説明

カラーフロップ性を有する着色布帛

【課題】カラーフロップ性があり、毛羽立ちが無く、かつ縫製可能であって、カバンやバッグ、衣服の一部、壁紙等に用いることのできる、着色布帛を提供する。
【解決手段】暗色の布帛の表面にポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、などの樹脂を付着し樹脂加工織物となし、さらにその上面に樹脂とコレステリック液晶顔料を含むコーティング剤が塗布されてなることを特徴とするカラーフロップ性を有する着色布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバンやバッグ、衣服の部品、壁紙等に好適に用いることのできる、カラーフロップ性を有する着色布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料として、炭素繊維等の高張力繊維材にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂加工シートが知られている。この樹脂加工シートは、高強度、高引っ張り弾性率、金属より軽量であることから航空機や土木補強に応用されている(特許文献1)。
しかしながら、柔軟性が無く、硬いという難点があった。
この難点を克服するためのものとして、炭素繊維布帛に柔軟性樹脂加工を施した樹脂加工シートが提案されている(特許文献2)。この樹脂加工シートは炭素繊維独特の黒い光沢があり、柔軟で縫製できるという特徴があり、名刺入れや、バッグ等に応用できるが、黒一色のため、カラー展開が望まれていた。
【0003】
特許文献3には、液晶構造顔料によるコーティング組成物の記載はあるが、具体的に塗布する基材として布帛については述べられておらず、その効果も述べられていない。また、自動車外板等の金属板に適用されるパールマイカ塗装やラスタータイルは、見る方向や光が入射する方向が変わると色が変化して見えるが、カラーフロップ効果は低い。
非特許文献1には、コレステリック液晶の干渉色を利用したフルカラー書き換え可能記録媒体が紹介されているが、コレステリック液晶顔料の布帛等への応用と効果については述べられていない。
【特許文献1】特開平9−158495号公報
【特許文献2】特開2007−169867号公報
【特許文献3】特表平9−506138号公報
【非特許文献1】産総研 TODAY 2001.5.1、玉置信之、(独)産業技術総合研究所発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、カラーフロップ性があり、毛羽立ちが無く、かつ縫製可能であって、カバンやバッグ、衣服の一部、壁紙等に用いることのできる、着色布帛を提供することである。さらに本発明の他の目的は、縫製をしない用途であっても、カラーフロップ性があり、テーブルやタンスなどの家具の外装、建物の内外装、自動車の内外層などに用いる着色布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層を設けることによって、優れたカラーフロップ性を有し、かつ毛羽立ちが無いといった優れた性質を有する着色布帛が得られ、従来の問題を一挙に解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1] 暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層が設けられてなることを特徴とするカラーフロップ性を有する着色布帛、
[2] 布帛が、樹脂加工処理したものである前記[1]に記載の着色布帛、
[3] 樹脂が、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーン、合成ゴムまたは天然ゴムである前記[2]に記載の着色布帛、
[4] 樹脂が、ポリウレタンである前記[2]に記載の着色布帛、
[5] 布帛が、織物、編物または不織布である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の着色布帛、
[6] 布帛が、織物である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の着色布帛、
[7] 織物が、平織物、綾織物または朱子織物である前記[5]または[6]に記載の着色布帛、
[8] 織物の素材が、炭素繊維であることを特徴とする前記[5]〜[7]のいずれかに記載の着色布帛、
[9] 織物の素材が、炭素繊維とそれ以外の繊維とからなり、かつ炭素繊維の比率が20質量%以上であることを特徴とする前記[5]〜[7]のいずれかに記載の着色布帛、
[10]コーティング層中に、さらに、コレステリック液晶顔料以外の顔料を含むことを特徴とする前記[1]〜[9]のいずれかに記載の着色布帛、
[11] 樹脂加工処理した暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料以外の顔料を含むコーティング層が設けられており、かつ該コーティング層の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層が設けられてなることを特徴とするカラーフロップ性を有する着色布帛、及び
[12] JIS Z 8729におけるL*a*b表色系色度図において、着色布帛の−45°方向から12V100Wのハロゲンランプにて照射し、受光角−80°から80°まで5°おきに彩度C*及び色相角h*を測定した場合、彩度C*の平均値が7以上であり、かつ最大色相角差が90°〜360°である前記[1]〜[11]のいずれかに記載の着色布帛、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の着色布帛は、カラーフロップ性に優れており、毛羽立ちが無く、かつ縫製可能である。暗色の布帛に第一の樹脂層を形成し、コレステリック液晶顔料を含む第二の樹脂層の構成とすることでより高いカラーフロップ性が得られる。また、本発明の着色布帛は、毛羽立ちがないばかりか、繊維間の接着力、剛軟性及び耐摩耗性に優れている。さらに、本発明の着色布帛は、裁断、縫製、加工中の毛羽立ちやホツレが無く、縫製が可能で、縫製品材料としても好適である。また、本発明の着色布帛は、縫製をしない用途であっても、カラーフロップ性があり、テーブルやタンスなどの家具の外装、建物の内外装、自動車の内外層などに用いることができる。なお、本明細書においてカラーフロップ性(colour flop)とは色調が眺める角度によって変化することを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のカラーフロップ性を有する着色布帛は、暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層が設けられてなることを特徴とする。
