説明

カラーフィルター用顔料分散体の製造方法

【課題】現像性、基板密着性、コントラストに優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供する。
【解決手段】工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物である。
工程(1):有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒を分散して顔料分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、顔料分散体に樹脂等を配合した着色組成物をガラス等の透明基板に塗布した後、露光・硬化、現像、熱硬化させるフォトリソグラフィー法等によって製造されている。ここで用いられる顔料分散体は、顔料を有機溶媒に分散した非水系顔料分散体であるが、非水系顔料分散体の製造方法として、グラフトポリマー等の高分子分散剤を用いる製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、保存安定性及び耐熱性の改善を目的として、顔料、顔料分散ポリマー、及び有機溶媒を含有し、顔料に未吸着のポリマー量が顔料分散体中に2重量%以下であるカラーフィルター用顔料分散体が開示されている。
また、特許文献2には、分散安定性、現像性等の改善を目的として、主鎖にアクリル酸を5〜30質量%共重合したグラフト型高分子重合体、顔料、及び有機溶剤を含有する顔料分散組成物が開示されている。
また、特許文献3には、画像再現性、現像性、密着性等の改善を目的として、光重合開始剤、エチレン性不飽和結合を有する化合物、色材料及びリン酸(メタ)アクリレート化合物を含有することを特徴とするカラーフィルター用光重合性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161692号公報
【特許文献2】特開2009−227839号公報
【特許文献3】特開平9−227635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、顔料分散体を用いて得られたカラーフィルターを用いた液晶表示装置はコントラストが低いという問題がある。また、フォトリソグラフィー法を用いたカラーフィルターの製造において、用いられる着色組成物は、現像液によってすばやくパターンを形成する現像性に優れつつも、得られた光硬化膜は基板から剥がれることのないように基板への密着性も優れる必要があり、この相反する性能を満たす必要がある。更にこれら複数の性能を満たすために、添加剤等を用いると顔料分散体における分散安定性が低下し、特に保存時の分散安定性が低下するという問題がある。
本発明は、現像性、基板密着性、コントラストに優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法において、顔料分散処理時に、窒素原子を含有するグラフトポリマーを用い、その後、(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物を混合することで、均一な分散状態を維持しつつ、十分な現像性、基板密着性、コントラストを得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒を分散して顔料分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程
〔2〕前記〔1〕の製造方法によって得られるカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、現像性、基板密着性、コントラストに優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法によって得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有することを特徴とする。
工程(1):有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒を分散して顔料分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程
本発明においては、前記工程により得られるカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物が、現像性、基板密着性、コントラストに優れた硬化膜を形成することができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
すなわち、まず、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)の窒素原子を含む官能基は有機顔料に非常に吸着しやすいため、顔料が溶媒中に微細に分散されるものと考えられる。次にこのようにして得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合され顔料分散体が得られる。
(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を、顔料を微細に分散した後に混合することで、顔料の安定な分散状態に影響を与えることなく、化合物(B)を混合することができ、更に適度に顔料分散粒子の表面に吸着するものと考えられる。
本発明の製造方法で得られる顔料分散体は、分散体の溶媒中だけでなく、顔料表面にも(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)が存在しているものと考えられ、アルカリ現像液によって、特に顔料表面のリン酸基がイオン化することにより、アルカリ溶液での現像性に優れるものと考えられる。また、(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)はリン酸基が無機物である基板との密着性を高め、(メタ)アクリル基が硬化膜を更に強固なものとするため、該顔料分散体を含有する着色組成物の基板への密着性が優れるものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、工程等について説明する。
【0009】
〔有機顔料〕
本発明に用いられる有機顔料(以下、単に「顔料」ともいう)としては、カラーフィルターに好適に用いられるものであれば特に制限はなく、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料等が挙げられる。
アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー150等のニッケルアゾ錯体系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表されるジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。なお、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子が好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Igaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
有機顔料は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径を、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。有機顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測してその平均値をその粒子の粒子径とし、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積を、粒子径を一辺とする立方体と近似して体積平均粒子径を求め、それを平均一次粒子径とする。
上記の有機顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
