説明

カラーフィルター用顔料分散体の製造方法

【課題】コントラストと現像性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供する。
【解決手段】〔1〕有機顔料、エステル系有機溶媒、主鎖にビニルピロリドン由来の構成単位を含有し、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有するグラフトポリマー(A)、及び酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gであるポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物を分散して分散体を得る工程(1)、及び得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程(2)を有する顔料分散体の製造方法であって、重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.7〜1.3であり、工程(2)では0.2〜0.5である、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法、並びに〔2〕前記方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、顔料分散体に樹脂等を配合した着色組成物をガラス等の透明基板に塗布した後、露光・硬化、現像、熱硬化させるフォトリソグラフィー法等によって製造されている。ここで用いられる顔料分散体は、顔料を有機溶媒に分散した非水系顔料分散体であるが、非水系顔料分散体の製造方法として、グラフトポリマー等の高分子分散剤を用いる製造方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、顔料分散体の保存安定性及び耐熱性の改善を目的として、顔料、顔料分散ポリマー、及び有機溶媒を含有し、顔料に未吸着のポリマー量が顔料分散体中に2重量%以下であるカラーフィルター用顔料分散体が開示されている。
また、特許文献2には、高いコントラストが得られるカラーフィルターを得ることを目的として、顔料、溶剤、分子内にポリエステル鎖を有する分散剤、及び含窒素複素環構造を有する単量体に由来する共重合単位を含む重合体を含有する顔料分散組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161692号公報
【特許文献2】特開2008−266627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトリソグラフィー法を用いたカラーフィルターの製造において、用いられる着色組成物は、現像液によってすばやくパターンを形成する現像性に優れる必要がある。一方で、鮮明な画像を得るために、得られた光硬化膜は高いコントラストが要求されている。しかし、通常、コントラストを向上するためには、有機溶媒に分散するための分散剤を増やすなどして、分散される顔料粒子を微細化する必要があるが、微細化された顔料表面やこの分散剤は水性の現像液との親和性が低いためか、現像性が低下してしまい、これらは両立できないという問題がある。
本発明は、コントラストと現像性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法において、有機顔料を特定のグラフトポリマーと特定のポリアミン系分散剤とで分散し、その後有機顔料に未吸着のポリマーの少なくとも一部を除去することにより、(i)顔料粒子を微細安定化しつつ、現像液との親和性も維持できる硬化膜を得ることができること、(ii)得られた硬化膜をカラーフィルターとして用いると高いコントラストと十分な現像性が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕及び〔2〕を提供する。
〔1〕下記工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法であって、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.7〜1.3であり、工程(2)では0.2〜0.5である、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):有機顔料、エステル系有機溶媒、主鎖にビニルピロリドン由来の構成単位を含有し、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有するグラフトポリマー(A)、及び酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gであるポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物を分散して分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程
〔2〕前記〔1〕の方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コントラストと現像性に優れた硬化膜を形成することができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する方法であって、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.7〜1.3であり、工程(2)では0.2〜0.5であることを特徴とする。
工程(1):有機顔料、エステル系有機溶媒、主鎖にビニルピロリドン由来の構成単位を含有し、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有するグラフトポリマー(A)、及び酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gであるポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物を分散して分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程
【0009】
本発明においては、前記工程(1)及び(2)により得られるカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物が、コントラストと現像性に優れる硬化膜を形成することができる理由は定かではないが、次のように考えられる。
グラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)は、それぞれ特定量のピロリドン由来の構成単位部分とアミン部分を有し、これらが有機顔料に吸着し、更にグラフトポリマー(A)の側鎖である(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位部分が、エステル系有機溶媒と溶媒和することにより、有機顔料を微細かつ安定に分散することができるため、得られる硬化膜のコントラストが優れると考えられる。
本発明においては、これらグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)の内、有機顔料に未吸着の少なくとも一部を除去し、有機顔料に対して必要量のグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)を残す。これにより、有機顔料へ吸着していないものや吸着力の弱いものが選択的に除かれ、硬化膜を形成したときに有機顔料の粒子間を固着、凝集させてしまうポリマー成分を除去でき、純度の高いグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)が表面に吸着している有機顔料粒子が得られると考えられる。そうして、有機顔料表面に存在するグラフトポリマー(A)由来の(メタ)アクリル酸エステル部分が、カラーフィルター用着色組成物中でも良好な分散状態を保つため、得られる硬化膜のコントラストが優れると考えられ、ポリアミン系分散剤(B)由来の特定量の酸基によって、アルカリ現像液への有機顔料粒子の分散性が向上し、現像性も向上するものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分、並びに工程(1)及び(2)について説明する。