【0009】
本発明に用いる布帛としては、暗色であれば特に限定されずに使用することができ、例えば織物(例えば平織物、綾織物、朱子織物等)、編物(例えばたて編み、丸編み等)、不織布、フェルト、紙、紐等が挙げられ、好ましくは織物または編物等が挙げられる。
本発明に使用される布帛は、常法に従い製造することにより得ることができ、市販品を用いてもよい。例えば、布帛として織物を用いる場合、織物の製織方法としては、特に限定されず、例えば、スルザー織機またはレピヤー織機等の公知の織機を用いる方法等が挙げられる。このようにして製織することにより、平織、綾織、朱子織または斜文織等の所望の織物を製造することができる。
前記した暗色の布帛(以下、単に布帛ともいう。)の目付け(単位面積当たりの織物重量)は、通常、20〜600g/mであり、好ましくは100〜300g/mである。20g/m未満の場合、生地が薄く、カバンやバッグ、衣服の部品、壁紙等の用途で引張強度や摩耗強度の面で好ましくない。また、600g/mより大きい場合、着色布帛が厚く、かつ重くなり、カバンやバッグ、衣服の部品、壁紙等への応用においては適さない。
【0010】
本発明に用いる布帛の素材としては、暗色であれば本発明の目的を阻害しない限りその素材は特に限定されず、例えば、黒く染色したポリエステル、黒く染色したナイロン、炭素繊維等が挙げられ、好ましくは炭素繊維である。また、布帛の素材は、炭素繊維と炭素繊維以外の繊維を混合したものでもよく、炭素繊維の含有率が20質量%以上であるのが好ましい。布帛の素材として炭素繊維と炭素繊維以外の繊維を混合して使用し、炭素繊維の割合が20%未満の場合、炭素繊維独特の色(黒色)や光沢が失われ、さらにカラーフロップ性も損なわれるためである。
前記炭素繊維としては、特に限定されないが、引張強度が1.9GPa以上、望ましくは2.5GPa以上である。例えば、レーヨン系炭素繊維、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、リグニンポリビニルアルコール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。本発明では、前記炭素繊維を、常法に従い製造してもよく、また、市販品を炭素繊維として用いてもよい。なお、市販品としては、例えば“トレカ”(商品名、東レ(株)製)等が挙げられる。
前記炭素繊維は、通常、常法に従い糸条とされて、それぞれ炭素繊維織物のたて糸及びよこ糸に用いられるが、引き揃えや撚り、さらには扁平化等については特に限定されず、種々の糸条が炭素繊維として用いられうる。
【0011】
布帛を構成する炭素繊維以外の繊維として、既存のナイロン、ポリエステル繊維でもよいし、高強力繊維でもよい。
本発明の布帛に用いる高強力繊維は、引張強度が1.9GPa以上、望ましくはスーパー繊維といわれる引張強度が2.5GPa以上であることが複合体の強度と剛性の面で望ましく、例えば、パラ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維(クラレ(株)製商品名:ベクトラン)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(東洋紡績(株)製商品名:ザイロン)等がある。パラ系アラミド繊維はパラ系全芳香族ポリアミド繊維であり、ポリパラフェニレンテレフタラミド繊維(東レ・デュポン(株)製商品名:ケブラー(R))やコポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタラミド繊維(帝人(株)製商品名:テクノーラ)、高強度ポリビニルアルコール繊維(ユニチカ(株)製商品名 ビニロンの高強度タイプ)、超高分子量ポリエチレン(東洋紡績(株)製商品名:ダイニーマ)等がある。
布帛としての形態は、織物、経て編み又はよこ編み等の編物、フェルト、不織布、紙等であってもよい。中でも糸の繊維軸方向の曲がりが少なく、構造的に生地が伸び縮みしにくい織物が望ましい。
炭素繊維と炭素繊維以外の繊維を混合して使用した布帛としては、例えば炭素繊維とパラ系アラミド繊維とからなる平織物が好適に挙げられる。この交織織物は、引っ張り特性において高弾性率であるが耐衝撃性の低い炭素繊維の問題点を、炭素繊維より耐衝撃性の高いパラ系アラミド繊維が補っている。
【0012】
本発明に用いる布帛は、表面が平滑である必要がある。そのため、表面が平滑でない場合、あらかじめ高分子化合物を用いて樹脂加工処理を施して、表面を平滑にしておく必要がある。表面が平滑でない場合には、着色布帛のカラーフロップ効果が低くなるおそれがあるためである。
前記樹脂加工処理は、高分子化合物(以下、樹脂ともいう。)を含むコーティング剤で布帛を処理することにより行う。高分子化合物を含むコーティング剤で布帛を樹脂加工処理する方法は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。布帛として炭素繊維織物を用いる場合には、炭素繊維織物のたて糸及びよこ糸の互いの拘束の程度が低いので、炭素繊維織物生地を取り扱う場合、たて糸とよこ糸とがずれて部分的に糸密度が不均一になったり、たて糸とよこ糸との相対角が90度を外れたり、目ずれを起こしやすいので、炭素繊維織物表面だけでなく、たて糸とよこ糸との交差部にも高分子化合物を含浸させるのがよい。
