説明

カラーフィルター用顔料分散体の製造方法

【課題】低粘度であり、コントラストに優れた硬化膜を得ることができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその製造方法で得られた顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供する。
【解決手段】下記工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法である。
工程(1):(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合する工程
工程(2):テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加し、分散処理する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその製造方法で得られた顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるカラーフィルターは、これまで、顔料分散体に樹脂等を配合した着色組成物をガラス等の透明基板にスピンコーター等で塗布した後、露光・硬化、現像、熱硬化させるフォトリソグラフィー法が行われているが、生産性、製造装置の小型化の観点から、近年では、インクジェット法によるカラーフィルターの生産が盛んになっている。
【0003】
ところで、カラーフィルターに用いられる顔料分散体は、有機溶媒を媒質とした非水系顔料分散体であるが、顔料を有機溶媒に良好に分散させるための分散剤として各種共重合体が知られている。
例えば、特許文献1には、顔料への吸着性に優れた非水系顔料分散用ポリマーを得ることを目的として、顔料、非水系溶媒、及び反応性官能基を含有するビニルモノマー由来の構成単位、及び窒素原子を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含む共重合体と、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はポリスチレンとを反応させることにより得られるポリマーを含有する非水系顔料分散組成物が開示されている。
また、特許文献2には、色再現範囲と色再現性等の改善を目的として、ポリイソシアネートポリ付加物やポリウレタン系分散剤等の高分子分散剤と同時に第4級アンモニウム塩を分散助剤として用いた非水系顔料分散剤、即ち、顔料、高分子分散剤、第4級アンモニウム塩及び有機溶媒を含有する非水系顔料分散液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−120823号公報
【特許文献2】特開2003−292866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、顔料分散体を用いて得られたカラーフィルターを用いた液晶表示装置は顔料粒子による透過光の散乱によりコントラストが低いという問題がある。顔料分散体は、顔料粒子や分散剤を含むため粘度が高くなるという問題もある。カラーフィルターの生産において、顔料分散体の粘度が高いと、インクジェット法を用いると、顔料分散体を含有する着色組成物がノズルから吐出しにくくなる場合があり、フォトリソグラフィー法を用いると、塗工面の平滑性が保てなくなる場合がある。
本発明は、低粘度であり、コントラストに優れた硬化膜を得ることができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその製造方法で得られた顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、顔料の分散状態が、分散体の粘度とカラーフィルターに用いる硬化膜のコントラストに影響すると考え、検討を行った。その結果、顔料を分散する際に、テトラアルキルアンモニウム塩を添加して得られた顔料分散体が、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔2〕を提供する。
〔1〕下記工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合する工程
工程(2):テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加し、分散処理する工程
〔2〕前記〔1〕の製造方法で得られたカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低粘度であり、コントラストに優れる硬化膜を得ることができるカラーフィルター用顔料分散体の製造方法、及びその製造方法で得られた顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有することを特徴とする。
工程(1):(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合する工程
工程(2):テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加し、分散処理する工程
【0009】
本発明の製造方法で得られたカラーフィルター用顔料分散体は、コントラストに優れる硬化膜を得ることができる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
本発明においては、高分子分散剤(A)が、有機顔料(B)に親和性の強いアミド基と、エステル系有機溶媒(C)に親和性の強い(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の両方を含有しているため、有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)に効果的に分散することができると考えられる。更に分散処理前にテトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加するが、分散処理前に添加されたテトラアルキルアンモニウム塩(D)は、疎水的な相互作用によって、顔料表面に吸着し、分散状態を維持するものと考えられる。特に高分子分散剤(A)はアミン部分を実質有さないことから、高分子分散剤(A)と分散処理前に添加されたテトラアルキルアンモニウム塩(D)との相互作用は少なく、各々が分散剤として効率的に顔料表面に存在できるものと考えられる。これによって、顔料同士の凝集力を抑え、分散剤同士の相互作用も抑えることができるため、低粘度の分散体を得ることができるものと考えられる。
更に高温での加熱処理等の過酷な条件で作製されるカラーフィルター用の硬化膜においても、有機顔料(B)は微細な分散状態を維持し、顔料粒子による透過光の散乱を抑えることができるため、コントラストが向上するものと考えられる。
以下、本発明に用いられる各成分等について説明する。
【0010】
[高分子分散剤(A)]
本発明に用いられる高分子分散剤(A)は、有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で安定に微細化した状態で分散するために用いられる。高分子分散剤(A)は、アミド基及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である。
アミド基としては、窒素原子に水素原子が2つ結合したアミド基、窒素原子に1つ又は2つのアルキル基が結合したアミド基、環状アミド基等が挙げられ、顔料への吸着性に優れながらも、テトラアルキルアンモニウム塩(D)との相互作用が少ないという点から、環状アミド基が好ましく、後述のアミド基を含有するビニルモノマー由来の構成単位に含まれるものであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位としては、後述のモノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルに記載された(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位であることが好ましい。
本発明に用いられる高分子分散剤(A)は、アミン価が1mgKOH/g未満であるが、テトラアルキルアンモニウム塩(D)との相互作用が少ないという点から、実質含まれないことがより好ましい。