【0010】
[有機顔料]
本発明に用いられる有機顔料(以下、単に「顔料」ともいう)としては、カラーフィルターに好適に用いられるものであれば特に制限はなく、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料等が挙げられる。
アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー150等のニッケルアゾ錯体系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表されるジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。なお、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子が好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Irgaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
有機顔料は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径を、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。有機顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測してその平均値をその粒子の粒子径とし、100個以上の粒子について、それぞれの粒子の体積を、粒子径を一辺とする立方体と近似して体積平均粒子径を求め、それを平均一次粒子径とする。
上記の有機顔料は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、有機顔料とエステル系有機溶媒との親和性を高め、分散安定性を高めるという観点から、有機顔料の表面に、樹脂や高分子、顔料誘導体等により予め表面処理を施した顔料を用いることもできる。
【0013】
[エステル系有機溶媒]
本発明で用いられるエステル系有機溶媒は特に限定されないが、平滑性に優れ、現像性に優れる硬化膜を得る観点から、沸点が好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上の高沸点有機溶媒であることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、及び(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート等が好ましく挙げられる。
(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)等が挙げられる。
上記エステル系有機溶媒の中では、グラフトポリマー(A)及び(B)の溶解性と、有機顔料、特にジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)がより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が更に好ましい。
上記のエステル系有機溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0014】
[グラフトポリマー(A)]
本発明に用いられるグラフトポリマー(A)(以下、単に「グラフトポリマー(A)」ともいう)は、有機顔料への吸着性、及び得られる硬化膜のコントラストを向上させる観点から、主鎖にビニルピロリドン由来の構成単位を含有し、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
グラフトポリマー(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、主鎖及び側鎖のいずれにも、前記モノマーと共重合可能なその他のモノマーを共重合したものであってもよい。
【0015】
グラフトポリマー(A)の重量平均分子量は、有機顔料への吸着性の観点及び粘度上昇の抑制の観点から、好ましくは1,000〜1000,000、より好ましくは2,000〜800,000、更に好ましくは5,000〜700,000、より更に好ましくは10,000〜100,000である。
グラフトポリマー(A)の主鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜50,000、より好ましくは1,000〜30,000、更に好ましくは2,000〜20,000である。また、主鎖の重量平均分子量は、同様の観点から、好ましくは1,500〜150,000、より好ましくは3,000〜90,000、更に好ましくは6,000〜60,000である。
グラフトポリマー(A)の側鎖の数平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜10,000、更に好ましくは700〜6000である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
グラフトポリマー(A)は、現像性に優れた硬化膜を得る観点から、実質的に酸価を有さないことが好ましい。
【0016】
<グラフトポリマー(A)の主鎖の構成単位となるモノマー>
グラフトポリマー(A)の主鎖の構成単位となるモノマーは、顔料への吸着性の観点から、ビニルピロリドンを含有する。
ビニルピロリドンとしては、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
グラフトポリマー(A)の全構成単位中のビニルピロリドン由来の構成単位の含有量は、有機顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0017】
また、有機顔料への吸着性の観点から、主鎖の構成単位となるモノマーとしては、更に水酸基を含有するビニルモノマーを用いることが好ましい。
水酸基を含有するビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
これらの水酸基を含有するビニルモノマーの中では、有機顔料への吸着性の観点から、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルがより好ましい。
グラフトポリマー(A)の全構成単位中の水酸基を含有するビニルモノマー由来の構成単位の含有量は、有機顔料への吸着性の観点、及び粘度上昇の抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは2〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%、更に好ましくは7〜18重量%である。
【0018】
<グラフトポリマー(A)の側鎖の構成単位となるモノマー>
グラフトポリマー(A)の側鎖の構成単位となるモノマーは、顔料のエステル系有機溶媒への分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルを含有する。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル及び/又は(メタ)アクリル酸ベンジルがより好ましく、(メタ)アクリル酸ベンジルが更に好ましい。
上記の(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、グラフトポリマー(A)の側鎖はポリ(メタ)アクリル酸ベンジルであることが好ましい。
グラフトポリマー(A)の側鎖中の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、特に制限はないが、側鎖中の全構成単位に対して、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%、より更に好ましくは実質的に100重量%である。
【0019】
<グラフトポリマー(A)の製造>
グラフトポリマー(A)の製造方法としては、(i)主鎖の構成単位であるモノマーと側鎖を構成するマクロモノマーとを共重合する方法(マクロモノマー法)、及び(ii)主鎖を構成するポリマーと側鎖を構成するポリマーとをカップリング反応させる方法(カップリング法)が挙げられるが、有機顔料の微細安定化の観点から、(ii)カップリング法が好ましい。