このような樹脂加工処理方法としては、例えば、常法に従い高分子化合物を溶剤もしくは水性媒体に溶解もしくは乳化・分散したもの、または非溶媒系の高分子化合物溶液中に前記炭素繊維織物を浸漬し、前記炭素繊維織物に高分子物質を含浸させ、ついで、ナイフコーターやパイプコーター、スリット、ロール等を用いて余分な高分子化合物溶液を掻きとって高分子化合物の含浸量を均一にした後、含浸物を乾燥及び/又は熱処理する方法等が挙げられる。図3にコーターで炭素繊維織物から高分子化合物溶液を掻き取る方法の概略を示す。図4にナイフコーター及びパイプコーターの先端の形状の略図を示す。このようにして前記炭素繊維織物に高分子化合物を含浸させることにより、炭素繊維織物の表面及びたて糸とよこ糸との交差部に高分子化合物を含浸させることができ、摩擦を受けると表面毛羽が発生したり、擦り減ったり、穴があいたりするのを防ぐことができ、さらに、着色布帛の単繊維の切断した端部(毛羽)が、人体の皮膚に触れて皮膚を刺激したり、かゆみを感じさせたりするのを防ぐことができる。
【0013】
布帛と高分子化合物との比率は、質量基準で95:5〜10:90であるのが好ましい。例えば、布帛が炭素繊維織物である場合であって、該炭素繊維織物が目付け200g/mの炭素繊維織物である場合には、樹脂量が10〜300g/m(炭素繊維織物:樹脂量の比率=95:5〜40:60)が好ましく、さらに好ましくは25〜150g/m(炭素繊維織物:樹脂量の比率=90:10〜60:40)である。300g/mより多いと、粘着性が発生する恐れがあり、また10g/mより少ないと耐摩耗性が低下する恐れがある。
布帛の種類や用途によって、布帛と高分子化合物(樹脂)の適正な比率は異なる。例えば、織物に比べ嵩高性の高い編物は、樹脂の割合を織物より多くすることが好ましい。織物においては、目付けの少ない織物は、目付けの多い織物より樹脂の割合を比較的多くすることが好ましい。目付け50g/mの織物の場合、樹脂量が5〜300g/m(織物:樹脂量の比率=90:10〜15:85)が好適である。
【0014】
なお、前記布帛に対する高分子化合物の含浸量が少ないと、たて糸とよこ糸との交差部の接着力が十分でないので、布帛と高分子化合物との比率が質量基準で95:5〜10:90となるようにするのがよい。
【0015】
布帛を高分子化合物溶液中に浸漬して前記布帛を高分子化合物でコーティングする際の溶液粘度は1,000〜100,000mPa・sが好ましく、より好ましくは5,000〜40,000mPa・sである。なお、本発明における粘度は、JIS Z 8803 液体の粘度−測定方法に記載の方法に従い、B形粘度計を用いて測定した値である。
【0016】
布帛への高分子化合物の含浸は、樹脂量が不均一であると光沢ムラになり、樹脂加工後の布帛の表面の樹脂の多い部分は、粘着性をおこし、樹脂の少ない部分は耐摩耗性に劣るようになる恐れがあるので、前記したように、ナイフコーターやパイプコーター等を用いて余分な樹脂を掻き取って樹脂量を均一にするのがよい。
【0017】
前記の含浸物の乾燥は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、常法に従い行われてよい。乾燥温度は、通常、0〜140℃、好ましくは20〜80℃である。
乾燥温度が低いと透明性は良好だが、生産性は下がる。また、乾燥温度が高いと生産性は上がるが、透明性が損なわれる。
前記の乾燥物の熱処理は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、常法に従い行われてよい。加熱温度は、通常、80〜200℃であり、好ましくは100〜180℃であり、より好ましくは120〜160℃である。
【0018】
本発明に用いる高分子化合物としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、水系、溶剤系、非溶媒系のいずれであってもよく、柔軟性を要する着色布帛を製造する場合、例えば、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーン、合成ゴム又は天然ゴム等のエラストマーやゴムが挙げられ、とりわけ、熱可塑性エラストマーが好ましく、透明性等の観点からウレタン系の熱可塑性エラストマー、アクリル酸エステル系の熱可塑性エラストマーがより好ましく、ウレタン系の熱可塑性エラストマー(例えば、ポリウレタン樹脂エマルジョン等)が最も好ましい。特に、前記ウレタン系のエラストマーを用いる場合には、夏期や冬期の温度差に関わらず着色布帛の風合いが変わらない等の優れた効果を発揮する。また、本発明に用いる高分子化合物としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂であってもよい。
高分子化合物は、柔軟性を有する着色布帛を製造する場合、製造された柔軟性を有する着色布帛が、JIS L 1096−2002 8.19.2 B法(スライド法)に準じた下記の方法で測定される剛軟性(自重垂下の長さ)が80mm以上であるのが望ましい。
【0019】
(剛軟性の測定方法)
本発明の着色布帛の断片を試験片として採取し、採取した試験片の大きさを2×30cmとし、試験器に取り付ける試験片の長さL=25cmとした以外は、JIS L1096 8, 19.2 B法(スライド法)に準じて、試験片の自由端が移動台から離れる時の値δ(単位:mm)をスケールによって読み、この値δを指標として本発明の剛軟性を定義する。試験片の自由端が移動台から離れる時の値が自由端の垂下長であり、試験片が柔軟であるほど自由端の垂下長は長くなる。剛軟性の測定方法の模式図を図6に示す。
前記高分子化合物には、着色布帛の耐久性、耐薬品性を上げる為に架橋剤を混合してもよい。また、機能性、加工性、柔軟性等を考慮し、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤等を添加してもよい。さらに、表面の粘着性を考慮し、粘着防止剤等を添加してもよい。
【0020】
