説明

カラーフィルタ基板の製造方法、エレクトロルミネッセンス基板の製造方法、カラーフィルタ基板、エレクトロルミネッセンス基板、電気光学装置及び電子機器

【課題】機能液の吐出位置に関する制約が少なく、かつ色要素に空隙部が生じにくいカラーフィルタ基板の製造方法、同じく発光層に空隙部が生じにくいエレクトロルミネッセンス基板の製造方法、カラーフィルタ基板、エレクトロルミネッセンス基板、電気光学装置、電子機器を提供すること。
【解決手段】カラーフィルタ基板20の製造方法は、ガラス基板21上に、列方向に沿った隔壁45を形成する工程(図2(a))と、ガラス基板21の表面と隔壁45とによって形作られた凹部に、液滴吐出装置を用いて色要素材料を含む機能液40Aを吐出する工程と、機能液40Aを乾燥させて色要素40を形成する工程(図2(b))と、色要素40の表面であって行方向に延びた帯状の領域に電磁波を照射して色要素40を変質させることにより、光の透過率が色要素40より低い遮光部46を形成する工程(図2(c))とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置を用いたカラーフィルタ基板の製造方法及びエレクトロルミネッセンス基板の製造方法、カラーフィルタ基板、エレクトロルミネッセンス基板、これらのいずれかを備えた電気光学装置、及び当該電気光学装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の電気光学装置に用いられるカラーフィルタ基板は、色要素がマトリクス状に配置された構成を有するのが一般的である。ここで色要素とは、入射した光のうち特定の波長の光を吸収することによって透過光を所定の色(例えば赤、緑、青等)とすることが可能な物質である。こうしたカラーフィルタ基板の製造方法の一つに、インクジェット装置等の液滴吐出装置を用いて色要素を形成する工程を含む方法が知られている。具体的には、基板上に格子状の隔壁を形成し、これによってできた矩形の凹部に、色要素材料を含んだ機能液を液滴吐出装置によって吐出し、当該機能液を乾燥させて色要素を形成するものである。
【0003】
こうした製造方法によって製造されたカラーフィルタ基板においては、色要素に空隙部が生じることがあり、その部位において透過光が着色されない、いわゆる「白抜け」が起こるという問題点があった。これは、上記凹部の隅に機能液が濡れ広がらない結果、色要素が形成されるべき部位に形成されないことによって起こる。この問題点を解決する手段として、隔壁に凹凸を持たせること等により、上記凹部の形状を、機能液が濡れ広がりやすいように調整する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
なお、上記の問題点及び解決手段は、液滴吐出装置を用いて発光層を形成するエレクトロルミネッセンス基板の製造過程においても当てはまる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−266010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、こうした解決手段をとったとしてもなお、機能液を凹部に均一に濡れ広がらせるためには、機能液の吐出位置を矩形の凹部内で細かく制御する必要がある。すなわち、周囲を隔壁で囲まれた矩形の凹部に機能液を均一な厚さに配置し、かつその厚さが異なる凹部間で異ならないようにするためには、各凹部の所定の位置に所定の量だけ機能液を吐出する必要がある。そして、その実施のためには、液滴吐出装置を細かくかつ正確に制御しなければならず、その困難性のために歩留まりが低下したり、液滴吐出装置の調整のために工程所要時間が長くなるという問題点があった。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、機能液の吐出位置に関する制約が少なく、かつ色要素に空隙部が生じにくいカラーフィルタ基板の製造方法、及び機能液の吐出位置に関する制約が少なく、かつ発光層に空隙部が生じにくいエレクトロルミネッセンス基板の製造方法を提供すること、また、当該製造方法によって製造されたカラーフィルタ基板、エレクトロルミネッセンス基板、これらのいずれかを備えた電気光学装置、及び当該電気光学装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のカラーフィルタ基板の製造方法は、基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の色要素を有するカラーフィルタ基板の製造方法であって、前記基板上に、前記列方向に沿った隔壁を形成する工程と、前記基板の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に、液滴吐出装置を用いて色要素材料を含む機能液を吐出する工程と、前記機能液を乾燥させて前記色要素を形成する工程と、前記色要素のうち、前記行方向に延びた帯状の領域に電磁波を照射して前記色要素の一部を変質させることにより、光の透過率が前記色要素より低い遮光部を形成する工程とを包含することを特徴とする。
【0009】
上記製造方法によれば、隔壁を形成する工程において、隔壁は列方向に形成されるので、機能液を吐出する工程において機能液が配置されるべき凹部は、列方向に延びた細長い溝状の凹部となる。そして、当該凹部に吐出された機能液は、列方向については遮る隔壁がないため、容易に均一に濡れ広がる。このため、機能液を乾燥させて形成される色要素に空隙部が生じにくい。加えて、こうした凹部の形状により、液滴吐出装置による機能液の吐出位置には、特に列方向についての制約が少ない。これは、列方向については凹部が隔壁で区切られていないため、隔壁で区切られている場合と比較して吐出位置及び吐出量にばらつきがあっても、機能液が溝状の凹部全体に行きわたりやすいためである。また、色要素の表面に電磁波を照射して遮光部を形成することにより、色要素のマトリクス状の配列における行、列いずれの方向についても、色要素間の領域における遮光性が確保される。すなわち、色要素の隣接する列の間の領域における遮光性は隔壁によって確保され、色要素の隣接する行の間の領域における遮光性は遮光部によって確保される。このように、上記製造方法によれば、機能液の吐出位置に関する制約が少ない製造工程によって、色要素に空隙部が生じにくいカラーフィルタ基板を製造することができる。
