説明

カラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置及び再生方法

【課題】カラーフィルタ基板の製造工程で発生した品質基準を満足しないガラス基板、あるいはスパッタリング装置のダミー基板の再生プロセスにおいて、透明電極処理に酸処理を用いずに、カラーフィルタを効率的に再生処理するガラス基板の再生装置及びこれを用いた再生方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板上に着色画素層と透明電極層とが設けられたカラーフィルタ基板から着色画素層と透明電極層とを除去してガラス基板を再生する装置であって、前記着色画素層が硬化した感光性着色樹脂から構成されており、前記透明電極層が導電性金属酸化物薄膜から構成されており、しかも、これら着色画素層と透明電極層とが互いに積層されているカラーフィルタ基板の再生装置において、前記透明電極層を除去する電気分解手段であって、基板に電極を接触させることのない電気分解手段と前記着色画素層を剥離するアルカリ液処理手段と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置及び再生方法に関するもので、より詳細には、カラーフィルタ基板の製造工程で発生する品質基準に満たない不良基板から、透明導電膜や樹脂皮膜を剥離・除去・洗浄するカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置及び再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、一般に、外側にそれぞれ偏光板が設けられているカラーフィルタ基板と素子基板との間に液晶を封入して構成される。そして、カラーフィルタ基板と素子基板側との間に画素ごとに電圧を印加して光の透過・不透過を制御して、その透過光を表示光として画面表示する。
【0003】
カラーフィルタ基板は、透明ガラス基板を構造的支持体として備え、その画面観察者側の反対側(背面側)は多数の画素領域に区分され、画素領域と画素領域の境界に位置する画素間部位には遮光層(ブラックマトリクス:以下BMと略称する)のパターンが設けられ、画素領域のそれぞれには着色画素が配置されている。着色画素は、画素ごとに透過光を着色するもので、一般に、光の三原色に相当する赤色(R),緑色(G),青色(B)の三色の着色画素を配列している。なお、前記BMは、これら各色に着色された透過光の混色を防止するもので、従来は金属クロムの皮膜が使われていたが、近年ではカーボンブラック等の黒色顔料を分散した感光性樹脂が主流になっている。
【0004】
そして、カラーフィルタ基板には、着色画素による段差を埋めるオーバーコート層を設けるか、または、表面を研磨・平坦化した後、ITO透明電極を設け、更に、必要に応じてPS(Photo Spacer)/VA(Vertical Alignment:広視野角用突起)(ASV)を設けて、液晶パネル製作工程に送られる。
【0005】
カラーフィルタ基板の代表的な製造方法として、感光性樹脂に顔料を分散した色材を用いたフォトリソグラフィー技術が用いられている。一般的な製造工程としては、ガラス基板の投入からはじまり、BMの形成、R、G、B各着色画素の形成へと進むが、それぞれの工程において、ガラス基板の事前洗浄、感光性樹脂液の塗布、溶剤の乾燥、プレベーク、パターン露光、現像、ポストベーク、検査が繰り返され、更に、スパッタリング法によるITO透明電極の形成、フォトリソグラフィー技術によるPS/VA(ASV)の形成と、非常に長い製造工程となる。
【0006】
カラーフィルタ基板には高い信頼性が求められるが、上記したように長い製造工程の途中では、ゴミや樹脂カスなどの異物の付着・混入や、ピンホール、パターン欠け等による欠陥が生じる場合がある。品質基準に達しないカラーフィルタ基板は廃棄されるが、ガラス自身に傷つき等の不良がないものについては、従来からスパッタリング装置でのダミー基板として使用する等の再利用を行うものを含め、最終的にはガラス基板として再生し、再利用されてきた。
【0007】