〔窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)〕
本発明に用いられる窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)(以下、単に「グラフトポリマー(A)」ともいう)は、有機顔料への吸着性の観点から、主鎖に窒素原子を含有することが好ましい。
また、グラフトポリマー(A)の窒素原子は、有機顔料への吸着性を向上させる観点から、アミド基由来のものであることが好ましい。
また、有機顔料への吸着性の観点から、グラフトポリマー(A)は更に水酸基を有することが好ましい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0013】
グラフトポリマー(A)の主鎖としては、有機顔料への吸着性の観点から、アミド基やアミノ基等の官能基を含む、窒素原子を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。
また、グラフトポリマー(A)の側鎖は、有機溶媒への親和性を高め、有機顔料の分散性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸ベンジル及び/又は(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸ベンジル由来の構成単位を含有することが更に好ましい。なかでも、側鎖はポリ(メタ)アクリル酸ベンジルであることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位を含有する側鎖としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチルが好ましい。
前記のグラフトポリマー(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、主鎖及び側鎖のいずれにも、前記モノマーと共重合可能なその他のモノマーを共重合したものでもよい。
【0014】
グラフトポリマー(A)の重量平均分子量は、有機顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは1000〜1000,000、より好ましくは2000〜800,000、更に好ましくは5000〜700,000である。
グラフトポリマー(A)の主鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1000〜30,000、更に好ましくは2000〜20,000である。また、主鎖の重量平均分子量は、同じ観点から、好ましくは1500〜150,000、より好ましくは3000〜90,000、更に好ましくは6000〜60,000である。
グラフトポリマー(A)の側鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜10,000、更に好ましくは700〜6000である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
【0015】
(グラフトポリマー(A)の主鎖の構成単位となるモノマー)
グラフトポリマー(A)の主鎖の構成単位となるモノマーとしては、顔料への吸着性の観点から、窒素原子を含有するビニルモノマーを含有することが好ましい。
窒素原子を含有するビニルモノマーとしては、アミド基を含有するビニルモノマーが好ましい。
アミド基を含有するビニルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類等が挙げられる。
その他の窒素原子を含有するビニルモノマーの具体例としては、ビニルピリジン類、含窒素スチレン系モノマー、含窒素(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド2−メチルプロピルスルホン酸、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルピロリドン類としては、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0016】
ビニルピリジン類としては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられ、含窒素スチレン系モノマーとしては、p−スチレンスルホンアミド、p−アミノスチレン、アミノメチルスチレン等が挙げられる。
含窒素(メタ)アクリル酸エステルとしては、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリレート、1−(N,N−ジアルキルアミノ)−1,1−ジメチルメチル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ピペリジノエチル(メタ)アクリレート、1−ピロリジノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル−2−ピロリジルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−メチルフェニルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら窒素原子を含有するビニルモノマーの中では、有機顔料への吸着性の観点から、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類が好ましく、N−ビニルピロリドンがより好ましい。
前記グラフトポリマーの全構成単位中の窒素原子を含有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、有機顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0017】
主鎖の構成単位となるモノマーとしては、水酸基を含有するビニルモノマーを用いることが好ましい。
水酸基を含有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
これら水酸基を含有するビニルモノマーの中では、有機顔料への吸着性の観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルがより好ましい。
前記グラフトポリマー(A)の全構成単位中の水酸基を含有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、有機顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは7〜18重量%である。
【0018】
(グラフトポリマー(A)の側鎖の構成単位となるモノマー)
グラフトポリマー(A)の側鎖の構成単位となるモノマーとしては、顔料の溶媒への分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸アルキル及び(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、着色組成物のコントラストを向上させる観点から、(メタ)アクリル酸ベンジルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルのなかでは(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記グラフトポリマー(A)の側鎖中の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、特に制限はないが、側鎖中の全構成単位に対して、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%である。
【0019】
[グラフトポリマー(A)の製造]
グラフトポリマー(A)の製造方法としては、(i)主鎖の構成単位であるモノマーと側鎖を構成するマクロモノマーとを共重合する方法(マクロモノマー法)、及び(ii)主鎖を構成するポリマーと側鎖を構成するポリマーとをカップリング反応させる方法(カップリング法)が挙げられるが、有機顔料の微細安定化の観点から、(ii)カップリング法が好ましい。