【0010】
上記カラーフィルタ基板の製造方法において、前記電磁波はレーザー光であることが好ましい。このような製造方法によれば、遮光部の形成工程において、色要素の一部にレーザー光が照射され、当該レーザー光に起因する熱エネルギーが与えられる。そして、この部位の色要素は当該熱エネルギーによって炭化等の化学変化を起こし、光の透過率が前記色要素より低い遮光部となる。この遮光部によって、色要素の隣り合う行の間の領域における遮光性が確保される。
【0011】
上記カラーフィルタ基板の製造方法においては、前記色要素は感光材料を含み、前記遮光部を形成する工程は、前記色要素に光を照射して前記感光材料を変質させる工程を包含することが好ましい。このような製造方法によれば、遮光部の形成工程において、色要素に含まれる感光材料に光が照射される。そして、この感光材料が当該光に起因する化学変化を起こし、光の透過率が前記色要素より低い遮光部となる。この遮光部によって、色要素の隣り合う行の間の領域における遮光性が確保される。
【0012】
本発明のエレクトロルミネッセンス基板の製造方法は、基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス基板の製造方法であって、前記基板上に、前記画素ごとに画素電極を形成する工程と、前記基板上に、前記列方向に沿った隔壁を形成する工程と、前記基板又は前記画素電極の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に、液滴吐出装置を用いて発光材料を含む機能液を吐出する工程と、前記機能液を乾燥させて発光層を形成する工程と、前記発光層のうち、前記行方向に延びた帯状の領域であって前記画素電極の形成されていない領域を含む領域に電磁波を照射して前記発光層の一部を変質させることにより、発光輝度が前記発光層より低い低輝度発光部を形成する工程とを包含することを特徴とする。
【0013】
上記製造方法によれば、隔壁を形成する工程において、隔壁は列方向に形成されるので、機能液を吐出する工程において機能液が配置されるべき凹部は、列方向に延びた細長い溝状の凹部となる。そして、当該凹部に吐出された機能液は、列方向については遮る隔壁がないため、容易に均一に濡れ広がる。このため、機能液を乾燥させて形成される発光層に空隙部が生じにくい。加えて、こうした凹部の形状により、液滴吐出装置による機能液の吐出位置には、特に列方向についての制約が少ない。これは、列方向については凹部が隔壁で区切られていないため、隔壁で区切られている場合と比較して吐出位置及び吐出量にばらつきがあっても、機能液が溝状の凹部全体に行きわたりやすいためである。また、発光層の表面に電磁波を照射して低輝度発光部を形成することにより、マトリクス状の画素配列における行、列いずれの方向についても、画素間の領域における不必要な発光が低減される。すなわち、画素の隣接する列の間の領域においては隔壁があることによって発光層が配置されていないため発光が行われず、画素の隣接する行の間の領域においては低輝度発光部が形成されていることによって不必要な発光が低減される。このように、上記製造方法によれば、機能液の吐出位置に関する制約が少ない製造工程によって、発光層に空隙部が生じにくいエレクトロルミネッセンス基板を製造することができる。
【0014】
上記エレクトロルミネッセンス基板の製造方法において、前記電磁波はレーザー光であることが好ましい。このような製造方法によれば、低輝度発光部の形成工程において、発光層の一部にレーザー光が照射され、当該レーザー光に起因する熱エネルギーが与えられる。そして、この部位の発光層は当該熱エネルギーによって炭化等の化学変化を起こし、エレクトロルミネッセンス現象をほとんど起こさないようになる。すなわち、発光輝度が前記発光層より低い低輝度発光部となる。この低輝度発光部によって、画素の隣接する行の間の領域において不必要な発光が低減される。
【0015】
本発明のカラーフィルタ基板は、基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の色要素を有するカラーフィルタ基板であって、前記基板と、前記基板上に、前記列方向に沿って配置された隔壁と、前記基板の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に配置された色要素と、少なくとも前記色要素の表面を含む領域であって前記行方向に延びた帯状の領域に形成された、光の透過率が前記色要素より低い遮光部とを備えることを特徴とする。
【0016】
上記構成のカラーフィルタ基板は、前記凹部が列方向については隔壁で区切られていないため、当該凹部に配置される色要素に空隙部が生じにくい。このため、上記構成によれば、色要素の空隙に起因する白抜け等の不具合の少ないカラーフィルタ基板が得られる。
【0017】
本発明のエレクトロルミネッセンス基板は、基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス基板であって、前記基板と、前記基板上に、前記画素ごとに配置された画素電極と、前記基板上に、前記列方向に沿って配置された隔壁と、前記基板又は前記画素電極の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に配置された発光層と、前記発光層の一部を変質させて形成された低輝度発光部であって、前記画素電極の形成されていない領域を含む前記行方向に延びた帯状の領域に形成された、発光輝度が前記発光層より低い低輝度発光部とを備えることを特徴とする。
【0018】
上記構成のエレクトロルミネッセンス基板は、前記凹部が列方向については隔壁で区切られていないため、当該凹部に配置される発光層に空隙部が生じにくい。このため、上記構成によれば、発光層の空隙に起因する表示不良の少ないエレクトロルミネッセンス基板が得られる。
【0019】
本発明の電気光学装置は、上記カラーフィルタ基板を備えることを特徴とする。このような電気光学装置は、色要素の空隙に起因する白抜け等の不具合の少ないカラーフィルタ基板を用いることにより、高品位の表示又は発光を行うことができる。
【0020】