【0020】
(カップリング法によるグラフトポリマー(A)の製造)
カップリング反応に用いられる主鎖を構成するポリマーは、反応性官能基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。該ポリマーは、主鎖の構成単位であるモノマーの混合物を共重合することにより得ることができる。
反応性官能基を含有するビニルモノマーとしては、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基を含有するモノマーが挙げられ、反応性、重合速度の面から、エポキシ基を含有するビニルモノマーが好ましく、グリシジル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルがより好ましい。
カップリング反応に用いられる主鎖を構成するポリマーが反応性官能基として、エポキシ基を含有する場合、主鎖のエポキシ価は、側鎖との反応性等の観点から、45〜125mgKOH/gが好ましく、55〜115mgKOH/gがより好ましく、65〜105mgKOH/gが更に好ましい。
なお、エポキシ価の測定は実施例記載の方法により行うことができる。
【0021】
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、その片末端に、主鎖を構成するポリマーの反応性官能基と反応する反応性官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
主鎖を構成するポリマーの反応性官能基がエポキシ基である場合は、側鎖を構成するポリマーの片末端はカルボキシ基又はアミノ基であることが好ましい。
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、例えば、反応性官能基であるカルボキシ基又はアミノ基を含有する重合開始剤や連鎖移動剤を使用し、溶液重合によって得ることが好ましい。
側鎖を構成するポリマーと主鎖を構成するポリマーとのカップリング反応は、それぞれの反応性官能基が十分反応する条件で行えばよいが、触媒存在下、有機溶媒中にそれぞれのポリマーを溶解させて行うことが好ましい。
触媒としては、第四級アンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩、トリエチルアミン等の第三級アミン、アルカリ金属の水酸化物、無機酸、スルホン酸、カルボン酸、固体酸、固体塩基等が挙げられる。これらの中では、第四級アンモニウムハライドがより好ましく、テトラブチルアンモニウムブロマイドが更に好ましい。
【0022】
[酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gであるポリアミン系分散剤(B)]
本発明に用いられるポリアミン系分散剤(以下、単に「ポリアミン系分散剤(B)」ともいう)は、酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gである。
ポリアミン系分散剤(B)の酸価は、現像性に優れた硬化膜を得る観点から、12〜30mgKOH/gであることが好ましく、15〜28mgKOH/gであることがより好ましく、20〜28mgKOH/gであることが更に好ましい。また、ポリアミン系分散剤(B)のアミン価は、コントラストに優れた硬化膜を得る観点から、7〜45mgKOH/gであることが好ましく、8〜42mgKOH/gであることがより好ましい。
酸価及びアミン価は、実施例記載の方法により求めることができる。
【0023】
ポリアミン系分散剤(B)は、主鎖がポリアミン及び/又はポリイミン、側鎖がポリエステルであるグラフトポリマーであることが好ましい。
前記グラフトポリマーの主鎖であるポリアミンとしては、ポリアリルアミン、ポリ(n−アルキル)アリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられ、主鎖であるポリイミンとしては、炭素数2〜6のアルキレンイミンの重合体が挙げられる。ポリイミンとは、ポリ(C24アルキレンイミン)が好ましく、ポリエチレンイミンがより好ましい。
主鎖であるポリアミン及び/又はポリイミンは、直鎖であってもよいが、枝分れ鎖であることが好ましく、各種の市販品から目的とする必要物性に応じて適当な分子量のものを、選択し使用することができる。該ポリアミン及び/又はポリイミンの重量平均分子量は、300〜10,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
側鎖であるポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸又はラクトンを、エステル化触媒(例えばチタン酸テトラブチル、ナフテン酸ジルコニウム、酢酸亜鉛等)の存在下でカルボン酸(例えば酢酸、カプロン酸、ラウリン酸等)と130℃〜200℃で加熱重合することにより調製することができる。
ヒドロキシカルボン酸としては、炭素数8〜20、好ましくは炭素数14〜20の飽和又は不飽和のヒドロキシカルボン酸が挙げられ、その好適例としては、ω-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸等が挙げられる。
前記グラフトポリマーの中では、主鎖がポリアリルアミン又はポリエチレンイミンで、側鎖がω-ヒドロキシステアリン酸又は12-ヒドロキシステアリン酸の重合体、ラクトンの開環重合体であるポリエステルであることが好ましく、主鎖がポリエチレンイミン、側鎖がω-ヒドロキシステアリン酸又は12-ヒドロキシステアリン酸の重合体であるポリエステルであることがより好ましい。
【0024】
ポリアミン系分散剤(B)としては、例えば特許第1940521号、特許第1570685号、特許第3504268号、特表2003−509205号等の公報等に記載されているものを使用することができる。
ポリアミン系分散剤(B)の好ましい市販品としては、日本ルーブリゾール株式会社製の商品名:ソルスパース24000GR(酸価25mgKOH/g、アミン価40mgKOH/g、主鎖:ポリイチレンイミン、側鎖:12-ヒドロキシステアリン酸の重合体であるポリエステル)、ソルスパース24000SC(酸価25mgKOH/g、アミン価40mgKOH/g)、同32000(酸価15mgKOH/g、アミン価30mgKOH/g)、同33000(酸価26mgKOH/g、アミン価41mgKOH/g);味の素ファインテクノ株式会社製の商品名:アジスパーPB−821(酸価17mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g、主鎖:ポリアリルアミン、側鎖:ポリカプロラクトン)、同PB−822(酸価12mgKOH/g、アミン価17mgKOH/g)、同PB−824(酸価21mgKOH/g、アミン価17mgKOH/g)、同PB−827(酸価13mgKOH/g、アミン価17mgKOH/g)、同PB−881(酸価17mgKOH/g、アミン価17mgKOH/g)等が挙げられる。
【0025】
[顔料分散体の製造方法]
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する。
工程(1):有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物を分散して分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程
ただし、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.7〜1.3であり、工程(2)では0.2〜0.5である。
【0026】
<工程(1)>
工程(1)における分散方法に特に制限はなく、有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物(以下、単に「混合物」ともいう)を一度の分散で目的とする顔料分散液を得てもよいが、該混合物を予備分散して、更に本分散を行うことが、より微細で均一な顔料分散液を得る観点から好ましい。
【0027】
(予備分散)