本発明の基布は暗色である必要がある。暗色とは、国際照明委員会(CIE)が定め、JIS Z 8729に定義されるL*a*b表色系色度図(以下、単に「L*a*b表色系色度図」という。)において、L*で表される明度が60以下、好ましくは50以下である色を意味する。すなわち基布の明度が60以下、好ましくは50以下でカラーフロップ効果が顕著である。L*a*b表色系色度図において、明度L*の上限は100となり、白を意味し、下限は0となり、黒を意味する。暗色としては、例えばダークブルー、ダークレッド、ダーククリーン、ダークグレー、黒色等が挙げられ、黒色が好適に挙げられる。
コレステリック液晶顔料による着色は、基布が黒色であると、よりカラーフロップ効果が高い。コレステリック液晶に進入した光は、コレステリック液晶によって反射された特定の波長の光と透過した光に分けられ、表面からは反射された光のみが着色された色として見える。透過した光は、黒色の基布に吸収されるので、反射された光はより強く発色する。
布帛が暗色でない場合は、あらかじめ布帛に暗色系顔料を含むコーティング層を設けておく必要がある。暗色系顔料としては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、例えばカーボンブラック、アニリンブラックまたは酸化鉄ブラック等が挙げられ、これらの顔料は、1種に限らず2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
本発明に用いるコレステリック液晶顔料(以下、単に「液晶顔料」という)としては、公知のものを使用することができ、例えば特許3047122号明細書に開示されているものを使用することができる。前記液晶顔料は、キラル相を有する一種以上の液晶性物質を配向させた後、三次元架橋し、続いて所望の粒子サイズに粉砕することにより得ることができる。これは、例えば、まずキラル相を有する液晶性物質を基材に、例えばナイフコーティングにより薄相として塗布し、この基材上の層を三次元架橋した後、基材から分離し、所望の粒度に粉砕することにより実施できる。
前記液晶性物質としては、例えばコレステリック液晶等が好適に挙げられ、具体的には、下記式:
【化1】

で示される化合物等が挙げられ、さらに、特開平11−322911号公報に記載されているコレステリック液晶ポリマー、特願2001−303057号公報に記載されているコレステリック液晶組成物等が挙げられる。
前記液晶性物質は、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はディスコチック液晶にキラル物質を添加することにより製造することができ、例えば特開昭58−17119号公報、特開平2−149544号公報等に製造方法が開示されている。キラル物質の性質と割合により、液晶性物質が有するねじれ構造のピッチが決まり、反射光の波長が決まる。前記液晶性物質は、UV〜IRの範囲の光波長に相当するピッチのねじれ構造を有する。この構造体のねじれは、左ねじれでも、右ねじれでもよい。前記の液晶性物質としては、原則として、全てのコレステリック液晶を使用することができる。1種のコレステリック液晶を用いてもよいし、少なくとも2種のコレステリック液晶の混合物を用いてもよい。
【0022】
前記液晶顔料としては、例えば、比重1.2〜1.4(g/mL)程度、粒子の平均厚みが3〜15μm程度、好ましくは5〜10μm程度であり、平均粒子径が1〜100μm、好ましくは10〜60μm程度ものが好適に用いられ、通常、ヘリコーンとして粉体で市販されている。
本発明における「平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定される値であり、体積基準のメジアン径が累積分布の50%に相当する粒子径(d50)を意味し、例えばCoulter Electronics社(英国)製コールターマルチサイダーを用いて、体積基準により測定できる。
本発明における粒子の「平均厚み(μm)」は、〔4000/水面被覆面積(cm/g)〕式により求められた値であり、その測定方法は例えば「アルミニウムハンドブック」(昭和47年4月15日発行第9版、社団法人 軽金属協会;朝倉書店)第1243頁に記載されている。
【0023】
前記液晶顔料の具体例としては、ワッカーケミー(Wacker Chemie)社から市販されている「ヘリコーン(Helicone)HC アクエリアス(Aquarius)」、「ヘリコーン(Helicone)HC スカラベアス(Scarabeus)」、「ヘリコーン(Helicone)HC ジェイド(Jade)」、「ヘリコーン(Helicone)HC メープル(Maple)」、「ヘリコーン(Helicone)HC サファイア(Sapphire)」等が挙げられ、光輝性と色調変化の観点からは「ヘリコーン(Helicone)HC スカラベアス(Scarabeus)」、「ヘリコーン(Helicone)HC ジェイド(Jade)」等が好適に挙げられる。これらは、コレステリック構造の違いにより反射光の色が異なるため、所望の色調に応じて使い分けられる。また、本発明においては、1種または2種以上選択して用いることができる。
本発明の着色布帛に含まれるコレステリック液晶顔料の量は、着色布帛全体に対して通常0.001〜5質量%程度、好ましくは0.01〜3質量%程度である。
【0024】
本発明の着色布帛は、布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層を設けることにより製造することができる。布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層を設ける方法は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。前記方法としては、例えば、常法に従いコレステリック液晶顔料を含むコーティング剤を溶剤もしくは水性媒体に溶解もしくは乳化・分散してコーティング剤溶液を作製し、前記コーティング剤溶液中に前記布帛を浸漬することにより、前記布帛に前記コーティング剤を塗布し、ついで、ナイフコーターやパイプコーター、スリット、ロール等を用いて余分な前記コーティング剤溶液を掻きとって前記コーティング剤の塗布量を均一にした後、塗布物を乾燥及び/又は熱処理する方法等が挙げられる。