【0020】
(カップリング法によるグラフトポリマー(A)の製造)
カップリング反応に用いられる主鎖を構成するポリマーは、反応性官能基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。該ポリマーは、主鎖の構成単位であるモノマーの混合物を共重合することにより得ることができる。
反応性官能基を含有するビニルモノマーとしては、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基を含有するモノマーが挙げられ、反応性、重合速度の面から、エポキシ基を含有するビニルモノマーが好ましく、グリシジル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルがより好ましい。
カップリング反応に用いられる主鎖を構成するポリマーが反応性官能基として、エポキシ基を含有する場合、主鎖のエポキシ価は、側鎖との反応性等の観点から、45〜125mgKOH/gが好ましく、55〜115mgKOH/gがより好ましく、65〜105mgKOH/gが更に好ましい。
なお、エポキシ価の測定は実施例記載の方法により行うことができる。
【0021】
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、その片末端に、主鎖を構成するポリマーの反応性官能基と反応する反応性官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
主鎖を構成するポリマーの反応性官能基がエポキシ基である場合は、側鎖を構成するポリマーの片末端はカルボキシ基又はアミノ基であることが好ましい。
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、例えば、反応性官能基であるカルボキシ基又はアミノ基を含有する重合開始剤や連鎖移動剤を使用し、溶液重合によって得ることが好ましい。
側鎖を構成するポリマーと主鎖を構成するポリマーとのカップリング反応は、それぞれの反応性官能基が十分反応する条件で行えばよいが、触媒存在下、有機溶媒中にそれぞれのポリマーを溶解させて行うことが好ましい。
触媒としては、第四級アンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩、トリエチルアミン等の第三級アミン、アルカリ金属の水酸化物、無機酸、スルホン酸、カルボン酸、固体酸、固体塩基等が挙げられる。これらの中では、第四級アンモニウムハライドがより好ましく、テトラブチルアンモニウムブロマイドが更に好ましい。
【0022】
〔(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)〕
本発明に用いられる(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)(以下、単に「化合物(B)」ともいう)は、1分子内に(メタ)アクリル基とリン酸基を有している化合物であれば、特に制限はないが、顔料分散体を含有する着色組成物の基板への密着性を向上させる観点から、リン酸エステルが好ましく、リン酸モノエステル及び/又はリン酸ジエステルがより好ましく、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルの混合物が更に好ましい。
(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)の具体例としては、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加物とリン酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとリン酸とのエステル、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとカプロラクトン重合体とリン酸とのエステル等が挙げられ、官能基の密度が高く、着色組成物の基板密着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸2―ヒドロキシエチルとリン酸とのエステルが好ましい。
【0023】
化合物(B)の具体例としては、リン酸(2−メタクリロキシエチル)、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)、リン酸トリス(2−メタクリロキシエチル)、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。これらの中でもリン酸(2−メタクリロキシエチル)、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)、リン酸トリス(2−メタクリロキシエチル)が好ましく、リン酸(2−メタクリロキシエチル)及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)がより好ましく、リン酸(2−メタクリロキシエチル)及びリン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)の混合物が更に好ましい。
好適な市販品の例としては、ローディア日華株式会社製、Sipomer−PAM4000(リン酸(2−メタクリロキシエチル)50重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)50重量%の混合物)、花王株式会社製、padmer−m(リン酸(2−メタクリロキシエチル)63.4重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)33.8重量%、リン酸トリス(2−メタクリロキシエチル)2.8重量%の混合物)が挙げられる。
【0024】
〔エステル系有機溶媒〕
本発明で用いられるエステル系有機溶媒は特に限定されないが、沸点が100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上の高沸点有機溶媒を用いることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、及び(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート等が好ましく挙げられる。
(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)等が挙げられる。
上記エステル系有機溶媒の中では、グラフトポリマー(A)の溶解性と、有機顔料、特にジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)が更に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
上記のエステル系有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
〔顔料分散体の製造方法〕
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、工程(1)及び(2)を有する。
工程(1):有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒を分散して顔料分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程
また、基板密着性や耐熱性の観点から、工程(1)の後、工程(2)の前に、顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程を有することが好ましい。
【0026】
〔工程(1)〕
工程(1)における分散方法に特に制限はなく、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)、有機顔料及びエステル系有機溶媒を含有する混合物を一度の分散で目的とする顔料分散液を得てもよいが、該混合物を予備分散して、更に本分散を行うことが、より微細で均一な顔料分散液を得る観点から好ましい。