工程(1)の予備分散は、有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)からなる全成分を一度に混合し、分散してもよいが、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)を予め混合して予備混合物を調製し、得られた予備混合物に有機顔料を混合し、分散して最終的な混合物を得ることが好ましい。
予備分散工程において、有機顔料に必要量のグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)を付着させ、ひいては得られる硬化膜のコントラストと現像性を向上させる観点から、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕は0.7〜1.3であり、0.8〜1.2とすることが好ましく、0.9〜1.1とすることがより好ましい。
顔料分散液中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
予備分散工程における、顔料分散液中のグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)の合計含有量は、分散体の低粘度化の観点、及びコントラストに優れた硬化膜を得る観点から、2〜15重量%が好ましく、4〜15重量%がより好ましい。
本工程における、エステル系有機溶媒の含有量は、均一に分散させる観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
予備分散工程における分散時間は特に制限はないが、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜4時間がより好ましく、1〜3時間が更に好ましい。
【0028】
予備分散で用いる混合分散機に特に制限はなく、公知の種々の分散機を用いることができる。例えば、アンカー翼等を備えた一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラタックス(IKAジャパン株式会社製、商品名)等のホモミキサー等、ウルトラディスパー、デスパミル(浅田鉄工株式会社、商品名)、マイルダー(株式会社荏原製作所、大平洋機工株式会社、商品名)、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(以上、プライミクス株式会社、商品名)等の高速撹拌混合装置、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機が挙げられ、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社、商品名)、アルティマイザー、スターバースト(スギノマシン株式会社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等の高圧式分散機、ペイントシェーカー、ビーズミル、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製、商品名)等のメディア式分散機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせて使用することもできる。
これらの中では、有機顔料を有機溶媒中に均一に混合させる観点から、ホモミキサー等の高速撹拌混合装置、ペイントシェーカーやビーズミル等のメディア式分散機がより好ましい。
メディア式分散機を用いる場合に、予備分散工程で用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの直径としては、有機顔料中の凝集粒子を解砕する観点から、0.1〜0.5mmが好ましく、0.1〜0.4mmがより好ましい。
【0029】
(本分散)
本分散は、予備分散で得られた予備分散液を分散処理する工程であり、前記予備分散工程で得られた混合物を更に微細化するために行われるが、有機顔料を微細化する観点から、メディア式分散機を用いることが好ましく、前記の高圧式分散機を併用してもよい。
本分散工程で用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの直径としては、有機顔料を微細化する観点から、0.07mm以下がより好ましく、0.05mm以下が更に好ましく、メディアを顔料と分離する観点から、0.005mm以上がより好ましく、0.01mm以上が更に好ましい。
以上の観点から、本分散工程で用いるメディア直径としては、0.003〜0.1mmが好ましく、0.01〜0.07mmがより好ましい。
本分散工程で用いるメディア式分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル等が好ましく、市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。
得られる顔料分散液の保存安定性の観点から、分散時の温度を10〜35℃に保つことが好ましく、15〜30℃がより好ましく、18〜27℃が更に好ましい。
本分散の分散時間は、有機顔料を十分に微細化する観点から、3〜200時間が好ましく5〜50時間がより好ましい。
【0030】
顔料分散液中のグラフトポリマー(A)の含有量は、顔料分散液の低粘度化の観点、及びコントラストに優れた硬化膜を得る観点から、3〜15重量%が好ましく、5〜10重量%がより好ましい。
本分散工程における、顔料分散液中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、6〜20重量%がより好ましい。
また、本工程における、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)の重量比〔グラフトポリマー(A)/有機顔料〕は、分散体の低粘度化、及び硬化膜のコントラスト向上の観点から、0.3〜1.5が好ましく、0.6〜1.0がより好ましい。
【0031】
工程(1)におけるポリアミン系分散剤(B)の含有量は、コントラストに優れた硬化膜を得る観点から、有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物中0.4〜6重量%が好ましく、1.0〜5重量%がより好ましく、1.5〜4重量%がより好ましい。
工程(1)における〔グラフトポリマー(A)/ポリアミン系分散剤(B)〕の重量比は、コントラストに優れた硬化膜を得る観点から、0.1〜6が好ましく、0.5〜5がより好ましく、1.0〜4が更に好ましい。
本工程における、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕は、有機顔料に必要量のグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)を付着させる観点から、該重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕は0.7〜1.3であり、0.8〜1.2とすることが好ましく、0.9〜1.1とすることがより好ましい。
【0032】
本工程における、エステル系有機溶媒の含有量は、均一に分散させる観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜85重量%がより好ましい。
また、顔料分散液の粘度は、1〜100mPa・s(20℃)が好ましく、1〜80mPa・s(20℃)がより好ましく、1〜50mPa・s(20℃)が更に好ましい。該粘度は、分散機の動力や、有機顔料、グラフトポリマー(A)、及びエステル系有機溶媒の混合比率を調整することによって調整することができる。
グラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の全体の平均酸価は、現像性に優れた硬化膜を得る観点から、2〜15mgKOH/gであることが好ましく、3〜12mgKOH/gであることがより好ましい。
【0033】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程である。
ただし、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(2)では0.2〜0.5である。
グラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去する方法としては、特に限定されないが、遠心分離処理、ろ過処理による方法が好ましい。
【0034】
(遠心分離処理)
遠心分離処理としては、具体的には以下の方法が挙げられる。
まず、工程(1)で得られた顔料分散液を、遠心分離機を用いて遠心分離し、液分と固形分とに分離し、液分を除去して固形分を回収する。
次に、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)は有機溶剤中に存在するため、遠心分離中ないし遠心分離後に、該上層部(上澄み液)の全部又は一部を除去することにより、該未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)を適切に取り除くことができる。また、回収される固形分は、主としてグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)が有機顔料に吸着した粒子からなり、遠心分離後にスラリー状ないしケーキ状となって、遠心分離機の側壁ないし底部に残存しているので、容易に回収することができる。
液分を除去して固形分を回収し、有機顔料に未吸着のポリマー及び分散剤量を合計で2重量%以下にすることで、得られる顔料分散体の保存安定性、耐熱性、及び得られる硬化膜の現像性を大幅に改善することができる。
【0035】
用いることのできる遠心分離機に特に制限はないが、例えば、特開2003−93811号公報等に記載のバスケット型遠心分離機が好ましく、無孔壁バスケット型遠心分離機の市販品としては、例えば、株式会社関西遠心分離機械製作所製のKBS型、タナベウィルテック株式会社製のS型の遠心分離機等が挙げられる。
遠心分離機の運転方法にも特に制限はない。(i)原液分散液を供給しながら分離液層を排出する連続式、及び(ii)原液分散液を供給した後、分離液層が形成されたところで該液層を排出するバッチ式のいずれの運転方法であってもよい。
遠心分離処理における遠心加速度は、原液分散液に含有されている有機顔料に未吸着のポリマー量を低減させる観点から、好ましくは5,000〜50,000G、より好ましくは10,000〜30,000Gである。
【0036】
(再分散処理)
更に、遠心分離処理の場合は、遠心分離処理して得た固形分に有機溶剤を加えて再分散することもできる。有機溶剤としては、前記のエステル系有機溶媒を用いることができる。
再分散処理は、有機顔料の凝集体を解砕・安定化することを目的とする。有機顔料は、微粒化に伴って、表面積、表面エネルギーが増加し、この表面エネルギーを低下させようとして有機顔料は再凝集を始めることから、この有機顔料を更に解砕し、有機顔料粒子を安定化するため、再分散処理を行うことが好ましい。
再分散の方法に特に限定はなく、前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等の分散機等を用いて混合、分散させることができる。
また、超音波ホモジナイザー等を用いて再分散することもできる。
高出力超音波ホモジナイザーの市販例としては、シャープ株式会社製のSILENTSONIC UT−204、株式会社日本精機製作所製の超音波ホモジナイザーUS−300T、同US−1200T、同RUS−1200T、同MUS−1200T、ヒールッシャー社製の超音波プロセッサーUIPシリーズ等が挙げられる。これらの超音波照射装置を用いて好ましくは25kHz以下の周波数で微細分散することができる。
超音波照射方式としては、アジテーター、マグネチックスターラー、ディスパー等の攪拌手段を併用するバッチ式、超音波照射部を備えたチャンバー中に分散液を一定流量で送るフロー式が挙げられる。超音波ホモジナイザーと前記のペイントシェーカーや高圧ホモジナイザー等とを併用することもできる。
本工程で遠心分離処理して得た固形分に有機溶媒を加えた予備混合物を超音波照射処理等により再分散することで、有機顔料に未吸着のポリマー量が低減された高品質な顔料分散液を効率的に製造することができる。
【0037】
(ろ過処理)
ろ過処理の方法に特に制限はないが、限外ろ過処理及び/又は精密ろ過処理が好ましい。ろ過処理の方式は特に制限はなく、全量ろ過方式でもクロスフローろ過方式でもよいが、運転操作性等の観点から、クロスフローろ過方式が好ましい。用いるろ過膜の孔径としては、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等の孔径域を使用し得る。ろ過膜の孔径は、好ましくは1〜50nm、より好ましくは2〜30nm、更に好ましくは3〜20nmである。
用いられるろ過膜としては、有機溶媒により劣化しないものであればよく、ポリエーテルサルフォン(PES)膜等の各種合成樹脂膜を使用することができる。
精密ろ過に用いられるろ過膜としては、ろ材の内部で異物を捕捉するデプスタイプ(厚みろ過型)や、ろ材の表面で異物を捕捉するサーフェスタイプ(面ろ過型)が挙げられる。
限外ろ過は、加圧又は減圧下で行うが、膜の形状としては、中空糸状型、管型、平板型、モノリス型等が挙げられ、分散体を流す方式としては、内圧ろ過方式でも外圧ろ過方式でもよい。
ろ過処理としては、限外ろ過膜を用いたクロスフローろ過方式がより好ましい。また、有機溶媒を加えながらろ過する透析ろ過(ダイアフィルトレーション)方式も好ましい。
【0038】
工程(2)により、有機顔料に吸着していないグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去するが、顔料分散体中における有機顔料に未吸着のポリマー量は、保存安定性及び耐熱性、及び得られる硬化膜の現像性に優れたカラーフィルター用顔料分散体を得る観点から、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1.5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下であり、理想的には未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)が存在しないことが好ましい。
有機顔料に未吸着のポリマー濃度の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
工程(2)では、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、0.2〜0.5となるように前記の操作を行うことにより、特に現像性が向上する。
【0039】
〔カラーフィルター用顔料分散体〕
本発明の製造方法により得られるカラーフィルター用顔料分散体は、有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)を含有する。
顔料分散体中の有機顔料の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
顔料分散体中の有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計量の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕は、コントラストと現像性を向上させる観点から、0.2〜0.5であり、0.3〜0.48が好ましく、0.4〜0.45がより好ましい。
顔料分散体中のエステル系有機溶媒の含有量は、良好な着色性及び分散体の低粘度化の観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
【0040】
顔料分散体中の有機顔料の体積中位粒径(D50)は、カラーフィルター用色材として良好なコントラストを得るために、80nm以下が好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。
なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)の値は、製造直後の顔料分散体をプロピレングリコールモノメチルエテルアセテート(PGMEA)で300倍に希釈し、粒度分析計(シスメックス社製、ZETASIZER Nano−ZS)を用いて、測定条件として、例えばジケトピロロピロール系顔料の場合、顔料粒子屈折率:1.51、顔料密度:1.45g/cm3、PGMEA屈折率:1.400、PGMEA粘度:1.3cpsを入力して、20℃で測定することができる。