【0025】
本発明に用いるコレステリック液晶顔料を含むコーティング剤としては、コレステリック液晶顔料を含んでいれば、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、コレステリック液晶顔料の他に、前記高分子化合物を含んでいるコーティング剤が好ましく、所望によりコレステリック液晶顔料以外の顔料(例えばパール顔料等の天然無機顔料、セラミック顔料等の合成無機顔料または有機顔料等)を含んでいてもよい。
コーティング剤に含まれる液晶顔料の含有量は、通常0.1〜7%(w/w)程度、好ましくは0.3〜5%(w/w)程度である。
また、コーティング剤にコレステリック液晶顔料とコレステリック液晶顔料以外の顔料とを混合して用いる場合、コレステリック液晶顔料以外の顔料の添加量は、通常0.01〜1%(w/w)程度、好ましくは0.1〜0.8%(w/w)程度である。適切な色調の顔料の添加により、彩度が高くなる。
【0026】
布帛とコーティング剤との比率は、質量基準で95:5〜10:90であるのが好ましい。例えば、布帛が炭素繊維織物である場合であって、該炭素繊維織物が目付け200g/mの炭素繊維織物である場合には、コーティング剤の量が10〜300g/m(炭素繊維織物:コーティング剤の量の比率=95:5〜40:60)が好ましく、さらに好ましくは25〜100g/m(炭素繊維織物:コーティング剤の量の比率=90:10〜60:40)である。なお、布帛をコーティング剤溶液中に浸漬して前記布帛に前記コーティング剤を塗布する際の溶液粘度は1,000〜100,000mPa・sが好ましく、より好ましくは5,000〜40,000mPa・sである。
【0027】
樹脂加工処理した布帛へのコーティング剤の塗布は、コーティング剤の量が不均一であると光沢ムラになり、塗布後の着色布帛の表面のコーティング剤の多い部分は、粘着性をおこし、コーティング剤の少ない部分は耐摩耗性に劣るようになる恐れがあるので、前記したように、ナイフコーターやパイプコーター等を用いて余分なコーティング剤を掻き取ることにより、コーティング剤の量を均一にするのがよい。
前記の塗布物の乾燥及び熱処理は、上記の樹脂加工処理と同様にして行うことができる。
【0028】
また、本発明の着色布帛は、布帛に高分子化合物を含浸させたのち、コレステリック液晶顔料以外の顔料(例えばパール顔料等の天然無機顔料、セラミック顔料等の合成無機顔料または有機顔料等)を塗布し、次いで、コレステリック液晶顔料を含むコーティング層を設けることにより製造することができる。
さらに、本発明の着色布帛は、コレステリック液晶顔料を含むコーティング剤を常法に従い塗布したのち、次いで透明な高分子化合物を塗布してもよい。
【0029】
かくして得られる本発明の着色布帛は、彩度C*の平均値(以下、Cavとも表す。)が通常7以上、好ましくは15以上であり、かつ最大色相角差が通常90°〜360°、好ましくは80°〜360°である。
本発明における彩度及び色相角は、L*a*b表色系色度図において、彩度をC*(以下、C*abともいう。)、色相角(色相ともいう。)をh*(以下、h*abともいう。)として表示され、前記彩度C*及び色相角h*は、色度a*及びb*という単位を用いて算出することができ、彩度C*は、下記式(1):
【数1】

(式中、色度a*の正は赤方向、負は緑方向を表し、色度b*の正は黄方向、負は青方向を表す。)
で表される。前記色相角h*は、a*値およびb*値が、a*≧0、かつb*≧0の場合には、下記式(2):
【数2】

(式中、a*及びb*は前記と同一意味を有する。)
で表され、a*≧0、かつb*<0の場合には、下記式(3):
【数3】

(式中、a*及びb*は前記と同一意味を有する。)
で表され、a*<0の場合には、
【数4】

(式中、a*及びb*は前記と同一意味を有する。)
で表される角度(度)を表す。彩度C*及び色相角h*の測定方法は、特に限定されない。彩度C*及び色相角h*は、例えば分光高度計(例えば変角高速分光光度計GSP−2(光源12V100Wハロゲンランプ、(株)村上色彩技術研究所製))で、試料の−45°方向から照射し、受光角−80°から80°まで5°おきに測定することができ、測定した彩度C*から彩度C*の平均値を算出することができ、最大色相角差ΔHは、測定した色相角h*の最大値と最小値の差を示す。但し、一般に、受光角が、照射角±5°の範囲は測定が困難なので、測定点から除外する。
また、本発明の着色布帛の耐光堅牢度(単位:級)は、通常、JIS L 0842 第3露光法に記載の方法に従い測定することができ、例えば紫外線ロングライフフェードメーター(型式:U48、スガ試験機(株)製)を用いて測定することができる。本発明の着色布帛の耐光堅牢度は通常3級以上であり、好ましくは4級以上である。
【0030】
本発明の着色布帛は、優れたカラーフロップ性を有するため、柔軟性を有する着色布帛の場合、柔軟で、布や皮革と同様に縫製が可能であり、カバンやバッグ、衣服の装飾パーツ、ひじ等の補強パーツ、あるいは壁や室内パーティション等に好適に応用できる。
さらに、本発明の着色布帛は、高分子化合物が炭素繊維の表面及びたて糸とよこ糸の交差部に含浸していることから、着色布帛の裁断加工、縫製加工、壁等への貼り付け加工中の毛羽立ちやホツレを防止することができる。
布帛が不織布、フェルト紙の場合は、繊維と繊維の交差部に高分子化合物が含浸していることから、毛羽やホツレが生じにくい。
また、本発明の着色布帛は、物性面での優れた特長と同時に、表面光沢と黒さを保ち、特に基材の布帛が炭素繊維織物の場合は、その特長であるたて糸、よこ糸の見た目の明度差を損なわないという効果を奏する。
【0031】
本発明の着色布帛は、樹脂が繊維間に含浸されているので、塗料、顔料、インク等を過剰に吸収することが無く、塗料、顔料、インクを塗布または印刷することが容易である。