高分子分散剤(A)としては、例えば、グラフトポリマー、ブロックポリマー又はランダムポリマー等のコポリマー(共重合体)が挙げられる。これらの中では、有機顔料(B)の分散安定性の観点から、グラフトポリマーが好ましい。
【0011】
<グラフトポリマー>
本発明の高分子分散剤(A)として好ましく用いられるグラフトポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有するものであり、それらのいずれを主鎖に有していてもよいし、側鎖に有していてもよいし、主鎖及び側鎖の両方に有していてもよい。
有機顔料(B)の分散性向上の観点から、グラフトポリマーに含有されるアミド基は、側鎖に比べて主鎖に多く有することが好ましく、主鎖のみに有することがより好ましい。一方、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、主鎖に比べて側鎖に多く有することが好ましく、側鎖のみに有することがより好ましい。
グラフトポリマーの主鎖としては、有機顔料(B)への吸着性の観点から、アミド基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。
また、グラフトポリマーの側鎖としては、エステル系有機溶媒(C)への有機顔料(B)の分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸アルキル由来の構成単位及び/又はスチレン由来の構成単位を含有することが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位のみからなることがより好ましい。
上記のグラフトポリマーは、本発明の効果を阻害しない範囲内において、主鎖及び側鎖のいずれにも、前記モノマーと共重合可能なその他のモノマーを共重合したものでもよい。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸、及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0012】
グラフトポリマーの重量平均分子量は、有機顔料(B)への吸着性の観点及び粘度上昇抑制の観点から、好ましくは1000〜1000,000、より好ましくは2000〜800,000、更に好ましくは5000〜700,000である。
グラフトポリマーの主鎖部分の重量平均分子量は、本発明の顔料分散体の低粘度を維持し、保存安定性を向上させる観点から、好ましくは5,000〜50,000、より好ましくは10,000〜25,000、更に好ましくは12,000〜23,000、更に好ましくは15,000〜20,000である。
グラフトポリマーの主鎖部分の重量平均分子量が前記範囲であると、側鎖部分がエステル系有機溶媒(C)への溶解性に引きずられて溶け出すこともなく、主鎖部分の有機顔料(B)に対する吸着部分も有効に使用され、グラフトポリマーが効率よく有機顔料(B)に吸着するため、硬化膜のコントラストも向上し、粘度も低くなるものと考えられる。
グラフトポリマーの側鎖部分の重量平均分子量は、本発明の顔料分散体の保存安定性の観点から、好ましくは500〜20,000、より好ましくは700〜10,000、更に好ましくは700〜6000である。
グラフトポリマーの主鎖部分の重量平均分子量と側鎖部分の重量平均分子量の比〔主鎖/側鎖〕は、硬化膜のコントラストと顔料分散体の粘度低減の観点から、好ましくは1〜10、より好ましくは2〜5、更に好ましくは3〜5である。
なお、重量平均分子量の測定は、実施例記載の方法により行うことができる。
【0013】
(主鎖の構成単位となるモノマー)
主鎖の構成単位となるモノマーには、アミド基を含有するビニルモノマーを用いることが好ましく、本発明の効果を妨げない範囲で、共重合可能なモノマーを共重合することができる。
アミド基を含有するビニルモノマーとして、具体的には、(メタ)アクリルアミド類、ビニルピロリドン類等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4である)、N,N−ジアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜8、より好ましくは1〜4)アミノアルキル(アルキル基の炭素数は好ましくは1〜6)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド2−メチルプロピルスルホン酸、モルホリノ(メタ)アクリルアミド、ピペリジノ(メタ)アクリルアミド、N−メチル−2−ピロリジル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルフェニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルピロリドン類としては、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0014】
これらアミド基を含有するビニルモノマーの中では、有機顔料(B)への吸着性の観点から、ビニルピロリドン類が好ましく、N−ビニルピロリドンがより好ましい。
前記グラフトポリマーの全構成単位中のアミド基を含有するビニルモノマー由来の構成成分の含有量は、有機顔料(B)への吸着性の観点、及び粘度上昇抑制や分散粒径の適正化の観点から、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは2〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%である。
【0015】
アミド基を含有するビニルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等のスチレン類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアルコール性水酸基を有するモノマーがより好ましい。
前記グラフトポリマーの製造方法として、後述するカップリング反応による方法を用いる場合には、反応性官能基を含有するビニルモノマーも共重合することができる。反応性官能基を含有するビニルモノマーの具体例は後述する。
前記モノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
(側鎖の構成単位となるモノマー)
グラフトポリマーの側鎖の構成単位となるモノマーとしては、顔料の溶媒への分散性を高める観点から、(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル;(メタ)アクリル酸イソボルニル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチルエチル;(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記グラフトポリマーの側鎖中の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の含有量は、特に制限はないが、側鎖中の全構成単位に対して、好ましくは5〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは80〜100重量%である。
【0017】
<グラフトポリマーの製造>
前記グラフトポリマーの製造方法としては、(i)主鎖部分の構成単位であるモノマーと側鎖部分を構成するモノマー、いわゆるマクロマーとを共重合する方法、及び(ii)主鎖部分を構成するポリマーと側鎖部分を構成するポリマーとをカップリング反応させる方法が挙げられるが、有機顔料(B)の微細安定化の観点から、(ii)主鎖部分を構成するポリマーと側鎖部分を構成するポリマーとをカップリング反応させる方法が好ましい。
【0018】
(カップリング反応による製造)
カップリング反応に用いられる主鎖部分を構成するポリマーは、好ましくはアミド基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むポリマーであり、反応性官能基を含有するビニルモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。該ポリマーは、当該モノマー混合物を共重合することにより得ることができる。
反応性官能基を含有するビニルモノマーとしては、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基、アミノ基を含有するモノマーが挙げられ、反応性、重合速度の面から、エポキシ基を含有するビニルモノマーが好ましく、グリシジル基を含有する(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルがより好ましい。