本発明の製造方法により得られる顔料分散体の固形分12重量%における粘度(20℃)は、カラーフィルター用色材として良好な粘度とするために、1〜200mPa・sが好ましく、1〜100mPa・sがより好ましい。
グラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)を合わせた全体の酸価は、現像性の観点から、2〜15mgKOH/gであることが好ましく、2〜12mgKOH/gであることがより好ましく、2〜10mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0041】
[カラーフィルター用着色組成物]
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、前記製造方法によって得られたカラーフィルター用顔料分散体を含有するが、有機顔料、エステル系有機溶媒、グラフトポリマー(A)、及びポリアミン系分散剤(B)以外にバインダー成分等を含有することができる。
バインダー成分としては、電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分等が挙げられる。
電離放射線硬化性成分を含有するバインダー成分には、アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマーや電離放射線により活性化する光重合開始剤を含有し、更に多官能オリゴマー、単官能のモノマー、及び増感剤等を配合することができる。これらの樹脂、オリゴマー、モノマー、添加剤等は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
電離放射線硬化性成分からなる着色組成物中のバインダー成分の含有量は、溶媒を除いた有効分中20〜80重量%が好ましく、光重合開始剤の含有量は、溶媒を除いた有効分中0.2〜20重量%が好ましい。
【0042】
前記アルカリ可溶性樹脂としては、ネガ型レジストに一般的に用いられるものを用いることができ、アルカリ水溶液に可溶性を有するもの、すなわち、0.05重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に20℃で1重量%以上溶解するものであればよく、特に限定されない。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、γ−メチルスチレン、N−ビニル−2−ピロリドン、グリシジル(メタ)アクリレート等の中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示することができ、上記のコポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させたポリマー等も例示できる。これらの中では、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより得られる、エチレン性不飽和結合を有するポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は5,000〜50,000が好ましい。
本発明で用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体が好ましく挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体がより好ましい。
アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合割合(モル比)は、90/10〜50/50であることが好ましく、80/20〜70/30であることがより好ましい。
【0043】
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等が挙げられる。本発明の顔料分散体中の多官能モノマーの含有量は、溶媒を除いた有効分中10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類等が挙げられる。例えば4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。なお、グラフトポリマー等の分子量、顔料未吸着ポリマー濃度、エポキシ価、酸価、アミン価の測定、及び硬化膜のコントラスト、現像性の評価は以下の方法により行った。
(1)グラフトポリマー等の数平均分子量、重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製、GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)顔料未吸着ポリマー濃度の測定
顔料分散体40部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)80部で希釈し、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CP56G)を用いて26323Gで12時間遠心分離した後、上澄み液中の固形分を顔料未吸着ポリマー濃度とした。
上澄み液中の固形分量は、上澄み液をアルミカップに1g精秤し、90℃のオーブン中で4時間乾燥した後の重量から測定でき、下記計算式(1)より求められる。
上澄み液中の固形分(重量%)=[(乾燥後の総重量−アルミカップ重量)/(乾燥前の総重量−アルミカップ重量)]×100 (1)
【0045】
(3)グラフトポリマー(A)製造時のエポキシ価の測定
ポリマー溶液に塩酸を加え、クロルヒドリン化により消費された塩酸の量を水酸化カリウムで逆滴定を行った場合の水酸化カリウムのmg数で表した値である。
(4)グラフトポリマー及びポリアミン系分散剤の酸価の測定
JIS K 0070 に従い測定した。
(5)ポリアミン系分散剤のアミン価の測定
試料15g(固形分換算)を200mLコニカルビーカーに計量し、トルエンを75mL加える。さらにエタノールを50mL加え、必要に応じて加温して、試料を均一溶解して溶液を得る。
この溶液にチモールブルー試液を10滴加え均一混合し、0.5mol/L塩酸で振り混ぜながら滴定した。液が淡紅色を呈した時点で滴定を終了し、下記計算式により、アミン価を算出した。
アミン価(mgKOH/g)=(A×f×56.106×0.5)/試料量(g)
A:0.5mol/L塩酸の量(mL)
f:0.5mol/L塩酸のファクター(力価)
【0046】
(6)コントラストの評価(硬化膜のコントラスト比の測定)
顔料濃度を10%に調整した顔料分散体1.00部、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(バインダー、モル比:30/70、重量平均分子量:14000、固形分40重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という)溶液)0.15部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(多官能モノマー:日本化薬株式会社製、DPHA)0.046部、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン(光重合開始剤:和光純薬工業株式会社製)0.035部、PGMEA0.474部を均一になるまで混合し、着色組成物を得た。
ガラス基板上に着色組成物をスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥し、塗膜を得た。得られた塗膜に紫外線ファイバースポット照射装置(株式会社モリテックス製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜を得た。硬化膜のコントラスト比をコントラスト比測定器(壺坂電機株式会社製、CT−1)で測定した。
コントラスト比の値が大きいものほど、コントラストが良好である。
【0047】
(7)硬化膜の現像性の評価
前記(6)のコントラスト測定用に調整した着色組成物をガラス基板上にスピンコーターで塗布した後、水平台にて6分間静置し、80℃で3分間ホットプレートにより乾燥し、塗膜を得た。得られた塗膜にフォトマスクを載せ、紫外線ファイバースポット照射装置(株式会社モリテックス製、MUV−202U)を用いて30mJ/cm2まで紫外線を照射し、硬化膜基板を得た。