また、着色した合成樹脂フィルム、金属箔等を貼着することもできる。
本発明の着色布帛は、通常、耐摩耗性において、下記(a)の試験方法に従い摩耗試験を行い、下記(b)の判定方法によって判定される外観変化がA級(異常無し)であるという効果を奏する。
(a) 試験方法 JIS L0849−2002 4.1.1
(b) 判定方法 JIS L1096−2002 8.17.3(d)
【0032】
本発明の着色布帛が織物状である場合は、樹脂による糸―糸の接着力、すなわちJIS L 1096−2002 8.15.3 B法に従い測定される、たて糸及びよこ糸の1本を引き抜くときに係る抵抗値が、それぞれ0.02N/TEX〜0.4N/TEX、好ましくは0.03N/TEX〜0.3N/TEX、さらに好ましくは0.04N/TEX〜0.2N/TEXである。
前記した引き抜きに係る抵抗値の範囲においては、布帛の裁断、縫製加工中のたて糸、よこ糸のほつれや毛羽立ち、縫い目ズレが起こりにくく、取り扱いが良好である。引き抜きに係る抵抗値が0.02N/TEX未満であると摩耗による毛羽立ちが発生しやすく、たて糸、よこ糸のホツレが起こりやすく裁断、縫製において支障をきたし、また、柔軟性を有する着色布帛の場合、縫製によって作られたバッグや、コインケース等の製品も摩耗による毛羽立ちや縫い目ズレ等が起こりやすく、商品として好ましくない。柔軟性を有する着色布帛の場合、引き抜きに係る抵抗値が0.4N/TEX以上であると、着色布帛が硬く縫製によって作られたバッグやコインケースの柔軟性において好ましくない。
【0033】
本発明の着色布帛は、柔軟性を有する着色布帛の場合、通常、前記のJIS L1096 8.19.2 B法(スライド法)に準じた方法に従い測定される剛軟性が80mm〜200mmであり、さらに好ましくは90mm〜150mmである。剛軟性が80mm以上においてカバン等の縫製が可能であると同時に、柔軟なカバン、小型バック、リュックサックに好適である。
また、縫製品では無く凹凸のある物体や、凹凸のある壁面に貼り付ける場合は、剛軟性が80mm以下であっても、カラーフロップ性応用した家具の外装や、建物の内外装、自動車の内外装などに好適である。凹凸のある物体や、凹凸のある壁面へ貼り付ける場合、凹凸への添いやすさから剛軟性は40mm以上が好ましい。
【0034】
本発明の着色布帛は、柔軟性を有する着色布帛の場合、柔軟で裁断、縫製が容易であることから、財布、名刺ケース、めがねケース、櫛ケース、ブックカバー、印鑑ケース、小銭入れ、手提げカバン等の袋物、キーホルダー、ベルト、ビジネスバッグ、帽子、靴等の縫製製品に好適である。また、柔軟性を有する着色布帛の場合、柔軟で裁断や取り扱いが容易であることから、縫製製品だけでなくその他の用途にも使用できる。例えば木製の板や金属板等と張り合わせる材料としても好適である。
本発明の着色布帛は通常、JIS L 1096 8.21.1 A法に従い測定される縫目滑りの最大孔の大きさが1.0mm以下であり、かばん等の縫製品の使用時に縫目にかかる荷重に対して十分な耐久性能を持つ。
また、本発明の着色布帛は難燃特性を持つ。JIS L 1091E法に従い測定されるLOI値は25〜32であり、燃えにくい素材であるといえる。また、鉄道車両用材料燃焼試験による判定方法では難燃性であった。本発明の着色布帛は、柔軟性を有する着色布帛の場合、はさみ等で容易に裁断でき、柔軟であるので適当な接着剤を用いて板や金属板と張り合わすことが容易である。特に金属板と本発明の着色布帛を貼り合せた複合版は、鉄道車両用材料燃焼試験において着色布帛の表面に炎を当てる試験において不燃性であった。本発明の着色布帛は金属板と複合することにより鉄道車両用材料としても使用できる。貼り合わせる金属板はアルミ板が好適に挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
東レ(株)製の炭素繊維(商品名:トレカ)T300−3K糸(繊度198TEX、引張強度3.53GPa、引張弾性率230GPa)をたて糸及びよこ糸に用いて、たて糸密度5(本/cm)、よこ糸密度5(本/cm)で、織物組織が平織の織物を製織して炭素繊維織物を作成した。本織物の目付けは200g/m、L値は32.4であった。
コーティング第1層;得られた炭素繊維織物にポリウレタン樹脂系クリアーバインダー(商品名:シャインバインダーB−1006、主成分:ポリウレタン樹脂エマルジョン、(株)松井色素化学工業所製)乳化液を水で希釈して調整した20%(w/w)コーティング剤溶液[粘度:10,500mPa・S{測定条件:JIS Z 8803 液体の粘度−測定方法に記載の方法に従う、(株)トキメック製のB形粘度計 ローターNo.4、回転数4rpm、1分、20℃}]に3秒間浸漬したのち、余分な溶剤溶液をパイプコーターで掻き取り一定の含浸率とした。その後、60℃、3分で乾燥を行い、ついで160℃、3分で熱処理を行った。得られた樹脂加工織物(シート)における樹脂含浸量は70g/m(繊維:樹脂の重量比率=74:26)であった。
コーティング第2層;コーティング層第1層の上に、以下の方法により、第2層目のコーティング層を作製した。前記の粘度調整したポリウレタン樹脂系クリアーバインダーの乳化母液[粘度:10,500mPa・S{測定条件:前記と同一}]に、コレステリック液晶顔料(商品名:“HELICONE HC” Scarabeus、ワッカーケミー社製、販売元:山本通算(株))3%(w/w)を添加した乳化液を作製した。該乳化液中に前記樹脂加工シートを3秒間浸漬したのち、余分な溶剤溶液をナイフコーターで掻き取り一定の含浸率とした。その後、60℃、3分で乾燥を行い、ついで160℃、3分で熱処理を行って、コーティング第1層の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング第2層が設けられた、ブルー〜グリーンに見える着色された樹脂加工織物(シート)を得た。得られた樹脂加工織物(シート)における合計樹脂含浸量は141g/m(繊維:樹脂の重量比率=59:41)であった。この樹脂加工シートは、彩度平均値Cav=24.6で高い彩度を持ち、最大色相角差ΔH=184.6で高いカラーフロップ性を示した。剛軟性は、122mmであった。その他の特性は、以下の通りであった。
