説明

カラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法、カラーフィルタ、並びに、液晶表示装置及び有機発光表示装置

【課題】分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成するカラーフィルタ用赤色顔料分散液、及び分散性及び分散安定性に優れ、高輝度、高コントラストな着色層を形成可能で、且つアルカリ現像性に優れたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】アントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、溶媒とを含有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である、カラーフィルタ用赤色顔料分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液及びその製造方法、当該顔料分散液を用いたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物、当該顔料分散液の製造方法を用いたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の製造方法、当該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ、並びにこのカラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの価格下落や地上デジタル放送開始の影響などに伴い、フラットパネルディスプレイの普及が急速に進んでいる。現在、実用化されているフラットパネルディスプレイの中でも、液晶ディスプレイは、テレビやパソコン用モニターの他、携帯電話、携帯ゲーム機、タブレットPC等の携帯端末にも広く利用されており、液晶ディスプレイの市場は益々拡大する状況にある。
このような状況において、液晶ディスプレイをカラー表示化させる機能を有するカラーフィルタにおいても、高輝度化や高コントラスト化、色再現性の向上といった要望が高まっている。特に最近は、バックライトの消費電力低減やLEDバックライトの特性に起因して、カラーフィルタの高輝度化の要望が高まっている。
また上述した課題は、今後普及されていくことが予想される有機ELディスプレイにおいても同様であり、高輝度化や色再現性の向上については当該ディスプレイにおいても解決すべき問題であった。
【0003】
ここで、カラーフィルタは、一般的に、透明基板と、透明基板上に形成され、赤、緑、青の三原色の着色パターンからなる着色層と、各着色パターンを区画するように透明基板上に形成された遮光部とを有している。
このような着色層の形成方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度等の観点から、平均的に優れた特性を有する顔料分散法が最も広範に採用されている。
【0004】
一般に顔料を分散したカラーフィルタは、顔料による光の散乱等により、液晶が制御した偏光度合いを乱してしまうという問題がある。すなわち、光を遮断しなければならないとき(OFF状態)に光が漏れたり、光を透過しなければならないとき(ON状態)に透過光が減衰したりするため、ON状態とOFF状態における表示装置上の輝度の比(コントラスト比)が低いという問題がある。
【0005】
赤色着色層に対しては、アントラキノン骨格を有する赤色顔料である、4,4’−ジアミノ−1,1’−ビアントラキノンと、4,4’−ジアミノ−1,1’−ビアントラキノン−3,3’−ジスルホン酸をカチオン性高分子分散剤の存在下に分散する試みがなされている(例えば特許文献1)。上記のような組合せによれば、高い分光透過性及び高いコントラスト性を示すと記載されている。しかしながら、特許文献1に記載のカラーレジストインキの特性評価においては、4,4’−ジアミノ−1,1’−ビアントラキノン−3,3’−ジスルホン酸の有無によって、xy座標系での色度x値及びy値にばらつきがあり、同じ色指標での分光透過性を示すものではない。すなわち、特許文献1における高い分光透過性とは、単に、分散性の向上により顔料の分散粒子径が小さくなり、散乱光が減少したことによる透過率の向上を示したにすぎず、分光スペクトル自体の変化を表す輝度の向上について示したものではない。実際に、xy座標系におけるx値を固定した4,4’−ジアミノ−1,1’−ビアントラキノン−3,3’−ジスルホン酸の添加有無によって、xy座標系におけるx値を固定した場合で比較するとy値が小さくなり(大きく青味にシフトし)かつ輝度が低下してしまう。また、このことは、特許文献1における実施例と比較例でのx値、y値の比較により容易に推定される。
上記のようなアントラキノン骨格を有する赤色顔料にアントラキノン骨格を有する赤色顔料のスルホン化誘導体との組合せでは、スルホン化誘導体において電子吸引基であるスルホ基によって吸収波長が元の赤色顔料より長波長シフトしてしまい、その添加によって元の赤色顔料の分光スペクトルがより青味にかつ、透過率が減少するという問題があった。
【0006】
また、C.I.ピグメントレッド254とC.I.ピグメントレッド177を同時に用いた場合にこれらの顔料が凝集しやすい問題を解決するものとして、特許文献2では、C.I.ピグメントレッド254とC.I.ピグメントレッド177と、特定のスルホン化誘導体を組み合わせたカラーフィルタ用インクが開示されている。上記特定のスルホン化誘導体としては、キノリン構造とフタルイミド構造を有する化合物にスルホン酸が結合した構造が記載されている。特許文献2では、インク中の顔料同士の凝集を防ぎ、分散性、分散安定性が向上すると記載され、酸価を有する分散剤と、アミン価を有する分散剤を併用することにより、顔料分散安定性が更に向上すると記載されている。しかしながら、特許文献2に記載された分散剤を用いたインクでは、後述する比較例の通り、特に、ピグメントレッド177を単独で用いた場合、分散性及び分散安定性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−338832号公報
【特許文献2】特開2009−145804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況下になされたものであり、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成するカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度、高コントラストな着色層を形成可能で、且つアルカリ現像性に優れたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アントラキノン骨格を有する赤色顔料を、黄色顔料のスルホン化誘導体と、特定のグラフト共重合体との存在下、溶媒中で分散させると、アントラキノン骨格を有する赤色顔料であっても分散性及び分散安定性が向上し、高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成可能で、更にアルカリ現像性に優れた顔料分散液、感光性樹脂組成物が得られることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0010】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液は、アントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、溶媒とを含有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色分散液の製造方法は、溶媒中、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させる工程を有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物は、少なくとも前記カラーフィルタ用赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の製造方法は、溶媒中、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させて赤色顔料分散液を調製する工程と、
前記赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを混合する工程を有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記黄色顔料のスルホン化誘導体が、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体であることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすい点で好ましい。
【0015】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド177であることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすい点で好ましい。
【0016】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記黄色顔料のスルホン化誘導体の含有量が、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料100質量部に対して1〜25質量部であることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすい点で好ましい。
【0017】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記顔料分散剤において、前記エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーが、下記一般式(I)で表されることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすい点で好ましい。
【0018】
【化1】

(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは2価の連結基を表す。)
【0019】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記顔料分散剤において、前記有機酸化合物が、下記一般式(II)及び/又は下記一般式(III)で表されることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすく、かつ現像性に優れる点で好ましい。
【0020】
【化2】

(式(II)及び式(III)中、R及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra’’で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含む。Ra’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
、Ra’、及びRにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
【0021】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、並びに、本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法においては、前記顔料分散剤において、前記マクロモノマーの前記ポリマー鎖が、下記一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するものであることが、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成しやすい点で好ましい。
【0022】
【化3】