本発明の電気光学装置は、上記エレクトロルミネッセンス基板を備えることを特徴とする。このような電気光学装置は、発光層の空隙に起因する表示不良の少ないエレクトロルミネッセンス基板を用いることにより、高品位の表示又は発光を行うことができる。
【0021】
本発明の電子機器は、上記電気光学装置を備えることを特徴とする。このような電子機器は、上記電気光学装置によって高品位の表示又は発光を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0023】
(第1の実施形態)
<A.カラーフィルタ基板>
本実施形態は、本発明に係るカラーフィルタ基板及びカラーフィルタ基板の製造方法についてのものである。図2(c)は、本発明の実施形態に係るカラーフィルタ基板20の構造を示す概略平面図である。この図に示すように、カラーフィルタ基板20は、「基板」としてのガラス基板21の表面に、赤、緑、青にそれぞれ対応する複数の色要素領域2R,2G,2B(以下ではこれらをまとめて「色要素領域2」とも呼ぶ)を有している。各々の色要素領域2は、隔壁45及び遮光部46によって区画されている。各色要素領域2には、赤、緑、青にそれぞれ対応する色要素40R,40G,40B(以下ではこれらをまとめて「色要素40」とも呼ぶ)が形成されている。各色要素40は、同色の色要素40同士が列をなすように配置されている。すなわち、カラーフィルタ基板20は、ストライプ状に配列された色要素40を備えている。
【0024】
ここで色要素40は、色要素領域2ごとに、異なる色要素材料を含む3種(色)の機能液を吐出して乾燥させることにより形成されている。このような機能液としては、公知の材料を用いればよく、例えば、色要素材料として無機あるいは有機顔料を用い、これにより着色したアクリル樹脂やポリウレタン樹脂等からなる機能液を用いることができる。本稿では、色要素40R,40G,40Bの形成に用いる機能液をそれぞれ機能液40RA,40GA,40BA(図3(b)参照)と表記する。また、上記隔壁45は遮光性を有する樹脂である。遮光部46は、色要素40を炭化させた黒色の物質であって、色要素40より光の透過率が低い。換言すれば、遮光部46も、隔壁45と同様に遮光性を有する。
【0025】
図2(c)のカラーフィルタ基板20をC−C線で切断したときの断面図を図3(d)に示す。この図に示すように、ガラス基板21及び隔壁45は凹部を形作っており、各色要素40は当該凹部に配置されている。また、遮光部46は、各色要素40の上部に積層される形で配置されている。これは、遮光部46が、色要素40の上層部を炭化させたものであることに起因する。図2(c)のカラーフィルタ基板20をD−D線で切断したときの断面図を図4(a)に示す。この図に示すように、色要素40(40G)は、列方向に隣接した複数の色要素領域2にわたって連続的に配置されており、色要素領域2は、色要素40(40G)の表面に形成された遮光部46によって区画されているに過ぎない。ただし、図4(b)のように、遮光部46を色要素40(40G)の全ての厚さ方向にわたって形成することもできる。なお、図2(c)のカラーフィルタ基板20を、C−C線に平行でかつ遮光部46を含まない位置で切断したときの断面図は、図3(c)に相当する。
【0026】
こうした構成のカラーフィルタ基板20によれば、各色要素領域2において、透過光を赤、緑、又は青に着色可能であるとともに、隣接する色要素領域2間においては隔壁45及び遮光部46によって透過光が遮光されるため、混色等が生じない、高品位な光学特性が実現される。
【0027】
<B.カラーフィルタ基板の製造方法>
続いて、上記カラーフィルタ基板20の製造方法について説明する。
【0028】
<B−1.液滴吐出装置の全体構成>
まず、カラーフィルタ基板20の製造に用いる液滴吐出装置300の全体構成について図5を用いて説明する。図5に示す液滴吐出装置300は、基本的には液状の材料111(機能液40RA)を吐出するためのインクジェット装置である。より具体的には、液滴吐出装置300は、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、支持部104aとを備えている。なお、色要素40G,40Bの色要素材料を含む機能液40GA,40BAを吐出するための液滴吐出装置(不図示)は、吐出する材料が異なることを除けば液滴吐出装置300の構造および機能と基本的に同じであるので、説明は省略する。
【0029】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図6参照)を保持している。このヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、液状の材料111の液滴を吐出する。なお、吐出ヘッド部103におけるヘッド114は、チューブ110によってタンク101に連結されており、このため、タンク101からヘッド114に液状の材料111が供給される。
【0030】
ステージ106はガラス基板21を固定するための平面を提供している。さらにステージ106は、吸引力を用いてガラス基板21の位置を固定する機能も有する。
【0031】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0032】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0033】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータまたはサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。
【0034】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、ガラス基板21はステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、ガラス基板21に対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、ヘッド114、またはノズル118(図6参照)は、ステージ106に固定されたガラス基板21に対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0035】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データを外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。なお、吐出データとは、ガラス基板21上に、液状の材料111を所定パターンで付与するためのデータである。本実施形態では、吐出データはビットマップデータの形態を有している。