縫い目滑脱:0.3mm
引き抜き抵抗値タテ: 0.126N/TEX
引き抜き抵抗値ヨコ: 0.126N/TEX
耐摩耗性:表(A)、裏(A)
LOI値:25
【0037】
[実施例2]
コレステリック液晶顔料を“HELICONE HC” Acuarius(SLM90020)(商品名、ワッカーケミー社製、販売元:山本通算(株))とする以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0038】
[実施例3]
コレステリック液晶顔料を“HELICONE HC” Jade(ワッカーケミー社製、販売元:山本通算(株))とする以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0039】
[実施例4]
コレステリック液晶顔料を“HELICONE HC” Maple(ワッカーケミー社製、販売元:山本通算(株))とする以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0040】
[実施例5]
コレステリック液晶顔料の添加量を0.5%(w/w)とする以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0041】
[実施例6]
コレステリック液晶顔料の添加量を1.0%(w/w)とする以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0042】
[実施例7]
コーティング第2層に用いる乳化液に、コレステリック液晶顔料の他に、さらに顔料(商品名:Ryudye Green FBT、大日本インキ化学工業(株)製)0.5%(v/v)を添加する以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0043】
[実施例8]
コーティング第2層に用いる乳化液に、コレステリック液晶顔料の他に、さらに顔料(商品名:Dexcel Black HB、大日本インキ化学工業(株)製)0.5%(w/w)を添加する以外は、実施例1と同様にして着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0044】
[実施例9]
コレステリック液晶顔料の代わりに、顔料(商品名:Ryudye Green FBT、大日本インキ化学工業(株)製)を用いる以外は、実施例5と同様にコーティング第2層を作製した。さらに、コーティング層第2層の上に、以下の方法により、第3層目のコーティング層を作製した。実施例1に記載のポリウレタン樹脂系クリアーバインダーの乳化母液[粘度:10,500mPa・S{測定条件:実施例1と同一}]に、コレステリック液晶顔料(商品名:“HELICONE HC” Scarabeus、ワッカーケミー社製、販売元:山本通算(株))3%(w/w)を添加した乳化液を作製した。該乳化液中に前記樹脂加工シートを3秒間浸漬したのち、余分な溶剤溶液をナイフコーターで掻き取り一定の含浸率とした。その後、60℃、3分で乾燥を行い、ついで160℃、3分で熱処理を行って、着色された樹脂加工織物(シート)を得た。
【0045】
[実施例10]
炭素繊維織物の代わりに、炭素繊維とパラ系アラミド繊維の交織織物を用いる以外は、実施例1と同様にして、着色された樹脂加工織物(シート)を得た。前記炭素繊維とパラ系アラミド繊維の交織織物の製織方法を以下に示す。
たて糸に東レ・デュポン(株)製のパラ系アラミド繊維(商品名:ケブラー)3300DTEX−T950糸(繊度330TEX、引張強度2.9GPa,引張弾性率71GPa)を使用し、よこ糸に東レ(株)製の炭素繊維(商品名:トレカ)T300−3K糸(繊度198TEX、引張強度3.53GPa,引張弾性率230GPa)を二本引きそろえて繊度396TEXの太さとして使用した。織物密度は、たて糸3.5(本/cm)、よこ糸3.5(本/cm)で、平織りの織物を製織した。得られた交織織物は、繊維素材の割合が、重量比でパラ系アラミド繊維45.5%、炭素繊維54.5%で、目付けは、260g/m、L値は58.4であった。
【0046】
[実施例11]
実施例1に記載の炭素繊維織物に不飽和ポリエステル樹脂(商品名:ユピカ FLT−125、日本ユピカ(株)製)を次の方法で塗布した。表面が平滑なガラス板の上に不飽和ポリエステル樹脂をスプレーガンで塗布し、その上に前記炭素繊維織物を置き、さらに不飽和ポリエステル樹脂を塗布して炭素繊維織物に前記樹脂をよくしみ込ませ、常温で24時間放置して硬化させたのち、ガラス板から分離して樹脂加工織物(繊維強化プラスチックス板(以下、FRP板と略する))を作製した。得られた樹脂加工織物の目付は、450g/mで、樹脂含浸量は、250g/m(繊維:樹脂の重量比率=44:56)であった。
得られた樹脂加工織物(FRP板)の、ガラス板に接していた平滑な面に実施例1と同様にして、コーティング剤を塗布して、着色されたFRP板を得た。得られた着色FRP板の剛軟性(自重垂下の長さ)は、JIS L 1096−2002 8.19.2 B法(スライド法)に準拠した前記方法で測定した結果、75mmであった。
【0047】
[比較例1]
コレステリック液晶顔料の代わりに、顔料(商品名:Dexcel G. Yellow HR、大日本インキ化学工業(株)製)を用い、顔料の添加量を0.5%(w/w)とする以外は実施例1と同様にして、着色された樹脂加工織物(シート)を得た。彩度平均値はCav=19で十分な彩度を持っているが、最大色相角差ΔH=13.4でカラーフロップ性があるとはいえない。
【0048】
[比較例2]
炭素繊維織物の代わりに、パラ系アラミド繊維織物を用いる以外は、実施例1と同様にして、着色された樹脂加工織物(シート)を得た。得られた樹脂加工織物(シート)の彩度平均値はCav=43.7で十分な彩度を持っているが、最大色相角差ΔH=25.5で、カラーフロップ性があるとはいえない。前記パラ系アラミド繊維織物の製織方法を以下に示す。