【0027】
(予備分散)
工程(1)の予備分散は、有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒からなる全成分を一度に混合し、分散してもよいが、グラフトポリマー(A)とエステル系有機溶媒とを予め混合して予備混合物を調製し、得られた予備混合物に有機顔料を混合し、分散して最終的な混合物を得ることが好ましい。
予備分散工程における、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)の重量比〔グラフトポリマー(A)/有機顔料〕は、有機顔料に必要量のグラフトポリマー(A)を付着させる観点から、該重量比〔グラフトポリマー(A)/有機顔料〕を0.3〜2.0とすることが好ましく、0.4〜1.7とすることがより好ましく、0.6〜1.5とすることが更に好ましい。
顔料分散液中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましく、7〜15重量%が更に好ましい。
予備分散工程における、顔料分散液中のグラフトポリマー(A)の含有量は、分散体の低粘度化の観点、及びコントラスト比に優れた硬化膜を得る観点から、2〜20重量%が好ましく、4〜17重量%がより好ましく、6〜15重量%が更に好ましい。
本工程における、エステル系有機溶媒の含有量は、均一に分散させる観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜90重量%がより好ましく、70〜90重量%が更に好ましい。
予備分散工程における分散時間は特に制限はないが、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。
【0028】
予備分散で用いる混合分散機に特に制限はなく、公知の種々の分散機を用いることができる。例えば、アンカー翼等を備えた一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラタックス(IKAジャパン株式会社製 商品名)等のホモミキサー等、ウルトラディスパー、デスパミル(浅田鉄工株式会社、商品名)、マイルダー(株式会社荏原製作所、太平洋機工株式会社、商品名)、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(以上、プライミクス株式会社、商品名)等の高速撹拌混合装置、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機が挙げられ、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社、商品名)、アルティマイザー、スターバースト(スギノマシン株式会社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等の高圧式分散機、ペイントシェーカー、ビーズミル、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製、商品名)等のメディア式分散機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、有機顔料を有機溶媒中に均一に混合させる観点から、ホモミキサー等の高速撹拌混合装置、ペイントシェーカーやビーズミル等のメディア式分散機が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
なお、予備分散は平均粒径が100nm以下となるまで行うことが好ましい。
【0029】
(本分散)
本分散は、予備分散で得られた予備分散液を分散処理する工程であり、前記予備分散工程で得られた混合物を更に微細化するために行われるが、有機顔料を微細化する観点から、メディア式分散機を用いることが好ましく、前記の高圧式分散機を併用してもよい。
本分散工程で用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの粒径としては、0.003〜0.1mmが好ましい。有機顔料を微細化する観点から、0.07mm以下がより好ましく、0.05mm以下が更に好ましく、メディアを顔料と分離する観点から、0.005mm以上がより好ましく、0.01mm以上が更に好ましい。
本分散工程で用いるメディア式分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル等が好ましく、市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0030】
得られる顔料分散液の保存安定性の観点から、分散時の温度を10〜35℃に保つことが好ましく、15〜30℃がより好ましく、18〜27℃が更に好ましい。
分散時には発熱があるため、分散液を適宜冷却することが好ましい。例えば、分散機がペイントシェイカーの場合は、冷風を吹き付けるスポットクーラーを用いて冷却することが好ましく、ビーズミル、ニーダー、高圧式分散機の場合は、ジャケットに冷媒を流して冷却することが好ましい。
本分散の分散時間は、有機顔料を十分に微細化する観点から、3〜200時間が好ましく5〜50時間がより好ましい。
【0031】
また、本分散工程の開始時又は途中でグラフトポリマー(A)を添加してもよい。グラフトポリマー(A)を添加すれば、有機顔料の分散性が向上し、粘度がやや低下し、顔料分散液の安定性も向上する。
顔料分散液中のグラフトポリマー(A)の含有量は、顔料分散液の低粘度化の観点、及びコントラスト比に優れた硬化膜を得る観点から、3〜15重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
本分散工程における、顔料分散液中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
また、本工程における、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)の重量比〔グラフトポリマー(A)/有機顔料〕は、分散体の低粘度化、及び硬化膜のコントラスト比向上の観点から、0.3〜1.5が好ましく、0.4〜1.4がより好ましい。
本工程における、エステル系有機溶媒の含有量は、均一に分散させる観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
【0032】
また、顔料分散液の粘度は、10〜120mPa・s(20℃)が好ましく、10〜100mPa・s(20℃)がより好ましく、10〜80mPa・s(20℃)が更に好ましい。該粘度は、分散機の動力や、有機顔料、グラフトポリマー(A)、及びエステル系有機溶媒の混合比率を調整することによって調整することができる。
なお、本分散は平均粒径で60nm以下となるまで行うことが好ましい。
【0033】
〔有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程〕
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法において、顔料分散体の保存安定性を高める観点から、工程(1)の後、工程(2)の前に、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程を有することが好ましい。
有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する方法としては、特に限定されないが、遠心分離処理による方法が好ましい。
【0034】
遠心分離処理としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
まず、工程(1)で得られた顔料分散液を、遠心分離機を用いて遠心分離し、液分と固形分とに分離し、液分を除去して固形分を回収する。