【0036】
上記構成を有する液滴吐出装置300は、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118をガラス基板21に対して相対移動させるとともに、被吐出部に向けてノズル118から液状の材料111を吐出する。
【0037】
<B−2.ヘッド>
図6(a)および(b)に示すように、液滴吐出装置300におけるヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、振動板126と、ノズル118の開口を規定するノズルプレート128と、を備えている。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、液たまり129が位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の材料111が常に充填される。
【0038】
また、振動板126とノズルプレート128との間には、複数の隔壁部122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁部122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁部122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の材料111が供給される。なお、本実施形態では、ノズル118の直径は、約27μmである。
【0039】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A,124Bとを含む。制御部112が、この一対の電極124A,124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状の材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される材料の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0040】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0041】
<B−3.制御部>
次に、制御部112の構成を説明する。図7に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とを備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と、記憶装置202と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とは、図示しないバスによって相互に通信可能に接続されている。
【0042】
走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0043】
入力バッファメモリ200は、液滴吐出装置300の外部に位置する外部情報処理装置(不図示)から、液状の材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図7では、記憶装置202はRAMである。
【0044】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第1位置制御装置104および第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から、液状の材料111の液滴Dが吐出される。
【0045】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、バスを含んだコンピュータである。したがって、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0046】
<B−4.液状の材料>
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴Dとして吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。ここで、液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上である場合には、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111で汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下である場合は、ノズル118における目詰まり頻度が小さく、このため円滑な液滴Dの吐出を実現できる。なお、「液状の材料111」は、被吐出部に付与された後に固有の機能を果たすことから、「機能液」とも呼ぶ。
【0047】
本実施形態で用いる40RA,40GA,40BAは、上述の条件を満たす液状の材料111(機能液)である。機能液40RA,40GA,40BAは、それぞれ赤、緑、青の色要素材料を溶媒に溶解させた液体である。色要素材料としては、顔料や染料等の着色剤を用いることができ、溶媒としては、アクリル樹脂等を用いることができる。
【0048】
<B−5.製造方法>
続いて、図1から図4を参照しながら、上述の液滴吐出装置300を用いたカラーフィルタ基板20の製造方法について説明する。図1は、カラーフィルタ基板20の製造方法を示す工程図であり、図2は、当該製造方法の各工程におけるカラーフィルタ基板20の平面図、図3及び図4は、当該製造方法の各工程におけるカラーフィルタ基板20の断面図である。
【0049】