東レ・デュポン(株)製のパラ系アラミド繊維(商品名:ケブラー)3300DTEX−T950糸(繊度330TEX、引張強度2.9GPa,引張弾性率71GPa)を、たて糸及びよこ糸に使用して、平織りの織物を製織した。織物密度は、たて糸3.5本/cm、よこ糸3.5本/cm、目付は241g/m、L値は、76.0であった。
【0049】
[比較例3]
炭素繊維の平織物の代わりに、白色のポリエステル生地(ポリエステル100%、たて、よこ糸ともにポリエステル84T−72F−W20,繊度:8.4Tex、たて糸密度:43.3本/cm、よこ糸密度:37.4本/cm、目付け:83g/m、素材名:ウーリータフタ、東レ(株)製、L値:94.9)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂付着量が119g/mの着色された樹脂加工シートを得た。得られた樹脂加工織物(シート)の彩度平均値はCav=6.1で彩度は低く、最大色相角差ΔH=28.2でカラーフロップ性があるとはいえない。
【0050】
[試験例1]
実施例1〜11及び比較例1〜3で得られた着色された樹脂加工織物(シート)を測定試料とし、変角高速分光光度計GSP−2(光源12V100Wハロゲンランプ、(株)村上色彩技術研究所製)で、試料の−45°方向から照射し、受光角−80°から80°まで5°おきにC*、h*を測定し、測定した彩度C*から彩度の平均値Cavを算出し、測定した色相角h*の値から最大色相角差ΔHを算出した。また、JIS L 0842 第3露光法に記載の方法に従い、紫外線ロングライフフェードメーター(型式:U48、スガ試験機(株)製)を用いて耐光堅牢度(級)を測定した。結果を表1に示す。なお、実施例3で得られた着色された樹脂加工織物の彩度C*および色相角h*を代表例として図5に示す。
【0051】
【表1】

以上の結果から、本発明の着色布帛が優れたカラーフロップ性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の着色布帛は、カバンやバッグ、衣服の部品、壁紙等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】糸引き抜き試験に用いる試験片を示す。
【図2】糸引抜き試験時の試験片の形態を示す
【図3】炭素繊維織物から樹脂溶液を掻き取るコーターの概略を示す。
【図4】本発明にかかるコーター先端部の断面形状を示す。
【図5】実施例3の彩度C*及び色相角h*を、L*a*b*表色系色度図上にプロットした図である。
【図6】剛軟性の測定方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1:試験片に入れる切れ目
2:外側舌片
3:中央舌片
4:コーター
5:繊維布帛
6:布の進行方向
7:コーティングする樹脂液
8:ナイフコーター先端部断面形状
9:パイプコーター先端部断面形状
10:試験片
11:試験器
12:移動台
13:自重垂下の長さ
14:試験片の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層が設けられてなることを特徴とするカラーフロップ性を有する着色布帛。
【請求項2】
布帛が、樹脂加工処理したものである請求項1に記載の着色布帛。
【請求項3】
樹脂が、ポリウレタン、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、シリコーン、合成ゴムまたは天然ゴムである請求項2に記載の着色布帛。
【請求項4】
樹脂が、ポリウレタンである請求項2に記載の着色布帛。
【請求項5】
布帛が、織物、編物または不織布である請求項1〜4のいずれかに記載の着色布帛。
【請求項6】
布帛が、織物である請求項1〜4のいずれかに記載の着色布帛。
【請求項7】
織物が、平織物、綾織物または朱子織物である請求項5または6に記載の着色布帛。
【請求項8】
織物の素材が、炭素繊維であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の着色布帛。
【請求項9】
織物の素材が、炭素繊維とそれ以外の繊維とからなり、かつ炭素繊維の比率が20質量%以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の着色布帛。
【請求項10】
コーティング層中に、さらに、コレステリック液晶顔料以外の顔料を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の着色布帛。
【請求項11】
樹脂加工処理した暗色の布帛の表面にコレステリック液晶顔料以外の顔料を含むコーティング層が設けられており、かつ該コーティング層の表面にコレステリック液晶顔料を含むコーティング層が設けられてなることを特徴とするカラーフロップ性を有する着色布帛。
【請求項12】
JIS Z 8729におけるL*a*b表色系色度図において、着色布帛の−45°方向から12V100Wのハロゲンランプにて照射し、受光角−80°から80°まで5°おきに彩度C*及び色相角h*を測定した場合、彩度C*の平均値が7以上であり、かつ最大色相角差が90°〜360°である請求項1〜11のいずれかに記載の着色布帛。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−7204(P2010−7204A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167789(P2008−167789)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(392017624)平松産業株式会社 (15)
【出願人】(504162785)創和テキスタイル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】