カップリング反応に用いられる主鎖部分を構成するポリマーが反応性官能基として、エポキシ基を含有する場合、エポキシ価は、側鎖部分との反応性等の観点から、19〜375mgKOH/gが好ましく、30〜350mgKOH/gがより好ましく、40〜300mgKOH/gが特に好ましい。
なお、エポキシ価の測定は実施例記載の方法により行うことができる。
【0019】
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、その片末端に、主鎖を構成するポリマーの反応性官能基と反応する反応性官能基を有するポリ(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましい。
主鎖を構成するポリマーの反応性官能基がエポキシ基である場合は、側鎖を構成するポリマーの片末端はカルボキシ基又はアミノ基であることが好ましい。
カップリング反応に用いられる側鎖を構成するポリマーは、例えば、反応性官能基であるカルボキシ基又はアミノ基を含有する重合開始剤や連鎖移動剤を使用し、溶液重合によって得ることが好ましい。
側鎖を構成するポリマーと主鎖を構成するポリマーとのカップリング反応は、それぞれの反応性官能基が十分反応する条件で行えばよいが、触媒存在下、有機溶媒中にそれぞれのポリマーを溶解させて行うことが好ましい。
触媒としては、第四級アンモニウムハライド等の第四級アンモニウム塩、トリエチルアミン等の第三級アミン、アルカリ金属の水酸化物、無機酸、スルホン酸、カルボン酸、固体酸、固体塩基等が挙げられる。これらの中では、第四級アンモニウムハライドがより好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミド等が特に好ましい。
【0020】
触媒は、吸着剤による吸着除去、再沈殿による溶媒による除去等によって、除去することが好ましく、吸着剤による吸着除去が好ましい。
吸着除去の方法としては、カップリング反応によって得られたグラフトポリマーの溶液をシリカゲル等の吸着剤で処理する方法が挙げられる。
【0021】
[有機顔料(B)]
本発明に用いられる有機顔料(B)に制限はないが、具体的には、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、レーキ顔料等が挙げられる。アゾ顔料としてはC.I.ピグメントレッド3等の不溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド48:1等の溶性アゾ顔料、C.I.ピグメントレッド144等の縮合アゾ顔料が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:6等の銅フタロシアニン顔料、C.I.ピグメントグリーン58等のポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料等が挙げられる。
縮合多環顔料としては、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン系顔料、C.I.ピグメントレッド123等のペリレン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ43等のペリノン系顔料、C.I.ピグメントレッド122等のキナクリドン系顔料、C.I.ピグメントバイオレット23等のジオキサジン系顔料、C.I.ピグメントイエロー109等のイソインドリノン系顔料、C.I.ピグメントオレンジ66等のイソインドリン系顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料、C.I.ピグメントイエロー150等のニッケルアゾ錯体系顔料、C.I.ピグメントレッド88等のインジゴ系顔料、C.I.ピグメントグリーン8等の金属錯体顔料、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントオレンジ71等のジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
これらの中では、本発明の効果をより有効に発現させる観点から、下記一般式(1)で表されるジケトピロロピロール系顔料が好ましい。
【0022】
【化1】

【0023】
式(1)中、X1及びX2は、それぞれ独立して、水素原子又はハロゲン原子を示し、Y1及びY2は、それぞれ独立して、水素原子又は−SO3H基を示す。なお、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子等が好ましい。
ジケトピロロピロール系顔料の市販品の好適例としては、BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「Irgaphor Red B-CF」、「Igaphor Red BK-CF」、「Irgaphor Red BT-CF」、「Irgazin DPP Red BO」、「Irgazin DPP Red BL」、「Cromophtal DPP Red BP」、「Cromophtal DPP Red BOC」等が挙げられる。
有機顔料(B)は、明度Y値の向上の観点から、その平均一次粒子径を、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20〜60nmにした微粒化処理品を用いることが望ましい。顔料の平均一次粒子径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、100個の粒子について、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測して、その平均値をその粒子の平均一次粒子径とする。
上記の有機顔料(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
[エステル系有機溶媒(C)]
本発明で用いられるエステル系有機溶媒(C)は特に限定されないが、沸点が100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上の高沸点有機溶媒を用いることが好ましい。このような高沸点有機溶媒としては、(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、及び(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテート等が好ましく挙げられる。
(i)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルプロピオネートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート等が挙げられる。
(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)等が挙げられる。
上記エステル系有機溶媒(C)の中では、グラフトポリマー(A)の溶解性と、顔料、特にジケトピロロピロール系顔料の分散性の観点から、(ii)アルカンジイルグリコールモノアルキルエーテルアセテートがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、沸点:146℃)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA、沸点:247℃)が更に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)が特に好ましい。
上記のエステル系有機溶媒(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
[テトラアルキルアンモニウム塩(D)]
本発明に用いられるテトラアルキルアンモニウム塩(D)に特に制限はなく、アルキル基としては、直鎖でも分岐鎖でもよいが、顔料表面へ吸着し分散状態を維持する観点から、直鎖であることが好ましく、全てのアルキル基が直鎖であることがより好ましい。
アルキル基は、顔料表面へ吸着し分散状態を維持する観点から、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素数2〜4のアルキル基が更に好ましく、ブチル基がより更に好ましい。