次に、有機顔料に未吸着のポリマーは有機溶剤中に存在するため、遠心分離中ないし遠心分離後に、該上層部(上澄み液)の全部又は一部を除去することにより、該未吸着ポリマーを適切に取り除くことができる。また、回収される固形分は、主としてグラフトポリマー(A)が有機顔料に吸着した粒子からなり、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁ないし底部に残存しているので、容易に回収することができる。
液分を除去して固形分を回収し、有機顔料に未吸着のポリマー量を2重量%以下にすることで、得られる顔料分散体の保存安定性、耐熱性を大幅に改善することができる。
【0035】
用いることのできる遠心分離機に特に制限はないが、例えば、特開2003−93811号公報等に記載のバスケット型遠心分離機が好ましく、無孔壁バスケット型遠心分離機の市販品としては、例えば、株式会社関西遠心分離機械製作所製のKBS型、タナベウィルテック株式会社製のS型の遠心分離機等が挙げられる。
遠心分離機の運転方法にも特に制限はない。(i)原液分散液を供給しながら分離液層を排出する連続式、及び(ii)原液分散液を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を排出するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
遠心分離処理における遠心加速度は、原液分散液に含有されている有機顔料に未吸着のポリマー量を低減させる観点から、好ましくは5,000〜50,000G、より好ましくは10,000〜30,000Gである。
【0036】
更に、遠心分離処理の場合は、遠心分離処理して得た固形分に有機溶剤を加えて再分散することもできる。
有機溶剤としては、前記のエステル系有機溶媒を用いることができる。
再分散の方法に特に限定はなく、前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等の分散機等を用いて混合、分散させることができる。
また、超音波ホモジナイザー等を用いて再分散することもできる。
高出力超音波ホモジナイザーの市販例としては、シャープ株式会社製のSILENTSONIC UT−204、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS−300T、同US−1200T、同RUS−1200T、同MUS−1200T、ヒールッシャー社製の超音波プロセッサーUIPシリーズ等が挙げられる。これらの超音波照射装置を用いて好ましくは25kHz以下の周波数で微細分散することができる。
超音波照射方式としては、アジテーター、マグネチックスターラー、ディスパー等の攪拌手段を併用するバッチ式、超音波照射部を備えたチャンバー中に分散液を一定流量で送るフロー式が挙げられる。超音波ホモジナイザーと前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等とを併用することもできる。
本工程で遠心分離処理して得た固形分に有機溶媒を加えた予備混合物を超音波照射処理等により再分散することで、有機顔料に未吸着のポリマー量が低減された高品質な顔料分散液を効率的に製造することができる。
【0037】
本工程によって得られる顔料分散液中における有機顔料に未吸着のポリマー量は、保存安定性及び耐熱性に優れたカラーフィルター用顔料分散体を得る観点から、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、理想的には未吸着のポリマーが存在しないことが好ましい。
【0038】
〔工程(2)〕
工程(2)は、工程(1)で得られた顔料分散液、又は前記有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程である。
化合物(B)を混合する方法に制限はないが、工程(1)で得られた顔料分散液を攪拌しながら化合物(B)を添加する方法が好ましく、顔料粒子の凝集や分散体のゲル化を抑制するために、化合物(B)を添加した後に、分散機等を用いて処理することが好ましい。好ましく用いられる分散機としては、超音波を用いた超音波洗浄機等の分散機が挙げられる。
化合物(B)の添加量としては、工程(1)で得られた顔料分散液中の有機顔料に対する重量比で、着色組成物の基板密着性を向上させる観点から、0.1/10〜10.0/10が好ましく、0.5/10〜5.0/10がより好ましく、0.6/10〜2.0/10が更に好ましい。着色組成物の現像性を向上させる観点から、0.6/10〜10.0/10が好ましく、1.0/10〜5.0/10がより好ましく、1.5/10〜10.0/10が更に好ましく、顔料分散体の保存安定性、及び着色組成物のコントラストを向上させる観点から、0.1/10〜5.0/10が好ましく、0.1/10〜1.5/10がより好ましく、0.5/10〜1.0/10が更に好ましい。グラフトポリマー(A)に対する重量比で、着色組成物の基板密着性を向上させる観点から、0.2/10〜18.0/10が好ましく、0.9/10〜9.0/10がより好ましく、1.1/10〜3.6/10が更に好ましい。着色組成物の現像性を向上させる観点から、1.1/10〜18.0/10が好ましく、1.8/10〜9.0/10がより好ましく、2.7/10〜18.0/10が更に好ましく、顔料分散体の保存安定性、及び着色組成物のコントラストを向上させる観点から、0.2/10〜9.0/10が好ましく、0.2/10〜2.7/10がより好ましく、0.9/10〜1.8/10が更に好ましい。
【0039】
〔カラーフィルター用顔料分散体〕
本発明の製造方法によって得られるカラーフィルター用顔料分散体は、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)、有機顔料、エステル系有機溶媒、及び(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を含有する。
顔料分散体中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
顔料分散体中の有機顔料に対するグラフトポリマー(A)の重量比〔グラフトポリマー(A)/有機顔料〕は、顔料分散体の保存安定性の観点から、0.4〜1.2が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。
顔料分散体中の有機顔料に対する化合物(B)の重量比〔化合物(B)/有機顔料〕は、顔料分散体の保存安定性の観点から、0.4〜1.2が好ましく、0.5〜0.8がより好ましい。
顔料分散体中の化合物(B)に対するグラフトポリマー(A)の重量比〔グラフトポリマー(A)/化合物(B)〕は、着色組成物の基板密着性を向上させる観点から、1〜20が好ましく、2〜15がより好ましく、着色組成物の現像性を向上させる観点から、4〜15が好ましく、4〜10がより好ましく、6〜9が更に好ましく、顔料分散体の保存安定性、及び着色組成物のコントラストを向上させる観点から、2〜4が好ましく、2.5〜3.5がより好ましい。
顔料分散体中のエステル系有機溶媒の含有量は、良好な着色性及び分散体の低粘度化の観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
【0040】
顔料分散体中の有機顔料の体積中位粒径(D50)は、カラーフィルター用色材として良好なコントラスト比を得るために、80nm以下が好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。
なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)の値は、製造直後の顔料分散体をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で300倍に希釈し、粒度分析計(シスメックス社製、ZETASIZER Nano−ZS)を用いて、測定条件として、例えばジケトピロロピロール系顔料の場合、顔料粒子屈折率:1.51、顔料密度:1.45g/cm3、PGMEA屈折率:1.400、PGMEA粘度:1.3cpsを入力して、20℃で測定することができる。