例えば、特許文献1には、ガラス基板上のカラーフィルタの画素を、無機酸を含有する前処理液にて前処理する工程と、アルカリを含有する剥離液にて後処理する工程とからなる2段階で処理する剥離方法が開示されている。しかしながら、カラーフィルタには通常透明電極があるため、透明電極を除去した後にレジスト部の除去を行う処理となっており、透明電極上のレジスト部(PS/ASV/OC)を含む、カラーフィルタ最終完成品の再生は困難である。なおかつ、この特許文献1に示した浸漬による従来のガラス基板の再生方法では、剥離液への浸漬にそれぞれ20〜30分もの長時間を必要とするためガラス基板自身がおかされてしまうことがあった。この浸漬による方法ではカラーフィルタ膜の除去が不完全となり、従来技術の工程の後に加えて、ガラス基板表面の研磨処理が必要となる問題があった。特に、近年の大画面液晶テレビの普及に伴うガラス基板の大型化により、例えば1mm以下の薄く、かつ一辺が1〜2m以上に達する大型ガラス基板は、輸送や剥離液への浸漬、洗浄装置に多大の負荷とコストがかかることになり、再生したガラス基板を再度利用する価値、コストメリットが出ない問題があった。
【0008】
また、特許文献2には、不良カラーフィルタを搬送手段を用いて一方向に搬送しながら、または一時停止させて、濃度又は種類の異なる複数の酸を順次使用して、ガラス基板上の形成物を除去して、ガラス基板を再生する方法が開示されている。この方法では、透明電極上に形成されるPS/ASV/OCといったパターン又は一様に樹脂が塗布されている場合には、樹脂の下の透明電極が保護され、特に当該部分について透明電極及びその下の樹脂の除去には、時間がかかる。また、アルカリ処理を行わず、酸処理だけであると、目視では見えない残渣が基板表面に残る為、研磨処理を行うのが一般的となっている。また、透明電極除去に、無機酸を用いることで処理前後での装置並びに処理液(特に廃液)の管理が困難であり、また透明電極に一般的に用いられるITO膜に含有するインジウムの回収が困難である問題があった。
【0009】
特許文献3では、BM、着色画素、ITO膜等が複数順次形成してあるガラス基板の外層側から、所定の剥離液を用いて、該膜の1または複数を選択的に除去するガラス基板の再生方法が開示されている。近年の大型ガラス基板を対象としたガラス再生プロセスにおいては、再生対象基板1枚づつを枚葉搬送方式を用いた再生装置に投入して、カラーフィルタ膜の上層部より順に剥離する連続プロセスとすることが一般的である。そこで、透明電極上に樹脂が形成されているカラーフィルタをアルカリ液処理、酸液処理、アルカリ液処理の順に連続して水平搬送して処理するガラス再生装置が提案されている(例えば、特願2009−110677号)。
【0010】
しかしながら、カラーフィルタの最終製品の不良品をスパッタリング装置のダミー基板として使用した場合、カラーフィルタ形成層の最上層にITO膜が付着し、その下のいずれかの1層にもITO膜が付着している基板が対象となり、その再生が困難、又は複数回の処理が必要となる。また、基板表面に樹脂層が形成され、裏面にITO膜を形成したカラーフィルタをアルカリ液処理→酸処理→アルカリ液処理にて処理を行うと、最初のアルカリ液処理時に、ITO膜よりアルカリ液が浸透し、基板に達した場合、基板表面を侵す「潜傷」が部分的に発生し、基板が白く濁ってムラが発生する問題があった。
【0011】
それに対して、ガラス基板の表面状態を悪化させないでITO膜等の導電膜を剥離する方法として、特許文献4には、電解液の存在下で、該導電膜に接触させた陽極と、パッドを介して該導電膜に接触させた陰極との間に所定の電圧を印加することにより該導電膜を電解剥離する再生方法が開示されている。しかしながら、この方法は電解液が供給される空間を挟んで近接保持された電極対が基板と接触しながら水平移動することで電解剥離をするものであるが、基板一枚毎に電極と電解液の流し込みをセットしなければならず、大量のガラス基板を連続再生するには大きな手間がかかるものであった。
【0012】
近年の大画面液晶テレビの普及に伴うガラス基板の大型化により、例えば1mm以下の薄く、かつ一辺が1〜2m以上に達する高価格の大型ガラス基板が使用されている。また、大型液晶テレビ以外にも、パーソナルコンピュータ、各種モニターやモバイル機器へのカラー液晶表示装置の適用が急激に拡大しており、液晶パネルの価格構成の中で大きな割合を占めるカラーフィルタ基板へのコストダウン要求は厳しくなっている。そのため、カラーフィルタ基板の製造工程にて、品質基準を満足しないものが発生した場合、あるいは成膜条件設定用のダミー基板を使用した場合には、BMや着色画素あるいはITO膜を剥離してガラス基板を短時間で効率的に再生し、且つ、研磨による後処理なしでカラーフィルタの製造工程に再投入・再使用可能な効率的なガラス基板再生装置が求められている。更に、レアメタルとしてのインジウムの回収が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−179438号公報