(式(IV)及び、式(V)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R又は−O−CO−R10で示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。R10は、炭素数1〜18のアルキル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0023】
本発明に係るカラーフィルタは、前記カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記カラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置を提供する。
更に、本発明は、上記カラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度及び高コントラスト化の要求を達成するカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、分散性及び分散安定性に優れ、高輝度、高コントラストな着色層を形成可能で、且つアルカリ現像性に優れたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法、該感光性樹脂組成物を用いて形成されたカラーフィルタ及びこのカラーフィルタを有する液晶表示装置及び有機発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、本発明に用いられるグラフト共重合体の好ましい構造の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液及びその製造方法、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物及びその製造方法、カラーフィルタ、並びに、液晶表示装置及び有機発光表示装置について順に説明する。
なお、本発明において光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波、さらには放射線が含まれ、放射線には、例えばマイクロ波、電子線が含まれる。具体的には、波長5μm以下の電磁波、及び電子線のことを言う。また本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルのいずれかであることを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートのいずれかであることを意味する。
また、C.I.ピグメントレッドを「PR」と、C.I.ピグメントイエローを「PY」と略することがある。
【0028】
1.カラーフィルタ用赤色顔料分散液、及びその製造方法
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液は、アントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、溶媒とを含有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体(以下、塩型グラフト共重合体と称することがある)であることを特徴とする。
【0029】
本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液は、前記溶媒中、前記黄色顔料のスルホン化誘導体と前記特定の顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させて得られたものであることが好ましい。
アントラキノン骨格を有する赤色顔料を溶媒中で分散する際に、黄色顔料のスルホン化誘導体と、上記塩型グラフト共重合体である顔料分散剤とを組み合わせた顔料分散剤の存在下で分散を行うことにより、アントラキノン骨格を有する赤色顔料の分散性及び分散安定性が向上し、高輝度で、且つ高コントラスト化の要求を達成可能な顔料分散液、感光性樹脂組成物が得られる。
【0030】
上記特定の組み合わせにより、上記のような効果を発揮する作用としては、未解明であるが以下のように推定される。
本発明によれば、アントラキノン骨格を有する赤色顔料を溶媒中で分散する際に、黄色顔料のスルホン化誘導体を用いる。黄色顔料のスルホン化誘導体は共役系に窒素原子やカルボニル基を持つものが多いため、前記共役系にアミノ基やカルボニル基を持つアントラキノン骨格を有する赤色顔料と、水素結合や、同様の骨格による親和性の向上によって、赤色顔料の表面に吸着することにより、赤色顔料の表面を酸性にし、アントラキノン骨格を有する赤色顔料そのものよりも、顔料分散剤との親和性を高める、顔料分散剤との仲介役を果たすものと推定される。また、黄色顔料のスルホン化誘導体は、赤色顔料のスルホン化誘導体と異なり、元々の色が着色力の低い黄色であるため、アントラキノン骨格を有する赤色顔料の透過波長よりも、より短波長の光まで透過することにより、赤色顔料の色を大きく変化させることなく、赤色顔料分散液の輝度を向上する役割を果たす。
【0031】
また本発明によれば、黄色顔料のスルホン化誘導体と組み合わせて用いられる顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体であることにより、当該塩型グラフト共重合体において、塩形成部位が、顔料、及び、特に顔料表面に吸着された黄色顔料のスルホン化誘導体に対する吸着性が強く、一方でマクロモノマー由来の部位は溶媒に対して溶解性を有する。
このような顔料分散剤と黄色顔料のスルホン化誘導体とを組み合わせて用いると、アントラキノン骨格を有する赤色顔料を微細化しつつ、微細化されて露出された顔料表面に黄色顔料のスルホン化誘導体と顔料分散剤が適切に吸着して溶媒中での顔料の安定化を図ることができ、アントラキノン骨格を有する赤色顔料をより均一に微細化することができると推定される。その結果、コントラストが向上した塗膜を得ることができる。
【0032】
本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液は、少なくともアントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、上記特定の塩型グラフト共重合体である顔料分散剤と、溶媒とを必須成分として含有するものであり、必要に応じて、他の成分を含有していても良いものである。
以下、このような本発明の赤色顔料分散液の各成分について順に詳細に説明する。
【0033】
(アントラキノン骨格を有する赤色顔料)
本発明において用いられるアントラキノン骨格を有する赤色顔料としては、特に限定されない。例えば、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド84、C.I.ピグメントレッド89、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド216等が挙げられる。
【0034】
上記の中でも、アントラキノン骨格を有する赤色顔料としては、下記化学式(1)で表される、C.I.ピグメント177が、高輝度及び高コントラストを実現しやすい点から好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
本発明に用いられるアントラキノン骨格を有する赤色顔料等の顔料の平均一次粒径としては、カラーフィルタの着色層とした場合に、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されず、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜70nmの範囲内であることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。顔料の平均一次粒径が上記範囲であることにより、本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液、感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタを備えた表示装置を高コントラストで、かつ高品質なものとすることができる。また従来の顔料分散剤であれば、顔料の粒径の微小化に伴い、顔料分散剤が多量に必要となり、アルカリ現像性の低下や、残渣の増加といった問題が生じるおそれがあるが、本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液及び感光性樹脂組成物に用いられる顔料分散剤は、アミノ基と有機酸化合物との塩を含むグラフト共重合体であり、アルカリ現像性に優れるため、そのような問題を生じるおそれが少ない。従って、該顔料の平均粒径が上記範囲に示すように、従来に比べ微小であるほど、本発明のカラーフィルタ用感光性樹脂組成物が有する特徴を発揮することができる。
なお、上記顔料の平均粒径は、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で求めることができる。具体的には、個々の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とした。次に100個以上の粒子についてそれぞれ粒子の体積(質量)を、求めた粒径の直方体と近似して求め、体積平均粒径として求めそれを平均粒径とした。なお、電子顕微鏡は透過型(TEM)又は走査型(SEM)のいずれを用いても同じ結果を得ることができる。
【0037】
顔料分散液中の顔料の平均分散粒径は、用いる顔料の種類によっても異なるが、10〜70nmの範囲内であることが好ましく、10〜50nmの範囲内であることがより好ましい。
顔料分散液中の顔料の平均分散粒径は、少なくとも溶剤を含有する分散媒体中に分散している顔料粒子の分散粒径であって、レーザー光散乱粒度分布計により測定されるものである。レーザー光散乱粒度分布計による粒径の測定としては、顔料分散液に用いられている溶剤で、顔料分散液をレーザー光散乱粒度分布計で測定可能な濃度に適宜希釈(例えば、1000倍など)し、レーザー光散乱粒度分布計(例えば、日機装社製ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150)を用いて動的光散乱法により23℃にて測定することができる。ここでの平均分布粒径は、体積平均粒径である。
【0038】
本発明に用いられる、アントラキノン骨格を有する赤色顔料は、再結晶法、ソルベントソルトミリング法等の公知の方法にて製造することができる。また、市販のアントラキノン骨格を有する赤色顔料(例えば、BASF社製クロモフタルレッドA2B)をミリングして用いても良い。
【0039】
本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液において、アントラキノン骨格を有する赤色顔料の含有量は、適宜調整されれば良く、特に限定されない。通常、アントラキノン骨格を有する赤色顔料を含む顔料の含有量は、カラーフィルタ用赤色顔料分散液の全量に対して5〜40質量%、更に8〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
アントラキノン骨格を有する赤色顔料は、1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0040】
(黄色顔料のスルホン化誘導体)
本発明の顔料分散液において用いられる、黄色顔料のスルホン化誘導体を誘導する黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、144、146、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等が挙げられる。
【0041】
上記の中でも、黄色顔料のスルホン化誘導体を誘導する黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー109、110、138、139、185が、輝度が高く、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン骨格を有する赤色顔料との親和性が高い点から好ましい。更に、C.I.ピグメントイエロー138、139を用いることが、中でも特に、C.I.ピグメントイエロー138を用いることが、特に輝度が高く、C.I.ピグメントレッド177等のアントラキノン骨格を有する赤色顔料との親和性が高く、かつ、色相を大きく変えることなく、高輝度及び高コントラストを実現しやすい点から好ましい。
【0042】
黄色顔料のスルホン化誘導体は、少なくとも1つのスルホン酸基(−SOH)、又はスルホンアミド基が、黄色顔料に結合した構造を有するものであり、更に、スルホン酸基の一部、もしくは全部がアミンやアンモニウムヒドロキシド、クロリド、ブロミド等や、金属等によって塩形成され、スルホン酸塩となっていても良い。
【0043】
スルホン酸基のアミド化合物であるスルホンアミド基としては、下記化学式(2)〜(4)で表されるスルホンアミド基が好ましい。
化学式(2): −SONH−(CH−NR’R”
化学式(3): −SONH−(CH−COOH
化学式(4): −SONH−(CH−SO
化学式(2)において、R’及びR”はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の置換されていても良い飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基、又は、隣接する窒素原子と共に更に窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含んでいても良い複素環を形成したものを表す。
化学式(2)〜(4)において、mはそれぞれ独立に、1〜6の整数である。
【0044】
上記化学式(1)の−SONH−(CH−NR’R”で表される置換基として導入されるアミン成分(−(CH−NR’R”)の代表的なものとしては、ピペリジノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジエチルアミノプロピル、ジブチルアミノプロピル、ピペリジノエチル、ピペコリノエチル、モルホリノエチル、ピペリジノプロピル、ピペコリノプロピル、ジエチルアミノヘキシル、ジエチルアミノエトキシプロピル、ジエチルアミノブチル、ジメチルアミノアミル、N−N−メチル−ラウリル−アミノプロピル、2−エチルヘキシルアミノエチル、ステアリルアミノエチル、オレイルアミノエチル等が挙げられる。
【0045】
更に、−SONH−基に、p−ジメチルアミノエチルスルファモイルフェニル、p−ジエチルアミノエチルスルファモイルフェニル、p−ジメチルアミノプロピルスルファモイルフェニル、p−ジエチルアミノエチルカルバモイルフェニル等が結合したようなスルホンアミド基であっても良い。
【0046】
塩形成していないスルホン酸基が存在している場合の方が、後述のグラフト共重合体型顔料分散剤の三級アミン部位と塩形成やイオンによる相互作用で分散剤の顔料吸着力を向上させることができるためコントラスト向上の点からは好ましい。
また、黄色顔料のスルホン化誘導体には、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホン酸塩以外に、更にフタルイミドメチル基等の他の官能基が置換されていても良い。
【0047】
中でも、化学式(2)で表されるスルホンアミド基の場合、及び炭素数が3以上の長鎖アルキル基を含むアミノ基と塩形成したスルホン酸塩の場合には、溶剤再溶解性が良好になる点から好ましい。ここで溶剤再溶解性とは、一度乾燥した感光性樹脂組成物の固形分が再度溶媒に溶解する性質をいう。溶剤再溶解性が良好であると、カラーフィルター製造時に付着した感光性樹脂組成物の乾燥物の除去、清掃が容易になり、製造上大きなメリットになる。
【0048】
スルホン酸基(−SOH)、又はスルホンアミド基の黄色顔料1分子中の置換数は、1〜3であることが好ましく、中でも1〜2であることが、更に、1であることが立体障害や分散剤との親和性の点から好ましい。
【0049】
本発明において用いられる好適に用いられる黄色顔料のスルホン化誘導体としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー138に、少なくともスルホン酸基、スルホンアミド基、スルホン酸塩が結合したような以下の構造が挙げられる。
【0050】
【化5】

(式(5)において、Xは、スルホン酸基、−SONH−(CH−NR’R”、−SONH−(CH−COOH、−SONH−(CH−SOH、及びスルホン酸塩よりなる群から選択される1種であり、R’及びR”はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の置換されていても良い飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基、又は、隣接する窒素原子と共に更に窒素、酸素、若しくは硫黄原子を含んでいても良い複素環を形成したものを表し、mはそれぞれ独立に、1〜6の整数である。nは置換基数を示し、1〜4の整数を表す。)
【0051】
好適に用いられる置換基としては、スルホン酸基、−SONHCCOOH、−SO N(CH(C1837、−SONHCN(C等が挙げられる。
【0052】
式(5)において、置換基数nは、1〜2であることが好ましく、中でも1であることが、顔料分散剤の塩形成部位との親和性が高い点から好ましい。
【0053】
黄色顔料のスルホン化誘導体は、例えば、黄色顔料を、濃硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸又はこれらの混合液などに投入してスルホン化反応を行うことにより製造することができる。スルホン化反応後、反応液を大量の水で希釈するか、あるいはアミン塩を製造する際にはアミン水溶液で中和することが好ましく、得られた懸濁液を濾過した後に水系の洗浄液で洗浄し、乾燥する。用いられるアミン水溶液のアミンを適宜選択することにより、スルホン酸のアミン塩を適宜設計通りに導入できる。また、スルホン酸アミドを製造する際には、上述の方法で得られた黄色顔料のスルホン化物に塩化チオニルを作用させ、スルホン酸クロリドとした後にアミンと混合することでスルホン化アミドを適宜設計どおりに導入できる。
【0054】
上記の方法でスルホン化を行う場合、反応液濃度、反応温度、反応時間などを調整することにより1分子当たりのスルホン酸基やスルホンアミド基の導入量を制御することができる。
【0055】
黄色顔料のスルホン化誘導体としては、1種単独で又は2種類以上混合して用いることができる。例えば、スルホン酸基及び/又はスルホンアミド基の種類、置換位置又は置換数が異なるスルホン化誘導体を2種以上混合して用いても良い。
【0056】
本発明において、黄色顔料のスルホン化誘導体は、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料の100質量部に対して、1〜25質量部含有されることが好ましい。中でも、黄色顔料のスルホン化誘導体は、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料の100質量部に対して、1〜15質量部、更に3〜10質量部含有されることが好ましい。このような含有量で用いられることにより、色相を大きく変えることなく高輝度で且つ高コントラスト化の要求を達成する塗膜を作製可能になる。
【0057】
(顔料分散剤)
本発明に用いられる顔料分散剤は、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である。
【0058】
本発明によれば、用いられる顔料分散剤が、上記塩型グラフト共重合体であることにより、塩形成部位が顔料に対する吸着性が強く、一方でグラフトされているポリマー鎖が溶媒に対して溶解性を有する。上記顔料分散剤を用いると、従来顔料分散性、及び顔料分散安定性が悪かった顔料に対しても溶媒中での安定化を図ることができ、顔料の分散性及び分散安定性を優れたものとすることができる。
【0059】
また、有機酸化合物を有することにより、上記モノマーに含まれるアミノ基と有機酸化合物とが形成する塩形成部位が、アルカリ現像時のアルカリ水溶液に対して高い溶解性を有することから、アルカリ現像性に優れたものとすることができる。したがって、本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を用いて、カラーフィルタを製造した場合には、アルカリ現像時間を短縮することができ、生産性に優れたものとすることができる。また、アルカリ現像性に優れることにより、未露光箇所におけるカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の残渣が少ない高品質なカラーフィルタを得ることができる。
【0060】
<グラフト共重合体>
上記グラフト共重合体は、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するものである。
【0061】
上記エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーとしては、特に限定されない。中でも、下記一般式(I)で表されるものであることが、顔料分散性の点から好ましい。
【0062】
【化6】

(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは2価の連結基を表す。)
【0063】
及びRにおける、環状若しくは鎖状の炭化水素基としては、特に限定されない。中でも炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。これらの中で、メチル基及びエチル基が好ましい。
及びRは、互いに同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0064】
また、R及びRが互いに結合して形成する環状構造としては、例えば5〜7員環の含窒素複素環単環又はこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素複素環は芳香性を有さないものが好ましく、飽和環であればより好ましい。具体的には、例えば下記式の構造が挙げられる。
【0065】
【化7】