本発明の製造方法によって得られる顔料分散体の固形分12重量%における粘度(20℃)は、カラーフィルター用色材として良好な粘度とするために、1〜200mPa・sが好ましく、1〜100mPa・sがより好ましい。
【0041】
〔カラーフィルター用着色組成物〕
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、前記製造方法によって得られたカラーフィルター用顔料分散体を含有するが、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)、有機顔料、エステル系有機溶媒、及び(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)以外にバインダー成分等を含有することができる。
バインダー成分としては、電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分等が挙げられる。
電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分には、アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマーや電離放射線により活性化する光重合開始剤を含有し、更に多官能オリゴマー、単官能のモノマー、及び増感剤等を配合することができる。これらの樹脂、オリゴマー、モノマー、添加剤等は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電離放射線硬化性成分からなる着色組成物中のバインダー成分の含有量は、溶媒を除いた有効分中20〜80重量%が好ましく、光重合開始剤の含有量は、溶媒を除いた有効分中0.2〜20重量%が好ましい。
【0042】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に用いられるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶性を有するもの(0.05重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に20℃で1重量%以上溶解するもの)であればよく、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、γ−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート等の中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示することができ、上記のコポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等も例示できる。これらの中では、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより得られる、エチレン性不飽和結合を有するポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は5,000〜50,000が好ましい。
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体が好ましく挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がより好ましい。
アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合割合(モル比)は、90/10〜50/50であることが好ましく、80/20〜70/30であることがより好ましい。
【0043】
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等が挙げられる。本発明の顔料分散体中の多官能モノマーの含有量は、溶媒を除いた有効分中10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類等が挙げられる。例えば4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。なお、グラフトポリマー等の分子量、固形分、エポキシ価、酸価、顔料分散体の粘度、保存安定性、硬化膜の現像性、基板密着性、コントラスト比の測定、評価は以下の方法により行った。
(1)グラフトポリマー等の数平均分子量、重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)グラフトポリマーの固形分の測定
シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10部を量り採り、そこにポリマー溶液2部(サンプル量)を加えてガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2時間乾燥した。乾燥後の重さを計り、次式より固形分を算出した。
固形分=[〔サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレ+ガラス棒+無水硫酸ナトリウムの重さ))〕/サンプル量]×100
(3)グラフトポリマー(A)製造時のエポキシ価の測定
ポリマー溶液に塩酸を加え、クロルヒドリン化により消費された量を水酸化カリウムのmg数で表したものをいう。
(4)グラフトポリマーの酸価の測定
JIS K 0070 に従い測定した。
【0045】
(5)顔料分散体の粘度の測定
顔料濃度10%に合わせた分散体2mLを、20℃で5分間保持した後、E型粘度計(ローターNo.2、20rpm、20℃)を用いて、顔料分散体の粘度を測定した。
(6)顔料分散体の顔料濃度の測定
下記実施例1の工程(1)と同様の方法で、顔料の量を変えた混合物を沈降物がなくなるまで分散し、顔料濃度既知の分散体3点を調整した。吸光度計(U−3010 spectrophotometer)で、550nmにおける吸光度と濃度の検量線を作成し、実施例及び比較例の顔料分散体の吸光度計で測定した吸光度より顔料濃度を算出した。
(7)顔料分散体中のグラフトポリマー濃度の測定
前記(2)の方法によって得られた顔料分散体の不揮発分(%)の値と、前記(6)の方法によって得られた顔料濃度(%)の値より、次式によって計算した。
グラフトポリマー濃度(%)=不揮発分(%)−顔料濃度(%)
【0046】
(8)顔料分散体の保存安定性
実施例及び比較例で得られた顔料分散体をガラス製密閉容器に充填し、40℃で7日間保存後の分散体粘度をE型粘度計(東機産業株式会社製、RE80L)を用いて25℃で粘度を測定し、下記式より粘度変化率を求め、保存安定性を評価した。変化率の絶対値が小さい方が、保存安定性が良好である。
粘度変化率(%)=((〔保存後の粘度〕−〔保存前の粘度〕)/〔保存前の粘度〕)×100
【0047】
(9)コントラストの評価(硬化膜のコントラスト比の測定)
顔料濃度を10%に調整した顔料分散体1.00部、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(バインダー、モル比:30/70、重量平均分子量:14000、固形分40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という)溶液)0.15部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(多官能モノマー:日本化薬株式会社製、DPHA)0.046部、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(光重合開始剤:和光純薬工業株式会社製)0.035部、PGMEA0.474部を均一になるまで混合し、着色組成物を得た。ガラス基板上に顔料分散組成物をスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜に紫外線ファイバースポット照射装置(株式会社モリテックス製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜を得た。硬化膜のコントラスト比をコントラスト比測定器(壺坂電機株式会社製、CT−1)で測定した。