まず、工程P11では、ガラス基板21上に樹脂有機薄膜を塗付し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングすることによって、図2(a)に示すように隔壁45を形成する。図2(a)中のA−A線における断面図が図3(a)である。これらの図に示すように、隔壁45は、外周となるべき領域を除けば、列方向に沿ってのみ形成される。この結果、ガラス基板21上に、ガラス基板21の表面を底部とし、隔壁45を側壁とする、列方向に長い長矩形の凹部が形成される。
【0050】
次に、工程P12では、上記凹部の底部に、色要素40Rの材料となる色要素材料を含んだ機能液40RAを吐出する(図3(b)参照)。具体的には、まず、隔壁45が形成されたガラス基板21が、液滴吐出装置300のステージ106に運ばれる。そして、液滴吐出装置300は、上記凹部の底部に、ヘッド114の吐出部127から機能液40RAを吐出する。このとき、機能液40RAが吐出される凹部には、列方向については遮る隔壁がないため、機能液40RAが容易に均一に濡れ広がる。また、凹部が長矩形であることにより、機能液40RAの吐出位置には、特に列方向についての制約が少ない。すなわち、列方向については凹部が隔壁45で区切られていないため、隔壁45で区切られている場合と比較して吐出位置及び吐出量にばらつきがあっても、機能液40RAが溝状の凹部全体に行きわたりやすい。この後、乾燥若しくは低温(例えば60℃)での焼成によるプレベーク(仮焼成)を行うことによって、吐出された機能液40RAは、仮固化若しくは仮硬化される。
【0051】
同様にして、工程P13では機能液40GAが、また工程P14では機能液40BAが、それぞれ異なる凹部に吐出される。それぞれの吐出工程後には、機能液40RAの場合と同様、プレベークが行われる。
【0052】
続く工程P15では、機能液40RA,40GA,40BA(以下ではこれらをまとめて「機能液40A」とも呼ぶ)が吐出されたガラス基板21を高温環境下に放置して焼成を行う。当該焼成工程を経た後は、機能液40A中の溶媒が蒸発し、図2(b)に示すように、当該機能液40Aが吐出された領域に色要素40がそれぞれ形成される。図2(b)中のB−B線における断面図が図3(c)に相当する。上述したように、機能液40Aは、凹部が長矩形である結果、当該凹部に均一に塗れ広がっているので、工程P15において焼成、乾燥された後の色要素40には空隙部が生じにくい。
【0053】
次に、工程P16では、色要素40の表面の所定の領域にレーザー光を照射する。ここで所定の領域とは、行方向の帯状の領域であって、隣接する色要素領域2の間の領域を含む領域である。換言すれば、色要素領域2を列方向について区画するときの区画領域である。色要素40のうちレーザー光を照射された部位は、レーザー光の熱エネルギーによって変質し、透過率が色要素40より低い遮光部46となる。より具体的には、色要素40は、前記熱エネルギーによって炭化されて、黒色の遮光部46となる(図2(c)参照)。前述したように、図2(c)中のC−C線における断面図が図3(d)に相当し、D−D線における断面図が図4(a)に相当する。このように遮光部46を形成することにより、色要素40のマトリクス状の配列における行、列いずれの方向についても、色要素40間の領域における遮光性が確保される。すなわち、色要素40の隣り合う列の間の領域における遮光性は隔壁45によって確保され、色要素40の隣り合う行の間の領域における遮光性は遮光部46によって確保される。
【0054】
以上の工程を経て、カラーフィルタ基板20が完成する。このような製造方法によれば、機能液40RAの吐出位置に関する制約が少ないにも関わらず、色要素40に空隙部が生じにくいカラーフィルタ基板20を製造することができる。
【0055】
(電気光学装置への適用例)
本発明を適用したカラーフィルタ基板20は、例えば、図8に示すような「電気光学装置」としての液晶表示装置1に用いることができる。液晶表示装置1は、TFT素子をスイッチング素子とするアクティブマトリクス方式の表示装置であり、シール剤35を介して互いに対向して固着された素子基板10、カラーフィルタ基板20を有している。シール剤35は、カラーフィルタ基板20の外縁部近傍に形成されている。素子基板10、カラーフィルタ基板20、シール剤35が作る空間には液晶(不図示)が封入されている。また、素子基板10上には、液晶を駆動するためのドライバ39が実装されている。
【0056】
このような構成の液晶表示装置1は、液晶の作用により透過光を変調し、表示領域32において表示を行う装置である。表示領域32は、マトリクス状に配列された画素からなり、ドライバ39はこれらの各々の画素に対して液晶を所望の状態に駆動させるための駆動信号を出力する。ここで、カラーフィルタ基板20の色要素領域2の形状は、液晶表示装置1の画素の形状と略等しくなっている。これにより、表示に用いられる透過光は、カラーフィルタ基板20の色要素40を透過し、その際に着色される。ここで、カラーフィルタ基板20の色要素40には上述したように空隙が少ないため、当該空隙に起因する白抜け等の不具合が少ない。このため、液晶表示装置1は、白抜け等の不具合の少ない、高品位の表示を行うことができる。
【0057】
なお、カラーフィルタ基板20は、上記液晶表示装置1以外にも種々の液晶表示装置に適用することが可能であり、例えば、TFD(Thin Film Diode)をスイッチング素子とするもの、パッシブマトリクス駆動方式のもの、液晶モードがTN(Twisted Nematic)モードのもの、またはSTN(Super Twisted Nematic)モードのもの等のいずれにも適用することができる。さらに、液晶表示装置以外にも、有機EL(Electro Luminescence)パネル、およびDMD(Digital Micromirror Device)等のカラーフィルタ基板を有する種々の電気光学装置に適用することが可能である。
【0058】
(電子機器への搭載例)
カラーフィルタ基板20を備えた上記液晶表示装置1は、例えば、図9に示すような「電子機器」としての携帯電話機500に搭載して用いることができる。携帯電話機500は、表示部510および操作ボタン520を有している。表示部510は、内部に組み込まれた液晶表示装置1によって、操作ボタン520で入力した内容や着信情報を始めとする様々な情報について、画素内における白抜け等のない、高品位な表示を行うことができる。