【0066】
また、2価の連結基Qとしては、例えば、炭素数1〜8のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−A−基、−COO−A−基(但し、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基が挙げられる。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)等が挙げられ、中でも、−CONH−A−基、又は、−COO−A−基であることが好ましい。
【0067】
ここで、上記炭素数1〜8のアルキレン基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、各種ブチレン基、各種ペンチレン基、各種ヘキシレン基、各種オクチレン基などが挙げられる。アリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられる。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
xは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、yは1〜5の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。zは1〜18の整数、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。本発明においては、x、y及びzが、上記の範囲にあれば、本発明の顔料分散液及びカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物は、顔料の分散性に優れたものになる。
このAとしては、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、メチレン基及びエチレン基がより好ましい。炭素数が1〜8の範囲内であれば、顔料の分散性を良好に保つことができる。
【0068】
上記一般式(I)で表されるモノマーとしては、中でも、下記一般式(I’)又は、下記一般式(I”)で表されるモノマーが好適に用いられる。
【0069】
【化8】

【0070】
【化9】

(一般式(I’)、及び一般式(I”)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基、Aは、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキレン基、−[CH(R)−CH(R)−O]−CH(R)−CH(R)−又は−[(CH−O]−(CH−で示される2価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0071】
一般式(I’)、及び一般式(I”)中、R〜R及びAは、前記一般式(I)において説明したものと同様のものとすることができる。
【0072】
本発明においては、アントラキノン骨格を有する赤色顔料の分散性及び分散安定性に特に優れる点からは、一般式(I)で表されるモノマーが、上記一般式(I”)で表されるアクリルアミド系のモノマーであることが、より好ましい。
【0073】
上記式(I)で表されるモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の含窒素(メタ)アクリレート系単量体;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体等から誘導される構成単位が挙げられるが、これらに限定されない。
一般式(I)で表される窒素含有モノマーは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0074】
本発明に用いられるマクロモノマーは、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなるものである。このエチレン性不飽和二重結合を有する基は、ポリマー鎖の一方の末端(以下、「片末端」と称することがある。)のみに有することが好ましい。また、マクロモノマーは、グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、置換基で置換されていてもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子などが挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが好ましく挙げられ、なかでも(メタ)アクリロイル基、ビニル基が好ましく、特に(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0075】
前記マクロモノマーのポリマー鎖は、下記一般式一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するものであることが好ましい。
【0076】
【化10】

(式(IV)及び、式(V)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R又は−O−CO−R10で示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。R10は、炭素数1〜18のアルキル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【0077】
における、炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、アダマンチル基、低級アルキル基置換アダマンチル基などが挙げられる。
【0078】
における、アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は、6〜24が好ましく、更に6〜12が好ましい。
における、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ビフェニルメチル基等が挙げられる。アラルキル基の炭素数は、7〜20が好ましく、更に7〜14が好ましい。
が芳香環を有する場合は、当該芳香環上に、更に置換基を有していてもよく、当該置換基としては、例えば、炭素数1〜4の直鎖状、分枝状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン原子などを挙げることができる。
【0079】
は、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のRで示したとおりである。
【0080】
及びRは前記と同じであり、Rは、水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR11で示される1価の基である。R11は水素原子又は炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基であり、R10は、炭素数1〜18のアルキル基である。
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記R10及びRのうちの炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のRで示したとおりである。
上記R及びRおいて、x、y及びzは、前記Aで説明したとおりである。
【0081】
本発明において、上記R及びRとしては、なかでも、後述する溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、具体的には、上記グラフト共重合体を構成する構成単位等によっても異なるが、上記溶媒が、カラーフィルタ用の溶媒として一般的に使用されているエーテルアルコールアセテート系、エーテル系、エステル系などの溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。また、上記溶媒が、ペンタン、ヘキサン等のより極性の低いものである場合には、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等を用いることが好ましい。
ここで、上記R及びRをこのように設定する理由は、上記R及びRを含む構成単位が、上記溶媒に対して溶解性を有し、上記モノマーのアミノ基と後述する有機酸化合物とが形成する塩形成部位が顔料に対して高い吸着性を有するものであることにより、顔料の分散性、及び安定性を特に優れたものとすることができるからである。
【0082】
さらに、上記R及びRは、上記グラフト共重合体の分散性能等を妨げない範囲で、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、水素結合形成基等の置換基によって置換されたものとしてもよい。また、これらの置換基を有するグラフト共重合体を合成した後に、当該置換基と反応する官能基と重合性基とを有する化合物を反応させて、重合性基を付加したものとしてもよい。例えば、カルボキシル基を有するグラフト共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させたり、イソシアネート基を有するグラフト共重合体にヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたりして、重合性基を付加することができる。
【0083】
また、本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液において用いられるマクロモノマーのポリマー鎖は、ガラス転移温度が30℃以上であることが好ましく、更に、50℃以上であることがより好ましい。本発明で用いられるマクロモノマーのポリマー鎖のガラス転移温度が30℃以上である場合には、本発明の顔料分散液又は感光性樹脂組成物を用いて形成された着色層の耐熱性や耐溶剤性が向上する。耐熱性が向上すると、カラーフィルタの製造工程における例えば230℃で30分加熱するようなポストベーク工程後に、着色層が変色したり、輝度やコントラストが低下することを抑制することが可能になる。また、耐溶剤性が向上すると、カラーフィルタの製造工程において、例えば液晶配向膜としてポリイミド膜を形成する際に使用されるN−メチルピロリドンによって、着色層表面が荒れるといった不具合を抑制することが可能になる。
【0084】
本発明におけるマクロモノマーのポリマー鎖のガラス転移温度(Tg)は下記式で計算することができる。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
ここでは、ポリマーはi=1からnまでのn個のモノマー成分が共重合しているとする。Xiはi番目のモノマーの質量分率(ΣXi=1)、Tgiはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただしΣはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体ガラス転移温度の値(Tgi)は、Polymer Handbook(3rd Edition)(J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用することができる。
【0085】
以上のような点を考慮すると、本発明で用いられるマクロモノマーのポリマー鎖は、上記した構成単位のなかでもメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、及びビニルシクロヘキサンよりなる群から選択される1種以上のモノマー由来の構成単位の総量がマクロモノマーのポリマー鎖全体の50質量%以上で含まれるものが好ましく、更に70質量%以上で含まれるものが好ましく、また、メチルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレート由来の構成単位が含まれるものがより好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
【0086】
マクロモノマーのポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。
例えば、単独重合体ではガラス転移温度が30℃未満となるような構成単位であっても、ポリマー鎖の共重合成分として含まれ、上記計算式で表されるポリマー鎖全体の計算Tgが30℃以上となる場合には、本発明の感光性樹脂組成物のマクロモノマーとして、好適に用いることができる。
【0087】
更に、グラフト共重合体に用いられるマクロモノマーは、1種単独で用いられても良いが、2種以上混合して用いても良い。
マクロモノマーを2種以上混合して用いる場合には、ガラス転移温度が30℃以上であるポリマー鎖を有するマクロモノマーが、マクロモノマー全体の50質量%以上、更に70質量%以上となるように用いることが好ましい。
【0088】
mは1〜5の整数、好ましくは2〜5の整数、より好ましくは4又は5の整数である。また、マクロモノマーの構成単位のユニット数n及びn’は、5〜200の整数であればよく、特に限定されないが、5〜100の範囲内であることが好ましい。
【0089】
マクロモノマーの質量平均分子量Mwは、500〜20000の範囲内であることが好ましく、1000〜10000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲であることにより、顔料分散剤としての十分な立体反発効果を保持できるとともに、立体効果による顔料への吸着時間の増大を抑制することもできる。
【0090】
このようなマクロモノマーは、適宜合成したものでもよいし、市販品であってもよく、市販品としては、例えば片末端メタクリロイル化ポリメチルメタクリレートオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AA−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリ−n−ブチルアクリレートオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AB−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、片末端メタクリロイル化ポリスチレンオリゴマー(質量平均分子量:6000,「AS−6(商品名)」:東亞合成化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルメタクリレート(「プラクセルFM5(商品名)」:ダイセル化学(株)製)、カプロラクトン変性ヒドロキシエチルアクリレート(「プラクセルFA10L(商品名)」:ダイセル化学(株)製)などが挙げられる。
【0091】
このようなマクロモノマーを合成するには、リビング重合法や、連鎖移動剤を用いるラジカル重合法がよく知られている。ラジカル重合法の方が、モノマーの選択の自由度が大きい点で利用しやすい。例えば、メルカプトプロピオン酸のような、カルボキシル基を有する連鎖移動剤の存在下でモノマーをラジカル重合することにより、片末端にカルボキシル基を有するオリゴマーが得られる。このオリゴマーにグリシジルメタクリレートを付加すると、片末端にメタクリロイル基を有するオリゴマー、すなわちマクロモノマーが得られる。
【0092】
本発明に用いられるグラフト共重合体において、前記エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーに由来する繰り返し単位は、3〜80質量%の割合で含まれていることが好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜40質量%がさらに好ましい。グラフト共重合体中の上記モノマーに由来する繰り返し単位の含有量が上記範囲内にあれば、グラフト共重合体中のアミノ基が形成する塩形成部位の割合が適切となり、かつマクロモノマー側鎖によって溶媒に対する溶解性の低下を抑制できるので、顔料に対する吸着性が良好となり、顔料の分散性、及び安定性が得られる。
【0093】
また、上記グラフト共重合体の質量平均分子量Mwは、1000〜100000の範囲内であることが好ましく、3000〜50000の範囲内であることがより好ましく、5000〜30000の範囲内であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、顔料を均一に分散させることができる。
【0094】
なお、上記質量平均分子量Mwは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定された値である。測定は、東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN−メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、206500、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS−2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK−GEL ALPHA−M×2本(東ソー(株)製)として行われたものである。
【0095】
本発明に用いられるグラフト共重合体は、上記したアミノ基を有するモノマーとマクロモノマーとを共重合体成分として有し、さらに前記モノマーが有するアミノ基と有機酸化合物とが塩を形成したものであり、その構造は、例えば図4のように表される。図4において、グラフト共重合体は、アミノ基を有するモノマー単位51が重合反応により主鎖を形成し、該重合反応においてマクロモノマーの重合性基部位(エチレン性不飽和二重結合を有する基部位)52が同時にアミノ基を有するモノマー(窒素含有モノマー)と重合し、マクロモノマーは当該エチレン性不飽和二重結合を有する基部位に接続しつつポリマー鎖53として側鎖を形成しており、有機酸化合物54は、アミノ基を有するモノマー単位51のアミノ基と塩を形成したものである。
【0096】
<有機酸化合物>
本発明において用いられる有機酸化合物は、前述したアミノ基を有するモノマーのアミノ基と塩形成をするものであれば、特に限定されない。
本発明においては、上記有機酸化合物を用いることにより、顔料分散剤を、顔料の分散性及び安定性に優れたものとすることができ、さらに塩形成部位が、アルカリ現像時のアルカリ水溶液に対して高い溶解性を有することから、アルカリ現像性に優れたものとすることができる。
【0097】
有機酸化合物としては、中でも、下記一般式(II)及び/又は下記一般式(III)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化11】