コントラスト比の値が大きいものほど、コントラストが良好である。
【0048】
(10)硬化膜の現像性の評価
前記(9)のコントラスト測定用に調整した着色組成物をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥した。次いで、得られた塗膜にフォトマスクを載せ、紫外線ファイバースポット照射装置(株式会社モリテックス製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜基板を得た。
次いで、この硬化膜基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.1%水溶液中でゆっくり揺動させ、30秒刻みで、水溶液から引き上げ、次いで水シャワーでリンスし未硬化部分を除去した。露光パターンが最も早く得られるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液浸漬時間を現像時間とした。現像時間が短いほど現像性に優れる。
(11)基板密着性の評価
前記(10)で得られた硬化膜基板のパターンの形成性を目視により観察し、下記の基準で基板密着性を評価した。
AA:完全なパターンが形成できており、パターンの端部に乱れがない。
A:完全なパターンが形成できているが、パターンの端部に乱れが見られる。
B:パターンの一部が形成できているが、一部は欠損している。
C:パターンのほぼ全体が欠損している。
パターンの形成性が良好であるほど基板密着性に優れる。
【0049】
製造例1〔グラフトポリマー(A)の合成〕
(1)ポリ(メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・N−ビニルピロリドン)(ポリ(GMA−HEMA−VP))(a1成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにN−ビニル−2−ピロリドン(以下、「VP」という)100部、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」という)15.2部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」という)24.0部、メルカプトエタノール(以下「ME」という)3.0部、エタノール178.0部を仕込み、窒素置換を行った。77℃で攪拌しながら、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、アゾ系重合開始剤、商品名:V−65。以下、「V−65」という)3.9部をエタノール41.8部に溶解した液を添加した。
77℃で攪拌しながら、VP 150.0部、GMA 76.2部、HEMA 120.2部、前記重合開始剤6.4部、エタノール445.3部、ME6.8部を混合した溶液を、90分かけて滴下した。
滴下終了した後に更に、GMA 60.9部、HEMA 96.1部、V−65 12.0部、エタノール167部、ME3.1部を混合した溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、77℃で攪拌後、V−65 0.6部とエタノール15.0部を加えた。更に77℃で1時間攪拌した後、V−65 0.6部とエタノール15.0部を加えた。更に1時間攪拌した後、冷却し、ポリ(GMA−HEMA−VP)(a1)のエタノール溶液を得た。
溶液の固形分は40.5%であり、得られたポリ(GMA−HEMA−VP)(a1)の数平均分子量は3900、重量平均分子量は10500、エポキシ価は84mgKOH/gであった。
【0050】
(2)片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸ベンジル100部、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)4.0部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という)50部を仕込み、窒素置換したあと、80℃で攪拌しながら、メタクリル酸ベンジル400部、3−メルカプトプロピオン酸16.0部、PGMEA 200部、V−65 4部を3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、V−65 4部、3−メルカプトプロピオン酸1.8部、PGMEA150部を加えた。更に、80℃で2時間攪拌した後冷却し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は57.0%であり、得られた末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2)の酸価は18mgKOH/g、数平均分子量は2400、重量平均分子量は4600であった。
【0051】
(3)エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるグラフトポリマー(A)の製造
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに前記(1)で得られた(a1)溶液100部(固形分40.5部)、前記(2)で得られた(a2)溶液196.4部(固形分111.9部)、PGMEA87部、エタノール87部、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)4.0部を仕込み、90℃で15時間攪拌した。酸価を測定した結果、反応率は96%であった。冷却後、エバポレーターにて(バス温63℃、圧力92kPa)、エタノールを除去し、ポリ(HEMA−VP−g−BzMA)(A)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は29%であり、得られたポリ(HEMA−VP−g−BzMA)(A)の数平均分子量は6300、重量平均分子量は28000であった。
【0052】
製造例2〔アクリル酸系グラフトポリマーの合成〕
(1)片末端不飽和結合を有するマクロモノマーの合成(b1)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、製造例1(2)で得られた片末端にカルボキシル基を有するポリメタクリル酸メチル(a2)溶液100部(固形分57部)、GMA5.6部、TBAB1.7部、メトキシフェノール0.17部、PGMEA2部を仕込み、90℃で6時間攪拌し、マクロモノマー(b1)のPGMEA溶液を得た。酸価の結果から反応率は96%であった。
溶液の固形分は60.5%であり、得られたマクロモノマー(b1)の数平均分子量は1700、重量平均分子量は3500であった。
(2)アクリル酸系グラフトポリマーの合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、アクリル酸(以下、「AA」という)100部、前記(1)で得られたマクロモノマー(b1)溶液233部(固形分141部)、PGMEA350部、エタノール150を仕込み、窒素置換したあと、80℃で攪拌しながら、PGMEA67部、V−65 7部、ME1部の混合溶液を加えた後、アクリル酸900部、マクロモノマー(b1)溶液2100部(固形分1270部)、PGMEA3150部、エタノール1350部、V−65 60部、ME12部の混合溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、V−65 3部、PGMEA67部を加えた。反応終了後、エバポレーターにてエタノールを除去し、ポリ(AA−g−PMMA)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は35.5%であり、得られたアクリル酸系グラフトポリマーの酸価は125mgKOH/gであった。
【0053】
実施例1(顔料分散体(1)の調製)
