、耐熱性、コントラスト比に優れているため、液晶表示素子や固体撮像素子等のカラーフィルター用色材として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の第1工程及び第2工程を有する、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
第1工程:少なくとも顔料、水不溶性分散剤、及び有機溶媒を含有する混合物を、少なくとも3本のロールを有するロールミルを用いて、ロール上の混合物の平均膜厚が0.05〜20μmとなるように予備分散する工程、
第2工程:第1工程で得られた予備分散体を、粒径が0.1mm以下のメディア粒子を充填したメディア式分散機により分散処理する工程
【請求項2】
20℃における飽和蒸気圧が1kPa以下である有機溶媒を用いる、請求項1記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
第1工程において、ロールミルによる前記混合物の膜厚調整処理を2回以上行う、請求項1又は2記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
第1工程におけるロールミルのロールが、クラウン加工のない表面が平滑な円筒状ロールである、請求項1〜3のいずれか記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
第1工程におけるロールミルのロールがセラミック製ロールである、請求項1〜4にいずれか記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
第2工程において、メディア粒子径が0.003〜0.08mmである、請求項1〜5にいずれか記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。

【公開番号】特開2012−128192(P2012−128192A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279724(P2010−279724)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】