更にアルキル基は、顔料表面へ吸着し分散状態を維持する観点から、テトラアルキルアンモニウム塩(D)1分子中におけるアルキル基が2つ以上同じであることが好ましく、3つ以上同じであることがより好ましく、4つ全てが同じであることが更に好ましい。
テトラアルキルアンモニウム塩(D)のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらの中では、炭素数1〜6のアルキル基を3つ以上有するものが好ましく、炭素数1〜6のアルキル基を3つと炭素数12〜18のアルキル基を1つ有するもの、及び炭素数1〜6のアルキル基を4つ有するものがより好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びブチル基が好ましく、ブチル基がより好ましい。
【0026】
テトラアルキルアンモニウム塩(D)は、無機塩及び有機酸塩のいずれでもよいが、顔料表面へ吸着し分散状態を維持する観点から無機塩が好ましく、電気信頼性を向上させる観点から有機酸塩が好ましい。
無機塩としては、顔料表面へ吸着し分散状態を維持する観点から、ハロゲン化物が好ましく、塩化物、臭化物がより好ましく、臭化物が更に好ましい。すなわち、前記の観点から、テトラアルキルアンモニウム塩(D)である無機塩としては、炭素数1〜6のアルキル基を3つと炭素数12〜18のアルキル基を1つ有するハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。また、アルキル基の炭素数が2〜6で、該アルキル基の4つが全て同じであるハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミドがより好ましい。これらの無機塩の中では、特にテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)が好ましい。
有機酸塩としては、電気信頼性を向上させる観点から、スルホン酸塩が好ましく、トルエンスルホン酸塩がより好ましく、パラトルエンスルホン酸塩が更に好ましい。すなわち、前記の観点から、テトラアルキルアンモニウム塩(D)である有機酸塩としては、アルキル基の炭素数が2〜6で、該アルキル基が全て同じであるものが好ましく、スルホン酸テトラアルキルアンモニウムが好ましく、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート(TEAPTS)がより好ましい。
工程(2)におけるテトラアルキルアンモニウム塩(D)の添加量は、有機顔料(B)に対して0.1〜6重量%が好ましく、0.5〜6重量%がより好ましく、0.8〜5重量%が更に好ましく、1.0〜4重量%がより更に好ましい。
【0027】
[カラーフィルター用顔料分散体の製造方法]
本発明の顔料分散体の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を有する。
工程(1):(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合する工程
工程(2):テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加し、分散処理する工程
本発明の製造方法において、テトラアルキルアンモニウム塩(D)の添加時期は、有機顔料(B)への均一な吸着を促進し、低粘度の分散体を得る観点から、(i)工程(1)で高分子分散剤(A)及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合するのと同時か、又は(ii)工程(1)の後(高分子分散剤(A)及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合した後)が好ましく、(i)高分子分散剤(A)及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合すると同時に添加することが好ましい。
工程(2)における分散処理の方法に特に制限はなく、一度の分散で目的とする顔料分散体を得てもよいが、粒径の大きい粉末である有機顔料(B)、高分子分散剤(A)、テトラアルキルアンモニウム塩(D)及びエステル系有機溶媒(C)を馴染ませ、均一に混合するためには、予備分散工程を行い、その後、顔料を微細化するために、本分散工程を行うことが好ましい。
工程(2)で予備分散工程、本分散工程を行う場合は、予備分散工程の前に、高分子分散剤(A)及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合すると同時に混合した後、テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加することが好ましい。
【0028】
(予備分散工程)
有機顔料(B)、高分子分散剤(A)、エステル系有機溶媒(C)、及びテトラアルキルアンモニウム塩(D)の予備分散は、いかなる順序で混合してもよいが、一度に全成分を混合し、分散することが好ましい。
予備分散時における、高分子分散剤(A)に対する有機顔料(B)の重量比〔(B)/(A)〕は、有機顔料(B)に必要量の高分子分散剤(A)を付着させる観点から、該重量比〔(B)/(A)〕を100/30〜100/250とすることが好ましく、100/40〜100/200とすることがより好ましい。
予備分散の分散時間は、通常0.1〜10時間であり、0.5〜4時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。
【0029】
予備分散で用いる混合分散機に制限はなく、公知の種々の分散機を用いることができる。例えば、アンカー翼等を備えた一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラタックス(IKAジャパン株式会社製、商品名)等のホモミキサー、ウルトラディスパー(浅田鉄工株式会社、商品名)、マイルダー(株式会社荏原製作所、太平洋機工株式会社、商品名)、TKホモミクサー(プライミクス株式会社、商品名)等の高速撹拌混合装置、ロールミル、ニーダー等の混練機が挙げられ、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)等のホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等の高圧式分散機、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。
これらの中では、有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中に均一に混合させる観点から、ホモミキサー等の高速撹拌混合装置、ペイントシェーカーやビーズミル等のメディア式分散機が好ましく、メディア式分散機がより好ましい。
【0030】
(本分散工程)
本分散工程は、上記の予備分散で得られた混合物を更に微細化するために行われるが、有機顔料(B)を微細化する観点から、メディア式分散機を用いることが好ましい。
本分散に用いるメディアの材質としては、ジルコニア、チタニア等のセラミックス、ポリエチレン、ナイロン等の高分子材料、金属等が好ましく、摩耗性の観点からジルコニアが好ましい。また、メディアの粒径としては、0.003〜0.1mmが好ましい。有機顔料(B)を微細化する観点から、0.07mm以下がより好ましく、0.05mm以下が更に好ましく、メディアを顔料と分離する観点から、0.005mm以上がより好ましく、0.01mm以上が更に好ましい。
本分散に用いるメディア式分散機としては、ペイントシェーカー、ビーズミル等が好ましく、市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)等が挙げられる。
本分散の分散時間は、有機顔料(B)を十分に微細化する観点から、3〜200時間が好ましく、5〜50時間がより好ましい。
本分散終了時における、高分子分散剤(A)に対する有機顔料(B)の重量比〔有機顔料(B)/高分子分散剤(A)〕は、分散体の低粘度化の観点から、100/30〜100/250が好ましく、100/40〜100/200がより好ましい。
【0031】
本分散工程によって得られた顔料分散体はそのままで本発明のカラーフィルター用着色組成物の原料として用いることができるが、更に以下の工程を行うことが好ましい。