【0059】
なお、本発明を適用した液晶表示装置1は、上記携帯電話機500の他、モバイルコンピュータ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、車載機器、オーディオ機器、プロジェクタなどの各種電子機器に用いることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
<A.エレクトロルミネッセンス基板>
本実施形態は、本発明に係るエレクトロルミネッセンス基板及びエレクトロルミネッセンス基板の製造方法についてのものである。図11(d)は、本実施形態のエレクトロルミネッセンス基板30の構造を示す概略平面図である。この図に示すように、エレクトロルミネッセンス基板30は、「基板」としてのガラス基板21の表面に、赤、緑、青にそれぞれ対応する複数の画素3R,3G,3B(以下ではこれらをまとめて「画素3」とも呼ぶ)を有している。各々の画素3は、隔壁45及び低輝度発光部47によって区画されている。各画素3には、赤、緑、青のそれぞれの色の光を発する発光層41R,41G,41B(以下ではこれらをまとめて「発光層41」とも呼ぶ)が形成されている。各発光層41は、同色の発光層41同士が列をなすように配置されている。すなわち、エレクトロルミネッセンス基板30は、ストライプ状に配列された発光層41を備えている。
【0061】
完成したエレクトロルミネッセンス基板30を、発光層41R,41G,41Bを含む線分で切断したときの断面図は、図12(f)に相当する。この図に示すように、ガラス基板21と発光層41との間にはITO(Indium Tin Oxide)からなる透明な画素電極31が形成されている。隔壁45は画素電極31の上から形成されているため、一部が画素電極31に重なっている。そして、発光層41は、画素電極31と隔壁45とが形作る凹部に配置されている。また、隔壁45及び発光層41を覆って、金属からなる陰極37及び樹脂からなる封止部材38がこの順に重ねて形成されている。なお、ガラス基板21の表面には、スイッチング素子としてのTFT素子等を含む回路素子層がさらに形成されているが、本稿では図示を省略した。
【0062】
発光層41は、エレクトロルミネッセンス現象を発現する有機発光物質の層であり、画素電極31と陰極37との間に印加された電圧に応じて発光層41に電流が流れると、当該電流の大きさに応じた輝度で発光する。発光層41からの光は、一部は画素電極31及びガラス基板21を透過し、一部は陰極37によって反射されてから画素電極31及びガラス基板21を透過する。いずれにせよ、発光層41からの光はガラス基板21の側から射出される。
【0063】
発光層41は、画素3ごとに、異なる発光材料を含む3種(色)の機能液を吐出して乾燥させることにより形成されている。このような機能液としては、公知の材料を用いればよく、例えば、発光材料としてポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)等の有機発光材料を用い、これを溶解又は拡散させたアクリル樹脂やポリウレタン樹脂等からなる機能液を用いることができる。本稿では、発光層41R,41G,41Bの形成に用いる機能液をそれぞれ機能液41RA,41GA,41BAと表記する。
【0064】
上記隔壁45は遮光性を有する樹脂である。また、低輝度発光部47は、発光層41を変質させた物質であって、発光層41より発光効率が著しく低いという特徴を有する。ここで発光効率とは、発光輝度の、素子に流れる電流に対する比をいう。低輝度発光部47は、主に画素電極31の配置されていない領域に形成されるが、こうした領域にも画素電極31からの電界が回りこんで電流が流れる場合がある。また、低輝度発光部47は、一部画素電極31にかかって形成されるので、こうした領域には発光層41と同様の電流が流れる。このように、低輝度発光層47には電流が流れる可能性がある。しかし、発光層41が発光している状況であっても発光輝度が低いか全く発光しないので、観察者は隔壁45と同様、画素3を区画するブラックマスクとして認識する。
【0065】
このように、上記構成のエレクトロルミネッセンス基板30は、各画素3において、赤、緑、又は青の発光が可能であるとともに、隣接する画素3間においては隔壁45及び低輝度発光部47の存在によって発光がなされないか又はごく僅かであるため、隣接画素3の間で混色等が生じない、高品位な光学特性が実現される。
【0066】
<B.エレクトロルミネッセンス基板の製造方法>
続いて、図10から図13を参照しながら、エレクトロルミネッセンス基板30の製造方法について説明する。図10は、エレクトロルミネッセンス基板30の製造方法を示す工程図であり、図11は、当該製造方法の各工程におけるエレクトロルミネッセンス基板30の平面図、図12及び図13は、当該製造方法の各工程におけるエレクトロルミネッセンス基板30の断面図である。
【0067】
まず、工程P21では、ガラス基板21上の回路素子層(不図示)に積層して、画素3に対応する領域に、公知の成膜技術を用いてITOからなる画素電極31を形成する(図11(a)参照)。図11(a)中のE−E線における断面図が図12(a)である。画素電極31は、回路素子層中のTFT素子(不図示)に電気的に接続された状態で形成される。
【0068】
次に、工程P22では、ガラス基板21上に樹脂有機薄膜を塗付し、これをフォトリソグラフィー法によってパターニングすることによって、図11(b)に示すように隔壁45を形成する。図11(b)中のF−F線における断面図が図12(b)である。これらの図に示すように、隔壁45は、外周となるべき領域を除けば、列方向に沿ってのみ形成される。また、各々の隔壁45の幅は、画素電極31の隣接する列の間の領域の幅より広い。すなわち、隔壁45は、画素電極31に一部が重なった状態で形成される。この結果、ガラス基板21上に、画素電極31及びガラス基板21の表面を底部とし、隔壁45を側壁とする、列方向に長い長矩形の凹部が形成される。
【0069】