(式(II)及び式(III)中、R及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra”で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含む。Ra”は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。R、Ra’、R、R及びRにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
【0099】
上記一般式(II)において、R及びRa’は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]c−R又は−O−Ra”を示し、R及びRa’のうちいずれかは炭素原子を含む。尚、R及びRa’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記Rで示したとおりである。
【0100】
上記炭素数2〜18のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。このようなアルケニル基としては、例えばビニル基、アリル基、プロペニル基、各種ブテニル基、各種ヘキセニル基、各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基などを挙げることができる。アルケニル基の二重結合の位置には限定はないが、得られたポリマーの反応性の点からは、アルケニル基の末端に二重結合があることが好ましい。
【0101】
及び/又はRa’が、−O−Ra”の場合、酸性リン酸エステルとなる。上記Ra”は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のRで示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。尚、Ra”が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
【0102】
上記R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。Rは水素原子、あるいは置換基を有してもよい、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH、又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数が1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基である。
上記Rで示される1価の基において、有してもよい置換基としては、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子などを挙げることができる。
上記Rのうちの炭素数1〜18のアルキル基は前記のRで示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。
、Ra’及びRa”において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。sは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数であり、tは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは2又は3である。uは、好ましくは1〜4の整数、より好ましくは1〜2の整数である。
【0103】
上記一般式(III)において、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R又は−O−Rb’を示す。尚、Rが芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のRで示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。
が、−O−Rb’の場合、酸性硫酸エステルとなる。上記Rb’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
上記炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基は、前記のRで示したとおりであり、炭素数2〜18のアルケニル基は、前記のR及びRa’で示したとおりである。尚、Rb’が芳香環を有する場合、該芳香環上に適当な置換基、例えば炭素数1〜4の直鎖状、分岐状のアルキル基などを有していてもよい。
上記R、R及びRは、前記と同じである。
上記R及びRb’において、sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数である。好ましいs、t、uは、上記R、Ra’及びRa”と同様である。
【0104】
上記一般式(II)で表される有機酸化合物としては、前記一般式(II)におけるR及びRa’が、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−R、あるいは、−O−Ra’’で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含み、且つ、Ra’’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、R及びRが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが顔料分散性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0105】
また、一般式(III)で表される有機酸化合物としては、一般式(III)におけるRが、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−R、あるいは、−O−Rb’で示される1価の基であり、Rb’が、メチル基、エチル基、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、ビニル基、アリル基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、R及びRが、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが顔料分散性に優れたものとすることができる点から好ましい。
【0106】
中でも、上記一般式(II)及び一般式(III)で表される有機酸化合物は、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’として、芳香環を有することが顔料分散性の点から好ましい。R、Ra’及びRa’’の少なくとも1つ、或いは、R又はRb’が、置換基を有していても良いアリール基又はアラルキル基、より具体的には、ベンジル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基であることが、顔料分散性の点から好ましい。前記一般式(II)においては、R及びRa’の一方が芳香環を有する場合には、R及びRa’の他方は、水素原子や水酸基であるものも好適に用いられる。
【0107】
また、耐熱性や耐薬品性、特に耐アルカリ性の点からは、上記一般式(II)及び一般式(III)で表される有機酸化合物としては、リン(P)や硫黄(S)に炭素原子が直接結合した化合物であることが好ましく、R及びRa’が、それぞれ独立に水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含むことが好ましい。また、Rが、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基であることが好ましい。
顔料分散性、耐熱性、耐薬品性、及び耐アルカリ性の点からは、中でも特に、リン(P)や硫黄(S)にアリール基が直接結合した化合物であることが好ましく、R及びRa’のいずれか、或いは、Rが、置換基を有していても良いアリール基であることが好ましい。
【0108】
また、上記一般式(II)及び一般式(III)で表される有機酸化合物は、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’としては、重合性基を有するもの、すなわち、ビニル基、アリル基あるいは−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rであり、且つ、Rが−CO−CH=CH又は−CO−C(CH)=CHであるものが好ましく、特に、R、Ra’及び/又はRa’’、並びに/或いは、R及び/又はRb’が、ビニル基、アリル基、2−メタクリロイルオキシエチル基、2−アクリロイルオキシエチル基であるものが好ましい。
このような場合には、本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を用いて着色層を形成する際の露光時に、上記重合性基同士及び/又は上記重合性基と、本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂及び多官能性モノマー等とを容易に重合することができ、カラーフィルタの着色層中において、上記顔料分散剤が、安定に存在することを可能とする。このようなカラーフィルタを用いて液晶表示装置を製造した際には、液晶層等へ上記顔料分散剤がブリードアウトすることを防止することができる。
【0109】
また、当該有機酸化合物が、重合性基を含むことにより、着色層形成に用いる前に、当該有機酸化合物が有する重合性基同士を重合させることができ、その結果顔料分散剤が高分子量化されるため、着色層形成の現像時において、未露光箇所のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、アルカリ現像性に特に優れるものとすることができる。
【0110】
本発明で用いられるグラフト共重合体における該有機酸化合物の含有量は、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はないが、一般にモノマー由来の構成単位に含まれるアミノ基に対して、0.05〜1.0モル当量が好ましい。
中でも、該有機酸化合物の含有量は前記アミノ基に対して、0.2〜0.8モル当量であることが好ましい。このように、前記アミノ基に対して所定量の一部が塩形成され、所定量の一部がアミノ基としてグラフト共重合体中に残存することにより、顔料の吸着力、黄色顔料のスルホン化誘導体との相互作用が高まり、顔料分散性及び顔料分散安定性がより優れるようになる。また、顔料分散剤や樹脂組成物の粘度の増加を抑制したりむしろ粘度を低下させる効果がある。
尚、上記該有機酸化合物を2種以上併用する場合、これらを合計した含有量が上記範囲内にあればよい。
【0111】
本発明の顔料分散液、及びカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物においては、顔料分散剤として、前述したように、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基からなるマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であり、さらに前記窒素含有モノマーが有するアミノ基と、有機酸化合物とが塩を形成してなる塩型グラフト共重合体が用いられる。
このような塩型グラフト共重合体を顔料分散剤として用いることにより、本発明のカラーフィルタ用顔料分散液、及びカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、顔料の分散安定性に優れたものとすることができる。
【0112】
<塩型グラフト共重合体の製造>
本発明において、顔料分散剤として用いる塩型グラフト共重合体の製造方法としては、前記のアミノ基を有するモノマーと、ポリマー鎖とその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基とからなるマクロモノマーとを共重合体成分として含有し、かつ窒素含有モノマーが有するアミノ基と、有機酸化合物とが塩を形成したものを製造することができる方法であればよく特に限定されない。本発明においては、例えば、前記モノマーと前記マクロモノマーと、必要に応じてその他のモノマーとを公知の重合手段を用いてグラフト重合させることが可能である。次いで、該溶媒中に上記有機酸化合物を添加し、攪拌することにより塩型グラフト共重合体を製造することができる。なお、上記重合においては、重合に一般的に用いられる添加剤、例えば重合開始剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを用いてもよい。
【0113】
本発明のカラーフィルタ用顔料分散液、及びカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物において、顔料分散剤としては、上記塩型グラフト共重合体を1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、その含有量は、用いる顔料の種類、更に感光性樹脂組成物の固形分濃度等に応じて適宜選定される。本発明のカラーフィルタ用顔料分散液、及びカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物において、顔料分散剤としては、顔料100質量部に対して、通常、5〜200質量部の範囲であり、10〜100質量部であることが好ましく、20〜80質量部であることがより好ましい。塩型グラフト共重合体の含有量が上記範囲内にあれば、顔料を均一に分散させることができる。また、感光性樹脂組成物において、相対的にアルカリ可溶性樹脂、多官能性モノマーの配合比率が低下することがなく、十分な硬度を持った着色層が形成できる。
なお本発明において、顔料誘導体以外の含有量を規定する際の、顔料には、顔料の他、顔料誘導体が含まれ、例えば、黄色顔料のスルホン化誘導体等も含まれる。
【0114】
(溶媒)
本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液には、顔料を分散させるために溶媒が含まれる。顔料分散液に用いる溶媒としては、該顔料分散液中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。
本発明の顔料分散液に用いる溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶媒;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶媒;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶媒;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中では、メトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶媒;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテート、ブチルカルビトールアセテート(BCA)などのカルビトールアセテート系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒が好適に用いられる。中でも、本発明に用いる溶媒としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(CHOCHCH(CH)OCOCH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート及びシクロヘキサノンよりなる群から選択される1種以上であることが、他の成分の溶解性や塗布適性の点から好ましい。
【0115】
これらの溶媒は単独もしくは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の顔料分散液は、以上のような溶媒を、当該溶媒を含む顔料分散液の全量に対して、通常は60〜85質量%の割合で用いて調製する。溶媒が少なすぎると、粘度が上昇し、顔料分散性が低下しやすい。また、溶媒が多すぎると、顔料濃度が低下し、樹脂組成物を調製後目標とする色度座標に達成することが困難な場合がある。
【0116】
(他の顔料誘導体)
本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料誘導体を含んでいても良い。このような顔料誘導体は、顔料骨格に官能基を付与し、様々な機能を顔料に付加する役割を持つ化合物である。顔料分散時に顔料誘導体を顔料に添加すると、顔料誘導体の顔料類似骨格が顔料表面に吸着もしくは結合し、それにより顔料の表面が極性を有するようになることによって、分散剤と顔料間の親和性が向上し、分散性、分散安定性を確保できると考えられている。
他の顔料誘導体としては、例えば、黄色顔料や赤色顔料のフタルイミドアルキル化誘導体等が挙げられる。当該顔料のフタルイミドアルキル化誘導体は、顔料の凝集を抑制し、特に高輝度で且つ高コントラスト化を達成可能やすくなる点から、好ましく用いられる。
【0117】
前記他の顔料誘導体として、顔料のフタルイミドアルキル化誘導体を用いる場合は、フタルイミドアルキル基のアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等が挙げられる。中でも、製造が容易な点から、フタルイミドアルキル基のアルキル基としては、メチル基であることが好ましい。フタルイミドアルキル基の置換数は、1〜2であることが好ましく、中でも1であることが、顔料の吸着しやすさと耐熱性向上が両立できる点から好ましい。
【0118】
顔料のフタルイミドアルキル化誘導体は、例えば、顔料を、硫酸中で、パラホルムアルデヒドとフタルイミドと反応させることにより製造することができる。この合成方法については、特表2004−501911号公報に詳細に記載され、これを参照することができる。顔料のフタルイミドアルキル化誘導体としては、1種単独で又は2種類以上混合して用いることができる。例えば、アルキル基の種類、フタルイミドアルキル基の置換位置又は置換数が異なるフタルイミドアルキル化誘導体を2種以上混合して用いても良い。
【0119】
(その他の顔料)
本発明の顔料分散液には、本発明の効果が損なわれない限り、更に他の顔料が含まれていても良い。他の顔料としては、例えば、他の赤色顔料や、後述の赤色感光性樹脂組成物において述べるような、カラーフィルタの赤色着色層に必要な特定の色味を達成する点から黄色顔料が挙げられる。本発明においては、C.I.ピグメントレッド254のようなジケトピロロピロール系顔料を含まなくても、また、前記黄色顔料のスルホン化誘導体の原料である黄色顔料を含まなくても、顔料分散性や分散安定性が向上したものとなる。
【0120】
その他の赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド265、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド272等が挙げられる。
【0121】
(その他の成分)
本発明の顔料分散液には、さらに必要に応じて、顔料分散補助樹脂やその他の成分を配合しても良い。
顔料分散補助樹脂としては、例えば後述する感光性樹脂組成物で例示されるアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂の立体障害によって顔料粒子同士が接触しにくくなり、分散安定化することやその分散安定化効果によって分散剤を減らす効果がある場合がある。
また、本発明の効果が損なわれない限り、他の顔料分散剤を含んでいても良い。
また、その他の成分としては、例えば、濡れ性向上のための界面活性剤、密着性向上のためのシランカップリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、酸化防止剤、凝集防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0122】
<顔料分散液の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用顔料分散液の製造方法は、上記溶媒中、上記エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である顔料分散剤と、上記黄色顔料のスルホン化誘導体との存在下で、上記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させる工程を有する。
分散工程において、分散処理を行うための分散機としては、2本ロール、3本ロール等のロールミル、ボールミル、振動ボールミル等のボールミル、ペイントコンディショナー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミル等のビーズミルが挙げられる。ビーズミルの好ましい分散条件として、使用するビーズ径は0.03〜2.00mmが好ましく、より好ましくは0.05〜1.0mmである。
【0123】
具体的には、ビーズ径が比較的大きめな2mmジルコニアビーズで予備分散を行い、更にビーズ径が比較的小さめな0.1mmジルコニアビーズで本分散することが挙げられる。また、分散後、0.1〜5.0μmのメンブランフィルターで濾過することが好ましい。
【0124】
本発明においては、公知の分散機を用いて分散させる分散時間は、適宜調整され特に限定されないが、顔料の平均分散粒径が15〜50nm程度となるように、例えばペイントシェーカーを用いた場合には3〜8時間とすることが、顔料を微細化して高いコントラストを実現する点から好ましい。
このようにして、顔料粒子の分散性に優れた顔料分散液が得られる。該顔料分散液は、顔料分散性に優れた本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を調製するための予備調製物として好適に用いられる。
すなわち、顔料分散液とは、後述の感光性樹脂組成物を調製する前段階において、予備調製される(組成物中の顔料分/組成物中の顔料以外の固形分)比の高い顔料組成物である。具体的には、(組成物中の顔料分/組成物中の顔料以外の固形分)比は通常1.0以上である。顔料分散液と少なくともバインダー成分を混合することにより、顔料分散性に優れたカラーフィルタ用赤色樹脂組成物を調製することができる。
【0125】
2.カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物
本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物は、少なくとも前記本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを含有することを特徴とする。
【0126】
本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物は、上記本発明に係る顔料分散液を含むため、特に高輝度を達成し、且つ高コントラスト化の要求も達成するカラーフィルタを形成可能になり、アルカリ現像性にも優れる。
以下、このような本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物に用いられる成分を説明する。
なお、上記本発明に係るカラーフィルタ用赤色顔料分散液に含まれ得る成分については、上記顔料分散液の箇所において説明したものと同様のものを用いることができるので、他の顔料と他の顔料分散剤以外、ここでの説明は省略する。
【0127】
(他の顔料)
本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物には、カラーフィルタにおける用途や仕様に必要とされる色度を達成でき、本発明の効果を損なわない限り、他の黄色顔料や他の赤色顔料、更に橙色等の他の顔料を含有していても良い。
他の顔料としては、前記本発明のカラーフィルタ用赤色顔料分散液において説明したものと同様のものが挙げられる。中でも、他の顔料としては、黄色顔料を含有することが、カラーフィルタの赤色着色層に必要な特定の色味を達成しながら、コントラストを向上する点から好ましい。
【0128】
<黄色顔料>
黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー150もしくはその誘導体顔料、C.I.ピグメントイエロー138及びC.I.ピグメントイエロー139からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
ここで、C.I.ピグメントイエロー150の誘導体顔料としては、具体的には、少なくとも1種のゲスト化合物のホストとして働く下記化学式(6)またはそれの互変異性構造の1つに従うアゾ化合物のモノ、ジ、トリおよびテトラアニオンと金属Li,Cs,Mg,Cd,Co,Al,Cr,Sn,Pb、特に好適にはNa,K,Ca,Sr,Ba,Zn,Fe,Ni,Cu,MnおよびLaに相当する金属錯体を挙げることができる。
【0129】
【化12】