PGMEA83.3g、製造例1で得られたグラフトポリマー(A)溶液51.7g(固形分15.0g)、ジケトピロロピロール系顔料(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BK−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))15.0g、さらに0.3mmφのジルコニアビーズ300gを500mLの容器に入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製、400W、460rpm)にて3時間撹拌した後、平均粒径が100nm以下となったことを確認し、ジルコニアビーズを除去して予備分散体を得た。
次いで、250mLの容器に、この予備分散体100gと、0.05φジルコニアビーズ200gを入れ、前記ペイントシェーカーで24時間攪拌し、平均粒径が60nm以下となったことを確認し、ジルコニアビーズを除去した後、顔料分散液を得た。(工程(1))
工程(1)で得られた顔料分散液40gをPGMEA80gで希釈し、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CP56G)を用いて、26323Gの条件下で12時間遠心分離後、上澄みを捨て、沈降物9gを得た。
得られた沈降物9gにPGMEA 31gを加え、超音波洗浄機(シャープ株式会社製、SILENTSONIC UT−204)を用いて、超音波照射して再分散処理を行い、顔料濃度10%、グラフトポリマー濃度5.5%を含む顔料分散体を得た。(顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程)
該顔料分散体20gを攪拌しながら、化合物(B)として、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルとリン酸ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]の混合物(ローディア日華株式会社製、Sipomer−PAM4000(リン酸(2−メタクリロキシエチル)50重量%、リン酸ビス(2−メタクリロキシエチル)50重量%。50重量%水溶液の市販品より水分を除去したもの)0.7gを添加し、更に上記超音波洗浄機にて混合し顔料分散体(1)を得た。顔料分散体(1)の評価結果と、顔料分散体(1)を含有する着色組成物(〔0048〕の調製例参照)の評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例2、3及び比較例1(顔料分散体(2)〜(4)の調製)
実施例1において、前記Sipomer−PAM4000(ローディア日華社製)の量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散体(2)〜(4)を得た。顔料分散体(2)〜(4)の評価結果と、顔料分散体(2)〜(4)を含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0055】
比較例2(顔料分散体(5)の調製)
PGMEA83.3g、製造例1で得られたグラフトポリマー(A)溶液51.7g(固形分15.0g)、前記Sipomer−PAM4000(ローディア日華株式会社製)1.05g、ジケトピロロピロール系顔料(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BK−CF」)15.0g、さらに0.3mmφのジルコニアビーズ300gを500mLの容器に入れ、前記ペイントシェーカーにて3時間撹拌した後、ジルコニアビーズを除去して予備分散体を得た。
次いで、この予備分散体を用いて、実施例1で行ったと同じ工程(1)及び(顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程)を行い、顔料濃度10%、グラフトポリマー濃度5.5%の顔料分散体を得た。この顔料分散体の評価結果と、それを含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0056】
比較例3(顔料分散体(6)の調製)
PGMEA77.7g、製造例2で得られたアクリル酸系グラフトポリマー溶液42.3g(固形分15.0g)、前記Sipomer−PAM4000(ローディア日華株式会社製)1.05g、ジケトピロロピロール系顔料(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ株式会社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BK−CF」)15.0g、さらに0.3mmφのジルコニアビーズ300gを500mlのポリ容器に入れ、ペイントシェーカーにて3時間撹拌した後、ジルコニアビーズを除去して予備分散体を得た。
次いで、この予備分散体を用いて、実施例1で行ったと同じ工程(1)及び(顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程)を行い、顔料濃度10%、グラフトポリマー濃度6.0%である顔料分散体を得た。この顔料分散体の評価結果と、それを含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から、実施例1〜3の顔料分散体は、比較例1〜3の顔料分散体と比較して、その顔料分散体を含有する着色組成物の現像性、基板密着性、コントラストに優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):有機顔料、窒素原子を含有するグラフトポリマー(A)及びエステル系有機溶媒を分散して顔料分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた顔料分散液と(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)を混合する工程
【請求項2】
グラフトポリマー(A)の窒素原子がアミド基由来のものである、請求項1に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
グラフトポリマー(A)が水酸基を有する、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
グラフトポリマー(A)の側鎖が(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)が、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル及び/又はリン酸ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エチル]である、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
〔グラフトポリマー(A)/(メタ)アクリル基とリン酸基を有する化合物(B)〕の重量比が1〜20である、請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項7】
有機顔料がジケトピロロピロール系顔料である、請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項8】
工程(1)の後、工程(2)の前に、顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)を除去する工程を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって得られるカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。

【公開番号】特開2012−98384(P2012−98384A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244237(P2010−244237)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】