硬化膜のコントラストを向上させ、顔料分散体の保存安定性を向上させる観点から、本分散工程で得られた顔料分散体を遠心分離して、その沈降物を除くことにより、粗大粒子を除去することが好ましい。
また、顔料分散体を低粘度化し、保存安定性を向上させる観点から、顔料に吸着していない高分子分散剤(A)を除くことが好ましい。顔料に吸着していない高分子分散剤(A)を除く方法としては、限外濾過によってポリマー分子を顔料粒子から濾別する方法、遠心分離で顔料粒子を沈降させ、上澄みに残留するポリマーを除去する方法等が挙げられ、遠心分離による方法が除去効率が高く、好ましい。
更に硬化膜のコントラストを向上させ、顔料分散体の保存安定性を向上させる観点から、限外濾過や遠心分離で得られた分散体や沈降物を分散機で再分散することが好ましい。再分散に用いられる分散機は前記の分散機を用いることができるが、超音波分散機が好ましい。
顔料に吸着していない高分子分散剤(A)を除いた後の顔料分散体中の高分子分散剤(A)に対する有機顔料(B)の重量比〔有機顔料(B)/高分子分散剤(A)〕は、顔料分散体の低粘度化及び保存安定性の観点から、100/40〜100/120が好ましく、100/50〜100/80がより好ましい。
【0032】
〔カラーフィルター用顔料分散体〕
本発明のカラーフィルター用顔料分散体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、有機顔料(B)、テトラアルキルアンモニウム塩(D)及びエステル系有機溶媒(C)を含有することを特徴とするものであり、前記の製造方法によって得られるものが好ましい。
顔料分散体中の有機顔料(B)の割合は、良好な着色性を得る観点から、3重量%以上が好ましく、良好な着色性及び粘度を得る観点から、3〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
顔料分散体中の高分子分散剤(A)に対する有機顔料(B)の重量比〔(B)/(A)〕は、顔料分散体の保存安定性の観点から、100/40〜100/120が好ましく、100/50〜100/80がより好ましい。
顔料分散体中のテトラアルキルアンモニウム塩(D)に対する有機顔料(B)の重量比〔(B)/(D)〕は、硬化膜のコントラストを向上させ、顔料分散体の保存安定性を向上させる観点から、100/0.1〜100/6が好ましい。
顔料分散体中のエステル系有機溶媒(C)の含有量は、良好な着色性、分散体の低粘度化及び安定性向上の観点から、20〜90重量%が好ましく、40〜80重量%がより好ましい。
顔料分散体中のエステル系有機溶媒(C)に対する有機顔料(B)の重量比〔(B)/(C)〕は、良好な着色性、分散体の低粘度化及び安定性向上の観点から、100/500〜100/650が好ましく、100/500〜100/515がより好ましい。
顔料分散体中のエステル系有機溶媒(C)に対する高分子分散剤(A)の重量比〔(A)/(C)〕は、硬化膜のコントラストを向上させ、顔料分散体の安定性を向上させる観点から、100/670〜100/1100が好ましく、100/880〜100/1010がより好ましい。
【0033】
顔料分散体中の有機顔料(B)の体積中位粒径(D50)は、カラーフィルター用色材として良好なコントラスト比を得るために、80nm以下が好ましく、20〜70nmがより好ましく、20〜60nmが更に好ましい。
なお、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が小粒径側から累積して50%になる粒径を意味する。体積中位粒径(D50)の値は、製造直後の顔料分散体をジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)で300倍に希釈し、粒度分析計(シスメックス株式会社製、ZETASIZER Nano−ZS)を用いて、測定条件として、例えばジケトピロロピロール系顔料の場合、顔料粒子屈折率:1.51、顔料密度:1.45g/cm3、BCA屈折率:1.426、BCA粘度:3.60cPを入力して、20℃で測定することができる。
本発明の製造方法によって得られる顔料分散体の固形分10重量%における粘度(20℃)は、カラーフィルター用色材として良好な粘度とするために、1〜200mPa・sが好ましく、1〜100mPa・sがより好ましい。また、インクジェット法によりカラーフィルターを製造する際の良好な吐出性を維持するために、1〜50mPa・sが好ましく、2〜30mPa・sがより好ましく、5〜20mPa・sが更に好ましい。
【0034】
〔カラーフィルター用着色組成物〕
本発明のカラーフィルター用着色組成物は、本発明の前記顔料分散体を含有することを特徴とし、本発明の顔料分散体以外にバインダー成分、界面活性剤等を含有することができる。
バインダー成分としては、(i)電離放射線硬化性成分からなるバインダー成分、又は(ii)熱重合性硬化性成分からなるバインダー成分等が挙げられる。
(i)電離放射線硬化性成分からなるバインダー成分は、樹脂を主体とし、必要に応じて、多官能モノマーや電離放射線により活性化する光重合開始剤を含有することが好ましく、更に多官能オリゴマー、単官能のモノマー、及び増感剤等を配合することができる。これらの樹脂、オリゴマー、モノマー、添加剤等は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(i)電離放射線硬化性成分からなるバインダー成分の含有量は、溶媒を除いた有効分中20〜80重量%が好ましく、光重合開始剤の含有量は、溶媒を除いた有効分中0.2〜20重量%が好ましい。
【0035】
(i)電離放射線硬化性成分からなるバインダー成分の構成樹脂としては、それ自体は重合反応性のない非重合性樹脂、及びそれ自体が重合反応性を有する樹脂のいずれを用いてもよいが、非重合性樹脂が好ましい。
前記非重合性樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、トリメリット酸、メチルアクリレート、カプロラクトン、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマーから選ばれる2種以上のモノマーからなる共重合体等が挙げられる。より具体的には、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、メタクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレートマクロモノマー/スチレン共重合体、ベンジルメタクリレート/スチレンマクロモノマー共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体とアルコール類との反応物等が挙げられる。非重合性樹脂の重量平均分子量は5,000〜200,000が好ましい。
【0036】
多官能モノマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等)、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、アリル化合物、ビニルエステル等が挙げられる。本発明の顔料分散体中の多官能モノマーの含有量は、溶媒を除いた有効分中10〜60重量%が好ましい。
光重合開始剤としては、芳香族ケトン類、ロフィン2量体、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類、ポリハロゲン類等が挙げられる。例えば4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体の組み合わせ、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン]、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノンが好ましい。
【0037】
(ii)熱重合性硬化性成分からなるバインダー成分は、樹脂を主体とし、必要に応じて、多官能エポキシ化合物や多価カルボン酸硬化剤、熱重合を促進するための触媒を含有することが好ましい。これらの樹脂、多官能エポキシ化合物、多価カルボン酸硬化剤、触媒等は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(ii)熱重合性官能基からなるバインダー成分の含有量は、溶媒を除いた有効分中10〜60重量%が好ましい。