【特許文献2】特開2006−154752号公報
【特許文献3】特開2003−279915号公報
【特許文献4】特開平7−207500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、係る問題点に鑑みてなされたものであり、カラーフィルタ基板の製造工程で発生した品質基準を満足しないガラス基板、あるいはスパッタリング装置のダミー基板の再生プロセスにおいて、透明電極処理に酸処理を用いずに、カラーフィルタを連続的に再生処理するガラス基板の再生装置及びこれを用いた再生方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明は、ガラス基板上に着色画素層と透明電極層とが設けられたカラーフィルタ基板から着色画素層と透明電極層とを除去してガラス基板を再生する装置であって、前記着色画素層が硬化した感光性着色樹脂から構成されており、前記透明電極層が導電性金属酸化物薄膜から構成されており、しかも、これら着色画素層と透明電極層とが互いに積層されているカラーフィルタ基板の再生装置において、
前記透明電極層を除去する電気分解手段であって、基板に電極を接触させることのない電気分解手段と、
前記着色画素層を剥離するアルカリ液処理手段と、
を具備していることを特徴とするカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置である。
【0016】
本発明の請求項2に係る発明は、少なくとも第一の電気分解手段と、第一のアルカリ液処理手段と、第二の電気分解手段と、第二のアルカリ液処理手段と、をこの順に具備していることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置である。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記第一の電気分解手段と前記第一のアルカリ液処理手段の中間に、カラーフィルタ基板の表裏を反転する手段を具備していることを特徴とする請求項2に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置である。
【0018】
次に、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置を用いて、カラーフィルタ基板からガラス基板を再生することを特徴とするカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法である。
【0019】
また、本発明の請求項5に係る発明は、カラーフィルタ基板が、透明電極層の上に樹脂層が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板
用ガラス基板の再生方法である。
【0020】
また、本発明の請求項6に係る発明は、カラーフィルタ基板が、基板表面に樹脂層が形成され、基板裏面に透明電極層が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法である。
【0021】
また、本発明の請求項7に係る発明は、カラーフィルタ基板が、スパッタリング装置の条件設定用ダミー基板として、表裏いずれかに更に導電性金属酸化物薄膜が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置によれば、透明電極層の上に樹脂が形成されているカラーフィルタ基板、基板表面に樹脂層が形成され裏面に透明電極膜を形成したカラーフィルタ基板、スパッタリング装置のダミー基板を、それぞれ選別することなく、また複数回処理行わなくともガラス再生処理が可能である。電気分解手段と、アルカリ液処理手段ともに、水平方向に搬送される基板と非接触での剥離処理であり、傷つき等のトラブルなしに、1枚ごとに剥離処理でき、選択的に上層より順番に効率よく除去される。
【0023】
従来のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置では、一般に無機酸に温調をかけて処理を行う為、装置材料に耐熱塩化ビニル、PTFE等のフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、チタン(Ti)等の素材を用いる。それに対して、本発明の再生装置では、透明電極層処理に電気分解を適用して酸を用いない為、装置に耐熱性、耐酸性を考慮する必要がない。また、廃液処理を含めて処理液の管理が容易であり、環境に配慮された装置とすることが可能である。また、電極を基板と接触させずに電解処理を行う機構であるため、装置構成が簡易になる。