(上記化学式(6)中、RおよびR’は、独立して、−OH、−NH、−NH−CN、アシルアミノ基またはアリールアミノ基であり、そしてRおよびR’は、独立して、−OHまたは−NHである。)
【0130】
これらの誘導体顔料は、特開2001−354869号公報、特開2005−325350号公報、特開2007−25687号公報、特開2007−23287号公報、特開2007−23288号公報、及び特開2008−24927号公報を参照することにより入手可能である。
【0131】
(感光性バインダー成分)
本発明においては、塗膜に充分な強度、耐久性、密着性を付与する点から、基板上に塗工又は転写などによりパターンを形成後、該塗膜を重合反応により硬化させることができる、バインダー成分を用いる。以下に説明する感光性バインダー成分の他に、エポキシ樹脂のような加熱により重合硬化させることができる熱硬化性のバインダー成分を更に用いてもよい。優れた顔料分散性を有する上記本発明に係る顔料分散液を用いて本発明に係る樹脂組成物を調製するにあたり、その優れた顔料分散性を阻害しないように、適宜バインダー成分を選択する必要がある。
【0132】
感光性バインダー成分には、紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含み、露光部を硬化させて未露光部を溶解除去することにより露光部のみの塗膜パターンの作成が可能となるネガ型の感光性バインダー成分が挙げられる。
本発明に係るカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物においては、ネガ型感光性バインダー成分であることが、フォトリソグラフィー法によって既存のプロセスを用いて簡便にパターンを形成できる点から好ましい。
【0133】
紫外線、電子線等の光により重合硬化させることができる光硬化性樹脂を含むネガ型感光性バインダー成分は、(i)アルカリ可溶性樹脂、(ii)多官能性モノマー、(iii)光重合開始剤、及び増感剤等を配合して構成される。
【0134】
(i)アルカリ可溶性樹脂
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂は側鎖にカルボキシル基を有するものであり、バインダー樹脂として作用し、かつパターン形成する際に用いられる現像液、特に好ましくはアルカリ現像液に可溶性である限り、適宜選択して使用することができる。
本発明における好ましいアルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有する樹脂であり、具体的には、カルボキシル基を有するアクリル系共重合体、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいものは、側鎖にカルボキシル基を有するとともに、さらに側鎖にエチレン性不飽和基等の光重合性官能基を有するものである。光重合性官能基を含有することにより形成される硬化膜の膜強度が向上するからである。また、これらアクリル系共重合体、及びエポキシアクリレート樹脂は、2種以上混合して使用してもよい。
【0135】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーとエチレン性不飽和モノマーを共重合して得られる。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更に芳香族炭素環を有する構成単位を含有していてもよい。芳香族炭素環は感光性樹脂組成物に塗膜性を付与する成分として機能する。
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体は、更にエステル基を有する構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、感光性樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分として機能するだけでなく、溶剤に対する溶解性、さらには溶剤再溶解性を向上させる成分としても機能する。
【0136】
カルボキシル基を有するアクリル系共重合体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2,2’−オキシビス(メチレン)ビス−2−プロペノエート、スチレン、γ−メチルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどの中から選ばれる1種以上と、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の二量体(例えば、東亞合成化学(株)製M−5600)、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの無水物の中から選ばれる1種以上とからなるコポリマーを例示できる。また、上記のコポリマーに、例えばグリシジル基、水酸基等の反応性官能基を有するエチレン性不飽和化合物を付加させるなどして、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等も例示できるが、これらに限定されるものではない。
これらの中で、コポリマーにグリシジル基又は水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を付加等することにより、エチレン性不飽和結合を導入したポリマー等は、露光時に、後述する多官能性モノマーと重合することが可能となり、着色層がより安定なものとなる点で、特に好適である。
【0137】
カルボキシル基含有共重合体におけるカルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%である。この場合、カルボキシル基含有エチレン性不飽和モノマーの共重合割合が5質量%未満では、得られる塗膜のアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターン形成が困難になる。また、共重合割合が50質量%を超えると、アルカリ現像液による現像時に、形成されたパターンの基板からの脱落やパターン表面の膜荒れを来たしやすくなる傾向がある。
【0138】
カルボキシル基含有共重合体の好ましい分子量は、1,000〜500,000の範囲であり、さらに好ましくは3,000〜200,000である。1,000未満では硬化後のバインダー機能が著しく低下し、500,000を超えるとアルカリ現像液による現像時に、パターン形成が困難となる場合がある。
【0139】
カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、特に限定されるものではないが、エポキシ化合物と不飽和基含有モノカルボン酸との反応物を酸無水物と反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート化合物が適している。
エポキシ化合物としては、特に限定されるものではないが、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、またはビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物などのエポキシ化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0140】
不飽和基含有モノカルボン酸としては、例えば(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、β−フルフリルアクリル酸、β−スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α−シアノ桂皮酸等が挙げられる。これら不飽和基含有モノカルボン酸は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0141】
酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の二塩基性酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、エンドビシクロ−[2,2,1]−ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物のような多価カルボン酸無水物誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
このようにして得られるカルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート化合物の分子量は特に制限されないが、好ましくは1000〜40000、より好ましくは2000〜5000である。
【0142】
(ii)多官能性モノマー
本発明における多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物;ポリエステル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、スピラン樹脂等のオリゴ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリ−1,3−ブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトン等の両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート等を挙げることができる。
【0143】
これらの多官能性モノマーのうち、3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物が好ましく、具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのこはく酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのこはく酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。前記多官能性モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0144】
本発明における多官能性モノマーの使用量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、通常、5〜500質量部、好ましくは20〜300質量部である。多官能性モノマーの含有量が上記範囲より少ないと十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合があり、また、多官能性モノマーの含有量が上記範囲より多いとアルカリ現像性が低下する可能性がある。
【0145】
(iii)光重合開始剤、増感剤等
ネガ型感光性バインダー成分には、通常、使用する光源の波長に対して活性を有する光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、光重合成を有する重合体や光重合成モノマーの反応形式の違い(例えばラジカル重合やカチオン重合等)や、各材料の種類を考慮して適宜選択され、特に限定されない。
【0146】
光重合開始剤としては、例えば、紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物、オキシムエステル系化合物などが挙げられる。これらは1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0147】
本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物において用いられる光重合開始剤の含有量は、上記多官能性モノマー100質量部に対して、通常0.01〜100質量部程度、好ましくは5〜60質量部である。この含有量が上記範囲より少ないと十分に重合反応を生じさせることができないため、着色層の硬度を十分なものとすることができない場合があり、一方上記範囲より多いと、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の固形分中の顔料等の含有量が相対的に少なくなり、十分な着色濃度が得られない場合がある。
【0148】
また、本発明においては、必要に応じて、前記光重合開始剤と共に、増感剤および硬化促進剤の群から選ばれる1種以上をさらに併用することもできる。前記増感剤の具体例としては、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ジエチルアミノアセトフェノン、4−ジメチルアミノプロピオフェノン、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−1,4−ジメチルアミノベンゾエート、2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、7−ジエチルアミノ−3−(4−ジエチルアミノベンゾイル)クマリン、4−(ジエチルアミノ)カルコン等を挙げることができる。また、前記硬化促進剤の具体例としては、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−4,6−ジメチルアミノピリジン、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール等の連鎖移動剤を挙げることができる。
【0149】
(その他の顔料分散剤)
本発明の感光性樹脂組成物においては、着色層の色度調整の点から、顔料として、黄色顔料等他の顔料が更に用いられ得る。当該他の顔料を分散させるために、上記本発明に係る顔料分散液に用いられた顔料分散剤を用いても良いが、他の顔料分散剤を用いて分散させても良く、感光性樹脂組成物に他の顔料分散剤が含まれていても良い。
他の顔料分散剤としては、特に限定されず、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。また、溶媒に少量溶解するような顔料誘導体を顔料分散剤として用いてもよい。
【0150】
顔料分散剤は、使用される顔料を良好に分散させるために適宜選択して用いられる。具体例には、ノナンアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等を例示することができ、その他にニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物を挙げることができる。
【0151】
さらに、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの変性物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩類等を挙げることができる。
【0152】
(任意添加成分)
本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、必要に応じ各種添加剤を含むものであってもよい。該添加剤としては、例えば重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、密着促進剤等などが挙げられる。
これらの中で、用いることができる界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル類、脂肪酸変性ポリエステル類、3級アミン変性ポリウレタン類等を挙げることができる。また、その他にもフッ素系界面活性剤も用いることができる。
さらに、可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等が挙げられる。消泡剤、レベリング剤としては、例えばシリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が挙げられる。