熱重合性官能基を有する樹脂としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エポキシブチル、(メタ)クリル酸エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸エポキシヘプチル等の(メタ)アクリレート類;ビニルグリシジルエーテル類;ジグリシジルオキシスチレン類;ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル類;ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル類;トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル類から選ばれるエチレン性不飽和結合とエポキシ基を含有するモノマーの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。
さらに、粘度を調節して、均一な塗布膜形成を可能とし、保存安定性を高める観点から、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、酢酸エチル等の溶媒を添加することもできる。
【実施例】
【0038】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り、「重量部」及び「重量%」を意味する。
なお、製造例で得られたグラフトポリマー等の分子量、固形分、エポキシ価、酸価、アミン価、顔料分散体の粘度の測定、及びコントラスト、電気信頼性の評価は、以下の方法により行った。
【0039】
(1)グラフトポリマー等の数平均分子量、重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)グラフトポリマー溶液の固形分の測定
シャーレにガラス棒と乾燥無水硫酸ナトリウム10部を量り採り、そこにポリマー溶液2部(サンプル量)を加えてガラス棒で混合し、105℃の減圧乾燥機(圧力8kPa)で2時間乾燥した。乾燥後の重さを計り、次式より固形分を算出した。
固形分(%)=[〔サンプル量−(乾燥後の重さ−(シャーレ+ガラス棒+無水硫酸ナトリウムの重さ))〕/サンプル量]×100
(3)グラフトポリマー製造時のエポキシ価の測定
ポリマー溶液に塩酸を加え、クロルヒドリン化により消費された量を水酸化カリウムのmg数で表したものをいう。
(4)グラフトポリマーの酸価の測定
JIS K 0070 に従い測定した。
【0040】
(5)ポリマーのアミン価の測定
試料15g(固形分)を200mLコニカルビーカーに計量し、トルエンを75mL加える。さらにエタノールを50mL加え、必要に応じて加温して、試料を均一溶解して溶液を得る。
この溶液にチモールブルー試液を10滴加え均一混合し、0.5mol/L塩酸で振り混ぜながら滴定する。液が淡紅色を呈した時点で滴定を終了し、下記計算式により、アミン価を算出する。なお、検出限界は1mgKOH/gである。
アミン価(mgKOH/g)=(A×f×28.053)/試料採取量(g)
A:0.5mol/L塩酸の消費量(mL)
f:0.5mol/L塩酸のファクター
【0041】
(6)顔料分散体の粘度の測定
顔料濃度10%に合わせた分散体2mLを、20℃で5分間保持した後、E型粘度計(ローターNo.2、20rpm、20℃)を用いて、顔料分散体の粘度を測定した。
(7)顔料分散体の顔料濃度の測定
下記実施例1の工程(1)予備分散体と同様の方法で、顔料の量を変えた混合物を沈降物がなくなるまで分散し、顔料濃度既知の分散体3点を調整した。吸光度計(U−3010 spectrophotometer)で、550nmにおける吸光度と濃度の検量線を作成し、実施例及び比較例の顔料分散体の吸光度計で測定した吸光度より顔料濃度を算出した。
(8)顔料分散体中のグラフトポリマー濃度の測定
前記(2)の方法によって得られたグラフトポリマー溶液の固形分(%)の値と、顔料濃度(%)の値より、次式によって計算した。
グラフトポリマー濃度(%)=グラフトポリマー溶液の固形分(%)−顔料濃度(%)
【0042】
(9)コントラストの評価(硬化膜のコントラスト比の測定)
顔料濃度10%、ポリマー濃度7%の顔料分散体をガラス基板上にスピンコーター(250〜1500rpm×10秒)で塗布した後、水平台にて5分間静置し、80℃〜90℃で15分間ホットプレートにより乾燥し塗膜を得た。分光式色差計(日本電色工業株式会社製、SE−2000形)を用いて塗膜のx値を測定し、x値が0.645の前後となる塗膜を2枚準備した。次いで、塗膜2枚のコントラスト比をコントラスト比測定器(壺坂電機株式会社製、CT−1)で測定し、x値が0.645におけるコントラスト比を算出した。
コントラスト比の値が大きいものほど、コントラストが良好であるが、コントラスト比は2600以上が特に好ましく用いられる。
【0043】
(10)電気信頼性の評価(電圧保持率の測定)
顔料濃度10%に調整した顔料分散体をガラス基板上にスピンコーター(550rpm×10秒)で塗布した後、水平台にて5分間静置し、80℃で15分ホットプレートにより乾燥し、さらに200℃熱風乾燥機で30分乾燥し塗膜を得た。
得られた塗膜をスパーテルでサンプル管へ掻き落とし、サンプル量の10倍量の液晶(メルク社製、ZLI4792)をサンプル管へ入れた。サンプル管を密栓して90℃オーブンで48時間静置した。得られたサンプルの液晶上澄みを取り、エタノールで洗浄して乾燥した液晶注入用セル(株式会社東陽テクニカ製、型番S−0088−5UM/SE−5300)に注入し、紫外線硬化ボンドで注入口を塞ぎ、液晶サンプルを封入した。
得られた液晶サンプル封入セルを20℃の恒温槽中で電極につなぎ、電気信頼性評価装置(株式会社東陽テクニカ製6254型)使用して電圧保持率を測定した。電圧保持率が高いほど、電気信頼性が高いが、電圧保持率は40%以上が特に好ましく用いられる。
【0044】
製造例1〔グラフトポリマーの合成〕
(1)ポリ(メタクリル酸グリシジル・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル・N−ビニルピロリドン)(ポリ(GMA−HEMA−VP))(a1成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコにN−ビニル−2−ピロリドン(以下、「VP」という)100部、メタクリル酸グリシジル(以下、「GMA」という)15.2部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、「HEMA」という)24.0部、メルカプトエタノール(以下「ME」という)3.0部、エタノール178.0部を仕込み、窒素置換を行った。77℃で攪拌しながら、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、アゾ系重合開始剤、商品名:V−65。以下、「V−65」という)3.9部をエタノール41.8部に溶解した液を添加した。
77℃で攪拌しながら、VP 150.0部、GMA 76.2部、HEMA 120.2部、前記重合開始剤6.4部、エタノール445.3部、ME6.8部を混合した溶液を、90分かけて滴下した。
滴下終了した後に更に、GMA 60.9部、HEMA 96.1部、V−65 12.0部、エタノール167部、ME3.1部を混合した溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間、77℃で攪拌後、V−65 0.6部とエタノール15.0部を加えた。更に77℃で1時間攪拌した後、V−65 0.6部とエタノール15.0部を加えた。更に1時間攪拌した後、冷却し、ポリ(GMA−HEMA−VP)(a1)のエタノール溶液を得た。
溶液の固形分は40.5%であり、得られたポリ(GMA−HEMA−VP)(a1)の数平均分子量は3900、重量平均分子量は10500、エポキシ価は84mgKOH/gであった。
【0045】
(2)片末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2成分)の合成