【0024】
また、本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法では、電気分解の際に生理食塩水等の電解液を用いて処理を行う為、従来の透明電極を酸に溶解させるのと異なり、ITO膜がほぼそのままの状態で取り出すことが可能である。そのため、レアメタルであるインジウムの回収が容易となる利点がある。
【0025】
本発明の再生方法は、上記したように基板1枚ごとの処理が可能であり、本発明に係る剥離処理工程の、第一の電気分解手段に入る前の基板投入部で、再生対象であるカラ−フィルタ基板の履歴情報に基づくか、あるいはITO膜の有無及び表裏を判別する手段を用いて不良基板の膜形成情報を把握することで、本発明の装置を用いて、カラ−フィルタ基板に対してそれぞれ最適な処理手段で選択的に上層より順番に効率よく除去することが可能であり、工程能力が向上することでコストダウンにつながる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る、カラーフィルタ基板の一例を断面で示した模式図。
【図2】本発明に係る、再生工程フローと工程手段内容の一例を示す概略図。
【図3】本発明に係る、再生工程フローの順にカラーフィルタ基板及び処理手段の断面を模式的に示す説明図。
【図4】本発明に係る、電気分解によるITO膜剥離機構を断面で説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置及び再生方法について、一実施形態に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る、再生対象基板のカラーフィルタ基板の一例を断面で示した概略図である。ガラス基板表面に樹脂層及び透明電極層が形成されたカラーフィルタ基板の不良基板を、スッパッタリング装置の成膜条件設定用のダミー基板として用いたもので、基板裏面のガラス面に透明電極層が形成されているものである。
【0029】
図1に示すカラーフィルタ基板の作成は、公知のフォトリソグラフィー法を用いて、まず、0.7mm厚のアルミノホウケイ酸ガラスからなるガラス基板(10)上に、アクリル系樹脂にカーボンブラックを配合した感光性黒色樹脂からなる、品種ごとに1.0〜2.0μm厚の遮光層(ブラックマトリクス:BM)(11)を形成する。次に、BMの開口部部に、アクリル系樹脂にそれぞれ赤色、緑色及び青色顔料を分散配合した感光性着色樹脂からなるR、G、Bの着色画素層(それぞれ略1.8μm厚)(12)を形成する。その上に導電性金属酸化物薄膜(ITO膜等、以下ITO膜で代表する)からなる透明電極層(100〜150nm厚)(13)をスパッタリング法を用いて形成する。更に、この透明電極層の上にPS/VA層(14)を形成する。なお、各層の構成は、不良基板発生工程により異なるもので、個々の厚み及び構成は本発明を制限するものではない。そして、裏面側には、スッパッタリング装置のITO膜の成膜条件設定用のダミー基板として用いたことで、ITO膜からなる透明電極層(23)が形成されている。
【0030】
図2、及び図3によって、カラーフィルタ基板用ガラス基板の再生工程と工程手段内容の一例を説明する。上記した構成の品質基準を満足しないカラーフィルタ基板は、以下の一連の工程を経てガラス基板として再生される。
【0031】
まず、裏側にITO膜が成膜され、その裏側が搬送面の上側になった、図1に示した構成の再生対象基板が、本発明の再生装置の基板投入部に搬送される。次に、第一の電気分解手段によってITO膜がガラス基板裏面側から還元剥離され、図示しないブラシ洗浄、水洗リンスによってガラス基板裏面側から除去される。次に、第一の電気分解手段と第一のアルカリ液処理手段の中間に設置された基板の表裏反転手段で、再生対象基板の表裏を反転させる。次に、第一のアルカリ液処理手段によって、カラーフィルタ基板の最上層にあるPS/VA層がアルカリ液処理手段でシャワー剥離され、図示しないブラシ洗浄、水洗リンスによって除去される。次に、第二の電気分解手段によってITO膜が、電気分解によって還元剥離され、図示しないブラシ洗浄、水洗リンスによって除去される。ITO膜が剥離された後、第二のアルカリ液処理手段によって、RGB層/BM層がアルカリ液処理手段で剥離され、図示しないブラシ洗浄、水洗リンスによって除去される。最後にガラス基板に微小量残っている洗浄残渣がブラシ洗浄で取り除かれ、水切りによって乾燥される。