次に、工程P23では、上記凹部の底部に、発光層41Rの材料となる発光材料を含んだ機能液41RAを吐出する(図12(c)参照)。具体的には、まず、隔壁45が形成されたガラス基板21が、液滴吐出装置300のステージ106に運ばれる。そして、液滴吐出装置300は、上記凹部の底部に、ヘッド114の吐出部127から機能液41RAを吐出する。このとき、機能液41RAが吐出される凹部には、列方向については遮る隔壁がないため、機能液41RAが容易に均一に濡れ広がる。また、凹部が長矩形であることにより、機能液41RAの吐出位置には、特に列方向についての制約が少ない。すなわち、列方向については凹部が隔壁45で区切られていないため、隔壁45で区切られている場合と比較して吐出位置及び吐出量にばらつきがあっても、機能液41RAが溝状の凹部全体に行きわたりやすい。この後、乾燥若しくは低温(例えば60℃)での焼成によるプレベーク(仮焼成)を行うことによって、吐出された機能液41RAは、仮固化若しくは仮硬化される。
【0070】
同様にして、工程P24では機能液41GAが、また工程P25では機能液41BAが、それぞれ異なる凹部に吐出される。それぞれの吐出工程後には、機能液41RAの場合と同様、プレベークが行われる。
【0071】
続く工程P26では、機能液41RA,41GA,41BA(以下ではこれらをまとめて「機能液41A」とも呼ぶ)が吐出されたガラス基板21を高温環境下に放置して焼成を行う。当該焼成工程を経た後は、機能液41A中の溶媒が蒸発し、図11(c)に示すように、当該機能液41Aが吐出された領域に発光層41がそれぞれ形成される。図11(c)中のG−G線における断面図が図12(d)に相当する。上述したように、機能液41Aは、凹部が長矩形である結果、当該凹部に均一に塗れ広がっているので、工程P26において焼成、乾燥された後の発光層41には空隙部が生じにくい。
【0072】
次に、工程P27では、発光層41の表面の所定の領域にレーザー光を照射する。ここで所定の領域とは、行方向の帯状の領域であって、隣接する画素3の間の領域を含む領域である。換言すれば、画素3を列方向について区画するときの区画領域である。発光層41のうちレーザー光を照射された部位は、レーザー光の熱エネルギーによって変質し、発光効率が発光層41より著しく低い低輝度発光部47となる(図11(d)参照)。より具体的には、発光層41が前記熱エネルギーによって炭化することによって、発光層41からエレクトロルミネッセンス現象を発現する機能を滅失させ、その部位を低輝度発光部47とする。図11(d)中のH−H線における断面図が図12(e)であり、I−I線における断面図が図13である。これらの図に示すように、レーザー光を照射された部位の発光層41は、そのすべての厚さ方向にわたって低輝度発光部47に変質する。これは、発光層41が厚さ0.1μmから0.2μm程度の非常に薄い層であることに起因する。
【0073】
このように低輝度発光部47を形成することにより、画素3のマトリクス状の配列における行、列いずれの方向についても、画素3間の領域における不必要な発光が低減される。すなわち、画素3の隣接する列の間の領域においては隔壁45があることによって発光層41が配置されていないため発光が行われず、画素3の隣接する行の間の領域においては低輝度発光部47が形成されていることによって不必要な発光が低減される。
【0074】
続く工程P28では、隔壁45及び発光層21の全体を覆って金属からなる陰極37を形成する。そして、その後の工程P29において、陰極37を覆って樹脂からなる封止部材38を形成し、エレクトロルミネッセンス基板30が完成する(図12(f)参照)。
【0075】
以上の工程を経て、エレクトロルミネッセンス基板30が完成する。このような製造方法によれば、機能液41RAの吐出位置に関する制約が少ないにも関わらず、発光層41に空隙部が生じにくいエレクトロルミネッセンス基板30を製造することができる。また、こうして得られたエレクトロルミネッセンス基板は、駆動回路等と組み合わせて有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プリンタのラインヘッド、スキャナ用光源等の電気光学装置として用いることができ、当該電気光学装置は第1の実施形態と同様、種々の電子機器に搭載して用いることができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0077】
(変形例1)
上記各実施形態は、色要素40又は発光層41にレーザー光を照射することによって遮光部46又は低輝度発光部47を形成するものであるが、照射する電磁波はレーザー光に限られない。例えば、色要素40又は発光層41に感光材料を混入しておき、当該感光材料が反応する波長の光を照射することによって色要素40又は発光層41を変質させて遮光部46又は低輝度発光部47を形成してもよい。
【0078】
(変形例2)
上記第1の実施形態のカラーフィルタ基板20は、必要に応じて最表面に透明樹脂等からなるオーバーコートが形成されていてもよい。こうした構成によれば、色要素40を保護することができるとともに、色要素40および隔壁45の高さの不均衡による表面の凹凸を平坦化することができる。
【0079】
(変形例3)
上記第1の実施形態のカラーフィルタ基板20は、赤、緑、青の3色の色要素40および色要素領域2を有するが、これに代えて、4色以上の色要素および色要素領域を有する構成であってもよい。例えば、赤、緑、青、シアンの4色による構成とすることができる。また、これらの構成において、色の並び順は上記したものに限られず、任意の並び順とすることができる。
【0080】
(変形例4)
上記第2の実施形態のエレクトロルミネッセンス基板30は、発光層41の上層又は下層に、電子注入層、電子輸送層、電子ブロック層、正孔注入層、正孔輸送層のうちの1つ又は2つ以上が積層された構成であってもよい。発光層41にこれらを含めた層も、本発明における「発光層」に含まれる。したがって、本発明の実施形態に係るエレクトロルミネッセンス基板の製造方法は、例えば発光層41上に積層された電子輸送層にレーザー光を照射することによって低輝度発光部47を形成する工程を含んでいてもよい。
【0081】
(変形例5)
上記各実施形態は、色要素40又は発光層41に、ガラス基板21とは反対側の面からレーザー光を照射するものであるが、レーザー光はガラス基板21の側から照射することもできる。こうした方法によっても遮光部46又は低輝度発光部47を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係るカラーフィルタ基板の製造方法の工程図。