次いで、この硬化膜基板を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.1%水溶液中でゆっくり揺動させ、30秒刻みで、水溶液から引き上げ、次いで水シャワーでリンスし未硬化部分を除去した。露光パターンが最も早く得られるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液浸漬時間を現像時間とした。
現像時間が短いほど現像性に優れる。
【0048】
製造例1〔グラフトポリマー(A−1)の合成〕
(1)ポリ(メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・N−ビニルピロリドン)(ポリ(GMA−HEMA−VP))(a1成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにN−ビニル−2−ピロリドン(以下、「VP」という)100.0g、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」という)15.2g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」という)24.0g、メルカプトエタノール(以下「ME」という)3.0g、エタノール178.0gを仕込み、窒素置換を行った。77℃で攪拌しながら、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、アゾ系重合開始剤、商品名:V−65。以下、「V−65」という)3.9gをエタノール41.8gに溶解した液を添加した。
77℃で攪拌しながら、VP 150.0g、GMA 76.2g、HEMA 120.2g、前記重合開始剤6.4g、エタノール445.3g、ME6.8gを混合した溶液を、90分かけて滴下した。
滴下終了した後に更に、GMA 60.9g、HEMA 96.1g、V−65 12.0g、エタノール167g、ME3.1gを混合した溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、77℃で攪拌後、V−65 0.6gとエタノール15.0gを加えた。更に77℃で1時間攪拌した後、V−65 0.6gとエタノール15.0gを加えた。更に1時間攪拌した後、冷却し、ポリ(GMA−HEMA−VP)のエタノール溶液を得た。
溶液の固形分は40.5%であり、得られたポリ(GMA−HEMA−VP)(a1)の数平均分子量は3,900、重量平均分子量は10,500、エポキシ価は84mgKOH/gであった。
【0049】
(2)片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸ベンジル(以下、「BzMA」という)100g、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)4.0g、PGMEA50gを仕込み、窒素置換したあと、80℃で攪拌しながら、BzMA 400g、3−メルカプトプロピオン酸16.0g、PGMEA 200g、V−65 4gを3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、V−65 4.0g、3−メルカプトプロピオン酸1.8g、PGMEA150gを加えた。更に、80℃で2時間攪拌した後冷却し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジルのPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は57.0%であり、得られた末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2)の酸価は31.6mgKOH/gであり、数平均分子量は2,400、重量平均分子量は4,600であった。
【0050】
(3)エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるグラフトポリマー(A−1)の製造
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに前記(1)で得られた(a1)溶液100g(固形分40.5g)、前記(2)で得られた(a2)溶液196.4g(固形分111.9g)、PGMEA87g、エタノール87g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)4.0gを仕込み、90℃で15時間攪拌した。酸価を測定した結果、酸価は0.2mgKOH/gであり、反応率は96%であった。冷却後、エバポレーターにて(バス温63℃、圧力92kPa)、エタノールを除去し、ポリ(HEMA−VP−g−BzMA)のPGMEA溶液を得た。
溶液の固形分は29%であり、得られたポリ(HEMA−VP−g−BzMA)(VP由来の構成単位の含有量は11.8重量%、HEMA由来の構成単位の含有量は11.4重量%)の数平均分子量は6,300、重量平均分子量は28,000であった。
【0051】
製造例2〔グラフトポリマー(A−2)の合成〕
(1)ポリ(メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・N−(フタルイミドメチル)アクリルアミド)(ポリ(GMA−HEMA−PA))(b1成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにN−(フタルイミドメチル)アクリルアミド(以下、「PA」という)100.0g、GMA 15.2g、HEMA 24.0g、ME 3.0g、エタノール178.0gを仕込み、窒素置換を行った。77℃で攪拌しながら、V−65 3.9gをエタノール41.8gに溶解した液を添加した。
77℃で攪拌しながら、PA 150.0g、GMA 76.2g、HEMA 120.2g、前記重合開始剤6.4g、エタノール445.3g、ME6.8gを混合した溶液を、90分かけて滴下した。
滴下終了した後に更に、GMA 60.9g、HEMA 96.1g、V−65 12.0g、エタノール167g、ME3.1gを混合した溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、77℃で攪拌後、V−65 0.6gとエタノール15.0gを加えた。更に77℃で1時間攪拌した後、V−65 0.6gとエタノール15.0gを加えた。更に1時間攪拌した後、冷却し、ポリ(GMA−HEMA−PA)のエタノール溶液を得た。
該エタノール溶液の固形分は40.4%であり、得られたポリ(GMA−HEMA−PA)(b1)の数平均分子量は4,400、重量平均分子量は11,700、エポキシ価は82mgKOH/gであった。
【0052】
(2)エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるグラフトポリマー(A−2)の製造
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに前記(1)で得られた(b1)溶液100.0g(固形分40.4g)、製造例1(2)で得られた(a2)溶液196.4g(固形分111.9g)、PGMEA87g、エタノール87g、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)(触媒)4.0gを仕込み、90℃で15時間攪拌した。酸価を測定した結果、酸価は0.2mgKOH/gであり、反応率は94%であった。冷却後、エバポレーターにて(バス温63℃、圧力92kPa)、エタノールを除去し、ポリ(HEMA−PA−g−BzMA)のPGMEA溶液を得た。
該PGMEA溶液の固形分は30%であり、得られたポリ(HEMA−PA−g−BzMA)(PA由来の構成単位の含有量は11.8重量%、HEMA由来の構成単位の含有量は11.4重量%)の数平均分子量は7,000、重量平均分子量は31,000であった。
【0053】
実施例1(顔料分散体(1)の製造)
(i)工程(1)