【0032】
本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の一例の再生装置では、ITO膜の剥離は電気分解によって実行される。図4に示すように、再生対象のカラーフィルタ基板(1)はコロ等の搬送手段で水平方向に搬送される。このカラーフィルタ基板(1)上のITO膜(13)に、絶縁層(21)で分離された+電極(陽極)(22)及び−電極(陰極)(23)からなる電極ヘッド(20)を、図示しない電極ヘッドコントローラーを用いて適正な距離まで近づけた状態で、+電極及び−電極とITO膜間に生理食塩水等の電解液(24)が満たされた状態で、陽極と陰極との間に電源部(25)から剥離処理に必要な所定の電圧を印加する。表面のITO膜(13)に電極ヘッド(20)を接近させることで、+電極直下のITO膜を−電極化し、その陽極と陰極間の電解液を電気分解することによって、陽極の表面にOH、導電性金属酸化物であるITO膜表面にHを発生させ、発生したHによってITO膜面を還元してインジウム析出物(26)としてITO膜を剥離させる。
【0033】
この時、一例として、ITO膜と電極間のギャップは0.5〜1.0mm程度とし、電圧は設定値で50V、電極ヘッドの移動速度すなわち基板の搬送速度は10mm/sec.程度、剥離液(電解液)の流量は0.04m/min.程度が用いられる。なお、本発明は上記した条件値に制限されるものではない。電気分解は窒素雰囲気で行うことが望ましいが、通常の大気下でもよく、電解温度は室温程度、すなわち20〜30℃程度でよい。回収されたITO膜及びインジウムは簡易なろ過装置を用いて分離することが可能であり、処理コスト的にも資源維持の点でも従来の酸処理より優れた方法となる。
【0034】
本発明で用いる電解液は、水溶液中に導電性塩を添加したものが使用できる。導電性塩としては、例えば、NaCl、NaBr、NaI、NaSO、NaNO、CHCOONaなどのナトリウム塩、LiCl、LiBr、LiI、LiSO、CHCOOLiなどのリチウム塩、KCl、KBr、KI,KSO、KNO、CHCOOKなどのカリウム塩、さらには二価の金属塩であるカルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属の塩及びデトラアルキルアンモニウムの塩などが好適に用いられる。
【0035】
陽極材料としては、溶解等を起こして電解液を汚染することがないような白金板や白金線が好ましいが、電気化学的な酸化に耐えるその他の材料として、金、カーボン、ステンレス鋼なども使用できる。陰極材料としては、電気化学的な還元に耐える導電性材料であれば良く、Pt,Au,Co,Al,Cu,Ni,ステンレス鋼などほとんどの金属が使用できる。また、導電性プラスチックでもよい。
【0036】
次に、アルカリ液処理は、公知の組成の水性アルカリ剥離液を40〜80℃の間の一定温度に維持して、通常のフォトリソ工程で使用する現像装置と同様の、基板の進行方向に複数の吐出ノズルが多列で配置された処理ユニットを用いて、圧力0.05〜0.15MPaのシャワーとして、500〜1000mm/分程度の一定速度で、水平方向に搬送される再生対象基板上の樹脂皮膜に吐出して剥離・除去・洗浄する。なお、ノズルを配置した処理ユニットは、水性剥離液がガラス基板上の樹脂皮膜に接触している処理時間として1〜10分確保される長さから選定する。
【0037】
上記電気分解および水性アルカリ液処理による剥離に続いて、ガラス基板を水で洗浄し、さらに、従来技術である毛ブラシで表面を接触して洗浄した後、水洗・水切り・乾燥してガラス基板の再生を完了する。再生したガラス基板は、抜き取り目視検査等で品質確認を行い、再度カラーフィルタ基板の製造工程に投入されることになる。
【0038】
しかしながら、再生プロセスに投入される不良基板は、必ずしも上記したスッパタリング装置でのダミー基板だけではなく、膜構成の異なるカラーフィルタ基板が混在して投入されるのが通常である。そこで、本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置においては、剥離処理工程の、第一の電気分解手段に入る前の基板投入部で、再生対象のカラーフィルタ基板の履歴情報に基づくか、あるいはITO膜の有無及び表裏を判別する手段を用いて不良基板の膜形成情報を把握することで、本発明の装置を用いて、表裏反転の必要性も含めて、再生対象基板に対してそれぞれ最適な処理手段で選択的に上層より順番に効率よく除去することで、工程能力が向上しコストダウンが可能となる。