【0153】
<感光性樹脂組成物における各成分の配合割合>
顔料の合計の含有量は、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の固形分全量に対して、10〜40質量%、より好ましくは15〜35質量%の割合で配合することが好ましい。顔料が少なすぎると、感光性樹脂組成物を所定の膜厚(例えば、1.0〜3.0μm)に塗布した際の透過濃度が十分でないおそれがあり、また顔料が多すぎると、感光性樹脂組成物を基板上へ塗布し硬化させた際の基板への密着性、硬化膜の表面荒れ、塗膜硬さ等の塗膜としての特性が不十分となるおそれがあり、またその感光性樹脂組成物中の顔料分散に使われる分散剤の量の比率も多くなるために現像性、耐熱性等の特性も不十分になるおそれがある。尚、本発明において固形分は、上述した溶媒以外のもの全てであり、溶媒中に溶解している多官能性モノマー等も含まれる。
また、顔料分散剤の合計の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して、1〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して、1質量%未満の場合には、顔料を均一に分散することが困難になる恐れがあり、60質量%を超える場合には、硬化性、現像性の低下を招く恐れがある。
アルカリ可溶性樹脂、多官能モノマー、及び光開始剤は、これらの合計量が、感光性樹脂組成物の固形分全量に対して15〜95質量%、好ましくは25〜80質量%の割合で配合するのが好ましい。
また、溶媒の含有量としては、着色層を精度良く形成することができるものであれば特に限定されるものではない。該溶媒を含む上記感光性樹脂組成物の全量に対して、通常、65〜95質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも75〜88質量%の範囲内であることが好ましい。上記溶媒の含有量が、上記範囲内であることにより、塗布性に優れたものとすることができる。
【0154】
(カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の製造)
本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の製造方法は、溶媒中、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させて赤色顔料分散液を調製する工程と、
前記赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを混合する工程を有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体であることを特徴とする。
【0155】
カラーフィルタの赤色着色層に必要な特定の色味を達成するために、必要に応じて、上記本発明に係る赤色顔料分散液に含まれる顔料とは異なる、他の顔料を更に用いる場合には、別途、上記本発明に係る顔料分散液の製造方法と同様にして、予め他の顔料分散液を調製することが好ましい。
この場合には、本発明の感光性樹脂組成物の製造方法としては、本発明に係る顔料分散液と、他の顔料分散液と、感光性バインダー成分、必要に応じて更に、溶媒、各種添加成分とを添加し混合する方法を挙げることができる。
本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物は、予め顔料分散液を製造して用いるので、顔料の凝集を効果的に防ぎ、均一に分散させ得る点から好ましい。
【0156】
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。
[カラーフィルタ]
本発明のカラーフィルタは、前述した本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を硬化させて形成されてなる着色層を有することを特徴とする。
このような本発明のカラーフィルタについて、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のカラーフィルタの一例を示す概略断面図である。図1によれば、本発明のカラーフィルタ10は、透明基板1と、遮光部2と、着色層3とを有している。
【0157】
(着色層)
本発明のカラーフィルタに用いられる着色層は、前述した本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を硬化させて形成されたものであればよく、特に限定されないが、通常、後述する透明基板上の遮光部の開口部に形成され、該カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物に含まれる顔料の種類によって、3色以上の着色パターンから構成される。
また、当該着色層の配列としては、特に限定されず、例えば、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の一般的な配列とすることができる。また、着色層の幅、面積等は任意に設定することができる。
当該着色層の厚みは、塗布方法、カラーフィルタ用感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度等を調整することにより、適宜制御されるが、通常、1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0158】
当該着色層は、例えば下記の方法により形成することができる。
まず、前述した本発明のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、スプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、コールコート法、スピンコート法などの塗布手段を用いて後述する透明基板上に塗布して、ウェット塗膜を形成させる。
次いで、ホットプレートやオーブンなどを用いて、該ウェット塗膜を乾燥させたのち、これに、所定のパターンのマスクを介して露光し、アルカリ可溶性樹脂及び多官能性モノマー等を光重合反応させて、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の塗膜とする。露光に使用される光源としては、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプなどの紫外線、電子線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の厚みなどによって適宜調整される。
また、露光後に重合反応を促進させるために、加熱処理を行ってもよい。加熱条件は、使用するカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物中の各成分の配合割合や、塗膜の厚み等によって適宜選択される。
【0159】
次に、現像液を用いて現像処理し、未露光部分を溶解、除去することにより、所望のパターンで塗膜が形成される。現像液としては、通常、水や水溶性溶媒にアルカリを溶解させた溶液が用いられる。このアルカリ溶液には、界面活性剤などを適量添加してもよい。また、現像方法は一般的な方法を採用することができる。
現像処理後は、通常、現像液の洗浄、感光性樹脂組成物の硬化塗膜の乾燥が行われ、着色層が形成される。なお、現像処理後に、塗膜を十分に硬化させるために加熱処理を行ってもよい。加熱条件としては特に限定はなく、塗膜の用途に応じて適宜選択される。
【0160】
(遮光部)
本発明のカラーフィルタにおける遮光部は、後述する透明基板上にパターン状に形成されるものであって、一般的なカラーフィルタに遮光部として用いられるものと同様とすることができる。
当該遮光部のパターン形状としては、特に限定されず、例えば、ストライプ状、マトリクス状等の形状が挙げられる。この遮光部としては、例えば、黒色顔料をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものや、クロム、酸化クロム等の金属薄膜等が挙げられる。この金属薄膜は、CrO膜(xは任意の数)及びCr膜が2層積層されたものであってもよく、また、より反射率を低減させたCrO膜(xは任意の数)、CrN膜(yは任意の数)及びCr膜が3層積層されたものであってもよい。
当該遮光部が黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、遮光部用感光性樹脂組成物を用いたフォトリソグラフィー法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
【0161】
上記の場合であって、遮光部の形成方法として印刷法やインクジェット法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0162】
また、上記の場合であって、遮光部の形成方法としてフォトリソグラフィー法を用いる場合、バインダ樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂が用いられる。この場合、顔料としてカーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料及び感光性樹脂を含有する遮光部用感光性樹脂組成物には、光重合開始剤を添加してもよく、さらには必要に応じて増感剤、塗布性改良剤、現像改良剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、難燃剤等を添加してもよい。
【0163】
一方、遮光部が金属薄膜である場合、この遮光部の形成方法としては、遮光部をパターニングすることができる方法であればよく、特に限定されず、例えば、フォトリソグラフィー法、マスクを用いた蒸着法、印刷法等を挙げることができる。
【0164】
遮光部の膜厚としては、金属薄膜の場合は0.2〜0.4μm程度で設定され、黒色着色剤をバインダ樹脂中に分散又は溶解させたものである場合は0.5〜3μm程度で設定される。
【0165】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタにおける透明基板としては、可視光に対して透明な基材であればよく、特に限定されず、一般的なカラーフィルタに用いられる透明基板を使用することができる。具体的には、石英ガラス、無アルカリガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジッド材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材が挙げられる。
当該透明基板の厚みは、特に限定されるものではないが、本発明のカラーフィルタの用途に応じて、例えば100μm〜1mm程度のものを使用することができる。
なお、本発明のカラーフィルタは、上記透明基板、遮光部及び着色層以外にも、例えば、オーバーコート層や透明電極層、さらには配向膜や柱状スペーサ等が形成されたものであってもよい。
【0166】
次に、本発明の液晶表示装置について説明する。
[液晶表示装置]
本発明の液晶表示装置は、前述した本発明のカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする。
このような本発明の液晶表示装置について、図を参照しながら説明する。図2は、本発明の液晶表示装置の一例を示す概略図である。図2に例示するように本発明の液晶表示装置40は、カラーフィルタ10と、TFTアレイ基板等を有する対向基板20と、上記カラーフィルタ10と上記対向基板20との間に形成された液晶層30とを有している。
なお、本発明の液晶表示装置は、この図2に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた液晶表示装置として公知の構成とすることができる。
【0167】
本発明の液晶表示装置の駆動方式としては、特に限定はなく一般的に液晶表示装置に用いられている駆動方式を採用することができる。このような駆動方式としては、例えば、TN方式、IPS方式、OCB方式、及びMVA方式等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの方式であっても好適に用いることができる。
また、対向基板としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて適宜選択して用いることができる。
さらに、液晶層を構成する液晶としては、本発明の液晶表示装置の駆動方式等に応じて、誘電異方性の異なる各種液晶、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0168】
液晶層の形成方法としては、一般に液晶セルの作製方法として用いられる方法を使用することができ、例えば、真空注入方式や液晶滴下方式等が挙げられる。
真空注入方式では、例えば、あらかじめカラーフィルタ及び対向基板を用いて液晶セルを作製し、液晶を加温することにより等方性液体とし、キャピラリー効果を利用して液晶セルに液晶を等方性液体の状態で注入し、接着剤で封鎖することにより液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
また液晶滴下方式では、例えば、カラーフィルタの周縁にシール剤を塗布し、このカラーフィルタを液晶が等方相になる温度まで加熱し、ディスペンサー等を用いて液晶を等方性液体の状態で滴下し、カラーフィルタ及び対向基板を減圧下で重ね合わせ、シール剤を介して接着させることにより、液晶層を形成することができる。その後、液晶セルを常温まで徐冷することにより、封入された液晶を配向させることができる。
【0169】
次に、本発明の有機発光表示装置について説明する。
[有機発光表示装置]
本発明の有機発光表示装置は、前述した本発明のカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする。
このような本発明の有機発光表示装置について、図を参照しながら説明する。図3は、本発明の有機発光表示装置の一例を示す概略図である。図3に例示するように本発明の有機発光表示装置100は、カラーフィルタ10と、有機発光体80とを有している。
カラーフィルタ10と、有機発光体80との間に、有機保護層50や無機酸化膜60を有していても良い。
【0170】
有機発光体80の積層方法としては、例えば、カラーフィルタ上面へ透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76を逐次形成していく方法や、別基板上へ形成した有機発光体80を無機酸化膜60上に貼り合わせる方法などが挙げられる。有機発光体80における、透明陽極71、正孔注入層72、正孔輸送層73、発光層74、電子注入層75、および陰極76、その他の構成は、公知のものを適宜用いることができる。このようにして作製された有機発光表示装置100は、例えば、パッシブ駆動方式の有機ELディスプレイにもアクティブ駆動方式の有機ELディスプレイにも適用可能である。
なお、本発明の有機発光表示装置は、この図3に示される構成に限定されるものではなく、一般的にカラーフィルタが用いられた有機発光表示装置として公知の構成とすることができる。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0172】
黄色顔料スルホン化誘導体としては、下記式(7)で表され、置換基Xがそれぞれ異なる黄色顔料スルホン化誘導体A〜Cを用いた。
【0173】
【化13】