PGMEA92.5g、製造例1で得られたグラフトポリマー(A−1)溶液38.8g(有効分11.25g)、及び日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパース24000GR(酸価25mgKOH/g、アミン価40mgKOH/g、主鎖:ポリイチレンイミン、側鎖:12-ヒドロキシステアリン酸の重合体であるポリエステルであるポリアミン系分散剤(B))3.75gを500mlポリ容器に入れ均一混合した。ここへ、ジケトピロロピロール系顔料(BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR RED BK−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))15.0g、さらに直径0.3mmのジルコニアビーズ300gを入れ、ペイントシェーカーにて3時間撹拌した後、ジルコニアビーズを除去して予備分散液を得た。
次いで、この予備分散液100gと、直径0.05mmのジルコニアビーズ200gを250mlポリ容器に入れ、ペイントシェーカーで24時間攪拌し、ジルコニアビーズを除去した後、顔料分散液を得た。
(ii)工程(2)
工程(1)で得られた顔料分散液40gをPGMEA 80gで希釈し、遠心分離機(日立工機株式会社製、himac CP56G)を用いて、26323Gの条件下で12時間遠心分離後、上澄みを捨て、沈降物9gを得た。
得られた沈降物9gにPGMEA 31gを加え、超音波洗浄機(シャープ株式会社製、SILENTSONIC UT−204)を用いて、超音波照射して再分散処理を行い、顔料分散体(1)を得た。
得られた顔料分散体(1)の評価結果と、顔料分散体(1)を含有する着色組成物の評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例2(顔料分散体(2)の製造)
実施例1(i)工程(1)において、ポリアミン系分散剤(B)を味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPB−821(酸価17mgKOH/g、アミン価10mgKOH/g)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散体(2)を得た。結果を表1に示す。
【0055】
比較例1(顔料分散体(3)の製造)
実施例1において、工程(2)を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散体(3)を得た。結果を表1に示す。
比較例2(顔料分散体(4)の製造)
実施例1において、ポリアミン系分散剤(B)を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散体(4)を得た。結果を表1に示す。
比較例3(顔料分散体(5)の製造)
実施例1において、グラフトポリマー(A−1)を用いなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散体(5)を得た。結果を表1に示す。
【0056】
比較例4(顔料分散体(6)の製造)
実施例1において、重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.6、工程(2)では0.31であること以外は、実施例1と同様の条件で行い、顔料分散体(6)を得た。結果を表1に示す。
比較例5(顔料分散体(7)の製造)
実施例1において、重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では1.4、工程(2)では0.66であること以外は、実施例1と同様の条件で行い、顔料分散体(7)を得た。結果を表1に示す。
比較例6(顔料分散体(8)の製造)
実施例1において、工程(2)における重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、0.56であること以外は、実施例1と同様の条件で行い、顔料分散体(8)を得た。結果を表1に示す。
【0057】
比較例7(顔料分散体(9)の製造)
実施例1(i)工程(1)において、グラフトポリマー(A−1)を製造例2で得られたグラフトポリマー(A−2)に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行い、顔料分散体(9)を得た。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から、実施例1及び2で得られた顔料分散体を含有する着色組成物は、比較例1〜7で得られた顔料分散体を含有する着色組成物よりも、コントラストと現像性に優れた硬化膜を形成できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法であって、有機顔料に対するグラフトポリマー(A)とポリアミン系分散剤(B)との合計の重量比〔[(A)+(B)]/有機顔料〕が、工程(1)では0.7〜1.3であり、工程(2)では0.2〜0.5である、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):有機顔料、エステル系有機溶媒、主鎖にビニルピロリドン由来の構成単位を含有し、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有するグラフトポリマー(A)、及び酸価10〜30mgKOH/g及びアミン価5〜50mgKOH/gであるポリアミン系分散剤(B)を含有する混合物を分散して分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から、有機顔料に未吸着のグラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の少なくとも一部を除去して顔料分散体を得る工程
【請求項2】
工程(1)におけるポリアミン系分散剤(B)の配合量が、前記混合物中0.4〜6重量%である、請求項1に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
工程(1)における〔グラフトポリマー(A)/ポリアミン系分散剤(B)〕の重量比が0.1〜6である、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
工程(1)における分散を、直径0.1〜0.5mmのメディアを用いたメディア式分散機で行った後、更に直径0.01〜0.05mmのメディアを用いたメディア式分散機で行う、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
有機顔料がジケトピロロピロール系顔料である、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
グラフトポリマー(A)が水酸基を有する、請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項7】
ポリアミン系分散剤(B)が、主鎖がポリアリルアミン及び/又はポリエチレンイミンを含み、側鎖がポリエステルのグラフトポリマーを含むものである、請求項1〜6のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項8】
グラフトポリマー(A)及びポリアミン系分散剤(B)の全体の平均酸価が2〜15mgKOH/gである、請求項1〜7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項9】
側鎖を構成する(メタ)アクリル酸エステルが、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル及び/又は(メタ)アクリル酸ベンジルである、請求項1〜8のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法により得られる顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。

【公開番号】特開2013−37058(P2013−37058A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170872(P2011−170872)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】