【0039】
本発明のカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置によれば、腐食性の高い酸によるエッチング処理を用いる必要が無いため、従来のカラーフィルタ製造工程で使用されてい
る現像ラインと類似した材質の処理装置と搬送機構を使うことが出来る。電気分解用電極ヘッドのコントロール機構と汎用の電解液供給装置及びインジウム回収濾過機構を付加することで、効率的に、低コストでガラス基板の再生ができるため、特にマザーガラスの寸法が第6世代、第8世代あるいは第10世代と呼ばれる大型ガラス基板を使用したカラーフィルタ基板のガラス基板再生にきわめて有効である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・(再生対象の)カラーフィルタ基板 10・・・ガラス基板
11・・・ブラックマトリックス層 12・・・RGB層
13、15・・・透明電極層(ITO膜) 14・・・PS/VA層
20・・・電極ヘッド 21・・・絶縁層 22・・・+電極(陽極)
23・・・−電極(陰極) 24・・・電解液 25・・・電源部
26・・・インジウム析出物(剥離ITO膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に着色画素層と透明電極層とが設けられたカラーフィルタ基板から着色画素層と透明電極層とを除去してガラス基板を再生する装置であって、前記着色画素層が硬化した感光性着色樹脂から構成されており、前記透明電極層が導電性金属酸化物薄膜から構成されており、しかも、これら着色画素層と透明電極層とが互いに積層されているカラーフィルタ基板の再生装置において、
前記透明電極層を除去する電気分解手段であって、基板に電極を接触させることのない電気分解手段と、
前記着色画素層を剥離するアルカリ液処理手段と、
を具備していることを特徴とするカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置。
【請求項2】
少なくとも第一の電気分解手段と、第一のアルカリ液処理手段と、第二の電気分解手段と、第二のアルカリ液処理手段と、をこの順に具備していることを特徴とする請求項1に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置。
【請求項3】
前記第一の電気分解手段と前記第一のアルカリ液処理手段の中間に、カラーフィルタ基板の表裏を反転する手段を具備していることを特徴とする請求項2に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板再生装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生装置を用いて、カラーフィルタ基板からガラス基板を再生することを特徴とするカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法。
【請求項5】
カラーフィルタ基板が、透明電極層の上に樹脂層が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法。
【請求項6】
カラーフィルタ基板が、基板表面に樹脂層が形成され、基板裏面に透明電極層が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法。
【請求項7】
カラーフィルタ基板が、スパッタリング装置の条件設定用ダミー基板として、表裏いずれかに更に導電性金属酸化物薄膜が形成されているものであることを特徴とする請求項4に記載するカラーフィルタ基板用ガラス基板の再生方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−141319(P2011−141319A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−441(P2010−441)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】