【0174】
(製造例1 黄色顔料スルホン化誘導体Aの合成)
11質量%発煙硫酸374.76質量部を10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントイエロー138 74.96質量部を加えた。次いで、90℃で6時間攪拌した。反応液を氷水1600質量部に加え、15分間攪拌した後、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを800質量部の水で3回洗浄した。ウェットケーキを80℃で真空乾燥し、下記式(8)(x=1)で表される黄色の黄色顔料スルホン化誘導体Aを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0175】
【化14】

【0176】
(製造例2 黄色顔料スルホン化誘導体B(上記式X=SONHCCOOH)の合成)
クロロ硫酸374.75質量部にピグメントイエロー138 62.46質量部を加えた。次いで、120℃で2時間後、75℃で塩化チオニル38.75質量部を滴下した。その後、80℃で3時間攪拌を行った。
反応液を氷水1093質量部に3℃以下に冷却しながら加えた。さらに氷を1300質量部を添加し、15分間攪拌し、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを氷冷しながら660質量部の氷水で洗浄した。水酸化ナトリウム11.77質量部、水23.92質量部、βアラニン24.30質量部を混合した後、氷水259.78質量部を加え、5℃以下に保ちながらウェットケーキを加えた。5℃以下で1時間攪拌後、25℃で30分、次いで50℃で30分、さらに70℃で30分攪拌した。放冷後、10%塩酸を加えてpH2とした。沈殿をろ過し、水560質量部で2回洗浄を行った。80℃で真空乾燥し、黄色顔料スルホン化誘導体Bを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0177】
(製造例3 黄色顔料スルホン化誘導体C(上記式X=SON(CH(C1837)の合成)
11%発煙硫酸374.76質量部を10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントイエロー138 74.96質量部を加えた。次いで、90℃で6時間攪拌した。
反応液を氷水1600質量部に加え、15分間攪拌した後、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを800質量部の水で3回洗浄した。ウェットケーキに水600質量部を加え、60℃で1時間攪拌した。ジステアリルアンモニウムクロライド55.60質量部を加え、60℃で1時間攪拌を行った。沈殿をろ過し、600質量部の水で水洗を2回行った。80℃で真空乾燥し、黄色顔料スルホン化誘導体Cを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0178】
(製造例4 赤色顔料スルホン化誘導体Aの合成)
20%発煙硫酸300.0質量部を10℃に冷却しながら攪拌し、ピグメントレッド254を30.0質量部加えた。次いで、63℃で6時間攪拌した。
反応液を氷水3000質量部に加え、15分間攪拌した後、沈殿をろ過した。得られたウェットケーキを2000質量部の水で洗浄、ろ過した。80℃で真空乾燥し、下記化学式(9)(n=1)で表される赤色顔料スルホン化誘導体Aを得た。TOF−MSにより、目的物の分子量を確認した。
【0179】
【化15】

【0180】
(製造例5 バインダー樹脂Aの合成)
重合槽に、溶媒としてジエチレングリコールエチルメチルエーテル(EMDG)130質量部を仕込み、窒素雰囲気下で110℃に昇温した後、メタクリル酸メチル(MMA)32質量部、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)22質量部、メタクリル酸(MAA)24質量部、開始剤としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2質量部および連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン4.5質量部を含む混合物を、それぞれ1.5時間かけて連続的に滴下した。
その後、合成温度を保持して反応を続け、滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.05質量部を添加した。
次に、空気を吹き込みながら、メタクリル酸グリシジル(GMA)22質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.2質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、バインダー樹脂A(固形分44質量%)を得た。
得られたバインダー樹脂Aの質量平均分子量は8500、酸価は85mgKOH/gであった。なお、質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて算出し、酸価はJIS−K0070に従い測定した。
【0181】
(製造例6 マクロモノマーMM−1の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(略称PGMEA)80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル50.0質量部、メタクリル酸−n−ブチル30.0質量部、メタクリル酸ベンジル20.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工(株)社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p−メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA10質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーMM−1の49.5質量%溶液(Tg=64℃)を得た。得られたマクロモノマーMM−1を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、質量平均分子量(Mw)4010、数平均分子量(Mn)1910、分子量分布(Mw/Mn)は2.10であった。
【0182】
(製造例7 マクロモノマーMM−2の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸メチル100.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、AIBN1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p−メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA10質量部、を加えて3時間攪拌することで、マクロモノマーMM−2の49.8質量%溶液(Tg=105℃)を得た。得られたマクロモノマーMM−2を、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、質量平均分子量(Mw)4130、数平均分子量(Mn)1940、分子量分布(Mw/Mn)は2.13であった。
【0183】
(製造例8 グラフト共重合体GP−1の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。製造例6のマクロモノマーMM−1溶液75.76質量部(有効固形分37.5質量部)、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(略称DMA)12.5質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体GP−1の25.8質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体GP−1は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)11480、数平均分子量(Mn)4650、分子量分布(Mw/Mn)は2.47であった。なおアミン価は89mgKOH/gであった。
【0184】
(製造例9 グラフト共重合体GP−2の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。製造例7のマクロモノマーMM−2溶液75.30質量部(有効固形分37.5質量部)、DMA12.5質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体GP−2の26.0質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体GP−2は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)11230、数平均分子量(Mn)4350、分子量分布(Mw/Mn)は2.58であった。なおアミン価は90mgKOH/gであった。
【0185】
(製造例10 グラフト共重合体GP−3の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。製造例6のマクロモノマーMM−1溶液50.51質量部(有効固形分25.0質量部)、プラクセルFA−10Lを17.86質量部(ダイセル化学社製 ヒドロキシエチルアクリレートにカプロラクトン10mol付加品 70%溶液 有効固形分12.5質量部)、DMA12.5質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA30.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部 、PGMEA10.0質量部 の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体GP−3の26.4質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体GP−3は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)12760、数平均分子量(Mn)4810、分子量分布(Mw/Mn)は2.65であった。なおアミン価は90mgKOH/gであった。
【0186】
(製造例11 グラフト共重合体GP−4の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的攪拌機、デジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA80.0質量部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、温度85℃に加温した。製造例6のマクロモノマーMM−1溶液75.76質量部(有効固形分37.5質量部)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(略称DMAPAA、興人(株)社製)12.5質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、AIBN0.5質量部の混合溶液混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱攪拌したのち、AIBN0.10質量部、PGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体GP−4の25.6質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体GP−4は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)11150、数平均分子量(Mn)4620、分子量分布(Mw/Mn)は2.41であった。なおアミン価は89mgKOH/gであった。
【0187】
(製造例12 分散剤溶液Aの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA28.90質量部、製造例8のグラフト共重合体GP−1溶液68.86質量部(有効固形分17.8質量部)をそれぞれ溶解させ、フェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)2.23質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤溶液A(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Aの酸価は79mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−1のアミノ基は、PPAのホスホン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0188】
(製造例13 分散剤溶液Bの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA28.32質量部、製造例8のグラフト共重合体GP−1溶液69.65質量部(有効固形分18.0質量部)をそれぞれ溶解させ、フェニルホスフィン酸(東京化成社製)2.03質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤溶液B(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Bの酸価は41mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−1のアミノ基は、フェニルホスフィン酸のホスフィン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0189】
(製造例14 分散剤溶液Cの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA29.43質量部、製造例9のグラフト共重合体GP−2溶液68.33質量部(有効固形分17.8質量部)をそれぞれ溶解させ、PPA2.23質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤溶液C(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Cの酸価は79mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−2のアミノ基は、PPAのホスホン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0190】
(製造例15 分散剤溶液Dの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA30.47質量部、製造例10のグラフト共重合体GP−3溶液67.30質量部(有効固形分17.8質量部)をそれぞれ溶解させ、PPA2.23質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤溶液D(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Dの酸価は80mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−3のアミノ基は、PPAのホスホン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0191】
(製造例16 分散剤溶液Eの調製)
225mLマヨネーズ瓶中に、PGMEA28.40質量部、製造例11のグラフト共重合体GP−4溶液69.35質量部(有効固形分17.75質量部)をそれぞれ溶解させ、フェニルホスホン酸(商品名:PPA、日産化学社製)2.25質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、室温で30分攪拌することで分散剤溶液E(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Eの酸価は80mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−4のアミノ基は、PPAのホスホン酸基との酸・塩基反応により塩形成されている。
【0192】
(製造例17 分散剤溶液Fの調製)
冷却管を備えた200mLフラスコ中に、PGMEA27.74質量部、製造例8のグラフト共重合体GP−1溶液70.43質量部(有効固形分18.2質量部)をそれぞれ溶解させ、塩化ベンジル(関東化学社製)1.83質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.5モル当量)を加え、80℃で6時間反応させることで分散剤溶液F(固形分20質量%)を調製した。得られた分散剤溶液Fの酸価は0mgKOH/gであった。
このとき、グラフト共重合体GP−1のアミノ基は、塩化ベンジルとの4級化反応により塩形成されている。
【0193】
(実施例1)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの調製
色材成分としてアントラキノン骨格を有する赤色顔料であるC.I.ピグメントレッド177(PR177:平均一次粒径10〜40nm)9.50質量部、製造例1で得られた黄色顔料スルホン化誘導体A0.50質量部、製造例12で調製した分散剤溶液A30.00質量部、製造例5のバインダー樹脂A4.55質量部、PGMEA55.45質量部を混合し、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)にて2mmジルコニアビーズで1時間、さらに0.1mmジルコニアビーズで3時間分散し、赤色顔料分散液Aを得た。なお、分散時のビーズ充填率は50%とした。
【0194】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Aの調製
上記で得られた実施例1の赤色顔料分散液A52.76質量部に、下記バインダー組成物18.76質量部、PGMEA28.48質量部、界面活性剤R08MH(DIC製)0.02質量部、シランカップリング剤KBM503(信越シリコーン製)0.20質量部を添加混合し、加圧濾過を行って、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Aを得た。
<バインダー組成物(固形分40%)>
・アルカリ可溶性樹脂(製造例5のバインダー樹脂A、固形分44質量%):23.18質量部
・3〜4官能アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM305、東亞合成(株)製):23.80質量部
・光重合開始剤(2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)):1.80質量部
・光重合開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン(商品名イルガキュア369、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)):4.2質量部
・溶剤(PGMEA):47.02質量部
【0195】
(実施例2、3)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液B、Cの調製
実施例1(1)において、黄色顔料スルホン化誘導体Aの代わりに製造例2、3で得られた黄色顔料スルホン化誘導体B、Cを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液B、Cを得た。
【0196】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物B、Cの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液B、Cを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物B、Cを得た。
【0197】
(実施例4〜7)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液D〜Gの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに製造例13〜16で調製した分散剤溶液B〜Eを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液D〜Gを得た。
【0198】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物D〜Gの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液D〜Gを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物D〜Gを得た。
【0199】
(比較例1)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Hの調製
実施例1(1)において、色材成分として黄色顔料スルホン化誘導体を含まず、C.I.ピグメントレッド177 10.00質量部とした以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Hを得た。
【0200】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Hの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Hを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Hを得た。
【0201】
(比較例2)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Iの調製
実施例1(1)において、黄色顔料スルホン化誘導体Aの代わりに製造例4で得られた赤色顔料スルホン化誘導体Aを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Iを得た。
【0202】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Iの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Iを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Iを得た。
【0203】
(比較例3)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Jの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに製造例8で調製したグラフト共重合体GP−1溶液23.26質量部、PGMEA62.20質量部とした以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Jを得た。
【0204】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Jの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Jを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Jを得た。
【0205】
(比較例4)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Kの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに製造例17で調製した分散剤溶液Fを用いた以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Kを得た。
【0206】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Kの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Kを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Kを得た。
【0207】
(比較例5)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Lの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに有機酸化合物と塩を形成していない市販分散剤「アジスパーPB821」(味の素ファインテクノ社製,固形分濃度100質量%)6.00質量部、PGMEA 79.45質量部とした以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Lを得た。
【0208】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Lの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Lを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Lを得た。
【0209】
(比較例6)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Mの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに有機酸化合物と塩を形成していない市販分散剤の「BYK−LPN6919」(ビックケミー社製,固形分濃度60質量%)10.00質量部、PGMEAを75.45質量部とした以外は、実施例1と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Mを得た。
【0210】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Mの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Mを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Mを得た。
【0211】
(比較例7)
(1)カラーフィルタ用赤色顔料分散液Nの調製
実施例1(1)において、分散剤溶液Aの代わりに市販分散剤の「DISPERBYK−166」(ビックケミー社製,固形分濃度29.5質量%)14.12質量部、「DISPERBYK−111」(ビックケミー社製,固形分濃度95質量%)1.93質量部、PGMEAを69.40質量部とした以外は、実施例1(1)と同様にして、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Nを得た。
【0212】
(2)カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Nの調製
実施例1(2)において、カラーフィルタ用赤色顔料分散液Aの代わりに、上記(1)で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液Nを用いた以外は、実施例1(2)と同様にして、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物Nを得た。
【0213】
(評価)
<顔料分散安定性評価>
顔料分散安定性の評価として、各実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用赤色顔料分散液を、40℃で1週間静置し、静置前後の上記顔料分散液中の顔料粒子の平均粒径とせん断粘度の測定を行った。平均粒径の測定には、日機装社製「ナノトラック粒度分布計UPA−EX150」を用い、粘度測定には、Anton Paar製「レオメータMCR301」を用いて、せん断速度が60rpmのときのせん断粘度を測定した。
結果を表1に示す。
【0214】
<光学性能(色度・輝度・コントラスト)>
各実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、厚み0.7mmのガラス基板(日本電気硝子社製、「OA−10G」)上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。超高圧水銀灯を用いて30mJ/cmの紫外線を照射することによって硬化膜(赤色着色層)を得た。乾燥硬化後の膜厚は目標色度x=0.640になるように調整した。着色層が形成されたガラス板を230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークし、得られた着色基板のコントラスト、色度(x、y)及び輝度(Y)を測定した。コントラストは壺坂電気社製「コントラスト測定装置CT−1B」を用い、色度及び輝度はオリンパス社製「顕微分光測定装置OSP−SP200」を用いて測定した。
結果を表2に示す。
【0215】
<耐溶剤性>
上記(光学性能)評価で得られた赤色着色基板を、N−メチルピロリドン(NMP)中に室温で30分間浸漬させ、純水で洗浄後、NMP浸漬前後の色差(ΔEab)を測定した。
結果を表2に示す。
【0216】
<アルカリ現像性>
各実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、厚み0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。この着色層にフォトマスクを介し、超高圧水銀灯を用いて30mJ/cmの紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いてシャワー現像し、上記着色層を形成した箇所のガラス面が現れるまでの時間を現像時間として測定した。なお、5分以上現像しても現像できない場合は現像不可とした。
結果を表2に示す。
【0217】
<耐アルカリ性評価>
各実施例及び比較例で得られたカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を、厚み0.7mmのガラス基板上に、スピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃のホットプレート上で3分間加熱乾燥を行った。この着色層にライン&スペースが80μmのストライプパターンの描かれたフォトマスクを介して超高圧水銀灯を用いて30mJ/cmの紫外線を照射した。その後、上記着色層が形成されたガラス板を、アルカリ現像液として0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間シャワー現像したのち、さらに60秒間超純水で洗浄し、さらに230℃のクリーンオーブンで30分間ポストベークした。なお、60秒で現像できない場合は現像できるまでシャワー現像を行った。
得られた着色パターンが形成されたガラス基板を40度に保持した5.0質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬させ、着色パターンがガラス基板から剥離するまでの時間を測定した。
結果を表2に示す。
【0218】
【表1】