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸ベンジル100部、3−メルカプトプロピオン酸(連鎖移動剤)4.0部、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(以下、「BCA」という)50部を仕込み、窒素置換したあと、80℃で攪拌しながら、メタクリル酸ベンジル400部、3−メルカプトプロピオン酸16.0部、BCA200部、V−65 4部を3時間かけて滴下した。更に1時間、80℃で攪拌後、V−65 4部、3−メルカプトプロピオン酸1.8部、BCA150部を加えた。更に、80℃で2時間攪拌した後冷却し、末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2)のBCA溶液を得た。
溶液の固形分は57.0%であり、得られた末端カルボン酸型ポリメタクリル酸ベンジル(a2)の酸価は18mgKOH/g、数平均分子量は2400、重量平均分子量は4600であった。
【0046】
(3)エポキシ基とカルボン酸のカップリング反応によるグラフトポリマーの製造
還流冷却器、温度計、及び攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに前記(1)で得られた(a1)溶液100部(固形分40.5部)、前記(2)で得られた(a2)溶液196.4部(固形分111.9部)、BCA87部、エタノール87部、テトラブチルアンモニウムブロミド4.0部を仕込み、90℃で15時間攪拌した。酸価を測定した結果、反応率は96%であった。冷却後、エバポレーターにて(バス温63℃、圧力92kPa)、エタノールを除去し、粗グラフトポリマー(ポリ(HEMA−VP−g−BzMA))のBCA溶液を得た。
溶液の固形分は29%であり、得られたポリ(HEMA−VP−g−BzMA)の数平均分子量は6300、重量平均分子量は28000であった。
【0047】
(4)グラフトポリマーの精製
シリカゲル(カラムクロマト用)100gを酢酸エチル200gに分散し、ガラスカラムに充填し、酢酸エチルでシリカゲルを洗浄した。前記(3)で得られた粗グラフトポリマーのBCA溶液120g、酢酸エチル200gの順にカラムを通過させ、グラフトポリマーの精製を行った。
得られたグラフトポリマーの溶液をエバポレーターに仕込み、バス温63℃、圧力92kPaで、酢酸エチルを除去し、精製したグラフトポリマーのBCA溶液を得た。
溶液の固形分は30%であり、得られたグラフトポリマーの数平均分子量は6500、重量平均分子量は31000、アミン価は1mgKOH/g未満(検出限界未満)であった。
【0048】
実施例1(顔料分散体(1)の調製)
製造例1(4)で得られた精製グラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」という)0.15g(対顔料1.0%)、BCA99.85g、ジケトピロロピロール系顔料(BASF社製、C.I.ピグメントレッド254、商品名「IRGAPHOR BK−CF」、平均一次粒径30nm(カタログ値))15.0g、さらに0.3mmφのジルコニアビーズ300gを500mLの容器に入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)にて3時間振とうした。ステンレス金網(200メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。
次いで、250mLの容器に、この予備分散体100gと、0.05φジルコニアビーズ200gを入れ、前記ペイントシェーカーで24時間振とうした。ステンレス金網(400メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液60gを遠心分離機(Sigma社製、商品名:Sigma 3K30)を用いて、ローター12158Hを使い、15500rpmで1時間遠心分離し、顔料の粗粒を除去し、顔料分散体(1)を得た。
顔料分散体(1)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。この顔料分散体の粘度の測定結果、コントラストを表1に、電気信頼性の評価結果を表2に示す。
【0049】
実施例2(顔料分散体(2)の調製)
TBABを0.32g(対顔料2.1%)、BCAを99.69gに変更した以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(2)を得た。顔料分散体(2)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1及び表2に示す。
【0050】
実施例3(顔料分散体(3)の調製)
TBABをコータミン86Pコンク(商品名;花王株式会社製、固形分63%;ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド)0.67g(対顔料2.8%)、BCAを99.33gに変更した以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(3)を得た。顔料分散体(3)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1及び表2に示す。
【0051】
実施例4(顔料分散体(4)の調製)
製造例1(4)で得られたグラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)、テトラエチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート(以下、「TEAPTS」という)0.42g(対顔料2.8%)、BCA99.58g、前記ジケトピロロピロール系顔料(商品名「IRGAPHOR BK−CF」)15.0g、さらに0.3mmφのジルコニアビーズ300gを500mLの容器に入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)にて3時間振とうした。ステンレス金網(200メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。
次いで、250mLの容器に、この予備分散体100gと、0.05φジルコニアビーズ200gを入れ、前記ペイントシェーカーで48時間振とうした。ステンレス金網(400メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液60gを実施例1と同様に遠心分離し、顔料分散体(4)を得た。顔料分散体(4)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1及び表2に示す。
【0052】
実施例5(顔料分散体(5)の調製)
実施例1において、製造例1(4)で得られたグラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)を、製造例1(3)で得られた粗グラフトポリマーのBCA溶液36.2g(固形分10.5g)に変更し、TBABを0.21g(対顔料1.4%)、BCAを98.59g、に変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散体(5)を得た。顔料分散体(5)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0053】
比較例1(顔料分散体(6)の調製)
TBABを用いずに、BCAを100.00gに変更した以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(6)を得た。顔料分散体(6)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。この顔料分散体(6)の粘度の測定結果、及びコントラストの評価結果を表1に示す。
【0054】
比較例2(顔料分散体(7)の調製)
アジスパーPB821(商品名;味の素ファインテクノ株式会社製、ポリアリルアミン−ポリカプロラクトン共重合体)10.5g及びBCA 124.5gを500mLの容器に入れ70℃で均一に溶解させた。次いで、この溶液を25℃まで冷却し、前記ジケトピロロピロール系顔料(商品名「IRGAPHOR BK−CF」)を15.0g、0.3mmφのジルコニアビーズ300gを容器に入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)にて3時間振とうした。ステンレス金網(200メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。