【図2】(a)から(c)は、カラーフィルタ基板の製造工程における平面図。
【図3】(a)から(d)は、カラーフィルタ基板の製造工程における断面図。
【図4】(a)及び(b)は、カラーフィルタ基板の製造工程における断面図。
【図5】液滴吐出装置を示す模式斜視図。
【図6】液滴吐出装置におけるヘッドの一部を示し、(a)は模式斜視図、(b)は断面図。
【図7】液滴吐出装置における制御部の機能ブロック図。
【図8】本発明の電気光学装置の実施形態に係る液晶表示装置の模式斜視図。
【図9】本発明の電子機器の実施形態に係る携帯電話機の模式斜視図。
【図10】本発明の実施形態に係るエレクトロルミネッセンス基板の製造方法の工程図。
【図11】(a)から(d)は、エレクトロルミネッセンス基板の製造工程における平面図。
【図12】(a)から(f)は、エレクトロルミネッセンス基板の製造工程における断面図。
【図13】エレクトロルミネッセンス基板の製造工程における断面図。
【符号の説明】
【0083】
1…液晶表示装置、2,2R,2G,2B…色要素領域、3,3R,3G,3B…画素、20…カラーフィルタ基板、21…「基板」としてのガラス基板、30…エレクトロルミネッセンス基板、31…画素電極、37…陰極、38…封止部材、40,40R,40G,40B…色要素、40A,40RA,40GA,40BA…機能液、41,41R,41G,41B…発光層、41A,41RA,41GA,41BA…機能液、45…隔壁、46…遮光部、47…低輝度発光部、300…液滴吐出装置、500…携帯電話機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の色要素を有するカラーフィルタ基板の製造方法であって、
前記基板上に、前記列方向に沿った隔壁を形成する工程と、
前記基板の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に、液滴吐出装置を用いて色要素材料を含む機能液を吐出する工程と、
前記機能液を乾燥させて前記色要素を形成する工程と、
前記色要素のうち、前記行方向に延びた帯状の領域に電磁波を照射して前記色要素の一部を変質させることにより、光の透過率が前記色要素より低い遮光部を形成する工程と
を包含することを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーフィルタ基板の製造方法であって、
前記電磁波はレーザー光であることを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のカラーフィルタ基板の製造方法であって、
前記色要素は感光材料を含み、
前記遮光部を形成する工程は、前記色要素に光を照射して前記感光材料を変質させる工程を包含することを特徴とするカラーフィルタ基板の製造方法。
【請求項4】
基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス基板の製造方法であって、
前記基板上に、前記画素ごとに画素電極を形成する工程と、
前記基板上に、前記列方向に沿った隔壁を形成する工程と、
前記基板又は前記画素電極の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に、液滴吐出装置を用いて発光材料を含む機能液を吐出する工程と、
前記機能液を乾燥させて発光層を形成する工程と、
前記発光層のうち、前記行方向に延びた帯状の領域であって前記画素電極の形成されていない領域を含む領域に電磁波を照射して前記発光層の一部を変質させることにより、発光輝度が前記発光層より低い低輝度発光部を形成する工程と
を包含することを特徴とするエレクトロルミネッセンス基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のエレクトロルミネッセンス基板の製造方法であって、
前記電磁波はレーザー光であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス基板の製造方法。
【請求項6】
基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の色要素を有するカラーフィルタ基板であって、
前記基板と、
前記基板上に、前記列方向に沿って配置された隔壁と、
前記基板の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に配置された色要素と、
少なくとも前記色要素の表面を含む領域であって前記行方向に延びた帯状の領域に形成された、光の透過率が前記色要素より低い遮光部と
を備えることを特徴とするカラーフィルタ基板。
【請求項7】
基板上に複数の行及び列に沿ってマトリクス状に配列された複数の画素を有するエレクトロルミネッセンス基板であって、
前記基板と、
前記基板上に、前記画素ごとに配置された画素電極と、
前記基板上に、前記列方向に沿って配置された隔壁と、
前記基板又は前記画素電極の表面と前記隔壁とによって形作られた凹部に配置された発光層と、
前記発光層の一部を変質させて形成された低輝度発光部であって、前記画素電極の形成されていない領域を含む前記行方向に延びた帯状の領域に形成された、発光輝度が前記発光層より低い低輝度発光部と
を備えることを特徴とするエレクトロルミネッセンス基板。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーフィルタ基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項9】
請求項7に記載のエレクトロルミネッセンス基板を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−225858(P2007−225858A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46458(P2006−46458)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】