【0219】
【表2】

【0220】
[結果のまとめ]
アントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、上記の塩型グラフト共重合体と、溶媒とを含有する、実施例1〜7の赤色顔料分散液は、保存安定性試験前後で、顔料の粒径及び粘度の変化が小さく、分散性、分散安定性ともに優れていた。また、実施例1〜7の赤色感光性樹脂組成物は、現像性、耐アルカリ性及び耐溶剤性に優れており、高輝度及び高コントラストな着色層を形成することができた。
アクリルアミド系のモノマーを用いたグラフト共重合体GP−4を顔料分散剤として用いた実施例7の赤色顔料分散液は、実施例の中でも顔料分散性、及び分散安定性に優れ、得られた着色層はコントラストが高く、現像性や耐溶剤性にも優れていた。
黄色顔料のスルホン化誘導体を用いていない比較例1、及び黄色顔料のスルホン化誘導体の代わりに、C.I.ピグメントレッド254のスルホン酸誘導体を用いた比較例2の感光性樹脂組成物は、分散安定性が悪く、得られた着色層の輝度及びコントラストが悪かった。
塩形成していないグラフト共重合体を顔料分散剤として用いた比較例3では、分散性分散安定性が悪く、コントラストが低かった。
有機酸化合物の代わりに塩化ベンジルを用いて塩形成したグラフト共重合体を顔料分散剤として用いた比較例4の感光性樹脂組成物は、輝度及びコントラストは良好であったものの、現像ができなかった。
有機酸化合物と塩形成していない市販の分散剤を用いた比較例5〜7の場合も、実施例1〜7のように高輝度、高コントラストで、且つ、分散性、分散安定性、及び現像性に優れるような感光性樹脂組成物は得られなかった。
【0221】
<溶剤再溶解性>
評価方法としては、縦100mm×幅5mmにカットしたガラス基板の縦2cm分に、硬化膜の評価を行った実施例1〜3の感光性樹脂組成物及び比較例1の感光性樹脂組成物をそれぞれ浸漬し、引き上げたものを23℃、70%RHの恒温恒湿層で30分間乾燥させた。次にその乾燥させた塗膜が付着したガラス基板をPGMEA中に15秒間攪拌しながら浸漬した。このとき、乾燥塗膜の再溶解状態により、下記の3段階で評価した。
・○:浸漬中に乾燥塗膜がすべて溶解した。
・△:15秒間浸漬後も、乾燥塗膜の一部が残った。
・×:15秒間浸漬後も乾燥塗膜がほとんどもしくは全く溶解しなかった。
その結果、実施例3は○、実施例1、2は△、比較例1は×であった。
以上のことから、長鎖のアルキル基と塩形成したスルホン化誘導体は、溶剤再溶解性に優れることが明らかにされた。
【符号の説明】
【0222】
1 透明基板
2 遮光部
3 着色層
10 カラーフィルタ
20 対向基板
30 液晶層
40 液晶表示装置
50 有機保護層
51 アミノ基を有するモノマー単位
52 マクロモノマーの重合性部位
53 マクロモノマーによるポリマー鎖
54 有機酸化合物
60 無機酸化膜
71 透明陽極
72 正孔注入層
73 正孔輸送層
74 発光層
75 電子注入層
76 陰極
80 有機発光体
100 有機発光表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラキノン骨格を有する赤色顔料と、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤と、溶媒とを含有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である、カラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【請求項2】
前記黄色顔料のスルホン化誘導体が、C.I.ピグメントイエロー138のスルホン化誘導体である、請求項1に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【請求項3】
前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料が、C.I.ピグメントレッド177である、請求項1又は2に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【請求項4】
前記黄色顔料のスルホン化誘導体の含有量が、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料100質量部に対して1〜25質量部である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【請求項5】
前記顔料分散剤において、前記エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーが、下記一般式(I)で表される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【化1】

(式(I)中、Rは水素原子又はメチル基、R及びRは、各々独立に、水素原子、又は置換されていてもよい環状若しくは鎖状の炭化水素基を表すか、R及びRが互いに結合して環状構造を形成する。Qは2価の連結基を表す。)
【請求項6】
前記顔料分散剤において、前記有機酸化合物が、下記一般式(II)及び/又は下記一般式(III)で表される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【化2】

(式(II)及び式(III)中、R及びRa’はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra’’で示される1価の基であり、R及びRa’のいずれかは炭素原子を含む。Ra’’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。
及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO、−CO−CH=CH、−CO−C(CH)=CH又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。
、Ra’、及びRにおいて、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基はそれぞれ、置換基を有していてもよい。
sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。)
【請求項7】
前記顔料分散剤において、前記マクロモノマーの前記ポリマー鎖が、下記一般式(IV)又は一般式(V)で表される構成単位を少なくとも1種有するものである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液。
【化3】

(式(IV)及び、式(V)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R又は−O−CO−R10で示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。
は、水素原子、あるいは炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、アラルキル基、アリール基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。R10は、炭素数1〜18のアルキル基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。)
【請求項8】
溶媒中、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させる工程を有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である、カラーフィルタ用赤色顔料分散液の製造方法。
【請求項9】
少なくとも前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを含有する、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
溶媒中、黄色顔料のスルホン化誘導体と、顔料分散剤との存在下で、前記アントラキノン骨格を有する赤色顔料を分散させて赤色顔料分散液を調製する工程と、
前記赤色顔料分散液と、感光性バインダー成分とを混合する工程を有し、前記顔料分散剤が、エチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマーと、ポリマー鎖及びその末端にエチレン性不飽和二重結合を有する基を含むマクロモノマーとを共重合成分として含有するグラフト共重合体であって、さらにエチレン性不飽和二重結合とアミノ基とを有するモノマー由来のアミノ基の少なくとも一部と有機酸化合物とが塩を形成したグラフト共重合体である、カラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記請求項9に記載のカラーフィルタ用赤色感光性樹脂組成物を用いて形成された着色層を有することを特徴とする、カラーフィルタ。
【請求項12】
前記請求項11に記載のカラーフィルタと、対向基板と、前記カラーフィルタと前記対向基板との間に形成された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】
前記請求項11に記載のカラーフィルタと、有機発光体とを有することを特徴とする有機発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−64983(P2013−64983A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141274(P2012−141274)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】