次いで、250mLの容器に、この予備分散体100gと、0.05φジルコニアビーズ200gを入れ、前記ペイントシェーカーで24時間振とうした。ステンレス金網(400メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液を実施例1と同様に遠心分離し、顔料分散体(7)を得た。
顔料分散体(7)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0055】
比較例3(顔料分散体(8)の調製)
前記アジスパーPB821(ポリアリルアミン−ポリカプロラクトン共重合体)10.5g及びBCA124.19gを500mLの容器に入れ70℃で均一に溶解させた。次いで、この溶液を25℃まで冷却し、前記ジケトピロロピロール系顔料(商品名「IRGAPHOR BK−CF」)15.0g、TBAB0.315g(対ポリマー顔料3.0%)、0.3mmφのジルコニアビーズ300gを容器に入れ、ペイントシェーカー(浅田鉄鋼株式会社製)にて3時間振とうした。ステンレス金網(200メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、予備分散体を得た。次いで、250mLの容器に、この予備分散体100gと、0.05φジルコニアビーズ200gを入れ、前記ペイントシェーカーで24時間振とうした。ステンレス金網(400メッシュ)でジルコニアビーズを濾過し、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液を実施例1と同様に遠心分離し、顔料分散体(8)を得た。
顔料分散体(8)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0056】
比較例4(顔料分散体(9)の調製)
比較例3において、BCAを123.87g、TBABを0.630g(対顔料6.0%)に変更した以外は比較例3と同様にして、顔料分散体(9)を得た。顔料分散体(9)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0057】
比較例5(顔料分散体(10)の調製)
TBABを用いずに、BCAを100.00gに変更し、グラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)をDISPER BYK−161(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリウレタン系分散剤)溶液35.0g(固形分10.5g)に変更した以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(10)を得た。顔料分散体(10)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0058】
比較例6(顔料分散体(11)の調製)
グラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)を前記DISPER BYK−161(ポリウレタン系分散剤)溶液35.0g(固形分10.5g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、顔料分散体(11)を得た。顔料分散体(11)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0059】
比較例7(顔料分散体(12)の調製)
実施例1において、製造例1(4)で得られたグラフトポリマーのBCA溶液35.0g(固形分10.5g)を、製造例1(3)で得られた粗グラフトポリマーのBCA溶液36.2g(固形分10.5g)に変更し、BCAを98.8gに変更し、TBABを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、顔料分散体(12)を得た。顔料分散体(12)は、顔料濃度10%、ポリマー濃度7%であった。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1から、実施例1〜5で得られた顔料分散体は、低粘度であり、コントラストに優れた硬化膜を得ることができることが分かる。特に、高分子分散剤として、(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満ではない分散剤を用いた場合(比較例2〜6)とテトラアルキルアンモニウム塩がグラフトポリマー製造時より含まれていた場合(比較例7)で得られた顔料分散体は、粘度が高く、テトラアルキルアンモニウム塩を含有していない場合(比較例1、2、5)で得られた顔料分散体は、コントラストに優れた硬化膜が得られないことが分かる。また、表2から、特に実施例4の顔料分散体は、電気信頼性にも優れるため、液晶表示装置の安定した表示性能を得ることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)及び(2)を有するカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
工程(1):(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位及びアミド基を含有し、アミン価が1mgKOH/g未満である高分子分散剤(A)、及び有機顔料(B)をエステル系有機溶媒(C)中で混合する工程
工程(2):テトラアルキルアンモニウム塩(D)を添加し、分散処理する工程
【請求項2】
テトラアルキルアンモニウム塩(D)のアルキル基の炭素数が2〜6である、請求項1に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項3】
工程(2)におけるテトラアルキルアンモニウム塩(D)の添加量が有機顔料(B)に対して0.1〜6重量%である、請求項1又は2に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項4】
エステル系有機溶媒(C)がジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1〜3のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項5】
テトラアルキルアンモニウム塩(D)のアルキル基が全て同じである、請求項1〜4のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項6】
テトラアルキルアンモニウム塩(D)がハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである、請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項7】
テトラアルキルアンモニウム塩(D)が有機酸塩である、請求項1〜5のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項8】
高分子分散剤(A)がグラフトポリマーである、請求項1〜7のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項9】
前記グラフトポリマーが、側鎖に(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有するものである、請求項8記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項10】
前記グラフトポリマーが、主鎖にアミド基を含有するモノマー由来の構成単位を有するものである、請求項8又は9に記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項11】
高分子分散剤(A)の主鎖部分の重量平均分子量が12,000〜23,000である、請求項8〜10のいずれかに記載のカラーフィルター用顔料分散体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法で得られたカラーフィルター用顔料分散体を含有するカラーフィルター用着色組成物。

【公開番号】特開2013−95831(P2013−95831A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239212(P2011−239212)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】